20250212
Q:貴社のビジネスモデルの特徴と強みは何ですか?
A:当社グループは、中古マンションを区分所有で購入し、リノベーションを施して付加価値を高めた上で再販する、いわゆる再生事業を主力事業としています。この事業が、全体の売上高と利益の約8割を占めています。また、全国展開を行い、地域ごとのマーケットニーズに対応した事業展開を強みとしています。また、山口県と秋田県で戸建て住宅の請負工事を行う2社を傘下に持っています。これらの会社はM&Aで取得しました。事業会社としては、中古マンション再生事業のホームネット、戸建て請負事業のファーストホームなど、3社で売上を構成しています。
Q:戸建て事業の現状はいかがでしょうか?
A:戸建て住宅市場は、大手パワービルダーによる供給過剰の影響で厳しい状況です。当社の傘下の2社は、注文住宅の請負を主体としており、在庫販売は限定的に扱うことでリスクを低減させています。競争が激しいものの底堅い需要があることから、地域でのシェアを維持・向上させながら安定的に推移しています。
Q:賃貸管理事業の現状と今後の展望について教えてください。
A:賃貸管理事業は、現在約300室程度を管理しており、安定的な収益源となっています。今後は、管理戸数を増やすとともに、オーナー様向けのサービスを充実させることで、収益拡大を目指します。また、賃貸管理事業で得られたデータを活用し、中古マンション再生事業の仕入れや販売に活かしていきたいと考えています。
Q:中古マンション再生事業の強みは何ですか?
A:中古マンション再生事業は、一定の規模を確保することで収益化が可能となります。規模のメリットにより、部材の調達コストを抑え、リノベーションの効率化を図り、販売期間の短縮を実現できます。
Q:顧客層はどのような方々ですか?
A:主に30代後半から40代の初めて住宅を購入される方をターゲットとしています。人口動態の変化はあるものの、賃貸住宅からの住み替え需要は根強く、安定的な需要が見込めます。
Q:テック事業について教えてください。
A:当社は、AI査定などのテクノロジーを活用し、業務効率化を図っています。例えば、AI査定を活用することで、物件の査定を迅速に行い、仕入れに結びつけています。またデータを活用して販売までの期間を短縮しています。その他に、金融機関との取引においても、テクノロジーを活用したサービスを提供しています。
Q:テック事業の収益化についてはいかがでしょうか?
A:現時点では、テック事業による直接的な収益は限定的です。しかし、将来的には、AI査定の精度向上や用途拡張などにより、収益貢献を拡大できると考えています。
取材者:本日はお忙しい中、インタビューのお時間をいただきありがとうございます。まずは、貴社のビジネスモデルの特徴や強みについてご説明いただけますか?
回答者:ありがとうございます。弊社のグループ全体としましては、中古マンションを区分所有で購入し、リノベーションを施して新品同様の状態に再生した上で再販する、いわゆる「中古マンション再生事業」を主力事業としております。この事業が、全体の売上高と利益の約8割を占めております。
取材者:他に事業はございますか?
回答者:はい、他に山口県と秋田県で戸建て住宅の請負工事を行うビルダーを2社保有しております。これらの会社はM&Aによりグループ傘下に入った会社です。事業会社としては、中古マンション再生事業を担う株式会社ホームネットと、戸建て住宅事業を行う株式会社ファーストホーム、そしてM&Aで取得した2社のビルダーで構成されております。
取材者:M&Aで取得した2社のビルダーは、どのような会社ですか?
回答者:どちらも地域に密着した事業を展開しており、長年にわたり地域のお客様から信頼を得ている会社です。株式会社ファーストホームは山口県で、もう1社は秋田県で事業を行っています。どちらも地域のお客様のニーズを捉え、高品質な注文住宅を提供することに強みを持っています。
取材者:これらのビルダーと、貴社のマンション再生事業との間には、シナジー効果はありますか?
回答者:はい、M&Aによるシナジー効果は、大きく分けて二つあります。一つ目は、グループ全体での仕入れ力の強化です。マンション再生事業で培ってきた仕入れノウハウを戸建て住宅事業にも活用することで、より効率的な仕入れが可能になります。二つ目は、顧客基盤の共有です。マンション再生事業の顧客に戸建て住宅を紹介したり、逆に戸建て住宅の顧客にマンションを紹介したりすることで、顧客の選択肢を増やし、新たなニーズを掘り起こすことができます。
取材者:戸建て住宅事業の現状はいかがですか?
