top of page
チームスピリット_logo1.png

(株)チームスピリット

東証GRT 4397

決算:8月末日

20251031

CP&X


【2025年8月期(通期)】

決算概要

2025年8月期決算は増収・増益で着地。売上高は前年同期比11.3%増の4,922百万円、営業利益269百万円、当期純利益362百万円と、修正後の目標を達成する好調な進捗。好業績の要因は、エンタープライズビジネスの拡大による粗利増加と、シンガポール事業の縮小(実質的な撤退)および日本事業の効率化によるコスト削減の2点。特に、ここ数年注力してきたエンタープライズビジネスへの取り組みが「花開き始め」たことが、売上伸長および利益貢献を具現化した結果。


セグメント別または事業別の増減要因

従来のミッド・スモール顧客中心からエンタープライズ顧客へのビジネスシフトが、2025年8月期に目に見える形で進み、売上高およびARRの伸長に貢献。具体的には、日本の労働基準法要件に合致しない外資系大規模ERPベンダーとの連携や、システム入れ替えを控える顧客を持つコンサルティングファーム経由での案件獲得が、営業効率がとても高い売上の提供源として具現化した。また、エンタープライズ企業が求める独自要件に対応するため、SaaSのFit to Standardの姿勢ではなく、顧客に合わせたアジャストメント、アップデート、改変を多様な形にするシステム開発を、競合他社に先んじて、3年間の赤字を伴う大規模開発を通じて既に実行している点も大きなアドバンテージ。


主要KPIの進捗と変化

エンタープライズビジネスの着実な開花に伴い、売上高だけでなくARRも目に見える形で伸長している状況。また、エンタープライズのお客様における新規顧客(New LOGO)の公表を毎四半期継続しており、これがビジネスの好調な進捗を示す重要な指標。


季節性・一過性要因の有無と影響

シンガポールビジネスの実質的なシャットダウンを実施したことで、固定費の大きな削減効果を創出。また、2025年8月期の黒字転換に伴い税効果を取り込んだ結果、当期純利益を修正予算から約1億円上乗せて着地し、繰越損失の圧縮に寄与。


通期見通しと進捗率・達成可能性

2026年8月期はエンタープライズ主導で増収増益を想定。今期は、花開き始めたエンタープライズビジネスの満開度合いが四分咲き、五分咲きとさらに上昇することで、売上の伸長ペースが再加速し、利益も大きく拡大することを想定。この伸長ペースの再加速は、エンタープライズビジネスの昨対25%超の力強いARR伸長が、連結全社の売上の昨対伸長率を押し上げることによって起きている。なお、2026年8月期末には利益剰余金のマイナスは解消する見通しだが、当社は本年11月末の株主総会で「資本政策の柔軟性及び機動的を確保」するために「減資」を行う決議を予定しており、これによって利益剰余金のマイナスの解消(=配当可能利益の創出)が想定よりも1年早く実現する可能性が出てきている。


トピックス

2027年に40年ぶりの労働基準法の大改正が控えており、そこで求められる内容を実現するためにはITシステム化された勤怠管理ツールが必須となる見込みである中、再び追い風を受ける機会として今年度はその訴求を強化していく方針。既に順調な引き合いや導入の話が具体化しているほか、多様な売り方を実現するため様々なパートナーとのアライアンス組成を進め、そのうちいくつかのアライアンス先とは具体的なプレスリリース出すまでに至っている。また、社内では2025年8月期にリリースした複数の新しいプロダクトの拡販に向けた取り組みも進んでいる。株主還元については、2026年8月期での繰越損失ほぼ解消後を見据え、配当可能利益を用いた自社株買いや配当の可能性について、今期中に議論を進める方針と聴取していたが、上述の通り、その後の「減資」議案に係るプレスリリースにより、そのタイミングが約1年前倒しになる可能性が出てきており、議決のゆくえが着目される。

makuake_logo1.png

​企業名

上場市場 証券コード

​決算日

取材アーカイブ

  • 決算概要

    2025年8月期第2四半期は、増収・黒字転換。売上高は23億1,900万円となり、前年同期比で9.1%の増加を達成。営業利益は1億3,400万円と黒字転換を果たす結果となった。ビジネスは順調に拡大基調にある状況である。

     

    主要KPIの進捗と変化

    通期業績目標に対する進捗率は、売上高が46%、営業利益が89%である。売上高はほぼ想定通りに進捗しているが、営業利益は期初想定よりも早い進捗となっている。この利益の先行は、1) 下期に入り発表した新プロダクトに係るマーケティング投資や、2) 将来の更なる事業成長に向けた戦略的投資、3) 量より質を重視した採用を中心とした人材投資の費用反映が、いずれも下半期に偏重していることが主要因である。主要なKPIとしては、ARR(年間経常収益)の着実な増加が注視すべき指標である。また、ARRに先行する指標であるパイプラインは非開示であるものの、期初時点におけるエンタープライズ顧客のパイプラインは前年同期比で倍増しており、量と質の両面でエンタープライズビジネスが順調に拡大していることを示している。

     

    季節性・一過性要因の有無と影響

    大企業においては、システム導入の意思決定プロセスに時間を要するため、商談が従来対比で長期化している。加えて、稼働開始の時期は新年度期初の4月ではなく、5月以降になることが多く、当社としての売上計上開始は、当社の第3四半期や第4四半期に偏重する傾向が見られる。今期はこの傾向が顕著であり、第1・2四半期よりは、第3四半期にそのパフォーマンスが示されるとの見解である。

     

    通期見通しと進捗率・達成可能性

    通期業績目標に対して、営業利益の進捗率は89%と高水準であり、目標達成に向けて順調な推移を示している。エンタープライズ案件に係る売上計上が加速する見込みの第3四半期以降の業績進捗が、通期目標の達成度を左右する重要な要素である。

     

    トピックス

    当社の成長戦略は、エンタープライズ領域における事業拡大を主軸としている。その実現に向けて、様々なビジネスパートナーとの関係性を強化している。特に、日本の法制度への対応が十分でないことが多い外資系ERP(OracleやSAPなど)の勤怠モジュールを補完・代替するために、外資系ERPベンダーとの連携を強化している。これにより、ERP全体の更改・刷新時に当社システムの同時導入を促している。また、コンサルティングファームとの連携強化を通じて、顧客開拓機会の拡大を図っている。直近では、グローバルERPベンダーであるワークデイ株式会社とのイノベーションパートナー契約を締結した。

    株主還元策として、個人の売買を促進するポイント型優待の導入を発表しており、今期末(8月末日)の株主が対象となるため、同タイミングに向けて同社株式の購買行動の活発化が期待される。

  • Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?

