
(株)eWeLL
東証GRT 5038
決算:12月末日
20250828
CP&X
決算概要
2025年12月期第2四半期は、売上高が1,603百万円(前年同期比33.0%増)、営業利益が788百万円(同49.2%増)、経常利益が791百万円(同49.6%増)、中間純利益が548百万円(同49.8%増)と、大幅な増収増益を達成。売上高は業績予想を2.5%上回ったが、営業利益は開発外注費や採用タイミング、広告宣伝費用の後ろ倒しが主な要因となり、予想を大幅に上振れた。
セグメント別または事業別の増減要因
クラウドサービスが前年同期比29.0%増、BPaaSが75.2%増と好調に推移したことが、全体の売上高を押し上げた主要因。BPaaS事業は、もともと市場ニーズが強かったことに加え、昨年2024年に組織体制の見直しとカスタマーサクセスチームの発足、継続した人員採用の進捗により、事業が加速し続けており、売上が予想を上回って推移した。
主要KPIの進捗と変化
SaaSのKPIである新規獲得件数は、第2四半期に165件を達成し、過去4年間の同時期と比較して着実な成長。特に、介護・医療の報酬改定による特需がなかったにもかかわらず、前年同期の162件を上回ったことは、実力ベースでの成長を示す。また、AIサービスの提供開始により顧客単価が前年同期比10%増となり、解約率(チャーンレート)も0.24%と、前期第2四半期の0.27%から改善した。
季節性・一過性要因の有無と影響
例年、新規事業所の開業が集中する第1四半期や第4四半期に新規獲得件数が増加する季節性がある。また、顧客の契約更新時期が第2四半期に集中するため、解約率が一時的に高まる傾向にある。今年は介護・医療の報酬改定のような特需はなかったが、新規獲得件数は堅調に推移した。
通期見通しと進捗率・達成可能性
好調な上期業績にもかかわらず、通期業績予想は変更していない。これは、上期に後ろ倒しとなった開発外注費や採用費、広告宣伝費などが下期に計上されること、および大阪オフィスの移転費用を考慮したためであり、通期予想の達成は可能であるとの見解。
トピックス
全国の訪問看護ステーション数が年平均8.8%増と引き続き増加傾向にあることを確認。これは創業以来の市場成長トレンドの継続を示す。さらに、第二のAIサービスとして「AI訪問予定ルート」を7月にリリースし、訪問スケジュールの自動化による業務効率化を支援する新プロダクトの提供を開始した。このサービスは2025年12月までを無償期間とし、2026年1月から課金を開始する予定。

企業名
上場市場 証券コード
決算日
取材アーカイブ
CP&X
ビジネスモデルや事業内容
同社はクラウドサービスを主体とし、訪問看護専用電子カルテ「iBow」を基幹製品として提供している点が特徴である。「iBow」は、保険請求クラウドサービス「iBowレセプト」や訪問看護ステーション向け勤怠システムを含む、訪問看護業務全般を支援するSaaSシステムである。「iBow」の料金体系は、1ステーション当たり月額費用と、1訪問当たりの従量課金制を組み合わせたものである。さらに、レセプト請求業務を代行するBPaaS「iBow事務管理代行サービス」も展開しており、クラウドサービスとBPOを融合したサービス提供を行っている。
特徴や強み
同社の最大の特徴は、電子カルテを起点としたシステム構築にある。競合他社の多くが保険請求計算システムを中心に展開する中で、同社は訪問看護の現場業務に不可欠な電子カルテからシステムを開発している点が優位性となっている。これにより、看護記録と請求業務がシームレスに連携し、作業効率化と入力ミスの削減に貢献している。
具体的には、訪問看護師がタブレットで入力した情報が請求データに自動反映されるため、転記作業が不要となる。また、訪問看護ステーションの運営に必要な、スケジュール管理、請求代行、勤怠管理、研修などをワンストップで提供できる点も強みである。AIを活用した訪問スケジュール作成や、生成AIによる訪問看護計画書・報告書作成支援など、先進的な機能も提供している。
直近の決算状況
同社は2022年に上場し、売上高は16億円から20億円、25億円と順調に増加している。営業利益も7億円から9億円、11億円と伸長しており、上場以来、営業利益率は43%~44%と高い水準を維持している。売上高の内訳は約9割がクラウドサービス、1割がBPaaSであり、BPaaSの規模はまだ小さいものの、高い成長率を示している。
業績の増減要因
業績の主な増加要因は、クラウドサービスとBPaaSの売上高増加である。クラウドサービスは、契約数の増加と既存顧客の利用拡大に伴う客単価上昇が貢献している。BPaaSも高成長を維持しており、業績を牽引する要因となっている。また、チャーンレート(解約率)が非常に低いことも、安定的な業績成長を支えている。
成長戦略
同社の成長戦略は、クラウドサービスとBPaaSの提供を通じ、訪問看護ステーションの業務効率化と生産性向上に貢献することである。クラウドサービスでは、iBowの機能拡充やAI活用による業務支援を強化し、BPaaSでは保険請求代行サービスを通じて事務作業負担の軽減を目指す。これらの取り組みにより、訪問看護業界全体の生産性向上と事業拡大を目指している。
競合状況
営業上の競合他社としては、エス・エム・エス、カナミック・ネットワーク、ワイズマンなどが挙げられる。これらの競合は介護保険請求計算システムを主軸とし、訪問看護はその一部として提供されていることが多い。一方、同社は訪問看護専用電子カルテを起点とするシステム提供により差別化を図っており、訪問看護に特化することで質の高いサービス提供を目指している。現時点では、大手企業の本格的な参入は見られない状況である。
株主還元策
同社は株主への利益還元を経営の重要課題と位置づけ、配当を実施している。配当性向は20%程度を目安とし、業績拡大に合わせて増配を目指す方針である。ただし、株価水準を考慮すると配当利回りはまだ低い水準にあり、今後の成長と株価上昇、増配による株主還元を目指すとしている。
今期の取り組みやトピックス
同社の今期(2025年12月期)の業績見通しは、売上高33億円、営業利益15億円弱を見込んでいる。売上高、営業利益ともに堅調な伸びを見込んでおり、第1四半期時点では計画通りに進捗している。新規契約件数は四半期あたり160~170件、純増件数は100~130件程度で推移しており、業績に貢献している。
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:弊社の強みは、訪問看護専用電子カルテシステムを起点としている点にあります。他社の多くが介護用の保険請求計算システムを中心に展開する中で、弊社は訪問看護の現場で不可欠な電子カルテからシステム構築を行いました。これにより、日々の看護記録と請求業務がシームレスに連携し、作業効率の大幅な向上を実現しています。
具体的には、訪問看護師が患者様の情報をタブレットで入力すると、それが自動的に請求データに反映されるため、転記作業の手間やミスを削減できます。また、訪問看護ステーションの運営に必要な、スケジュール管理、請求代行、勤怠管理、研修といった業務をワンストップで提供できる点も、弊社の大きな優位性です。
Q:今期の成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?
