取材者: 本日はよろしくお願いいたします。まず初めに、貴社のビジネスモデル、事業内容について、他社と比べたときの特徴や強みなどを踏まえながらご説明いただけますでしょうか。
回答者: はい、承知いたしました。弊社は「アンチエイジング」を社名に掲げ、誰もが年齢に捉われずに、いきいきと生きることができる社会を実現することを企業理念としています。その理念のもと、現在大きく二つの事業を展開しています。一つはアンチエイジング事業、もう一つはリカバリー事業です。
取材者: アンチエイジング事業について詳しくお教えください。
回答者: アンチエイジング事業では、化粧品、ヘアケア商品、サプリメントを販売しています。販売チャネルは、BtoCの自社通販と、卸売によるリテール販売を中心に展開しています。リテール販売では、バラエティショップやドラッグストアを中心に全国18,000店舗以上に配荷しています。主力商品は、クレンジングバームの「DUO」で、クレンジング市場でトップシェアを維持しており、5年連続でクレンジング売上No.1※を獲得しています。
取材者: 他の商品についてもご教示ください。
回答者: その他、オールインワン美容液を中心に展開する高機能エイジングケアブランドの「CANADEL」、カラートリートメントを始めとする髪と地肌のエイジングケアを叶えるヘアケアブランドの「clayence」を展開しています。「CANADEL」オールインワン美容液は、化粧水、美容液、クリーム、マスク、マッサージ等の機能を一つにまとめた商品で、6年ほど前に立ち上げました。「clayence」のカラートリートメントは、白髪染めとは異なり、毎日使用することで徐々に染まるヘアケア商品で、3年ほど前に立ち上げました。
取材者: リカバリー事業についてはいかがでしょうか。
回答者:2023年1月に株式会社ベネクスを買収し、リカバリーウェアの販売を行っています。リカバリーウェアは、健康作りの3要素「運動」「栄養」「休養」の中でも、パフォーマンス向上に必要な「休養」に着目し、着用することでリラックス効果と疲労回復効果が期待できる商品で、厚生労働省から一般医療機器の認定を受けています。近年の健康志向の高まりや睡眠の質向上への関心の高まりを背景に、市場が拡大しています。
取材者: 貴社の事業の特徴や強みは何でしょうか。
回答者: ファブレス経営であることがひとつの特徴です。OEM先との協業により、迅速な商品企画・開発と、投資のコントロールを両立させています。また、BtoCの自社通販とリテールの両方の販売チャネルを持つことで、多様な顧客層にアプローチしています。
取材者: 商品開発についてお聞かせください。年間でどれくらいの新商品を開発しているのでしょうか。
回答者: 商品やブランドによって異なりますが、年間6~10点程度の新商品を開発しています。例えば、主力商品の「DUO」は、発売15年目にして初めてリニューアルを行いました。1月8日から4月にかけて、5つの新商品を発売予定です。また、既存ブランドの新商品だけでなく、新規ブランドの立ち上げも予定しています。
取材者: リニューアルの背景には、どのような理由があったのでしょうか。
回答者: かつて「DUO」は年間200億円を超える売上を誇っていましたが、近年は競合の台頭や消費者の低価格志向などにより、売上が落ち込んでいました。そこで、クレンジングバームのパイオニアとして、多様化するお客様のニーズにお応えするべく、「落とすだけではないスキンケア効果」にこだわり、処方をパワーアップし、リニューアルしました。リニューアルでは、美容成分の強化や香りの改良など、品質をさらに向上させました。また、リテールにおける競争力強化のため、容量を調整した上で価格を設定した店舗限定商品も投入しました。
取材者: 価格改定によるブランド価値の毀損は懸念されませんか。
回答者: グラム単価で見ると、価格改定前と大きな差はなく、ブランド価値を棄損しているとは考えていません。また、中長期的にブランド価値を高めるためには、価格訴求だけでなく、商品の価値を前面に押し出す必要があります。そのため定期通販では、これまで初回50%オフとしていましたが、11月からは30%オフに変更しました。今後は、商品の価値を訴求する広告戦略に力を入れてまいります。