回答者:戸建て住宅事業につきましては、現在、市場環境が厳しい状況です。全国展開する大手パワービルダー各社が、住宅を建築して在庫として販売する、いわゆる「建売」住宅の在庫水準が比較的高く維持されているためです。弊社傘下の2社は、建売住宅ではなく、お客様からのオーダーに基づいて注文住宅を請け負い、引き渡すという方法をとっております。しかしながら、新築の戸建て住宅のニーズに対しては、建売住宅との競合が避けられず、市場が大きく拡大する状況にはなく、一定程度地域に密着した事業展開により、一定のシェアを維持している状況です。
取材者:戸建て住宅事業の市場規模は縮小傾向にありますか?
回答者:はい、新築戸建て住宅市場全体の規模は縮小傾向にあります。これは、少子高齢化や人口減少の影響に加え、住宅価格の高騰や建築費の上昇などが要因として挙げられます。
取材者:競合環境はいかがですか?
回答者:競合環境としては、大手パワービルダーの参入や、既存の地域ビルダーとの競争激化など、厳しい状況が続いています。
取材者:そのような厳しい状況下で、貴社はどのようにして戸建て住宅事業を展開していくのですか?
回答者:私たちは、地域密着型の事業展開を強化し、顧客との長期的な関係構築を重視することで、安定的な収益を確保していきたいと考えています。具体的には、地域のお客様のニーズを丁寧にヒアリングし、最適な住まいを提供することで、顧客満足度を高め、リピーターや紹介を増やしていく戦略です。また、アフターサービスの充実や、地域貢献活動への積極的な参加などを通じて、地域社会との信頼関係を築き、長期的な視点で事業を継続していく考えです。
取材者:中古マンション再生事業の強みについて、詳しくお聞かせください。
回答者:中古マンション再生事業の強みは、収益性の高さです。物件のリノベーションを通じて付加価値を高めることで、再販時に利益を確保することができます。また、事業規模が大きいことも強みです。規模のメリットを活かすことで、部材の調達コストを抑えたり、リノベーション工事を効率的に行うことが可能となります。さらに、仕入れから販売までの期間が短いことも強みです。中古マンションは、販売期間が長引くと価格を下げざるを得ない傾向があるため、早期に販売することが重要となります。弊社では、社内DXを推進することで、物件情報を迅速に把握し、効率的な販売活動を行っております。
取材者:貴社は全国展開されているそうですが、地域ごとの戦略はありますか?
回答者:はい、札幌から沖縄まで全国展開していることも弊社の強みです。同様の事業を行う企業の中でも、ここまで広範囲に展開している企業は多くありません。各地域で市場環境を分析し、競合状況などを踏まえながら、柔軟な事業展開を行っております。
取材者:顧客ターゲットについて教えてください。
回答者:主な顧客ターゲットは、30代後半から40代で初めて住宅を購入される方です。人口動態の変化はあるものの、賃貸住宅から持ち家への移行というニーズは根強く、一定の需要が見込める市場と考えております。
取材者:貴社の歴史についてお聞かせください。
回答者:弊社は、元々は大手不動産会社に勤務していた現社長が、独立して創業した株式会社ホームネットという会社からスタートしました。当初は仲介業などを行っていましたが、リーマンショックを契機に、事業の安定化と効率化を図るため、中古マンションの買取再販に特化することを決断しました。以来、10年以上にわたり、この事業に特化することでノウハウを蓄積し、独自のビジネスモデルを確立してまいりました。
取材者:なぜ中古マンションの買取再販に特化することになったのですか?
回答者:リーマンショックを経験し、事業の安定化を図るには、プロジェクトの回転率を上げる必要があると痛感しました。そこで、開発期間の長い分譲事業よりも、比較的短期間で完結する中古マンションの買取再販に特化することにしたのです。
取材者:近年、注力されている事業はありますか?
