20250415
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:弊社の特徴といたしましては、まず、医薬品原薬事業を主力としている点が挙げられます。海外からの輸入と自社での製造どちらも行っており、お客様の求める原薬に合わせてご提案ができます。
次に、化学品事業においては、他社の水処理メーカー様があまり注力されないような、ニッチな分野、例えば、薬品の精製や排水処理など一般的な純水用途以外の処理も得意としており、専門性の高い技術力を有している点が強みでございます。
お客様の多様なニーズに応じて、各種メーカーのイオン交換樹脂等を選定し最適なソリューションをご提供できる技術力が弊社の優位性と認識しております。また、必要に応じ海外メーカーと共同で新たな樹脂を開発するメーカー的側面も持ち合わせています。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?
A:弊社の成長戦略のポイントといたしましては、全事業において成長を目指すという点が根幹にございます。
医薬品事業におきましては、自社開発品の開発パイプラインを充実させ、継続的に新製品を上市することで、安定的な成長の実現を目指してまいります。
健康食品事業および化学品事業につきましては、収益性の改善を重要な課題と位置付けており、特に化学品事業では、PFAS(有機フッ素化合物)関連事業など新たな分野に向けた製品の開発を継続的に行い、収益の柱を育成していくことが、今後の成長を牽引する上で、極めて重要な戦略であると考えております。
Q:業績の増減要因をご説明ください。
A:弊社の業績の増減要因につきましては、各事業の状況、市場環境、並びに費用等の要因が複合的に影響している状況でございます。
医薬品事業においては、主力原薬の売上高に減少傾向が見られる一方で、輸入原薬・自社製造品ともに取り扱い品目を増やしていくことで、全体としての売上高は維持するよう努めております。
健康食品事業は、過去の主力製品の減少という厳しい状況から回復基調にありますが、製品ライフサイクルの短さが、依然としてリスク要因として存在いたします。
化学品事業につきましては、これまで当社が参入していない新たな分野への投資回収が進捗し、収益性が改善傾向にあると認識しております。
全体といたしましては、販売費、開発費、人件費の増加が利益率に影響を与えています。為替変動も業績に影響を与える要因の一つでございますが、取引先と為替の変動に応じた取り決めを行い、影響を抑えられるよう対策をしています。
Q:受注・競合状況は如何でしょうか?
A:健康食品事業における受注状況といたしましては、大手メーカー様から中堅・中小メーカー様まで、幅広い規模の企業様とお取引をさせていただいております。
化学品事業における競合状況につきましては、強いて言えばオルガノ様、栗田工業様などの大手メーカー様が挙げられますが、弊社はニッチな分野に特化することで、差別化を図っている状況でございます。
Q:中期事業計画の内容や進捗状況等をご説明ください。
A:新たな中期事業計画につきましては、株主総会までのご報告を目指し、現在策定を進めている段階でございます。計画の具体的な内容につきましては、誠に恐縮ながら、現時点では開示を控えさせていただきますが、全事業において成長を目指すという基本方針に変更はございません。
Q:株主還元の方針をご説明ください?
A:株主還元の方針につきましても、現在、慎重に検討を重ねているところでございます。現時点での具体的な方針についてのお答えは差し控えさせていただきますが、配当性向を意識しつつ、20%以上の水準を維持し、安定的な配当を継続していくという考え方に、変わりはございません。
取材者:よろしくお願いいたします。今回、初めて貴社を取材させていただきますので、基本的な事項も含め、お伺いいたします。
まず、短期的な業績の動向についてですが、直近の四半期決算では、営業利益が36%増益と、非常に好調な数字が示されました。
念のため、2022年5月期からの業績を振り返りますと、2022年5月期の営業利益は4億3,700万円、営業利益率は7.69%という高い水準でしたが、今期は、第3四半期までの9か月間で7.097%まで回復しています。
貴社の事業は、医薬品、健康食品、化学品の3つのセグメントで構成されていますが、健康食品と化学品の利益率がやや低いように見受けられます。
この点も含め、中期的な展望などを後ほどお伺いしたいと思いますが、まず、2022年5月期の営業利益が過去最高であったという理解でよろしいでしょうか。
回答者:はい、そのように認識しております。
取材者:当時の業績が特に好調であった要因について、市場環境や貢献度の高かった製品などの観点からご説明いただけますか。
回答者:はい。当社は、医薬品の原薬事業を主力としております。
医薬品市場は、基本的に成熟しており、医薬品の特性上、市場規模が縮小することは考えにくいものの、お取引している製販様の動向により当社の売上も影響をうけます。また、薬価改定の影響もあり、最盛期と比較すると、主力の原薬の売上高がやや減少しているという点が一つございます。
また、2022年5月期当時と比較すると、現在は、販売費、開発費、人件費などの費用が増加しており、これらの要因により、利益率については、当時より経費面が増加しており、売上高を伸ばしてはいるものの、全体として以前ほどの利益率には至っていないという状況です。
取材者:主力製品である原薬は、どのような用途の医薬品の原薬ですか。
回答者:高カリウム血症向けの原薬でございます。
取材者:決算説明資料によりますと、原薬の売上高は3.3%減少している一方で、輸入原薬が増加していると記載されています。輸入原薬の内訳としては、抗ヘルペス治療薬用や抗炎症薬用などが挙げられていますが、全体として、原薬の売上高はほぼ横ばいという理解でよろしいですか。
回答者:はい、ほぼ横ばいとお考えいただいて結構です。
取材者:通期で見れば、それほど大きな影響はないということですね。
貴社としては、自社開発の原薬の成長を図りつつ、輸入原薬も活用することで、医薬品事業全体の収益性は、二桁を維持したいという戦略なのですか。
回答者:おっしゃるとおりです。詳細にご説明いたしますと、柏の医薬品開発センターにおいて、少量での原薬の合成試験を実施し、有償での試験も行いながら、量産化が可能となれば、自社設備を導入して本格的に販売するという方針でございます。
輸入原薬についても、新しい品目を海外から調達する際には、社内で各種試験を実施して品質を確認した後、医薬品製造販売の一変承認を取得する必要があるため、自社開発品と輸入原薬の販売開始時期を同時進行で進めながら、事業を推進しているという状況です。
取材者:輸入原薬は、一般的に、自社製造品と比較して利益率が低いということですか。
回答者:はい、そのとおりです。自社製造品と比較すると、輸入原薬の利益率は若干低い傾向にあります。
取材者:「若干」とのことですが、具体的に、どの程度の差があるのですか。
回答者:利益率は製品によって幅がありますが、平均してみると輸入原薬の方が自社製造品と比較して、利益率が低いとお考えください。
取材者:輸入原薬は、主にどの国から輸入しているのですか。
回答者:ヨーロッパ、インド、中国が中心です。
取材者:ヨーロッパからの輸入となると、為替変動のリスクなどが懸念されますが、その点について、貴社ではどのように対応されていますか。
回答者:為替変動のリスクはゼロではありませんが、仕入価格と販売価格の両面で為替調整を行うなど、リスクを緩和する対策を講じております。
取材者:
次に、健康食品事業についてですが、貴社は、スティックゼリータイプの健康食品の企画・開発・製造を中心としたOEM/ODM事業を展開されているという理解でよろしいですか。