    A:当社の成長戦略の実現に向けた重要なポイントは、エンタープライズ領域におけるパートナーシップの強化にあります。特に、エンタープライズ顧客の多くが導入している外資系ERPベンダー、例えばSAPやWorkday、Oracleといった企業の製品と、当社の勤怠管理システムとの連携を重視しています。これらの外資系ERPシステムが持つ勤怠管理モジュールは日本の法制度に十分対応していないことが多いため、当社の勤怠管理システムがそれらを補完・代替する役割を果たすことができます。これにより、グローバルに事業を展開しているエンタープライズ顧客が、ERPシステム全体を更改・刷新しようとする際に、外資系EPRシステムと共に当社システムの同時導入を促す構図となっています。また、このような大手ソフトウェアベンダーとの協業に加え、エンタープライズ顧客のシステム導入に際して介在するコンサルティングファームとの連携も不可欠です。コンサルティングファームを通じて当社のシステムが提案されることで、顧客開拓の機会を大きく広げることが可能となるため、今後は主要なコンサルティングファームとの協業も強化していくことが、エンタープライズ市場における当社のプレゼンス拡大に繋がると考えています。

     

    Q:通期業績の見通についてご説明ください。

    A:2025年8月期第2四半期においては、売上高23億1,900万円、前年同期比9.1%増加、営業利益は1億3,400万円で黒字転換となりました。通期業績目標に対して、売上高は46%、営業利益は89%の進捗であり、これは想定よりも順調な進捗です。ビジネス自体も順調に拡大しており、特に第3四半期以降にエンタープライズ顧客からの大型案件が具体化すると見込んでいます。大企業での導入においては、稟議のプロセスに時間を要するため、商談が長期化する傾向があります。加えて、実際のシステムの導入・稼働開始時期は、新年度期初の4月は避けて、5月以降、つまり当社の決算期では第3四半期や第4四半期に偏重する傾向があり、今期はその傾向が顕著に表れています。したがって、第3四半期のパフォーマンスが、エンタープライズ事業に注力している当社の本当の実力を示すものとなると考えています。

     

    Q:株主還元の方針をご説明ください。

    A:当社の株主還元策として、積極的な個人投資家の売買を促進することを目指したポイント制の還元施策の導入を決めました。ポイント型の株主優待では、長期保有を促す形を指向する企業が多い中で、当社は継続的に保有しているかどうかの条件づけを行っていません。特に当社は8月決算であり、他の多くの企業とは決算月が異なっています。これにより、他の企業は3月末や9月末に株主優待の権利確定を迎えることが多い中で、固有のメリットを追求しうると思っています。具体的には、投資家が当社の8月末までに当社株に投資して優待の権利確定を受けた後、一度売却して、9月末までに他の企業の株式を購入し、さらに2月や3月の決算に向けて再度当社の株式を購入するといったサイクルで、当社株式の取引量が押し上げられることを期待しています。

  • 取材者:2025年8月期第2四半期の業績についてお伺いします。売上高は23億1,900万円、前年同期比9.1%増加、営業利益は1億3,400万円で黒字転換となりました。これらの増減要因についてご説明いただけますか。

    回答者:ビジネス自体は非常に順調に拡大しています。しかし、目標からすると第2四半期はそれほど好調ではありません。むしろ、これまでお話ししてきたことが第3四半期でより具体的に実現できると考えています。特にエンタープライズのお客様に関しては、中小規模の企業が意思決定者の判断でシステム導入をすぐに進めるのに対し、大企業では稟議プロセスを通すことが必要となるため、導入時期が新年度期初の4月からではなく5月以降、当社の第3四半期や第4四半期に偏重する傾向があります。今期はその傾向が顕著に表れています。したがって、第1四半期よりもパフォーマンスは改善していますが、当社の真の実力はこれ以上であり、第3四半期に注目していただきたいと思います。

    取材者:通期の業績目標に対して、売上高は46%、営業利益は89%の進捗ですが、これは想定よりも進捗しているという認識でよろしいですか。

    回答者:売上高はほぼ想定通りですが、利益は期初想定よりも進捗しています。下期に入り発表した新プロダクトに係るマーケティング投資、将来に向けた様々な戦略的投資、人材面での投資を進めています。こうした中で、費用の計上が下期に偏っている状況です。人材投資についても、当社は量より質の高い人材を求めているため、一定のリードタイムが必要です。そのため、これも下半期に偏重している部分があります。全く採用できていないわけではなく、順調に採用は進んでいますが、就業のタイミングから費用への影響は下期偏重となっている状況です。4月には10名程度の増員があり、4月1日からは組織再編を行い、それに合わせて採用を進めてきたため、ある程度のまとまった人数が確保できています。

    取材者:採用数の推移は前期と比較してどのような状況でしょうか。

    回答者:退職者もいるため、大幅な増加とはなっていませんが、期初計画よりも早いタイミングでの採用を想定していた部分が少しずれ込んだことで、一部利益が上期に先行して計上されている要因にもなっています。

    取材者:人材採用以外に、貴社の主要なKPIはございますか。

    回答者:ライセンス数は見ていただきたい指標ですが、先行指標にはなりにくいと考えています。特にエンタープライズのお客様の場合、導入後すぐに発表できるわけではなく、稼働が安定して初めて発表が可能となるケースが多いです。そのため、先行指標となるKPIの設定は難しいと感じています。むしろ、ライセンス数と売上高、特にARR(年間経常収益)の着実な増加を見ていただくのが良いかと思います。

    ARRに先行する指標は一般的にはパイプラインですが、当社はパイプラインの開示をしていません。しかし、実際には足元のパイプラインの量と質は改善しています。例えば、期初時点でのエンタープライズのお客様のパイプラインは、昨年同時期と比較して倍増しています。これはエンタープライズビジネスが順調に伸びていることを示しています。エンタープライズのお客様は契約までに時間がかかり、さらに実際に当社の売上の認識が開始されることになるシステムの稼働・ローンチまでにもう1年、2年とかかるケースもあり、見えづらい部分もありますが、着実に契約は進展し、質・量ともに拡大している状況です。