A:弊社の成長戦略の柱は、クラウドサービスとBPaaSの提供を通じた、訪問看護ステーションの業務効率化と生産性向上です。
クラウドサービスにおいては、訪問看護専用電子カルテ「iBow」の機能拡充や、AIを活用した訪問スケジュール作成システム、生成AIによる訪問看護計画書・報告書作成システムなど、革新的なソリューションの開発に注力しております。
BPaaSにおいては、レセプト請求代行サービス「iBow事務管理代行サービス」の提供を通じて、訪問看護ステーションの事務作業負担を軽減し、看護師が本来の業務に専念できる環境づくりを支援しております。
これらの取り組みにより、訪問看護ステーションの生産性向上に貢献することで、さらなる事業拡大を目指してまいります。
Q:業績の増減要因をご説明ください。
A:弊社の業績は、クラウドサービスとBPaaSの売上高増加によって牽引されています。
クラウドサービスは、契約数の増加と、既存顧客の利用拡大に伴う顧客単価の上昇により、堅調に成長しております。BPaaSは、売上高全体に占める割合はまだ小さいものの、高い成長率を示しており、今後の成長が期待されます。
また、解約率が非常に低いことも、安定的な業績成長を支える重要な要因です。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:弊社は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しており、上場以来、配当を実施しております。
配当性向については、20%程度を目安とし、業績の拡大に合わせて、配当額を増やしていく方針です。ただし、現在の株価水準を考慮すると、配当利回りはまだ低い水準にあるため、株主の皆様には、今後の成長による株価上昇、そして増配にご期待いただきたいと考えております。
取材者:貴社のビジネスモデル、事業セグメントについてご説明をお願いいたします。
回答者:弊社は基本的にクラウドサービスを提供しており、訪問看護専用の電子カルテ「iBow」が主要な製品となっております。「iBow」は、訪問看護のトータル的な業務支援サービスであり、保険請求のクラウドサービスである「iBowレセプト」や、訪問看護ステーション向けの勤怠システムなども含みます。これらの全てをSaaSのシステムで提供している点が、メインのクラウドサービスの特徴です。
「iBow」の料金体系についてご説明しますと、1ステーション当たり月額1万8,000円に加え、看護師が患者さん宅を1回訪問してケアを行うごとに、1訪問当たり100円をいただくというビジネスモデルです。
さらに、「BPaaS」というサービス、すなわち「iBow事務管理代行サービス」も展開しております。これは、正しいレセプトを行うために必要な医療・介護保険の確認や、制度に沿った適切な記録の支援、主治医からの指示書情報等の登録をし、保険請求業務を代行するサービスです。
クラウドサービスとBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を自社のクラウドサービスを利用して行うということを、「BPaaS」と称しております。
BPaaSの料金は、保険請求金額の5%相当(最低利用料金10万円)という設定です。こちらも毎月積み上がっていくビジネスとなっております。
取材者:貴社の特徴や強み、優位性についてお聞かせいただけますでしょうか?
回答者:弊社の強み、他社システムとの違い、特徴についてご説明いたします。
営業上の競合は、例えば、エス・エム・エス様が展開している「カイポケ」やカナミック・ネットワーク様、ワイズマン様などが競合として挙げられます。これらの競合他社様は基本的に介護の保険請求計算システムを展開されており、介護分野を主軸とされています。介護には多種多様なサービスがあり、訪問看護はその一部として捉えられているケースが多いです。
つまり、他社様の多くは介護保険請求計算システムをやりながら、訪問看護の保険請求や一部記録を中心とした業務支援も可能であるという形で展開されています。
一方、弊社は電子カルテという日々の業務システムから展開しているという点が、まず大きな違いとして挙げられます。
医療業界はシステム化が遅れており、手書きや紙ベースでの管理が依然として多い状況です。そのため、現場で実際に使えるシステムを提供することが非常に重要であると考えております。
弊社は、手書きで行われていた電子カルテ領域のDX化を手がけ、そこから保険請求計算システムへと展開しました。
焼き鳥屋を例にとると、他社様は伝票の正の字をタブレットで入力できるようにし、最後に正の字を数えながらレジを打つという、レジ打ちシステムの提供に近いイメージです。
一方、弊社は電子カルテからシステムを構築しているため、モバイルオーダーサービスのように、机ごとにタブレットがあり、注文内容がタブレットに加算され、そこからレジに直接連携して自動で計算されるというイメージです。
弊社は電子カルテからシステムを構築しているからこそ、自動連携が可能です。しかし、他社様のシステムはレジシステムがあって、派生させてタブレットで情報を入力しても、結局はそのタブレットの情報を見ながらレジ打ちをしなければならないという状況があります。
そのため、他社様のシステムは導入されているものの、実際には使われなかったり、一部しか使われていないというケースもあるようです。
弊社は、業務効率化の電子カルテと、保険請求のレセプトシステム「iBowレセプト」を連携させ、記録を入力すると請求金額が自動で反映されるシステムを構築しています。記録を1つ追加するだけで請求金額が自動的に変わるため、非常に便利であるという声をいただいております。
これが、他社システムとの大きな違いであり、弊社のシステムの強みです。
取材者:確かに、最初は慣れるのに時間がかかりそうですね。
回答者:そうですね。手書きでの作業からシステムへの移行は、業務フロー自体を変える必要があるため、丁寧な説明やサポートが不可欠です。
取材者:若い方はすぐに慣れるでしょうが、ベテランの方々は大変かもしれませんね。
回答者:弊社代表の中野は、誰にでも分かりやすいシステムを目指しており、文字の大きさなど、細部にまでこだわって開発を進めております。
取材者:代表の方が重要な役割を果たされているのですね。
回答者:はい、その通りです。
加えて、弊社はステーションの立ち上げから、患者さんの獲得、訪問スケジュール作成まで、訪問看護に関する業務をワンストップで提供しているという強みがあります。
訪問看護ステーションの管理者様は、例えば5人の訪問看護師を抱え、80人の患者さんのスケジュールを毎月立てる必要があります。患者さんの状況や住環境、必要なケアなどを考慮し、最適なスケジュールを組むのは非常に複雑な作業です。
弊社は、訪問看護スケジュールやルートをAIで作成するシステムや、患者さんごとの訪問看護計画書や報告書を生成AIで作成するシステムなどについても提供しています。
さらに、請求代行サービス(BPaaS)、勤怠管理、備品購買、法定研修など、訪問看護の主要な業務をほぼ全てカバーしており、ワンストップで提供できる点が弊社の大きな特徴です。
取材者:次に、業績についてお伺いします。貴社は12月が決算月とのことですが、直近の業績、特に増加要因について教えていただけますか?
