20250401
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:当社の特徴と優位性は、ドローン・ロボット業界において、ハードウェアではなくソフトウェアに強みを持つという独自のポジショニングにあります。一般的なドローンがGPS環境下での利用を前提としているのに対し、当社はGPSが利用できない屋内、橋梁下、下水管内などの特殊環境下でのソリューション開発に強みを持っています。この特殊環境下での位置特定を可能にするために、当社は独自のセンサーモジュールを開発し、市販のドローンに装着して活用しています。
さらに、当社のBEPのクラウドサーバーアプリケーションは、ドローンだけでなく、ロボットや無人搬送車(AGV)など、複数のデバイスを接続して統合的に管理・運用できるシステムであり、その柔軟性が大きな強みです。多くのドローンベンダーが自社のパイロットによるサービス提供に限定される中で、当社は全国に広範なパイロットネットワークを有しており、これにより、全国各地での大規模なサービス提供が可能です。
これらの特徴と優位性を活かし、当社は点検、教育、ドローンポート、ネクストという4つの主要なソリューションを提供しています。特に、ドローンポートに関しては、自動離発着システムの開発やISOの国際標準規格化を議長として推進するなど、将来のドローン前提社会を見据えた先進的な取り組みを行っており、この分野でのリーダーシップ確立を目指しています。
これらの点を総合的に考慮すると、当社は、特殊環境対応能力、システムとしての柔軟性、広範なパイロットネットワーク、そして将来を見据えた技術開発という、他社にはない独自の強みを有していると言えます。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?
A:当社の成長戦略のポイントは、ドローンの社会実装を加速するために、当社の強みを活かしたドローンを活用したサービスを提供することにあります。これまでの物販や受託開発中心のビジネスモデルから、ドローンを活用したサービス提供へとシフトすることで、収益性の向上を目指しています。具体的には、2027年12月期までに営業利益の黒字化を目標としています。長期的な視点では、ドローンポートを軸とした自動化サービスの普及を見据え、省人化による運用コストの低減と収益の大幅な改善を目指しています。また、公共インフラの老朽化問題に対応するため、この分野への注力を強化し、建設コンサルタント会社などとの提携を通じて受注活動を拡大していく方針です。
Q:受注・競合状況は如何でしょうか?
A:受注に関しては、公共インフラ分野における需要の拡大を強く見込んでおり、この分野への注力を進めています。具体的には、建設コンサルタント会社や一部ゼネコン、調査会社などが公共インフラ関連の事業を受託するケースが多いことから、これらの企業との提携を通じて、当社のドローンソリューションの導入を促進し、受注の拡大を目指しています。特に、地方自治体におけるインフラの老朽化と点検を行う人材の不足が深刻化しており、ドローンによる効率的な点検ニーズは今後さらに高まると予測しています。
競合状況については、ドローン関連技術、特にセンサー技術を持つ企業が複数存在します。例えば、Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などの技術を開発している企業がありますが、これらの企業はドローンのみならず、車やシステム向けのセンサーや認識技術も手掛けている場合が多く、事業領域が必ずしも完全に一致するわけではありません。当社は、特定のセンサー技術に特化するのではなく、複数のセンサーを組み合わせ、最適な位置情報を算出する「センサーフュージョン」と呼ばれる技術に強みを持っており、この点が競合他社との差別化要因となっています。また、当社の強みは、ハードウェアの提供に留まらず、ソフトウェアとドローン・ロボットのサービスを組み合わせた包括的なソリューションを提供できる点にもあります。
Q:中期戦略の内容や進捗状況等をご説明ください。
A:当社の中期戦略の核心は、ドローンサービスの社会実装を加速し、収益性を向上させることにあります。具体的には、2027年12月期までに営業利益の黒字化を達成することを目標としています。
この目標達成のために、当社は以下の戦略を実行します。
ドローンを活用したサービスの強化:これまで、ドローンや関連ソリューションの販売、あるいは受託開発が中心でしたが、今後は、当社のソリューションと人材を組み合わせたサービスの提供に注力します。これにより、顧客の現場におけるドローン導入・活用を支援し、継続的な収益を確保するとともに、ドローンサービスの市場浸透を加速させます。
公共インフラ分野への展開:公共インフラの老朽化が深刻化し、点検需要が急速に増加している状況を踏まえ、この分野への事業展開を積極的に進めます。建設コンサルタント会社などとの連携を強化し、ドローンによる効率的な点検サービスを提供することで、社会インフラの維持に貢献するとともに、新たな収益源を確立します。
ドローンポートを核とした自動化の推進:長期的には、ドローンポートを核とした自動化サービスを推進し、さらなる収益性の向上を目指します。ドローンポートとは、ドローンの自動離発着、充電、データ管理などを行うための施設であり、これを整備することで、点検業務などの省人化・効率化が可能になります。当社は、このドローンポートの開発において、ISOの国際標準規格化を議長として推進しており、将来の市場拡大を見据えた優位性を確立しています。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:現時点では、大変恐縮ながら、当社はまだ赤字の状態であるため、株主還元よりも事業の成長に重点を置いています。具体的には、事業成長のための投資を優先的に行っていく方針です。しかしながら、将来的にしかるべきタイミングが来た際には、株主の皆様への還元策を実施できるよう、常に準備を進めてまいります。株主の皆様のご期待に応えられるよう、企業価値の向上に努めてまいります。
取材者:
当社のビジネスモデルや事業内容につきましての特徴や強みなども含めながらご説明いただけますか?