    取材者:承知いたしました。

    回答者:パイプラインの数だけでなく、お客様との商談の質も向上しています。パートナー企業と共に、どのような座組で、どのような戦略で。どのようにクロージングしていくかといった具体的な議論ができている案件が今期で増えており、数字でお示ししにくい部分ではありますが、質も確実に改善している背景になっています。

    取材者:第3四半期にかなり期待が持てる内容ですね。中期経営計画は発表されていますか。

    回答者:中期経営計画は策定していますが、現在はあまり強調していません。しかし、2030年の5年後の目標として、売上100億円、営業利益20%の達成を着実に目指していきたいと考えています。

    取材者:M&Aや業務提携に関して、実施状況や検討状況はいかがですか。

    回答者:M&Aのパイプラインとしては、現在4、5件の検討が進行中です。初期段階のものからDD(デュー・ディリジェンス)に入って具体化しそうなものまで様々です。相手先との関係もあり、具体的な時期についてはまだ申し上げられませんが、私が着任して以来、M&Aを成長戦略の一部と位置づけ、積極的に推進しているため、今後進展が期待できるかと思います。

    取材者:M&Aに伴う影響についてはいかがでしょうか。売上増加や新規プロジェクトなど、具体的なものはございますか。

    回答者:先日取得した第1号案件であるワークライフログというビジネスは、元々大きな規模ではありませんでしたが、彼らが持つテクノロジーは当社のお客様により大きな付加価値を提供できるものでした。現在、そのテクノロジーを実装すべく準備を進めています。一方で、同社はこれまで中小規模のお客様にサービスを提供していましたが、これをエンタープライズのお客様も含めて展開するには、それなりの負荷がかかることも分かってきました。これをうまく立ち上げて、徐々に拡大していきたいと考えています。それ以外の案件については、買収後でなければ具体的な影響について申し上げることはできず、現時点ではコメントできることはありません。

    取材者:株主還元方針について、何か変更はございましたか。

    回答者:先日発表した第2四半期決算で、株主還元を実施することを発表しました。過去3年間の赤字による累積赤字(繰越損失)があるため、本来であればこれを解消しないと配当や自己株式取得はできません。、今後利益が堅調に伸びていくことが確実であるため、それに先行して積極的に還元策の導入を行うことで、特に個人投資家の皆様に魅力を感じていただきたいと考えています。そこで、個人投資家をメインターゲットとしたポイント制の優待制度を発表しました。今期は初回として、8月末の株主様を対象に1年分をまとめたポイントをお配りします。これにより、8月末に向けて株価の上昇や買いが増えることを期待しています。機関投資家の方々の投資が拡大するためには、当社株式の日々の取引量が増えることが重要だと認識しています。私の着任時の取引量は1000万から2000万円程度で、これを大きく引き上げる必要がありました。株価が上昇すれば自然に増える部分もありますが、取引量自体を増やす効果も生み出さなければならないと考えており、IRのやり方も大きく変えてきました。第1四半期の結果として、取引量が3000万から4000万円程度まで増加しており、これは株価の上昇以上の増加で、非常に良い傾向だと考えています。これをさらに加速させ、1億円の大台に乗せたいと考えています。この観点からも、積極的な個人の売買を促進するために、今回の還元政策を実施しました。ポイント型の優待は長期保有を促すために、一度購入したら保有を継続してもらうことを求める企業もありますが、当社はそのような制約を設けていません。基準日を挟んで、積極的に売買していただいて構わないと思っています。特に当社は8月決算ですので、他の企業とは決算月がずれています。他の企業が3月末に株主優待の権利確定を迎える際、当社の8月末に投資した後、一度売却し、今度9月に他の企業の株式を購入し、また次に2月や3月の決算に向けて再度購入していただくといったサイクルとなって、当社株式の取引高を押し上げる効果が出ることを期待しています。

    取材者:その他、足元のニュースリリースやトピックス的なものがございましたら教えていただけますか。

    回答者:当社がエンタープライズのビジネスを拡大する上では、自社での直販だけでなく、2つの重要なパートナー群との関係性強化が必要だと考えています。特にエンタープライズのお客様は、勤怠管理システムだけを入れ替えるケースは少なく、ERP全体を入れ替える中で勤怠管理の入れ替えを検討されることが多いです。グローバル展開するようなエンタープライズの多くは外資系のERP、例えばSAPやWorkday、Oracleといった製品を導入することが多いため、これらのソフトウェアベンダーとの関係が非常に重要です。外資系ERPのほとんどは勤怠モジュールを持っていますが、日本の法制度への対応が十分でないことが多いのが実情です。例えばSAP様ご自身もグローバルな自社の勤怠モジュールをお持ちですが、日本では自社製品を推奨せず、チームスピリットとの連携を推奨してくださっています。このため、エンタープライズのお客様への導入が着実に加速しているのですが、これをSAPだけでなく、さらに広げていきたいと考えています。今回の成果として、ワークデイ株式会社というグローバルに展開するERPベンダーとのイノベーションパートナー契約を締結したことを発表いたしました。このリリースもぜひ確認していただければと思います。

    取材者:承知いたしました。

    回答者:このベンダーとの関係性と同じくらい重要なのが、コンサルティングファームとの連携です。エンタープライズのお客様は、ベンダーと直接やり取りするのではなく、ERP全体の導入に際してコンサルティングファームを選定し、協業しながら何をどのように導入すべきかを検討します。そのため、ベンダーだけでなくコンサルティングファームからも推奨される製品・サービスかどうかが非常に重要になります。当社はコンサルティングファームとの連携を強化しており、従来からデロイト様との関係性が非常に強く、デロイト様ご自身も当社の製品をご利用いただいており、お客様への提案時にも推奨していただいています。これをさらに拡大し、アクセンチュア様、PwC様、EYコンサル様といった会計事務所系のコンサルティングファームとの連携を強化しています。さらに、アビームコンサルティングのような国内でのERP導入を支援するコンサルティングファームとの関係性も強化し、共に協力していくというリリースを近いうちに発表できると考えています。

    取材者:インパクトのある発表になりそうですね。

    回答者:はい。

    取材者:承知いたしました。取材は以上となります。本日はありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

    回答者:よろしくお願いいたします。

  • 執行役員CFO コーポレート統括本部 本部長 高橋 亮様

    コーポレート統括本部 財務経理本部 本部長 大藤 知則様

makuake_logo1.png

​企業名

上場市場 証券コード

​決算日

取材アーカイブ

  • CP&X

     

