
(株)ロココ
東証STD 5868
決算:12月末日
20250404
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:当社の強みは、ServiceNowという製品を12年以上前から取り扱っており、日本でServiceNow社がサービスを開始した当初から事業を展開している点にあります。そのため、豊富な取引実績と経験値を蓄積しております。また、2024年と2025年にはServiceNow社からアワードを受賞し、パートナー認定ランクも高い水準を維持しており、ServiceNow社が認定する有資格者も183名と多数抱えていることから、エンジニアの質と数において他社と比較しても優位性が高いと考えております。さらに、10年以上にわたるServiceNowの提供実績から、ナレッジが蓄積されていることも強みです。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?
A:当社の成長の軸は、ServiceNow事業です。ServiceNowは、近年高い成長率を維持しており、ServiceNow社も日本市場にはまだ成長の余地があると考えているため、投資対象として重視しております。ServiceNowは成長率だけでなく、単価も高く、収益性の高いサービスであるため、今後も拡大していく方針です。
また、新たな取り組みとして、ポーランドに研究開発拠点を新設いたしました。顔認証の技術開発を日本国内で行っておりましたが、この研究開発をポーランドに移し、世界で戦えるレベルを高めていくことを目指しております。ポーランド拠点は、優秀な人材の確保や、ヨーロッパ各国への展開も視野に入れて設立されました。現在のターゲットマーケットは日本ですが、より競争力の高い製品を開発するために、ポーランドで開発の速度と精度を高める取り組みを進めております。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:当社の株主還元に関する基本方針は、継続的かつ安定的な配当を行うことです。2024年12月期は、30周年記念の増配を行い、1株あたり30円の配当といたしました。今期の配当予想は1株あたり25円で、普通配当として5円増配する予定です。業績によっては、さらに増配することも視野に入れております。配当性向は直近では記念配当を含め、おおよそ40%程度となっておりますが、今後も、安定的かつ持続可能な株主還元を重視した配当を継続していく方針です。
取材者:
貴社のビジネスの内容や特徴、強みなどについてご説明をお願いできますでしょうか。
回答者:
弊社は1994年に大阪で創立いたしました。昨年で30周年を迎え、現在は31年目となります。元々は、ITのヘルプデスクやコールセンターといった事業から開始しております。
24時間365日のサポートデスクも開設し、1998年に東京に進出し、東京と大阪で事業を拡大してまいりました。大きな転機としましては、2014年にアイ・シー・ティーグループをM&Aし、2年後ジー・インサイトをM&Aを実施し、M&Aを重ねて事業領域を拡大してきたという経緯がございます。
具体的な事業内容についてご説明いたします。大きくセグメントは2つ、ITO&BPO事業とクラウドソリューション事業がございます。
ITO&BPO事業が売上高の66%ほどを占めており、売上高としては非常に大きなボリュームとなっております。
その中のITサービスマネジメント事業では、弊社が直接雇用している社員を顧客先に常駐させる形で、顧客の情報システム部門のサポート業務を行っております。
2番目のカスタマーコミュニケーション事業は、顧客先に常駐するのではなく、弊社内にコールセンターやコンタクトセンターを設置し、対応を行う形態です。1番と2番の違いは、オフサイトで対応しているか、オンサイトで対応しているかの違いとなります。
3番目のイベントサービス事業は、ライブのチケットが開催された際の座席の配席や抽選などを、データベースを用いてデジタルで実施する業務です。
4番目のソリューション事業は、こちらは美術館とか博物館などのチケット販売システムを構築しており、ここに顔認証を連携させるようなソリューションを提供しております。
ITO&BPO事業は、開発というよりも、お客様の業務を運用面で支えるイメージです。
次に、クラウドソリューション事業についてご説明します。
1番目のServiceNow事業は、アメリカのプラットフォーム製品であり、日本には12年ほど前に上陸して以来、エンタープライズ向け、大手企業向けのサービスという形で導入が進んでいます。弊社では、ServiceNowの導入の支援、そして継続的なご利用をいただくためのサポートなどを行っております。
2番目がHRソリューション事業、こちらは自社で開発した勤怠管理システムを開発・販売しております。
3番目がシステムソリューション事業、こちらはSIerとして、顧客先にエンジニアを常駐させる開発や、受託開発なども行っております。
ざっくりと7種類の事業を行っております。海外の事業については、主にオフショア開発拠点として日本の業務支援を行っております。一部海外の現地での売上もございますが、連結売上高に占める割合は1.8%と非常に小さいです。