回答者:はい。弊社は2022年に上場しており、売上高は16億円から20億円、25億円と順調に伸びております。営業利益も7億円近くから9億円、11億円と増加しており、上場以来、営業利益率は43%~44%を維持しています。
取材者:上場後、業績が伸び悩む企業も多い中で、貴社は売上、利益、利益率ともに非常に好調ですね。CAGR(年平均成長率)も素晴らしい数字です。
回答者:まだ売上規模が25億円ですので、今後さらに成長させていきたいと考えております。
取材者:業績好調の要因は何ですか?
回答者:売上高25億円の内訳ですが、約9割がクラウドサービス、1割がBPaaSです。BPaaSの規模は小さいものの、伸び率は35%と高い成長を示しています。クラウドサービスも20%~25%の成長を継続しており、これが売上増加要因です。
取材者:KPIの過去3年間の推移について教えてください。
回答者:売上高の伸びは、主に契約数の増加によるものです。顧客単価も、BPaaSの導入や、iBow利用顧客の訪問件数増加に伴い、わずかに上昇していますが、実績としては平均して5%前後の伸びにとどまっています。
レベニューチャーンレート(解約率)が非常に低いことも、業績を支える重要な要素です。
取材者:レベニューチャーンレートが0.1%というのは、非常に低いですね。
回答者:はい、ほとんどないと言える水準です。
取材者:市場シェアが17.5%とのことですが、これはどのシェアと考えればよろしいですか?
回答者:こちらは、全国の訪問看護ステーションの総数を母数として算出しています。全国訪問看護事業協会が公表しているデータによると、2024年4月1日時点で全国に1万7,329ステーションございます。このうち、弊社と契約いただいているステーションの割合が17%ということです。
取材者:そうすると、まだ80%以上の伸びしろがあると考えてもよろしいのでしょうか?
回答者:はい、そのように考えております。
取材者:素晴らしいですね。サービスが広く受け入れられている理由は何ですか?他社様のサービスもある中で、貴社のサービスが選ばれる理由についてお聞かせください。
回答者:選ばれる理由としましては、先ほどご説明したように、電子カルテシステムから派生したプロダクトであるという点が大きいと考えております。
取材者:なるほど。具体的な機能面での利便性について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
回答者:はい、もちろんです。例えば、24時間体制での看護が求められる状況において、急なオンコールがあった際、紙カルテの運用ではステーションに寄ってカルテを確認する必要がありましたが、弊社のシステムであればタブレットで患者さんの情報をすぐに確認できます。これにより、迅速かつ適切な対応や情報連携が可能になります。
また、DX化が推進される中で、ステーション内の情報を共有し、いつでも誰でも確認できる状態にすることが求められています。弊社のシステムは、そのようなニーズにも応えることができます。
取材者:導入された訪問看護ステーションにとって、具体的にどのような点が効率化されたのでしょうか?例えば、人員削減や時間短縮など、具体的な指標があれば教えてください。
回答者:訪問数の増加という点では、明確なデータがございます。紙カルテの運用では、朝も申し送りで訪問指示を受け、訪問後ステーションに戻って記録を作成し、さらにパソコンに入力する必要がありましたが、弊社のシステムではこれらの作業を効率化できるため、1日に訪問できる件数が増えています。
例えば、1日に3件の訪問が、6件に増えるといったケースが見られます。
取材者:3件から6件に増えるというのは、かなり負担が増えるのではないでしょうか?
回答者:おっしゃる通りです。看護師さんによっては、3件の訪問で十分だと考える方もいらっしゃるかもしれません。そのため、弊社では経営セミナーなどを通して、訪問件数に応じた給与体制の導入など、インセンティブ設計についてもお伝えしています。
取材者:現場の看護師さんから、システムの導入に対して抵抗が出る可能性はないのでしょうか?
回答者:幸いなことに、現場の看護師さんからの評判は概ね良好です。弊社のシステムを導入したステーションから、他のステーションへ異動された看護師さんが、異動先で弊社のシステムを勧めてくださるケースもあります。
事務手続きの効率化は、看護師さんにとっても大きなメリットとなっているようです。本来の看護業務に集中できるという点で、高く評価していただいております。
取材者:看護師の数は、全体として増えているのですか、それとも減っているのですか?
回答者:看護師の数自体は増えています。ただし、重要なのは訪問看護師の数です。
少し古いデータになりますが、令和2年の時点で、看護師資格保有者は220万人、就業している看護師は168万人、その中で訪問看護に従事しているのは10万人という状況でした。2025年には13万人の訪問看護師が必要と言われており、まだまだ不足している状況です。
取材者:国の方針として、病院ではなく在宅での療養を推進する動きがあると聞いておりますが、これはどのような背景があるのですか?
回答者:はい、地域包括ケアシステムの推進という形で、国が在宅医療を推進しています。背景としては、在宅医療の方が医療費を抑制できるという点が挙げられます。
例えば、入院した場合の医療費と在宅医療を利用した場合の医療費を比較すると、在宅医療の方が約3.5割削減できるというデータもございます。
取材者:それは大きな削減になりますね。国家予算の抑制という観点からも、在宅医療の推進は重要であるということですか?
回答者:そうですね。医療費の増加を抑制するという意味合いもございます。今後の医療保険制度を考えると、在宅医療へのシフトは避けられないと考えています。
取材者:国家予算の問題と、高齢化に伴う病院の負担増という、二つの側面から在宅医療が推進されているということですね。
回答者:おっしゃる通りです。病院側も、平均在院日数の短縮化など、効率的な運営が求められています。
取材者:在宅療養を希望しても、訪問看護ステーションが見つからないというケースもあるのですか?
回答者:はい、適切な訪問看護ステーションが見つからないと、退院が遅れてしまうという問題も発生しています。
取材者:病院が退院を促しても、在宅で看護を受けられる体制が整っていない場合もあるということですね。
回答者:そうです。ケアマネジャーなどが訪問看護ステーションを探すのですが、すぐに見つからないこともあるようです。
取材者:様々な背景があるのですね。その中で、貴社のシステムは訪問看護の効率化に貢献し、より多くの患者さんを支援できるということですね。
回答者:はい、そのように考えております。
取材者:貴社は非常に将来性のある企業だと感じました。
回答者:ありがとうございます。
取材者:貴社が伸びないはずはない、ということがよく分かりました。
次に、貴社の課題についてお伺いします。貴社が抱える問題点や、成長を妨げる要因となり得るものはございますか?
