20250402
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:当社は、11カ国に20の生産拠点を有するグローバル体制を構築しており、このグローバルネットワークを活かした付加価値の提供が強みです。自動車業界においては、部品の共通化が世界的に進む中で、当社は日本で納入している部品と同じものを、メキシコ、中国、タイといった海外拠点から供給できる体制を整えています。これにより、自動車メーカー様は、地域を問わず一貫した品質の部品を調達できるというメリットを享受できます。
医療業界においても同様に、グローバル展開する大手製薬会社に対し、各地の工場から製品を供給することで、地産地消に近い形で顧客のニーズに応えることが可能です。
さらに、当社は、品質へのこだわりを重視しており、例えば、コイルスレッドにおいては、他社よりも厳しい公差を設定しています。この品質重視の姿勢が、顧客からの高い評価と信頼につながっています。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?
A:当社の成長戦略のポイントは、長期的な成長が見込める市場への注力です。具体的には、自動車、医療、航空機、インフラといった、製品ライフサイクルが長い市場に軸足を移すことで、安定的な収益の確保を目指しています。
医療市場は、使い捨て医療機器の市場拡大を背景に、今後も成長が見込まれており、航空機市場も同様に長期的な成長が期待できます。これらの成長市場への参入を通じて、持続的な成長を目指すことが、当社の基本的な戦略です。
トピックスとしては、タイに新工場を建設したこと、そして、アメリカの医療機器工場を拡張する計画があることが挙げられます。アメリカの工場拡張は、需要増加に対応するための前倒しでの決定となります。
Q:株主還元の方針をご説明ください?
A:株主還元については、配当によるものが基本であると考えております。配当性向は、経済情勢など業績に影響を与える要因により安定しておりませんが、基本的には30%を目標としております。株主優待については、かつてはQUOカードの配布を実施しておりましたが、現在は廃止し、配当による還元に注力しております。
取材者:
貴社のビジネスモデルと事業内容につきまして、特徴や強みを含めてご説明いただけますでしょうか。
回答者:
はい。当社は11カ国に拠点を置いており、工場は世界に20ヶ所ございます。日本を含め、グローバルに事業を展開しております。ばね業界においては、独自の地位を築いていると認識しております。
11カ国に20の生産拠点を持つグローバル体制を活かした、付加価値の提供が当社の強みです。
例えば、自動車業界では、現在地域によって分断化が進んでおりますが、基本的には、部品の共通化が世界的に行われています。自動車メーカー様にとっては、日本で納入している部品と同じものを、メキシコ、中国、タイで調達できることは、大きなメリットとなります。当社のメキシコ、タイ、中国の工場に、日本で採用した部品と同じものを納入できることは、非常に有益です。この点で、お客様にご評価いただいております。
医療業界も同様の構造です。グローバルな大手製薬会社が、欧米を中心に複数社ございますが、これらの企業も自動車業界と同様に、同じ製品をアメリカ、チェコ、イギリスに納入してほしいというニーズをお持ちです。当社は各地に工場がございますので、お客様の世界各地の工場に、地産地消に近い形で製品を供給できることが、当社の強みでございます。
取材者:
立地は、主なお客様の工場が世界各地に建設されるのに合わせて決定されるという理解でよろしいでしょうか。
回答者:
元々はそういう考え方もございました。OA機器のトップメーカーが元々当社にとって最大の取引先であり、同社の進出に合わせて工場を設立していた時期もありました。しかし、最近の進出の形態は変化しており、特定のお客様に追随するというよりは、自動車業界のように多くのお客様が進出している地域に、自社の意思で進出するというケースが多いです。
例えば、メキシコは、アメリカ向けの供給拠点として、自動車産業が非常に発展しています。当社は、自動車部品メーカー様の下層に位置するいわゆるTier1の部品メーカー様に部品を納入する立場にあります。自動車部品メーカー様は、メキシコに多数進出しておられますので、同地域に進出すれば需要を獲得できると考え、進出しております。これが、最近の進出に関する考え方です。
取材者:
貴社のように、多数の国へ進出している企業は少ないのでしょうか。
回答者:
そんなことはございませんが、進出している国数においては、当社がばね業界、精密金属加工業界において、突出していると認識しております。
取材者:
多数の国に工場をお持ちですが、日本で製造する製品と同じものを各地に供給できるという強みに関して、どのような理由や戦略がございますか。
回答者:
大きく分けて二つのパターンがございます。現地の工場から発注を受けて納入するパターンと、日本から、例えばタイ工場で製造した製品を当社のタイ工場に納入するように指示するパターンです。単純に需要がある地域に進出するというのが基本的な考え方です。その上で、日本と連携することで、お客様に付加価値を提供しております。
お客様の現地工場では、裁量が限られている場合がございます。そのため、日本ではサプライチェーンなどを決定してから、現地工場に製造を指示するという流れもございます。
基本的に、製造している製品は類似しております。市場があるところ、需要があるところに進出し、グローバル展開を最大限に活用することが重要であると考えております。
