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(株)アドバネクス

東証STD 5998

決算:3月末日

20251120

CP&X


【2026年3月期 第2四半期】

決算概要

医療向け事業の牽引と為替差益により、航空機向けの苦戦を補い大幅増益を達成

売上高14,537百万円(前年同期比5.1%増)、営業利益626百万円(同86.4%増)の増収増益での着地。利益面では、収益性の高い医療向け事業の伸長が全体の業績を牽引したことに加え、前期1,000百万円強の為替差損から今期は為替差益へ転じたことが寄与。マレリとの係争解決に伴う一過性の損失100百万円を計上したものの、全体としては順調な進捗。


セグメント別または事業別の増減要因

医療向けの多国間展開が奏功する一方、航空機向けは関税影響で一時低迷

医療向け事業は、英国発のビジネスモデルを米国へ横展開し、現地製薬メーカーからの新規受注獲得により急成長。一方、航空機向け事業は主力製品「コイルスレッド」の対米輸出時における関税区分変更(鉄鋼扱いによる高率関税化)が響き、顧客の買い控えにより第2四半期売上が減少。


主要KPIの進捗と変化

メキシコ拠点の損益分岐点適正化と医療向け比率の上昇

メキシコ工場における損益構造の改善と、それに伴う赤字幅の前期比3分の1程度への縮小。米国拠点における医療向け事業の売上構成比率の拡大および高収益化。新規ビジネス立ち上げに伴う先行投資(チェコ拠点等)は、確実な新規受注に紐づく形での順調な進捗。


季節性・一過性要因の有無と影響

為替変動によるプラス効果と航空機向け関税によるマイナス影響

営業外収益における為替差益への転換による経常利益の押し上げ効果。特別損失として計上された係争解決金100百万円の一過性マイナス影響。航空機向け製品における関税率変更に起因した一時的な需要停滞と第2四半期業績への下押し圧力。


通期見通しと進捗率・達成可能性

会社計画据え置きなるも、社内見通しは公表数値を上振れる公算

第1四半期の好進捗に対し通期予想を据え置いたものの、社内的な着地見込みは公表数値を上回る想定。苦戦した航空機向け事業は関税回避策の浸透により第2四半期を底として第3四半期以降の回復を見込むほか、医療向け事業の好調継続が通期達成の確度を高める要因。


トピックス

拠点戦略の転換と次世代自動車向け製品の量産開始および資産売却

損益改善が進んだメキシコ工場における「守り」から「売上拡大による黒字化」へのフェーズ転換。日本・タイ拠点における来期からのEV向け次世代製品(バスバー、非接触センサー等)の量産開始による再成長シナリオ。シンガポール工場借地権売却に向けた手続きの進捗と、来期以降における特別利益計上の可能性。

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上場市場 証券コード

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取材アーカイブ

  • 決算概要

    2026年3月期第1四半期における売上高は前年同四半期比6.2%増の72億58百万円、営業利益は同268.2%増の4億7百万円、経常利益は3億54百万円(前年同四半期は32百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益は同495.5%増の3億97百万円となりました。

     

    セグメント別または事業別の増減要因

    営業利益が大きく改善した主な要因は、アメリカとメキシコの両子会社にあります。アメリカは前期に引き続き医療向けビジネスが拡大し、また、メキシコは工場の改善が進み赤字幅を圧縮したことで合わせて営業利益ベースで3億円程度改善しました。なお、日本、中国、東南アジアは微増、欧州は同微減となりました。

     

    主要KPIの進捗と変化

    当社は中期経営計画において、2027年3月期売上高290億円、営業利益15億円などいくつかの指標をKPIに設定しています。また、売上高の内訳についても医療向けを60億円、航空機向けを主とするコイルスレッドを30億円にそれぞれ目標値を設定しています。売上高290億円については、2026年3月期第1四半期決算発表にての修正業績予想のとおり、1年前倒しでそれを達成する見込みです。営業利益15億円については計画どおり2027年3月期に達成する見込みです。医療向けにつきましては想定以上に好調に推移し、今後も勢いが継続する様相であることから1年前倒しで達成する見通しです。一方、コイルスレッドは北米系航空機メーカーの不調もあり2027年3月期までの達成は難しい局面になっております。

     

    季節性・一過性要因の有無と影響

    2024年12月末で生産機能を停止したシンガポール工場は元々2025年3月までに売却する計画でしたが、2025年8月現在未だに売却できておりません。売却時期が延びることで15百万円/月のコスト負担がありますので、引き続き売却を急いでいます。なお、同工場売却による固定資産売却益(特別利益)は数億円程度を見込んでいます。つまり同工場売却により固定費削減と特別利益計上が見込めます。

     

    通期見通しと進捗率・達成可能性

    2025年8月8日発表の2026年3月期第1四半期決算発表のとおり、通期業績予想を上方修正しており、同予想の達成は十分可能と見ています。

     

    トピックス

    アメリカ工場の増設工事を2025年7月に着工しました。想定よりも医療向けばねの需要拡大スピードが速いため当初予定より2年前倒しました。完成は来年7月ごろを予定しており、工場スペースは従来の2.3倍となる予定です。

  • Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?

    A:中期経営計画の重点テーマとして医療向けと航空機向け市場に注力しています。特に医療向けは顧客の生産計画拡大のニーズに対し速やかに対応したことなどから売上は想定を超えるスピードで増加しています。航空機向けはマーケティング活動を積極化し、販売チャンネルの増加を図っています。自動車向けについては特にEV自動車向けの試作部品の受注に注力しておりまして、それらの施策は3、4年後の売上増加に寄与します。

     

    Q:通期予想の戦略と施策についてご説明ください。

    A:上記の「成長戦略のポイント・・・」にて説明させていただいたとおり、3つの注力市場に対してそれぞれ施策を打っていきます。

     

    Q:受注・競合状況についてご説明ください。

    A:当社グループは市場やエリアごとにそれぞれ競合状況に違いがあります。一方、ばねなどの精密金属加工部品業界では新規参入は多くなく、強力な競合の出現でシェアを奪われるリスクは高くありません。なお、日本や欧米市場においては逆に競合が減少していく傾向であるため、ますます有利な状況になっていくと見ています。

     

    Q:M&A、業務提携の実施または検討状況と、それに伴う影響についてご説明ください。

    A:業績改善に伴いM&Aも積極的に検討しています。市場や顧客獲得以外にも人材獲得なども目的にしています。

     

    Q:中期経営計画の内容や進捗状況等をご説明ください。

    A:当社は中期経営計画において、2027年3月期売上高290億円、営業利益15億円などいくつかの指標をKPIに設定しています。また、売上高の内訳についても医療向けを60億円、航空機向けを主とするコイルスレッドを30億円にそれぞれ目標値を設定しています。売上高290億円については、2026年3月期第四半期決算発表にての修正業績予想のとおり、1年前倒しでそれを達成する見込みです。営業利益15億円については計画どおり2027年3月期に達成する見込みです。医療向けにつきましては想定以上に好調に推移し、今後も勢いが継続する様相であることから1年前倒しで達成する見通しです。一方、コイルスレッドは北米系航空機メーカーの不振もあり2027年3月期までの達成は難しい局面になっております。

  • 経営企画室長 熊木 努 様

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​企業名

上場市場 証券コード

​決算日

取材アーカイブ

  • CP&X

     

    決算概要

    2025年3月期の通期決算は、売上高285億3,200万円(前期比7.5%増)、営業利益11億900万円(同203.1%増)、経常利益1億7,000万円(同△79.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益△6億2,800万円と、増収・営業利益は大幅な増益。営業利益の好調は医療ビジネスの収益性の高さが全体を押し上げたためである。一方、経常利益の大幅な減少と当期純利益の赤字転落は、前期の為替差益6億6,400万円に対し、今期為替差損が7億6,100万円発生した影響が大きかったためである。

     

    セグメント別または事業別の増減要因

    売上高の増加は、主にOA向けビジネスと医療ビジネスの好調によるものである。OA向けは、主要顧客の新製品好調に加え、中国での製造需要が東南アジアに移転したことを捉え、急伸した。医療ビジネスは、その高い収益性により、営業利益全体を押し上げる要因となった。

     

    季節性・一過性要因の有無と影響

    2025年3月期には、為替差損7億6,100万円の一過性要因が発生し、これが経常利益の大幅な減少および当期純利益の赤字転落に大きく影響した。また、係争関連の引当金やシンガポール工場の閉鎖に伴う特別損失の計上も、当期純利益のマイナス転落の一因である。

     

    通期見通しと進捗率・達成可能性

    2026年3月期の通期見通しは、売上高280億円(前期比△1.9%減)、営業利益5億円(同△54.9%減)、経常利益2億5,000万円(同46.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,000万円と、保守的な予想である。この保守的な見通しには、米国の関税問題によるエンドユーザーの売上減少可能性、2026年3月期に効果が出るというよりも2027年3月期以降のための先行投資35億円、中国市場の厳しさ、シンガポール工場の売却遅延による維持費、およびタイ新工場の稼働初期におけるランニングコストや4M変更申請に伴う費用増が織り込まれている。しかし、会社側は本業の堅調さから、この予想はおそらく上振れすると考えており、上振れを目指していく方針である。

     

    トピックス

    米国においては、医療用オートインジェクター、特に糖尿病向け製品の売上が好調に推移しており、将来的な見通しも明るい。当初2027年頃に計画されていた増築を2年前倒しし、今期中に実施を決定した。これにより一時的な償却費増による収益の足踏みはあり得るものの、売上高は着実に伸長し、将来的な利益の上振れに繋がる見込みである。タイ工場に関しては、新工場稼働に伴う初期の償却費負担があるものの、既に拡張余地がないほど受注が増加しており、数年後には工場規模に見合う売上が達成され、収益改善に貢献すると期待される。また、自動車関連においては、コロナ禍からの回復後、前期はコロナ禍を除けば前年同期を下回る数少ない年となり、今期も昨年並みで端境期にあるとの認識である。しかしながら、EV向けアイテムの受注が非常に活発であり、これらは来期、再来期あたりから徐々に量産開始されることで、再び成長期に突入するとの見通しである。

  • Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?

    A:当社の成長戦略のポイントは多岐にわたりますが、まず、EV向けアイテムの受注加速が挙げられます。現在、EV関連の新規受注が非常に好調に推移しており、これらが来期以降の量産開始に伴い、当社の売上高および業績の牽引役となることを期待しております。自動車産業全体の動向は一時的に停滞感があるものの、EVの本格的な普及は当社の事業拡大に大きく寄与すると見込んでおります。

    加えて、当社が掲げる「4つの重点テーマ」の達成も、今後の成長を支える重要な柱です。具体的には、医療分野のさらなる拡大、航空機向けの事業拡大、そしてシンガポール工場およびメキシコ工場のブレークイーブン達成を目指しております。これらの重点テーマを着実に実行し、目標を達成することで、当社の定量目標に近づくと考えております。今期もこれらのテーマに対し、約35億円の積極的な投資を継続していく方針であり、これらの取り組みが相乗効果を生み出し、持続的な成長を実現してまいります。

     

    Q:通期予想の戦略と施策についてご説明ください。

    A:2026年3月期の通期見通しは、売上高280億円(前期比△1.9%減)、営業利益5億円(同△54.9%減)、経常利益2億5,000万円(同46.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,000万円と、保守的な数値を設定しております。これは、関税影響、先行投資費用(約35億円)、タイ新工場の初期コスト、シンガポール工場の維持費、および4M変更申請プロセスに伴う費用増など、複数の要因を厳しく織り込んでいるためです。しかし、本業の堅調さを背景に、当社は医療・航空機事業の拡大、シンガポール・メキシコ工場のブレークイーブン達成という「4つの重点テーマ」に投資を継続し、保守的な予想を上回る業績達成を目指してまいります。

     

    Q:受注・競合状況は如何でしょうか?