大まかには、このような事業内容となっております。
取材者:
貴社の祖業は、ITO&BPO事業の1番目の、ITサービスマネジメント事業でしょうか。
回答者:
はい。現時点での売上高は30億円ほどですので、全体の半分近く、4割から45%ほどを占めているかと存じます。これが、売上高の中心となっております。
取材者:
このITO&BPO事業とクラウドソリューション事業は、クロスセルなどのシナジーはございますか。顧客は重複しているのですか。
回答者:
重複する部分としない部分がございます。例えば、ITサービスマネジメント事業では、弊社のエンジニアが顧客先に常駐しており、顧客のITの現状を把握しているため、必要な提案が可能です。ServiceNowを提案することも、勤怠システムの入れ替えを提案することもできます。
イベントサービスは少し毛色が違うため、アイドル活動やイベント活動を行っている企業でないと、クロスセルは難しいかもしれません。一般の企業であれば、横展開は可能でございます。
イベントサービスとソリューション事業は、コンサートイベントだったり、美術館博物館のような施設、一般のお客様がいらっしゃるような施設とかライブなどを裏方として構築したりサポートしているので、なかなか一般企業とは違う動きをしている部分では、クロスセルが難しい部分がございます。
取材者:
逆に言うと、イベントサービス事業とソリューション事業のシナジーはかなりあるように伺えるのですが、合わせて販売するということは行っているのですか。売上の割合はいかがですか。
回答者:
売上高の割合としてはそれほど大きくはないのですが、親和性の高い領域をカバーしているので、可能性は十分にございます。実際に両方クロスセルで取引いただいているお客様も一部いらっしゃいます。
弊社の理想としては、1社に対して様々な提案を行い、全てを弊社に任せていただけるような形を目指しております。全てを弊社に任せていただけるように持っていきたいというのが、弊社の狙いです。
取材者:
次に、企業がServiceNowを導入すると、どのようなメリットを享受できるのですか。
回答者:
ServiceNowは、バックオフィス、例えばワークフローを回す、申請、アカウント管理、経費精算などを効率化するツールです。セールスフォースは営業支援ツールですが、ServiceNowは管理部門やバックオフィスのシステムです。裏方の雑多な作業を一つのプラットフォームにまとめて構築し、全てまとめて行うようなクラウドサービスです。
取材者:
貴社のサービス、製品を導入することによって、どれくらい業務が効率化されたり、削減されたりするのか、具体的な数字はございますか。
回答者:
企業の規模などによって効果は異なり、一概に申し上げることは難しいです。ServiceNowの主なターゲットとしている企業は、従業員数が1万人程度はいないとコストメリットが出ないため、従業員数が1万人以上の大企業がターゲットとなります。そのような大企業では、人数を1割程度削減できたなどの事例がございます。効率化の効果は、企業の規模や目的によります。
取材者:
どのような課題をお持ちのお客様が多いのでしょうか。
回答者:
具体的な事例は、ホームページに掲載しております。例えば、旭化成不動産レジデンス様の事例では、ペーパーレス化のために導入いただきました。
また、慶應義塾大学様の事例もございます。こちらもワークフローの一本化が目的です。
従来は、様々なシステム、例えば楽楽精算のような経費精算システムや人事系のソリューションなどが世の中には点在しているかと存じます。中小企業であれば、個別のクラウドサービスの方が安価な場合もございます。しかしながら、大企業になると、個別のシステムを運用することが大変になります。そのため、ServiceNowのようなプラットフォーム上でシステムを構築し、全社一貫して利用できる方が効率的な場合がございます。
取材者:
企業ごとにカスタマイズされているのでしょうか。
回答者:
はい、その通りです。ServiceNowは、導入するだけでは利用できません。お客様のニーズに合わせて構築しないと利用できないため、インストールすればすぐに使えるというものではございません。
取材者:
基本的には、お客様は大企業になってくるイメージですか。
回答者:
はい、その通りです。
取材者:
今後の戦略としては、既存の顧客へのサービス拡大と、新規の取引先を増やしていくことのどちらに重点を置かれるのですか。
回答者:
既存顧客を拡大することと、新規の取引先を増やしていくことは、どちらも重要であると考えております。両輪で進めていく方針です。
取材者:
他に、今後の成長戦略について教えていただけますか。
回答者:
ServiceNowは、近年でも高い成長率を維持しております。また、ServiceNow社も、日本市場はまだまだ伸びる余地があると考えており、投資対象として重視しております。
弊社の成長の軸は、ServiceNowです。成長率だけでなく、単価も高く、収益性の高いサービスであるため、今後も拡大していく方針です。
取材者:
ServiceNowは、日本だと貴社のみが販売できるものなのですか。
回答者:
弊社だけで独占販売しているわけではありません。同様のサービスを扱うベンダーは多数ございます。
取材者:
ServiceNowを扱っている他のベンダーと比較した際の、貴社の強みはどういった点だとお考えですか。
回答者:
まず、弊社はServiceNowという製品を使い始めたのが、12年以上前、ServiceNow社が日本に上陸した当初からです。そのため、取引実績も多く、経験値も豊富にございます。
2025年は、ServiceNow社からアワードを受賞しており、2024年も受賞しております。パートナー認定ランクも高い水準を維持しており、ServiceNow社が認定する有資格者も183名と多数抱えております。エンジニアの質、そして数、この点は他社と比較しても優位性が高いと考えております。
取材者:
アワードは、どのような基準で受賞できるのですか。
回答者:
ServiceNow社が独自の評価基準に基づいて選定しております。
10年以上ServiceNowを提供してきた実績から、ナレッジが蓄積されていることも強みです。
ServiceNow社が最も懸念するのは、解約です。ServiceNowはライセンス販売が主なビジネスモデルであるため、解約されないことが重要です。そのため、質の悪い、クレームが発生するようなベンダーがいれば、解約を防ぐためにベンダーを入れ替えることがあります。
弊社は、これまでの経験や実績により、ServiceNow社からの信頼を得ており、お客様をご紹介いただくことがございます。
取材者:
貴社がServiceNowの日本でのサービス開始当初から取引できたのは、偶然ですか。それとも、社長様がアンテナを張っていたなどの理由があるのですか。
回答者:
2014年にM&Aを行ったアイ・シー・ティーという会社が、ServiceNowの取り扱いを開始しました。アイ・シー・ティーの顧問の方が、日本アイ・ビー・エム株式会社のご出身で、その方からのご紹介で、当時はServiceNowだけでなくNetSuiteという製品も取り扱っておりました。その後、どちらか一方に絞ることになり、ServiceNowに注力することになったという経緯がございます。ServiceNowは、弊社の成長の軸として、今後も拡大していく方針です。
取材者:
創業の経緯について、もう少し詳しく教えていただけますか。
回答者:
創業者である代表取締役社長の長谷川一彦は、現在73歳で、CSK株式会社(現SCSK株式会社)に約20数年勤務しておりました。当時CSK株式会社の社長であった大川功氏のもとで経営を学び、大川社長のような経営をしたいと考え、独立いたしました。エンジニアの常駐派遣というスタイルから、現在の事業に至っております。
取材者:
2023年12月に上場されていますが、上場の目的はどういったものでしょうか。
回答者:
会社の知名度と信頼性の向上です。弊社は、上場会社や大手企業との取引が多く、更なる事業拡大のためには、会社の信頼性を高めることが重要であると考え、上場を目指しました。
取材者:
知名度の向上は、採用戦略にも影響があるかと思います。多くの企業が人材の採用に苦戦されている中で、貴社の採用戦略や育成方針について教えていただけますか。
回答者:
採用は、どの会社も苦戦していると考えており、人材を採用することが重要な課題であると認識しております。弊社も採用には力を入れており、特に近年、新卒採用に力を入れようとしております。今週4月1日には入社式を行い、32名の新入社員が入社いたしました。
新卒採用のみを行うのではなく、中途採用とのバランスを取りながら、採用を継続して増やし続けようと考えております。教育に関しては、ある程度確立された教育プログラムがあり、入社後3ヶ月後には戦力化し、お客様先への常駐もしくはプロジェクトへの配属を行っております。
取材者:
他企業様から、人材の採用に関して、入社前に退職代行サービスを利用して辞められる方が多いという話を伺うこともございます。
回答者:
弊社では、そのようなことは全くございません。昨年度、一昨年度も、定着率は非常に高いです。
弊社の経営理念は、「人を大切にする」ということであり、人材育成と働きやすい環境づくりに力を入れております。社員一人ひとりの個性を尊重し、定期的にプレゼントをしたり、食事会に行くなど、社員との密なコミュニケーションを積極的に行っています。
取材者:
IT業界の企業様は、採用だけでなく、離職率が高いことも課題と伺いますが、貴社は社員の定着率が高いのですね。
回答者:
はい。IT業界の中では、離職率は低い方だと認識しております。
取材者:
株主還元策については、方針などございましたら教えていただけますか。
回答者:
株主還元は、継続的かつ安定的な配当をするということを基本方針としております。2024年12月期は、30周年記念もありましたので、増配し1株あたり30円の配当といたしました。今期の配当予想は1株あたり25円で、普通配当で5円増配しております。業績によっては、さらに増配することも視野に入れております。配当性向は、直近では記念配当を含め、おおよそ40%程度となっておりますが、今後も、安定的かつ持続可能な株主還元を重視した配当を継続していきたいと考えております。
取材者:
今期から新たに始められていることや、業績に関わらないトピックなどございましたら教えていただけますか。