    ビジネスモデルおよび事業内容

    チームスピリットは、顧客企業勤怠管理と工数管理をSaaS型システムを通じて提供するサービスを主な業務としている。単に始業・終業時間を記録するだけでなく、従業員が勤務時間中、どのような業務に、どれだけの時間を使っているのかを可視化し、業務の改善・効率化、生産性の向上まで支援することが可能な点に特色がある。さらに今後は、ワークログ分析などを通じたデータ経営力の強化や、同データを採用や目標管理などで活用することによるチーム経営力の強化までを実現するTeam Success Platformに進化することを目指している。

     

    創業の経緯と転機

    1996年に創業し、2011年にSaaS型の事業体に転換して以来、長年にわたりミッド・スモール企業を中心に勤怠管理システムを提供してきたが、近年はエンタープライズ企業(従業員規模1,000人以上の大企業)へのサービス提供に注力している。同事業の成長を本格化させるため、2023年11月にエンタープライズ領域に精通した新社長を迎えている。

     

    直近の決算状況

    エンタープライズ向けシステムを、約3年間の赤字計上を伴う形で集中的に開発した。同システム開発は無事完了し、今期から同事業の本格的な拡大フェーズに突入している。加えて、同システムの開発拠点であったシンガポール事業所の規模を大きく縮小した。今期は、Q2からそれに伴う固定費削減効果の発現も見込まれ、黒字化が加速する見通し。

     

    特徴と強み

    日本の複雑な法制度に対応した勤怠工数管理システムは、外資系のERPベンダー等が独自に開発・提供することが難しく、チームスピリットが提供する事業は、事実上の参入障壁に守られた形になっている。またその一方、国内SaaS系企業のほどんどが、複数の組織、拠点、勤務形態にまたがる勤怠・工数管理を実現するシステムを提供できていない中で、集中的な開発投資により、業界に先駆けてそうした形でのサービス提供を可能にした点が同社の大きな強みとなっている。 また、同社はセールスフォース、SAP、デロイトなどエンタープライズ企業に強いパートナー企業と、強固な関係性を構築している。この結果、SIerやERPベンダー、 コンサルティング・ファームなどが、大企業に対して外資系の大規模ERPシステムの導入を進める際、チームスピリットの勤怠・工数管理サービスとの併用を推奨する状況になっている点にも強みがある。

     

    成長戦略

    エンタープライズ企業に対する営業体制を強化すべく、人材採用を加速している。また、マルチプロダクト化を積極的に進め、多額のIT投資予算を持つエンタープライズ企業に対するクロスセルやアップセルの実現を目指す。マルチプロダクト化を進める上では、M&Aも積極的に活用する。2024年12月には、M&Aによる既存ソリューションの付加価値向上を図るべく、ワークライフログ株式会社の100%持分を買収し、完全子会社化した。今後も M&Aは、新規プロダクトの獲得に加え、既存事業とのシナジー効果を生む形も追求し、進める方針。

     

    株主還元策

    過年度の赤字による累損を抱え、配当可能利益がないため、直ちに配当や自社株買いを実施することは難しい状況。一方、黒字拡大が明確な中で、短期的にはそれ以外の選択肢による株主還元策の導入を検討している旨を表明している。

  • Q:貴社のビジネスモデルとサービスの特徴、強みなどを教えてください。

    A:弊社は、今後より深刻になることが見込まれる日本の労働供給量の不足という社会課題に対して、勤怠管理と工数管理のソリューション提供を通じた生産性向上という解決策の提供で貢献したいと考えています。弊社のシステムでは、従業員がどのような業務にどれだけの時間を使っているのかを詳細に記録し、分析することができます。このデータに基づいて、業務プロセスを改善したり、従業員の配置転換などを実施することで、生産性の向上を図ることができます。また、弊社のシステムは、複数の地域や拠点で、異なる働き方をしているグループ企業をまたいで、一気通貫で利用することができます。これは、多数のグループ企業を抱えるエンタープライズ企業にとって非常に重要な機能です。

     

    Q:エンタープライズ企業にフォーカスする理由を教えてください。

    A:エンタープライズ企業は、日本のIT投資の総予算の65%を占める存在です。導入を決めて頂くまでに時間がかかる傾向ありますが、一度導入されると長期的な利用が見込まれるという特徴があるため、長期的な視点で取り組んでいます。さらに、エンタープライズ企業との取引には、1対1の関係性だけでなく、その周辺企業と強固な関係性を築くことが重要です。弊社は、セールスフォース、SAP、デロイトなど、エンタープライズ企業を取り巻くグローバルなIT企業やコンサルティングファームと強固な関係性を築いています。

     

    Q:貴社の創業と現在のマネジメント体制に至った 経緯について教えてください。

    A:弊社は、1996年に荻島浩司氏によって創業されました。以降、長年にわたり、勤怠管理・工数管理のビジネスを展開してきましたが、未来に向けてはエンタープライズ企業へのフォーカスを強化していく必要性を認識しました。そこで、荻島前社長は自ら身を引き、エンタープライズ分野での経験とネットワークを持つ新社長を任命しました。

     

    Q:貴社の業績は現在黒字化し、次の目標へも順調に推移されているようですが、体制が整ってきたという見方でよろしいでしょうか。

    A:はい、その通りです。約3年かけてエンタープライズ企業向けシステムの開発を進めてきましたが、ようやく開発が完了し、これから本格的に事業を拡大していくフェーズに入りました。同開発拠点をシンガポールに置いていましたが、開発完了を受けて大きく縮小することを決定しました。これにより固定費が削減され、黒字化が加速する見込みです。

     

    Q:新規顧客の獲得に対する取り組みについて教えてください。

    A:エンタープライズ企業との取引を加速するために、組織体制の見直しを検討しています。必要な人材の採用を強化し、より効率的な営業体制を構築します。また、既存ソリューションの付加価値を高めるために、M&Aも活用しています。最近では、ワークライフログという会社を買収しました。この会社は、PCの稼働状況と連携した勤怠・工数の自動入力や、AIによる業務分析などを実現する技術を持っています。この買収により、ユーザーの入力の手間を削減することなどを通じて、既存ソリューションの付加価値を向上させ、既存事業全体の売上拡大に繋げることができます。

     

