20250402
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:弊社のAIは経理業務に特化しており、証憑の読み取りだけでなく、会社名・住所・口座情報の照合や、不正・二重処理の検知まで自動化できる点が特徴です。汎用型AIではなく、経理専用AIとして精度と判断力を高めていることが、大きな優位性となっております。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)は何でしょうか。
A:弊社の成長戦略は、大きく2つの柱がございます。1つ目は、アメリカへの進出です。アメリカ市場は非常に大きく、成長が期待できます。2つ目は、経理シンギュラリティの推進です。AIによる経理業務の完全自動化を目指し、開発と販売を加速させてまいります。
Q:業績の増減要因をご説明ください。
A:2024年12月期は、導入企業数が30社ほど増加いたしました。これは、2024年初頭に営業組織を変更し、新規顧客開拓チームと既存顧客営業チームに分けたことが要因です。これにより、新規顧客開拓に注力できる体制となり、導入企業数の増加につながりました。既存顧客へのアップセル・クロスセルも順調に進んだことも大きな要因です。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:株主の皆様への利益還元は、重要な経営課題の一つと考えております。キャピタルゲインはもちろんのこと、配当についても、2024年度は配当性向10%で実施しており、2025年度は20%への引き上げも検討しております。グロース企業でありながら、配当を実施していることは、投資家の皆様からも評価していただけると考えております。
取材者:
貴社のビジネスモデルや事業内容、特徴、強みなどについて、ご説明いただけますか?
回答者:
会社の成り立ちについて、よくご質問をいただきます。
スタートアップ企業であることと、創業者が現在の社長であるという点、大株主かつ社長であるという点が、弊社の特徴かと存じます。
代表の森は、AkamaiというエンタープライズSaaS企業で営業をしておりました。
営業としてトップセールスの賞をグローバルで複数回受賞しています。
ダイレクト営業で実績を上げ、その後、食品のEコマースの会社を自分で立ち上げました。
食品のEコマースは、自然食品を妊婦さん向けに販売する会社でしたが、農家さんや農協から商品が送られてくるため、Eコマースプラットフォームで販売すると、請求書が農協や農家さんから送られてくることになります。
請求書は全て紙媒体で、FAXや郵送などで届き、PDFの請求書もあったかと思いますが、その請求書の処理に多くの時間を取られてしまい、経営に集中できない状態になってしまいました。
デジタル化されていれば良いのにと思い、会計ベンダーさんに相談しましたが、紙媒体の請求書を完全にデジタル化することは不可能だと言われ、それならば自分でやってみようと考え、会社を売却し、ファーストアカウンティングを創業しました。
はじめにエンジニアを探し、まず松田(共同創業者兼CTO)を迎え、次に画像処理技術研究者の藤武が参画し、さらにAIエンジニアの葛が加わりました。この3人が共同創業者です。
創業当初のターゲットは会計ベンダー様でした。通帳をスキャナーで読み取ってデジタル化するサービスを開発し、会計ベンダーさんに販売したのが最初の商売です。
その後、領収書や請求書の読み込みを開始し、AIモジュールを作り、OBC様やTKC様などの会計ベンダー企業へ提供しています。
会計ベンダーのサービスの一部に、弊社のAIモジュールが組み込まれているという形です。
このビジネスモデルは現在も継続しております。
しかし、会計ベンダーさんは大手でも30社程度しかなく、スケールしづらいという課題がありました。
多くのの会計ベンダーさんに導入していただいていますが、スケールしないという状況です。
そのような中で、某大企業様の案件の入札に参加することになりました。
他社も参加する中で、1年ほどかけて入札が行われ、最終的に、弊社が落札しました。
この案件を受注できたことで、他のお客様にも販売できるのではないかという感触を得て、大企業への展開を開始しました。
取材者:
大企業様のコンペで、競合他社ではなく、貴社が選ばれた決め手は何だったのですか?