回答者:近年は、従来の2,000万円台半ばの価格帯のマンションに加え、より高価格帯のプレミアムマンションの取り扱いを開始しました。これは、眺望などの優れた特徴を持つマンションに特化することで、差別化を図り、新たな収益源とすることを目的としています。
取材者:プレミアムマンションの定義や特徴について、詳しく教えてください。
回答者:はい、プレミアムマンションとは、都心の一等地や駅近に立地し、高層階で眺望が良く、広々とした間取りで、高級感のある内装や設備を備えたマンションのことです。これらの物件は、富裕層や高所得者層をターゲットとしており、高い収益性が見込めます。
取材者:プレミアムマンションの仕入れはどのように行っているのですか?
回答者:プレミアムマンションの仕入れは、通常のマンションよりも難易度が高いです。そのため、不動産仲介会社との連携を強化したり、独自の仕入れルートを開拓するなど、様々な取り組みを行っています。
取材者:今後の事業展開についてお聞かせください。
回答者:プレミアムマンションの販売を強化することで、増収増益を目指します。また、従来のマンション事業においては、厳選した物件を仕入れることで収益性の向上を図ります。将来的には、市場環境の変化に対応しながら、新たな事業展開も検討してまいります。
取材者:テクノロジー活用についてお聞かせください。
回答者:弊社では、AI査定などを活用することで、業務効率化を図っております。例えば、物件の査定をAIで行うことで、迅速かつ効率的に査定額を算出することが可能となり、仕入れや販売のスピードアップに繋がっております。また、AI査定の精度向上により、更なる業務効率化と収益向上を目指します。
取材者:マンション再生事業における、仕入れから販売までの期間について詳しく教えてください。
回答者:はい、マンション再生事業においては、物件の仕入れから販売までの期間が短いことが重要です。具体的には、現在、仕入れから販売までの期間は約7~8ヶ月ですが、これを1ヶ月程度短縮したいと考えています。
取材者:業界全体で見ると、どれくらい早いのですか?
回答者:他社、特に上場企業の開示情報を見ても、定義が異なるため単純比較が難しいです。開始日や対象物件の範囲などが異なるため、正確な比較が困難な状況です。同じエリアで同じような事業を行っている企業と比較しても、仕入れから販売までの期間に大きな差はないと感じています。各社とも、すでに効率化を追求しており、これ以上の期間短縮は難しい状況です。
取材者:AI査定の導入は、期間短縮に貢献していますか?
回答者:はい、AI査定の導入により、物件の査定にかかる時間を大幅に短縮することができました。従来は、経験豊富な社員でも物件の査定にある程度の時間を要していましたが、AI査定を活用することで、経験の浅い社員でも迅速に査定を行うことができるようになりました。
取材者:AI査定の精度はいかがですか?
回答者:AI査定は、まだ精度が完璧ではありません。不動産の取引には、経験値やノウハウも必要であり、AI査定の結果を参考にしながら、最終的な判断を行うことが重要です。
取材者:他に、期間短縮に貢献している要素はありますか?
回答者:仲介会社と協力して物件の仕入れを行っていることも、期間短縮に貢献しています。仲介会社が保有する物件情報を、弊社の買取プラットフォームと連携させることで、迅速な仕入れを可能にしています。また、仕入れ契約から決済までの間に、リフォーム工事を先行して行うなど、工夫を凝らしています。
取材者:貴社の創業から現在に至るまでの経緯について、詳しくお聞かせください。
回答者:創業当初は、資金調達の難しさから、仲介業を中心に事業を行っていました。その後、信用力を高め、資金調達が可能になったことで、分譲住宅の販売にも着手しました。しかし、リーマンショックを契機に、事業の安定化と効率化を図るため、中古マンションの買取再販に特化することを決断しました。2000年から中古マンションの買取再販事業に特化し、現在に至ります。
取材者:2024年11月期の決算について、増収増益と好調に見えますが、2022年11月期と比べると、売上高の伸びが鈍化しているように見えます。これは、どのような要因によるのですか?
回答者:2022年11月期は、事業拡大を図るため、積極的に仕入れを行い、出店も増やしました。しかし、その直後に金利上昇の影響で市況が悪化し、販売が伸び悩んだ結果、売上高は前年並みとなりました。費用は先行して増加していたため、利益率が低下しました。また、前期に仕入れた物件の在庫が積み上がり、販売に時間がかかったことも、売上高の伸び悩みの一因です。前期は、プレミアムマンションの導入などにより、増収増益を達成しましたが、まだ改善の余地はあります。特に、粗利率の改善が課題です。
取材者:今期の業績見通しはいかがですか?