    A:現在の新規受注状況は、特にEV向けのアイテムが非常に好調に推移しており、これらは2027年3月期以降の売上高の成長に大きく貢献するものと考えております。2025年3月期においては、OA向けビジネスと医療ビジネスが好調に推移し、売上拡大に寄与いたしました。OA向けは主要顧客の新製品好調と中国からの製造需要の東南アジア移転を捉えることで急伸し、医療ビジネスはその高い収益性で全体の利益を押し上げております。これらの既存事業の堅調な受注も、当社の競争力と今後の成長を下支えする重要な要素であると認識しております。

     

    Q:M&A、業務提携、事業売却などの実施または検討状況と、それに伴う影響についてご説明ください。

    A:現在、M&Aや業務提携の実施予定はございません。過去10年間のM&Aにおいては、インドネシアやアメリカにおける案件(現在は売却済み)などで失敗を経験しており、その反省から、現時点ではM&Aに対して消極的な姿勢をとっております。ただし、人材獲得を目的とした小規模な案件であれば、検討の余地はございます。

  • 取材者:2025年3月期の決算について、まず売上高が285億3,200万円と、前期比7.5%の増加、営業利益は11億900万円、前期比203.1%の増加、経常利益は1億7,000万円、前期比△79.5%の減少、親会社株主に帰属する当期純利益は△6億2,800万円と、増収・営業利益は大幅な増益でした。こちらの結果となった要因についてご説明をお願いできますか。

    回答者:まず売上に関しては、OA向けと医療ビジネスが好調で急拡大したことが要因です。OA向けはこれまで10数年右肩下がりで推移していましたが、今期に入り急伸しました。その背景には、主要顧客の新製品が好調だったことと、中国での複写機や複合機の製造需要が東南アジアに移転し、その需要をうまく捉えられたことが主な拡大要因です。営業利益については、医療ビジネスの収益性が高いため、その伸長が全体を押し上げました。経常利益に関しては、前期は為替差益が6億6,400万円だったのに対し、今期は為替差損が7億6,100万円発生したことが大きく影響しています。当期純利益がマイナスに転落したのは、この為替差損の影響に加え、シンガポール工場の閉鎖に伴う特別退職金、および係争関連の引当金が計上されたためです。

    取材者:営業利益の拡大において、市場別の医療機器の部分が構成比としても伸びていることが大きいですか。

    回答者:はい。一度、全体の流れを説明してから、個別の詳細に入らせていただきます。

    決算説明会資料のP3ですが、売上と営業利益の四半期ごとの推移はこのようになっております。当社は日本、米州、欧州、アジアとセグメントを分けていますが、子会社ごとに説明した方が分かりやすいので、そちらで説明いたします。決算説明会資料のP5ですが、こちらは営業利益のグラフです。アメリカについては、以前もお話ししましたが、オートインジェクターが非常にヒットしており、それが貢献しています。日本とベトナムについてのOA向けに関しては、先ほど説明した通りです。中国は市場の不況等の影響で、若干増加はしているものの、厳しい状況を維持しているといったところです。一番下のシンガポールとメキシコですが、シンガポールは元々生産を閉鎖する予定で今期まで進めてまいりました。前期よりも赤字幅は縮小したものの、最終段階でしたのでこの結果です。メキシコはかなり改善が進んでいます。これらについても個別に説明いたします。決算説明会資料のP6の市場別の推移ですが、自動車は微減あるいは横ばいです。医療向けは約30%増加と絶好調です。OA向けは10数年ぶりに増加いたしました。航空機向けについては横ばいです。主要なポイントを挙げるとすれば、そのあたりです。次に決算説明会資料のP7をご確認ください。前期も当社の投資額としては多い方でしたが、今期はさらに多くなっております。タイに新工場を建設し、全社的にERPシステムを導入しているため、数億円規模の投資がございます。その他、金型設備への投資など、将来を見据えた投資が今期はかなり増加しており、高額になっております。

    取材者:承知いたしました。

    回答者:それに伴い、減価償却費も多めに計上しています。2026年3月期の売上は280億円(前期比△1.9%減)、営業利益は5億円(同△54.9%減)、経常利益は2億5,000万円(同46.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,000万円を予想していますが、これは控えめではないかと感じられた方も多いと伺っております。その点について説明いたします。

    まず米国の関税問題ですが、相互関税が開始された場合、当社は国を跨いでの輸出はあまり多くありません。地産地消がほとんどですので、直接的な影響はほとんどないと考えています。しかしながら、エンドユーザーの売上が関税によって落ちる可能性はございますので、その影響を加味した場合、ベトナムは対米輸出が多いため影響を受ける可能性がございます。日本についても、トヨタ様が最終顧客となるケースが多いですが、アメリカ生産が主であることや、高級車のアメリカへの輸出が一定数あることを考慮し、多少影響を受けると想定しています。その他は内需向けであり、アメリカへの輸出自体が少ないため、全体的には影響は少ない方だと考えております。次に、決算説明会資料のP11の左上ですが、グループ全体の投資額が35億円とかなり多いです。これは今期に効果が出る投資というよりも、来期、差来期以降のための投資が先行しているため、負担が大きくなっております。中国については、現状では厳しめに見ていますが、蓋を開けてみれば予想を上回る可能性もございます。シンガポールは、前年度で閉鎖し、退職金を支払い、特別損失を計上しましたが、工場の売却が重なったものの、3月末までに売却できませんでした。詳細については後ほど説明しますが、売却しづらい背景がございます。この固定資産を持ち続けると維持費がかかり続けるため、期間が長引くほど無駄に営業利益を圧迫してしまう状況です。タイ工場は4月から新工場が稼働していますが、旧工場の4倍の規模がございます。そのため、新工場の規模やランニングコストに見合う売上がまだないため、しばらくはマイナスの影響が出ます。工場規模に見合う売上が上がってくれば、償却費やランニングコストも希薄化されると思いますが、少なくとも今期の段階ではロスが大きいと見ております。また、4M変更申請といって、材料、人員、工程などを変更する際には、顧客に事前にサンプルを提出し、評価してもらう必要がございます。すぐに承認が下りるケースもあれば、数ヶ月かかるケースもございますが、承認が下りてから切り替えが始まります。このプロセスを全アイテムで行わなければなりません。

    取材者:それはかなり多いですね。

    回答者:それら全てを加味して、厳しめに見て営業利益は5億円という予想ですが、おそらく上振れすると考えております。

    取材者:承知いたしました。かなり保守的な予想があるということですね。

    回答者:はい。保守的な予想で一旦置いた上で、もちろん上振れを目指していきます。

    取材者:タイ工場が本格稼働し、生産性が工場の規模に追いつくのはどれくらいの見込みですか。

    回答者:数年後になると思います。

    取材者:そうですね。

    回答者:はい。まだ空きスペースが多い状況です。

    取材者:まさに今画面に映されているところで、投資も含めて中期経営計画の2027年3月期売上高290億円に対する目標の進捗度合いはいかがでしょうか。

    回答者:ここから説明いたします。決算説明会資料のP14のグラフを見ると今期は落ち込んでいるように見えますが、そのようなことはございません。当社は重点テーマを4つ掲げており、医療の拡大、航空機向けの拡大、シンガポールとメキシコ工場のブレークイーブン達成です。この4つを達成することで、定量目標に近づくと考えております。それぞれの進捗ですが、医療は想定よりも進捗しており、航空機向けはやや遅れています。シンガポールは遅れていますが、メキシコは進捗しています。このような評価です。まず医療ですが、決算説明会資料のP16のグラフを見ていただければ一目瞭然ですが、今期中に60億円は達成できそうです。というのも、ラインナップがかなり増えています。使い捨て医療キットの裾野が広がっており、様々なタイプのデバイスが生まれています。そこに当社も横展開で参入できたこともあり、多種多様なデバイスに採用されるようになりました。これが今後さらに立ち上がってくる背景がございます。医療デバイスの良い点は4つのカテゴリーに分けて説明できます。まずマクロ的にはマーケットが拡大している点です。中間所得層が世界的に増えており、例えばアフリカやインドの人々が中間所得層になることで、これまで受けられなかった医療サービスを受けられるようになります。世界的にそのような人口は増加傾向にございます。また、通院して医師の診断を受けながら治療するよりも、自宅で週に1回自己注射する方が医療費負担を抑えられるため、国家予算を圧迫する医療費を抑えたいというニーズが世界各国で高まっています。さらに、使用承認国も増加しています。糖尿病薬は2022年にアメリカで承認されましたが、今年から日本、韓国、オーストラリア、イタリア、イギリスでも承認され、使用が開始されました。来期、再来期と使用できる国が増えていく見込みです。これがマクロ的な背景です。次に利便性ですが、通院する必要がないこと、経口薬のように朝晩や1日3回服用する必要がなく、週1回で済むなど、簡便である点が挙げられます。また、プライバシーの面でも、通院することで近所の人に病気を知られる心配がないというメリットもございます。薬効の面では、錠剤などは胃液で溶かされたり、全身に作用したりするため、直接喉に粉を噴霧したり、血液に直接投与したりする場合と比較して、効果が落ちたり、全身に作用したりする可能性もございます。週1回の投与で済むため、継続率も高く、効果の面でも有利であると言われています。また、サプライヤーが増えていることも、今後の長期的な拡大の裏付けになると考えております。実際にリサーチ会社による見通しでも、急拡大するというデータもございますので、貴社も非常に期待している分野です。次に決算説明会資料のP20の航空機向けですが、ここはやや遅れが見られると評価しております。30億円の達成は厳しいかもしれません。

    取材者:承知いたしました。

    回答者:背景としては、右側の部分ですが、受注自体はあるのですが、サプライチェーンの問題で製造できない状況がしばらく続いているようです。

    取材者:承知いたしました。

    回答者:どこがボトルネックになっているのかは不明ですが、部品不足等で製造できない状況だと認識しています。しかし、今後長期にわたって需要が衰えることはございませんので、いずれサプライチェーン問題が解決すれば増加していくと考えております。この問題がいつ解決するかは分かりません。徐々に受注は増えていますが、具体的な解決時期は不明です。報道等も調べましたが、サプライチェーン問題については、具体的な不足部品や解決時期は把握できておりません。ボーイング社が昨年問題を起こしたり、ストライキが発生したりと、会社として大変な状況でしたが、それもかなり影響していると考えております。

    取材者:はい。

    回答者:次に決算説明会資料のP22のメキシコ工場の改善状況ですが、去年の今頃に想定していたよりも早く改善が進んでいる状況です。これまでかなりの損失を出していましたが、今期に入ってからは右肩上がりにマイナス幅が縮小し、3月には単月での営業黒字化を達成しました。これは当社にとって記念すべき出来事でした。日本から多くのメンバーをメキシコに派遣し、現場レベルでの改善を図ってきました。それによって適正な人員配置への削減や、稼働率、不良率、無駄の削減など、工場としての基盤、つまりあるべき工場のオペレーションが改善され、数字にも顕著に表れています。写真を見ても、工場内は整理整頓され、非常に改善されております。実は、材料や工具などが盗まれるという事態が実際にあったようです。説明会などで直接お話しすることはできませんでしたが、それがなくなり、改善につながったという背景もございます。ここのマイナスがなくなるだけでも、相当なプラス要因になります。

    取材者:その通りですね。

    回答者:次に決算説明会資料のP23のシンガポールですが、写真の通り、いつでも売却できる準備はできていますが、立地を見ていただくと、空港から5~10分、地下鉄の駅からは3分と非常にアクセスが良い場所にございます。

    取材者:はい。素晴らしい立地ですね。

    回答者:都市化が進んでいるため、逆に売却しづらくなっています。例えば、銀座の真ん中に水産加工工場を建設するとなると、好ましくないですよね。そのため、実際に水産加工業者から高い金額を提示されたのですが、国からの妨害が入り、売却ができませんでした。国内電気部品メーカー様からも打診がありましたが、製造業は勘弁してほしいといった意向があり、なかなか適切な業種の買い手が見つからない状況が続いています。今期の上半期中には売却したいと考えております。

    取材者:はい。

    回答者:早く売却できれば、その分マイナスの影響がなくなるため、最重要事項に近いと認識しています。

    次にトピックスですが、アメリカについてはお話しした通り、医療向けオートインジェクターが非常に売れており、今後の見通しも非常に明るいです。当初は2年後の2027年頃に増築を計画していましたが、稼働率が非常に高くなってきているため、2年前倒しして今期中に増築することが決定いたしました。そのため、この瞬間的に償却費が上がる分、アメリカ工場の収益は一時的に足踏みするか横ばいになるかもしれませんが、売上高は着実に伸びていくため、当然それは解消され、さらに上振れていくと考えております。