例えば、医療業界では、北米とヨーロッパが主要な市場であり、お客様も北米とヨーロッパに集中して生産拠点を持っています。お客様がアメリカで立ち上げた製品をヨーロッパでも展開する場合、当社はヨーロッパにも工場がございますので、お声がけいただきやすい状況です。お客様のグローバル展開と、当社のグローバル展開が相乗効果を生んでいると言えるかと存じます。
取材者:
全社として事業を展開される中で、技術水準をどのように維持されているのですか。
回答者:
まず、工場を立ち上げる際には、当然当社の有する技術を移転いたします。しかし、現地の従業員を採用し、教育していくことになりますので、日本の水準を完全に維持することは難しいのが現実です。
そのため、日本本社には、インストラクター制度と申しましょうか、「Advanex Production Training Project(APTP)」という認定制度がございます。これは社内認定制度であり、認定を受けた従業員のみが指導できるという仕組みです。
日本の技術者や作業者の技能向上を図るため、テキストに基づいた座学や実地試験などを実施し、認定を行います。認定を受けた従業員が、海外の工場で当社の技術や知識を指導するというのが、基本的な流れです。また、海外の従業員が日本で研修を受けることもございます。
取材者:
海外の方が日本で研修を受ける場合も、認定を受けるのですか。
回答者:
日本での認定制度とは異なります。日本の認定制度は日本語で行われますので、制度としては少し異なります。
取材者:
認定を受けるのは、かなり難しいのでしょうか。
回答者:
はい。ある程度長期のプログラムを組んで実施したりするなど、高い基準を設定しております。なお、合格者は受験者の3分の1程度で、認定書を授与しています。
また、国家資格である「ばね検定」の取得も、会社として強く推奨しております。取得にかかる費用、学費、受験料などは会社が負担いたします。さらに、取得者には人事評価上の優遇や報奨金を支給するなど、従業員個々人が国家資格、ばねや加工技術に関する資格を取得することを奨励しております。社内資格制度と、国家資格制度の取得の両方を推奨しているということです。
取材者:
現在、両方の資格を保有している方はどのくらいいらっしゃいますか。
回答者:
国家資格には、大きく分けて3種類ございます。線ばね、板ばね、熱処理です。従業員は、それぞれが学びたい分野の資格を取得します。資格保有者は50名程度で、中には3つの資格をすべて保有している従業員もいます。
社内のインストラクター資格については80名程度の従業員が保有しているかと存じます。国家資格保有者50名のほとんどがインストラクター資格も保有しているので両方取得しているのは40名程度でしょうか。
取材者:
そういった方々が指導することで、技術力が維持されているということですか。
回答者:
はい。実際には様々な課題が発生しておりますが、海外の工場の技術水準を、日本と同水準に引き上げるための努力を、このような方法で実施しております。IR情報として開示しても問題ないかと存じます。
取材者:
貴社の代表的な製品について、他社製品と比較した際の違いはどのような点でしょうか。
回答者:
まずはコイルスレッドに限定してお話しさせていただきます。コイルスレッドを製造しているのは、日本とイギリスのみです。他社との差別化という点でご説明いたしますと、いくつかの競合製品がございます。ドイツのメーカーが最も有力で、次にアメリカのコイルスレッドメーカー、当社は3番手という状況です。
現場の声をお聞きすると、アドバネクス製は使いやすいという評価をいただいております。理由としましては、公差を厳しく設定していることが挙げられます。他社製品よりも厳しい公差を設定しておりますので、他社では良品として許容されるものも当社では許容せず0良品として出荷しておりません。厳しい公差を設定した当社製品はねじ穴にスムーズに挿入できるなど作業性が優れています。
このように、現場での使いやすさを追求した製品を提供しております。その結果、高い評価と信頼を得て、ブランド力も向上し、多少価格が高くても、アドバネクス製をご指名で購入いただくこともございます。
当社は、品質を高めることによって、ブランド価値を高めるという戦略を、コイルスレッドにおいて実践しております。公差を緩くすれば、歩留まりが向上し、収益も高まりますが、当社はあえて公差を厳しく設定し、ブランド価値を高めるという戦略をとっております。
取材者:
品質を重視するという戦略は、医療用、自動車用製品においても同様ですか。
回答者:
医療用製品に関しては、少しニュアンスが異なります。医療用製品は、非常に大量に生産されます。お客様によっては、複数の製造ラインをお持ちです。
製造ラインの自動機ごとに、癖がある場合がございます。例えば、お客様のAラインではこの寸法が最適であるが、Bラインではわずかに小さめの内径が適している、Cラインではわずかに大きめの内径が適している、といった具合です。
競合のばねメーカーはそのような対応をされないそうですが、当社はお客様の細かいご要望にもお応えする、きめ細やかな対応を心がけております。いわば、カスタム対応力です。
コイルスレッドは規格製品ですので、工業規格にできる限り近づけるよう精度を上げていくという考え方で製造しております。一方、医療用製品はカスタム製品ですので、お客様の自動機の癖に合わせるなどのきめ細やかなサービスを提供し、お客様の満足度向上を目指しています。
取材者:
最初の質問は、医療用、自動車用製品に関しても、品質の価値を高めるという戦略をとっているのか、ということでございました。
回答者:
はい。自動車用製品、先ほど申し上げましたように、かなり特殊な製品を取り扱っております。