回答者:
私は元々、ドローンが専門ではなく、大学院では、海岸の津波対策や砂浜の侵食対策といった海岸防災に関する研究をしておりました。
災害原因を究明するために、過去から現在までの航空写真を、主にセスナ機やヘリコプターで撮影したものを集め、災害原因を究明してから将来の予測をシミュレーションなどで行うということを大学院時代に行っておりました。
その中で当時、どうしても災害直後の写真が入手できないということで、15年以上前なのですが、ドローンの技術に注目しました。
当時、ドローンという呼称はなくて、東京大学工学部航空宇宙工学科の鈴木真二名誉教授との出会いがあり、先生は御巣鷹山にジャンボ機が墜落した事故を契機に、墜落しない飛行機を作ろうということで、ラジコン機に制御システムを搭載して実験していました。当時は、その機体を飛行ロボットと呼んで、海岸線のモニタリングにこれらを使いたいということで、おそらく国内では初の事例ではないかと思いますが、飛行ロボットといわれていたドローンを産業に活用したというのが元々のきっかけです。
東京大学は飛行制御や運行管理の技術が強かったので、いろいろ教えていただきながら、当社はドローンの研究開発、ドローンのソリューション事業に入っていくという流れになります。
当社は、近い将来、間違いなくドローン・ロボットが活躍するドローン前提社会が到来すると確信しております。
例えば、海上では離島間を物資輸送するドローンが飛び交ったり、津波などの災害があったときに避難警報を呼びかけるドローンが飛び交ったりする。
あるいは海中では、ドローンが活躍して、海中の探査であったり、点検をしたりする。
あるいは陸上を見ると、外壁点検のドローンが飛び交ったり、あるいは空飛ぶクルマや大型ドローンが人や物を運んでいたり、ドローンポートがあちこちに整備されているという世界が、将来間違いなく来ると確信しており(一部実現されているものもあるのですが)、そのような社会をシステムを中心として支えていこうというビジョンがあります。
具体的には、人とドローン・ロボットをつなぐシステムを作って、そのシステムはスマートシティを構成する都市OSにつながってスマートなまちづくりに貢献していこうという思いで、当社は事業を行っています。
具体的にどのようなシステムかといいますと、Blue Earth Platform、略してBEP、ベップと呼んでいますが、このBEPは、ドローン・ロボットの位置を特定するセンサーモジュールと、そのドローン・ロボットを、クラウド側から動かしたり、情報を集めたり、管理したりするようなサーバーのアプリケーションで構成されており、当社が開発を行っています。
例えばドローンというのは、屋外でGPSのサポートを受けて自動飛行していくのが一般的なのですが、例えば屋内とか、橋梁の下、下水管の中であったりとか、あるいはタンクの中では、GPSが入らないのです。
こういった場所で位置を特定するためのセンサーモジュールなどを当社が開発して、市販のドローンに装着したりして、貢献しています。
改めて当社のポジショニングなのですが、当社はドローン・ロボット業界では、ハードウェアではなく、基本的にはソフトウェアを強みにしている会社です。
また、通常のドローンというのは、GPS環境下で活躍するドローンが多い中で、当社はGPSが入らない環境、あるいは特殊環境というのに強みを持っています。
また、こういった特殊環境で飛行できるようなドローンのメーカーもいますが、当社はメーカーではないので、先ほどのBEPを軸にして、ドローンやロボット、無人搬送車(AGV)をBEPに接続して複数のデバイスでソリューションを提供することができます。
また、大半のドローンベンダーは、自社のパイロットでのサービスを提供する中で、当社では全国のパイロットネットワークを有しており、当社で同時に数十ヶ所の拠点でサービス提供できるというのが当社の強みということになります。
当社は、BEPを軸にして、点検、教育、ドローンの離発着するドローンポート、ネクストという4つのソリューションで構成されてサービスを提供しており、主に点検というのは、火力、水力、原子力の発電所や製鉄所などのプラント施設、あるいは送配電線の点検サービスを提供しています。
最近では、公共インフラ施設の点検も最近増えています。
それから教育は、ドローンを扱うための人材育成などのソリューションなどを提供しています。
そして今後、ドローンというのは、今レベル1、2のフェーズで、現場にパイロットが行って、ドローンを操縦して点検するという世界から、レベル3、4というフェーズになり、どんどん自動化していくと思います。
そうすると、ドローンの離発着場であるドローンポートがあちこちに整備されていて、ある時刻になるとドローンポートからドローンが自動で離陸して、そして点検や監視、あるいは物資輸送を自動でやってくれるような、こういう自動化に向けたドローンのポートソリューションを、開発提供していきます。
このソリューションは、以前は物流ソリューションと呼んでいたのですが、最近このドローンポートというのが多岐にわたって、点検、防災、監視といったところでのニーズが増えてきたので、ポートソリューションという呼び方に変えています。
ここからは、詳しく、点検ソリューションからご紹介していきます。
まずは、送電線点検ですが、
現在、東京電力様から6年以上前に、送電線をドローンで自動点検したいというご相談があったのです。
元々、送電線点検は、人が宙乗り点検をしたりとか、あるいは鉄塔によじ登ってスコープで覗いたりということをしていたわけです。
鉄塔間の送電線は少したわんでいますので、GPSと気圧センサーで地上と平行に飛行する通常のドローンではカメラのフレームアウトを引き起こしてしまうため、我々は何とかこのたわんだ送電線を検知するセンサーモジュールを新たに東京電力様と一緒に開発しました。
現在は、北陸電力様をはじめ、他の電力会社様にも少しずつ導入展開しつつあります。
(動画)
こちらが当社のBEPラインというシステムですが、市販のドローンの上に、当社開発のセンサーモジュールがあります。ソフトウェアのアプリも開発しており、タブレット上で送電線の線種を選ぶと、ドローンが離陸しまして、対象となります送電線まで上がると、タブレット上に候補になる送電線が出てきて、例えば点検候補の送電線番号を手で押せば、自動でその送電線を追従して飛行するというような技術になっています。
取材者:
操作する必要はないのですか?
回答者:
基本的には自動で飛行します。送電線まで到達すれば、自動で送電線に沿って飛行し、カメラもぶれずに正確に送電線を点検できます。
続いて、プラント点検でございまして、GPSが入らない屋内施設での点検であったり、あるいはプラント内の巡回点検を人でやっているものをAGVで自動で点検するものです。
ドローンのハードウェアは、スイスのメーカーと提携しており、AGVは筑波大学発のベンチャーと提携して点検ソリューションを作っています。スイスのメーカーとは、2017年から屋内に特化したソリューションの開発を進めており、現在は電力施設で多く利用されています。昨今、公共インフラ施設の方でも導入がされ始めています。
様々な導入事例ですけれども、九州電力様で火力発電所のボイラー点検とか煙突内部、トンネル内の点検などで利用頂いています。
ENEOS様では、プラント施設を3Dモデル化、CAD化するというような取り組みをしたり、出光興産様では、埋設配管の内点検を大幅に時間短縮したりしています。
あるいは東急建設様では、屋外屋内で、3Dモデル化しながら施工管理する取り組みをしたり、清水建設様では、地下ピットの中を点検したり、人が入れないような危ないところをドローン点検したりしています。
最近では、埼玉県八潮市の下水道管内の調査などにも導入され、下水道管内の状況というのを把握することができたということで、今後、公共インフラ施設における導入というのは増えていくだろうと見ています。
続いて、教育のソリューションですが、当社でドローンの基礎教育、あるいはソリューションに特化した応用教育を提供しています。
当社は、資料にも記載しておりますが、元々ドローンの産官学コンソーシアム団体JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)という団体の立ち上げと、運営のサポートをしており、JUIDAは、全国で3万人以上のドローンのパイロットを育成、パイロットライセンスを発行したり、あるいは全国で230校以上のドローンスクールの運営をサポートするということをしています。当社は、JUIDAを通して全国のパイロットのネットワークを有しているというのが一つ特長です。
また、パイロット向けにお役立ちの情報アプリを作っており、パイロットがどこを飛行していいかとか、飛行時のフライトログが記録できたり、あるいは飛行申請をサポートしたり、ドローンの保険も提供したりと、現在6万人以上のユーザーにご利用いただいています。
以上、当社ではBEPを活用したソリューションを開発して、全国で約10万人近いパイロットネットワークを有しており、電力会社などの顧客に点検ソリューションを提供できる体制と、点検データのプラットフォーム化をするといった、一気通貫のサービス提供サイクルを構築しているというのが当社の特長であり強みであるということになります。
続いて、先ほど申し上げた、これからレベル3、4のフェーズでは、ドローンの離発着場(ドローンポート)が重要だという話をしたのですが、当社は2016年から国土交通省、東京大学とともに研究開発しており、ドローンポートの自動化に関わるシステムとか、離発着に関わるセンシングの部分(正確に離発着できるような、センサーモジュール)なども開発しています。
ポートのハードウェアはIHI様だったり、トヨタ自動車様とも連携してきており、いろいろなタイプのポートを作ってきています。また、このドローンポートの国際標準化は国策ということもあって、ISOの国際標準規格化を当社が議長として推進してきており、2023年6月に世界初となる物流用ドローンポート設備要件の国際標準規格化を実現しました。
ISOに準拠したドローンポートは仙台市に導入が進み、仙台市で今後津波が来た際に、ドローンで避難警報を自動でアナウンスしていく仕組みです。津波のJアラートが発動されると、ドローンポートがそれを受信して、ドローンがポートより自動で飛んで避難警報していくというシステムになっています。
続いて、東京2020オリンピックサーフィン会場にもなった千葉県一宮町にも、同様のドローンによる津波避難警報システムが導入されました。
続いて、石川県能登半島での土砂ダムの監視システムとして、ドローンポートが活用された事例です。
これは元々、能登半島で地震があった際に、実際に山間部で土砂災害があって、河川が閉塞し土砂ダムが形成され、この土砂ダムがいつ決壊するかという二次災害を防止するために、ドローンで定期的に監視したいと要望を頂きました。現場に、車で行くと5時間くらいかかるところを、ドローンで行くと20~30分で行けるので、定期的に監視するなら、ドローンポートを現場に設置して、定刻に巡回監視をしたということになります。結果としては、大きな決壊にはならなかったのは幸いです。
取材者:何か異常があるとドローンが自動で検知してくれるのですか?