    次にタイ工場ですが、ここもタイ国内での償却費負担の話を先ほどしましたが、しばらくはこのタイ工場の規模に見合う売上規模になるまで数年かかりそうです。そうなってくると、また営業利益も稼げるようになってくると思います。既に拡張余地がなく、新しい仕事を受けられない状況になっていたため、比較的早く改善に向かうと期待しています。

    最後に自動車ですが、コロナ禍から回復し、今期は端境期にあると感じています。2025年3月期は、コロナ禍を除けば、前年同期を下回った数少ない年でしたが、今期も昨年並みとなり、端境期に入っていると感じています。しかしながら、新規受注状況を聞くと、EV向けのアイテムがものすごい勢いで受注されています。これらは来期、再来期あたりから徐々にスタートするタイミングですので、それらが入ってくると、再び成長期に入ってくるのではないかと考えております。自動車は一時的に停滞していますが、今後EVが本格化することで増加していく見込みです。

    取材者:はい、承知いたしました。

    回答者:最後にまとめですが、今期は為替差損や特別損失が大きかったものの、営業利益は20年代最高となり、本業は絶好調でした。2026年3月期の見通しはリスクを厳しく見ていますが、業績の更なる上振れを見据え、通期見通しの上方修正も視野に入れた戦略的な取り組みを進めてまいります。4つの重点テーマについては、良いものと悪いものが混在していますが、今期も35億円の投資を積極的に行っていく方針です。概ねこのようになります。

    取材者:何かその他、主要なKPIのようなものはございますか。

    回答者:主要なKPIと呼べるほど具体的なものはありませんが、粗利と営業利益です。

    取材者:その他、投資に関して、今後M&Aや業務提携の実施予定、あるいは進捗状況など、お答えできる範囲で教えていただけますか。

    回答者:予定はございません。M&Aについては失敗したという反省が強く残っております。例えば、インドネシアやアメリカの案件(売却して今はありませんが)など、この10年ほどでM&Aは失敗を経験しています。そのため、M&Aに対しては消極的です。ただし、小規模なものであれば、人材獲得やその他の目的のM&Aについては実施していきたいと考えております。なかなか良い案件は出てきませんが。

    取材者:そういった良いマッチングがあれば、やぶさかではないという感じですね。

    回答者:M&Aの提案をしてくれるコンサルタントは多いのですが、条件を伝えてどんどん紹介してほしいと伝えています。

    取材者:承知いたしました。株主還元の方針に関して、変更はございましたでしょうか。

    回答者:変更はございません。本業はかなり好調ですが、当期純利益が上がってこないと、BSも良くならないですし、配当原資も増えません。本業が良いだけではなかなか評価されないため、為替差損の感応度を下げていく、あるいは営業外の為替差損債権が発生しないような構造にしていくことや、最終利益もプラスにしていこうという方針が今後強まっていくと思います。ようやくそこに意識を向けられるようになってきたと感じています。

    取材者:先ほど2025年3月期のトピックスについてお話しいただきましたが、何か足元でトピック的なものはございましたら教えていただけますか。

    回答者:延長線上ではありますが、まだ4月の業績しか分かりませんので、計画に対してどうだというのは早すぎます。シンガポール工場も売却できたらお伝えしたいのですが、そのような状況ではありません。医療向けは相変わらず好調ですし、航空機向けも良くなり始めたかなという印象はありますが、トピックスと呼べるほどの足元の大きな変化点はありません。想定通り、期待通りに推移しているといったところです。

    取材者:ちなみに、何かその展示会の出展などの推移はいかがですか。

    回答者:経営陣も積極的に出展するよう指示していますので、増えていくと思います。自動車関係や建築関係は引き続き、出展いたします。減ることはないと思います。医療も積極的に出展いたします。増えることはあっても減ることはないと思います。

    取材者:本日は以上でございます。お時間いただきましてありがとうございました。引き続き何卒よろしくお願いいたします。
    回答者:よろしくお願いいたします。

  • 経営企画室長 熊木 努様

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    ビジネスモデルや事業内容

    アドバネクスは、11カ国に20の生産拠点を持ち、グローバルに事業を展開するばね業界における独自の地位を確立している企業である。同社のビジネスモデルは、グローバル体制を活かした付加価値の提供であり、自動車業界や医療業界など、世界的に事業展開する顧客のニーズに応えることを特徴とする。

     

    創業の経緯と転機となった出来事

    同社は1930年の創業で、当初は秤に使用されるばねを製造していた。かつては、フロッピーディスク部品、カセットテープ部品、携帯電話のヒンジ部品など、エレクトロニクス、精密機器、民生用家電製品が主力市場であった。しかし、これらの市場は製品のライフサイクルが短く、業績変動が大きかったため、自動車産業へと軸足を移すという転換を図った。

     

    特徴や強み

    同社の強みは、グローバルネットワークを活かした付加価値提供力である。自動車業界においては、部品の共通化が進む中で、日本、メキシコ、中国、タイといった各国の工場から、顧客のニーズに合わせた部品供給体制を構築している。医療業界においても、グローバル展開する顧客に対し、各地の工場から製品を供給することで、地産地消に近い対応を可能にしている。

    また、品質へのこだわりも同社の大きな特徴であり、コイルスレッドにおいては、他社よりも厳しい公差基準を設定することで、高い評価と信頼を得ている。医療用製品においては、顧客の自動機の癖に合わせたカスタム対応力を発揮し、顧客の細かい要望に応えることで、差別化を図っている。

     

    成長戦略

    同社の成長戦略は、長期的な成長が見込める市場への注力である。具体的には、自動車、医療、航空機、インフラといった、製品ライフサイクルが長い市場に軸足を移し、安定的な収益の確保を目指す。

     

    株主還元策

    株主還元については、配当によるものが基本方針である。配当性向は経済情勢等により変動するが、基本的には30%を目標としている。

    今期の取り組みやトピックス

    タイ工場の新設、およびアメリカの医療機器工場の拡張計画がある。アメリカの工場拡張は、需要増加への対応として、前倒しで実施される予定である。

  • Q:特徴や優位性をご説明ください。

    A:当社は、11カ国に20の生産拠点を有するグローバル体制を構築しており、このグローバルネットワークを活かした付加価値の提供が強みです。自動車業界においては、部品の共通化が世界的に進む中で、当社は日本で納入している部品と同じものを、メキシコ、中国、タイといった海外拠点から供給できる体制を整えています。これにより、自動車メーカー様は、地域を問わず一貫した品質の部品を調達できるというメリットを享受できます。

    医療業界においても同様に、グローバル展開する大手製薬会社に対し、各地の工場から製品を供給することで、地産地消に近い形で顧客のニーズに応えることが可能です。

    さらに、当社は、品質へのこだわりを重視しており、例えば、コイルスレッドにおいては、他社よりも厳しい公差を設定しています。この品質重視の姿勢が、顧客からの高い評価と信頼につながっています。

     

    Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?

    A:当社の成長戦略のポイントは、長期的な成長が見込める市場への注力です。具体的には、自動車、医療、航空機、インフラといった、製品ライフサイクルが長い市場に軸足を移すことで、安定的な収益の確保を目指しています。

    医療市場は、使い捨て医療機器の市場拡大を背景に、今後も成長が見込まれており、航空機市場も同様に長期的な成長が期待できます。これらの成長市場への参入を通じて、持続的な成長を目指すことが、当社の基本的な戦略です。

    トピックスとしては、タイに新工場を建設したこと、そして、アメリカの医療機器工場を拡張する計画があることが挙げられます。アメリカの工場拡張は、需要増加に対応するための前倒しでの決定となります。

     

    Q:株主還元の方針をご説明ください?

    A:株主還元については、配当によるものが基本であると考えております。配当性向は、経済情勢など業績に影響を与える要因により安定しておりませんが、基本的には30%を目標としております。株主優待については、かつてはQUOカードの配布を実施しておりましたが、現在は廃止し、配当による還元に注力しております。

  • 取材者:

    貴社のビジネスモデルと事業内容につきまして、特徴や強みを含めてご説明いただけますでしょうか。

    回答者:

    はい。当社は11カ国に拠点を置いており、工場は世界に20ヶ所ございます。日本を含め、グローバルに事業を展開しております。ばね業界においては、独自の地位を築いていると認識しております。

    11カ国に20の生産拠点を持つグローバル体制を活かした、付加価値の提供が当社の強みです。

    例えば、自動車業界では、現在地域によって分断化が進んでおりますが、基本的には、部品の共通化が世界的に行われています。自動車メーカー様にとっては、日本で納入している部品と同じものを、メキシコ、中国、タイで調達できることは、大きなメリットとなります。当社のメキシコ、タイ、中国の工場に、日本で採用した部品と同じものを納入できることは、非常に有益です。この点で、お客様にご評価いただいております。

    医療業界も同様の構造です。グローバルな大手製薬会社が、欧米を中心に複数社ございますが、これらの企業も自動車業界と同様に、同じ製品をアメリカ、チェコ、イギリスに納入してほしいというニーズをお持ちです。当社は各地に工場がございますので、お客様の世界各地の工場に、地産地消に近い形で製品を供給できることが、当社の強みでございます。

    取材者:

    立地は、主なお客様の工場が世界各地に建設されるのに合わせて決定されるという理解でよろしいでしょうか。

    回答者:

    元々はそういう考え方もございました。OA機器のトップメーカーが元々当社にとって最大の取引先であり、同社の進出に合わせて工場を設立していた時期もありました。しかし、最近の進出の形態は変化しており、特定のお客様に追随するというよりは、自動車業界のように多くのお客様が進出している地域に、自社の意思で進出するというケースが多いです。

    例えば、メキシコは、アメリカ向けの供給拠点として、自動車産業が非常に発展しています。当社は、自動車部品メーカー様の下層に位置するいわゆるTier1の部品メーカー様に部品を納入する立場にあります。自動車部品メーカー様は、メキシコに多数進出しておられますので、同地域に進出すれば需要を獲得できると考え、進出しております。これが、最近の進出に関する考え方です。

    取材者:

    貴社のように、多数の国へ進出している企業は少ないのでしょうか。

    回答者:

    そんなことはございませんが、進出している国数においては、当社がばね業界、精密金属加工業界において、突出していると認識しております。

    取材者:

    多数の国に工場をお持ちですが、日本で製造する製品と同じものを各地に供給できるという強みに関して、どのような理由や戦略がございますか。

    回答者:

    大きく分けて二つのパターンがございます。現地の工場から発注を受けて納入するパターンと、日本から、例えばタイ工場で製造した製品を当社のタイ工場に納入するように指示するパターンです。単純に需要がある地域に進出するというのが基本的な考え方です。その上で、日本と連携することで、お客様に付加価値を提供しております。

    お客様の現地工場では、裁量が限られている場合がございます。そのため、日本ではサプライチェーンなどを決定してから、現地工場に製造を指示するという流れもございます。

    基本的に、製造している製品は類似しております。市場があるところ、需要があるところに進出し、グローバル展開を最大限に活用することが重要であると考えております。

    例えば、医療業界では、北米とヨーロッパが主要な市場であり、お客様も北米とヨーロッパに集中して生産拠点を持っています。お客様がアメリカで立ち上げた製品をヨーロッパでも展開する場合、当社はヨーロッパにも工場がございますので、お声がけいただきやすい状況です。お客様のグローバル展開と、当社のグローバル展開が相乗効果を生んでいると言えるかと存じます。

    取材者:

    全社として事業を展開される中で、技術水準をどのように維持されているのですか。

    回答者:

    まず、工場を立ち上げる際には、当然当社の有する技術を移転いたします。しかし、現地の従業員を採用し、教育していくことになりますので、日本の水準を完全に維持することは難しいのが現実です。