    Q:M&Aの戦略について教えてください。

    A:M&Aの活用を特定の領域に限定するつもりはありません。当社として将来的にやりたいことを実現できる企業があれば、M&Aの候補にする方針です。具体的には、当社はマルチプロダクト企業への進化を目指している中で、当社が現在提供していないプロダクトを持つ企業は、当然、有力なM&A候補先になります。もちろん、既存事業とのシナジー効果も重視しており、両方の視点からM&Aを積極的に活用していきます。

     

    Q:採用戦略について、方針や力を入れている点があれば教えてください。

    A:組織体制や報酬制度のあり方などを見直すことで、人材の採用を強化したいと考えています。株価が堅調に推移しだしているため、人材採用においてもそれを活用することなども検討しています。

     

    Q:今後海外に対する戦略、展開についてどのようにお考えでしょうか。

    A:当面は、日本市場にフォーカスしていきます。勤怠管理における日本の法制度は複雑で、グローバルな大手IT企業では対応しきれない状況です。むしろ、グローバルなIT企業からは、当社ソリューションを自社サービスと組合わせて提供したい、という相談を受けています。つまり、そこには弊社の強みがある訳で、このニッチな分野で最大限に力を発揮していきたいと考えています。

     

    Q:今後の株主還元策について、方針や戦略があれば教えてください。

    A:株主還元は積極的に行っていきたいと考えています。しかし、過年度の赤字により、現時点では配当可能利益がなく、直ちに配当や自社株買いを行うことは難しい状況です。一方、黒字化の流れは明確なので、短期的には、配当や自社株買いによらない第三の株主還元策の導入を検討しています。足元の取引高が、機関投資家に積極的に働きかけるには十分な水準ではないため、当面は個人投資家にフォーカスしたIR活動を積極的に行っていく方針です。

  • 取材者:貴社のビジネスモデルとサービスの特徴、強みなどを教えていただけますか。

    回答者: 弊社では、今後より深刻になることが見込まれる日本の労働供給量の不足という社会課題に対して、勤怠管理と工数管理のソリューション提供を通じた生産性向上という解決策の提供で貢献したいと考えています。 今後30年から40年で労働供給量は大幅に減少すると予想されており、人材の生産性向上は喫緊の課題です。勤怠管理において、 単に労働時間を記録するだけでは意味がなく、どのような仕事にどれだけの時間を使っているのかを把握することが重要です。 企業や部門の目標に直接つながらない仕事の時間を減らし、より重要な仕事に多くの時間を割くことで生産性を向上させることができます。 そのためには、何にどれだけの時間を使っているのか、業務の内容とそれに投下されている時間を可視化する必要があり、弊社の勤怠管理・工数管理システムはまさにそれを実現するソリューションです。 一般的な勤怠管理システムは、単に労働時間の開始と終了を記録するだけですが、それだけでは生産性向上にはつながりません。 弊社のシステムは、従業員がどのような業務にどれだけの時間を使っているのかを詳細に記録し、分析することができます。 このデータに基づいて、業務プロセスの改善や、従業員の配置転換などを実施することで、生産性向上を図ることができます。 また、弊社のシステムは、複数のグループ企業をまたいで利用することができます。 これは、大企業にとって非常に重要な機能です。 大企業は、多くの場合、複数のグループ会社や子会社を抱えており、それぞれの会社で異なるシステムを利用しているケースが少なくありません。 しかし、それではグループ全体で一気通貫した形での勤怠管理や工数管理が難しく、グループ全体での生産性の改善を進めることに繋がりません。 弊社のシステムであれば、グループ全体で共通のシステムを利用できるため、グループ全体で横比較が可能なデータを取得し、グループ全体の生産性向上を図ることができます。 実際、現在では提供してるライセンスの約半分がエンタープライズ向けとなっており、大企業からのニーズが高まっています。 大企業向けにSaaS型の勤怠工数管理サービスを提供できる企業は他にいないため、今後はこの分野に注力していきたいと考えています。 将来的には、勤怠管理や工数管理だけでなく、ワークロード分析、組織構築、オンボーディング、目標管理など、より幅広いサービスを提供することで、より大きな社会課題の解決に貢献できる企業を目指したいと考えています。

    回答者: エンタープライズ企業にフォーカスする理由としては、まず、日本のIT投資予算の65%をエンタープライズ企業が占めているという点があります。 また、エンタープライズ企業向けの勤怠工数管理システムは一度導入されると長期間利用される傾向があり、中には15年以上利用している例もあります。つまり、エンタープライズ企業との取引は、より長期的な収益計上を見込むことができます。一方で、エンタープライズ企業は、導入までに時間がかかるという傾向があります。 稟議プロセスや、ERPシステムとの連携など、さまざまな要素を考慮する必要があるため、導入までに2〜3年かかることも珍しくありません。 しかし、一度導入されると長期的な利用が見込めるため、長期的な視点で取り組むことができます。 さらに、エンタープライズ企業との取引には、1対1の関係性だけでなく、その周辺企業と強固な関係性を築くことが重要です。 弊社は、セールスフォース、SAP、デロイトなど、エンタープライズ企業を取り巻くグローバルなIT企業やコンサルティングファームと強固な関係性を築いています。例えば、SAPには、(日本における複雑な法制度対応が十分ではない)自社の勤怠ソリューションではなく、弊社のソリューションを推奨していただいています。このような関係性を築くことは容易ではありませんが、エンタープライズ企業との取引を中長期的に拡大していく上では、非常に重要な要素だと考えています。 こうしたパートナー企業の皆さんに「勤怠ソリューションはチームスピリットを使ってください」と言っていただける関係ができていることは、当社の大きな強みだと考えています。

    取材者:事業展開を進める上で他に考慮している要因はありますか。

    回答者: サービスの良さももちろん重要ですが、それ以外にも、エンタープライズ向けIT業界特有の「村社会」的な文化の存在もあります。 この業界では、人脈や信頼関係が非常に重要であり、この領域で25年近くの経験がある自分がCEOとなって、長年培ってきたネットワークを使った営業ができることは、他社にはない、大きな強みになると考えています。