回答者:
現在も継続している弊社の強みですが、まず、精度の高さが挙げられます。
弊社は経理業務に特化しており、AIは学習すればするほど進化しますが、経理、特に領収書や請求書に特化することで、より深く学習させることができ、精度を高めることが可能です。
また、読み取りだけでなく、照合もAIが自動で行っています。
請求書を受け取った後、請求書の送付元がベンダー登録されているかどうか、会社名、住所、銀行口座情報などを確認し、二重処理や不正がないかどうかもAIでチェックできます。
このような多岐にわたる照合をAIで実現していることも、弊社の強みとなっています。
一方、競合他社を含め、経理に特化している会社は、少なくとも日本国内にはありません。
多くの会社は汎用型のAIで、ChatGPTなども同様です。
汎用型AIは、対応できる範囲は広いものの、どうしても精度が浅くなってしまいます。
弊社は、創業時から経理に特化することを決めており、今後も当面の間は経理のみに特化して事業を進めていく方針です。
これが弊社の強みになっています。
2020年、新型コロナウイルス感染症が拡大し、多くの企業がリモートワークに移行しました。
弊社では、2020年前半は問い合わせが全くなく、売上も既存のお客様からのもののみという状況でしたが、後半から状況が一変しました。
経理業務は、会社に出社しないとできないという認識が一般的でしたが、出社できない状況となり、多くの企業が対応に苦慮しました。
そのような中で、DXが加速し、弊社への問い合わせや、パートナー企業様からのお問い合わせが増えました。
請求書や領収書のデジタル化に加え、自動照合や、振り分け機能等、様々なAIを開発し、会計ソフト、ERPへのデータ連携、ワークフローシステムへの連携などのニーズに応えるサービスを販売いたしました。
現在、弊社では、経理領域でのシンギュラリティを実現しようとしています。
シンギュラリティとは、AIが人間の能力を超える時点を指しますが、経理業務においても、AIが人間の行う作業を代替し、さらに人間の能力を超えることを目指しています。
2024年度下期からは、「資本的支出判定AI」をはじめとする、固定資産化すべきか修繕費として処理すべきかの判断や、会議費と交際費の区分判定など、経理部門で求められる高度な判断業務を担うAIを開発しています。今後、こうした機能を備えたAIを「経理シンギュラリティ」関連の商品として、さらに開発・販売を拡大していく予定です。
弊社は、会計領域において、どこまでも深く事業を展開していくことを目指しており、そのために生成AI技術も活用しています。
独自の大規模言語モデルを、自社でゼロから開発していることも、弊社の特徴と言えるかもしれません。
多くの企業は、OpenAIやGoogleのLLMを導入し、チューニングして販売していますが、それではChatGPTなどのサービスを超えることは難しいと考え、独自開発に至りました。
取材者:
独自開発の大規模言語モデルも、経理に特化しているのですか?
回答者:
その通りです。
経理以外のデータは一切学習させていません。
他の領域に広げると、弊社の強みが薄れてしまうと考えています。
弊社のビジネスモデルは、会計ベンダーさん経由で中小企業のお客様に販売するルートと、大企業のお客様に直販とパートナーセールスの2つのルートで販売する、合計3つのルートがあります。
2024年度の第4四半期時点では、直販が39%、パートナー経由が30%、会計ベンダーさんが31%という内訳でした。
少なくとも現時点では、この会計ベンダーさんとパートナーさんと直販の3つのルートに均等に力を入れていこうとしており、営業を採用すると、この3部門のいずれかに配属されます。
弊社のお客様は、業種業態を問いません。例えば、味の素さん、伊藤ハムさん、日清さんのような食品メーカー様や、旭化成さんのような化学メーカー様、オムロンさん、京セラさんのような電子部品メーカー様、また、サイバーエージェントさんのようなインターネット関連企業様など、様々な業種の企業様にご導入いただいております。
大企業のお客様へのセールスのうち、パートナー経由での案件も多く、大手システムインテグレーター様や、大手コンサルティングファーム様などがパートナーとなっていただいています。
システムインテグレーター様は、例えば、日本アイ・ビー・エム様やNTTデータグループ様などで、コンサルティングファーム様は、アクセンチュア様、アビーム様、デロイトトーマツ様などです。
彼らは様々な大企業のお客様に密着しており、経理・会計関連の案件を弊社に紹介してくださいます。弊社は、パートナー企業様と共同で提案を行い、受注に至った場合は、パートナー企業様が導入コンサルティングや、システムのセットアップなどを行って下さいます。
具体的には、AIを業務に組み込むコンサルティングや、弊社のモジュールをSAP、Oracle、または自社開発のERPなどに組み込んでいく設定を行います。
取材者:
ビジネスモデルについて、収益の構造についてもご説明いただけますか?