    そのため、日本本社には、インストラクター制度と申しましょうか、「Advanex Production Training Project(APTP)」という認定制度がございます。これは社内認定制度であり、認定を受けた従業員のみが指導できるという仕組みです。

    日本の技術者や作業者の技能向上を図るため、テキストに基づいた座学や実地試験などを実施し、認定を行います。認定を受けた従業員が、海外の工場で当社の技術や知識を指導するというのが、基本的な流れです。また、海外の従業員が日本で研修を受けることもございます。

    取材者:

    海外の方が日本で研修を受ける場合も、認定を受けるのですか。

    回答者:

    日本での認定制度とは異なります。日本の認定制度は日本語で行われますので、制度としては少し異なります。

    取材者:

    認定を受けるのは、かなり難しいのでしょうか。

    回答者:

    はい。ある程度長期のプログラムを組んで実施したりするなど、高い基準を設定しております。なお、合格者は受験者の3分の1程度で、認定書を授与しています。

    また、国家資格である「ばね検定」の取得も、会社として強く推奨しております。取得にかかる費用、学費、受験料などは会社が負担いたします。さらに、取得者には人事評価上の優遇や報奨金を支給するなど、従業員個々人が国家資格、ばねや加工技術に関する資格を取得することを奨励しております。社内資格制度と、国家資格制度の取得の両方を推奨しているということです。

    取材者:

    現在、両方の資格を保有している方はどのくらいいらっしゃいますか。

    回答者:

    国家資格には、大きく分けて3種類ございます。線ばね、板ばね、熱処理です。従業員は、それぞれが学びたい分野の資格を取得します。資格保有者は50名程度で、中には3つの資格をすべて保有している従業員もいます。

    社内のインストラクター資格については80名程度の従業員が保有しているかと存じます。国家資格保有者50名のほとんどがインストラクター資格も保有しているので両方取得しているのは40名程度でしょうか。

    取材者:

    そういった方々が指導することで、技術力が維持されているということですか。

    回答者:

    はい。実際には様々な課題が発生しておりますが、海外の工場の技術水準を、日本と同水準に引き上げるための努力を、このような方法で実施しております。IR情報として開示しても問題ないかと存じます。

    取材者:

    貴社の代表的な製品について、他社製品と比較した際の違いはどのような点でしょうか。

    回答者:

    まずはコイルスレッドに限定してお話しさせていただきます。コイルスレッドを製造しているのは、日本とイギリスのみです。他社との差別化という点でご説明いたしますと、いくつかの競合製品がございます。ドイツのメーカーが最も有力で、次にアメリカのコイルスレッドメーカー、当社は3番手という状況です。

    現場の声をお聞きすると、アドバネクス製は使いやすいという評価をいただいております。理由としましては、公差を厳しく設定していることが挙げられます。他社製品よりも厳しい公差を設定しておりますので、他社では良品として許容されるものも当社では許容せず0良品として出荷しておりません。厳しい公差を設定した当社製品はねじ穴にスムーズに挿入できるなど作業性が優れています。

    このように、現場での使いやすさを追求した製品を提供しております。その結果、高い評価と信頼を得て、ブランド力も向上し、多少価格が高くても、アドバネクス製をご指名で購入いただくこともございます。

    当社は、品質を高めることによって、ブランド価値を高めるという戦略を、コイルスレッドにおいて実践しております。公差を緩くすれば、歩留まりが向上し、収益も高まりますが、当社はあえて公差を厳しく設定し、ブランド価値を高めるという戦略をとっております。

    取材者:

    品質を重視するという戦略は、医療用、自動車用製品においても同様ですか。

    回答者:

    医療用製品に関しては、少しニュアンスが異なります。医療用製品は、非常に大量に生産されます。お客様によっては、複数の製造ラインをお持ちです。

    製造ラインの自動機ごとに、癖がある場合がございます。例えば、お客様のAラインではこの寸法が最適であるが、Bラインではわずかに小さめの内径が適している、Cラインではわずかに大きめの内径が適している、といった具合です。

    競合のばねメーカーはそのような対応をされないそうですが、当社はお客様の細かいご要望にもお応えする、きめ細やかな対応を心がけております。いわば、カスタム対応力です。

    コイルスレッドは規格製品ですので、工業規格にできる限り近づけるよう精度を上げていくという考え方で製造しております。一方、医療用製品はカスタム製品ですので、お客様の自動機の癖に合わせるなどのきめ細やかなサービスを提供し、お客様の満足度向上を目指しています。

    取材者:

    最初の質問は、医療用、自動車用製品に関しても、品質の価値を高めるという戦略をとっているのか、ということでございました。

    回答者:

    はい。自動車用製品、先ほど申し上げましたように、かなり特殊な製品を取り扱っております。

    品質マネジメントシステムというものが存在し、当社はIATF 16949という品質マネジメントシステムの認証を取得しております。これは、自動車用部品の品質を管理するためのISO9001のようなものですが、当然取得しております。それ以外にも、アドバネクス・クオリティ・スタンダードという、品質管理の要点をまとめた独自の基準を制定し、国内外の拠点で品質管理を徹底しております。自動車向けとしては、そのような品質管理体制を構築しております。

    取材者:

    国際的な基準よりも、貴社独自の基準の方が重要度が高いということですか。

    回答者:

    両方の基準に基づいて管理しているということです。

    専門的な話になりすぎたかもしれません。投資家の皆様には難解な情報だったでしょうか。

    取材者:

    そのようなことはないかと存じます。貴社の高い技術力と、品質の高い製品をどのように提供しているかということは、貴社にとって重要な情報になると考えます。

    ところで、医療用製品について、製造ラインごとに規格が少しずつ異なるというお話がありましたが、それはかなり特殊な対応をしているということですか。

    回答者:

    癖、と申し上げればよろしいでしょうか。表現が難しいのですが。

    医療用製品では、品質が問題になったことはあまりございません。

    取材者:

    お客様の自動機の癖に合わせて、少しずつ調整されているということですね。

    回答者:

    あくまでも一つの事例としてご紹介しました。つまり、お客様の細かいご要望にお応えすることが、当社の強みだと考えております。

    通常、お客様の自動機の癖に合わせて調整するということは、あまり行われないかと存じます。特に海外のお客様、海外のサプライヤーは、決して行わないと思います。

    そのような点まで、お客様の立場に立って提案できるというのが、当社の強み、持ち味です。例えば、お客様から図面をいただき、この部品はいくらで製造できます、と回答するのが一般的な流れですが、当社はお客様から図面をいただいたら、このようにすれば貴社において歩留まりが向上し、当社でも製造しやすくなります、とか、このようなお困りごとがあるようでしたら、このようにすれば解決できるかと存じます、というように図面にして、こちらから積極的に提案いたします。お客様に積極的に提案し、付加価値を高めていくというのが、当社のスタイルです。

    取材者:

    現場レベルでは、アドバネクス製品の使用感、評価は高いそうですが、いかがですか。

    回答者:

    そのような評価をいただいていると伺っております。

    取材者:

    貴社創業の経緯について、お教えいただけますか。

    回答者:

    創業は1930年、会社設立は1946年です。詳細については、当社のホームページの沿革をご覧ください。

    創業時は、テンプレスばねという、秤に使用されるばねを製造しておりました。昔の秤は、夏と冬で伸縮率が異なるばねを使用していたため、夏はこの目盛りを使用し、冬はこの目盛りを使用するというように使い分ける必要があったそうです。

    当社が開発したばねは、冬でも夏でも伸縮率が変化しないため、秤のばねとして、創業時に90%ほどの高いシェアだったそうです。

    取材者:

    秤のばねから事業を拡大され、様々な用途のばねを製造されるようになったのですね。

    回答者:

    20~30年前は、例えば、フロッピーディスクの部品を製造しておりました。フロッピーディスクの可動部分に使用される部品で、世界でもかなりのシェアを獲得していた時期がありました。

    また、カセットテープ、音楽用のカセットテープやビデオテープの部品も製造しておりました。カセットテープやビデオテープの部品において、世界でも過半数のシェアを占めていたと記憶しております。

    もう少し最近では、携帯電話、いわゆるガラケーのヒンジ部分ですね。開閉するときの軸の部分です。あちらも世界シェアの5割程度を占めていた時期がありました。

    ばね、というか板ばねですね。携帯電話の形状を維持するための部品です。

    開閉のスムーズさ、クリック感、開閉時の適切な抵抗感などが求められる部品です。

    現在はもう全てなくなってしまいましたが。カセットテープもビデオもVHSも、フロッピーディスクもガラケーもございません。かつては、エレクトロニクス、精密機器、民生用家電製品が、当社の主力市場でした。

    OA機器、複合機やプリンターの部品なども、身近な製品が当社の主要な市場でした。しかし、市場を独占して過半数のシェアを獲得しても、その市場自体がなくなると、事業の変動が非常に大きかったのです。

    業績が良い時期もあれば悪い時期もあり、また新しい製品が登場してシェアを獲得しても、すぐに陳腐化してしまう、ということを繰り返しておりました。

    それを改善するために、自動車産業に軸足を移すことにいたしました。自動車は、携帯電話のように短期間でモデルチェンジすることはありません。例えば、携帯電話などは半年でモデルチェンジしたり、デジタルカメラなども1年、長くても1年程度しか製造期間がなく、次々とモデルチェンジしていきます。製品のライフサイクルが非常に短いのです。

    説明会資料でもご説明しておりますが、そうではなく、製品のライフサイクルが長い市場にポートフォリオを転換するという戦略をとりました。

    その転換に10年ほどかけて取り組んでおります。つまり、製品のライフサイクルが短いものから、長いもの、すなわち自動車、医療、インフラに注力していくというのが、当社の戦略です。秤のばねから始まり、様々な経験を経て、現在、安定して長期的に収益を確保できる事業に、ポートフォリオ、軸足を移している最中ということです。

    取材者:

    安定的な経営基盤を構築するために、例えば、ガラケーのような新しい製品が登場した際に業績が大きく変動しても対応できるように、成長戦略を描いているということですか。つまり、変動の大きい製品に軸足を置かないということですね。

    回答者:

    はい。まだ多少は取り扱いがございますが、主要な軸足を置くのは、医療、自動車、航空機、インフラなど、20年というスパンで安定的な成長が見込める市場です。

    おかげさまで、直近の業績は非常に安定しております。

    説明会資料にも記載しておりますが、長期的に成長が見込める市場に投資し、長く使用される製品を製造するというのが、当社の基本的な戦略です。医療や航空機は、その代表例と言えると思います。

    中期経営計画の4大テーマとして、市場の成長性と製品のライフサイクルを考慮し、注力する市場を選定しております。

    以前は、精密家電などが主力でしたが、製品寿命が短く、収益性が不安定でした。現在は、製品のライフサイクルが長く、収益性の高い市場に注力しております。

    医療市場は、使い捨て医療機器の市場が拡大しており、今後も成長が見込まれます。航空機市場も同様に、長期的な成長が見込まれます。当社は、これらの成長市場に参入することで、持続的な成長を目指しております。

    取材者:

    これらの市場は、為替の影響を除けば、順調に推移しているということですか。

    回答者:

    おかげさまで、今期(2025/3期)はここ10年来で最も高い営業利益を達成する見込みです。

    取材者:

    株主還元策について、方針などお聞かせいただけますか。

    回答者:

    株主還元策については、積極的な取り組みはできていないのが現状です。株主の皆様への還元は、配当によるものが基本であると考えております。かつては株主優待も実施しておりましたが、QUOカードの配布という内容でしたので、廃止し、配当による還元に注力しております。

    配当性向は、経済情勢など業績に影響を与える要因により、安定しておりませんが、基本的には30%を目標としております。自社株買いも、積極的に実施しているとは言えません。

    株主還元というテーマでは、特筆すべき取り組みはございませんが、安定的な配当を継続していくことが、株主の皆様への還元になると考えております。

    取材者:

    トピックスとしてご紹介できる情報などございましたら、ご説明ください。

    回答者:

    タイに工場に新工場を建設いたしました。また、現時点では未発表の情報ですが、アメリカの医療機器工場を拡張する予定です。現在の工場では、需要の増加に対応しきれない見込みのため、前倒しで拡張することにいたしました。