回答者:はい、そのとおりです。
取材者:健康食品事業については、何か投資を行われた影響で、収益性が一時的に低下しているのですか。売上高は非常に伸びているようにお見受けしますが。
回答者:健康食品事業は、過去には高い収益性を誇っており、特に高付加価値の製品が好調でしたが、ここ数年一時的に主力製品がなくなった時期があり、新たな製品の受注獲得に注力した結果、最も厳しい時期は脱し、売上高も回復傾向にありますが、ピーク時の売上高は10億円を超えていたことを考えると、やっと復調の兆しが見えてきたと言えます。
取材者:受注案件の端境期は過ぎ、売上高は回復基調にあるという理解でよろしいですか。
回答者:はい、端境期は過ぎたと考えております。現在は、損益分岐点を超える水準まで回復しております。
取材者:今後、数年間で、収益性が大きく悪化する要因はないという見通しですか。
回答者:少なくとも、今後数年間で大きく悪化する要因はないと考えております。
ただし、健康食品業界は、製品のライフサイクルが短いため、医薬品とは異なり、ある日突然、売上高が急減するリスクがあります。そのため、工場稼働率を維持するためにも、常に新たなOEM/ODM製品を受注していく必要は変わりございません。
取材者:昨年度の決算説明資料によりますと、大型案件の寄与があったとのことですが、これは、どのようなタイプの健康食品なのですか。
回答者:はい、比較的年齢層の高い方をターゲットとした製品で、歩く力のサポートなどに効能がある健康食品でございます。
取材者:貴社とお取引のある健康食品メーカーは、大手が多いのですか。
回答者:大手メーカー様もございますし、中堅・中小メーカー様もございます。取引先の規模感に偏りはないと考えております。
取材者:承知いたしました。
次に、化学品事業についてお伺いします。化成品事業の主力は、イオン交換樹脂であると認識しておりますが、前年度の第3四半期までは赤字が継続していたものの、今期は黒字に転換しています。収益性が低迷していた理由について、ご説明いただけますか。
回答者:はい、化学品事業は、他社の水処理メーカー様があまり手掛けないような、ニッチな分野、例えば、薬品の精製や排水処理など一般的な純水用途以外の処理に注力しており、販売費のみならず、関連する商材の開発に積極的に投資を行ってきたため、費用がかさんでおりましたが、ようやく回収期に入ってきたという状況です。
売上高も徐々に伸びてきており、収益性が改善し始めたと考えております。
取材者:決算資料には、半導体向けが好調であること、電力会社から新たな案件を受注したことなどが記載されていますが、貴社の主力用途としては、やはり排水処理なのですか。
回答者:排水処理は、化学品事業の重要な用途の一つではございますが、主力というわけではございません。
最も一般的な用途としては、純水や超純水を生成する際の利用が挙げられます。
その他、例えば電力会社向けとしては、復水ろ過といって、水を循環させて発電に利用する際に、不純物を除去して配管の汚れを防止する用途や、半導体向けなどで薬品の純度を高める用途などにも用いられています。
排水処理への利用もございますが、こちらは、排水を法令で定められた基準値以下にして排出するといった用途などが中心となります。
売上高の構成比としては、純水製造や液体精製など、排水より前の段階で使用される案件の方が高く、排水処理向けは比較的少ないかもしれません。
取材者:イオン交換樹脂は、貴社で製造されているのですか。
回答者:主に海外メーカーからの輸入品です。
取材者:国内の大手メーカーもイオン交換樹脂を製造していると思いますが、貴社がニッチな分野に注力しているのは、競合との差別化を図るためですか。
回答者:おっしゃるとおりです。
国内メーカーとしては、三菱ケミカル様、活性炭では、荏原製作所様、分離膜については、東レ様、クボタ様などが挙げられます。
それらの国内メーカーの製品も含めた様々な製品から、より専門性の高いニッチな分野に対しても最適な提案できるというのが当社の技術力になります。
取材者:仕入先は、ヨーロッパのメーカーが多いのですか。それとも、アジア圏のメーカーが多いのですか。
回答者:ヨーロッパのメーカーもございますが、中国やインドなど、アジア圏のメーカーが中心です。
取材者:貴社が開発に力を入れているイオン交換樹脂は、大手樹脂メーカーではなく、比較的規模の小さいメーカーと共同で開発を進めているということですか。
回答者:はい、そのとおりです。イオン交換樹脂は非常に種類が多く、お客様は、どのような樹脂を選べば、目的とする水処理ができるのか、判断が難しいという課題があります。
そこで、当社では、お客様から処理対象について分析を行い、最適な処理方法をご提案するとともに、お客様のニーズに合致する樹脂がない場合には、海外メーカーと共同で開発を行い、市場に投入するという取り組みも行っております。
取材者:貴社は、商社的な立ち位置でありながら、メーカー的な側面も持ち合わせているということですね。化学品事業は、非常に多岐にわたる事業が含まれているため、理解が難しい部分があり、細かい点について質問してしまい、申し訳ございません。
回答者:いえ、とんでもございません。
取材者:今期の業績見通しについてですが、第3四半期までの進捗率が非常に高く、通期目標である4億5,000万円の達成は十分可能であるとお見受けしております。
ただし、今期は中期経営計画の最終年度であり、従来の目標値である6億円の達成については、前回の決算説明会資料を拝見したところ、「決して諦めてはいないが、できる限り近づけたい」というコメントをされていたと記憶しております。6億円の達成に対する現在の見通しについて、改めてお伺いできますか。
回答者:6億円の達成を目指すという気持ちはございますが、現時点では、達成は若干厳しいと考えております。ただし、4億5,000万円については、達成できるよう、推進して参ります。
具体的には、期末に向けて、決算処理に関連する費用は増加すると思われますが、収益面では、特に第3四半期は、業績が特に好調でしたが、四半期ごとの業績は変動するため、通期で見ると、業績予想の範囲内に落ち着くのではないかと考えております。
取材者:第3四半期だけを見ると、売上高、利益ともに非常に高い水準ですが、これは一過的な要因によるもので、第4四半期以降も同水準の業績が継続するとは考えにくいということですか。
回答者:はい、おっしゃるとおりです。売上計上のタイミングや、製品構成など、様々な要因が影響しております。
取材者:第3四半期並みの高い収益性が今後も継続すると期待することは、現実的ではないということですね。状況を注視してまいります。
来年度から、新たな中期経営計画が始まる予定とのことですが、現在、どのようなスケジュールで策定が進んでいるのですか。
回答者:順調に進めば、株主総会の前には発表できればと思いますが、現時点では、まだ具体的な時期は決定しておりません。
取材者:新たな中期経営計画においても、医薬品事業は、引き続き、安定的に成長していくという見通しでよろしいですか。
回答者:基本的には、全事業で成長を目指す方向で計画を立てたいと考えております。
取材者:健康食品事業と化学品事業については、利益率の改善を目指されると思いますが、健康食品事業のセグメント利益率について、過去の最高水準のセグメント利益率は、何%ぐらいだったのですか。
回答者:過去の最高水準は参考にはなりませんが、おそらく10%を超えているかどうかだと思います。ただし、健康食品の状況にもよりますが、少なくとも5%は超えたいと考えております。
取材者:当然、事業を行っている以上、コストをかけているわけです
から、その程度の利益は出さないと、事業部としては寂しい状況になりますよね。