品質マネジメントシステムというものが存在し、当社はIATF 16949という品質マネジメントシステムの認証を取得しております。これは、自動車用部品の品質を管理するためのISO9001のようなものですが、当然取得しております。それ以外にも、アドバネクス・クオリティ・スタンダードという、品質管理の要点をまとめた独自の基準を制定し、国内外の拠点で品質管理を徹底しております。自動車向けとしては、そのような品質管理体制を構築しております。
取材者:
国際的な基準よりも、貴社独自の基準の方が重要度が高いということですか。
回答者:
両方の基準に基づいて管理しているということです。
専門的な話になりすぎたかもしれません。投資家の皆様には難解な情報だったでしょうか。
取材者:
そのようなことはないかと存じます。貴社の高い技術力と、品質の高い製品をどのように提供しているかということは、貴社にとって重要な情報になると考えます。
ところで、医療用製品について、製造ラインごとに規格が少しずつ異なるというお話がありましたが、それはかなり特殊な対応をしているということですか。
回答者:
癖、と申し上げればよろしいでしょうか。表現が難しいのですが。
医療用製品では、品質が問題になったことはあまりございません。
取材者:
お客様の自動機の癖に合わせて、少しずつ調整されているということですね。
回答者:
あくまでも一つの事例としてご紹介しました。つまり、お客様の細かいご要望にお応えすることが、当社の強みだと考えております。
通常、お客様の自動機の癖に合わせて調整するということは、あまり行われないかと存じます。特に海外のお客様、海外のサプライヤーは、決して行わないと思います。
そのような点まで、お客様の立場に立って提案できるというのが、当社の強み、持ち味です。例えば、お客様から図面をいただき、この部品はいくらで製造できます、と回答するのが一般的な流れですが、当社はお客様から図面をいただいたら、このようにすれば貴社において歩留まりが向上し、当社でも製造しやすくなります、とか、このようなお困りごとがあるようでしたら、このようにすれば解決できるかと存じます、というように図面にして、こちらから積極的に提案いたします。お客様に積極的に提案し、付加価値を高めていくというのが、当社のスタイルです。
取材者:
現場レベルでは、アドバネクス製品の使用感、評価は高いそうですが、いかがですか。
回答者:
そのような評価をいただいていると伺っております。
取材者:
貴社創業の経緯について、お教えいただけますか。
回答者:
創業は1930年、会社設立は1946年です。詳細については、当社のホームページの沿革をご覧ください。
創業時は、テンプレスばねという、秤に使用されるばねを製造しておりました。昔の秤は、夏と冬で伸縮率が異なるばねを使用していたため、夏はこの目盛りを使用し、冬はこの目盛りを使用するというように使い分ける必要があったそうです。
当社が開発したばねは、冬でも夏でも伸縮率が変化しないため、秤のばねとして、創業時に90%ほどの高いシェアだったそうです。
取材者:
秤のばねから事業を拡大され、様々な用途のばねを製造されるようになったのですね。
回答者:
20~30年前は、例えば、フロッピーディスクの部品を製造しておりました。フロッピーディスクの可動部分に使用される部品で、世界でもかなりのシェアを獲得していた時期がありました。
また、カセットテープ、音楽用のカセットテープやビデオテープの部品も製造しておりました。カセットテープやビデオテープの部品において、世界でも過半数のシェアを占めていたと記憶しております。
もう少し最近では、携帯電話、いわゆるガラケーのヒンジ部分ですね。開閉するときの軸の部分です。あちらも世界シェアの5割程度を占めていた時期がありました。
ばね、というか板ばねですね。携帯電話の形状を維持するための部品です。
開閉のスムーズさ、クリック感、開閉時の適切な抵抗感などが求められる部品です。
現在はもう全てなくなってしまいましたが。カセットテープもビデオもVHSも、フロッピーディスクもガラケーもございません。かつては、エレクトロニクス、精密機器、民生用家電製品が、当社の主力市場でした。
OA機器、複合機やプリンターの部品なども、身近な製品が当社の主要な市場でした。しかし、市場を独占して過半数のシェアを獲得しても、その市場自体がなくなると、事業の変動が非常に大きかったのです。
業績が良い時期もあれば悪い時期もあり、また新しい製品が登場してシェアを獲得しても、すぐに陳腐化してしまう、ということを繰り返しておりました。
それを改善するために、自動車産業に軸足を移すことにいたしました。自動車は、携帯電話のように短期間でモデルチェンジすることはありません。例えば、携帯電話などは半年でモデルチェンジしたり、デジタルカメラなども1年、長くても1年程度しか製造期間がなく、次々とモデルチェンジしていきます。製品のライフサイクルが非常に短いのです。
説明会資料でもご説明しておりますが、そうではなく、製品のライフサイクルが長い市場にポートフォリオを転換するという戦略をとりました。
その転換に10年ほどかけて取り組んでおります。つまり、製品のライフサイクルが短いものから、長いもの、すなわち自動車、医療、インフラに注力していくというのが、当社の戦略です。秤のばねから始まり、様々な経験を経て、現在、安定して長期的に収益を確保できる事業に、ポートフォリオ、軸足を移している最中ということです。
取材者:
安定的な経営基盤を構築するために、例えば、ガラケーのような新しい製品が登場した際に業績が大きく変動しても対応できるように、成長戦略を描いているということですか。つまり、変動の大きい製品に軸足を置かないということですね。