  • 経営企画室長 熊木 努様

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(株)アドバネクス

東証STD 5998

決算:3月末日

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【2026年3月期 第2四半期】

決算概要

医療向け事業の牽引と為替差益により、航空機向けの苦戦を補い大幅増益を達成

売上高14,537百万円(前年同期比5.1%増)、営業利益626百万円(同86.4%増)の増収増益での着地。利益面では、収益性の高い医療向け事業の伸長が全体の業績を牽引したことに加え、前期1,000百万円強の為替差損から今期は為替差益へ転じたことが寄与。マレリとの係争解決に伴う一過性の損失100百万円を計上したものの、全体としては順調な進捗。


セグメント別または事業別の増減要因

医療向けの多国間展開が奏功する一方、航空機向けは関税影響で一時低迷

医療向け事業は、英国発のビジネスモデルを米国へ横展開し、現地製薬メーカーからの新規受注獲得により急成長。一方、航空機向け事業は主力製品「コイルスレッド」の対米輸出時における関税区分変更(鉄鋼扱いによる高率関税化)が響き、顧客の買い控えにより第2四半期売上が減少。


主要KPIの進捗と変化

メキシコ拠点の損益分岐点適正化と医療向け比率の上昇

メキシコ工場における損益構造の改善と、それに伴う赤字幅の前期比3分の1程度への縮小。米国拠点における医療向け事業の売上構成比率の拡大および高収益化。新規ビジネス立ち上げに伴う先行投資(チェコ拠点等)は、確実な新規受注に紐づく形での順調な進捗。


季節性・一過性要因の有無と影響

為替変動によるプラス効果と航空機向け関税によるマイナス影響

営業外収益における為替差益への転換による経常利益の押し上げ効果。特別損失として計上された係争解決金100百万円の一過性マイナス影響。航空機向け製品における関税率変更に起因した一時的な需要停滞と第2四半期業績への下押し圧力。


通期見通しと進捗率・達成可能性

会社計画据え置きなるも、社内見通しは公表数値を上振れる公算

第1四半期の好進捗に対し通期予想を据え置いたものの、社内的な着地見込みは公表数値を上回る想定。苦戦した航空機向け事業は関税回避策の浸透により第2四半期を底として第3四半期以降の回復を見込むほか、医療向け事業の好調継続が通期達成の確度を高める要因。


トピックス

拠点戦略の転換と次世代自動車向け製品の量産開始および資産売却

損益改善が進んだメキシコ工場における「守り」から「売上拡大による黒字化」へのフェーズ転換。日本・タイ拠点における来期からのEV向け次世代製品(バスバー、非接触センサー等)の量産開始による再成長シナリオ。シンガポール工場借地権売却に向けた手続きの進捗と、来期以降における特別利益計上の可能性。

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取材アーカイブ

  • 決算概要

    2026年3月期第1四半期における売上高は前年同四半期比6.2%増の72億58百万円、営業利益は同268.2%増の4億7百万円、経常利益は3億54百万円(前年同四半期は32百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益は同495.5%増の3億97百万円となりました。

     

    セグメント別または事業別の増減要因

    営業利益が大きく改善した主な要因は、アメリカとメキシコの両子会社にあります。アメリカは前期に引き続き医療向けビジネスが拡大し、また、メキシコは工場の改善が進み赤字幅を圧縮したことで合わせて営業利益ベースで3億円程度改善しました。なお、日本、中国、東南アジアは微増、欧州は同微減となりました。

     

    主要KPIの進捗と変化

    当社は中期経営計画において、2027年3月期売上高290億円、営業利益15億円などいくつかの指標をKPIに設定しています。また、売上高の内訳についても医療向けを60億円、航空機向けを主とするコイルスレッドを30億円にそれぞれ目標値を設定しています。売上高290億円については、2026年3月期第1四半期決算発表にての修正業績予想のとおり、1年前倒しでそれを達成する見込みです。営業利益15億円については計画どおり2027年3月期に達成する見込みです。医療向けにつきましては想定以上に好調に推移し、今後も勢いが継続する様相であることから1年前倒しで達成する見通しです。一方、コイルスレッドは北米系航空機メーカーの不調もあり2027年3月期までの達成は難しい局面になっております。

     

    季節性・一過性要因の有無と影響

    2024年12月末で生産機能を停止したシンガポール工場は元々2025年3月までに売却する計画でしたが、2025年8月現在未だに売却できておりません。売却時期が延びることで15百万円/月のコスト負担がありますので、引き続き売却を急いでいます。なお、同工場売却による固定資産売却益(特別利益)は数億円程度を見込んでいます。つまり同工場売却により固定費削減と特別利益計上が見込めます。

     

    通期見通しと進捗率・達成可能性

    2025年8月8日発表の2026年3月期第1四半期決算発表のとおり、通期業績予想を上方修正しており、同予想の達成は十分可能と見ています。

     

    トピックス

    アメリカ工場の増設工事を2025年7月に着工しました。想定よりも医療向けばねの需要拡大スピードが速いため当初予定より2年前倒しました。完成は来年7月ごろを予定しており、工場スペースは従来の2.3倍となる予定です。

  • Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?

    A:中期経営計画の重点テーマとして医療向けと航空機向け市場に注力しています。特に医療向けは顧客の生産計画拡大のニーズに対し速やかに対応したことなどから売上は想定を超えるスピードで増加しています。航空機向けはマーケティング活動を積極化し、販売チャンネルの増加を図っています。自動車向けについては特にEV自動車向けの試作部品の受注に注力しておりまして、それらの施策は3、4年後の売上増加に寄与します。

     

    Q:通期予想の戦略と施策についてご説明ください。

    A:上記の「成長戦略のポイント・・・」にて説明させていただいたとおり、3つの注力市場に対してそれぞれ施策を打っていきます。

     

    Q:受注・競合状況についてご説明ください。

    A:当社グループは市場やエリアごとにそれぞれ競合状況に違いがあります。一方、ばねなどの精密金属加工部品業界では新規参入は多くなく、強力な競合の出現でシェアを奪われるリスクは高くありません。なお、日本や欧米市場においては逆に競合が減少していく傾向であるため、ますます有利な状況になっていくと見ています。

     

    Q:M&A、業務提携の実施または検討状況と、それに伴う影響についてご説明ください。

    A:業績改善に伴いM&Aも積極的に検討しています。市場や顧客獲得以外にも人材獲得なども目的にしています。

     

    Q:中期経営計画の内容や進捗状況等をご説明ください。

    A:当社は中期経営計画において、2027年3月期売上高290億円、営業利益15億円などいくつかの指標をKPIに設定しています。また、売上高の内訳についても医療向けを60億円、航空機向けを主とするコイルスレッドを30億円にそれぞれ目標値を設定しています。売上高290億円については、2026年3月期第四半期決算発表にての修正業績予想のとおり、1年前倒しでそれを達成する見込みです。営業利益15億円については計画どおり2027年3月期に達成する見込みです。医療向けにつきましては想定以上に好調に推移し、今後も勢いが継続する様相であることから1年前倒しで達成する見通しです。一方、コイルスレッドは北米系航空機メーカーの不振もあり2027年3月期までの達成は難しい局面になっております。

  • 経営企画室長 熊木 努 様

取材アーカイブ

  • CP&X

     

    決算概要

    2025年3月期の通期決算は、売上高285億3,200万円(前期比7.5%増)、営業利益11億900万円(同203.1%増)、経常利益1億7,000万円(同△79.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益△6億2,800万円と、増収・営業利益は大幅な増益。営業利益の好調は医療ビジネスの収益性の高さが全体を押し上げたためである。一方、経常利益の大幅な減少と当期純利益の赤字転落は、前期の為替差益6億6,400万円に対し、今期為替差損が7億6,100万円発生した影響が大きかったためである。

     

    セグメント別または事業別の増減要因

    売上高の増加は、主にOA向けビジネスと医療ビジネスの好調によるものである。OA向けは、主要顧客の新製品好調に加え、中国での製造需要が東南アジアに移転したことを捉え、急伸した。医療ビジネスは、その高い収益性により、営業利益全体を押し上げる要因となった。

     

    季節性・一過性要因の有無と影響

    2025年3月期には、為替差損7億6,100万円の一過性要因が発生し、これが経常利益の大幅な減少および当期純利益の赤字転落に大きく影響した。また、係争関連の引当金やシンガポール工場の閉鎖に伴う特別損失の計上も、当期純利益のマイナス転落の一因である。

     

    通期見通しと進捗率・達成可能性

    2026年3月期の通期見通しは、売上高280億円(前期比△1.9%減)、営業利益5億円(同△54.9%減)、経常利益2億5,000万円(同46.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,000万円と、保守的な予想である。この保守的な見通しには、米国の関税問題によるエンドユーザーの売上減少可能性、2026年3月期に効果が出るというよりも2027年3月期以降のための先行投資35億円、中国市場の厳しさ、シンガポール工場の売却遅延による維持費、およびタイ新工場の稼働初期におけるランニングコストや4M変更申請に伴う費用増が織り込まれている。しかし、会社側は本業の堅調さから、この予想はおそらく上振れすると考えており、上振れを目指していく方針である。

     

    トピックス

    米国においては、医療用オートインジェクター、特に糖尿病向け製品の売上が好調に推移しており、将来的な見通しも明るい。当初2027年頃に計画されていた増築を2年前倒しし、今期中に実施を決定した。これにより一時的な償却費増による収益の足踏みはあり得るものの、売上高は着実に伸長し、将来的な利益の上振れに繋がる見込みである。タイ工場に関しては、新工場稼働に伴う初期の償却費負担があるものの、既に拡張余地がないほど受注が増加しており、数年後には工場規模に見合う売上が達成され、収益改善に貢献すると期待される。また、自動車関連においては、コロナ禍からの回復後、前期はコロナ禍を除けば前年同期を下回る数少ない年となり、今期も昨年並みで端境期にあるとの認識である。しかしながら、EV向けアイテムの受注が非常に活発であり、これらは来期、再来期あたりから徐々に量産開始されることで、再び成長期に突入するとの見通しである。

  • Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?

    A:当社の成長戦略のポイントは多岐にわたりますが、まず、EV向けアイテムの受注加速が挙げられます。現在、EV関連の新規受注が非常に好調に推移しており、これらが来期以降の量産開始に伴い、当社の売上高および業績の牽引役となることを期待しております。自動車産業全体の動向は一時的に停滞感があるものの、EVの本格的な普及は当社の事業拡大に大きく寄与すると見込んでおります。

    加えて、当社が掲げる「4つの重点テーマ」の達成も、今後の成長を支える重要な柱です。具体的には、医療分野のさらなる拡大、航空機向けの事業拡大、そしてシンガポール工場およびメキシコ工場のブレークイーブン達成を目指しております。これらの重点テーマを着実に実行し、目標を達成することで、当社の定量目標に近づくと考えております。今期もこれらのテーマに対し、約35億円の積極的な投資を継続していく方針であり、これらの取り組みが相乗効果を生み出し、持続的な成長を実現してまいります。

     

    Q:通期予想の戦略と施策についてご説明ください。

    A:2026年3月期の通期見通しは、売上高280億円(前期比△1.9%減)、営業利益5億円(同△54.9%減)、経常利益2億5,000万円(同46.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,000万円と、保守的な数値を設定しております。これは、関税影響、先行投資費用(約35億円)、タイ新工場の初期コスト、シンガポール工場の維持費、および4M変更申請プロセスに伴う費用増など、複数の要因を厳しく織り込んでいるためです。しかし、本業の堅調さを背景に、当社は医療・航空機事業の拡大、シンガポール・メキシコ工場のブレークイーブン達成という「4つの重点テーマ」に投資を継続し、保守的な予想を上回る業績達成を目指してまいります。

     

    Q:受注・競合状況は如何でしょうか?