回答者:基本的には当時は監視だけですので、AIで何か分析するソリューションを提供するということは特にしていません。
これは災害だけではなくて、ダムとか河川とかという公共インフラの巡回点検にも活用されるということで、現在、取り組んでいるという状況でございます。
今後なのですが、これは2024年度の決算発表でも話しましたが、当社の強みとしては、特殊環境下でのソリューションの開発の提供に強みを持っているということと、全国に10万人近いパイロットネットワークを有しています。
今までは、ニーズを捉えた実証実験であったりとか、あるいは受託開発、あるいは当社がBEPのソリューションパッケージを販売していたのですが、今後は、BEPのソリューションパッケージを活用して、もう少し人の手を介してサービスを提供して社会実装を加速していくことが、短期中期の戦略方針です。
その戦略によって、トップラインを上げていくという前提で2027年12月期までに、営業利益を黒字化していこうという方針で動いています。
長期戦略としては、先ほどもご紹介しましたが、ドローンポート導入が拡大していくだろうと私たちは見ています。
現在、国のプロジェクトで国産のドローンポートを開発していますが、3年から5年後には、ドローンポートを軸にした自動化サービスというのが普及していくだろうと見ています。
当社の強みというのは、BEPで複数のドローンを運航管理することができて、さらにISO準拠したドローンポートの開発なども行っているということです。
今後、国や自治体がドローンポートを調達する際に、ISO準拠というのが重要になると思われます。
ドローンポートの導入が広がれば広がるほど、従来の1現場で2人3人のパイロットが点検していたのが、ドローンポートさえ置いておけば、1人のパイロットで10現場20現場が見られると。つまり、省人化が進むということです。
それによってサービスのコストが低減されて、収益を大幅に改善するのが、長期の成長戦略の方向性です。
長期的には、ドローンポートを活用して、サービスを自動化させ、省人化させて収益、利益を拡大していくという成長戦略を描いています。
今後、市場の拡大ということで書かせていただきましたが、これは当社の試算ではあるのですが、電力業界、建設業界で、それぞれの業界でドローンを対象としうる施設があり、1日でどれくらいの点検ができるかというのを換算した年間での総点検の日数を割り出したところ、電力業界で6万2,000日、建設業界で8,900万日、製造プラントでは7,500日、国自治体では95万日と相当の日数があります。今後これに、サービス単価を乗じますと、非常に大きなマーケット規模であるということがご理解いただけるかと思います。
取材者:
貴社のようにセンサーを用いてドローンの運用をしているというのは、他にございますか?
回答者:
センサーの上場している企業として、Visual SLAMなどを作っているKudan株式会社などがあります。Kudan株式会社もセンシングを研究し、車やドローンなど様々なデバイス搭載を検討しています。
取材者:
ドローンの制御システムというと、GPSを使ってルートを自動飛行するようなイメージがあるのですが、センサーを使って自動で飛行をしていくというのは、ドローン業界では珍しいのでしょうか?
回答者:
普通は屋外で飛行するドローンというのは、地図情報やGPSセンサーを使います。ただ屋内環境になると地図もなく、GPSも入らないということなので、地図なしで自分の位置を特定していかなくてはいけないということになると、ドローンなどが飛行しながら3D空間情報を把握しながら、自分の位置を特定するような技術が必要になるわけで、当社はそうした技術などを提供しています。
取材者:
屋内と屋外の制御システムを使い分けることができるようなイメージですか?
回答者:
厳密には、ドローンの制御システムというのは、フライトコントローラーと言われているのですが、フライトコントローラーというのは、姿勢制御と位置制御があります。
基本、姿勢を制御する姿勢制御は、メーカーが作ります。
位置制御は、GPSを使ったり、いろいろなセンサーをドローンに搭載して、これはドローンメーカーが選ぶわけです。
ドローンメーカーは汎用機を作りますので、特殊環境に特化したドローンというのはそんなに簡単には作れないわけです。当社は、位置制御可能なセンサーを外付けで接続し、特殊環境にでも対応できるようにソリューションに特化したセンサーモジュールを開発するのが得意な会社ということです。当社はセンサーのメーカーではないので、いろいろなセンサーを組み合わせて、最適な位置を割り出すためのセンサー・フュージョンという、ソフトウェア上のアルゴリズムの技術に強みがあります。
取材者:
今後はドローンを、より活用したサービスを提供していきたいとのことですが、今はドローンの活用というのが不十分というか、活用しきれていない現状があるのですか?
回答者:
おっしゃる通りです。
ドローンというのは、導入というのは進んだのですが、使う会社や部署によっても、ドローンを飛行させるのに抵抗があるという方もいらっしゃいますし、大手企業になると、2年とか3年に1回みんな異動してしまいます。だから技術が、会社内で伝承されないという問題があって、導入が進まないところがあります。まだ、ドローン業界はレベル1、2のフェーズですから、もう少し人手をサポートするというのが当社のスタンスです。
取材者:
それが、さらに操作が簡単になっていったり自動化していくと、活用方法というのが広がっていくというイメージですか?
回答者:
私はそう信じています。
取材者:
つまり、人手を介せば介するほど普及としては、カメラマンがいるのと同じで、カメラがあっても、うまく活用できるような素晴らしい芸術家にはなれないわけですよね。そういうことですね。
取材者:
ちなみにドローンのパイロットの方と関係性が非常に強いというお話があったかと思うのですが、パイロットの方は普段、企業に所属されているのか、それともドローン担当のパイロットとして仕事をされている方がいらっしゃるのですか?