回答者:今期は、プレミアムマンションの販売を強化することで、更なる増収増益を目指します。また、従来のマンション事業においては、厳選した物件を仕入れることで収益性の向上を図ります。
取材者:物件を厳選する基準について、詳しく教えてください。
回答者:はい、物件の厳選には、過去の販売実績データを分析し活用しています。各支店ごとに、どのエリアでどのような物件が売れやすいか、あるいは売れにくいかを把握しています。さらに、エリア特性なども考慮し、総合的に判断して仕入れを行っています。
取材者:エリア戦略については、いかがですか?
回答者:エリア戦略としては、基本的に売れるエリアを重視しています。しかし、そうでないエリアでも良い物件があれば仕入れることもあります。ただし、リスクが高いと判断した場合は、仕入れを見送ることもあります。
取材者:仕入れから販売までのプロセスについて、詳しく教えてください。
回答者:仕入れから販売までは、以下のプロセスを経ています。まず、仲介会社から物件情報を取得し、AI査定などを活用して査定額を算出します。査定額が妥当であれば、仕入れ契約を締結し、物件の所有権を取得します。その後、約1ヶ月半~2ヶ月かけてリフォームを行い、販売を開始します。販売契約が成立したら、お客様の住宅ローン手続きなどを経て、最終的に決済を行います。
取材者:社内DXについて、どのような取り組みをされていますか?
回答者:社内DXとしては、AI査定の導入により、物件査定の効率化を図っています。従来は、物件情報や周辺環境などを参考に、ベテラン社員が時間をかけて査定を行っていましたが、AI査定の導入により、経験の浅い社員でも迅速に査定を行うことができるようになりました。また、過去の販売実績データなどをデータベース化することで、物件の査定精度向上に役立てています。これにより、人材育成の効率化にも繋がっています。
取材者:株主還元策についてお聞かせください。
回答者:株主還元策としましては、配当を実施しております。当初は内部留保の充実を優先し、配当には消極的でしたが、株主への利益還元も重要な経営課題であると認識し、配当を開始いたしました。具体的には、1株あたりの配当額を維持しながら、業績向上に伴い、配当性向を高めていきたいと考えています。安定的な配当を継続していくためには、収益基盤の安定化と成長が不可欠です。そのため、売上高や利益率、ROEなどの指標を重視し、経営状況を総合的に判断しながら、配当政策を決定していきます。
20250212 CP&X
ビジネスモデル・事業内容
(株)property technologiesは、中古マンションを区分所有で購入し、リノベーションを施して付加価値を高めた上で再販する、いわゆる再生事業を主力としている。この事業が全体の売上高と利益の約8割を占め、その他に山口県と秋田県で戸建て住宅の請負工事を行う2社を傘下に持つ。
創業の経緯と転機
創業者は元々、大手不動産会社に勤務していたが、独立してホームネットを設立した。当初は仲介事業から始めたが、リーマンショックを契機に、事業の安定化と効率化を重視し、中古マンションの買取再販に特化することを決断した。
直近の決算状況
2024年11月期のマンション販売戸数は約1,200戸、平均販売単価は約2,500万円で、増収増益を達成した。しかし、2022年11月期と比較すると売上高の伸びに対して利益率は低下しており、これは金利上昇による市況の変化と固定費の増加が影響している。
特徴・強み
中古マンション再生事業において、規模のメリットを活かした部材調達コストの抑制、リノベーションの効率化、販売期間の短縮を実現している。また、全国展開を行い、地域ごとのマーケットニーズに対応した事業展開を強みとしている。
成長戦略
昨年から、眺望に優れたプレミアムマンションの取り扱いを開始した。これにより、収益の拡大を目指すとともに、従来の価格帯のマンションについては、厳選した仕入れを行い、収益性を重視した戦略に転換している。
株主還元策
株主への利益還元として配当を実施しており、今後は配当を維持しながら、業績向上による増配を目指す。
取締役CFOコーポレート本部長 松岡耕平様
・資料

(株)property technologies
東証GRT 5527
決算:11月末日
Q:貴社のビジネスモデルの特徴と強みは何ですか?