回答者:
収益構造ですが、1顧客あたりの平均月額収益は、過去から100万円前後で推移しています。
導入年数別で見ると、1年目は60万円、2年目で少し上がり、3年目に150万円へと大きく伸びる傾向があります(2024年度末時点)。
これは、ご利用いただくサービスが増えることと、サービスを追加していただくケースが増えることが理由です。
弊社の収益は、ユーザー数ではなく、読み込んだ書類の枚数によって課金されるため、ご利用いただく量が増えるほど、収益も増加します。
また、最初は一部の部署のみで利用を開始し、徐々に利用範囲を拡大していくお客様も多く、その場合も利用量の増加に伴い、収益が増加します。
お客様によっては、特定のサービスのみを継続して利用されるケースもあります。
弊社の特徴についてですが、過去に大手企業さまの案件を受注できた理由として、OCRだけでなく、個々の経理業務を効率化するAIモジュールを開発していることが挙げられます。
具体的には、郵送物の仕分け、書類の切り取り、照合、不正検知、仕訳、検算など、経理担当者が手作業で行っていた様々な業務をAIで自動化しています。
弊社は、AIモジュールだけでなく、ユーザーインターフェースである「Remota」というGUIも提供しています。
また、デジタルインボイスの送受信に必要なPeppolアクセスポイントも販売しており、これらが弊社の主要な製品となっています。
取材者:
「Remota」は、どのようなお客様が利用されるのですか?
回答者:
「Remota」は、主に大企業のお客様にご利用いただいています。
経理担当者の方だけでなく、経費申請を行う社員の方も利用します。
会計ベンダーさんは、自社のインターフェースでサービスを提供しているため、弊社の「Remota」はご利用になりません。
取材者:
貴社のシステムを導入することで、どれくらいの業務効率化が期待できますか?
回答者:
お客様によって状況は異なりますが、初めての大企業のお客様にご導入いただいた際には、経理部門の人数を80数名から20名程度に削減することができました。
ある消費財メーカーのお客様の場合は、以前会計処理を中国の大連チームにBPO委託されていましたが、内製化と同時に弊社のAIシステムを導入することで、業務効率を4割から5割程度改善することができました。
取材者:
BPO委託先から貴社のシステムに切り替えたことで、それほど効率化できたということですね。
回答者:
その通りです。
人間が行っていた作業をAI化したことで、効率化を実現しました。
AIは、学習を重ねることで精度が向上し、ミスも減らすことができます。
また、経理部門の人材不足が深刻化していることも、弊社のシステム導入を後押しする要因となっています。経理業務は、コンプライアンス対応や決算の早期化など、業務量が増加する一方で、人材確保が難しい状況です。弊社のシステムは、このような課題解決に貢献しています。
取材者:
大企業ほど、業務が複雑化し、効率化のニーズも高まるということですね。
回答者:
おっしゃる通りです。大企業では、請求書のチェック項目が多く、手作業での作業負担が大きいため、AIによる自動化のニーズが高いと言えます。
また、グループ会社が多いほど、決算業務も複雑化するため、弊社のシステムが有効です。
弊社は、年商500億円以上の大企業をターゲットに、事業を展開しています。
取材者:
人材採用についてですが、貴社ではどのような戦略や方針をお持ちですか?また、育成戦略についても教えていただけますか?
回答者:
採用戦略についてですが、営業職、開発職ともに、入社のプロセスの中で試験を設けています。
そのため、入社のハードルは高い方だと思います。
弊社は、チームワークを重視しており、入社前に会社の雰囲気を理解していただくために、月に1回実施している社内の懇親会に参加いただくこともあります。
もちろん参加は任意ですが、会社の雰囲気を知る良い機会になっていると思います。
入社後の教育について。初めに、弊社は、営業利益率10%の確保を目標としております。
SaaSビジネスであるため、毎期10%を必ず超えるわけではありませんが、通年で10%を超える分は研究開発と人材育成に投資しています。
2024年度の例としては、開発エンジニアのうち、特に優秀でAIエンジニアへの希望があったエンジニアを社内でトレーニングし、数名のAIエンジニアを育成しました。
外部から採用するだけでなく、自社で育成することも重視しています。
取材者:
成長投資というお話が出ましたが、今後の成長戦略について教えていただけますか?
回答者:
成長戦略は、大きく2つあります。
1つ目は、アメリカへの進出です。
今年から本格的に事業を開始しており、来年、遅くとも再来年からは収益に貢献できると期待しています。アメリカ市場は、日本市場の6倍から7倍の規模があり、成長が期待できます。
営業体制については、責任者にエンタープライズSaaSについて知見が深いFrisby氏を指名し、現在OJT中。成功の可能性は高いと考えています。
2つ目は、経理シンギュラリティの推進です。これまでのAI製品から進化し、過去の経緯や個社別の会計ポリシーも含めた高度な判断が可能なAIです。
AIによる経理業務の完全自動化を目指し、開発と販売を加速させていきます。
この2点が、弊社の成長戦略の柱となります。
取材者:
今後の収益計画について、もう少し詳しく教えていただけますか?