回答者:一般的な課題としては、情報漏洩への対策などが挙げられます。
IR関連でよくいただくご質問としては、中期経営計画(中計)で売上高50億円、営業利益22億円という目標を掲げていることについて、達成できないリスクはないのか?というものがございます。
中計におけるリスクとしては、AI関連サービスという新規事業の立ち上げと、その単価や実績の見込みが、想定通りに進まない可能性があるという点が挙げられます。
しかし、AI関連サービスについては、現時点ですでに想定を上回る実績が出始めており、中計期間である今後3~4年においては、大きなリスクは少ないと考えております。
強いて言えば、一般的なリスクとして、報酬改定の影響が挙げられます。
ただし、2024年には大きな報酬改定がありましたが、訪問看護に関してはプラス改定となる部分が多く、国も訪問看護を推進していくという意向が感じられました。
取材者:以前、社長にお話を伺った際、「訪問看護の市場はまだ小さいため、大手企業は参入してこない」とおっしゃっていました。売上高、利益がどのくらいになれば、大手企業が参入してくる可能性があるとお考えですか?
回答者:現在、弊社の顧客単価は月額8万円程度です。中計では、3年後に月額10万円程度に引き上げることを目標としています。
年間売上高に換算すると、現在は1顧客あたり年間100万円、3年後には120万円を目指していることになります。
この120万円という単価に、訪問看護ステーションの総数である約1万7,000ステーションを掛けると、売上高は約170億円になります。
現時点では、この規模では大手企業は参入しにくいと考えております。
訪問看護ステーション数が今後2万、3万と増加し、弊社の顧客単価も年間120万円程度に上昇し、市場規模が現在の2倍から2.5倍、500億円程度になったときには、大手企業が参入してくる可能性もあると考えています。
取材者:売上高が120億円になると、営業利益は貴社の利益率から考えると4~50億円程度になるということですね。
回答者:中計では、まだ営業利益22億円という目標ですので、そこまで至るのはまだ先になります。
取材者:まだしばらくは、大手企業の参入を心配することなく、事業を拡大できる環境が続くということですね。
回答者:はい、そのように考えております。
取材者:競合環境についてお伺いします。私も他社様の決算発表などを確認していますが、訪問看護以外の分野にも事業を拡大されているようですね。
回答者:はい、エス・エム・エス様は、訪問看護の深掘りではなく、障害者支援など、他の領域にも注力されています。訪問看護に特化するというよりは、介護など、周辺領域を広げて売上を拡大していくという戦略を取られているようです。
現時点では、大手企業が訪問看護分野に積極的に参入してくる動きは見られません。
取材者:貴社が訪問看護に特化していることが、強みになっているということもできますね。
回答者:はい、訪問看護に特化することで、より質の高いサービスを提供できると考えております。
取材者:株主還元、配当についてお聞かせください。
回答者:上場以来、配当は実施しておりますが、株主優待は実施しておりません。配当性向は20%程度を目安として、1株当たり配当を検討しております。
現在の株価はPER(株価収益率)が30~40倍と高いため、配当性向を30%に引き上げても、配当利回りは1%未満にとどまります。そのため、株主の皆様にとって、それほど魅力的な還元策にはならないと考えております。弊社としては、業績の拡大によるキャピタルゲインをメインとし、配当も徐々に増やしていくという方針を示していきたいと考えております。
取材者:まだ成長段階なので、配当利回りを重視するよりも、今後の成長と株価上昇、そして増配を期待するということですね。
回答者:はい、そのようにご理解いただければと思います。
取材者:配当性向は20%程度ということでしたが、直近では何%くらいでしたか?
回答者:直近では21~22%程度だったかと思います。
取材者:現時点では、配当性向を無理に引き上げる必要はないと思います。株価も高く評価されていますし、今後の成長に期待しています。
回答者:ありがとうございます。
取材者:今期の業績見通しについてお聞かせください。
回答者:売上高は33億円、営業利益は15億円弱を見込んでおります。
取材者:利益の伸び率は何%くらいですか?
回答者:利益の伸び率は31.6%を見込んでおります。
取材者:堅実な数字ですね。上振れの可能性はいかがですか?
回答者:まだ第1四半期が終わった段階ですので、現時点では見通しをお示しするのは難しいですが、今のところは計画通りに進捗しております。
取材者:開発費の増加などの要因で、下振れする可能性はあるかと思いますが、チャーンレートも低く、導入数も順調に伸びているということですので、業績は安定的に推移すると考えてよろしいですか?
回答者:はい、そのように考えております。
取材者:導入数について、何か開示されている情報はございますか?
回答者:月次での開示はしておりませんが、四半期ごとに新規契約件数と解約件数をグラフで開示しております。
取材者:四半期ごとに、新規契約は何件くらい増えているのですか?
回答者:新規契約は四半期あたり160~170件程度、解約は数十件程度です。四半期ごとの純増件数としては、100~130件程度となっています。
取材者:年間で400件以上増える計算になりますね。
回答者:はい、そうですね。
取材者:今期の業績見通しは、新規契約数を年間600件以上として計算されているということですか?
