取材者: 貴社のビジネスモデルについてご説明いただけますか。3つの事業を展開されているかと思いますが、事業内容や他社と比べたときの特徴や強みなどを踏まえながら、教えてください。

回答者: 直近の決算説明会資料に基づいてご説明いたします。ご認識いただいている通り、3つの事業を展開しております。

創業事業は教育研修事業です。代表の佐藤が元々2部上場の経営コンサルティング会社に勤務していた関係で、教育事業からスタートしました。

教育研修事業では主に中堅中小企業の顧客とお付き合いをしており、研修だけでなく採用も任せたいという要望から人材紹介の領域にも進出し、現在では、人材紹介事業が売上の中心となっています。

2000年代前半の頃はハローワークの履歴書セミナーや求職者との面談といったハローワークの受託事業も手掛けており、ピーク時には1都10県ほどで受託していました。当時は就職氷河期で、20代の高学歴のフリーターが多くいらっしゃいました。

彼らの才能を活かせる場を提供したいという思いと、中堅中小企業から若い人材を採用したいという要望を受けて、当社で研修を実施したうえで、企業に紹介する「就職カレッジ」というサービスを2005年からサービスを開始し、今年で20年になります。

このビジネスモデルは研修をしてから企業にご紹介をするという点と、フリーターへの特化という点で非常にユニークで他社にはない特徴があり、この事業に集中するため、即戦力の人材紹介、つまり転職の斡旋からは撤退してリソースを集中して拡大させ、IPOまでの成長ドライバーとなりました。

リーマンショックの頃は、フリーターだけでなく内定切りにあった学生も多く就職カレッジを利用しており、ワールドビジネスサテライトやガイアの夜明けなど、多くのメディアから取材を受け、そういったメディア掲載をきっかけに大学キャリア課との提携が始まり、4年生を支援する「新卒カレッジ」もスタートしました。

新卒支援事業では、大学や大学生協と連携し、学生に就職支援サービスを提供しています。他の新卒紹介会社は、メディアなどを活用して学生を集めていますが、当社は大学や大学生協と連携することで学生を獲得しており、この点が、他社との大きな違いです。当社は教育研修事業が祖業であるため、同じ教育に携わる者として大学と良好なパートナーシップ関係を築いてきました。

取材者: 大学との新卒支援事業においても、教育研修的な部分があり、そこから企業様に人材を紹介する流れなのでしょうか。

回答者: おっしゃる通りです。学業があるため長期間ではありませんが、面接対策講座などを実施しています。その中で学生が成長していく姿を見て、キャリア課の方々に大変満足していただいています。

取材者:創業の経緯としまして、社長がコンサルタントから教育事業に転身されたというお話がありました。その経緯について教えていただけますか？

回答者: コンサルタント会社の中でも、特に教育関係の業務を担当していたということが、そもそものきっかけです。

取材者: 現在の決算の状況についてお聞きしたいのですが、今回の決算と前年を比べると増収増益と好調ですが、要因としてはやはり新卒支援事業のところが伸びてきているのが一番の要因でしょうか？

回答者: おっしゃる通りです。コロナ禍以降、オンラインでの就職活動が中心となり、大学も就職支援をオンライン化させる必要があり、そこにいち早くキャッチアップしたことで今までお付き合いができていなかった大学の開拓が大きく進んだということが一つあります。

また、2022年9月に株式会社キャンパスサポートをM&Aしたことも大きな要因です。従来、私たちが大学のキャリア課と提携していたのは、日東駒専以下の私立大学が中心でした。キャンパスサポートは、早慶上智や旧帝大の国公立大学といった上位大学をメインに就職支援をしていました。

さらに、キャンパスサポートは3年生の就職支援をメインに行っており、大学生協は4年生の就職支援も望んでいましたがリソースの関係でそこまで対応できていませんでした。そこで、M&Aを通じて、3年生の支援は従来通りキャンパスサポートが行い、4年生の支援を我々が引き受けるという形で、上位大学にも進出することができました。

取材者: 私立大学と国立大学では、窓口や入口といったところで違いはございますか？

回答者: 窓口が違うというよりも、就職支援に関しての熱量が違うと言った方が適切でしょうか。一般的には、上位大学の大学様ほど学生が優秀で就職が決まりやすいので、就職支援に熱心ではない傾向があり、キャリア課経由では提携関係を築くのが難しかったです。