A:当社グループは、中古マンションを区分所有で購入し、リノベーションを施して付加価値を高めた上で再販する、いわゆる再生事業を主力事業としています。この事業が、全体の売上高と利益の約8割を占めています。また、全国展開を行い、地域ごとのマーケットニーズに対応した事業展開を強みとしています。また、山口県と秋田県で戸建て住宅の請負工事を行う2社を傘下に持っています。これらの会社はM&Aで取得しました。事業会社としては、中古マンション再生事業のホームネット、戸建て請負事業のファーストホームなど、3社で売上を構成しています。
Q:戸建て事業の現状はいかがでしょうか?
A:戸建て住宅市場は、大手パワービルダーによる供給過剰の影響で厳しい状況です。当社の傘下の2社は、注文住宅の請負を主体としており、在庫販売は限定的に扱うことでリスクを低減させています。競争が激しいものの底堅い需要があることから、地域でのシェアを維持・向上させながら安定的に推移しています。
Q:賃貸管理事業の現状と今後の展望について教えてください。
A:賃貸管理事業は、現在約300室程度を管理しており、安定的な収益源となっています。今後は、管理戸数を増やすとともに、オーナー様向けのサービスを充実させることで、収益拡大を目指します。また、賃貸管理事業で得られたデータを活用し、中古マンション再生事業の仕入れや販売に活かしていきたいと考えています。
Q:中古マンション再生事業の強みは何ですか?
A:中古マンション再生事業は、一定の規模を確保することで収益化が可能となります。規模のメリットにより、部材の調達コストを抑え、リノベーションの効率化を図り、販売期間の短縮を実現できます。
Q:顧客層はどのような方々ですか?
A:主に30代後半から40代の初めて住宅を購入される方をターゲットとしています。人口動態の変化はあるものの、賃貸住宅からの住み替え需要は根強く、安定的な需要が見込めます。
Q:テック事業について教えてください。
A:当社は、AI査定などのテクノロジーを活用し、業務効率化を図っています。例えば、AI査定を活用することで、物件の査定を迅速に行い、仕入れに結びつけています。またデータを活用して販売までの期間を短縮しています。その他に、金融機関との取引においても、テクノロジーを活用したサービスを提供しています。
Q:テック事業の収益化についてはいかがでしょうか?
A:現時点では、テック事業による直接的な収益は限定的です。しかし、将来的には、AI査定の精度向上や用途拡張などにより、収益貢献を拡大できると考えています。
取材者:本日はお忙しい中、インタビューのお時間をいただきありがとうございます。まずは、貴社のビジネスモデルの特徴や強みについてご説明いただけますか?
回答者:ありがとうございます。弊社のグループ全体としましては、中古マンションを区分所有で購入し、リノベーションを施して新品同様の状態に再生した上で再販する、いわゆる「中古マンション再生事業」を主力事業としております。この事業が、全体の売上高と利益の約8割を占めております。
取材者:他に事業はございますか?
回答者:はい、他に山口県と秋田県で戸建て住宅の請負工事を行うビルダーを2社保有しております。これらの会社はM&Aによりグループ傘下に入った会社です。事業会社としては、中古マンション再生事業を担う株式会社ホームネットと、戸建て住宅事業を行う株式会社ファーストホーム、そしてM&Aで取得した2社のビルダーで構成されております。
取材者:M&Aで取得した2社のビルダーは、どのような会社ですか?
回答者:どちらも地域に密着した事業を展開しており、長年にわたり地域のお客様から信頼を得ている会社です。株式会社ファーストホームは山口県で、もう1社は秋田県で事業を行っています。どちらも地域のお客様のニーズを捉え、高品質な注文住宅を提供することに強みを持っています。
取材者:これらのビルダーと、貴社のマンション再生事業との間には、シナジー効果はありますか?
回答者:はい、M&Aによるシナジー効果は、大きく分けて二つあります。一つ目は、グループ全体での仕入れ力の強化です。マンション再生事業で培ってきた仕入れノウハウを戸建て住宅事業にも活用することで、より効率的な仕入れが可能になります。二つ目は、顧客基盤の共有です。マンション再生事業の顧客に戸建て住宅を紹介したり、逆に戸建て住宅の顧客にマンションを紹介したりすることで、顧客の選択肢を増やし、新たなニーズを掘り起こすことができます。
取材者:戸建て住宅事業の現状はいかがですか?