    取材者: 貴社の創業と現在のマネジメント体制に至った経緯について教えていただけますか。

    回答者: 元々は、1996年に荻島浩司氏によって創業されました。 以降、長年にわたり、勤怠管理・工数管理のビジネスを展開してきましたが、未来に向けてはエンタープライズ企業へのフォーカスを強化していく必要性を認識しました。しかし、先ほどお話したような傾向や文化もある中で、既存の体制ではエンタープライズビジネスを大きく成長させることが難しいという課題に直面しました。 そこで、荻島前社長は自ら身を引き、エンタープライズ分野での経験とネットワークを持つ自分が新社長を拝命することになりました。

    取材者: ありがとうございます。 すみません、貴社の業績に関しましては、今黒字化されて、次の目標に向けても順調に推移されていると思いますが、しっかりとした体制が整ってきたから、というふうな見方でよろしいのでしょうか。

    回答者: はい、その通りだと思います。 エンタープライズ企業向けシステムを約3年の赤字計上を伴う形で、集中的に開発を進めてきましたが、その開発は無事に完了し、これから本格的に事業を拡大していくフェーズに入りました。 その開発拠点をシンガポールに置いていましたが、開発完了を受けて大きく縮小することを決定しました。 これにより固定費が削減され、黒字化が加速する見込みです。

    取材者: 新規顧客の獲得に対する取り組みなどはございますか。

    回答者: まず、エンタープライズ企業との取引を加速するために、組織体制の見直しを検討しています。 必要な人材の採用を強化し、より効率的な営業体制を構築します。 また、既存ソリューションの付加価値を高めるために、M&Aも活用しています。 最近では、ワークライフログという会社を買収しました。 この会社は、PCの稼働状況と連携した勤怠・工数の自動入力や、AIによる業務分析などを実現する技術を持っています。 この買収により、ユーザーの入力の手間を削減することなどを通じて、既存ソリューションの付加価値を向上させ、既存事業全体の売上拡大に繋げることができます。 非常に小規模なM&Aで、買収価格としては、1億円にも満たないのですが、買収による将来的なシナジー発揮のポテンシャルは大きいと思っています。このようなM&Aも通じて、顧客満足度を高め、さらなる顧客獲得を目指しています。

    取材者: やはりM&Aの戦略としては、新規事業をというよりは、シナジーがあるような形で、サービスの不自由な部分を補うというところが基本的な方針になってくるのでしょうか。

    回答者: M&Aは「出会い」だと思っているので、その活用を特定の領域に限定するつもりはありません。 当社として将来的にやりたいことを実現できる企業があれば、M&Aの候補になります。 具体的には、当社はマルチプロダクト企業への進化を目指している中で、当社が現在提供していないプロダクトを持つ企業は、当然、有力なM&A候補先です。もちろん、既存事業とのシナジー効果も重視しており、両方の視点からM&Aを積極的に活用していきます。 つまり、まずは何かしらの形で我々の事業に接点がある形を考えますが、我々が今はまだやってないけど、未来にやりたいと思っているものであれば、M&Aのターゲットにすることは断然あり得るかな、というふうにも思います。

    取材者: なるほど。 社長、営業人員増加などの話もあったのですが、採用面では、どの企業さんも苦労をされている中で、人材採用の戦略や育成に対する方針みたいなものはございますか。

    回答者: 先ほどお話した通り、現在、全社の組織体制をよりお客様本位な形に変えようと思っています。その新しい枠組みの中で採用も強化する方針なのですが、コンペンセーションのあり方も、大きく変えて良いのかな、と考えています。というのも、今、非常に株価が堅調になりつつあるものの、我々の今の株価水準は絶対値としては未だに非常に低いので、エクイティ・コンペンセーションを使った採用も大いに検討する価値があるだろうと考えています。

    取材者: グローバルトップ企業との強力な関係性は、どちらかというと日本向けの話だと思うのですが、今後、海外に対する戦略であったり展開についてはどのようにお考えでしょうか。

    回答者: 当面、当社は日本事業にフォーカスする方針だと思っていただいて構いません。 エンタープライズ向けのマーケットは、外資のERPベンダーも強い領域です。 多くの日本の大企業は、Oracleやセールスフォースを導入しています。 しかしなぜ外資系のプレイヤーが勤怠や工数の領域に入ってこないかというと、日本の法制度が複雑で、細やかな対応が必要だからです。日本固有の法制度だったり、やり方、仕組み、慣習だったりすると、グローバルトップ企業はそれに合わせにはいけない、という話になるわけです。 そこに我々のニッチさというか、ユニークさがあると思っていて、そこを我々最大限活かしたいと思っています。 日本でビジネスをやる以上は、日本の法制度に対応しなければいけません。 でも、グローバルERPベンダー、グローバルなトップIT企業は、自分でやりたいけどやり切れない。 そういう中で、我々は非常にフレキシブルに対応できており、むしろERPベンダーを含むグローバルなIT企業から、我々のソリューションと彼らのサービスを組み合わせて提供したい、という相談を受けています。つまり、今後、彼らが日本でのビジネスを拡大すると、それに合わせて我々のビジネスも拡大するという関係性が出来ており、今後、そこをさらに追求していきたいなと思います。

    一方、海外での取り組みは、日本企業が海外でビジネス展開をしていて、その海外にいる従業員の勤怠とか工数管理を日本と同じようにやりたいですっていうニーズが出たら、これは受注していきたいな、と思います。 しかしメインにはなり得ないとは思っており、当面はまだまだ日本の国内でやれること、やるべきことが多すぎるので、そこにフォーカスをしていきたいと考えています。

    取材者:今後の株主還元策につきまして、方針や戦略を教えていただけますか。

    回答者: 株主還元は積極的に実施していきたいと思っています。 しかし数年間にわたって当期利益は赤字だったので、今、バランスシート上には、配当可能利益がありません。 つまり、累損が一掃されるまで、配当も自社株買いも基本的にはできない、という状況です。そうした中で、配当や自社株取得以外の方法での株主還元策を導入しようと思っています。というのも、我々は機関投資家にちゃんと持って頂けるようになりたいのですが、取引高が小さすぎて機関投資家に積極的に売買される銘柄になれていません。それを解決するために、まず株主還元策の導入を通じて個人投資家からのフォーカスを増し、取引高を押し上げていくことを検討しています。 今後の決算発表の場などで、より具体的な話ができればと考えていますので、正式発表までお待ちいただければと思います。現時点では、機関投資家の皆さんとお話する際、当社は配当だとか自社株買いでない形、つまり第3の形での株主還元の早期実現を検討しています、という説明をしています。