回答者:
はい。まだ多少は取り扱いがございますが、主要な軸足を置くのは、医療、自動車、航空機、インフラなど、20年というスパンで安定的な成長が見込める市場です。
おかげさまで、直近の業績は非常に安定しております。
説明会資料にも記載しておりますが、長期的に成長が見込める市場に投資し、長く使用される製品を製造するというのが、当社の基本的な戦略です。医療や航空機は、その代表例と言えると思います。
中期経営計画の4大テーマとして、市場の成長性と製品のライフサイクルを考慮し、注力する市場を選定しております。
以前は、精密家電などが主力でしたが、製品寿命が短く、収益性が不安定でした。現在は、製品のライフサイクルが長く、収益性の高い市場に注力しております。
医療市場は、使い捨て医療機器の市場が拡大しており、今後も成長が見込まれます。航空機市場も同様に、長期的な成長が見込まれます。当社は、これらの成長市場に参入することで、持続的な成長を目指しております。
取材者:
これらの市場は、為替の影響を除けば、順調に推移しているということですか。
回答者:
おかげさまで、今期(2025/3期)はここ10年来で最も高い営業利益を達成する見込みです。
取材者:
株主還元策について、方針などお聞かせいただけますか。
回答者:
株主還元策については、積極的な取り組みはできていないのが現状です。株主の皆様への還元は、配当によるものが基本であると考えております。かつては株主優待も実施しておりましたが、QUOカードの配布という内容でしたので、廃止し、配当による還元に注力しております。
配当性向は、経済情勢など業績に影響を与える要因により、安定しておりませんが、基本的には30%を目標としております。自社株買いも、積極的に実施しているとは言えません。
株主還元というテーマでは、特筆すべき取り組みはございませんが、安定的な配当を継続していくことが、株主の皆様への還元になると考えております。
取材者:
トピックスとしてご紹介できる情報などございましたら、ご説明ください。
回答者:
タイに工場に新工場を建設いたしました。また、現時点では未発表の情報ですが、アメリカの医療機器工場を拡張する予定です。現在の工場では、需要の増加に対応しきれない見込みのため、前倒しで拡張することにいたしました。
20250402_CP&X
ビジネスモデルや事業内容
アドバネクスは、11カ国に20の生産拠点を持ち、グローバルに事業を展開するばね業界における独自の地位を確立している企業である。同社のビジネスモデルは、グローバル体制を活かした付加価値の提供であり、自動車業界や医療業界など、世界的に事業展開する顧客のニーズに応えることを特徴とする。
創業の経緯と転機となった出来事
同社は1930年の創業で、当初は秤に使用されるばねを製造していた。かつては、フロッピーディスク部品、カセットテープ部品、携帯電話のヒンジ部品など、エレクトロニクス、精密機器、民生用家電製品が主力市場であった。しかし、これらの市場は製品のライフサイクルが短く、業績変動が大きかったため、自動車産業へと軸足を移すという転換を図った。
特徴や強み
同社の強みは、グローバルネットワークを活かした付加価値提供力である。自動車業界においては、部品の共通化が進む中で、日本、メキシコ、中国、タイといった各国の工場から、顧客のニーズに合わせた部品供給体制を構築している。医療業界においても、グローバル展開する顧客に対し、各地の工場から製品を供給することで、地産地消に近い対応を可能にしている。
また、品質へのこだわりも同社の大きな特徴であり、コイルスレッドにおいては、他社よりも厳しい公差基準を設定することで、高い評価と信頼を得ている。医療用製品においては、顧客の自動機の癖に合わせたカスタム対応力を発揮し、顧客の細かい要望に応えることで、差別化を図っている。
成長戦略
同社の成長戦略は、長期的な成長が見込める市場への注力である。具体的には、自動車、医療、航空機、インフラといった、製品ライフサイクルが長い市場に軸足を移し、安定的な収益の確保を目指す。
株主還元策
株主還元については、配当によるものが基本方針である。配当性向は経済情勢等により変動するが、基本的には30%を目標としている。
今期の取り組みやトピックス
タイ工場の新設、およびアメリカの医療機器工場の拡張計画がある。アメリカの工場拡張は、需要増加への対応として、前倒しで実施される予定である。
IR担当

(株)アドバネクス
東証STD 5998
決算:3月 末日
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:当社は、11カ国に20の生産拠点を有するグローバル体制を構築しており、このグローバルネットワークを活かした付加価値の提供が強みです。自動車業界においては、部品の共通化が世界的に進む中で、当社は日本で納入している部品と同じものを、メキシコ、中国、タイといった海外拠点から供給できる体制を整えています。これにより、自動車メーカー様は、地域を問わず一貫した品質の部品を調達できるというメリットを享受できます。
医療業界においても同様に、グローバル展開する大手製薬会社に対し、各地の工場から製品を供給することで、地産地消に近い形で顧客のニーズに応えることが可能です。
さらに、当社は、品質へのこだわりを重視しており、例えば、コイルスレッドにおいては、他社よりも厳しい公差を設定しています。この品質重視の姿勢が、顧客からの高い評価と信頼につながっています。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?