回答者:そうですね。
取材者:健康食品事業は5%以上を目指しているということですが、化学品事業は、それを上回る水準を目指せる状況ですか。それとも、同じぐらいですか。
回答者:中長期的には、5%以上を狙えると思います。
取材者:中長期的には狙えるということですね。
回答者:はい。短期的には、付加価値の高い製品の開発には時間がかかりますし、開発が立ち上がったとしても、新たな開発案件に費用を投下すると、一時的にどうなるのかという予測は難しいです。しかし、中長期的には、付加価値の高い製品を市場に投入し、参入障壁の高い形で利益を確保していきたいと考えております。
取材者:承知いたしました。医薬品の場合、自社開発品の開発パイプラインがあり、上市時期の予測がある程度立つと思いますが、貴社の自社開発品は、今後、どのような流れになりそうですか。
回答者:おそらく、開発期間はお話を頂いてから、3~4年程度かかると思います。
取材者:現在開発中のものが上市されるのは、3年後ぐらいになるということでしょうか。
回答者:開発部門では、上市予定の製品を順次開発しておりますので、年度ごとに製品が立ち上がっていく予定です。
取材者:今年度も立ち上がった製品があるということですか。
回答者:ございます。
取材者:それは、開示できない情報ですか。
回答者:はい。医薬品については、もちろん上市されるものがない年度もありますが、大なり小なり、毎年上市されるものがあるという状況です。
取材者:ほぼ毎年上市されるものがあるというのは、非常に珍しいですね。
回答者:新薬ではない製品も含めて、取り扱いが増えているという状況です。
取材者:承知いたしました。当然、期待される大型の製品もあるかと思いますが、そのような製品が今後3年以内に出てくる可能性はあるのですか。
回答者:可能性はあると思っております。
取材者:貴社の定義として、医薬品の「大型」とは、売上高がいくら以上のものを指すのですか。
回答者:当社の規模感でいきますと、年間で5億円を超えたら「大型」と言えるのではないかと思います。
取材者:年間5億円以上が大型ということですね。そのような製品が、2、3年に1度あれば良いということでしょうか。
回答者:はい。楽しみな製品もありますが、医薬品は開発に時間がかかるため、上市時期が年単位でずれる可能性はあります。
取材者:医薬品メーカーには、開発テストのフェーズ1、フェーズ2、フェーズ3といった段階がありますが、貴社の原薬などは、これらの段階を経ているのですか。
回答者:当社では、新薬を創薬するというよりは、既存の化合物を基に、ジェネリック医薬品や先発医薬品などの元々ある医薬品に関する原薬を製造するケースが多いため、フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3という呼び方はあまりしておりません。
取材者:既存薬の合成が中心ということでしょうか。
回答者:はい。少量合成からパイロット試験、中規模の製品化試験、そして、実施計画調査を行い、お客様の安定性試験で問題がないと判断されれば、納入するというケースが、今のところ大半です。
取材者:昨今、ジェネリック医薬品メーカーでトラブルが発生し、需給がタイトになっている医薬品もあるようですが、それがボトルネックになっているということはないのですか。ジェネリック医薬品市場が拡大する一方で、メーカー側の製剤化にボトルネックが生じているという可能性はないのですか。
回答者:他社様の状況は分かりかねますが、当社には、その影響はあまりございません。
取材者:現在のジェネリック医薬品の需給がタイトな市場は、貴社にとって追い風であるという理解でよろしいですか。
回答者:そのように考えております。
取材者:今後も、多少の変動はあったとしても、医薬品事業が最も安定的に増収増益を見込めるということになるのですか。
回答者:そうですね。増収は当然目指しますが、増益については、一時的な需要や薬価の問題など、様々な要因により、瞬間的にはぶれる可能性はあるかと思います。
医薬品業界は、大きく売上高が下がるようなことはなく、ある程度の利益を生み出し続けることはできますが、多少の波はあると思います。
取材者:健康食品事業と化学品事業は、損益分岐点を超え、来期以降、着実に黒字を積み上げられるような体制になったと考えてよろしいですか。
回答者:はい。
取材者:貴社は、これまで投資や開発費の支出、人件費の増加などを行ってきたとのことですが、来期以降、大型の投資を行う可能性はあるのですか。
回答者:投資については、現在検討中でございます。まだ確定しておらず、現時点では開示できる情報はありません。
しかし、今後も収益が見込める案件があれば、設備投資を行っていくという姿勢は変わりません。
取材者:設備導入のリードタイムは、どのようにお考えでしょうか。
回答者:設備導入のリードタイムは、最短でも半年、長ければ1年程度かかるため、投資の決定は、案件の進捗具合を見ながら行うことになると思います。
取材者:ちなみに、今期の投資金額は、およそどのくらいですか。
回答者:詳細な金額は開示しておりませんが、およそ2、3億円程度ではないかと思います。
取材者:2、3億円程度ですか。
回答者:はい。ただし、その中には、インフラの更新費用なども含まれており、売上高を直接的に押し上げるための設備投資に限った金額ではございません。
取材者:承知いたしました。年間投資額はおよそ2、3億円程度で、5億まではいかないということですね。
回答者:はい。
取材者:固定費負担はキャッシュフローの範囲内で賄えるということでしょうか。
回答者:はい。固定費の負担はそれほど大きくなく、設備投資もキャッシュフローの範囲内で十分に賄える水準です。
取材者:承知いたしました。
株式市場で注目されているテーマの一つに、PFAS(有機フッ素化合物)に関する状況がありますが、これが貴社の収益に貢献し始めるのは、いつ頃になりそうですか。
回答者:PFAS関連の事業は、売上の規模感はまだ大きくはないのですが、着実に進展しており、来年には試験販売を含め、少しずつ売上高に貢献し始めると考えております。
取材者:主に、海外メーカーの製品を取り扱うということですか。
回答者:はい。
取材者:PFASについては、様々なメーカーが対応を進めており、活性炭メーカーも参入している状況です。活性炭は比較的安価ですが、高度な処理を行うにはイオン交換樹脂が必要となり、コストが高くなるという意見もあります。前処理で活性炭を使用しないと、トータルコストを抑えることが難しいという声も聞かれますが、貴社のPFAS対応製品の強みや、注力分野などはございますか。
回答者:当社がPFAS向けに考えているのは、イオン交換樹脂です。
ご指摘のとおり、活性炭、イオン交換樹脂、分離膜という選択肢があり、活性炭は比較的安価ですが、高度な処理を行うにはイオン交換樹脂が必要となり、コストは高くなります。
イオン交換樹脂は、より精度を高めて吸着できるというメリットがあります。
おそらく、イオン交換樹脂だけで処理を行う企業様や自治体様もあれば、活性炭とイオン交換樹脂を併用するケースも多いかと思います。活性炭で一定レベルまで処理した後、イオン交換樹脂でさらに高度な処理を行うという方法です。
イオン交換樹脂の強みは、樹脂の種類によって特性が異なり、特定の物質を選択的に吸着しやすいという点です。
当社が開発を進めているのは、PFAS(有機フッ素化合物)を選択的に吸着できる樹脂です。選択的に吸着することで、樹脂の寿命を延ばすことができ、お客様に価値を見出していただければと考えております。
取材者:浄水場や飲料水の浄水処理で使用するのではなく、工業用などで使用するということですか。