回答者:
当社が今回想定している連携というのは、主に先ほどご紹介したドローンスクールです。そもそも自社でドローンスクールの事業を行っていらっしゃる方は、点検会社であったりとか、あるいは自動車教習所であったりとか、本業を持っていらっしゃる企業さんもいらっしゃいます。あとは専業でドローンの運用受託をやっているという会社もあります。
取材者:
ドローンスクールを運営している会社が全国各地にあって、その場所ごとに当社が派遣するというイメージですか?
回答者:
いろいろ連携させていただいています。端的に言えば、当社が委託するということになります。
取材者:
システムの国際標準化のお話もあったかと思うのですが、現状、国内と国外の売上比率というのはどれくらいなのですか?
回答者:
今は、国外はほとんどやっていないです。もちろん一部公開していないところもあるのですが、ただ圧倒的に国内が多いです。
取材者:
そうしましたら、2027年以降というのは、国外も視野に入ってくるのですか?
回答者:
当社としては、最優先は国内の地方自治体の深刻なインフラ老朽化対策にフォーカスしていきます。労働力不足でスタッフもどんどん減っていってしまうという問題があるので、当面は各自治体における課題に対して、しっかり向き合うというのが最優先なのですが、先ほどご紹介したように、ドローンの離発着場ドローンポートというのは国際標準規格化していますので、そういう意味では世界に展開していくときには、各国のルールなどの参入障壁を下げるという効果もあるので、ドローンポートでの世界展開というのは十分可能性は将来的にあると考えています。
取材者:
2023年12月に上場されて1年と半年くらいですか。上場された目的というのは、どういった部分でございますか?
回答者:
一つは社会的な認知度を上げていくということです。まだ、ドローンはいろいろ認知され始めてはいるものの、そんなに注目されてきませんでした。現在、ドローン銘柄は4社も上場して、埼玉県八潮市の事故であったり、石川県能登半島の災害があったりということで、ドローンも最近少しずつ注目されるようになってきたというのはあります。二つ目は、人材採用の強化や、多様な資金調達です。以上より、当社としては上場を選んだということです。
取材者:
今後の採用の戦略がございましたら教えていただけますか?
回答者:
エンジニアで言うと、当社のセンシングの開発というのは、高いレベルのエンジニアが必要になります。当社としては今、世界中からエンジニアを採用するということで、ある程度技術水準を維持する努力をしており、人の採用が途切れないようにしています。
以上より、当社は外国籍の方も多く、在籍歴も長くて、5年以上の方も多く、海外の方は転職が早いのですが、当社は長く外国籍の方との対話を重視し、エンジニア独自の給与体系を作ったりとか、海外のメンバーが働きやすい環境作りをしているかと思います。
一方、当社としては、知財もしっかり取得して、技術が流出しないように対策しています。
取材者:
今後の株主還元策につきまして教えていただけますか?
回答者:
現状では恐縮ですが赤字ですので、事業成長に重点を置いていますので、当面は事業成長に伴う投資を優先していこうと考えていますが、しかるべきタイミングで株主様への還元ができるようなことを、タイミングを見計らって、準備していこうと考えています。
取材者:
最後にトピックスがございましたら教えていただけますか?
回答者:
2024年度決算発表でもお話しましたが、今までは電力とか民間のインフラ施設などの点検が多かったのですが、今年は埼玉県八潮市でもドローンは話題になりましたように、公共インフラの50年経過問題というのがあって、老朽化が大きな課題になっています。
点検員不足というのが今後数年で大きな問題になっていくだろうという危機意識を当社も持っており、インフラを維持していくのが大変な状態なので、公共インフラの点検というのは需要も伸びてくるし、当社としてもリソースを割いていきたいという思いがあります。
取材者:
公共インフラの部分の受注の面に関しては、入札という部分が大きくなってくるのですか?
回答者:
基本的には公共インフラというのは、建設コンサルタントやゼネコン、調査会社が受託していくことが多いです。
当社は、いであ株式会社との提携発表もあり、今後の受注活動の拡大に努力していきたいと考えています。
ビジネスモデルや事業内容
同社は、ドローン前提社会の到来を確信し、人とドローン・ロボットをつなぐシステム構築を事業の核としており、「BEP(Blue Earth Platform)」を開発・提供している。「BEP」は、ドローン・ロボットの位置を特定するためのセンサーモジュールと、クラウド側から操作・管理するためのサーバーアプリケーションによって構成されており、同社は、「BEP」を軸として、点検、教育、ドローンポート(ドローンの離発着場)、ネクスト(新規事業)という4つのソリューションでサービスを展開する。
創業の経緯と転機となった出来事
創業者は、大学院での海岸防災研究を背景に、災害直後の航空写真入手困難を契機にドローンの技術に注目。東京大学工学部航空宇宙工学科の鈴木教授との出会いを通じて、ドローンの産業活用に着手したことが事業の始まりとなる。
特徴や強み
同社は、ハードウェアではなくソフトウェアを強みとして、ドローン・ロボット業界において、独自のポジショニングを確立。GPSが利用できない環境や特殊環境下でのソリューション開発に強みを持ち、独自の「BEP」技術により、多様なニーズに対応可能である。また、全国に10万人近いドローンのパイロットネットワークを有し、広範囲な地域でのサービス提供体制を構築している。さらに、ドローンポートの開発・提供においては、ISOの国際標準規格化を議長として推進するなど、技術力と将来性において優位性を有する。
成長戦略
同社の成長戦略は、短期的な収益性の向上と長期的な事業拡大の二つの軸で構成される。短期中期戦略としては、ドローン操縦の専門家であるパイロットと同社のドローンソリューションを組み合わせたサービスを提供することで、顧客のドローン活用を支援し、新たな収益源を確立する。現在、公共インフラの老朽化が進み、効率的な点検・維持管理が重要な課題となっているため、ドローンによる自動点検のニーズが高まっていることを背景に、公共インフラの点検ソリューションの提供を強化する。長期戦略としては、ドローンの自動離発着、充電、データ管理などを行うための施設であるドローンポートを核とした自動化サービスを推進し、ドローンの自動化・省人化を促進することで、さらなる事業拡大を目指す。
中期戦略について
同社は、2027年12月期までに営業利益の黒字化を達成することを目標とする。そのために、ドローンを活用したサービスの強化、公共インフラ分野への展開、ドローンポートを核とした自動化の推進という3つの戦略を実行する。
今期の取り組みやトピックス
公共インフラの老朽化が深刻化する中で、同社はこの分野への事業展開を強化する。建設コンサルタント会社などとの提携を通じて、公共インフラ点検の需要を取り込み、事業拡大を目指す。具体的には、いであ株式会社との提携等を通して、受注活動を強化していく。
株主還元策
現時点では赤字のため、同社は事業成長への投資を優先する方針である。将来的な株主還元については、適切なタイミングで検討する。
代表取締役社長 最高執行役員 熊田貴之様
取締役 執行役員 経営管理本部長 井手雄一郎様

ブルーイノベーション(株)
東証GRT 5597
決算:12月末日
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:当社の特徴と優位性は、ドローン・ロボット業界において、ハードウェアではなくソフトウェアに強みを持つという独自のポジショニングにあります。一般的なドローンがGPS環境下での利用を前提としているのに対し、当社はGPSが利用できない屋内、橋梁下、下水管内などの特殊環境下でのソリューション開発に強みを持っています。この特殊環境下での位置特定を可能にするために、当社は独自のセンサーモジュールを開発し、市販のドローンに装着して活用しています。
さらに、当社のBEPのクラウドサーバーアプリケーションは、ドローンだけでなく、ロボットや無人搬送車(AGV)など、複数のデバイスを接続して統合的に管理・運用できるシステムであり、その柔軟性が大きな強みです。多くのドローンベンダーが自社のパイロットによるサービス提供に限定される中で、当社は全国に広範なパイロットネットワークを有しており、これにより、全国各地での大規模なサービス提供が可能です。
これらの特徴と優位性を活かし、当社は点検、教育、ドローンポート、ネクストという4つの主要なソリューションを提供しています。特に、ドローンポートに関しては、自動離発着システムの開発やISOの国際標準規格化を議長として推進するなど、将来のドローン前提社会を見据えた先進的な取り組みを行っており、この分野でのリーダーシップ確立を目指しています。
これらの点を総合的に考慮すると、当社は、特殊環境対応能力、システムとしての柔軟性、広範なパイロットネットワーク、そして将来を見据えた技術開発という、他社にはない独自の強みを有していると言えます。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?