    A:現在の新規受注状況は、特にEV向けのアイテムが非常に好調に推移しており、これらは2027年3月期以降の売上高の成長に大きく貢献するものと考えております。2025年3月期においては、OA向けビジネスと医療ビジネスが好調に推移し、売上拡大に寄与いたしました。OA向けは主要顧客の新製品好調と中国からの製造需要の東南アジア移転を捉えることで急伸し、医療ビジネスはその高い収益性で全体の利益を押し上げております。これらの既存事業の堅調な受注も、当社の競争力と今後の成長を下支えする重要な要素であると認識しております。

     

    Q:M&A、業務提携、事業売却などの実施または検討状況と、それに伴う影響についてご説明ください。

    A:現在、M&Aや業務提携の実施予定はございません。過去10年間のM&Aにおいては、インドネシアやアメリカにおける案件(現在は売却済み)などで失敗を経験しており、その反省から、現時点ではM&Aに対して消極的な姿勢をとっております。ただし、人材獲得を目的とした小規模な案件であれば、検討の余地はございます。

  • 取材者:2025年3月期の決算について、まず売上高が285億3,200万円と、前期比7.5%の増加、営業利益は11億900万円、前期比203.1%の増加、経常利益は1億7,000万円、前期比△79.5%の減少、親会社株主に帰属する当期純利益は△6億2,800万円と、増収・営業利益は大幅な増益でした。こちらの結果となった要因についてご説明をお願いできますか。

    回答者:まず売上に関しては、OA向けと医療ビジネスが好調で急拡大したことが要因です。OA向けはこれまで10数年右肩下がりで推移していましたが、今期に入り急伸しました。その背景には、主要顧客の新製品が好調だったことと、中国での複写機や複合機の製造需要が東南アジアに移転し、その需要をうまく捉えられたことが主な拡大要因です。営業利益については、医療ビジネスの収益性が高いため、その伸長が全体を押し上げました。経常利益に関しては、前期は為替差益が6億6,400万円だったのに対し、今期は為替差損が7億6,100万円発生したことが大きく影響しています。当期純利益がマイナスに転落したのは、この為替差損の影響に加え、シンガポール工場の閉鎖に伴う特別退職金、および係争関連の引当金が計上されたためです。

    取材者:営業利益の拡大において、市場別の医療機器の部分が構成比としても伸びていることが大きいですか。

    回答者:はい。一度、全体の流れを説明してから、個別の詳細に入らせていただきます。

    決算説明会資料のP3ですが、売上と営業利益の四半期ごとの推移はこのようになっております。当社は日本、米州、欧州、アジアとセグメントを分けていますが、子会社ごとに説明した方が分かりやすいので、そちらで説明いたします。決算説明会資料のP5ですが、こちらは営業利益のグラフです。アメリカについては、以前もお話ししましたが、オートインジェクターが非常にヒットしており、それが貢献しています。日本とベトナムについてのOA向けに関しては、先ほど説明した通りです。中国は市場の不況等の影響で、若干増加はしているものの、厳しい状況を維持しているといったところです。一番下のシンガポールとメキシコですが、シンガポールは元々生産を閉鎖する予定で今期まで進めてまいりました。前期よりも赤字幅は縮小したものの、最終段階でしたのでこの結果です。メキシコはかなり改善が進んでいます。これらについても個別に説明いたします。決算説明会資料のP6の市場別の推移ですが、自動車は微減あるいは横ばいです。医療向けは約30%増加と絶好調です。OA向けは10数年ぶりに増加いたしました。航空機向けについては横ばいです。主要なポイントを挙げるとすれば、そのあたりです。次に決算説明会資料のP7をご確認ください。前期も当社の投資額としては多い方でしたが、今期はさらに多くなっております。タイに新工場を建設し、全社的にERPシステムを導入しているため、数億円規模の投資がございます。その他、金型設備への投資など、将来を見据えた投資が今期はかなり増加しており、高額になっております。

    取材者:承知いたしました。

    回答者:それに伴い、減価償却費も多めに計上しています。2026年3月期の売上は280億円(前期比△1.9%減)、営業利益は5億円(同△54.9%減)、経常利益は2億5,000万円(同46.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,000万円を予想していますが、これは控えめではないかと感じられた方も多いと伺っております。その点について説明いたします。

    まず米国の関税問題ですが、相互関税が開始された場合、当社は国を跨いでの輸出はあまり多くありません。地産地消がほとんどですので、直接的な影響はほとんどないと考えています。しかしながら、エンドユーザーの売上が関税によって落ちる可能性はございますので、その影響を加味した場合、ベトナムは対米輸出が多いため影響を受ける可能性がございます。日本についても、トヨタ様が最終顧客となるケースが多いですが、アメリカ生産が主であることや、高級車のアメリカへの輸出が一定数あることを考慮し、多少影響を受けると想定しています。その他は内需向けであり、アメリカへの輸出自体が少ないため、全体的には影響は少ない方だと考えております。次に、決算説明会資料のP11の左上ですが、グループ全体の投資額が35億円とかなり多いです。これは今期に効果が出る投資というよりも、来期、差来期以降のための投資が先行しているため、負担が大きくなっております。中国については、現状では厳しめに見ていますが、蓋を開けてみれば予想を上回る可能性もございます。シンガポールは、前年度で閉鎖し、退職金を支払い、特別損失を計上しましたが、工場の売却が重なったものの、3月末までに売却できませんでした。詳細については後ほど説明しますが、売却しづらい背景がございます。この固定資産を持ち続けると維持費がかかり続けるため、期間が長引くほど無駄に営業利益を圧迫してしまう状況です。タイ工場は4月から新工場が稼働していますが、旧工場の4倍の規模がございます。そのため、新工場の規模やランニングコストに見合う売上がまだないため、しばらくはマイナスの影響が出ます。工場規模に見合う売上が上がってくれば、償却費やランニングコストも希薄化されると思いますが、少なくとも今期の段階ではロスが大きいと見ております。また、4M変更申請といって、材料、人員、工程などを変更する際には、顧客に事前にサンプルを提出し、評価してもらう必要がございます。すぐに承認が下りるケースもあれば、数ヶ月かかるケースもございますが、承認が下りてから切り替えが始まります。このプロセスを全アイテムで行わなければなりません。

    取材者:それはかなり多いですね。

    回答者:それら全てを加味して、厳しめに見て営業利益は5億円という予想ですが、おそらく上振れすると考えております。

    取材者:承知いたしました。かなり保守的な予想があるということですね。

    回答者:はい。保守的な予想で一旦置いた上で、もちろん上振れを目指していきます。

    取材者:タイ工場が本格稼働し、生産性が工場の規模に追いつくのはどれくらいの見込みですか。

    回答者:数年後になると思います。

    取材者:そうですね。

    回答者:はい。まだ空きスペースが多い状況です。

    取材者:まさに今画面に映されているところで、投資も含めて中期経営計画の2027年3月期売上高290億円に対する目標の進捗度合いはいかがでしょうか。

    回答者:ここから説明いたします。決算説明会資料のP14のグラフを見ると今期は落ち込んでいるように見えますが、そのようなことはございません。当社は重点テーマを4つ掲げており、医療の拡大、航空機向けの拡大、シンガポールとメキシコ工場のブレークイーブン達成です。この4つを達成することで、定量目標に近づくと考えております。それぞれの進捗ですが、医療は想定よりも進捗しており、航空機向けはやや遅れています。シンガポールは遅れていますが、メキシコは進捗しています。このような評価です。まず医療ですが、決算説明会資料のP16のグラフを見ていただければ一目瞭然ですが、今期中に60億円は達成できそうです。というのも、ラインナップがかなり増えています。使い捨て医療キットの裾野が広がっており、様々なタイプのデバイスが生まれています。そこに当社も横展開で参入できたこともあり、多種多様なデバイスに採用されるようになりました。これが今後さらに立ち上がってくる背景がございます。医療デバイスの良い点は4つのカテゴリーに分けて説明できます。まずマクロ的にはマーケットが拡大している点です。中間所得層が世界的に増えており、例えばアフリカやインドの人々が中間所得層になることで、これまで受けられなかった医療サービスを受けられるようになります。世界的にそのような人口は増加傾向にございます。また、通院して医師の診断を受けながら治療するよりも、自宅で週に1回自己注射する方が医療費負担を抑えられるため、国家予算を圧迫する医療費を抑えたいというニーズが世界各国で高まっています。さらに、使用承認国も増加しています。糖尿病薬は2022年にアメリカで承認されましたが、今年から日本、韓国、オーストラリア、イタリア、イギリスでも承認され、使用が開始されました。来期、再来期と使用できる国が増えていく見込みです。これがマクロ的な背景です。次に利便性ですが、通院する必要がないこと、経口薬のように朝晩や1日3回服用する必要がなく、週1回で済むなど、簡便である点が挙げられます。また、プライバシーの面でも、通院することで近所の人に病気を知られる心配がないというメリットもございます。薬効の面では、錠剤などは胃液で溶かされたり、全身に作用したりするため、直接喉に粉を噴霧したり、血液に直接投与したりする場合と比較して、効果が落ちたり、全身に作用したりする可能性もございます。週1回の投与で済むため、継続率も高く、効果の面でも有利であると言われています。また、サプライヤーが増えていることも、今後の長期的な拡大の裏付けになると考えております。実際にリサーチ会社による見通しでも、急拡大するというデータもございますので、貴社も非常に期待している分野です。次に決算説明会資料のP20の航空機向けですが、ここはやや遅れが見られると評価しております。30億円の達成は厳しいかもしれません。

    取材者:承知いたしました。

    回答者:背景としては、右側の部分ですが、受注自体はあるのですが、サプライチェーンの問題で製造できない状況がしばらく続いているようです。

    取材者:承知いたしました。

    回答者:どこがボトルネックになっているのかは不明ですが、部品不足等で製造できない状況だと認識しています。しかし、今後長期にわたって需要が衰えることはございませんので、いずれサプライチェーン問題が解決すれば増加していくと考えております。この問題がいつ解決するかは分かりません。徐々に受注は増えていますが、具体的な解決時期は不明です。報道等も調べましたが、サプライチェーン問題については、具体的な不足部品や解決時期は把握できておりません。ボーイング社が昨年問題を起こしたり、ストライキが発生したりと、会社として大変な状況でしたが、それもかなり影響していると考えております。

    取材者:はい。

    回答者:次に決算説明会資料のP22のメキシコ工場の改善状況ですが、去年の今頃に想定していたよりも早く改善が進んでいる状況です。これまでかなりの損失を出していましたが、今期に入ってからは右肩上がりにマイナス幅が縮小し、3月には単月での営業黒字化を達成しました。これは当社にとって記念すべき出来事でした。日本から多くのメンバーをメキシコに派遣し、現場レベルでの改善を図ってきました。それによって適正な人員配置への削減や、稼働率、不良率、無駄の削減など、工場としての基盤、つまりあるべき工場のオペレーションが改善され、数字にも顕著に表れています。写真を見ても、工場内は整理整頓され、非常に改善されております。実は、材料や工具などが盗まれるという事態が実際にあったようです。説明会などで直接お話しすることはできませんでしたが、それがなくなり、改善につながったという背景もございます。ここのマイナスがなくなるだけでも、相当なプラス要因になります。

    取材者:その通りですね。

    回答者:次に決算説明会資料のP23のシンガポールですが、写真の通り、いつでも売却できる準備はできていますが、立地を見ていただくと、空港から5~10分、地下鉄の駅からは3分と非常にアクセスが良い場所にございます。

    取材者:はい。素晴らしい立地ですね。

    回答者:都市化が進んでいるため、逆に売却しづらくなっています。例えば、銀座の真ん中に水産加工工場を建設するとなると、好ましくないですよね。そのため、実際に水産加工業者から高い金額を提示されたのですが、国からの妨害が入り、売却ができませんでした。国内電気部品メーカー様からも打診がありましたが、製造業は勘弁してほしいといった意向があり、なかなか適切な業種の買い手が見つからない状況が続いています。今期の上半期中には売却したいと考えております。

    取材者:はい。

    回答者:早く売却できれば、その分マイナスの影響がなくなるため、最重要事項に近いと認識しています。

    次にトピックスですが、アメリカについてはお話しした通り、医療向けオートインジェクターが非常に売れており、今後の見通しも非常に明るいです。当初は2年後の2027年頃に増築を計画していましたが、稼働率が非常に高くなってきているため、2年前倒しして今期中に増築することが決定いたしました。そのため、この瞬間的に償却費が上がる分、アメリカ工場の収益は一時的に足踏みするか横ばいになるかもしれませんが、売上高は着実に伸びていくため、当然それは解消され、さらに上振れていくと考えております。