取材者: 広告戦略について、ターゲットや掲載場所についてご教示ください。
回答者: これまで主流だったテレビCMに加え、インターネット広告やSNS広告も活用しています。テレビCMは、地域や媒体によって視聴者が異なるため、より効果的な活用方法を検討しています。また、ニュース性や話題性を作り出すことで、認知度向上につなげています。オフラインでは、交通広告や屋外広告も活用しています。
回答者: 今回、テレビCMに一定の費用を投じています。テレビを見る人は減少傾向にあるかもしれませんが、地域によっては全然違います。例えば、東京ではテレビを見る人が減っていると思うのですが、地方に行くと引き続き見ている方がいらっしゃいます。またコネクティッドTV、つまりTVerなど、様々なサービスを視聴する方が増えていますので、テレビCMのパワーが落ちたという話はあるものの、地域性やテレビの中の媒体などを考慮し、より精査された使い分けが必要になっているのではないかと考えています。加えて、WebのCMに比べると、一気に認知を拡大することができるパワーというのがあります。
取材者: なるほど。
回答者: そのあたりを活用して、ニュースを作ることが可能です。例えばテレビCMを作ると、CMで放映されるだけではなくCMのメイキング動画、CMにご登壇いただいているキャストの皆さんの想いを込めた動画なども作成できます。さらに、記者会見などで主要なメディアが集まってきます。例えば、木村拓哉さんをブランドキャラクターとして起用した「CANADEL」の記者会見では、約100名の報道関係者が詰めかけてくださいました。そして翌日はキー局全ての朝のワイドショーなどで「木村さんがCMに出演」と取り上げてくださいました。またスポーツ新聞も同様に報道してくれました。このような効果があるため、テレビCMは一つの有効な手段として考えています。
取材者: はい。
回答者: また、弊社はまだそこまで資金もないため積極的に活用できていませんが、オフラインの媒体として、電車の中の広告や、屋外広告、いわゆるOOH広告も認知度を高めるためには必要な手段と考えています。
取材者: はい。
回答者: さらに、購買活動に具体的に働きかける媒体という意味で言うと、インターネット広告、検索広告、さらにはSNS広告等の重要性が高まっており、こちらにも当然費用をかけています。
取材者: ありがとうございます。承知いたしました。それでは、貴社の創業の経緯や、創業時のエピソードについてわかる範囲で教えていただけますでしょうか。
回答者: はい、弊社は2009年に現在の社長の松浦が創業し、昨年12月に15周年を迎えました。創業の想いはまさに企業理念に集約されているのですが、人生100年時代と言われている中で、誰もが年齢に捉われずに、いきいきと生きることができる社会を実現することです。現在は、アンチエイジング事業として、化粧品やヘアケア、サプリメントを中心に事業を展開していますが、今申し上げたような世界を実現するために今後も様々な事業にトライしていきたいと考えています。ただし、そのためにはお客様や社会に貢献しながらも、投資を行うために利益の蓄積も必要です。その意味で言うと今は化粧品事業、リカバリー事業を中心に事業投資を行い、将来に向けた原資を確保しようとしています。
取材者: なるほど、ありがとうございます。先ほど今後の事業展開についてお話がありましたが、リカバリーウェアの株式会社ベネクスのように、今後もM&Aなどによる成長戦略をお考えでしょうか。M&Aに対する方針や戦略についてお聞かせください。
回答者: はい。M&Aにつきましては、チャンスがあれば積極的に活用していきたいと考えています。弊社の体力を考えても、新規事業を立ち上げるにおいて、ゼロから作り上げるよりは、M&Aを活用することができるのであれば、有効な手段であると考えています。株式会社ベネクス買収でも成功したように、一つの経営の有力な手段として活用していきたいと考えています。