A:当社の成長戦略のポイントは、ドローンの社会実装を加速するために、当社の強みを活かしたドローンを活用したサービスを提供することにあります。これまでの物販や受託開発中心のビジネスモデルから、ドローンを活用したサービス提供へとシフトすることで、収益性の向上を目指しています。具体的には、2027年12月期までに営業利益の黒字化を目標としています。長期的な視点では、ドローンポートを軸とした自動化サービスの普及を見据え、省人化による運用コストの低減と収益の大幅な改善を目指しています。また、公共インフラの老朽化問題に対応するため、この分野への注力を強化し、建設コンサルタント会社などとの提携を通じて受注活動を拡大していく方針です。
Q:受注・競合状況は如何でしょうか?
A:受注に関しては、公共インフラ分野における需要の拡大を強く見込んでおり、この分野への注力を進めています。具体的には、建設コンサルタント会社や一部ゼネコン、調査会社などが公共インフラ関連の事業を受託するケースが多いことから、これらの企業との提携を通じて、当社のドローンソリューションの導入を促進し、受注の拡大を目指しています。特に、地方自治体におけるインフラの老朽化と点検を行う人材の不足が深刻化しており、ドローンによる効率的な点検ニーズは今後さらに高まると予測しています。
競合状況については、ドローン関連技術、特にセンサー技術を持つ企業が複数存在します。例えば、Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などの技術を開発している企業がありますが、これらの企業はドローンのみならず、車やシステム向けのセンサーや認識技術も手掛けている場合が多く、事業領域が必ずしも完全に一致するわけではありません。当社は、特定のセンサー技術に特化するのではなく、複数のセンサーを組み合わせ、最適な位置情報を算出する「センサーフュージョン」と呼ばれる技術に強みを持っており、この点が競合他社との差別化要因となっています。また、当社の強みは、ハードウェアの提供に留まらず、ソフトウェアとドローン・ロボットのサービスを組み合わせた包括的なソリューションを提供できる点にもあります。
Q:中期戦略の内容や進捗状況等をご説明ください。
A:当社の中期戦略の核心は、ドローンサービスの社会実装を加速し、収益性を向上させることにあります。具体的には、2027年12月期までに営業利益の黒字化を達成することを目標としています。
この目標達成のために、当社は以下の戦略を実行します。
ドローンを活用したサービスの強化:これまで、ドローンや関連ソリューションの販売、あるいは受託開発が中心でしたが、今後は、当社のソリューションと人材を組み合わせたサービスの提供に注力します。これにより、顧客の現場におけるドローン導入・活用を支援し、継続的な収益を確保するとともに、ドローンサービスの市場浸透を加速させます。
公共インフラ分野への展開:公共インフラの老朽化が深刻化し、点検需要が急速に増加している状況を踏まえ、この分野への事業展開を積極的に進めます。建設コンサルタント会社などとの連携を強化し、ドローンによる効率的な点検サービスを提供することで、社会インフラの維持に貢献するとともに、新たな収益源を確立します。
ドローンポートを核とした自動化の推進:長期的には、ドローンポートを核とした自動化サービスを推進し、さらなる収益性の向上を目指します。ドローンポートとは、ドローンの自動離発着、充電、データ管理などを行うための施設であり、これを整備することで、点検業務などの省人化・効率化が可能になります。当社は、このドローンポートの開発において、ISOの国際標準規格化を議長として推進しており、将来の市場拡大を見据えた優位性を確立しています。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:現時点では、大変恐縮ながら、当社はまだ赤字の状態であるため、株主還元よりも事業の成長に重点を置いています。具体的には、事業成長のための投資を優先的に行っていく方針です。しかしながら、将来的にしかるべきタイミングが来た際には、株主の皆様への還元策を実施できるよう、常に準備を進めてまいります。株主の皆様のご期待に応えられるよう、企業価値の向上に努めてまいります。
取材者:
当社のビジネスモデルや事業内容につきましての特徴や強みなども含めながらご説明いただけますか?
