取材者:では、まず2025年12月期第2四半期の決算状況についてお伺いします。貴社の売上高は2,378百万円、営業利益は569百万円、経常利益は567百万円、親会社株主に帰属する中間純利益は376百万円で、過去最高の増収増益を達成されたかと思いますが、増減要因について教えていただけますか?
回答者:増減要因についてですが、YoYで比較すると、数パーセントレベルの増収増益であり、大きく成長したという印象はありません。ソリューションセグメントはYoYで0.9%減、モバイルセグメントは0.8%増となり、売上比率が高いモバイルセグメントが全体を牽引した結果、合計で1.3%増となりました。
モバイルセグメントの中でも、アプリ広告の売上が引き続き不調である一方、サブスクリプションの売上がそれを補う形となりました。
取材者:前回の取材でサブスクリプションの売上を伸ばしていきたいというお話がありましたが、今回、YoY71.3%の伸びは、予想通りの進捗ですか?それとも予想を上回る進捗ですか?
回答者:2Q累計のサブスク売上高で言うと79.8%増です。契約数ベースでは77.5%増となります。計画値は売上高1.62倍(62%増)だったので、手堅く作った数字ではあります。第1四半期が売上1.9倍だったのに対し、今回は1.8倍と若干成長率は下がりましたが、総じて順調に進んでおり、通期の保守的な計画は超えるだろうと考えています。
取材者:サブスクリプションの売上拡大のために、今期行われた施策や取り組みはございますか?
回答者:第2四半期では、5月26日にプレミアム会員向けの「ベクターレイヤー」の機能拡充を行いました。これはプロユーザー向けの機能拡充となります。また、3月にメジャーバージョンアップ「バージョン13」をリリースし、多くの新機能を追加したことも、4月のサブスクリプション増加に繋がりました。
取材者:今後もプロユーザー向けの機能拡充に力を入れていく方針ですか?
回答者:はい、引き続き、お客様にサブスクリプションを申し込んでいただけるような魅力的な新機能をどんどんリリースしていきたいと考えています。ただし、具体的な機能については、現時点では非開示とさせていただいています。8月28日にMac版をリリースしました。これもサブスクリプション増加に貢献すると思いますが、9月以降の新規機能については現状まだ開示できていません。開発中のアイデアは多数あります。
取材者:人材の採用状況はいかがですか?
回答者:モバイルセグメントは新卒採用をメインに行っています。第2四半期に新卒社員が増えたため、人件費と採用費が増加しています。ソリューションセグメントは、思ったより退職者が増加したため、退職防止策と採用強化を行い、リカバリーが始まっています。
取材者:モバイルセグメントの採用は計画通りと捉えてよろしいでしょうか?
回答者:はい、モバイルセグメントは順調です。
取材者:その他に重視されているKPIはございますか?
回答者:サブスクリプションは順調で、エンジニア数も少し復活しています。DAU(日次アクティブユーザー数)も微増で良い感じです。ただし、広告単価が冒頭に申し上げた売上不調の要因となっています。この状況は厳しいですが、通期の着地としては、サブスクリプションの売上が広告を補完する形で計画通りに着地する見込みです。
取材者:何か業績に影響を与えた季節性や外的要因、一時的な要因はありましたか?
回答者:特にありませんが、4月より連結売上計上を開始したAI歌声合成セグメントについてご説明します。第2四半期の売上高は29百万円で、内訳はVoiSona事業(BtoC向け)が24百万円、受託開発事業(BtoB向け)が5百万円でした。受託の売上は想定より下回りました。通期の売上高はほぼ計画通りで良いのですが、第2四半期単体では少し厳しい状況です。セグメント利益はマイナス35百万円で、のれん償却費の18百万円を含めると、営業利益ベースでマイナス17百万円程度です。受託売上が計画を下回ったこともあり、想定より赤字が大きくなりましたが、通期ではほぼ計画通りと見ています。のれんの償却額は四半期ごとに18百万円で、今後も減損がない限り、この形で進んでいきます。
取材者:通期の業績見通しについてお伺いします。売上高5,025百万円、営業利益1,175百万円、経常利益1,179百万円、親会社株主に帰属する当期純利益818百万円に対し、第2四半期で約50%の進捗ですが、見通しはいかがですか?
回答者:順調とおっしゃっていただきましたが、進捗率としては40%台後半であり、やや遅れ気味です。しかし、下期に売上が偏る季節性もあるため、総じて順調であると認識しています。
取材者:M&Aや業務提携の実施状況や検討状況について、お答えできる範囲でお聞かせいただけますか?
回答者:モバイルセグメントでは、1月31日に実施したテクノスピーチのM&Aが完了し、引き続き調査は行っていますが、現在は以前より進めているソリューションセグメントのM&A調査を本格的に進めています。
取材者:株主還元方針に変更はございますか?
回答者:ご存知の通り、10月1日付で1株を5株に分割する株式分割を8月7日に発表しました。投資単位を10万円程度に引き下げ、株が買いやすくなることを目的としています。配当は分割前の50円を分割後も10円とし、実質的な配当性向は変わりません。今後も成長と還元のバランスをとりながら、株主還元を行っていきたいと考えています。
取材者:最後に、足元の状況で何かトピックスはございますか?
回答者:直近では、先ほど申し上げた「Mac版のリリース」が大きなトピックスです。3年前にWindows版をリリースし、今回Mac版のリリースとなります。Mac版のユーザーはWindowsの5分の1程度と言われており、すぐに大きなインパクトをもたらすとは考えていませんが、プロマーケットに参入するための重要なステップと考えています。これは、例えるなら富士山の二合目まで登ったようなもので、ここから本格的に成長していく段階だと考えています。
プロマーケットの拡大は、サブスクリプションユーザー200万人という目標達成において非常に重要な要素です。今後も一般アマチュアユーザーやセミプロユーザーだけでなく、プロユーザー向けにも拡大を進めていきます。Mac版の今後の成長に期待しています。