回答者:工業用、上水、排水のいずれにも使用可能です。規制が強化されれば、排水処理での需要も増加するでしょう。どの分野で活用されるかは、国の政策に左右される部分もあるかと思います。
取材者:PFASには多種多様な種類があり、どこまで規制されるかは不透明な部分もありますが、樹脂は、特定の吸着物質を選択的に吸着できるという特徴があるため、浄水よりも工業用などの特定の分野での利用に適しているという印象を受けたのですが、いかがですか。
回答者:当社が開発を進めているのは、PFASを確実に吸着できる素材であるとご理解いただければと思います。その素材がどの分野で、どのような形で使用されようとも、性能は変わりません。
取材者:選択的に設計できる、ということでしょうか。
回答者:イオン交換樹脂は、ビーズのような形状をしており、そこに水を通すことで、PFASが吸着され、きれいな水が出てくるという仕組みです。水道水や排水など、どのような水にも使用でき、仮に飲料水では浄水場、排水用では工場などで、規制に応じて導入される可能性があるため、当社としては、幅広くご提案していく方針です。
取材者:現状では、あらゆるPFASを吸着できるということですか。
回答者:申し訳ございません。私自身、PFASの種類をすべて把握しているわけではありませんが、ある程度は吸着できると思います。先ほど申し上げましたように、当社の強みは、お客様から水をお預かりして分析を行い、その水に最適な濾材を確認した上で、ご提供できる点です。したがって、統一の樹脂ですべてのPFASに対応できるとは限りませんが、お客様のニーズに応じて最適な濾材をご提供することが可能です。
取材者:承知いたしました。
今期は、配当性向が30%を超える見込みですが、中期経営計画では20%程度が目安だったと記憶しております。この点について、次期中期経営計画で変更される可能性はあるのですか。
回答者:配当性向につきましては、現在検討中でございます。申し訳ございませんが、現時点では、具体的な方針についてお答えすることはできません。
取材者:検討中ということですね。
回答者:はい。様々な要素を考慮しながら、検討している段階です。
基本的な方針としては、配当性向を意識しながらも、安定的な配当を継続するという考え方に変わりはありません。
取材者:減配はしないという方針ですか。
回答者:20%以上を維持し、安定的な配当を継続していくことが目標です。
取材者:今後、貴社を評価する上で、特にポイントとなる点はございますか。
回答者:最も注目されているのは、PFAS関連の事業だと思っております。
国の政策として、PFASの規制が強化されるようなことがあれば、化学品事業が大きく成長する可能性があると考えております。世の中では、為替やアメリカの関税が注目されていますが、PFAS規制の動向は、当社の成長ポテンシャルに大きく関わるため、ポイントの一つになるのではないかと考えております。
取材者:アメリカの関税の影響は、全くないということですか。
回答者:0であるとは言い切れませんが、現状では、業績を大きく左右するような影響は出ておりません。
取材者:今後、関税の影響が出るとすれば、どのような形で出てくる可能性があるのですか。
回答者:当社の化学品事業は、様々な業界のお客様とお取引がございます。そのため、お客様の業界が、関税の影響で輸出入が停滞したり、製造が遅れたり、売上高が減少したりすると、副次的に当社も影響を受ける可能性があります。
取材者:貴社は、輸出はほとんどないということですね。
回答者:はい、ほとんどございません。国内での製造・販売が中心です。
取材者:現在の株価については、どのように評価されていますか。経営陣の方々は、株価がもう少し上がってほしいとお考えなのですか。
回答者:そうですね。どの程度上がってほしいか、具体的な水準は申し上げられませんが、PERなどの指標で見ても、現在の株価はそれほど割高ではないと考えております。
したがって、もう少し株価が高くとも、違和感はないという感覚です。
取材者:第3四半期は、営業利益が36%増益と、営業利益は好調でした。通期の業績予想では、当期純利益が9%減益となる見込みですが、この要因についてお伺いできますか。第3四半期までは、そのような状況ではなかったと認識しておりますが。
回答者:前年度と比較してということになりますが、当期純利益の通期見通しは3億円で、9%減益となる見込みです。営業利益と経常利益の差は、主な要因としては、為替差損が挙げられます。また、昨年度は、積み立てていた保険を解約したため、その影響で利益が押し上げられたという要因もございます。
取材者:承知いたしました。詳細なご説明をいただき、ありがとうございました。
ビジネスモデルや事業内容
室町ケミカル(株)は、医薬品、健康食品、化学品の3つのセグメントで事業を展開。医薬品事業は原薬事業を主力とし、自社製造の医薬品原薬は比較的利益率が高い製品である。健康食品事業は、スティックゼリータイプの健康食品の企画・開発・製造を中心としたOEM/ODM事業である。化学品事業は、イオン交換樹脂を主力とし、純水・超純水生成や排水処理などに用途がある。
直近の決算状況
直近の四半期決算では、営業利益が36%増益と好調である。2022年5月期の営業利益率は7.69%と高い水準であったが、販売費、開発費、人件費の増加により、一時的に低下した。しかし、今期は第3四半期までの9か月間で営業利益率が7.097%まで回復しており、回復傾向にある。
特徴や強み
医薬品事業では、原薬について自社製造・加工と輸入の両面から顧客のニーズに合わせた提案をできることが強みである。化学品事業では、イオン交換樹脂等の水処理商材を扱い、専門性の高い技術力を有し他社が手掛けないニッチな分野に注力している点が特徴である。イオン交換樹脂等は各種メーカーからの仕入販売であるが、顧客ニーズに応じて海外メーカーと共同で新たな樹脂を開発するメーカー的側面も持ち合わせている。
成長戦略
全事業での成長を目指す方針である。医薬品事業では、自社開発品の開発パイプラインを充実させ、継続的な新製品の上市を目指す。健康食品事業と化学品事業は、収益性の改善を重視し、特に化学品事業ではPFAS関連事業など成長期待分野に向けた製品開発を積極的に進め、新たな柱の育成を目指している。
中期事業計画について
新たな中期経営計画は策定中で、株主総会までの発表を目指している。計画内容は現時点で未開示だが、全事業での成長を目指す方針である。
今期の取り組みやトピックス
化学品事業において、PFAS関連事業が注目されるトピックスである。PFAS規制強化の動向が、同社の成長ポテンシャルに大きく関わる可能性がある。
株主還元策
株主還元の方針は検討中であるが、配当性向を意識しつつ、安定的な配当の継続が基本方針である。
取締役 井内 聡様

室町ケミカル(株)
東証STD 4885
決算:5月末日
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:弊社の特徴といたしましては、まず、医薬品原薬事業を主力としている点が挙げられます。海外からの輸入と自社での製造どちらも行っており、お客様の求める原薬に合わせてご提案ができます。
次に、化学品事業においては、他社の水処理メーカー様があまり注力されないような、ニッチな分野、例えば、薬品の精製や排水処理など一般的な純水用途以外の処理も得意としており、専門性の高い技術力を有している点が強みでございます。
お客様の多様なニーズに応じて、各種メーカーのイオン交換樹脂等を選定し最適なソリューションをご提供できる技術力が弊社の優位性と認識しております。また、必要に応じ海外メーカーと共同で新たな樹脂を開発するメーカー的側面も持ち合わせています。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?