回答者:
新たな取り組みとしまして、ポーランドの方に研究開発拠点を新たに設けております。顔認証の技術開発を日本国内で行っておりましたが、この研究開発自体をポーランドの方に移し、世界で戦えるレベルを高めていくということもあり、開発拠点として作りました。より優秀な人材の確保や、ヨーロッパ各国への足がかりも視野に入れながら、ポーランドへ進出するという状況です。
現在のターゲットとしているマーケットは、まずは日本です。日本でさらに広げていきたいという思いもありますし、そのためには、より競争力の高い製品を作る必要があると考えておりますので、ポーランドで開発となる部分を、より速度を上げながら精度を高める、そういった取り組みを行っております。
取材者:
ポーランドを選ばれた理由としては、何かコネクションがあったということですか。それとも、ポーランドが顔認証の技術が進んでいるということでしょうか。
回答者:
人脈でいうと、まずポーランドの企業や、ポーランドのウッチ市の市長、ウッチ市の多くの企業とのコネクションがありました。また、日本側の顔認証の研究開発をしているメンバーの一人がポーランド人であり、彼を中心に研究開発を進めるということもあり、彼がより活躍しやすいだろうということも考慮し、ポーランドを選択しました。ポーランドは安易に決めたわけではなく、十数年前からリサーチを続けており、結果的にポーランドにしたという状況です。
取材者:
ポーランドの拠点には、日本人は何人くらいいらっしゃるのですか。
回答者:
日本人はおりません。まだ設立したばかりで、今日本にいたポーランド人が現地に移ったばかりです。これから体制を構築していく予定です。
CP&X
ビジネスモデルや事業内容
株式会社ロココは、ITO&BPO事業とクラウドソリューション事業の2つのセグメントで事業を展開している。ITO&BPO事業では、ITサービスマネジメント、カスタマーコミュニケーション、イベントサービス、ソリューションの各事業があり、顧客の業務運用を支援している。クラウドソリューション事業では、ServiceNow、HRソリューション、システムソリューションの各事業があり、ServiceNowの導入支援や勤怠管理システムの開発・販売、SIerとしての開発などを行っている。
創業の経緯と転機となった出来事
1994年に大阪で創立、ITのヘルプデスクやコールセンター事業から開始。1998年に東京に進出し事業を拡大、2014年にアイ・シー・ティーグループ、2016年にジー・インサイトをM&Aし、事業領域を拡大。創業者である代表取締役社長の長谷川一彦氏は、CSK株式会社(現SCSK株式会社)出身で、大川功氏のもとで経営を学び独立、エンジニアの常駐派遣から現在の事業に至る。
特徴や強み
ServiceNowという製品を12年以上前から取り扱っており、日本でServiceNow社がサービスを開始した当初から事業を展開しているため、豊富な取引実績と経験値を蓄積している点が強みである。2024年と2025年にはServiceNow社からアワードを受賞、パートナー認定ランクも高い水準を維持、ServiceNow社が認定する有資格者も183名と多数であることから、エンジニアの質と数において他社と比較優位性が高い。10年以上にわたるServiceNowの提供実績から、ナレッジが蓄積されていることも強みである。
成長戦略
ServiceNow事業を成長の軸とし、拡大していく方針である。ServiceNowは高い成長率を維持しており、ServiceNow社も日本市場を重視している。
株主還元策
株主還元に関する基本方針は、継続的かつ安定的な配当である。2024年12月期は30周年記念の増配を実施、今期の配当予想は1株あたり25円。配当性向は直近では記念配当を含め、おおよそ40%程度であるが、今後も、安定的かつ持続可能な株主還元を重視した配当を継続する方針。
今期の取り組みやトピックス
新たな取り組みとして、ポーランドに研究開発拠点を新設。顔認証の技術開発をポーランドに移し、世界で戦えるレベルを高めることを目指す。ポーランド拠点は、優秀な人材の確保や、ヨーロッパ各国への展開も視野に入れている。
常務取締役管理本部長 水野賢仁様

(株)ロココ
東証STD 5868
決算:12月末日
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:当社の強みは、ServiceNowという製品を12年以上前から取り扱っており、日本でServiceNow社がサービスを開始した当初から事業を展開している点にあります。そのため、豊富な取引実績と経験値を蓄積しております。また、2024年と2025年にはServiceNow社からアワードを受賞し、パートナー認定ランクも高い水準を維持しており、ServiceNow社が認定する有資格者も183名と多数抱えていることから、エンジニアの質と数において他社と比較しても優位性が高いと考えております。さらに、10年以上にわたるServiceNowの提供実績から、ナレッジが蓄積されていることも強みです。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?