回答者:はい、それ以上で計算しております。
取材者:順調にいけば、さらに上振れする可能性もあるということですね。
回答者:そうですね。ただ、中計では、契約件数が大幅に増加するような計画にはしておりません。
取材者:まだまだ成長余地があるということですね。先ほどお話に出たように、まだ市場の17%しかカバーできていないということですから。
回答者:はい、おっしゃる通りです。あとは、IR関連でよく聞かれることとして、BS(貸借対照表)が膨らんでおり、現金も約20億円と多く、自己資本比率も非常に高いことについて聞かれることがあります。しかし、現状、M&Aも策の1つとして検討をしているものの、無理に実施する予定はありません。
取材者:そうですね。M&Aは、経営資源を分散させることにもなりかねませんので、オーガニックな成長を続け、現金を蓄えておくというのも一つの戦略だと思います。
回答者:ありがとうございます。
取材者:以前、社長にお話を伺う機会がありましたが、非常に素晴らしい経営者だと感じました。
回答者:ありがとうございます。代表の中野は、非常にバイタリティがあり、夢や使命感を持った人物です。ご自身の病気や怪我の経験から、社会に貢献したいという強い思いを持っておられます。
上場して会社が大きくなっても、その精神を大切にしていただきたいと考えております。
投資家の皆様にも、そのような会社の姿勢をご理解いただければ幸いです。
取材者:本日は、お忙しい中、ありがとうございました。
取材者:こちらこそ、ありがとうございました。
IR担当

(株)eWeLL
東証GRT 5038
決算:12月末日
CP&X
決算概要
2025年12月期第2四半期は、売上高が1,603百万円(前年同期比33.0%増)、営業利益が788百万円(同49.2%増)、経常利益が791百万円(同49.6%増)、中間純利益が548百万円(同49.8%増)と、大幅な増収増益を達成。売上高は業績予想を2.5%上回ったが、営業利益は開発外注費や採用タイミング、広告宣伝費用の後ろ倒しが主な要因となり、予想を大幅に上振れた。
セグメント別または事業別の増減要因
クラウドサービスが前年同期比29.0%増、BPaaSが75.2%増と好調に推移したことが、全体の売上高を押し上げた主要因。BPaaS事業は、もともと市場ニーズが強かったことに加え、昨年2024年に組織体制の見直しとカスタマーサクセスチームの発足、継続した人員採用の進捗により、事業が加速し続けており、売上が予想を上回って推移した。
主要KPIの進捗と変化
SaaSのKPIである新規獲得件数は、第2四半期に165件を達成し、過去4年間の同時期と比較して着実な成長。特に、介護・医療の報酬改定による特需がなかったにもかかわらず、前年同期の162件を上回ったことは、実力ベースでの成長を示す。また、AIサービスの提供開始により顧客単価が前年同期比10%増となり、解約率(チャーンレート)も0.24%と、前期第2四半期の0.27%から改善した。
季節性・一過性要因の有無と影響
例年、新規事業所の開業が集中する第1四半期や第4四半期に新規獲得件数が増加する季節性がある。また、顧客の契約更新時期が第2四半期に集中するため、解約率が一時的に高まる傾向にある。今年は介護・医療の報酬改定のような特需はなかったが、新規獲得件数は堅調に推移した。
通期見通しと進捗率・達成可能性
好調な上期業績にもかかわらず、通期業績予想は変更していない。これは、上期に後ろ倒しとなった開発外注費や採用費、広告宣伝費などが下期に計上されること、および大阪オフィスの移転費用を考慮したためであり、通期予想の達成は可能であるとの見解。
トピックス
全国の訪問看護ステーション数が年平均8.8%増と引き続き増加傾向にあることを確認。これは創業以来の市場成長トレンドの継続を示す。さらに、第二のAIサービスとして「AI訪問予定ルート」を7月にリリースし、訪問スケジュールの自動化による業務効率化を支援する新プロダクトの提供を開始した。このサービスは2025年12月までを無償期間とし、2026年1月から課金を開始する予定。
取材アーカイブ
CP&X
ビジネスモデルや事業内容
同社はクラウドサービスを主体とし、訪問看護専用電子カルテ「iBow」を基幹製品として提供している点が特徴である。「iBow」は、保険請求クラウドサービス「iBowレセプト」や訪問看護ステーション向け勤怠システムを含む、訪問看護業務全般を支援するSaaSシステムである。「iBow」の料金体系は、1ステーション当たり月額費用と、1訪問当たりの従量課金制を組み合わせたものである。さらに、レセプト請求業務を代行するBPaaS「iBow事務管理代行サービス」も展開しており、クラウドサービスとBPOを融合したサービス提供を行っている。
特徴や強み
同社の最大の特徴は、電子カルテを起点としたシステム構築にある。競合他社の多くが保険請求計算システムを中心に展開する中で、同社は訪問看護の現場業務に不可欠な電子カルテからシステムを開発している点が優位性となっている。これにより、看護記録と請求業務がシームレスに連携し、作業効率化と入力ミスの削減に貢献している。
具体的には、訪問看護師がタブレットで入力した情報が請求データに自動反映されるため、転記作業が不要となる。また、訪問看護ステーションの運営に必要な、スケジュール管理、請求代行、勤怠管理、研修などをワンストップで提供できる点も強みである。AIを活用した訪問スケジュール作成や、生成AIによる訪問看護計画書・報告書作成支援など、先進的な機能も提供している。
直近の決算状況
同社は2022年に上場し、売上高は16億円から20億円、25億円と順調に増加している。営業利益も7億円から9億円、11億円と伸長しており、上場以来、営業利益率は43%~44%と高い水準を維持している。売上高の内訳は約9割がクラウドサービス、1割がBPaaSであり、BPaaSの規模はまだ小さいものの、高い成長率を示している。
業績の増減要因
業績の主な増加要因は、クラウドサービスとBPaaSの売上高増加である。クラウドサービスは、契約数の増加と既存顧客の利用拡大に伴う客単価上昇が貢献している。BPaaSも高成長を維持しており、業績を牽引する要因となっている。また、チャーンレート(解約率)が非常に低いことも、安定的な業績成長を支えている。
成長戦略
同社の成長戦略は、クラウドサービスとBPaaSの提供を通じ、訪問看護ステーションの業務効率化と生産性向上に貢献することである。クラウドサービスでは、iBowの機能拡充やAI活用による業務支援を強化し、BPaaSでは保険請求代行サービスを通じて事務作業負担の軽減を目指す。これらの取り組みにより、訪問看護業界全体の生産性向上と事業拡大を目指している。
競合状況
営業上の競合他社としては、エス・エム・エス、カナミック・ネットワーク、ワイズマンなどが挙げられる。これらの競合は介護保険請求計算システムを主軸とし、訪問看護はその一部として提供されていることが多い。一方、同社は訪問看護専用電子カルテを起点とするシステム提供により差別化を図っており、訪問看護に特化することで質の高いサービス提供を目指している。現時点では、大手企業の本格的な参入は見られない状況である。
株主還元策
同社は株主への利益還元を経営の重要課題と位置づけ、配当を実施している。配当性向は20%程度を目安とし、業績拡大に合わせて増配を目指す方針である。ただし、株価水準を考慮すると配当利回りはまだ低い水準にあり、今後の成長と株価上昇、増配による株主還元を目指すとしている。
今期の取り組みやトピックス
同社の今期(2025年12月期)の業績見通しは、売上高33億円、営業利益15億円弱を見込んでいる。売上高、営業利益ともに堅調な伸びを見込んでおり、第1四半期時点では計画通りに進捗している。新規契約件数は四半期あたり160~170件、純増件数は100~130件程度で推移しており、業績に貢献している。
Q:特徴や優位性をご説明ください。
A:弊社の強みは、訪問看護専用電子カルテシステムを起点としている点にあります。他社の多くが介護用の保険請求計算システムを中心に展開する中で、弊社は訪問看護の現場で不可欠な電子カルテからシステム構築を行いました。これにより、日々の看護記録と請求業務がシームレスに連携し、作業効率の大幅な向上を実現しています。
具体的には、訪問看護師が患者様の情報をタブレットで入力すると、それが自動的に請求データに反映されるため、転記作業の手間やミスを削減できます。また、訪問看護ステーションの運営に必要な、スケジュール管理、請求代行、勤怠管理、研修といった業務をワンストップで提供できる点も、弊社の大きな優位性です。
Q:今期の成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)はなんでしょうか?