A:弊社の成長戦略のポイントといたしましては、全事業において成長を目指すという点が根幹にございます。
医薬品事業におきましては、自社開発品の開発パイプラインを充実させ、継続的に新製品を上市することで、安定的な成長の実現を目指してまいります。
健康食品事業および化学品事業につきましては、収益性の改善を重要な課題と位置付けており、特に化学品事業では、PFAS(有機フッ素化合物)関連事業など新たな分野に向けた製品の開発を継続的に行い、収益の柱を育成していくことが、今後の成長を牽引する上で、極めて重要な戦略であると考えております。
Q:業績の増減要因をご説明ください。
A:弊社の業績の増減要因につきましては、各事業の状況、市場環境、並びに費用等の要因が複合的に影響している状況でございます。
医薬品事業においては、主力原薬の売上高に減少傾向が見られる一方で、輸入原薬・自社製造品ともに取り扱い品目を増やしていくことで、全体としての売上高は維持するよう努めております。
健康食品事業は、過去の主力製品の減少という厳しい状況から回復基調にありますが、製品ライフサイクルの短さが、依然としてリスク要因として存在いたします。
化学品事業につきましては、これまで当社が参入していない新たな分野への投資回収が進捗し、収益性が改善傾向にあると認識しております。
全体といたしましては、販売費、開発費、人件費の増加が利益率に影響を与えています。為替変動も業績に影響を与える要因の一つでございますが、取引先と為替の変動に応じた取り決めを行い、影響を抑えられるよう対策をしています。
Q:受注・競合状況は如何でしょうか?
A:健康食品事業における受注状況といたしましては、大手メーカー様から中堅・中小メーカー様まで、幅広い規模の企業様とお取引をさせていただいております。
化学品事業における競合状況につきましては、強いて言えばオルガノ様、栗田工業様などの大手メーカー様が挙げられますが、弊社はニッチな分野に特化することで、差別化を図っている状況でございます。
Q:中期事業計画の内容や進捗状況等をご説明ください。
A:新たな中期事業計画につきましては、株主総会までのご報告を目指し、現在策定を進めている段階でございます。計画の具体的な内容につきましては、誠に恐縮ながら、現時点では開示を控えさせていただきますが、全事業において成長を目指すという基本方針に変更はございません。
Q:株主還元の方針をご説明ください?
A:株主還元の方針につきましても、現在、慎重に検討を重ねているところでございます。現時点での具体的な方針についてのお答えは差し控えさせていただきますが、配当性向を意識しつつ、20%以上の水準を維持し、安定的な配当を継続していくという考え方に、変わりはございません。
取材者:よろしくお願いいたします。今回、初めて貴社を取材させていただきますので、基本的な事項も含め、お伺いいたします。
まず、短期的な業績の動向についてですが、直近の四半期決算では、営業利益が36%増益と、非常に好調な数字が示されました。
念のため、2022年5月期からの業績を振り返りますと、2022年5月期の営業利益は4億3,700万円、営業利益率は7.69%という高い水準でしたが、今期は、第3四半期までの9か月間で7.097%まで回復しています。
貴社の事業は、医薬品、健康食品、化学品の3つのセグメントで構成されていますが、健康食品と化学品の利益率がやや低いように見受けられます。
この点も含め、中期的な展望などを後ほどお伺いしたいと思いますが、まず、2022年5月期の営業利益が過去最高であったという理解でよろしいでしょうか。
回答者:はい、そのように認識しております。
取材者:当時の業績が特に好調であった要因について、市場環境や貢献度の高かった製品などの観点からご説明いただけますか。
回答者:はい。当社は、医薬品の原薬事業を主力としております。
医薬品市場は、基本的に成熟しており、医薬品の特性上、市場規模が縮小することは考えにくいものの、お取引している製販様の動向により当社の売上も影響をうけます。また、薬価改定の影響もあり、最盛期と比較すると、主力の原薬の売上高がやや減少しているという点が一つございます。
また、2022年5月期当時と比較すると、現在は、販売費、開発費、人件費などの費用が増加しており、これらの要因により、利益率については、当時より経費面が増加しており、売上高を伸ばしてはいるものの、全体として以前ほどの利益率には至っていないという状況です。
取材者:主力製品である原薬は、どのような用途の医薬品の原薬ですか。
回答者:高カリウム血症向けの原薬でございます。
取材者:決算説明資料によりますと、原薬の売上高は3.3%減少している一方で、輸入原薬が増加していると記載されています。輸入原薬の内訳としては、抗ヘルペス治療薬用や抗炎症薬用などが挙げられていますが、全体として、原薬の売上高はほぼ横ばいという理解でよろしいですか。
回答者:はい、ほぼ横ばいとお考えいただいて結構です。
取材者:通期で見れば、それほど大きな影響はないということですね。
貴社としては、自社開発の原薬の成長を図りつつ、輸入原薬も活用することで、医薬品事業全体の収益性は、二桁を維持したいという戦略なのですか。
回答者:おっしゃるとおりです。詳細にご説明いたしますと、柏の医薬品開発センターにおいて、少量での原薬の合成試験を実施し、有償での試験も行いながら、量産化が可能となれば、自社設備を導入して本格的に販売するという方針でございます。
輸入原薬についても、新しい品目を海外から調達する際には、社内で各種試験を実施して品質を確認した後、医薬品製造販売の一変承認を取得する必要があるため、自社開発品と輸入原薬の販売開始時期を同時進行で進めながら、事業を推進しているという状況です。
取材者:輸入原薬は、一般的に、自社製造品と比較して利益率が低いということですか。
回答者:はい、そのとおりです。自社製造品と比較すると、輸入原薬の利益率は若干低い傾向にあります。
取材者:「若干」とのことですが、具体的に、どの程度の差があるのですか。
回答者:利益率は製品によって幅がありますが、平均してみると輸入原薬の方が自社製造品と比較して、利益率が低いとお考えください。
取材者:輸入原薬は、主にどの国から輸入しているのですか。
回答者:ヨーロッパ、インド、中国が中心です。
取材者:ヨーロッパからの輸入となると、為替変動のリスクなどが懸念されますが、その点について、貴社ではどのように対応されていますか。
回答者:為替変動のリスクはゼロではありませんが、仕入価格と販売価格の両面で為替調整を行うなど、リスクを緩和する対策を講じております。
取材者:
次に、健康食品事業についてですが、貴社は、スティックゼリータイプの健康食品の企画・開発・製造を中心としたOEM/ODM事業を展開されているという理解でよろしいですか。
回答者:はい、そのとおりです。
取材者:健康食品事業については、何か投資を行われた影響で、収益性が一時的に低下しているのですか。売上高は非常に伸びているようにお見受けしますが。
回答者:健康食品事業は、過去には高い収益性を誇っており、特に高付加価値の製品が好調でしたが、ここ数年一時的に主力製品がなくなった時期があり、新たな製品の受注獲得に注力した結果、最も厳しい時期は脱し、売上高も回復傾向にありますが、ピーク時の売上高は10億円を超えていたことを考えると、やっと復調の兆しが見えてきたと言えます。