回答者:
私は元々、ドローンが専門ではなく、大学院では、海岸の津波対策や砂浜の侵食対策といった海岸防災に関する研究をしておりました。
災害原因を究明するために、過去から現在までの航空写真を、主にセスナ機やヘリコプターで撮影したものを集め、災害原因を究明してから将来の予測をシミュレーションなどで行うということを大学院時代に行っておりました。
その中で当時、どうしても災害直後の写真が入手できないということで、15年以上前なのですが、ドローンの技術に注目しました。
当時、ドローンという呼称はなくて、東京大学工学部航空宇宙工学科の鈴木真二名誉教授との出会いがあり、先生は御巣鷹山にジャンボ機が墜落した事故を契機に、墜落しない飛行機を作ろうということで、ラジコン機に制御システムを搭載して実験していました。当時は、その機体を飛行ロボットと呼んで、海岸線のモニタリングにこれらを使いたいということで、おそらく国内では初の事例ではないかと思いますが、飛行ロボットといわれていたドローンを産業に活用したというのが元々のきっかけです。
東京大学は飛行制御や運行管理の技術が強かったので、いろいろ教えていただきながら、当社はドローンの研究開発、ドローンのソリューション事業に入っていくという流れになります。
当社は、近い将来、間違いなくドローン・ロボットが活躍するドローン前提社会が到来すると確信しております。
例えば、海上では離島間を物資輸送するドローンが飛び交ったり、津波などの災害があったときに避難警報を呼びかけるドローンが飛び交ったりする。
あるいは海中では、ドローンが活躍して、海中の探査であったり、点検をしたりする。
あるいは陸上を見ると、外壁点検のドローンが飛び交ったり、あるいは空飛ぶクルマや大型ドローンが人や物を運んでいたり、ドローンポートがあちこちに整備されているという世界が、将来間違いなく来ると確信しており(一部実現されているものもあるのですが)、そのような社会をシステムを中心として支えていこうというビジョンがあります。
具体的には、人とドローン・ロボットをつなぐシステムを作って、そのシステムはスマートシティを構成する都市OSにつながってスマートなまちづくりに貢献していこうという思いで、当社は事業を行っています。
具体的にどのようなシステムかといいますと、Blue Earth Platform、略してBEP、ベップと呼んでいますが、このBEPは、ドローン・ロボットの位置を特定するセンサーモジュールと、そのドローン・ロボットを、クラウド側から動かしたり、情報を集めたり、管理したりするようなサーバーのアプリケーションで構成されており、当社が開発を行っています。
例えばドローンというのは、屋外でGPSのサポートを受けて自動飛行していくのが一般的なのですが、例えば屋内とか、橋梁の下、下水管の中であったりとか、あるいはタンクの中では、GPSが入らないのです。
こういった場所で位置を特定するためのセンサーモジュールなどを当社が開発して、市販のドローンに装着したりして、貢献しています。
改めて当社のポジショニングなのですが、当社はドローン・ロボット業界では、ハードウェアではなく、基本的にはソフトウェアを強みにしている会社です。
また、通常のドローンというのは、GPS環境下で活躍するドローンが多い中で、当社はGPSが入らない環境、あるいは特殊環境というのに強みを持っています。
また、こういった特殊環境で飛行できるようなドローンのメーカーもいますが、当社はメーカーではないので、先ほどのBEPを軸にして、ドローンやロボット、無人搬送車(AGV)をBEPに接続して複数のデバイスでソリューションを提供することができます。
また、大半のドローンベンダーは、自社のパイロットでのサービスを提供する中で、当社では全国のパイロットネットワークを有しており、当社で同時に数十ヶ所の拠点でサービス提供できるというのが当社の強みということになります。
当社は、BEPを軸にして、点検、教育、ドローンの離発着するドローンポート、ネクストという4つのソリューションで構成されてサービスを提供しており、主に点検というのは、火力、水力、原子力の発電所や製鉄所などのプラント施設、あるいは送配電線の点検サービスを提供しています。
最近では、公共インフラ施設の点検も最近増えています。
それから教育は、ドローンを扱うための人材育成などのソリューションなどを提供しています。
そして今後、ドローンというのは、今レベル1、2のフェーズで、現場にパイロットが行って、ドローンを操縦して点検するという世界から、レベル3、4というフェーズになり、どんどん自動化していくと思います。
そうすると、ドローンの離発着場であるドローンポートがあちこちに整備されていて、ある時刻になるとドローンポートからドローンが自動で離陸して、そして点検や監視、あるいは物資輸送を自動でやってくれるような、こういう自動化に向けたドローンのポートソリューションを、開発提供していきます。
このソリューションは、以前は物流ソリューションと呼んでいたのですが、最近このドローンポートというのが多岐にわたって、点検、防災、監視といったところでのニーズが増えてきたので、ポートソリューションという呼び方に変えています。
ここからは、詳しく、点検ソリューションからご紹介していきます。
まずは、送電線点検ですが、
現在、東京電力様から6年以上前に、送電線をドローンで自動点検したいというご相談があったのです。
元々、送電線点検は、人が宙乗り点検をしたりとか、あるいは鉄塔によじ登ってスコープで覗いたりということをしていたわけです。
鉄塔間の送電線は少したわんでいますので、GPSと気圧センサーで地上と平行に飛行する通常のドローンではカメラのフレームアウトを引き起こしてしまうため、我々は何とかこのたわんだ送電線を検知するセンサーモジュールを新たに東京電力様と一緒に開発しました。
現在は、北陸電力様をはじめ、他の電力会社様にも少しずつ導入展開しつつあります。
(動画)
こちらが当社のBEPラインというシステムですが、市販のドローンの上に、当社開発のセンサーモジュールがあります。ソフトウェアのアプリも開発しており、タブレット上で送電線の線種を選ぶと、ドローンが離陸しまして、対象となります送電線まで上がると、タブレット上に候補になる送電線が出てきて、例えば点検候補の送電線番号を手で押せば、自動でその送電線を追従して飛行するというような技術になっています。
取材者:
操作する必要はないのですか?
回答者:
基本的には自動で飛行します。送電線まで到達すれば、自動で送電線に沿って飛行し、カメラもぶれずに正確に送電線を点検できます。
続いて、プラント点検でございまして、GPSが入らない屋内施設での点検であったり、あるいはプラント内の巡回点検を人でやっているものをAGVで自動で点検するものです。
ドローンのハードウェアは、スイスのメーカーと提携しており、AGVは筑波大学発のベンチャーと提携して点検ソリューションを作っています。スイスのメーカーとは、2017年から屋内に特化したソリューションの開発を進めており、現在は電力施設で多く利用されています。昨今、公共インフラ施設の方でも導入がされ始めています。
様々な導入事例ですけれども、九州電力様で火力発電所のボイラー点検とか煙突内部、トンネル内の点検などで利用頂いています。
ENEOS様では、プラント施設を3Dモデル化、CAD化するというような取り組みをしたり、出光興産様では、埋設配管の内点検を大幅に時間短縮したりしています。
あるいは東急建設様では、屋外屋内で、3Dモデル化しながら施工管理する取り組みをしたり、清水建設様では、地下ピットの中を点検したり、人が入れないような危ないところをドローン点検したりしています。
最近では、埼玉県八潮市の下水道管内の調査などにも導入され、下水道管内の状況というのを把握することができたということで、今後、公共インフラ施設における導入というのは増えていくだろうと見ています。
続いて、教育のソリューションですが、当社でドローンの基礎教育、あるいはソリューションに特化した応用教育を提供しています。
当社は、資料にも記載しておりますが、元々ドローンの産官学コンソーシアム団体JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)という団体の立ち上げと、運営のサポートをしており、JUIDAは、全国で3万人以上のドローンのパイロットを育成、パイロットライセンスを発行したり、あるいは全国で230校以上のドローンスクールの運営をサポートするということをしています。当社は、JUIDAを通して全国のパイロットのネットワークを有しているというのが一つ特長です。
また、パイロット向けにお役立ちの情報アプリを作っており、パイロットがどこを飛行していいかとか、飛行時のフライトログが記録できたり、あるいは飛行申請をサポートしたり、ドローンの保険も提供したりと、現在6万人以上のユーザーにご利用いただいています。
以上、当社ではBEPを活用したソリューションを開発して、全国で約10万人近いパイロットネットワークを有しており、電力会社などの顧客に点検ソリューションを提供できる体制と、点検データのプラットフォーム化をするといった、一気通貫のサービス提供サイクルを構築しているというのが当社の特長であり強みであるということになります。
続いて、先ほど申し上げた、これからレベル3、4のフェーズでは、ドローンの離発着場(ドローンポート)が重要だという話をしたのですが、当社は2016年から国土交通省、東京大学とともに研究開発しており、ドローンポートの自動化に関わるシステムとか、離発着に関わるセンシングの部分(正確に離発着できるような、センサーモジュール)なども開発しています。
ポートのハードウェアはIHI様だったり、トヨタ自動車様とも連携してきており、いろいろなタイプのポートを作ってきています。また、このドローンポートの国際標準化は国策ということもあって、ISOの国際標準規格化を当社が議長として推進してきており、2023年6月に世界初となる物流用ドローンポート設備要件の国際標準規格化を実現しました。
ISOに準拠したドローンポートは仙台市に導入が進み、仙台市で今後津波が来た際に、ドローンで避難警報を自動でアナウンスしていく仕組みです。津波のJアラートが発動されると、ドローンポートがそれを受信して、ドローンがポートより自動で飛んで避難警報していくというシステムになっています。
続いて、東京2020オリンピックサーフィン会場にもなった千葉県一宮町にも、同様のドローンによる津波避難警報システムが導入されました。
続いて、石川県能登半島での土砂ダムの監視システムとして、ドローンポートが活用された事例です。
これは元々、能登半島で地震があった際に、実際に山間部で土砂災害があって、河川が閉塞し土砂ダムが形成され、この土砂ダムがいつ決壊するかという二次災害を防止するために、ドローンで定期的に監視したいと要望を頂きました。現場に、車で行くと5時間くらいかかるところを、ドローンで行くと20~30分で行けるので、定期的に監視するなら、ドローンポートを現場に設置して、定刻に巡回監視をしたということになります。結果としては、大きな決壊にはならなかったのは幸いです。
取材者:何か異常があるとドローンが自動で検知してくれるのですか?