A:当社の成長戦略のポイントは、長期的な成長が見込める市場への注力です。具体的には、自動車、医療、航空機、インフラといった、製品ライフサイクルが長い市場に軸足を移すことで、安定的な収益の確保を目指しています。
医療市場は、使い捨て医療機器の市場拡大を背景に、今後も成長が見込まれており、航空機市場も同様に長期的な成長が期待できます。これらの成長市場への参入を通じて、持続的な成長を目指すことが、当社の基本的な戦略です。
トピックスとしては、タイに新工場を建設したこと、そして、アメリカの医療機器工場を拡張する計画があることが挙げられます。アメリカの工場拡張は、需要増加に対応するための前倒しでの決定となります。
Q:株主還元の方針をご説明ください?
A:株主還元については、配当によるものが基本であると考えております。配当性向は、経済情勢など業績に影響を与える要因により安定しておりませんが、基本的には30%を目標としております。株主優待については、かつてはQUOカードの配布を実施しておりましたが、現在は廃止し、配当による還元に注力しております。
取材者:
貴社のビジネスモデルと事業内容につきまして、特徴や強みを含めてご説明いただけますでしょうか。
回答者:
はい。当社は11カ国に拠点を置いており、工場は世界に20ヶ所ございます。日本を含め、グローバルに事業を展開しております。ばね業界においては、独自の地位を築いていると認識しております。
11カ国に20の生産拠点を持つグローバル体制を活かした、付加価値の提供が当社の強みです。
例えば、自動車業界では、現在地域によって分断化が進んでおりますが、基本的には、部品の共通化が世界的に行われています。自動車メーカー様にとっては、日本で納入している部品と同じものを、メキシコ、中国、タイで調達できることは、大きなメリットとなります。当社のメキシコ、タイ、中国の工場に、日本で採用した部品と同じものを納入できることは、非常に有益です。この点で、お客様にご評価いただいております。
医療業界も同様の構造です。グローバルな大手製薬会社が、欧米を中心に複数社ございますが、これらの企業も自動車業界と同様に、同じ製品をアメリカ、チェコ、イギリスに納入してほしいというニーズをお持ちです。当社は各地に工場がございますので、お客様の世界各地の工場に、地産地消に近い形で製品を供給できることが、当社の強みでございます。
取材者:
立地は、主なお客様の工場が世界各地に建設されるのに合わせて決定されるという理解でよろしいでしょうか。
回答者:
元々はそういう考え方もございました。OA機器のトップメーカーが元々当社にとって最大の取引先であり、同社の進出に合わせて工場を設立していた時期もありました。しかし、最近の進出の形態は変化しており、特定のお客様に追随するというよりは、自動車業界のように多くのお客様が進出している地域に、自社の意思で進出するというケースが多いです。
例えば、メキシコは、アメリカ向けの供給拠点として、自動車産業が非常に発展しています。当社は、自動車部品メーカー様の下層に位置するいわゆるTier1の部品メーカー様に部品を納入する立場にあります。自動車部品メーカー様は、メキシコに多数進出しておられますので、同地域に進出すれば需要を獲得できると考え、進出しております。これが、最近の進出に関する考え方です。
取材者:
貴社のように、多数の国へ進出している企業は少ないのでしょうか。
回答者:
そんなことはございませんが、進出している国数においては、当社がばね業界、精密金属加工業界において、突出していると認識しております。
取材者:
多数の国に工場をお持ちですが、日本で製造する製品と同じものを各地に供給できるという強みに関して、どのような理由や戦略がございますか。
回答者:
大きく分けて二つのパターンがございます。現地の工場から発注を受けて納入するパターンと、日本から、例えばタイ工場で製造した製品を当社のタイ工場に納入するように指示するパターンです。単純に需要がある地域に進出するというのが基本的な考え方です。その上で、日本と連携することで、お客様に付加価値を提供しております。
お客様の現地工場では、裁量が限られている場合がございます。そのため、日本ではサプライチェーンなどを決定してから、現地工場に製造を指示するという流れもございます。
基本的に、製造している製品は類似しております。市場があるところ、需要があるところに進出し、グローバル展開を最大限に活用することが重要であると考えております。
例えば、医療業界では、北米とヨーロッパが主要な市場であり、お客様も北米とヨーロッパに集中して生産拠点を持っています。お客様がアメリカで立ち上げた製品をヨーロッパでも展開する場合、当社はヨーロッパにも工場がございますので、お声がけいただきやすい状況です。お客様のグローバル展開と、当社のグローバル展開が相乗効果を生んでいると言えるかと存じます。
取材者:
全社として事業を展開される中で、技術水準をどのように維持されているのですか。
回答者:
まず、工場を立ち上げる際には、当然当社の有する技術を移転いたします。しかし、現地の従業員を採用し、教育していくことになりますので、日本の水準を完全に維持することは難しいのが現実です。