A:当社の成長の軸は、ServiceNow事業です。ServiceNowは、近年高い成長率を維持しており、ServiceNow社も日本市場にはまだ成長の余地があると考えているため、投資対象として重視しております。ServiceNowは成長率だけでなく、単価も高く、収益性の高いサービスであるため、今後も拡大していく方針です。
また、新たな取り組みとして、ポーランドに研究開発拠点を新設いたしました。顔認証の技術開発を日本国内で行っておりましたが、この研究開発をポーランドに移し、世界で戦えるレベルを高めていくことを目指しております。ポーランド拠点は、優秀な人材の確保や、ヨーロッパ各国への展開も視野に入れて設立されました。現在のターゲットマーケットは日本ですが、より競争力の高い製品を開発するために、ポーランドで開発の速度と精度を高める取り組みを進めております。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:当社の株主還元に関する基本方針は、継続的かつ安定的な配当を行うことです。2024年12月期は、30周年記念の増配を行い、1株あたり30円の配当といたしました。今期の配当予想は1株あたり25円で、普通配当として5円増配する予定です。業績によっては、さらに増配することも視野に入れております。配当性向は直近では記念配当を含め、おおよそ40%程度となっておりますが、今後も、安定的かつ持続可能な株主還元を重視した配当を継続していく方針です。
取材者:
貴社のビジネスの内容や特徴、強みなどについてご説明をお願いできますでしょうか。
回答者:
弊社は1994年に大阪で創立いたしました。昨年で30周年を迎え、現在は31年目となります。元々は、ITのヘルプデスクやコールセンターといった事業から開始しております。
24時間365日のサポートデスクも開設し、1998年に東京に進出し、東京と大阪で事業を拡大してまいりました。大きな転機としましては、2014年にアイ・シー・ティーグループをM&Aし、2年後ジー・インサイトをM&Aを実施し、M&Aを重ねて事業領域を拡大してきたという経緯がございます。
具体的な事業内容についてご説明いたします。大きくセグメントは2つ、ITO&BPO事業とクラウドソリューション事業がございます。
ITO&BPO事業が売上高の66%ほどを占めており、売上高としては非常に大きなボリュームとなっております。
その中のITサービスマネジメント事業では、弊社が直接雇用している社員を顧客先に常駐させる形で、顧客の情報システム部門のサポート業務を行っております。
2番目のカスタマーコミュニケーション事業は、顧客先に常駐するのではなく、弊社内にコールセンターやコンタクトセンターを設置し、対応を行う形態です。1番と2番の違いは、オフサイトで対応しているか、オンサイトで対応しているかの違いとなります。
3番目のイベントサービス事業は、ライブのチケットが開催された際の座席の配席や抽選などを、データベースを用いてデジタルで実施する業務です。
4番目のソリューション事業は、こちらは美術館とか博物館などのチケット販売システムを構築しており、ここに顔認証を連携させるようなソリューションを提供しております。
ITO&BPO事業は、開発というよりも、お客様の業務を運用面で支えるイメージです。
次に、クラウドソリューション事業についてご説明します。
1番目のServiceNow事業は、アメリカのプラットフォーム製品であり、日本には12年ほど前に上陸して以来、エンタープライズ向け、大手企業向けのサービスという形で導入が進んでいます。弊社では、ServiceNowの導入の支援、そして継続的なご利用をいただくためのサポートなどを行っております。
2番目がHRソリューション事業、こちらは自社で開発した勤怠管理システムを開発・販売しております。
3番目がシステムソリューション事業、こちらはSIerとして、顧客先にエンジニアを常駐させる開発や、受託開発なども行っております。
ざっくりと7種類の事業を行っております。海外の事業については、主にオフショア開発拠点として日本の業務支援を行っております。一部海外の現地での売上もございますが、連結売上高に占める割合は1.8%と非常に小さいです。
大まかには、このような事業内容となっております。
取材者:
貴社の祖業は、ITO&BPO事業の1番目の、ITサービスマネジメント事業でしょうか。
回答者:
はい。現時点での売上高は30億円ほどですので、全体の半分近く、4割から45%ほどを占めているかと存じます。これが、売上高の中心となっております。
取材者:
このITO&BPO事業とクラウドソリューション事業は、クロスセルなどのシナジーはございますか。顧客は重複しているのですか。