回答者:
現在、主力事業である債務処理の自動化は、年平均で32%の成長を続け、2028年度末には50億円を超える規模になると予測しています。
これに加え、経理シンギュラリティと海外事業が、来年から収益に貢献し始め、さらなる成長を目指します。
現在、プラットフォーム領域の新規サービスも企画中です。
取材者:
2024年12月期は、導入企業数が30社ほど増加したとのことですが、要因について教えていただけますか?
回答者:
2023年1月時点で、営業組織を変更しました。
それまでは、1人の営業担当者が新規顧客開拓と既存顧客のフォローを両方担当していましたが、新規顧客開拓チームと既存顧客営業チームに分けました。
これにより、新規顧客開拓に注力できるようになり、導入企業数が増加しました。
取材者:
2023年9月に上場されましたが、上場の目的について教えていただけますか?
回答者:
上場の目的は、大きく3つあります。
1つ目は、市場からの信頼を得ることです。大企業のお客様は、取引先の選定基準が厳しく、上場企業でないと長期契約を結びにくいため、上場によって信頼性を高める必要がありました。
2つ目は、採用力の強化です。人材不足が深刻化する中で、上場企業であることは、優秀な人材を獲得するための強みになります。
3つ目は、資金調達です。大規模言語モデルの自社開発には多額の資金が必要であり、上場によって資金調達を円滑に進めることが可能になります。
取材者:
最後に、株主還元策について、方針などございましたら教えていただけますか?
回答者:
株主の皆様への利益還元は、重要な経営課題の一つと考えております。
キャピタルゲインはもちろんのこと、配当についても、2024年度は配当性向10%で実施しており、2025年度は20%への引き上げも検討しております。
グロース企業でありながら、配当を実施していることは、投資家の皆様からも評価していただけると考えております。
取材者:
上場後、投資家様からの反響はいかがですか?
回答者:
上場後、特にIPO直後は、多くの投資家様から面談のお申し込みをいただきました。
現在では40~50社ほど取材依頼があり、最近では、海外の投資家様からのお問い合わせも増えており、大変嬉しく思っております。
ビジネスモデルや事業内容
ファーストアカウンティングは、経理業務に特化したAIソリューションを提供している。紙媒体の請求書や領収書をデジタル化し、生成AI技術を活用して、自動照合・仕訳・検算などの一連の経理プロセスを自動化するサービスを展開中。主な顧客層は、会計ベンダー経由の中小企業および大企業であり、大企業向けには直販とパートナーセールスの二つのルートを通じて提供。さらにAIの継続的な進化により、固定資産の判定や会議費・交際費の区分など、高度な判断が求められる業務にも対応した製品群の開発・提供を進めており、「経理シンギュラリティ」の実現を目指している。
創業の経緯と転機となった出来事
創業者の森が、前職のEコマース事業で紙の請求書処理に苦慮した経験から、経理業務のデジタル化・自動化を志し、当社を設立。会計ベンダー向けにサービスを提供し実績を積む中、大手企業のコンペでの受注を契機に、大企業向けビジネスへと展開を拡大した。
特徴や強み
同社の強みは、経理業務に特化したAIを開発・提供しており、証憑の高精度な読み取りに加え、仕訳・照合・不正検知まで自動化できる点。近年は、固定資産判定や費用区分などの高度な経理判断にも対応。汎用型ではなく経理専用AIであることが、他社にはない差別化要因となっている。
成長戦略
成長戦略の柱は、アメリカへの進出と、経理シンギュラリティの推進の2点である。アメリカ市場での事業展開を本格化させ、収益拡大を目指す方針である。同時に、AIによる経理業務の完全自動化を目指し、開発と販売を加速させる。
株主還元策
株主への利益還元を重要な経営課題と位置づけ、キャピタルゲインに加え、配当も実施している。2024年度は配当性向10%で実施しており、2025年度は20%への引き上げも検討している。
直近の決算状況
2024年12月期は、導入企業数が30社ほど増加している。これは、既存顧客対応と新規顧客開拓のチームを分けたことで、新規顧客の開拓に専念できるようになったことが主な要因である。
上場の目的
上場の目的は、市場からの信頼獲得、採用力の強化、資金調達の3点である。大企業との取引における信頼性を高め、優秀な人材の獲得、大規模言語モデル開発に必要な資金調達を円滑に進めることを目指している。
今後の収益計画