    次にタイ工場ですが、ここもタイ国内での償却費負担の話を先ほどしましたが、しばらくはこのタイ工場の規模に見合う売上規模になるまで数年かかりそうです。そうなってくると、また営業利益も稼げるようになってくると思います。既に拡張余地がなく、新しい仕事を受けられない状況になっていたため、比較的早く改善に向かうと期待しています。

    最後に自動車ですが、コロナ禍から回復し、今期は端境期にあると感じています。2025年3月期は、コロナ禍を除けば、前年同期を下回った数少ない年でしたが、今期も昨年並みとなり、端境期に入っていると感じています。しかしながら、新規受注状況を聞くと、EV向けのアイテムがものすごい勢いで受注されています。これらは来期、再来期あたりから徐々にスタートするタイミングですので、それらが入ってくると、再び成長期に入ってくるのではないかと考えております。自動車は一時的に停滞していますが、今後EVが本格化することで増加していく見込みです。

    取材者:はい、承知いたしました。

    回答者:最後にまとめですが、今期は為替差損や特別損失が大きかったものの、営業利益は20年代最高となり、本業は絶好調でした。2026年3月期の見通しはリスクを厳しく見ていますが、業績の更なる上振れを見据え、通期見通しの上方修正も視野に入れた戦略的な取り組みを進めてまいります。4つの重点テーマについては、良いものと悪いものが混在していますが、今期も35億円の投資を積極的に行っていく方針です。概ねこのようになります。

    取材者:何かその他、主要なKPIのようなものはございますか。

    回答者:主要なKPIと呼べるほど具体的なものはありませんが、粗利と営業利益です。

    取材者:その他、投資に関して、今後M&Aや業務提携の実施予定、あるいは進捗状況など、お答えできる範囲で教えていただけますか。

    回答者:予定はございません。M&Aについては失敗したという反省が強く残っております。例えば、インドネシアやアメリカの案件(売却して今はありませんが)など、この10年ほどでM&Aは失敗を経験しています。そのため、M&Aに対しては消極的です。ただし、小規模なものであれば、人材獲得やその他の目的のM&Aについては実施していきたいと考えております。なかなか良い案件は出てきませんが。

    取材者:そういった良いマッチングがあれば、やぶさかではないという感じですね。

    回答者:M&Aの提案をしてくれるコンサルタントは多いのですが、条件を伝えてどんどん紹介してほしいと伝えています。

    取材者:承知いたしました。株主還元の方針に関して、変更はございましたでしょうか。

    回答者:変更はございません。本業はかなり好調ですが、当期純利益が上がってこないと、BSも良くならないですし、配当原資も増えません。本業が良いだけではなかなか評価されないため、為替差損の感応度を下げていく、あるいは営業外の為替差損債権が発生しないような構造にしていくことや、最終利益もプラスにしていこうという方針が今後強まっていくと思います。ようやくそこに意識を向けられるようになってきたと感じています。

    取材者:先ほど2025年3月期のトピックスについてお話しいただきましたが、何か足元でトピック的なものはございましたら教えていただけますか。

    回答者:延長線上ではありますが、まだ4月の業績しか分かりませんので、計画に対してどうだというのは早すぎます。シンガポール工場も売却できたらお伝えしたいのですが、そのような状況ではありません。医療向けは相変わらず好調ですし、航空機向けも良くなり始めたかなという印象はありますが、トピックスと呼べるほどの足元の大きな変化点はありません。想定通り、期待通りに推移しているといったところです。

    取材者:ちなみに、何かその展示会の出展などの推移はいかがですか。

    回答者:経営陣も積極的に出展するよう指示していますので、増えていくと思います。自動車関係や建築関係は引き続き、出展いたします。減ることはないと思います。医療も積極的に出展いたします。増えることはあっても減ることはないと思います。

    取材者:本日は以上でございます。お時間いただきましてありがとうございました。引き続き何卒よろしくお願いいたします。
    回答者:よろしくお願いいたします。

  • 経営企画室長 熊木 努様

  • CP&X

     

    ビジネスモデルや事業内容

    アドバネクスは、11カ国に20の生産拠点を持ち、グローバルに事業を展開するばね業界における独自の地位を確立している企業である。同社のビジネスモデルは、グローバル体制を活かした付加価値の提供であり、自動車業界や医療業界など、世界的に事業展開する顧客のニーズに応えることを特徴とする。

     

    創業の経緯と転機となった出来事

    同社は1930年の創業で、当初は秤に使用されるばねを製造していた。かつては、フロッピーディスク部品、カセットテープ部品、携帯電話のヒンジ部品など、エレクトロニクス、精密機器、民生用家電製品が主力市場であった。しかし、これらの市場は製品のライフサイクルが短く、業績変動が大きかったため、自動車産業へと軸足を移すという転換を図った。

     

    特徴や強み

    同社の強みは、グローバルネットワークを活かした付加価値提供力である。自動車業界においては、部品の共通化が進む中で、日本、メキシコ、中国、タイといった各国の工場から、顧客のニーズに合わせた部品供給体制を構築している。医療業界においても、グローバル展開する顧客に対し、各地の工場から製品を供給することで、地産地消に近い対応を可能にしている。

    また、品質へのこだわりも同社の大きな特徴であり、コイルスレッドにおいては、他社よりも厳しい公差基準を設定することで、高い評価と信頼を得ている。医療用製品においては、顧客の自動機の癖に合わせたカスタム対応力を発揮し、顧客の細かい要望に応えることで、差別化を図っている。

     

    成長戦略

    同社の成長戦略は、長期的な成長が見込める市場への注力である。具体的には、自動車、医療、航空機、インフラといった、製品ライフサイクルが長い市場に軸足を移し、安定的な収益の確保を目指す。

     

    株主還元策

    株主還元については、配当によるものが基本方針である。配当性向は経済情勢等により変動するが、基本的には30%を目標としている。

    今期の取り組みやトピックス

    タイ工場の新設、およびアメリカの医療機器工場の拡張計画がある。アメリカの工場拡張は、需要増加への対応として、前倒しで実施される予定である。

  • Q:特徴や優位性をご説明ください。

    A:当社は、11カ国に20の生産拠点を有するグローバル体制を構築しており、このグローバルネットワークを活かした付加価値の提供が強みです。自動車業界においては、部品の共通化が世界的に進む中で、当社は日本で納入している部品と同じものを、メキシコ、中国、タイといった海外拠点から供給できる体制を整えています。これにより、自動車メーカー様は、地域を問わず一貫した品質の部品を調達できるというメリットを享受できます。

    医療業界においても同様に、グローバル展開する大手製薬会社に対し、各地の工場から製品を供給することで、地産地消に近い形で顧客のニーズに応えることが可能です。

    さらに、当社は、品質へのこだわりを重視しており、例えば、コイルスレッドにおいては、他社よりも厳しい公差を設定しています。この品質重視の姿勢が、顧客からの高い評価と信頼につながっています。

     

    Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?

    A:当社の成長戦略のポイントは、長期的な成長が見込める市場への注力です。具体的には、自動車、医療、航空機、インフラといった、製品ライフサイクルが長い市場に軸足を移すことで、安定的な収益の確保を目指しています。

    医療市場は、使い捨て医療機器の市場拡大を背景に、今後も成長が見込まれており、航空機市場も同様に長期的な成長が期待できます。これらの成長市場への参入を通じて、持続的な成長を目指すことが、当社の基本的な戦略です。

    トピックスとしては、タイに新工場を建設したこと、そして、アメリカの医療機器工場を拡張する計画があることが挙げられます。アメリカの工場拡張は、需要増加に対応するための前倒しでの決定となります。

     

    Q:株主還元の方針をご説明ください?

    A:株主還元については、配当によるものが基本であると考えております。配当性向は、経済情勢など業績に影響を与える要因により安定しておりませんが、基本的には30%を目標としております。株主優待については、かつてはQUOカードの配布を実施しておりましたが、現在は廃止し、配当による還元に注力しております。

  • 取材者:

    貴社のビジネスモデルと事業内容につきまして、特徴や強みを含めてご説明いただけますでしょうか。

    回答者:

    はい。当社は11カ国に拠点を置いており、工場は世界に20ヶ所ございます。日本を含め、グローバルに事業を展開しております。ばね業界においては、独自の地位を築いていると認識しております。

    11カ国に20の生産拠点を持つグローバル体制を活かした、付加価値の提供が当社の強みです。

    例えば、自動車業界では、現在地域によって分断化が進んでおりますが、基本的には、部品の共通化が世界的に行われています。自動車メーカー様にとっては、日本で納入している部品と同じものを、メキシコ、中国、タイで調達できることは、大きなメリットとなります。当社のメキシコ、タイ、中国の工場に、日本で採用した部品と同じものを納入できることは、非常に有益です。この点で、お客様にご評価いただいております。

    医療業界も同様の構造です。グローバルな大手製薬会社が、欧米を中心に複数社ございますが、これらの企業も自動車業界と同様に、同じ製品をアメリカ、チェコ、イギリスに納入してほしいというニーズをお持ちです。当社は各地に工場がございますので、お客様の世界各地の工場に、地産地消に近い形で製品を供給できることが、当社の強みでございます。

    取材者:

    立地は、主なお客様の工場が世界各地に建設されるのに合わせて決定されるという理解でよろしいでしょうか。

    回答者:

    元々はそういう考え方もございました。OA機器のトップメーカーが元々当社にとって最大の取引先であり、同社の進出に合わせて工場を設立していた時期もありました。しかし、最近の進出の形態は変化しており、特定のお客様に追随するというよりは、自動車業界のように多くのお客様が進出している地域に、自社の意思で進出するというケースが多いです。

    例えば、メキシコは、アメリカ向けの供給拠点として、自動車産業が非常に発展しています。当社は、自動車部品メーカー様の下層に位置するいわゆるTier1の部品メーカー様に部品を納入する立場にあります。自動車部品メーカー様は、メキシコに多数進出しておられますので、同地域に進出すれば需要を獲得できると考え、進出しております。これが、最近の進出に関する考え方です。

    取材者:

    貴社のように、多数の国へ進出している企業は少ないのでしょうか。

    回答者:

    そんなことはございませんが、進出している国数においては、当社がばね業界、精密金属加工業界において、突出していると認識しております。

    取材者:

    多数の国に工場をお持ちですが、日本で製造する製品と同じものを各地に供給できるという強みに関して、どのような理由や戦略がございますか。

    回答者:

    大きく分けて二つのパターンがございます。現地の工場から発注を受けて納入するパターンと、日本から、例えばタイ工場で製造した製品を当社のタイ工場に納入するように指示するパターンです。単純に需要がある地域に進出するというのが基本的な考え方です。その上で、日本と連携することで、お客様に付加価値を提供しております。

    お客様の現地工場では、裁量が限られている場合がございます。そのため、日本ではサプライチェーンなどを決定してから、現地工場に製造を指示するという流れもございます。

    基本的に、製造している製品は類似しております。市場があるところ、需要があるところに進出し、グローバル展開を最大限に活用することが重要であると考えております。

    例えば、医療業界では、北米とヨーロッパが主要な市場であり、お客様も北米とヨーロッパに集中して生産拠点を持っています。お客様がアメリカで立ち上げた製品をヨーロッパでも展開する場合、当社はヨーロッパにも工場がございますので、お声がけいただきやすい状況です。お客様のグローバル展開と、当社のグローバル展開が相乗効果を生んでいると言えるかと存じます。

    取材者:

    全社として事業を展開される中で、技術水準をどのように維持されているのですか。

    回答者:

    まず、工場を立ち上げる際には、当然当社の有する技術を移転いたします。しかし、現地の従業員を採用し、教育していくことになりますので、日本の水準を完全に維持することは難しいのが現実です。

    そのため、日本本社には、インストラクター制度と申しましょうか、「Advanex Production Training Project(APTP)」という認定制度がございます。これは社内認定制度であり、認定を受けた従業員のみが指導できるという仕組みです。