回答者:基本的には当時は監視だけですので、AIで何か分析するソリューションを提供するということは特にしていません。
これは災害だけではなくて、ダムとか河川とかという公共インフラの巡回点検にも活用されるということで、現在、取り組んでいるという状況でございます。
今後なのですが、これは2024年度の決算発表でも話しましたが、当社の強みとしては、特殊環境下でのソリューションの開発の提供に強みを持っているということと、全国に10万人近いパイロットネットワークを有しています。
今までは、ニーズを捉えた実証実験であったりとか、あるいは受託開発、あるいは当社がBEPのソリューションパッケージを販売していたのですが、今後は、BEPのソリューションパッケージを活用して、もう少し人の手を介してサービスを提供して社会実装を加速していくことが、短期中期の戦略方針です。
その戦略によって、トップラインを上げていくという前提で2027年12月期までに、営業利益を黒字化していこうという方針で動いています。
長期戦略としては、先ほどもご紹介しましたが、ドローンポート導入が拡大していくだろうと私たちは見ています。
現在、国のプロジェクトで国産のドローンポートを開発していますが、3年から5年後には、ドローンポートを軸にした自動化サービスというのが普及していくだろうと見ています。
当社の強みというのは、BEPで複数のドローンを運航管理することができて、さらにISO準拠したドローンポートの開発なども行っているということです。
今後、国や自治体がドローンポートを調達する際に、ISO準拠というのが重要になると思われます。
ドローンポートの導入が広がれば広がるほど、従来の1現場で2人3人のパイロットが点検していたのが、ドローンポートさえ置いておけば、1人のパイロットで10現場20現場が見られると。つまり、省人化が進むということです。
それによってサービスのコストが低減されて、収益を大幅に改善するのが、長期の成長戦略の方向性です。
長期的には、ドローンポートを活用して、サービスを自動化させ、省人化させて収益、利益を拡大していくという成長戦略を描いています。
今後、市場の拡大ということで書かせていただきましたが、これは当社の試算ではあるのですが、電力業界、建設業界で、それぞれの業界でドローンを対象としうる施設があり、1日でどれくらいの点検ができるかというのを換算した年間での総点検の日数を割り出したところ、電力業界で6万2,000日、建設業界で8,900万日、製造プラントでは7,500日、国自治体では95万日と相当の日数があります。今後これに、サービス単価を乗じますと、非常に大きなマーケット規模であるということがご理解いただけるかと思います。
取材者:
貴社のようにセンサーを用いてドローンの運用をしているというのは、他にございますか?
回答者:
センサーの上場している企業として、Visual SLAMなどを作っているKudan株式会社などがあります。Kudan株式会社もセンシングを研究し、車やドローンなど様々なデバイス搭載を検討しています。
取材者:
ドローンの制御システムというと、GPSを使ってルートを自動飛行するようなイメージがあるのですが、センサーを使って自動で飛行をしていくというのは、ドローン業界では珍しいのでしょうか?
回答者:
普通は屋外で飛行するドローンというのは、地図情報やGPSセンサーを使います。ただ屋内環境になると地図もなく、GPSも入らないということなので、地図なしで自分の位置を特定していかなくてはいけないということになると、ドローンなどが飛行しながら3D空間情報を把握しながら、自分の位置を特定するような技術が必要になるわけで、当社はそうした技術などを提供しています。
取材者:
屋内と屋外の制御システムを使い分けることができるようなイメージですか?
回答者:
厳密には、ドローンの制御システムというのは、フライトコントローラーと言われているのですが、フライトコントローラーというのは、姿勢制御と位置制御があります。
基本、姿勢を制御する姿勢制御は、メーカーが作ります。
位置制御は、GPSを使ったり、いろいろなセンサーをドローンに搭載して、これはドローンメーカーが選ぶわけです。
ドローンメーカーは汎用機を作りますので、特殊環境に特化したドローンというのはそんなに簡単には作れないわけです。当社は、位置制御可能なセンサーを外付けで接続し、特殊環境にでも対応できるようにソリューションに特化したセンサーモジュールを開発するのが得意な会社ということです。当社はセンサーのメーカーではないので、いろいろなセンサーを組み合わせて、最適な位置を割り出すためのセンサー・フュージョンという、ソフトウェア上のアルゴリズムの技術に強みがあります。
取材者:
今後はドローンを、より活用したサービスを提供していきたいとのことですが、今はドローンの活用というのが不十分というか、活用しきれていない現状があるのですか?
回答者:
おっしゃる通りです。
ドローンというのは、導入というのは進んだのですが、使う会社や部署によっても、ドローンを飛行させるのに抵抗があるという方もいらっしゃいますし、大手企業になると、2年とか3年に1回みんな異動してしまいます。だから技術が、会社内で伝承されないという問題があって、導入が進まないところがあります。まだ、ドローン業界はレベル1、2のフェーズですから、もう少し人手をサポートするというのが当社のスタンスです。
取材者:
それが、さらに操作が簡単になっていったり自動化していくと、活用方法というのが広がっていくというイメージですか?
回答者:
私はそう信じています。
取材者:
つまり、人手を介せば介するほど普及としては、カメラマンがいるのと同じで、カメラがあっても、うまく活用できるような素晴らしい芸術家にはなれないわけですよね。そういうことですね。
取材者:
ちなみにドローンのパイロットの方と関係性が非常に強いというお話があったかと思うのですが、パイロットの方は普段、企業に所属されているのか、それともドローン担当のパイロットとして仕事をされている方がいらっしゃるのですか?