主力事業である債務処理の自動化は、年32%の成長を継続し、2028年度末には50億円を超える規模になると予測している。これに加え、経理シンギュラリティと海外事業が、2026年度から収益に貢献し始め、さらなる成長を目指す。
IR担当

ファーストアカウンティング(株)
東証GRT 5588
決算:12月末日
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:弊社のAIは経理業務に特化しており、証憑の読み取りだけでなく、会社名・住所・口座情報の照合や、不正・二重処理の検知まで自動化できる点が特徴です。汎用型AIではなく、経理専用AIとして精度と判断力を高めていることが、大きな優位性となっております。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)は何でしょうか。
A:弊社の成長戦略は、大きく2つの柱がございます。1つ目は、アメリカへの進出です。アメリカ市場は非常に大きく、成長が期待できます。2つ目は、経理シンギュラリティの推進です。AIによる経理業務の完全自動化を目指し、開発と販売を加速させてまいります。
Q:業績の増減要因をご説明ください。
A:2024年12月期は、導入企業数が30社ほど増加いたしました。これは、2024年初頭に営業組織を変更し、新規顧客開拓チームと既存顧客営業チームに分けたことが要因です。これにより、新規顧客開拓に注力できる体制となり、導入企業数の増加につながりました。既存顧客へのアップセル・クロスセルも順調に進んだことも大きな要因です。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:株主の皆様への利益還元は、重要な経営課題の一つと考えております。キャピタルゲインはもちろんのこと、配当についても、2024年度は配当性向10%で実施しており、2025年度は20%への引き上げも検討しております。グロース企業でありながら、配当を実施していることは、投資家の皆様からも評価していただけると考えております。
取材者:
貴社のビジネスモデルや事業内容、特徴、強みなどについて、ご説明いただけますか?
回答者:
会社の成り立ちについて、よくご質問をいただきます。
スタートアップ企業であることと、創業者が現在の社長であるという点、大株主かつ社長であるという点が、弊社の特徴かと存じます。
代表の森は、AkamaiというエンタープライズSaaS企業で営業をしておりました。
営業としてトップセールスの賞をグローバルで複数回受賞しています。
ダイレクト営業で実績を上げ、その後、食品のEコマースの会社を自分で立ち上げました。
食品のEコマースは、自然食品を妊婦さん向けに販売する会社でしたが、農家さんや農協から商品が送られてくるため、Eコマースプラットフォームで販売すると、請求書が農協や農家さんから送られてくることになります。
請求書は全て紙媒体で、FAXや郵送などで届き、PDFの請求書もあったかと思いますが、その請求書の処理に多くの時間を取られてしまい、経営に集中できない状態になってしまいました。
デジタル化されていれば良いのにと思い、会計ベンダーさんに相談しましたが、紙媒体の請求書を完全にデジタル化することは不可能だと言われ、それならば自分でやってみようと考え、会社を売却し、ファーストアカウンティングを創業しました。
はじめにエンジニアを探し、まず松田(共同創業者兼CTO)を迎え、次に画像処理技術研究者の藤武が参画し、さらにAIエンジニアの葛が加わりました。この3人が共同創業者です。
創業当初のターゲットは会計ベンダー様でした。通帳をスキャナーで読み取ってデジタル化するサービスを開発し、会計ベンダーさんに販売したのが最初の商売です。
その後、領収書や請求書の読み込みを開始し、AIモジュールを作り、OBC様やTKC様などの会計ベンダー企業へ提供しています。
会計ベンダーのサービスの一部に、弊社のAIモジュールが組み込まれているという形です。
このビジネスモデルは現在も継続しております。
しかし、会計ベンダーさんは大手でも30社程度しかなく、スケールしづらいという課題がありました。
多くのの会計ベンダーさんに導入していただいていますが、スケールしないという状況です。
そのような中で、某大企業様の案件の入札に参加することになりました。
他社も参加する中で、1年ほどかけて入札が行われ、最終的に、弊社が落札しました。
この案件を受注できたことで、他のお客様にも販売できるのではないかという感触を得て、大企業への展開を開始しました。
取材者:
大企業様のコンペで、競合他社ではなく、貴社が選ばれた決め手は何だったのですか?