    日本の技術者や作業者の技能向上を図るため、テキストに基づいた座学や実地試験などを実施し、認定を行います。認定を受けた従業員が、海外の工場で当社の技術や知識を指導するというのが、基本的な流れです。また、海外の従業員が日本で研修を受けることもございます。

    取材者:

    海外の方が日本で研修を受ける場合も、認定を受けるのですか。

    回答者:

    日本での認定制度とは異なります。日本の認定制度は日本語で行われますので、制度としては少し異なります。

    取材者:

    認定を受けるのは、かなり難しいのでしょうか。

    回答者:

    はい。ある程度長期のプログラムを組んで実施したりするなど、高い基準を設定しております。なお、合格者は受験者の3分の1程度で、認定書を授与しています。

    また、国家資格である「ばね検定」の取得も、会社として強く推奨しております。取得にかかる費用、学費、受験料などは会社が負担いたします。さらに、取得者には人事評価上の優遇や報奨金を支給するなど、従業員個々人が国家資格、ばねや加工技術に関する資格を取得することを奨励しております。社内資格制度と、国家資格制度の取得の両方を推奨しているということです。

    取材者:

    現在、両方の資格を保有している方はどのくらいいらっしゃいますか。

    回答者:

    国家資格には、大きく分けて3種類ございます。線ばね、板ばね、熱処理です。従業員は、それぞれが学びたい分野の資格を取得します。資格保有者は50名程度で、中には3つの資格をすべて保有している従業員もいます。

    社内のインストラクター資格については80名程度の従業員が保有しているかと存じます。国家資格保有者50名のほとんどがインストラクター資格も保有しているので両方取得しているのは40名程度でしょうか。

    取材者:

    そういった方々が指導することで、技術力が維持されているということですか。

    回答者:

    はい。実際には様々な課題が発生しておりますが、海外の工場の技術水準を、日本と同水準に引き上げるための努力を、このような方法で実施しております。IR情報として開示しても問題ないかと存じます。

    取材者:

    貴社の代表的な製品について、他社製品と比較した際の違いはどのような点でしょうか。

    回答者:

    まずはコイルスレッドに限定してお話しさせていただきます。コイルスレッドを製造しているのは、日本とイギリスのみです。他社との差別化という点でご説明いたしますと、いくつかの競合製品がございます。ドイツのメーカーが最も有力で、次にアメリカのコイルスレッドメーカー、当社は3番手という状況です。

    現場の声をお聞きすると、アドバネクス製は使いやすいという評価をいただいております。理由としましては、公差を厳しく設定していることが挙げられます。他社製品よりも厳しい公差を設定しておりますので、他社では良品として許容されるものも当社では許容せず0良品として出荷しておりません。厳しい公差を設定した当社製品はねじ穴にスムーズに挿入できるなど作業性が優れています。

    このように、現場での使いやすさを追求した製品を提供しております。その結果、高い評価と信頼を得て、ブランド力も向上し、多少価格が高くても、アドバネクス製をご指名で購入いただくこともございます。

    当社は、品質を高めることによって、ブランド価値を高めるという戦略を、コイルスレッドにおいて実践しております。公差を緩くすれば、歩留まりが向上し、収益も高まりますが、当社はあえて公差を厳しく設定し、ブランド価値を高めるという戦略をとっております。

    取材者:

    品質を重視するという戦略は、医療用、自動車用製品においても同様ですか。

    回答者:

    医療用製品に関しては、少しニュアンスが異なります。医療用製品は、非常に大量に生産されます。お客様によっては、複数の製造ラインをお持ちです。

    製造ラインの自動機ごとに、癖がある場合がございます。例えば、お客様のAラインではこの寸法が最適であるが、Bラインではわずかに小さめの内径が適している、Cラインではわずかに大きめの内径が適している、といった具合です。

    競合のばねメーカーはそのような対応をされないそうですが、当社はお客様の細かいご要望にもお応えする、きめ細やかな対応を心がけております。いわば、カスタム対応力です。

    コイルスレッドは規格製品ですので、工業規格にできる限り近づけるよう精度を上げていくという考え方で製造しております。一方、医療用製品はカスタム製品ですので、お客様の自動機の癖に合わせるなどのきめ細やかなサービスを提供し、お客様の満足度向上を目指しています。

    取材者:

    最初の質問は、医療用、自動車用製品に関しても、品質の価値を高めるという戦略をとっているのか、ということでございました。

    回答者:

    はい。自動車用製品、先ほど申し上げましたように、かなり特殊な製品を取り扱っております。

    品質マネジメントシステムというものが存在し、当社はIATF 16949という品質マネジメントシステムの認証を取得しております。これは、自動車用部品の品質を管理するためのISO9001のようなものですが、当然取得しております。それ以外にも、アドバネクス・クオリティ・スタンダードという、品質管理の要点をまとめた独自の基準を制定し、国内外の拠点で品質管理を徹底しております。自動車向けとしては、そのような品質管理体制を構築しております。

    取材者:

    国際的な基準よりも、貴社独自の基準の方が重要度が高いということですか。

    回答者:

    両方の基準に基づいて管理しているということです。

    専門的な話になりすぎたかもしれません。投資家の皆様には難解な情報だったでしょうか。

    取材者:

    そのようなことはないかと存じます。貴社の高い技術力と、品質の高い製品をどのように提供しているかということは、貴社にとって重要な情報になると考えます。

    ところで、医療用製品について、製造ラインごとに規格が少しずつ異なるというお話がありましたが、それはかなり特殊な対応をしているということですか。

    回答者:

    癖、と申し上げればよろしいでしょうか。表現が難しいのですが。

    医療用製品では、品質が問題になったことはあまりございません。

    取材者:

    お客様の自動機の癖に合わせて、少しずつ調整されているということですね。

    回答者:

    あくまでも一つの事例としてご紹介しました。つまり、お客様の細かいご要望にお応えすることが、当社の強みだと考えております。

    通常、お客様の自動機の癖に合わせて調整するということは、あまり行われないかと存じます。特に海外のお客様、海外のサプライヤーは、決して行わないと思います。

    そのような点まで、お客様の立場に立って提案できるというのが、当社の強み、持ち味です。例えば、お客様から図面をいただき、この部品はいくらで製造できます、と回答するのが一般的な流れですが、当社はお客様から図面をいただいたら、このようにすれば貴社において歩留まりが向上し、当社でも製造しやすくなります、とか、このようなお困りごとがあるようでしたら、このようにすれば解決できるかと存じます、というように図面にして、こちらから積極的に提案いたします。お客様に積極的に提案し、付加価値を高めていくというのが、当社のスタイルです。

    取材者:

    現場レベルでは、アドバネクス製品の使用感、評価は高いそうですが、いかがですか。

    回答者:

    そのような評価をいただいていると伺っております。

    取材者:

    貴社創業の経緯について、お教えいただけますか。

    回答者:

    創業は1930年、会社設立は1946年です。詳細については、当社のホームページの沿革をご覧ください。

    創業時は、テンプレスばねという、秤に使用されるばねを製造しておりました。昔の秤は、夏と冬で伸縮率が異なるばねを使用していたため、夏はこの目盛りを使用し、冬はこの目盛りを使用するというように使い分ける必要があったそうです。

    当社が開発したばねは、冬でも夏でも伸縮率が変化しないため、秤のばねとして、創業時に90%ほどの高いシェアだったそうです。

    取材者:

    秤のばねから事業を拡大され、様々な用途のばねを製造されるようになったのですね。

    回答者:

    20~30年前は、例えば、フロッピーディスクの部品を製造しておりました。フロッピーディスクの可動部分に使用される部品で、世界でもかなりのシェアを獲得していた時期がありました。

    また、カセットテープ、音楽用のカセットテープやビデオテープの部品も製造しておりました。カセットテープやビデオテープの部品において、世界でも過半数のシェアを占めていたと記憶しております。

    もう少し最近では、携帯電話、いわゆるガラケーのヒンジ部分ですね。開閉するときの軸の部分です。あちらも世界シェアの5割程度を占めていた時期がありました。

    ばね、というか板ばねですね。携帯電話の形状を維持するための部品です。

    開閉のスムーズさ、クリック感、開閉時の適切な抵抗感などが求められる部品です。

    現在はもう全てなくなってしまいましたが。カセットテープもビデオもVHSも、フロッピーディスクもガラケーもございません。かつては、エレクトロニクス、精密機器、民生用家電製品が、当社の主力市場でした。

    OA機器、複合機やプリンターの部品なども、身近な製品が当社の主要な市場でした。しかし、市場を独占して過半数のシェアを獲得しても、その市場自体がなくなると、事業の変動が非常に大きかったのです。

    業績が良い時期もあれば悪い時期もあり、また新しい製品が登場してシェアを獲得しても、すぐに陳腐化してしまう、ということを繰り返しておりました。

    それを改善するために、自動車産業に軸足を移すことにいたしました。自動車は、携帯電話のように短期間でモデルチェンジすることはありません。例えば、携帯電話などは半年でモデルチェンジしたり、デジタルカメラなども1年、長くても1年程度しか製造期間がなく、次々とモデルチェンジしていきます。製品のライフサイクルが非常に短いのです。

    説明会資料でもご説明しておりますが、そうではなく、製品のライフサイクルが長い市場にポートフォリオを転換するという戦略をとりました。

    その転換に10年ほどかけて取り組んでおります。つまり、製品のライフサイクルが短いものから、長いもの、すなわち自動車、医療、インフラに注力していくというのが、当社の戦略です。秤のばねから始まり、様々な経験を経て、現在、安定して長期的に収益を確保できる事業に、ポートフォリオ、軸足を移している最中ということです。

    取材者:

    安定的な経営基盤を構築するために、例えば、ガラケーのような新しい製品が登場した際に業績が大きく変動しても対応できるように、成長戦略を描いているということですか。つまり、変動の大きい製品に軸足を置かないということですね。

    回答者:

    はい。まだ多少は取り扱いがございますが、主要な軸足を置くのは、医療、自動車、航空機、インフラなど、20年というスパンで安定的な成長が見込める市場です。

    おかげさまで、直近の業績は非常に安定しております。

    説明会資料にも記載しておりますが、長期的に成長が見込める市場に投資し、長く使用される製品を製造するというのが、当社の基本的な戦略です。医療や航空機は、その代表例と言えると思います。

    中期経営計画の4大テーマとして、市場の成長性と製品のライフサイクルを考慮し、注力する市場を選定しております。

    以前は、精密家電などが主力でしたが、製品寿命が短く、収益性が不安定でした。現在は、製品のライフサイクルが長く、収益性の高い市場に注力しております。

    医療市場は、使い捨て医療機器の市場が拡大しており、今後も成長が見込まれます。航空機市場も同様に、長期的な成長が見込まれます。当社は、これらの成長市場に参入することで、持続的な成長を目指しております。

    取材者:

    これらの市場は、為替の影響を除けば、順調に推移しているということですか。

    回答者:

    おかげさまで、今期(2025/3期)はここ10年来で最も高い営業利益を達成する見込みです。

    取材者:

    株主還元策について、方針などお聞かせいただけますか。

    回答者:

    株主還元策については、積極的な取り組みはできていないのが現状です。株主の皆様への還元は、配当によるものが基本であると考えております。かつては株主優待も実施しておりましたが、QUOカードの配布という内容でしたので、廃止し、配当による還元に注力しております。

    配当性向は、経済情勢など業績に影響を与える要因により、安定しておりませんが、基本的には30%を目標としております。自社株買いも、積極的に実施しているとは言えません。

    株主還元というテーマでは、特筆すべき取り組みはございませんが、安定的な配当を継続していくことが、株主の皆様への還元になると考えております。

    取材者:

    トピックスとしてご紹介できる情報などございましたら、ご説明ください。

    回答者:

    タイに工場に新工場を建設いたしました。また、現時点では未発表の情報ですが、アメリカの医療機器工場を拡張する予定です。現在の工場では、需要の増加に対応しきれない見込みのため、前倒しで拡張することにいたしました。

  • 経営企画室長 熊木 努様

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