回答者:戸建て住宅事業につきましては、現在、市場環境が厳しい状況です。全国展開する大手パワービルダー各社が、住宅を建築して在庫として販売する、いわゆる「建売」住宅の在庫水準が比較的高く維持されているためです。弊社傘下の2社は、建売住宅ではなく、お客様からのオーダーに基づいて注文住宅を請け負い、引き渡すという方法をとっております。しかしながら、新築の戸建て住宅のニーズに対しては、建売住宅との競合が避けられず、市場が大きく拡大する状況にはなく、一定程度地域に密着した事業展開により、一定のシェアを維持している状況です。
取材者:戸建て住宅事業の市場規模は縮小傾向にありますか?
回答者:はい、新築戸建て住宅市場全体の規模は縮小傾向にあります。これは、少子高齢化や人口減少の影響に加え、住宅価格の高騰や建築費の上昇などが要因として挙げられます。
取材者:競合環境はいかがですか?
回答者:競合環境としては、大手パワービルダーの参入や、既存の地域ビルダーとの競争激化など、厳しい状況が続いています。
取材者:そのような厳しい状況下で、貴社はどのようにして戸建て住宅事業を展開していくのですか?
回答者:私たちは、地域密着型の事業展開を強化し、顧客との長期的な関係構築を重視することで、安定的な収益を確保していきたいと考えています。具体的には、地域のお客様のニーズを丁寧にヒアリングし、最適な住まいを提供することで、顧客満足度を高め、リピーターや紹介を増やしていく戦略です。また、アフターサービスの充実や、地域貢献活動への積極的な参加などを通じて、地域社会との信頼関係を築き、長期的な視点で事業を継続していく考えです。
取材者:中古マンション再生事業の強みについて、詳しくお聞かせください。
回答者:中古マンション再生事業の強みは、収益性の高さです。物件のリノベーションを通じて付加価値を高めることで、再販時に利益を確保することができます。また、事業規模が大きいことも強みです。規模のメリットを活かすことで、部材の調達コストを抑えたり、リノベーション工事を効率的に行うことが可能となります。さらに、仕入れから販売までの期間が短いことも強みです。中古マンションは、販売期間が長引くと価格を下げざるを得ない傾向があるため、早期に販売することが重要となります。弊社では、社内DXを推進することで、物件情報を迅速に把握し、効率的な販売活動を行っております。
取材者:貴社は全国展開されているそうですが、地域ごとの戦略はありますか?
回答者:はい、札幌から沖縄まで全国展開していることも弊社の強みです。同様の事業を行う企業の中でも、ここまで広範囲に展開している企業は多くありません。各地域で市場環境を分析し、競合状況などを踏まえながら、柔軟な事業展開を行っております。
取材者:顧客ターゲットについて教えてください。
回答者:主な顧客ターゲットは、30代後半から40代で初めて住宅を購入される方です。人口動態の変化はあるものの、賃貸住宅から持ち家への移行というニーズは根強く、一定の需要が見込める市場と考えております。
取材者:貴社の歴史についてお聞かせください。
回答者:弊社は、元々は大手不動産会社に勤務していた現社長が、独立して創業した株式会社ホームネットという会社からスタートしました。当初は仲介業などを行っていましたが、リーマンショックを契機に、事業の安定化と効率化を図るため、中古マンションの買取再販に特化することを決断しました。以来、10年以上にわたり、この事業に特化することでノウハウを蓄積し、独自のビジネスモデルを確立してまいりました。
取材者:なぜ中古マンションの買取再販に特化することになったのですか?
回答者:リーマンショックを経験し、事業の安定化を図るには、プロジェクトの回転率を上げる必要があると痛感しました。そこで、開発期間の長い分譲事業よりも、比較的短期間で完結する中古マンションの買取再販に特化することにしたのです。
取材者:近年、注力されている事業はありますか?