回答者:
重複する部分としない部分がございます。例えば、ITサービスマネジメント事業では、弊社のエンジニアが顧客先に常駐しており、顧客のITの現状を把握しているため、必要な提案が可能です。ServiceNowを提案することも、勤怠システムの入れ替えを提案することもできます。
イベントサービスは少し毛色が違うため、アイドル活動やイベント活動を行っている企業でないと、クロスセルは難しいかもしれません。一般の企業であれば、横展開は可能でございます。
イベントサービスとソリューション事業は、コンサートイベントだったり、美術館博物館のような施設、一般のお客様がいらっしゃるような施設とかライブなどを裏方として構築したりサポートしているので、なかなか一般企業とは違う動きをしている部分では、クロスセルが難しい部分がございます。
取材者:
逆に言うと、イベントサービス事業とソリューション事業のシナジーはかなりあるように伺えるのですが、合わせて販売するということは行っているのですか。売上の割合はいかがですか。
回答者:
売上高の割合としてはそれほど大きくはないのですが、親和性の高い領域をカバーしているので、可能性は十分にございます。実際に両方クロスセルで取引いただいているお客様も一部いらっしゃいます。
弊社の理想としては、1社に対して様々な提案を行い、全てを弊社に任せていただけるような形を目指しております。全てを弊社に任せていただけるように持っていきたいというのが、弊社の狙いです。
取材者:
次に、企業がServiceNowを導入すると、どのようなメリットを享受できるのですか。
回答者:
ServiceNowは、バックオフィス、例えばワークフローを回す、申請、アカウント管理、経費精算などを効率化するツールです。セールスフォースは営業支援ツールですが、ServiceNowは管理部門やバックオフィスのシステムです。裏方の雑多な作業を一つのプラットフォームにまとめて構築し、全てまとめて行うようなクラウドサービスです。
取材者:
貴社のサービス、製品を導入することによって、どれくらい業務が効率化されたり、削減されたりするのか、具体的な数字はございますか。
回答者:
企業の規模などによって効果は異なり、一概に申し上げることは難しいです。ServiceNowの主なターゲットとしている企業は、従業員数が1万人程度はいないとコストメリットが出ないため、従業員数が1万人以上の大企業がターゲットとなります。そのような大企業では、人数を1割程度削減できたなどの事例がございます。効率化の効果は、企業の規模や目的によります。
取材者:
どのような課題をお持ちのお客様が多いのでしょうか。
回答者:
具体的な事例は、ホームページに掲載しております。例えば、旭化成不動産レジデンス様の事例では、ペーパーレス化のために導入いただきました。
また、慶應義塾大学様の事例もございます。こちらもワークフローの一本化が目的です。
従来は、様々なシステム、例えば楽楽精算のような経費精算システムや人事系のソリューションなどが世の中には点在しているかと存じます。中小企業であれば、個別のクラウドサービスの方が安価な場合もございます。しかしながら、大企業になると、個別のシステムを運用することが大変になります。そのため、ServiceNowのようなプラットフォーム上でシステムを構築し、全社一貫して利用できる方が効率的な場合がございます。
取材者:
企業ごとにカスタマイズされているのでしょうか。
回答者:
はい、その通りです。ServiceNowは、導入するだけでは利用できません。お客様のニーズに合わせて構築しないと利用できないため、インストールすればすぐに使えるというものではございません。
取材者:
基本的には、お客様は大企業になってくるイメージですか。
回答者:
はい、その通りです。
取材者:
今後の戦略としては、既存の顧客へのサービス拡大と、新規の取引先を増やしていくことのどちらに重点を置かれるのですか。
回答者:
既存顧客を拡大することと、新規の取引先を増やしていくことは、どちらも重要であると考えております。両輪で進めていく方針です。
取材者:
他に、今後の成長戦略について教えていただけますか。
回答者:
ServiceNowは、近年でも高い成長率を維持しております。また、ServiceNow社も、日本市場はまだまだ伸びる余地があると考えており、投資対象として重視しております。
弊社の成長の軸は、ServiceNowです。成長率だけでなく、単価も高く、収益性の高いサービスであるため、今後も拡大していく方針です。
取材者:
ServiceNowは、日本だと貴社のみが販売できるものなのですか。
回答者:
弊社だけで独占販売しているわけではありません。同様のサービスを扱うベンダーは多数ございます。