取材者: 今後は、提携関係を築く大学はもっと増えていくようなイメージで考えてもよろしいでしょうか？

回答者: まだ増やしていけると考えています。

取材者: 大学との連携を強めていくために、今期の施策や取り組みなどを教えていただけますか？

回答者: 現在のところは、今まで開拓ができなかった大学に積極的にアプローチをしていくことで、提携校を増やしていっている段階です。大学側としては、少しでも多くの学生に就職してほしいというニーズがあり、優良企業を面接会に呼んでほしいという要望をいただいています。その要望に応えられるように、企業の求人ラインナップを揃えることに注力しています。

取材者: 企業ラインナップの拡充ということですね。大学側も喜びますし、学生にとってもメリットがありますね。

回答者: おっしゃる通りです。早慶上智レベルの大学と提携しているという実績をアピールできますし、ほとんどの大学で大学名を使って販促活動ができるので、企業からの反応率も高く、企業にアプローチしやすいので引き続き尽力していく予定です。

取材者: フリーター支援事業につきましては、新卒支援事業と比べると売上の伸びがやや緩やかなようですが、登録者の獲得に向けて今期の取り組みはございますか？

回答者: 登録者を増やすための取り組みとして、新卒支援事業と違って独自のチャネルがない状態であり、売り手市場の中で他の人材紹介会社も参入してきたことによって、求職者の獲得競争が激化しています。そのため、SEOやリスティング広告、アフィリエイトなど、様々なマーケティング手法を強化しています。

また、個人情報を登録していただく方は、必ずしもすぐに就職したい方ばかりではないので、LINEなどに登録していただき、マーケティングオートメーションを使って有益な情報を提供し続けることで、就職意欲が高まった時に当社に戻ってきてもらう仕組みを構築しています。

さらに、熊本にコールセンターを設置し、電話で直接コンタクトを取ることで、就職を検討し始めたタイミングでアプローチできるようにしています。

その他にも、雇用創出までの各プロセスの細かいチューニングを行い、歩留まり改善に取り組んでいます。

取材者: 新卒支援事業の中で、企業ラインナップが増えたり、優秀な学生を紹介したことで、フリーター支援事業の方でも何かシナジー効果はありますか？

回答者: 基本的に、新卒支援事業でお付き合いしている企業と、フリーター支援事業をご利用いただいている企業の顧客層はあまり重なっていません。重なるのは、一部の大企業、特にアウトソーシング系や携帯販売など、採用ボリュームが多く、相対的に採用スペックが高くない企業です。

一方で、新卒支援事業では大学の要望もあり企業ラインナップを拡充しているので、従業員100名を超えた程度の規模で、新卒採用を始めてまだ数年というような企業は、大学の面接会に参加しづらい状況です。そうした企業をフリーター支援事業の面接会に誘致していくという取り組みを開始しています。ただ、新卒を採用できるなら新卒が良いという企業が多いのが現状であり、新卒採用市場の求人倍率がさらに上昇し、企業が新卒採用だけでなくフリーターの採用にも目を向けるようになるには、まだ時間がかかると思います。

取材者: 最後に、業績に関わらず新たに始めた試みやトピックス的なものはございますか？

回答者: 2024年2月にM&AしたAI・DX系のシステム会社と共同で、サービスを開発してきました。自己PRや志望動機の作成や添削ができる「就職AI」や面接練習アプリ「steach」などを開発しています。「steach」は、アプリ上で面接練習を行い、AIによるフィードバックを受けられるサービスです。学生は年々、エントリーする企業数を減らしており、効率的に就職活動を行う傾向があります。そのため、このようなアプリの利用は促進されていくと考えています。これらのサービスを通じて、求職者との接点を強化し、新卒支援事業・フリーター支援事業の双方の登録者増加につなげたいと考えています。

取材者: 今期は昨年度と比較して増配予定とのことですが、株主還元策の方針などございましたら教えてください。

回答者: 有価証券報告書に記載の通り、配当性向は25%から35%の間で、株主還元をしながら、新しいアプリケーション開発などの投資にも資金を回し、バランスを取りながら進めていきたいと考えています。

(株)ジェイック

取材 List

取材日

2025年1月6日

CP&X

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