取材者:受注案件の端境期は過ぎ、売上高は回復基調にあるという理解でよろしいですか。
回答者:はい、端境期は過ぎたと考えております。現在は、損益分岐点を超える水準まで回復しております。
取材者:今後、数年間で、収益性が大きく悪化する要因はないという見通しですか。
回答者:少なくとも、今後数年間で大きく悪化する要因はないと考えております。
ただし、健康食品業界は、製品のライフサイクルが短いため、医薬品とは異なり、ある日突然、売上高が急減するリスクがあります。そのため、工場稼働率を維持するためにも、常に新たなOEM/ODM製品を受注していく必要は変わりございません。
取材者:昨年度の決算説明資料によりますと、大型案件の寄与があったとのことですが、これは、どのようなタイプの健康食品なのですか。
回答者:はい、比較的年齢層の高い方をターゲットとした製品で、歩く力のサポートなどに効能がある健康食品でございます。
取材者:貴社とお取引のある健康食品メーカーは、大手が多いのですか。
回答者:大手メーカー様もございますし、中堅・中小メーカー様もございます。取引先の規模感に偏りはないと考えております。
取材者:承知いたしました。
次に、化学品事業についてお伺いします。化成品事業の主力は、イオン交換樹脂であると認識しておりますが、前年度の第3四半期までは赤字が継続していたものの、今期は黒字に転換しています。収益性が低迷していた理由について、ご説明いただけますか。
回答者:はい、化学品事業は、他社の水処理メーカー様があまり手掛けないような、ニッチな分野、例えば、薬品の精製や排水処理など一般的な純水用途以外の処理に注力しており、販売費のみならず、関連する商材の開発に積極的に投資を行ってきたため、費用がかさんでおりましたが、ようやく回収期に入ってきたという状況です。
売上高も徐々に伸びてきており、収益性が改善し始めたと考えております。
取材者:決算資料には、半導体向けが好調であること、電力会社から新たな案件を受注したことなどが記載されていますが、貴社の主力用途としては、やはり排水処理なのですか。
回答者:排水処理は、化学品事業の重要な用途の一つではございますが、主力というわけではございません。
最も一般的な用途としては、純水や超純水を生成する際の利用が挙げられます。
その他、例えば電力会社向けとしては、復水ろ過といって、水を循環させて発電に利用する際に、不純物を除去して配管の汚れを防止する用途や、半導体向けなどで薬品の純度を高める用途などにも用いられています。
排水処理への利用もございますが、こちらは、排水を法令で定められた基準値以下にして排出するといった用途などが中心となります。
売上高の構成比としては、純水製造や液体精製など、排水より前の段階で使用される案件の方が高く、排水処理向けは比較的少ないかもしれません。
取材者:イオン交換樹脂は、貴社で製造されているのですか。
回答者:主に海外メーカーからの輸入品です。
取材者:国内の大手メーカーもイオン交換樹脂を製造していると思いますが、貴社がニッチな分野に注力しているのは、競合との差別化を図るためですか。
回答者:おっしゃるとおりです。
国内メーカーとしては、三菱ケミカル様、活性炭では、荏原製作所様、分離膜については、東レ様、クボタ様などが挙げられます。
それらの国内メーカーの製品も含めた様々な製品から、より専門性の高いニッチな分野に対しても最適な提案できるというのが当社の技術力になります。
取材者:仕入先は、ヨーロッパのメーカーが多いのですか。それとも、アジア圏のメーカーが多いのですか。
回答者:ヨーロッパのメーカーもございますが、中国やインドなど、アジア圏のメーカーが中心です。
取材者:貴社が開発に力を入れているイオン交換樹脂は、大手樹脂メーカーではなく、比較的規模の小さいメーカーと共同で開発を進めているということですか。
回答者:はい、そのとおりです。イオン交換樹脂は非常に種類が多く、お客様は、どのような樹脂を選べば、目的とする水処理ができるのか、判断が難しいという課題があります。
そこで、当社では、お客様から処理対象について分析を行い、最適な処理方法をご提案するとともに、お客様のニーズに合致する樹脂がない場合には、海外メーカーと共同で開発を行い、市場に投入するという取り組みも行っております。
取材者:貴社は、商社的な立ち位置でありながら、メーカー的な側面も持ち合わせているということですね。化学品事業は、非常に多岐にわたる事業が含まれているため、理解が難しい部分があり、細かい点について質問してしまい、申し訳ございません。
回答者:いえ、とんでもございません。
取材者:今期の業績見通しについてですが、第3四半期までの進捗率が非常に高く、通期目標である4億5,000万円の達成は十分可能であるとお見受けしております。
ただし、今期は中期経営計画の最終年度であり、従来の目標値である6億円の達成については、前回の決算説明会資料を拝見したところ、「決して諦めてはいないが、できる限り近づけたい」というコメントをされていたと記憶しております。6億円の達成に対する現在の見通しについて、改めてお伺いできますか。
回答者:6億円の達成を目指すという気持ちはございますが、現時点では、達成は若干厳しいと考えております。ただし、4億5,000万円については、達成できるよう、推進して参ります。
具体的には、期末に向けて、決算処理に関連する費用は増加すると思われますが、収益面では、特に第3四半期は、業績が特に好調でしたが、四半期ごとの業績は変動するため、通期で見ると、業績予想の範囲内に落ち着くのではないかと考えております。
取材者:第3四半期だけを見ると、売上高、利益ともに非常に高い水準ですが、これは一過的な要因によるもので、第4四半期以降も同水準の業績が継続するとは考えにくいということですか。
回答者:はい、おっしゃるとおりです。売上計上のタイミングや、製品構成など、様々な要因が影響しております。
取材者:第3四半期並みの高い収益性が今後も継続すると期待することは、現実的ではないということですね。状況を注視してまいります。
来年度から、新たな中期経営計画が始まる予定とのことですが、現在、どのようなスケジュールで策定が進んでいるのですか。
回答者:順調に進めば、株主総会の前には発表できればと思いますが、現時点では、まだ具体的な時期は決定しておりません。
取材者:新たな中期経営計画においても、医薬品事業は、引き続き、安定的に成長していくという見通しでよろしいですか。
回答者:基本的には、全事業で成長を目指す方向で計画を立てたいと考えております。
取材者:健康食品事業と化学品事業については、利益率の改善を目指されると思いますが、健康食品事業のセグメント利益率について、過去の最高水準のセグメント利益率は、何%ぐらいだったのですか。
回答者:過去の最高水準は参考にはなりませんが、おそらく10%を超えているかどうかだと思います。ただし、健康食品の状況にもよりますが、少なくとも5%は超えたいと考えております。
取材者:当然、事業を行っている以上、コストをかけているわけです