    回答者:IR戦略としては、株主構成を変えていきたい、もちろん機関投資家を増やしたいという思いはあります。ただ、お話した通りの状況なので、あえてここ1年ぐらいは個人投資家に完全にフォーカスしたいと思っています。これまでも個人投資家向けに、非常に丁寧なIRをしてきたのですが、どちらかといえば既にお持ち頂いている個人投資家への対応が主でした。しかし、株価やトレーディングボリュームを高めることを意図する、既存の個人の方だけだと限界があり、新しい個人投資家がどんどん入ってくるようにしたいと思っています。そのためには、会社のことを知らない、見たことも聞いたこともないという人に、この会社は面白いな、世の中的にも意義があるな、と思ってもらえることが、スタートポイントだと思っています。したがって、今期Q1から、かなりドラスチックにIR資料の内容やIR活動の手法も変えてみたところです。 今後も証券会社等が主催する個人向けの投資セミナーやイベントに、積極的に参加しようと思っています。幸い、今年は黒字化を見込んでいるので、個人投資家の方々にとっても安心して投資していただける先になるのではないと思っています。

    取材者:第1四半期が終わったばかりではありますが、取り組まれていることであったり、業績に関わらずトピックス的なものがあったら教えていただけますか。

    回答者: エンタープライズ領域の顧客企業は、意思決定が早くはありません。従来、ミッド・スモールのお客さんを相手にしてきた時は、社長を説けば2ヶ月後に導入という世界もありましたが、エンタープライズはそうではありません。 導入が決まるまでに、2年とか3年かかることも普通です。 導入が決まっても、実際にプロジェクトとしてローンチするには、さらにそこから1年、2年かかることもあります。 この第1四半期もそうだったのですが、ローンチするはずだったものが、半年後にずれますという話が、日常茶飯事になっています。そうした状況なので、あまり四半期ごとの業績の良し悪しに左右されないでいただきたいと思っています。 会社の方向性としては正しい方向に歩んでいるという自信はあり、グローバルなIT企業とのパートナー関係など、一朝一夕に真似されることのない構造的な強みも確かにあるので、安心して見ておいていただきたいと思います。とはいえ、足元の状況が心配な投資家の皆様も多いとは思うので、会社としては可能な範囲で、先行指標となるようなデータポイントを積極的に開示していきたいと考えています。例えば、商談件数や規模が、1年前と比べて何倍になっているか、などでしょうか。そうした点をきちんとお伝えできるようなIR活動をやっていきたいと思っています。

    回答者: 今、非常に大きなチャンスがきていると思っていますし、投資家の皆さまにも訴求できるタイミングだなと思っています。 四半期ごとのIR活動に留まらず、ポジティブなニュースをできるだけ多く、日常的に積極的に開示していきたいと思います。

  • 執行役員CFO 兼 コーポレート統括本部担当 高橋亮様

チームスピリット_logo1.png

(株)チームスピリット

東証GRT 4397

決算:8月末日

CP&X


【2025年8月期(通期)】

決算概要

2025年8月期決算は増収・増益で着地。売上高は前年同期比11.3%増の4,922百万円、営業利益269百万円、当期純利益362百万円と、修正後の目標を達成する好調な進捗。好業績の要因は、エンタープライズビジネスの拡大による粗利増加と、シンガポール事業の縮小(実質的な撤退)および日本事業の効率化によるコスト削減の2点。特に、ここ数年注力してきたエンタープライズビジネスへの取り組みが「花開き始め」たことが、売上伸長および利益貢献を具現化した結果。


セグメント別または事業別の増減要因

従来のミッド・スモール顧客中心からエンタープライズ顧客へのビジネスシフトが、2025年8月期に目に見える形で進み、売上高およびARRの伸長に貢献。具体的には、日本の労働基準法要件に合致しない外資系大規模ERPベンダーとの連携や、システム入れ替えを控える顧客を持つコンサルティングファーム経由での案件獲得が、営業効率がとても高い売上の提供源として具現化した。また、エンタープライズ企業が求める独自要件に対応するため、SaaSのFit to Standardの姿勢ではなく、顧客に合わせたアジャストメント、アップデート、改変を多様な形にするシステム開発を、競合他社に先んじて、3年間の赤字を伴う大規模開発を通じて既に実行している点も大きなアドバンテージ。


主要KPIの進捗と変化

エンタープライズビジネスの着実な開花に伴い、売上高だけでなくARRも目に見える形で伸長している状況。また、エンタープライズのお客様における新規顧客(New LOGO)の公表を毎四半期継続しており、これがビジネスの好調な進捗を示す重要な指標。


季節性・一過性要因の有無と影響

シンガポールビジネスの実質的なシャットダウンを実施したことで、固定費の大きな削減効果を創出。また、2025年8月期の黒字転換に伴い税効果を取り込んだ結果、当期純利益を修正予算から約1億円上乗せて着地し、繰越損失の圧縮に寄与。


通期見通しと進捗率・達成可能性

2026年8月期はエンタープライズ主導で増収増益を想定。今期は、花開き始めたエンタープライズビジネスの満開度合いが四分咲き、五分咲きとさらに上昇することで、売上の伸長ペースが再加速し、利益も大きく拡大することを想定。この伸長ペースの再加速は、エンタープライズビジネスの昨対25%超の力強いARR伸長が、連結全社の売上の昨対伸長率を押し上げることによって起きている。なお、2026年8月期末には利益剰余金のマイナスは解消する見通しだが、当社は本年11月末の株主総会で「資本政策の柔軟性及び機動的を確保」するために「減資」を行う決議を予定しており、これによって利益剰余金のマイナスの解消(=配当可能利益の創出)が想定よりも1年早く実現する可能性が出てきている。


トピックス

2027年に40年ぶりの労働基準法の大改正が控えており、そこで求められる内容を実現するためにはITシステム化された勤怠管理ツールが必須となる見込みである中、再び追い風を受ける機会として今年度はその訴求を強化していく方針。既に順調な引き合いや導入の話が具体化しているほか、多様な売り方を実現するため様々なパートナーとのアライアンス組成を進め、そのうちいくつかのアライアンス先とは具体的なプレスリリース出すまでに至っている。また、社内では2025年8月期にリリースした複数の新しいプロダクトの拡販に向けた取り組みも進んでいる。株主還元については、2026年8月期での繰越損失ほぼ解消後を見据え、配当可能利益を用いた自社株買いや配当の可能性について、今期中に議論を進める方針と聴取していたが、上述の通り、その後の「減資」議案に係るプレスリリースにより、そのタイミングが約1年前倒しになる可能性が出てきており、議決のゆくえが着目される。