取材者: はい。ありがとうございます。今期の業績について少しお伺いしたいのですが、業績予想としまして、減収増益という形で予想を出されているかと思いますが、これは先ほどご説明のあった他社との競合状況や、ブランドのリニューアルなどの影響で、準備段階ということもあり、減収になっているという理解でよろしいでしょうか。
回答者: そうですね、準備段階というよりは事業構造改革の取り組みを推進しているところですが、その取り組みを推進しても、まだ売上を反転させるまでには至らないと考えています。もう少し時間が必要であると考えています。
取材者: なるほど。今期第1クォーターでの営業利益に関しては、かなり大幅な増益になっているようですが、これは広告宣伝費や販管費の部分の影響が大きいのでしょうか。
回答者: そうですね、広告宣伝費、販管費の影響が大きいと考えています。これは多少の期ずれの要因もありますが、広告宣伝費・販促費の効率的・効果的な運用に寄与するところが大きいと考えています。また、固定費の削減を含めたコントロールについては、経営として意識を変えており、大きなテーマとして取り組んでいます。したがって、固定費の削減も一定程度は寄与しているとご理解いただければと存じます。
取材者: ありがとうございます。貴社の株主還元策について方針などございましたらお教えください。
回答者: はい。現状では株主還元を行うことは考えておりません。資本政策の考え方として、まず企業の安定性、財務の健全性、事業投資、そして株主の皆様に対する配当、自社株買いという三つの要素を考えていく必要があります。弊社としましては、現状においては財務の健全性を重視しており、自己資本比率のターゲットである50%を少し超えているという状況です。しかしながら、業績はまだ安定しているわけではありませんので、資本を蓄えていく必要があります。さらに、事業投資の優先度が配当や自社株買いよりも現時点においては高いと考えています。これは、まだ弊社の既存事業のテコ入れが必要ですし、隣接分野に対して事業投資を行うことで成長していく余地がありますので、まずは事業投資をしっかり行っていきたいと考えています。逆に言えば、財務が安定し、業績が安定し、一定の事業投資を行い、余剰資本があるという状況になれば、株主の皆様に還元することも真摯に考えたいと思っていますが、現時点ではそのステージまではまだ差があると考えています。
取材者: わかりました。こちらは今後の課題として考えていらっしゃるということでしょうか。
回答者: そうですね、課題というよりは、まだその段階ではないということです。
取材者: ありがとうございます。ESGに関する取り組みについて、様々な取り組みを行っていらっしゃると思いますが、特に環境の観点からの取り組みについて、例えば原材料の入手経路などに関する方針や取り組みについてお聞かせください。
回答者: はい、承知しました。まず一つ目に、弊社では調達方針を策定し、社内外に公表しています。これはお取引先様に遵守いただきたい弊社の調達に関する考え方をまとめたものです。もちろん人権尊重なども含めてです。それから二つ目は、様々な取り組みを過去から行っていますが、現状において変化し続けているものとして、輸送効率を上げるための取り組みがあります。コンパクト便、ポスト投函型の配送サービスです。ポストに入るようなサイズの、運送効率の良い配送スタイルに合わせた容器を開発しました。
取材者: なるほど
回答者: つまり、再配達の削減に取り組んでいるということです。
取材者: 承知いたしました。ありがとうございます。その他、今期新しく始めた取り組みや、業績に関わらず何かトピックスがございましたらお教えください。
回答者: そうですね、やはり冒頭からお伝えしました「DUO」ブランドのリニューアルが一番大きなトピックスかと存じます。
取材者: わかりました。本日はありがとうございました。
回答者: ありがとうございました。
※TPC マーケティングリサーチ㈱調べによるブランド別クレンジングに関する調査(調査対象期間:2019年4月~2024 年 3 月/調査時期:2024 年4月)