から、その程度の利益は出さないと、事業部としては寂しい状況になりますよね。
回答者:そうですね。
取材者:健康食品事業は5%以上を目指しているということですが、化学品事業は、それを上回る水準を目指せる状況ですか。それとも、同じぐらいですか。
回答者:中長期的には、5%以上を狙えると思います。
取材者:中長期的には狙えるということですね。
回答者:はい。短期的には、付加価値の高い製品の開発には時間がかかりますし、開発が立ち上がったとしても、新たな開発案件に費用を投下すると、一時的にどうなるのかという予測は難しいです。しかし、中長期的には、付加価値の高い製品を市場に投入し、参入障壁の高い形で利益を確保していきたいと考えております。
取材者:承知いたしました。医薬品の場合、自社開発品の開発パイプラインがあり、上市時期の予測がある程度立つと思いますが、貴社の自社開発品は、今後、どのような流れになりそうですか。
回答者:おそらく、開発期間はお話を頂いてから、3~4年程度かかると思います。
取材者:現在開発中のものが上市されるのは、3年後ぐらいになるということでしょうか。
回答者:開発部門では、上市予定の製品を順次開発しておりますので、年度ごとに製品が立ち上がっていく予定です。
取材者:今年度も立ち上がった製品があるということですか。
回答者:ございます。
取材者:それは、開示できない情報ですか。
回答者:はい。医薬品については、もちろん上市されるものがない年度もありますが、大なり小なり、毎年上市されるものがあるという状況です。
取材者:ほぼ毎年上市されるものがあるというのは、非常に珍しいですね。
回答者:新薬ではない製品も含めて、取り扱いが増えているという状況です。
取材者:承知いたしました。当然、期待される大型の製品もあるかと思いますが、そのような製品が今後3年以内に出てくる可能性はあるのですか。
回答者:可能性はあると思っております。
取材者:貴社の定義として、医薬品の「大型」とは、売上高がいくら以上のものを指すのですか。
回答者:当社の規模感でいきますと、年間で5億円を超えたら「大型」と言えるのではないかと思います。
取材者:年間5億円以上が大型ということですね。そのような製品が、2、3年に1度あれば良いということでしょうか。
回答者:はい。楽しみな製品もありますが、医薬品は開発に時間がかかるため、上市時期が年単位でずれる可能性はあります。
取材者:医薬品メーカーには、開発テストのフェーズ1、フェーズ2、フェーズ3といった段階がありますが、貴社の原薬などは、これらの段階を経ているのですか。
回答者:当社では、新薬を創薬するというよりは、既存の化合物を基に、ジェネリック医薬品や先発医薬品などの元々ある医薬品に関する原薬を製造するケースが多いため、フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3という呼び方はあまりしておりません。
取材者:既存薬の合成が中心ということでしょうか。
回答者:はい。少量合成からパイロット試験、中規模の製品化試験、そして、実施計画調査を行い、お客様の安定性試験で問題がないと判断されれば、納入するというケースが、今のところ大半です。
取材者:昨今、ジェネリック医薬品メーカーでトラブルが発生し、需給がタイトになっている医薬品もあるようですが、それがボトルネックになっているということはないのですか。ジェネリック医薬品市場が拡大する一方で、メーカー側の製剤化にボトルネックが生じているという可能性はないのですか。
回答者:他社様の状況は分かりかねますが、当社には、その影響はあまりございません。
取材者:現在のジェネリック医薬品の需給がタイトな市場は、貴社にとって追い風であるという理解でよろしいですか。
回答者:そのように考えております。
取材者:今後も、多少の変動はあったとしても、医薬品事業が最も安定的に増収増益を見込めるということになるのですか。
回答者:そうですね。増収は当然目指しますが、増益については、一時的な需要や薬価の問題など、様々な要因により、瞬間的にはぶれる可能性はあるかと思います。
医薬品業界は、大きく売上高が下がるようなことはなく、ある程度の利益を生み出し続けることはできますが、多少の波はあると思います。
取材者:健康食品事業と化学品事業は、損益分岐点を超え、来期以降、着実に黒字を積み上げられるような体制になったと考えてよろしいですか。
回答者:はい。
取材者:貴社は、これまで投資や開発費の支出、人件費の増加などを行ってきたとのことですが、来期以降、大型の投資を行う可能性はあるのですか。
回答者:投資については、現在検討中でございます。まだ確定しておらず、現時点では開示できる情報はありません。
しかし、今後も収益が見込める案件があれば、設備投資を行っていくという姿勢は変わりません。
取材者:設備導入のリードタイムは、どのようにお考えでしょうか。
回答者:設備導入のリードタイムは、最短でも半年、長ければ1年程度かかるため、投資の決定は、案件の進捗具合を見ながら行うことになると思います。
取材者:ちなみに、今期の投資金額は、およそどのくらいですか。
回答者:詳細な金額は開示しておりませんが、およそ2、3億円程度ではないかと思います。
取材者:2、3億円程度ですか。
回答者:はい。ただし、その中には、インフラの更新費用なども含まれており、売上高を直接的に押し上げるための設備投資に限った金額ではございません。
取材者:承知いたしました。年間投資額はおよそ2、3億円程度で、5億まではいかないということですね。
回答者:はい。
取材者:固定費負担はキャッシュフローの範囲内で賄えるということでしょうか。
回答者:はい。固定費の負担はそれほど大きくなく、設備投資もキャッシュフローの範囲内で十分に賄える水準です。
取材者:承知いたしました。
株式市場で注目されているテーマの一つに、PFAS(有機フッ素化合物)に関する状況がありますが、これが貴社の収益に貢献し始めるのは、いつ頃になりそうですか。
回答者:PFAS関連の事業は、売上の規模感はまだ大きくはないのですが、着実に進展しており、来年には試験販売を含め、少しずつ売上高に貢献し始めると考えております。
取材者:主に、海外メーカーの製品を取り扱うということですか。
回答者:はい。
取材者:PFASについては、様々なメーカーが対応を進めており、活性炭メーカーも参入している状況です。活性炭は比較的安価ですが、高度な処理を行うにはイオン交換樹脂が必要となり、コストが高くなるという意見もあります。前処理で活性炭を使用しないと、トータルコストを抑えることが難しいという声も聞かれますが、貴社のPFAS対応製品の強みや、注力分野などはございますか。
回答者:当社がPFAS向けに考えているのは、イオン交換樹脂です。
ご指摘のとおり、活性炭、イオン交換樹脂、分離膜という選択肢があり、活性炭は比較的安価ですが、高度な処理を行うにはイオン交換樹脂が必要となり、コストは高くなります。
イオン交換樹脂は、より精度を高めて吸着できるというメリットがあります。
おそらく、イオン交換樹脂だけで処理を行う企業様や自治体様もあれば、活性炭とイオン交換樹脂を併用するケースも多いかと思います。活性炭で一定レベルまで処理した後、イオン交換樹脂でさらに高度な処理を行うという方法です。