A:弊社の成長戦略の柱は、クラウドサービスとBPaaSの提供を通じた、訪問看護ステーションの業務効率化と生産性向上です。
クラウドサービスにおいては、訪問看護専用電子カルテ「iBow」の機能拡充や、AIを活用した訪問スケジュール作成システム、生成AIによる訪問看護計画書・報告書作成システムなど、革新的なソリューションの開発に注力しております。
BPaaSにおいては、レセプト請求代行サービス「iBow事務管理代行サービス」の提供を通じて、訪問看護ステーションの事務作業負担を軽減し、看護師が本来の業務に専念できる環境づくりを支援しております。
これらの取り組みにより、訪問看護ステーションの生産性向上に貢献することで、さらなる事業拡大を目指してまいります。
Q:業績の増減要因をご説明ください。
A:弊社の業績は、クラウドサービスとBPaaSの売上高増加によって牽引されています。
クラウドサービスは、契約数の増加と、既存顧客の利用拡大に伴う顧客単価の上昇により、堅調に成長しております。BPaaSは、売上高全体に占める割合はまだ小さいものの、高い成長率を示しており、今後の成長が期待されます。
また、解約率が非常に低いことも、安定的な業績成長を支える重要な要因です。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:弊社は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しており、上場以来、配当を実施しております。
配当性向については、20%程度を目安とし、業績の拡大に合わせて、配当額を増やしていく方針です。ただし、現在の株価水準を考慮すると、配当利回りはまだ低い水準にあるため、株主の皆様には、今後の成長による株価上昇、そして増配にご期待いただきたいと考えております。
取材者:貴社のビジネスモデル、事業セグメントについてご説明をお願いいたします。
回答者:弊社は基本的にクラウドサービスを提供しており、訪問看護専用の電子カルテ「iBow」が主要な製品となっております。「iBow」は、訪問看護のトータル的な業務支援サービスであり、保険請求のクラウドサービスである「iBowレセプト」や、訪問看護ステーション向けの勤怠システムなども含みます。これらの全てをSaaSのシステムで提供している点が、メインのクラウドサービスの特徴です。
「iBow」の料金体系についてご説明しますと、1ステーション当たり月額1万8,000円に加え、看護師が患者さん宅を1回訪問してケアを行うごとに、1訪問当たり100円をいただくというビジネスモデルです。
さらに、「BPaaS」というサービス、すなわち「iBow事務管理代行サービス」も展開しております。これは、正しいレセプトを行うために必要な医療・介護保険の確認や、制度に沿った適切な記録の支援、主治医からの指示書情報等の登録をし、保険請求業務を代行するサービスです。
クラウドサービスとBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を自社のクラウドサービスを利用して行うということを、「BPaaS」と称しております。
BPaaSの料金は、保険請求金額の5%相当(最低利用料金10万円)という設定です。こちらも毎月積み上がっていくビジネスとなっております。
取材者:貴社の特徴や強み、優位性についてお聞かせいただけますでしょうか?
回答者:弊社の強み、他社システムとの違い、特徴についてご説明いたします。
営業上の競合は、例えば、エス・エム・エス様が展開している「カイポケ」やカナミック・ネットワーク様、ワイズマン様などが競合として挙げられます。これらの競合他社様は基本的に介護の保険請求計算システムを展開されており、介護分野を主軸とされています。介護には多種多様なサービスがあり、訪問看護はその一部として捉えられているケースが多いです。
つまり、他社様の多くは介護保険請求計算システムをやりながら、訪問看護の保険請求や一部記録を中心とした業務支援も可能であるという形で展開されています。
一方、弊社は電子カルテという日々の業務システムから展開しているという点が、まず大きな違いとして挙げられます。
医療業界はシステム化が遅れており、手書きや紙ベースでの管理が依然として多い状況です。そのため、現場で実際に使えるシステムを提供することが非常に重要であると考えております。
弊社は、手書きで行われていた電子カルテ領域のDX化を手がけ、そこから保険請求計算システムへと展開しました。
焼き鳥屋を例にとると、他社様は伝票の正の字をタブレットで入力できるようにし、最後に正の字を数えながらレジを打つという、レジ打ちシステムの提供に近いイメージです。
一方、弊社は電子カルテからシステムを構築しているため、モバイルオーダーサービスのように、机ごとにタブレットがあり、注文内容がタブレットに加算され、そこからレジに直接連携して自動で計算されるというイメージです。
弊社は電子カルテからシステムを構築しているからこそ、自動連携が可能です。しかし、他社様のシステムはレジシステムがあって、派生させてタブレットで情報を入力しても、結局はそのタブレットの情報を見ながらレジ打ちをしなければならないという状況があります。
そのため、他社様のシステムは導入されているものの、実際には使われなかったり、一部しか使われていないというケースもあるようです。
弊社は、業務効率化の電子カルテと、保険請求のレセプトシステム「iBowレセプト」を連携させ、記録を入力すると請求金額が自動で反映されるシステムを構築しています。記録を1つ追加するだけで請求金額が自動的に変わるため、非常に便利であるという声をいただいております。
これが、他社システムとの大きな違いであり、弊社のシステムの強みです。
取材者:確かに、最初は慣れるのに時間がかかりそうですね。
回答者:そうですね。手書きでの作業からシステムへの移行は、業務フロー自体を変える必要があるため、丁寧な説明やサポートが不可欠です。
取材者:若い方はすぐに慣れるでしょうが、ベテランの方々は大変かもしれませんね。
回答者:弊社代表の中野は、誰にでも分かりやすいシステムを目指しており、文字の大きさなど、細部にまでこだわって開発を進めております。
取材者:代表の方が重要な役割を果たされているのですね。
回答者:はい、その通りです。
加えて、弊社はステーションの立ち上げから、患者さんの獲得、訪問スケジュール作成まで、訪問看護に関する業務をワンストップで提供しているという強みがあります。
訪問看護ステーションの管理者様は、例えば5人の訪問看護師を抱え、80人の患者さんのスケジュールを毎月立てる必要があります。患者さんの状況や住環境、必要なケアなどを考慮し、最適なスケジュールを組むのは非常に複雑な作業です。
弊社は、訪問看護スケジュールやルートをAIで作成するシステムや、患者さんごとの訪問看護計画書や報告書を生成AIで作成するシステムなどについても提供しています。
さらに、請求代行サービス(BPaaS)、勤怠管理、備品購買、法定研修など、訪問看護の主要な業務をほぼ全てカバーしており、ワンストップで提供できる点が弊社の大きな特徴です。
取材者:次に、業績についてお伺いします。貴社は12月が決算月とのことですが、直近の業績、特に増加要因について教えていただけますか?