そのため、日本本社には、インストラクター制度と申しましょうか、「Advanex Production Training Project(APTP)」という認定制度がございます。これは社内認定制度であり、認定を受けた従業員のみが指導できるという仕組みです。
日本の技術者や作業者の技能向上を図るため、テキストに基づいた座学や実地試験などを実施し、認定を行います。認定を受けた従業員が、海外の工場で当社の技術や知識を指導するというのが、基本的な流れです。また、海外の従業員が日本で研修を受けることもございます。
取材者:
海外の方が日本で研修を受ける場合も、認定を受けるのですか。
回答者:
日本での認定制度とは異なります。日本の認定制度は日本語で行われますので、制度としては少し異なります。
取材者:
認定を受けるのは、かなり難しいのでしょうか。
回答者:
はい。ある程度長期のプログラムを組んで実施したりするなど、高い基準を設定しております。なお、合格者は受験者の3分の1程度で、認定書を授与しています。
また、国家資格である「ばね検定」の取得も、会社として強く推奨しております。取得にかかる費用、学費、受験料などは会社が負担いたします。さらに、取得者には人事評価上の優遇や報奨金を支給するなど、従業員個々人が国家資格、ばねや加工技術に関する資格を取得することを奨励しております。社内資格制度と、国家資格制度の取得の両方を推奨しているということです。
取材者:
現在、両方の資格を保有している方はどのくらいいらっしゃいますか。
回答者:
国家資格には、大きく分けて3種類ございます。線ばね、板ばね、熱処理です。従業員は、それぞれが学びたい分野の資格を取得します。資格保有者は50名程度で、中には3つの資格をすべて保有している従業員もいます。
社内のインストラクター資格については80名程度の従業員が保有しているかと存じます。国家資格保有者50名のほとんどがインストラクター資格も保有しているので両方取得しているのは40名程度でしょうか。
取材者:
そういった方々が指導することで、技術力が維持されているということですか。
回答者:
はい。実際には様々な課題が発生しておりますが、海外の工場の技術水準を、日本と同水準に引き上げるための努力を、このような方法で実施しております。IR情報として開示しても問題ないかと存じます。
取材者:
貴社の代表的な製品について、他社製品と比較した際の違いはどのような点でしょうか。
回答者:
まずはコイルスレッドに限定してお話しさせていただきます。コイルスレッドを製造しているのは、日本とイギリスのみです。他社との差別化という点でご説明いたしますと、いくつかの競合製品がございます。ドイツのメーカーが最も有力で、次にアメリカのコイルスレッドメーカー、当社は3番手という状況です。
現場の声をお聞きすると、アドバネクス製は使いやすいという評価をいただいております。理由としましては、公差を厳しく設定していることが挙げられます。他社製品よりも厳しい公差を設定しておりますので、他社では良品として許容されるものも当社では許容せず0良品として出荷しておりません。厳しい公差を設定した当社製品はねじ穴にスムーズに挿入できるなど作業性が優れています。
このように、現場での使いやすさを追求した製品を提供しております。その結果、高い評価と信頼を得て、ブランド力も向上し、多少価格が高くても、アドバネクス製をご指名で購入いただくこともございます。
当社は、品質を高めることによって、ブランド価値を高めるという戦略を、コイルスレッドにおいて実践しております。公差を緩くすれば、歩留まりが向上し、収益も高まりますが、当社はあえて公差を厳しく設定し、ブランド価値を高めるという戦略をとっております。
取材者:
品質を重視するという戦略は、医療用、自動車用製品においても同様ですか。
回答者:
医療用製品に関しては、少しニュアンスが異なります。医療用製品は、非常に大量に生産されます。お客様によっては、複数の製造ラインをお持ちです。
製造ラインの自動機ごとに、癖がある場合がございます。例えば、お客様のAラインではこの寸法が最適であるが、Bラインではわずかに小さめの内径が適している、Cラインではわずかに大きめの内径が適している、といった具合です。
競合のばねメーカーはそのような対応をされないそうですが、当社はお客様の細かいご要望にもお応えする、きめ細やかな対応を心がけております。いわば、カスタム対応力です。
コイルスレッドは規格製品ですので、工業規格にできる限り近づけるよう精度を上げていくという考え方で製造しております。一方、医療用製品はカスタム製品ですので、お客様の自動機の癖に合わせるなどのきめ細やかなサービスを提供し、お客様の満足度向上を目指しています。
取材者:
最初の質問は、医療用、自動車用製品に関しても、品質の価値を高めるという戦略をとっているのか、ということでございました。
回答者:
はい。自動車用製品、先ほど申し上げましたように、かなり特殊な製品を取り扱っております。
