取材者:
貴社のホームページの沿革や決算説明資料などを拝見させていただきましたが、改めて貴社のビジネスモデルや事業内容につきまして、特徴や強みなども含めてご説明いただけますか。
回答者:
はい、承知いたしました。当社の沿革からお話しましょう。1972年に株式会社オービック様にソフトウェアを供給するという形で会社をスタートしております。
そもそも当社の創業者の山田が、株式会社オービック様の野田会長と前職で一緒だったということがありまして、そのご縁で野田様が株式会社オービックを設立されてから、同社向けのソフトウェア開発を支援してくれというお話があり、それで会社を立ち上げたと聞いております。株式会社オービック様はその後、自社開発の方に移行されましたので、ここ数年はもうお取引はございません。
現在は出資をいただいている部分と、社外監査役を1名派遣していただいているという関係になっております。株式会社オービック様は大株主でいらっしゃいますし、ソフトウェアビジネスの大先輩でもありますので、様々な形でご相談したり、お話を伺ったりしているという関係がございます。
現状の当社の商売の状況としましては、1976年に株式会社日立製作所様が関西に進出される際に、地銀さん向けのシステム開発で取引を開始いたしました。これが今の大きな流れのスタートになっております。
その後、三菱電機ソフトウェア株式会社様ともお取引を始め、30数年、株式会社日立製作所様とは40数年のお付き合いになりますが、当社の売上のおよそ7割が株式会社日立製作所様およびその子会社様との関係からとなっております。三菱電機ソフトウェア株式会社様が1割程度、それとそれ以外の大手のSIer様、株式会社NTTデータ関西様他といったところで1割、あとは直接契約が1割という割合です。
ここ数年の間、コロナ禍もあり、事業環境の変化があって多少の変動はありますが、概ね7:1:1:1程度の比率で推移しております。
当社は、事業本部を4つ設けておりまして、そのうちの金融事業が4割弱、それから金融から分離したITイノベーション事業が1割弱となっております。残りの半分は、産業流通が3割、社会公共が2割強というような売上構成です。
2023年6月21日に上場しましたが、上場直前ぐらいからは一応順調に売上、利益は伸びてきていると考えております。
取材者:
何かこのタイミングで上場された目的はございますか。
回答者:
元々創業者の山田が上場したいと考えておりました。上場がゴールということではないのですが、せっかく会社を作ったのだから、やはり上場したいと考えており、ある程度売上を伸ばしてきたということで上場しようとしたのですが、過去にバブルの崩壊やリーマン・ショックがあり、ちょうど上場を考えたタイミングで業績が少し悪化するという状況がありました。
どうしようかというところで、現社長の豊田が山田と血縁関係にあるのですが、証券会社の引受関係の仕事をしておりまして、それで山田に上場できるかと聞かれた際に「できますよ」と答えたところ、「うちに入ってやってくれ」と言われたということで、2019年に入社し、2020年から社長として上場準備に入ったという経緯です。
会社の経営理念としまして、「永遠に伸びる会社」「社員一人ひとりが幸せになれる会社」「社会に貢献できる会社」ということを掲げております。その延長線上に、上場してある程度の規模を拡大し、影響力を持って社会に貢献できるという流れがあると考えております。
業績に関しては既にご覧になっていると思いますが、上場する際にも「安定はしているが成長するのか」ということをよく聞かれましたが、おかげさまで、それなりに成長はしていると考えております。昨年、中期経営計画を公表させていただきましたが、規模の拡大、利益の拡大、そして社会インフラを担っているという意識の中で当社が仕事をして業績を伸ばしていくことが社会貢献に繋がるだろうと考え、ぜひ成長させていこうと考えております。
取材者:
成長戦略として、新規の取引先の拡大という部分も挙げられているかと思いますが、具体的に4つの事業の中でどの事業をメインに広げていくといった戦略をお持ちでしょうか。
回答者:
ITイノベーション事業に力を入れていきたいと考えております。当初から事業拡大のテーマとしてDX、デジタル変革というものを掲げておりましたので、それに特に注力できる環境づくりとして、ITイノベーション事業を2022年に金融事業から分離いたしました。
当社の場合、営業は、実際に開発している現場が、取引先と関係を築き信頼を得ながら次の仕事を取っていくという形で動いてきた部分が大きいです。営業が仕事を取ってきて、それを開発に渡して開発が実行するという体制にはなっていないため、現場が今までの関係から横に広げていく、あるいは開発が一段落したタイミングで自社に切り替えていくという進め方が一番やりやすいと考えており、既存の取引先との関係を活かしITイノベーション事業の拡大も図りたいと考えております。
取材者:
ITイノベーション事業は、金融事業から独立されたということで、金融事業者向けに提供していたサービスを、他の業種にも展開していくのでしょうか。
回答者:
そうですね。ただ、今のところ他の業種にまで展開しているということはなく、金融機関のインフラ、クラウドなどが中心に徐々に生成AIの対応なども行いながら、ビジネス範囲を広げています。あとは、会社全体のDXの旗振り役ということも期待しているところです。
取材者:
具体的にどのようなところからDXを進めていくのでしょうか。
回答者:
既にご承知のことと思いますが、当社は大手のSIer様の仕事をしているため、Sier様が受注したDX案件に参画し、スキルを習得し仕事の幅を広げているフェーズです。
自社が主体となってDXを推進していくということに関しては、まだ少し先になると考えております。やはり自社がお客様と直接取引し請負で仕事をすることによって利益率は上がりますので、そういったところは伸ばしていきたいと考えております。
取材者:
承知いたしました。新規事業の創出や拡大ということも考えられているかと思いますが、いつまでに事業を立ち上げるというような数値的な目標はございますか?