回答者:はい。弊社は2022年に上場しており、売上高は16億円から20億円、25億円と順調に伸びております。営業利益も7億円近くから9億円、11億円と増加しており、上場以来、営業利益率は43%~44%を維持しています。
取材者:上場後、業績が伸び悩む企業も多い中で、貴社は売上、利益、利益率ともに非常に好調ですね。CAGR(年平均成長率)も素晴らしい数字です。
回答者:まだ売上規模が25億円ですので、今後さらに成長させていきたいと考えております。
取材者:業績好調の要因は何ですか?
回答者:売上高25億円の内訳ですが、約9割がクラウドサービス、1割がBPaaSです。BPaaSの規模は小さいものの、伸び率は35%と高い成長を示しています。クラウドサービスも20%~25%の成長を継続しており、これが売上増加要因です。
取材者:KPIの過去3年間の推移について教えてください。
回答者:売上高の伸びは、主に契約数の増加によるものです。顧客単価も、BPaaSの導入や、iBow利用顧客の訪問件数増加に伴い、わずかに上昇していますが、実績としては平均して5%前後の伸びにとどまっています。
レベニューチャーンレート(解約率)が非常に低いことも、業績を支える重要な要素です。
取材者:レベニューチャーンレートが0.1%というのは、非常に低いですね。
回答者:はい、ほとんどないと言える水準です。
取材者:市場シェアが17.5%とのことですが、これはどのシェアと考えればよろしいですか?
回答者:こちらは、全国の訪問看護ステーションの総数を母数として算出しています。全国訪問看護事業協会が公表しているデータによると、2024年4月1日時点で全国に1万7,329ステーションございます。このうち、弊社と契約いただいているステーションの割合が17%ということです。
取材者:そうすると、まだ80%以上の伸びしろがあると考えてもよろしいのでしょうか?
回答者:はい、そのように考えております。
取材者:素晴らしいですね。サービスが広く受け入れられている理由は何ですか?他社様のサービスもある中で、貴社のサービスが選ばれる理由についてお聞かせください。
回答者:選ばれる理由としましては、先ほどご説明したように、電子カルテシステムから派生したプロダクトであるという点が大きいと考えております。
取材者:なるほど。具体的な機能面での利便性について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
回答者:はい、もちろんです。例えば、24時間体制での看護が求められる状況において、急なオンコールがあった際、紙カルテの運用ではステーションに寄ってカルテを確認する必要がありましたが、弊社のシステムであればタブレットで患者さんの情報をすぐに確認できます。これにより、迅速かつ適切な対応や情報連携が可能になります。
また、DX化が推進される中で、ステーション内の情報を共有し、いつでも誰でも確認できる状態にすることが求められています。弊社のシステムは、そのようなニーズにも応えることができます。
取材者:導入された訪問看護ステーションにとって、具体的にどのような点が効率化されたのでしょうか?例えば、人員削減や時間短縮など、具体的な指標があれば教えてください。
回答者:訪問数の増加という点では、明確なデータがございます。紙カルテの運用では、朝も申し送りで訪問指示を受け、訪問後ステーションに戻って記録を作成し、さらにパソコンに入力する必要がありましたが、弊社のシステムではこれらの作業を効率化できるため、1日に訪問できる件数が増えています。
例えば、1日に3件の訪問が、6件に増えるといったケースが見られます。
取材者:3件から6件に増えるというのは、かなり負担が増えるのではないでしょうか?
回答者:おっしゃる通りです。看護師さんによっては、3件の訪問で十分だと考える方もいらっしゃるかもしれません。そのため、弊社では経営セミナーなどを通して、訪問件数に応じた給与体制の導入など、インセンティブ設計についてもお伝えしています。
取材者:現場の看護師さんから、システムの導入に対して抵抗が出る可能性はないのでしょうか?
回答者:幸いなことに、現場の看護師さんからの評判は概ね良好です。弊社のシステムを導入したステーションから、他のステーションへ異動された看護師さんが、異動先で弊社のシステムを勧めてくださるケースもあります。
事務手続きの効率化は、看護師さんにとっても大きなメリットとなっているようです。本来の看護業務に集中できるという点で、高く評価していただいております。
取材者:看護師の数は、全体として増えているのですか、それとも減っているのですか?
回答者:看護師の数自体は増えています。ただし、重要なのは訪問看護師の数です。
少し古いデータになりますが、令和2年の時点で、看護師資格保有者は220万人、就業している看護師は168万人、その中で訪問看護に従事しているのは10万人という状況でした。2025年には13万人の訪問看護師が必要と言われており、まだまだ不足している状況です。
取材者:国の方針として、病院ではなく在宅での療養を推進する動きがあると聞いておりますが、これはどのような背景があるのですか?
回答者:はい、地域包括ケアシステムの推進という形で、国が在宅医療を推進しています。背景としては、在宅医療の方が医療費を抑制できるという点が挙げられます。
例えば、入院した場合の医療費と在宅医療を利用した場合の医療費を比較すると、在宅医療の方が約3.5割削減できるというデータもございます。
取材者:それは大きな削減になりますね。国家予算の抑制という観点からも、在宅医療の推進は重要であるということですか?
回答者:そうですね。医療費の増加を抑制するという意味合いもございます。今後の医療保険制度を考えると、在宅医療へのシフトは避けられないと考えています。
取材者:国家予算の問題と、高齢化に伴う病院の負担増という、二つの側面から在宅医療が推進されているということですね。
回答者:おっしゃる通りです。病院側も、平均在院日数の短縮化など、効率的な運営が求められています。
取材者:在宅療養を希望しても、訪問看護ステーションが見つからないというケースもあるのですか?
回答者:はい、適切な訪問看護ステーションが見つからないと、退院が遅れてしまうという問題も発生しています。
取材者:病院が退院を促しても、在宅で看護を受けられる体制が整っていない場合もあるということですね。
回答者:そうです。ケアマネジャーなどが訪問看護ステーションを探すのですが、すぐに見つからないこともあるようです。
取材者:様々な背景があるのですね。その中で、貴社のシステムは訪問看護の効率化に貢献し、より多くの患者さんを支援できるということですね。
回答者:はい、そのように考えております。
取材者:貴社は非常に将来性のある企業だと感じました。
回答者:ありがとうございます。
取材者:貴社が伸びないはずはない、ということがよく分かりました。
次に、貴社の課題についてお伺いします。貴社が抱える問題点や、成長を妨げる要因となり得るものはございますか?