回答者:
現在も継続している弊社の強みですが、まず、精度の高さが挙げられます。
弊社は経理業務に特化しており、AIは学習すればするほど進化しますが、経理、特に領収書や請求書に特化することで、より深く学習させることができ、精度を高めることが可能です。
また、読み取りだけでなく、照合もAIが自動で行っています。
請求書を受け取った後、請求書の送付元がベンダー登録されているかどうか、会社名、住所、銀行口座情報などを確認し、二重処理や不正がないかどうかもAIでチェックできます。
このような多岐にわたる照合をAIで実現していることも、弊社の強みとなっています。
一方、競合他社を含め、経理に特化している会社は、少なくとも日本国内にはありません。
多くの会社は汎用型のAIで、ChatGPTなども同様です。
汎用型AIは、対応できる範囲は広いものの、どうしても精度が浅くなってしまいます。
弊社は、創業時から経理に特化することを決めており、今後も当面の間は経理のみに特化して事業を進めていく方針です。
これが弊社の強みになっています。
2020年、新型コロナウイルス感染症が拡大し、多くの企業がリモートワークに移行しました。
弊社では、2020年前半は問い合わせが全くなく、売上も既存のお客様からのもののみという状況でしたが、後半から状況が一変しました。
経理業務は、会社に出社しないとできないという認識が一般的でしたが、出社できない状況となり、多くの企業が対応に苦慮しました。
そのような中で、DXが加速し、弊社への問い合わせや、パートナー企業様からのお問い合わせが増えました。
請求書や領収書のデジタル化に加え、自動照合や、振り分け機能等、様々なAIを開発し、会計ソフト、ERPへのデータ連携、ワークフローシステムへの連携などのニーズに応えるサービスを販売いたしました。
現在、弊社では、経理領域でのシンギュラリティを実現しようとしています。
シンギュラリティとは、AIが人間の能力を超える時点を指しますが、経理業務においても、AIが人間の行う作業を代替し、さらに人間の能力を超えることを目指しています。
2024年度下期からは、「資本的支出判定AI」をはじめとする、固定資産化すべきか修繕費として処理すべきかの判断や、会議費と交際費の区分判定など、経理部門で求められる高度な判断業務を担うAIを開発しています。今後、こうした機能を備えたAIを「経理シンギュラリティ」関連の商品として、さらに開発・販売を拡大していく予定です。
弊社は、会計領域において、どこまでも深く事業を展開していくことを目指しており、そのために生成AI技術も活用しています。
独自の大規模言語モデルを、自社でゼロから開発していることも、弊社の特徴と言えるかもしれません。
多くの企業は、OpenAIやGoogleのLLMを導入し、チューニングして販売していますが、それではChatGPTなどのサービスを超えることは難しいと考え、独自開発に至りました。
取材者:
独自開発の大規模言語モデルも、経理に特化しているのですか?
回答者:
その通りです。
経理以外のデータは一切学習させていません。
他の領域に広げると、弊社の強みが薄れてしまうと考えています。
弊社のビジネスモデルは、会計ベンダーさん経由で中小企業のお客様に販売するルートと、大企業のお客様に直販とパートナーセールスの2つのルートで販売する、合計3つのルートがあります。
2024年度の第4四半期時点では、直販が39%、パートナー経由が30%、会計ベンダーさんが31%という内訳でした。
少なくとも現時点では、この会計ベンダーさんとパートナーさんと直販の3つのルートに均等に力を入れていこうとしており、営業を採用すると、この3部門のいずれかに配属されます。
弊社のお客様は、業種業態を問いません。例えば、味の素さん、伊藤ハムさん、日清さんのような食品メーカー様や、旭化成さんのような化学メーカー様、オムロンさん、京セラさんのような電子部品メーカー様、また、サイバーエージェントさんのようなインターネット関連企業様など、様々な業種の企業様にご導入いただいております。
大企業のお客様へのセールスのうち、パートナー経由での案件も多く、大手システムインテグレーター様や、大手コンサルティングファーム様などがパートナーとなっていただいています。
システムインテグレーター様は、例えば、日本アイ・ビー・エム様やNTTデータグループ様などで、コンサルティングファーム様は、アクセンチュア様、アビーム様、デロイトトーマツ様などです。
彼らは様々な大企業のお客様に密着しており、経理・会計関連の案件を弊社に紹介してくださいます。弊社は、パートナー企業様と共同で提案を行い、受注に至った場合は、パートナー企業様が導入コンサルティングや、システムのセットアップなどを行って下さいます。
具体的には、AIを業務に組み込むコンサルティングや、弊社のモジュールをSAP、Oracle、または自社開発のERPなどに組み込んでいく設定を行います。
取材者:
ビジネスモデルについて、収益の構造についてもご説明いただけますか?