回答者:近年は、従来の2,000万円台半ばの価格帯のマンションに加え、より高価格帯のプレミアムマンションの取り扱いを開始しました。これは、眺望などの優れた特徴を持つマンションに特化することで、差別化を図り、新たな収益源とすることを目的としています。
取材者:プレミアムマンションの定義や特徴について、詳しく教えてください。
回答者:はい、プレミアムマンションとは、都心の一等地や駅近に立地し、高層階で眺望が良く、広々とした間取りで、高級感のある内装や設備を備えたマンションのことです。これらの物件は、富裕層や高所得者層をターゲットとしており、高い収益性が見込めます。
取材者:プレミアムマンションの仕入れはどのように行っているのですか?
回答者:プレミアムマンションの仕入れは、通常のマンションよりも難易度が高いです。そのため、不動産仲介会社との連携を強化したり、独自の仕入れルートを開拓するなど、様々な取り組みを行っています。
取材者:今後の事業展開についてお聞かせください。
回答者:プレミアムマンションの販売を強化することで、増収増益を目指します。また、従来のマンション事業においては、厳選した物件を仕入れることで収益性の向上を図ります。将来的には、市場環境の変化に対応しながら、新たな事業展開も検討してまいります。
取材者:テクノロジー活用についてお聞かせください。
回答者:弊社では、AI査定などを活用することで、業務効率化を図っております。例えば、物件の査定をAIで行うことで、迅速かつ効率的に査定額を算出することが可能となり、仕入れや販売のスピードアップに繋がっております。また、AI査定の精度向上により、更なる業務効率化と収益向上を目指します。
取材者:マンション再生事業における、仕入れから販売までの期間について詳しく教えてください。
回答者:はい、マンション再生事業においては、物件の仕入れから販売までの期間が短いことが重要です。具体的には、現在、仕入れから販売までの期間は約7~8ヶ月ですが、これを1ヶ月程度短縮したいと考えています。
取材者:業界全体で見ると、どれくらい早いのですか?
回答者:他社、特に上場企業の開示情報を見ても、定義が異なるため単純比較が難しいです。開始日や対象物件の範囲などが異なるため、正確な比較が困難な状況です。同じエリアで同じような事業を行っている企業と比較しても、仕入れから販売までの期間に大きな差はないと感じています。各社とも、すでに効率化を追求しており、これ以上の期間短縮は難しい状況です。
取材者:AI査定の導入は、期間短縮に貢献していますか?
回答者:はい、AI査定の導入により、物件の査定にかかる時間を大幅に短縮することができました。従来は、経験豊富な社員でも物件の査定にある程度の時間を要していましたが、AI査定を活用することで、経験の浅い社員でも迅速に査定を行うことができるようになりました。
取材者:AI査定の精度はいかがですか?
回答者:AI査定は、まだ精度が完璧ではありません。不動産の取引には、経験値やノウハウも必要であり、AI査定の結果を参考にしながら、最終的な判断を行うことが重要です。
取材者:他に、期間短縮に貢献している要素はありますか?
回答者:仲介会社と協力して物件の仕入れを行っていることも、期間短縮に貢献しています。仲介会社が保有する物件情報を、弊社の買取プラットフォームと連携させることで、迅速な仕入れを可能にしています。また、仕入れ契約から決済までの間に、リフォーム工事を先行して行うなど、工夫を凝らしています。
取材者:貴社の創業から現在に至るまでの経緯について、詳しくお聞かせください。
回答者:創業当初は、資金調達の難しさから、仲介業を中心に事業を行っていました。その後、信用力を高め、資金調達が可能になったことで、分譲住宅の販売にも着手しました。しかし、リーマンショックを契機に、事業の安定化と効率化を図るため、中古マンションの買取再販に特化することを決断しました。2000年から中古マンションの買取再販事業に特化し、現在に至ります。
取材者:2024年11月期の決算について、増収増益と好調に見えますが、2022年11月期と比べると、売上高の伸びが鈍化しているように見えます。これは、どのような要因によるのですか?
回答者:2022年11月期は、事業拡大を図るため、積極的に仕入れを行い、出店も増やしました。しかし、その直後に金利上昇の影響で市況が悪化し、販売が伸び悩んだ結果、売上高は前年並みとなりました。費用は先行して増加していたため、利益率が低下しました。また、前期に仕入れた物件の在庫が積み上がり、販売に時間がかかったことも、売上高の伸び悩みの一因です。前期は、プレミアムマンションの導入などにより、増収増益を達成しましたが、まだ改善の余地はあります。特に、粗利率の改善が課題です。
取材者:今期の業績見通しはいかがですか?