回答者:一般的な課題としては、情報漏洩への対策などが挙げられます。
IR関連でよくいただくご質問としては、中期経営計画(中計)で売上高50億円、営業利益22億円という目標を掲げていることについて、達成できないリスクはないのか?というものがございます。
中計におけるリスクとしては、AI関連サービスという新規事業の立ち上げと、その単価や実績の見込みが、想定通りに進まない可能性があるという点が挙げられます。
しかし、AI関連サービスについては、現時点ですでに想定を上回る実績が出始めており、中計期間である今後3~4年においては、大きなリスクは少ないと考えております。
強いて言えば、一般的なリスクとして、報酬改定の影響が挙げられます。
ただし、2024年には大きな報酬改定がありましたが、訪問看護に関してはプラス改定となる部分が多く、国も訪問看護を推進していくという意向が感じられました。
取材者:以前、社長にお話を伺った際、「訪問看護の市場はまだ小さいため、大手企業は参入してこない」とおっしゃっていました。売上高、利益がどのくらいになれば、大手企業が参入してくる可能性があるとお考えですか?
回答者:現在、弊社の顧客単価は月額8万円程度です。中計では、3年後に月額10万円程度に引き上げることを目標としています。
年間売上高に換算すると、現在は1顧客あたり年間100万円、3年後には120万円を目指していることになります。
この120万円という単価に、訪問看護ステーションの総数である約1万7,000ステーションを掛けると、売上高は約170億円になります。
現時点では、この規模では大手企業は参入しにくいと考えております。
訪問看護ステーション数が今後2万、3万と増加し、弊社の顧客単価も年間120万円程度に上昇し、市場規模が現在の2倍から2.5倍、500億円程度になったときには、大手企業が参入してくる可能性もあると考えています。
取材者:売上高が120億円になると、営業利益は貴社の利益率から考えると4~50億円程度になるということですね。
回答者:中計では、まだ営業利益22億円という目標ですので、そこまで至るのはまだ先になります。
取材者:まだしばらくは、大手企業の参入を心配することなく、事業を拡大できる環境が続くということですね。
回答者:はい、そのように考えております。
取材者:競合環境についてお伺いします。私も他社様の決算発表などを確認していますが、訪問看護以外の分野にも事業を拡大されているようですね。
回答者:はい、エス・エム・エス様は、訪問看護の深掘りではなく、障害者支援など、他の領域にも注力されています。訪問看護に特化するというよりは、介護など、周辺領域を広げて売上を拡大していくという戦略を取られているようです。
現時点では、大手企業が訪問看護分野に積極的に参入してくる動きは見られません。
取材者:貴社が訪問看護に特化していることが、強みになっているということもできますね。
回答者:はい、訪問看護に特化することで、より質の高いサービスを提供できると考えております。
取材者:株主還元、配当についてお聞かせください。
回答者:上場以来、配当は実施しておりますが、株主優待は実施しておりません。配当性向は20%程度を目安として、1株当たり配当を検討しております。
現在の株価はPER(株価収益率)が30~40倍と高いため、配当性向を30%に引き上げても、配当利回りは1%未満にとどまります。そのため、株主の皆様にとって、それほど魅力的な還元策にはならないと考えております。弊社としては、業績の拡大によるキャピタルゲインをメインとし、配当も徐々に増やしていくという方針を示していきたいと考えております。
取材者:まだ成長段階なので、配当利回りを重視するよりも、今後の成長と株価上昇、そして増配を期待するということですね。
回答者:はい、そのようにご理解いただければと思います。
取材者:配当性向は20%程度ということでしたが、直近では何%くらいでしたか?
回答者:直近では21~22%程度だったかと思います。
取材者:現時点では、配当性向を無理に引き上げる必要はないと思います。株価も高く評価されていますし、今後の成長に期待しています。
回答者:ありがとうございます。
取材者:今期の業績見通しについてお聞かせください。
回答者:売上高は33億円、営業利益は15億円弱を見込んでおります。
取材者:利益の伸び率は何%くらいですか?
回答者:利益の伸び率は31.6%を見込んでおります。
取材者:堅実な数字ですね。上振れの可能性はいかがですか?
回答者:まだ第1四半期が終わった段階ですので、現時点では見通しをお示しするのは難しいですが、今のところは計画通りに進捗しております。
取材者:開発費の増加などの要因で、下振れする可能性はあるかと思いますが、チャーンレートも低く、導入数も順調に伸びているということですので、業績は安定的に推移すると考えてよろしいですか?
回答者:はい、そのように考えております。
取材者:導入数について、何か開示されている情報はございますか?
回答者:月次での開示はしておりませんが、四半期ごとに新規契約件数と解約件数をグラフで開示しております。
取材者:四半期ごとに、新規契約は何件くらい増えているのですか?
回答者:新規契約は四半期あたり160~170件程度、解約は数十件程度です。四半期ごとの純増件数としては、100~130件程度となっています。
取材者:年間で400件以上増える計算になりますね。
回答者:はい、そうですね。
取材者:今期の業績見通しは、新規契約数を年間600件以上として計算されているということですか?
回答者:はい、それ以上で計算しております。
取材者:順調にいけば、さらに上振れする可能性もあるということですね。
回答者:そうですね。ただ、中計では、契約件数が大幅に増加するような計画にはしておりません。
取材者:まだまだ成長余地があるということですね。先ほどお話に出たように、まだ市場の17%しかカバーできていないということですから。
回答者:はい、おっしゃる通りです。あとは、IR関連でよく聞かれることとして、BS(貸借対照表)が膨らんでおり、現金も約20億円と多く、自己資本比率も非常に高いことについて聞かれることがあります。しかし、現状、M&Aも策の1つとして検討をしているものの、無理に実施する予定はありません。
取材者:そうですね。M&Aは、経営資源を分散させることにもなりかねませんので、オーガニックな成長を続け、現金を蓄えておくというのも一つの戦略だと思います。
回答者:ありがとうございます。
取材者:以前、社長にお話を伺う機会がありましたが、非常に素晴らしい経営者だと感じました。
回答者:ありがとうございます。代表の中野は、非常にバイタリティがあり、夢や使命感を持った人物です。ご自身の病気や怪我の経験から、社会に貢献したいという強い思いを持っておられます。
上場して会社が大きくなっても、その精神を大切にしていただきたいと考えております。
投資家の皆様にも、そのような会社の姿勢をご理解いただければ幸いです。
取材者:本日は、お忙しい中、ありがとうございました。
取材者:こちらこそ、ありがとうございました。
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