回答者:
収益構造ですが、1顧客あたりの平均月額収益は、過去から100万円前後で推移しています。
導入年数別で見ると、1年目は60万円、2年目で少し上がり、3年目に150万円へと大きく伸びる傾向があります(2024年度末時点)。
これは、ご利用いただくサービスが増えることと、サービスを追加していただくケースが増えることが理由です。
弊社の収益は、ユーザー数ではなく、読み込んだ書類の枚数によって課金されるため、ご利用いただく量が増えるほど、収益も増加します。
また、最初は一部の部署のみで利用を開始し、徐々に利用範囲を拡大していくお客様も多く、その場合も利用量の増加に伴い、収益が増加します。
お客様によっては、特定のサービスのみを継続して利用されるケースもあります。
弊社の特徴についてですが、過去に大手企業さまの案件を受注できた理由として、OCRだけでなく、個々の経理業務を効率化するAIモジュールを開発していることが挙げられます。
具体的には、郵送物の仕分け、書類の切り取り、照合、不正検知、仕訳、検算など、経理担当者が手作業で行っていた様々な業務をAIで自動化しています。
弊社は、AIモジュールだけでなく、ユーザーインターフェースである「Remota」というGUIも提供しています。
また、デジタルインボイスの送受信に必要なPeppolアクセスポイントも販売しており、これらが弊社の主要な製品となっています。
取材者:
「Remota」は、どのようなお客様が利用されるのですか?
回答者:
「Remota」は、主に大企業のお客様にご利用いただいています。
経理担当者の方だけでなく、経費申請を行う社員の方も利用します。
会計ベンダーさんは、自社のインターフェースでサービスを提供しているため、弊社の「Remota」はご利用になりません。
取材者:
貴社のシステムを導入することで、どれくらいの業務効率化が期待できますか?
回答者:
お客様によって状況は異なりますが、初めての大企業のお客様にご導入いただいた際には、経理部門の人数を80数名から20名程度に削減することができました。
ある消費財メーカーのお客様の場合は、以前会計処理を中国の大連チームにBPO委託されていましたが、内製化と同時に弊社のAIシステムを導入することで、業務効率を4割から5割程度改善することができました。
取材者:
BPO委託先から貴社のシステムに切り替えたことで、それほど効率化できたということですね。
回答者:
その通りです。
人間が行っていた作業をAI化したことで、効率化を実現しました。
AIは、学習を重ねることで精度が向上し、ミスも減らすことができます。
また、経理部門の人材不足が深刻化していることも、弊社のシステム導入を後押しする要因となっています。経理業務は、コンプライアンス対応や決算の早期化など、業務量が増加する一方で、人材確保が難しい状況です。弊社のシステムは、このような課題解決に貢献しています。
取材者:
大企業ほど、業務が複雑化し、効率化のニーズも高まるということですね。
回答者:
おっしゃる通りです。大企業では、請求書のチェック項目が多く、手作業での作業負担が大きいため、AIによる自動化のニーズが高いと言えます。
また、グループ会社が多いほど、決算業務も複雑化するため、弊社のシステムが有効です。
弊社は、年商500億円以上の大企業をターゲットに、事業を展開しています。
取材者:
人材採用についてですが、貴社ではどのような戦略や方針をお持ちですか?また、育成戦略についても教えていただけますか?
回答者:
採用戦略についてですが、営業職、開発職ともに、入社のプロセスの中で試験を設けています。
そのため、入社のハードルは高い方だと思います。
弊社は、チームワークを重視しており、入社前に会社の雰囲気を理解していただくために、月に1回実施している社内の懇親会に参加いただくこともあります。
もちろん参加は任意ですが、会社の雰囲気を知る良い機会になっていると思います。
入社後の教育について。初めに、弊社は、営業利益率10%の確保を目標としております。
SaaSビジネスであるため、毎期10%を必ず超えるわけではありませんが、通年で10%を超える分は研究開発と人材育成に投資しています。
2024年度の例としては、開発エンジニアのうち、特に優秀でAIエンジニアへの希望があったエンジニアを社内でトレーニングし、数名のAIエンジニアを育成しました。
外部から採用するだけでなく、自社で育成することも重視しています。
取材者:
成長投資というお話が出ましたが、今後の成長戦略について教えていただけますか?
回答者:
成長戦略は、大きく2つあります。
1つ目は、アメリカへの進出です。
今年から本格的に事業を開始しており、来年、遅くとも再来年からは収益に貢献できると期待しています。アメリカ市場は、日本市場の6倍から7倍の規模があり、成長が期待できます。
営業体制については、責任者にエンタープライズSaaSについて知見が深いFrisby氏を指名し、現在OJT中。成功の可能性は高いと考えています。
2つ目は、経理シンギュラリティの推進です。これまでのAI製品から進化し、過去の経緯や個社別の会計ポリシーも含めた高度な判断が可能なAIです。
AIによる経理業務の完全自動化を目指し、開発と販売を加速させていきます。
この2点が、弊社の成長戦略の柱となります。
取材者:
今後の収益計画について、もう少し詳しく教えていただけますか?