回答者:今期は、プレミアムマンションの販売を強化することで、更なる増収増益を目指します。また、従来のマンション事業においては、厳選した物件を仕入れることで収益性の向上を図ります。
取材者:物件を厳選する基準について、詳しく教えてください。
回答者:はい、物件の厳選には、過去の販売実績データを分析し活用しています。各支店ごとに、どのエリアでどのような物件が売れやすいか、あるいは売れにくいかを把握しています。さらに、エリア特性なども考慮し、総合的に判断して仕入れを行っています。
取材者:エリア戦略については、いかがですか?
回答者:エリア戦略としては、基本的に売れるエリアを重視しています。しかし、そうでないエリアでも良い物件があれば仕入れることもあります。ただし、リスクが高いと判断した場合は、仕入れを見送ることもあります。
取材者:仕入れから販売までのプロセスについて、詳しく教えてください。
回答者:仕入れから販売までは、以下のプロセスを経ています。まず、仲介会社から物件情報を取得し、AI査定などを活用して査定額を算出します。査定額が妥当であれば、仕入れ契約を締結し、物件の所有権を取得します。その後、約1ヶ月半~2ヶ月かけてリフォームを行い、販売を開始します。販売契約が成立したら、お客様の住宅ローン手続きなどを経て、最終的に決済を行います。
取材者:社内DXについて、どのような取り組みをされていますか?
回答者:社内DXとしては、AI査定の導入により、物件査定の効率化を図っています。従来は、物件情報や周辺環境などを参考に、ベテラン社員が時間をかけて査定を行っていましたが、AI査定の導入により、経験の浅い社員でも迅速に査定を行うことができるようになりました。また、過去の販売実績データなどをデータベース化することで、物件の査定精度向上に役立てています。これにより、人材育成の効率化にも繋がっています。
取材者:株主還元策についてお聞かせください。
回答者:株主還元策としましては、配当を実施しております。当初は内部留保の充実を優先し、配当には消極的でしたが、株主への利益還元も重要な経営課題であると認識し、配当を開始いたしました。具体的には、1株あたりの配当額を維持しながら、業績向上に伴い、配当性向を高めていきたいと考えています。安定的な配当を継続していくためには、収益基盤の安定化と成長が不可欠です。そのため、売上高や利益率、ROEなどの指標を重視し、経営状況を総合的に判断しながら、配当政策を決定していきます。
20250212 CP&X
ビジネスモデル・事業内容
(株)property technologiesは、中古マンションを区分所有で購入し、リノベーションを施して付加価値を高めた上で再販する、いわゆる再生事業を主力としている。この事業が全体の売上高と利益の約8割を占め、その他に山口県と秋田県で戸建て住宅の請負工事を行う2社を傘下に持つ。
創業の経緯と転機
創業者は元々、大手不動産会社に勤務していたが、独立してホームネットを設立した。当初は仲介事業から始めたが、リーマンショックを契機に、事業の安定化と効率化を重視し、中古マンションの買取再販に特化することを決断した。
直近の決算状況
2024年11月期のマンション販売戸数は約1,200戸、平均販売単価は約2,500万円で、増収増益を達成した。しかし、2022年11月期と比較すると売上高の伸びに対して利益率は低下しており、これは金利上昇による市況の変化と固定費の増加が影響している。
特徴・強み
中古マンション再生事業において、規模のメリットを活かした部材調達コストの抑制、リノベーションの効率化、販売期間の短縮を実現している。また、全国展開を行い、地域ごとのマーケットニーズに対応した事業展開を強みとしている。
成長戦略
昨年から、眺望に優れたプレミアムマンションの取り扱いを開始した。これにより、収益の拡大を目指すとともに、従来の価格帯のマンションについては、厳選した仕入れを行い、収益性を重視した戦略に転換している。
株主還元策
株主への利益還元として配当を実施しており、今後は配当を維持しながら、業績向上による増配を目指す。
取締役CFOコーポレート本部長 松岡耕平様