品質マネジメントシステムというものが存在し、当社はIATF 16949という品質マネジメントシステムの認証を取得しております。これは、自動車用部品の品質を管理するためのISO9001のようなものですが、当然取得しております。それ以外にも、アドバネクス・クオリティ・スタンダードという、品質管理の要点をまとめた独自の基準を制定し、国内外の拠点で品質管理を徹底しております。自動車向けとしては、そのような品質管理体制を構築しております。
取材者:
国際的な基準よりも、貴社独自の基準の方が重要度が高いということですか。
回答者:
両方の基準に基づいて管理しているということです。
専門的な話になりすぎたかもしれません。投資家の皆様には難解な情報だったでしょうか。
取材者:
そのようなことはないかと存じます。貴社の高い技術力と、品質の高い製品をどのように提供しているかということは、貴社にとって重要な情報になると考えます。
ところで、医療用製品について、製造ラインごとに規格が少しずつ異なるというお話がありましたが、それはかなり特殊な対応をしているということですか。
回答者:
癖、と申し上げればよろしいでしょうか。表現が難しいのですが。
医療用製品では、品質が問題になったことはあまりございません。
取材者:
お客様の自動機の癖に合わせて、少しずつ調整されているということですね。
回答者:
あくまでも一つの事例としてご紹介しました。つまり、お客様の細かいご要望にお応えすることが、当社の強みだと考えております。
通常、お客様の自動機の癖に合わせて調整するということは、あまり行われないかと存じます。特に海外のお客様、海外のサプライヤーは、決して行わないと思います。
そのような点まで、お客様の立場に立って提案できるというのが、当社の強み、持ち味です。例えば、お客様から図面をいただき、この部品はいくらで製造できます、と回答するのが一般的な流れですが、当社はお客様から図面をいただいたら、このようにすれば貴社において歩留まりが向上し、当社でも製造しやすくなります、とか、このようなお困りごとがあるようでしたら、このようにすれば解決できるかと存じます、というように図面にして、こちらから積極的に提案いたします。お客様に積極的に提案し、付加価値を高めていくというのが、当社のスタイルです。
取材者:
現場レベルでは、アドバネクス製品の使用感、評価は高いそうですが、いかがですか。
回答者:
そのような評価をいただいていると伺っております。
取材者:
貴社創業の経緯について、お教えいただけますか。
回答者:
創業は1930年、会社設立は1946年です。詳細については、当社のホームページの沿革をご覧ください。
創業時は、テンプレスばねという、秤に使用されるばねを製造しておりました。昔の秤は、夏と冬で伸縮率が異なるばねを使用していたため、夏はこの目盛りを使用し、冬はこの目盛りを使用するというように使い分ける必要があったそうです。
当社が開発したばねは、冬でも夏でも伸縮率が変化しないため、秤のばねとして、創業時に90%ほどの高いシェアだったそうです。
取材者:
秤のばねから事業を拡大され、様々な用途のばねを製造されるようになったのですね。
回答者:
20~30年前は、例えば、フロッピーディスクの部品を製造しておりました。フロッピーディスクの可動部分に使用される部品で、世界でもかなりのシェアを獲得していた時期がありました。
また、カセットテープ、音楽用のカセットテープやビデオテープの部品も製造しておりました。カセットテープやビデオテープの部品において、世界でも過半数のシェアを占めていたと記憶しております。
もう少し最近では、携帯電話、いわゆるガラケーのヒンジ部分ですね。開閉するときの軸の部分です。あちらも世界シェアの5割程度を占めていた時期がありました。
ばね、というか板ばねですね。携帯電話の形状を維持するための部品です。
開閉のスムーズさ、クリック感、開閉時の適切な抵抗感などが求められる部品です。
現在はもう全てなくなってしまいましたが。カセットテープもビデオもVHSも、フロッピーディスクもガラケーもございません。かつては、エレクトロニクス、精密機器、民生用家電製品が、当社の主力市場でした。
OA機器、複合機やプリンターの部品なども、身近な製品が当社の主要な市場でした。しかし、市場を独占して過半数のシェアを獲得しても、その市場自体がなくなると、事業の変動が非常に大きかったのです。
業績が良い時期もあれば悪い時期もあり、また新しい製品が登場してシェアを獲得しても、すぐに陳腐化してしまう、ということを繰り返しておりました。
それを改善するために、自動車産業に軸足を移すことにいたしました。自動車は、携帯電話のように短期間でモデルチェンジすることはありません。例えば、携帯電話などは半年でモデルチェンジしたり、デジタルカメラなども1年、長くても1年程度しか製造期間がなく、次々とモデルチェンジしていきます。製品のライフサイクルが非常に短いのです。
説明会資料でもご説明しておりますが、そうではなく、製品のライフサイクルが長い市場にポートフォリオを転換するという戦略をとりました。