回答者:
現在、主力事業である債務処理の自動化は、年平均で32%の成長を続け、2028年度末には50億円を超える規模になると予測しています。
これに加え、経理シンギュラリティと海外事業が、来年から収益に貢献し始め、さらなる成長を目指します。
現在、プラットフォーム領域の新規サービスも企画中です。
取材者:
2024年12月期は、導入企業数が30社ほど増加したとのことですが、要因について教えていただけますか?
回答者:
2023年1月時点で、営業組織を変更しました。
それまでは、1人の営業担当者が新規顧客開拓と既存顧客のフォローを両方担当していましたが、新規顧客開拓チームと既存顧客営業チームに分けました。
これにより、新規顧客開拓に注力できるようになり、導入企業数が増加しました。
取材者:
2023年9月に上場されましたが、上場の目的について教えていただけますか?
回答者:
上場の目的は、大きく3つあります。
1つ目は、市場からの信頼を得ることです。大企業のお客様は、取引先の選定基準が厳しく、上場企業でないと長期契約を結びにくいため、上場によって信頼性を高める必要がありました。
2つ目は、採用力の強化です。人材不足が深刻化する中で、上場企業であることは、優秀な人材を獲得するための強みになります。
3つ目は、資金調達です。大規模言語モデルの自社開発には多額の資金が必要であり、上場によって資金調達を円滑に進めることが可能になります。
取材者:
最後に、株主還元策について、方針などございましたら教えていただけますか?
回答者:
株主の皆様への利益還元は、重要な経営課題の一つと考えております。
キャピタルゲインはもちろんのこと、配当についても、2024年度は配当性向10%で実施しており、2025年度は20%への引き上げも検討しております。
グロース企業でありながら、配当を実施していることは、投資家の皆様からも評価していただけると考えております。
取材者:
上場後、投資家様からの反響はいかがですか?
回答者:
上場後、特にIPO直後は、多くの投資家様から面談のお申し込みをいただきました。
現在では40~50社ほど取材依頼があり、最近では、海外の投資家様からのお問い合わせも増えており、大変嬉しく思っております。
ビジネスモデルや事業内容
ファーストアカウンティングは、経理業務に特化したAIソリューションを提供している。紙媒体の請求書や領収書をデジタル化し、生成AI技術を活用して、自動照合・仕訳・検算などの一連の経理プロセスを自動化するサービスを展開中。主な顧客層は、会計ベンダー経由の中小企業および大企業であり、大企業向けには直販とパートナーセールスの二つのルートを通じて提供。さらにAIの継続的な進化により、固定資産の判定や会議費・交際費の区分など、高度な判断が求められる業務にも対応した製品群の開発・提供を進めており、「経理シンギュラリティ」の実現を目指している。
創業の経緯と転機となった出来事
創業者の森が、前職のEコマース事業で紙の請求書処理に苦慮した経験から、経理業務のデジタル化・自動化を志し、当社を設立。会計ベンダー向けにサービスを提供し実績を積む中、大手企業のコンペでの受注を契機に、大企業向けビジネスへと展開を拡大した。
特徴や強み
同社の強みは、経理業務に特化したAIを開発・提供しており、証憑の高精度な読み取りに加え、仕訳・照合・不正検知まで自動化できる点。近年は、固定資産判定や費用区分などの高度な経理判断にも対応。汎用型ではなく経理専用AIであることが、他社にはない差別化要因となっている。
成長戦略
成長戦略の柱は、アメリカへの進出と、経理シンギュラリティの推進の2点である。アメリカ市場での事業展開を本格化させ、収益拡大を目指す方針である。同時に、AIによる経理業務の完全自動化を目指し、開発と販売を加速させる。
株主還元策
株主への利益還元を重要な経営課題と位置づけ、キャピタルゲインに加え、配当も実施している。2024年度は配当性向10%で実施しており、2025年度は20%への引き上げも検討している。
直近の決算状況
2024年12月期は、導入企業数が30社ほど増加している。これは、既存顧客対応と新規顧客開拓のチームを分けたことで、新規顧客の開拓に専念できるようになったことが主な要因である。
上場の目的
上場の目的は、市場からの信頼獲得、採用力の強化、資金調達の3点である。大企業との取引における信頼性を高め、優秀な人材の獲得、大規模言語モデル開発に必要な資金調達を円滑に進めることを目指している。
今後の収益計画
主力事業である債務処理の自動化は、年32%の成長を継続し、2028年度末には50億円を超える規模になると予測している。これに加え、経理シンギュラリティと海外事業が、2026年度から収益に貢献し始め、さらなる成長を目指す。
IR担当