イオン交換樹脂の強みは、樹脂の種類によって特性が異なり、特定の物質を選択的に吸着しやすいという点です。
当社が開発を進めているのは、PFAS(有機フッ素化合物)を選択的に吸着できる樹脂です。選択的に吸着することで、樹脂の寿命を延ばすことができ、お客様に価値を見出していただければと考えております。
取材者:浄水場や飲料水の浄水処理で使用するのではなく、工業用などで使用するということですか。
回答者:工業用、上水、排水のいずれにも使用可能です。規制が強化されれば、排水処理での需要も増加するでしょう。どの分野で活用されるかは、国の政策に左右される部分もあるかと思います。
取材者:PFASには多種多様な種類があり、どこまで規制されるかは不透明な部分もありますが、樹脂は、特定の吸着物質を選択的に吸着できるという特徴があるため、浄水よりも工業用などの特定の分野での利用に適しているという印象を受けたのですが、いかがですか。
回答者:当社が開発を進めているのは、PFASを確実に吸着できる素材であるとご理解いただければと思います。その素材がどの分野で、どのような形で使用されようとも、性能は変わりません。
取材者:選択的に設計できる、ということでしょうか。
回答者:イオン交換樹脂は、ビーズのような形状をしており、そこに水を通すことで、PFASが吸着され、きれいな水が出てくるという仕組みです。水道水や排水など、どのような水にも使用でき、仮に飲料水では浄水場、排水用では工場などで、規制に応じて導入される可能性があるため、当社としては、幅広くご提案していく方針です。
取材者:現状では、あらゆるPFASを吸着できるということですか。
回答者:申し訳ございません。私自身、PFASの種類をすべて把握しているわけではありませんが、ある程度は吸着できると思います。先ほど申し上げましたように、当社の強みは、お客様から水をお預かりして分析を行い、その水に最適な濾材を確認した上で、ご提供できる点です。したがって、統一の樹脂ですべてのPFASに対応できるとは限りませんが、お客様のニーズに応じて最適な濾材をご提供することが可能です。
取材者:承知いたしました。
今期は、配当性向が30%を超える見込みですが、中期経営計画では20%程度が目安だったと記憶しております。この点について、次期中期経営計画で変更される可能性はあるのですか。
回答者:配当性向につきましては、現在検討中でございます。申し訳ございませんが、現時点では、具体的な方針についてお答えすることはできません。
取材者:検討中ということですね。
回答者:はい。様々な要素を考慮しながら、検討している段階です。
基本的な方針としては、配当性向を意識しながらも、安定的な配当を継続するという考え方に変わりはありません。
取材者:減配はしないという方針ですか。
回答者:20%以上を維持し、安定的な配当を継続していくことが目標です。
取材者:今後、貴社を評価する上で、特にポイントとなる点はございますか。
回答者:最も注目されているのは、PFAS関連の事業だと思っております。
国の政策として、PFASの規制が強化されるようなことがあれば、化学品事業が大きく成長する可能性があると考えております。世の中では、為替やアメリカの関税が注目されていますが、PFAS規制の動向は、当社の成長ポテンシャルに大きく関わるため、ポイントの一つになるのではないかと考えております。
取材者:アメリカの関税の影響は、全くないということですか。
回答者:0であるとは言い切れませんが、現状では、業績を大きく左右するような影響は出ておりません。
取材者:今後、関税の影響が出るとすれば、どのような形で出てくる可能性があるのですか。
回答者:当社の化学品事業は、様々な業界のお客様とお取引がございます。そのため、お客様の業界が、関税の影響で輸出入が停滞したり、製造が遅れたり、売上高が減少したりすると、副次的に当社も影響を受ける可能性があります。
取材者:貴社は、輸出はほとんどないということですね。
回答者:はい、ほとんどございません。国内での製造・販売が中心です。
取材者:現在の株価については、どのように評価されていますか。経営陣の方々は、株価がもう少し上がってほしいとお考えなのですか。
回答者:そうですね。どの程度上がってほしいか、具体的な水準は申し上げられませんが、PERなどの指標で見ても、現在の株価はそれほど割高ではないと考えております。
したがって、もう少し株価が高くとも、違和感はないという感覚です。
取材者:第3四半期は、営業利益が36%増益と、営業利益は好調でした。通期の業績予想では、当期純利益が9%減益となる見込みですが、この要因についてお伺いできますか。第3四半期までは、そのような状況ではなかったと認識しておりますが。
回答者:前年度と比較してということになりますが、当期純利益の通期見通しは3億円で、9%減益となる見込みです。営業利益と経常利益の差は、主な要因としては、為替差損が挙げられます。また、昨年度は、積み立てていた保険を解約したため、その影響で利益が押し上げられたという要因もございます。
取材者:承知いたしました。詳細なご説明をいただき、ありがとうございました。
ビジネスモデルや事業内容
室町ケミカル(株)は、医薬品、健康食品、化学品の3つのセグメントで事業を展開。医薬品事業は原薬事業を主力とし、自社製造の医薬品原薬は比較的利益率が高い製品である。健康食品事業は、スティックゼリータイプの健康食品の企画・開発・製造を中心としたOEM/ODM事業である。化学品事業は、イオン交換樹脂を主力とし、純水・超純水生成や排水処理などに用途がある。
直近の決算状況
直近の四半期決算では、営業利益が36%増益と好調である。2022年5月期の営業利益率は7.69%と高い水準であったが、販売費、開発費、人件費の増加により、一時的に低下した。しかし、今期は第3四半期までの9か月間で営業利益率が7.097%まで回復しており、回復傾向にある。
特徴や強み
医薬品事業では、原薬について自社製造・加工と輸入の両面から顧客のニーズに合わせた提案をできることが強みである。化学品事業では、イオン交換樹脂等の水処理商材を扱い、専門性の高い技術力を有し他社が手掛けないニッチな分野に注力している点が特徴である。イオン交換樹脂等は各種メーカーからの仕入販売であるが、顧客ニーズに応じて海外メーカーと共同で新たな樹脂を開発するメーカー的側面も持ち合わせている。
成長戦略
全事業での成長を目指す方針である。医薬品事業では、自社開発品の開発パイプラインを充実させ、継続的な新製品の上市を目指す。健康食品事業と化学品事業は、収益性の改善を重視し、特に化学品事業ではPFAS関連事業など成長期待分野に向けた製品開発を積極的に進め、新たな柱の育成を目指している。
中期事業計画について
新たな中期経営計画は策定中で、株主総会までの発表を目指している。計画内容は現時点で未開示だが、全事業での成長を目指す方針である。
今期の取り組みやトピックス
化学品事業において、PFAS関連事業が注目されるトピックスである。PFAS規制強化の動向が、同社の成長ポテンシャルに大きく関わる可能性がある。
株主還元策
株主還元の方針は検討中であるが、配当性向を意識しつつ、安定的な配当の継続が基本方針である。
取締役 井内 聡様