回答者:
当社が今回想定している連携というのは、主に先ほどご紹介したドローンスクールです。そもそも自社でドローンスクールの事業を行っていらっしゃる方は、点検会社であったりとか、あるいは自動車教習所であったりとか、本業を持っていらっしゃる企業さんもいらっしゃいます。あとは専業でドローンの運用受託をやっているという会社もあります。
取材者:
ドローンスクールを運営している会社が全国各地にあって、その場所ごとに当社が派遣するというイメージですか?
回答者:
いろいろ連携させていただいています。端的に言えば、当社が委託するということになります。
取材者:
システムの国際標準化のお話もあったかと思うのですが、現状、国内と国外の売上比率というのはどれくらいなのですか?
回答者:
今は、国外はほとんどやっていないです。もちろん一部公開していないところもあるのですが、ただ圧倒的に国内が多いです。
取材者:
そうしましたら、2027年以降というのは、国外も視野に入ってくるのですか?
回答者:
当社としては、最優先は国内の地方自治体の深刻なインフラ老朽化対策にフォーカスしていきます。労働力不足でスタッフもどんどん減っていってしまうという問題があるので、当面は各自治体における課題に対して、しっかり向き合うというのが最優先なのですが、先ほどご紹介したように、ドローンの離発着場ドローンポートというのは国際標準規格化していますので、そういう意味では世界に展開していくときには、各国のルールなどの参入障壁を下げるという効果もあるので、ドローンポートでの世界展開というのは十分可能性は将来的にあると考えています。
取材者:
2023年12月に上場されて1年と半年くらいですか。上場された目的というのは、どういった部分でございますか?
回答者:
一つは社会的な認知度を上げていくということです。まだ、ドローンはいろいろ認知され始めてはいるものの、そんなに注目されてきませんでした。現在、ドローン銘柄は4社も上場して、埼玉県八潮市の事故であったり、石川県能登半島の災害があったりということで、ドローンも最近少しずつ注目されるようになってきたというのはあります。二つ目は、人材採用の強化や、多様な資金調達です。以上より、当社としては上場を選んだということです。
取材者:
今後の採用の戦略がございましたら教えていただけますか?
回答者:
エンジニアで言うと、当社のセンシングの開発というのは、高いレベルのエンジニアが必要になります。当社としては今、世界中からエンジニアを採用するということで、ある程度技術水準を維持する努力をしており、人の採用が途切れないようにしています。
以上より、当社は外国籍の方も多く、在籍歴も長くて、5年以上の方も多く、海外の方は転職が早いのですが、当社は長く外国籍の方との対話を重視し、エンジニア独自の給与体系を作ったりとか、海外のメンバーが働きやすい環境作りをしているかと思います。
一方、当社としては、知財もしっかり取得して、技術が流出しないように対策しています。
取材者:
今後の株主還元策につきまして教えていただけますか?
回答者:
現状では恐縮ですが赤字ですので、事業成長に重点を置いていますので、当面は事業成長に伴う投資を優先していこうと考えていますが、しかるべきタイミングで株主様への還元ができるようなことを、タイミングを見計らって、準備していこうと考えています。
取材者:
最後にトピックスがございましたら教えていただけますか?
回答者:
2024年度決算発表でもお話しましたが、今までは電力とか民間のインフラ施設などの点検が多かったのですが、今年は埼玉県八潮市でもドローンは話題になりましたように、公共インフラの50年経過問題というのがあって、老朽化が大きな課題になっています。
点検員不足というのが今後数年で大きな問題になっていくだろうという危機意識を当社も持っており、インフラを維持していくのが大変な状態なので、公共インフラの点検というのは需要も伸びてくるし、当社としてもリソースを割いていきたいという思いがあります。
取材者:
公共インフラの部分の受注の面に関しては、入札という部分が大きくなってくるのですか?
回答者:
基本的には公共インフラというのは、建設コンサルタントやゼネコン、調査会社が受託していくことが多いです。
当社は、いであ株式会社との提携発表もあり、今後の受注活動の拡大に努力していきたいと考えています。
ビジネスモデルや事業内容
同社は、ドローン前提社会の到来を確信し、人とドローン・ロボットをつなぐシステム構築を事業の核としており、「BEP(Blue Earth Platform)」を開発・提供している。「BEP」は、ドローン・ロボットの位置を特定するためのセンサーモジュールと、クラウド側から操作・管理するためのサーバーアプリケーションによって構成されており、同社は、「BEP」を軸として、点検、教育、ドローンポート(ドローンの離発着場)、ネクスト(新規事業)という4つのソリューションでサービスを展開する。
創業の経緯と転機となった出来事
創業者は、大学院での海岸防災研究を背景に、災害直後の航空写真入手困難を契機にドローンの技術に注目。東京大学工学部航空宇宙工学科の鈴木教授との出会いを通じて、ドローンの産業活用に着手したことが事業の始まりとなる。
特徴や強み
同社は、ハードウェアではなくソフトウェアを強みとして、ドローン・ロボット業界において、独自のポジショニングを確立。GPSが利用できない環境や特殊環境下でのソリューション開発に強みを持ち、独自の「BEP」技術により、多様なニーズに対応可能である。また、全国に10万人近いドローンのパイロットネットワークを有し、広範囲な地域でのサービス提供体制を構築している。さらに、ドローンポートの開発・提供においては、ISOの国際標準規格化を議長として推進するなど、技術力と将来性において優位性を有する。
成長戦略
同社の成長戦略は、短期的な収益性の向上と長期的な事業拡大の二つの軸で構成される。短期中期戦略としては、ドローン操縦の専門家であるパイロットと同社のドローンソリューションを組み合わせたサービスを提供することで、顧客のドローン活用を支援し、新たな収益源を確立する。現在、公共インフラの老朽化が進み、効率的な点検・維持管理が重要な課題となっているため、ドローンによる自動点検のニーズが高まっていることを背景に、公共インフラの点検ソリューションの提供を強化する。長期戦略としては、ドローンの自動離発着、充電、データ管理などを行うための施設であるドローンポートを核とした自動化サービスを推進し、ドローンの自動化・省人化を促進することで、さらなる事業拡大を目指す。
中期戦略について
同社は、2027年12月期までに営業利益の黒字化を達成することを目標とする。そのために、ドローンを活用したサービスの強化、公共インフラ分野への展開、ドローンポートを核とした自動化の推進という3つの戦略を実行する。
今期の取り組みやトピックス
公共インフラの老朽化が深刻化する中で、同社はこの分野への事業展開を強化する。建設コンサルタント会社などとの提携を通じて、公共インフラ点検の需要を取り込み、事業拡大を目指す。具体的には、いであ株式会社との提携等を通して、受注活動を強化していく。
株主還元策
現時点では赤字のため、同社は事業成長への投資を優先する方針である。将来的な株主還元については、適切なタイミングで検討する。
代表取締役社長 最高執行役員 熊田貴之様
取締役 執行役員 経営管理本部長 井手雄一郎様