回答者:
特に事業に関して具体的な目標を立てているということはないのですが、1年かけてやってきたこととしては、株式会社MILIZEと業務提携し、AIを使った事業を行うということです。今回「CLIP」という、医療検査、臨床検査システムにAIを組み込んだものを4月から発売することになりました。
株式会社MILIZEはAIに強みを持っており、同社自体が金融のマーケット分析などでAIを使うツールやノウハウを持っていますので、そういった部分を今後の当社の金融事業に活かせるのではないかと考えています。
金融関係の事業が全体の半分を占めていますので、その中でもし当社がイニシアチブを取って株式会社MILLIZEと協業できるような仕事があれば、AIの事業領域も拡大していけるのではないかと期待しています。
取材者:
既存の拡大ということも重要ですよね。
回答者:
そうですね。
取材者:
M&Aなども考えられているかと思いますが、M&Aに関しては、どのような企業をターゲットにしているか、戦略などはございますか。
回答者:
当社とシナジーを生み出せるような、補完関係を築ける企業が候補になります。
昨年4月から北海道の株式会社ヒューマン&テクノロジーを子会社化し、今年の5月には株式会社グリーンキャットを子会社化するということで、2社M&Aを行いました。株式会社ヒューマン&テクノロジーに関しては、北海道の会社で優秀な人材を比較的容易に集めやすく、顧客が重ならない、エリアが違うという点、そしてリモートで開発ができるため、お互いに仕事を融通し合えるという点がメリットです。将来的なメリットとしては、同社は40人程度の会社であり、教育システム整備に限界があり、採用を経験者に限定せざるを得ず、体制の拡大が悩みでしたが、そこに当社の教育プログラムなどを提供することで、新卒採用により体制拡大のスピードを上げ、将来的にはグループとして開発力の強化に繋げられると考えています。
株式会社グリーンキャットに関しては、40年にわたる事業の中で、取引先と強固な関係を築いており、金融を中心とした業務内容が近いため、開発テーマや必要とされる技術により人材を融通できるということもメリットになると思います。
当社は元々小さな会社で、上場して成長してきましたが、売上もまだ70億円程度ですので、まずは100億円という一つの目標を達成して、それなりの規模の会社として社会に貢献し、影響を与えられるようになりたいと考えており、そのための手段としてM&Aも検討しているという状況です。
取材者:
株式会社ヒューマン&テクノロジーさんの話にもありましたが、どの企業も採用に苦労されている中で、貴社は採用が順調に進んでいるようですが、何か戦略や方針などはございますか。
回答者:
結果的に上場したことが良かったと考えています。元々大阪では採用できていたのですが、東京での採用が難しく、大阪で採用して東京に異動してもらうということを嫌がる人が多かったのです。ある程度地域を限定した働き方になるため、大阪、東京、名古屋のいずれかの拠点で働くことになります。東京で勤務する人材を採用できるようになったのは、上場したことが大きな理由の一つだと考えております。
取材者:
社員教育についてですが、新入社員が入社してから一人立ちし、戦力になるまでどれくらいの期間がかかるのでしょうか。
回答者:
昨年から新人研修を3ヶ月間の集合研修として実施しており、その後配属して上期中はOJTを行います。当社の場合、下期からはチームの一員として売上にも貢献できるようになります。ただ、一人前になるまでは2、3年かかると思います。
取材者:
それでも早いですよね。
回答者:
そうですね。やはりチームで仕事をしているという強みもあるのでしょう。
取材者:
株主還元策について、方針がございましたら教えていただけますか?
回答者:
できるだけ多く還元したいと考えております。
元々、配当性向30%以上という目標を掲げていましたが、既に超えています。そのため、中長期的には40%以上という目標を控えめに設定していますが、社長は上場の時から50%という話もしておりました。
現時点で公式に申し上げているのは、中長期的に40%以上という点ですが、特に設備投資などは積極的に行っていないため、自己資本が増えています。会社の健全性としては良いのですが、資本効率の面から考えるとマイナスになりますので、他に有効な使い道がなければ、株主還元をしていく予定です。
前期は1株当たり75円から80円に増配しましたが、今期も増配を目指していくことになると思います。今後も配当性向は上げていきたいと考えています。株主優待のお話もいただきますが、基本的には配当で還元していく方針です。