取材者:
ServiceNowを扱っている他のベンダーと比較した際の、貴社の強みはどういった点だとお考えですか。
回答者:
まず、弊社はServiceNowという製品を使い始めたのが、12年以上前、ServiceNow社が日本に上陸した当初からです。そのため、取引実績も多く、経験値も豊富にございます。
2025年は、ServiceNow社からアワードを受賞しており、2024年も受賞しております。パートナー認定ランクも高い水準を維持しており、ServiceNow社が認定する有資格者も183名と多数抱えております。エンジニアの質、そして数、この点は他社と比較しても優位性が高いと考えております。
取材者:
アワードは、どのような基準で受賞できるのですか。
回答者:
ServiceNow社が独自の評価基準に基づいて選定しております。
10年以上ServiceNowを提供してきた実績から、ナレッジが蓄積されていることも強みです。
ServiceNow社が最も懸念するのは、解約です。ServiceNowはライセンス販売が主なビジネスモデルであるため、解約されないことが重要です。そのため、質の悪い、クレームが発生するようなベンダーがいれば、解約を防ぐためにベンダーを入れ替えることがあります。
弊社は、これまでの経験や実績により、ServiceNow社からの信頼を得ており、お客様をご紹介いただくことがございます。
取材者:
貴社がServiceNowの日本でのサービス開始当初から取引できたのは、偶然ですか。それとも、社長様がアンテナを張っていたなどの理由があるのですか。
回答者:
2014年にM&Aを行ったアイ・シー・ティーという会社が、ServiceNowの取り扱いを開始しました。アイ・シー・ティーの顧問の方が、日本アイ・ビー・エム株式会社のご出身で、その方からのご紹介で、当時はServiceNowだけでなくNetSuiteという製品も取り扱っておりました。その後、どちらか一方に絞ることになり、ServiceNowに注力することになったという経緯がございます。ServiceNowは、弊社の成長の軸として、今後も拡大していく方針です。
取材者:
創業の経緯について、もう少し詳しく教えていただけますか。
回答者:
創業者である代表取締役社長の長谷川一彦は、現在73歳で、CSK株式会社(現SCSK株式会社)に約20数年勤務しておりました。当時CSK株式会社の社長であった大川功氏のもとで経営を学び、大川社長のような経営をしたいと考え、独立いたしました。エンジニアの常駐派遣というスタイルから、現在の事業に至っております。
取材者:
2023年12月に上場されていますが、上場の目的はどういったものでしょうか。
回答者:
会社の知名度と信頼性の向上です。弊社は、上場会社や大手企業との取引が多く、更なる事業拡大のためには、会社の信頼性を高めることが重要であると考え、上場を目指しました。
取材者:
知名度の向上は、採用戦略にも影響があるかと思います。多くの企業が人材の採用に苦戦されている中で、貴社の採用戦略や育成方針について教えていただけますか。
回答者:
採用は、どの会社も苦戦していると考えており、人材を採用することが重要な課題であると認識しております。弊社も採用には力を入れており、特に近年、新卒採用に力を入れようとしております。今週4月1日には入社式を行い、32名の新入社員が入社いたしました。
新卒採用のみを行うのではなく、中途採用とのバランスを取りながら、採用を継続して増やし続けようと考えております。教育に関しては、ある程度確立された教育プログラムがあり、入社後3ヶ月後には戦力化し、お客様先への常駐もしくはプロジェクトへの配属を行っております。
取材者:
他企業様から、人材の採用に関して、入社前に退職代行サービスを利用して辞められる方が多いという話を伺うこともございます。
回答者:
弊社では、そのようなことは全くございません。昨年度、一昨年度も、定着率は非常に高いです。
弊社の経営理念は、「人を大切にする」ということであり、人材育成と働きやすい環境づくりに力を入れております。社員一人ひとりの個性を尊重し、定期的にプレゼントをしたり、食事会に行くなど、社員との密なコミュニケーションを積極的に行っています。
取材者:
IT業界の企業様は、採用だけでなく、離職率が高いことも課題と伺いますが、貴社は社員の定着率が高いのですね。
回答者:
はい。IT業界の中では、離職率は低い方だと認識しております。
取材者:
株主還元策については、方針などございましたら教えていただけますか。
回答者:
株主還元は、継続的かつ安定的な配当をするということを基本方針としております。2024年12月期は、30周年記念もありましたので、増配し1株あたり30円の配当といたしました。今期の配当予想は1株あたり25円で、普通配当で5円増配しております。業績によっては、さらに増配することも視野に入れております。配当性向は、直近では記念配当を含め、おおよそ40%程度となっておりますが、今後も、安定的かつ持続可能な株主還元を重視した配当を継続していきたいと考えております。
取材者:
今期から新たに始められていることや、業績に関わらないトピックなどございましたら教えていただけますか。
回答者:
新たな取り組みとしまして、ポーランドの方に研究開発拠点を新たに設けております。顔認証の技術開発を日本国内で行っておりましたが、この研究開発自体をポーランドの方に移し、世界で戦えるレベルを高めていくということもあり、開発拠点として作りました。より優秀な人材の確保や、ヨーロッパ各国への足がかりも視野に入れながら、ポーランドへ進出するという状況です。
現在のターゲットとしているマーケットは、まずは日本です。日本でさらに広げていきたいという思いもありますし、そのためには、より競争力の高い製品を作る必要があると考えておりますので、ポーランドで開発となる部分を、より速度を上げながら精度を高める、そういった取り組みを行っております。
取材者:
ポーランドを選ばれた理由としては、何かコネクションがあったということですか。それとも、ポーランドが顔認証の技術が進んでいるということでしょうか。
回答者:
人脈でいうと、まずポーランドの企業や、ポーランドのウッチ市の市長、ウッチ市の多くの企業とのコネクションがありました。また、日本側の顔認証の研究開発をしているメンバーの一人がポーランド人であり、彼を中心に研究開発を進めるということもあり、彼がより活躍しやすいだろうということも考慮し、ポーランドを選択しました。ポーランドは安易に決めたわけではなく、十数年前からリサーチを続けており、結果的にポーランドにしたという状況です。
取材者:
ポーランドの拠点には、日本人は何人くらいいらっしゃるのですか。
回答者:
日本人はおりません。まだ設立したばかりで、今日本にいたポーランド人が現地に移ったばかりです。これから体制を構築していく予定です。
CP&X
ビジネスモデルや事業内容
株式会社ロココは、ITO&BPO事業とクラウドソリューション事業の2つのセグメントで事業を展開している。ITO&BPO事業では、ITサービスマネジメント、カスタマーコミュニケーション、イベントサービス、ソリューションの各事業があり、顧客の業務運用を支援している。クラウドソリューション事業では、ServiceNow、HRソリューション、システムソリューションの各事業があり、ServiceNowの導入支援や勤怠管理システムの開発・販売、SIerとしての開発などを行っている。
創業の経緯と転機となった出来事
1994年に大阪で創立、ITのヘルプデスクやコールセンター事業から開始。1998年に東京に進出し事業を拡大、2014年にアイ・シー・ティーグループ、2016年にジー・インサイトをM&Aし、事業領域を拡大。創業者である代表取締役社長の長谷川一彦氏は、CSK株式会社(現SCSK株式会社)出身で、大川功氏のもとで経営を学び独立、エンジニアの常駐派遣から現在の事業に至る。
特徴や強み
ServiceNowという製品を12年以上前から取り扱っており、日本でServiceNow社がサービスを開始した当初から事業を展開しているため、豊富な取引実績と経験値を蓄積している点が強みである。2024年と2025年にはServiceNow社からアワードを受賞、パートナー認定ランクも高い水準を維持、ServiceNow社が認定する有資格者も183名と多数であることから、エンジニアの質と数において他社と比較優位性が高い。10年以上にわたるServiceNowの提供実績から、ナレッジが蓄積されていることも強みである。
成長戦略
ServiceNow事業を成長の軸とし、拡大していく方針である。ServiceNowは高い成長率を維持しており、ServiceNow社も日本市場を重視している。
株主還元策
株主還元に関する基本方針は、継続的かつ安定的な配当である。2024年12月期は30周年記念の増配を実施、今期の配当予想は1株あたり25円。配当性向は直近では記念配当を含め、おおよそ40%程度であるが、今後も、安定的かつ持続可能な株主還元を重視した配当を継続する方針。
今期の取り組みやトピックス
新たな取り組みとして、ポーランドに研究開発拠点を新設。顔認証の技術開発をポーランドに移し、世界で戦えるレベルを高めることを目指す。ポーランド拠点は、優秀な人材の確保や、ヨーロッパ各国への展開も視野に入れている。
常務取締役管理本部長 水野賢仁様