その転換に10年ほどかけて取り組んでおります。つまり、製品のライフサイクルが短いものから、長いもの、すなわち自動車、医療、インフラに注力していくというのが、当社の戦略です。秤のばねから始まり、様々な経験を経て、現在、安定して長期的に収益を確保できる事業に、ポートフォリオ、軸足を移している最中ということです。
取材者:
安定的な経営基盤を構築するために、例えば、ガラケーのような新しい製品が登場した際に業績が大きく変動しても対応できるように、成長戦略を描いているということですか。つまり、変動の大きい製品に軸足を置かないということですね。
回答者:
はい。まだ多少は取り扱いがございますが、主要な軸足を置くのは、医療、自動車、航空機、インフラなど、20年というスパンで安定的な成長が見込める市場です。
おかげさまで、直近の業績は非常に安定しております。
説明会資料にも記載しておりますが、長期的に成長が見込める市場に投資し、長く使用される製品を製造するというのが、当社の基本的な戦略です。医療や航空機は、その代表例と言えると思います。
中期経営計画の4大テーマとして、市場の成長性と製品のライフサイクルを考慮し、注力する市場を選定しております。
以前は、精密家電などが主力でしたが、製品寿命が短く、収益性が不安定でした。現在は、製品のライフサイクルが長く、収益性の高い市場に注力しております。
医療市場は、使い捨て医療機器の市場が拡大しており、今後も成長が見込まれます。航空機市場も同様に、長期的な成長が見込まれます。当社は、これらの成長市場に参入することで、持続的な成長を目指しております。
取材者:
これらの市場は、為替の影響を除けば、順調に推移しているということですか。
回答者:
おかげさまで、今期(2025/3期)はここ10年来で最も高い営業利益を達成する見込みです。
取材者:
株主還元策について、方針などお聞かせいただけますか。
回答者:
株主還元策については、積極的な取り組みはできていないのが現状です。株主の皆様への還元は、配当によるものが基本であると考えております。かつては株主優待も実施しておりましたが、QUOカードの配布という内容でしたので、廃止し、配当による還元に注力しております。
配当性向は、経済情勢など業績に影響を与える要因により、安定しておりませんが、基本的には30%を目標としております。自社株買いも、積極的に実施しているとは言えません。
株主還元というテーマでは、特筆すべき取り組みはございませんが、安定的な配当を継続していくことが、株主の皆様への還元になると考えております。
取材者:
トピックスとしてご紹介できる情報などございましたら、ご説明ください。
回答者:
タイに工場に新工場を建設いたしました。また、現時点では未発表の情報ですが、アメリカの医療機器工場を拡張する予定です。現在の工場では、需要の増加に対応しきれない見込みのため、前倒しで拡張することにいたしました。
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ビジネスモデルや事業内容
アドバネクスは、11カ国に20の生産拠点を持ち、グローバルに事業を展開するばね業界における独自の地位を確立している企業である。同社のビジネスモデルは、グローバル体制を活かした付加価値の提供であり、自動車業界や医療業界など、世界的に事業展開する顧客のニーズに応えることを特徴とする。
創業の経緯と転機となった出来事
同社は1930年の創業で、当初は秤に使用されるばねを製造していた。かつては、フロッピーディスク部品、カセットテープ部品、携帯電話のヒンジ部品など、エレクトロニクス、精密機器、民生用家電製品が主力市場であった。しかし、これらの市場は製品のライフサイクルが短く、業績変動が大きかったため、自動車産業へと軸足を移すという転換を図った。
特徴や強み
同社の強みは、グローバルネットワークを活かした付加価値提供力である。自動車業界においては、部品の共通化が進む中で、日本、メキシコ、中国、タイといった各国の工場から、顧客のニーズに合わせた部品供給体制を構築している。医療業界においても、グローバル展開する顧客に対し、各地の工場から製品を供給することで、地産地消に近い対応を可能にしている。
また、品質へのこだわりも同社の大きな特徴であり、コイルスレッドにおいては、他社よりも厳しい公差基準を設定することで、高い評価と信頼を得ている。医療用製品においては、顧客の自動機の癖に合わせたカスタム対応力を発揮し、顧客の細かい要望に応えることで、差別化を図っている。
成長戦略
同社の成長戦略は、長期的な成長が見込める市場への注力である。具体的には、自動車、医療、航空機、インフラといった、製品ライフサイクルが長い市場に軸足を移し、安定的な収益の確保を目指す。
株主還元策
株主還元については、配当によるものが基本方針である。配当性向は経済情勢等により変動するが、基本的には30%を目標としている。
今期の取り組みやトピックス
タイ工場の新設、およびアメリカの医療機器工場の拡張計画がある。アメリカの工場拡張は、需要増加への対応として、前倒しで実施される予定である。
IR担当