取材アーカイブ

  • 決算概要

    2025年第3四半期は増収増益。売上高は35億5,617万円となり、前年同期比で+8.4%の増加を達成。営業利益は2億6,808万円と過去3年で最高益を更新し、黒字拡大が加速。これはエンタープライズ領域での複数の大口商談の受注とシンガポール子会社の固定費削減、費用効率化の効果が発現したことが主要因。

    セグメント別または事業別の増減要因

    エンタープライズセグメントでは、大手公益法人を始めとした複数の大型商談の受注により、ARR・ライセンス数は大幅に伸長。

    主要KPIの進捗と変化

    ARRはQ3単独で+2.1億円の純増となり、四半期ベースでは過去最大の純増幅となった。Q3までの累計では+3.7億円のARR純増となり、通年の目標レンジの下限である5億円に対して74%まで進捗した。これはエンタープライズ領域で新規の大口商談を複数受注できたことが主要因で、エンタープライズ領域のARRは昨対で+22%増と大幅に伸長している。

    解約率は、0.41%と引き続き低水準を維持している。

    季節性・一過性要因の有無と影響

    大企業においては、システム導入の意思決定プロセスに時間を要するため、商談が従来対比で長期化している。加えて、稼働開始の時期は新年度期初の4月ではなく、5月以降になることが多く、当社としての売上計上開始は、当社の第3四半期や第4四半期に偏重する傾向が見られる。今期はこの傾向が顕著であり、第1・2四半期よりは、第3・4四半期にそのパフォーマンスが示されている/示される見込み。

    通期見通しと進捗率・達成可能性

    期初の業績目標に対して、第3四半期までの営業利益の進捗率は178.7%と大幅な超過達成となっている。一方で第4四半期は、期末賞与や株主優待引当金の計上に加えて、来期以降の成長のための戦略投資をやり切る方針であるため、損益トントンでの着地を見込む。以上を踏まえ、通期での利益目標を営業利益2.6億円、経常利益2.7億円、当期利益2.2億円にそれぞれ上方修正を行った。

    トピックス

    複数のエンタープライズ企業での受注が進み、利用ユーザー数は60万ユーザーを突破。

    5月22日にプレスリリースの通り、米国を本拠とし人事・財務・プランニングなどの業務の統合管理SaaS企業であるWorkday社と、イノベーションパートナー契約を締結し、協業を開始。エンタープライズ領域における更なる売上拡大に繋がる取組みになると期待される。

  • Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?

    A:基本戦略は大きく2つあり、一つ目は市場浸透をゴールとしたGo-To Market戦略、二つ目はプロダクト戦略です。

    Go-To Market戦略としては、エンタープライズ、ミッド、スモールのすべてのセグメントを対象として、強いコアプロダクト(=勤怠管理)で「更なる市場浸透」の実現を目指します。

    二つ目のプロダクト戦略としては、コアプロダクトを軸に、Salesforceプラットフォーム上で、複数の製品を開発し市場投入していくことで、スピーディに「マルチプロダクト展開」を行っていくことを目指します。

    マルチプロダクト展開の詳細については、弊社のIRサイトに公開されている「2025年8月期 第2四半期 決算説明資料及び2025年8月期に係る株主還元策のご案内」をご覧ください。

    Go-To Market戦略の主要な柱である「エンタープライズ戦略」における重点領域の一つがアライアンス活動であり、その詳細は以下の通りです:

    • スモール・ミッド市場では東京ビッグサイトで行われるような大型展示会や、ネットやデジタルを通じたマーケティング活動から商談が創出される割合が多い一方、エンタープライズ市場で同様のアプローチを行なっても、必ずしも効果が上がる訳ではありません

    • なぜなら、エンタープライズのお客さまは長年お付き合いをしている信頼する会社、例えばソフトウェア会社やクラウド事業者、SI会社やコンサルティングファームなどから提案される情報に信頼を置いているからです。もう一段、現場感を持ってお伝えすると、会社レベルのみならず、各社にいる"やり手"の営業担当や敏腕プロジェクトマネージャー、そうした方々が昇進して要職に就いたエグゼクティブの方などと個人単位で長年の信頼関係を築きながらお付き合いし、情報提供や提案を受けています。こうした、信頼を受けている会社や個人の方々から、いかにチームスピリットを紹介し、提案してもらうかがアライアンス活動の基本形であり、私どものエンタープライズ戦略における商談創出活動の柱です

    • 実際に、エンタープライズ領域におけるでは、まず昨年度FY24と今年度FY25を比較して、受注総額自体が2.4倍に増えています。また各年度の内訳をみると、アライアンス活動から創出された商談の割合が、昨年度FY24が48.1%だったのに対して、今年度FY25では63.1%と、その割合も増え、金額ベースでも3.1倍と増加しています

    • このようなアライアンス活動の具体として、当社では、SalesforceやSAP、WorkdayといったグローバルERPベンダーとの協業関係を構築している他、デロイトのような大手コンサルティングとの協業関係を構築しています

    Q:通期予想の実現に向けた戦略と施策についてご説明ください。

    A:足元では上記の通り、引き続きエンタープライズ領域におけるアライアンス活動の結果として、複数の大口商談が同時進行しています。Q4の残りの期間で、8月の決算期末に向けて、このような大口商談を含め、個別商談の確実な受注を目指して活動を重ねていくことで、その実現を目指す方針です。

     

    Q:受注・競合状況についてご説明ください。

    A:SaaS型の勤怠管理サービスを提供している他社の多くは、中小・中堅企業向けのスモール・ミッド市場に注力しています。一方、大企業向けのエンタープライズ市場では、従来型のオンプレミス型の勤怠管理製品を提供する企業が、市場のほとんどを占めています。

    そうした状況の中で当社は、これまでご説明してきたようなアライアンス活動の結果として、エンタープライズ領域においてSaaS型での勤怠管理サービスを提供するというユニークなポジションを確立しました。これは当社が、エンタープライズ市場における参入障壁の構築に成功しているから実現できているものです。

    エンタープライズ市場での潜在的な競合相手は、大企業に強い外資のERPベンダー企業や国内のSaaS各社です。

    まず、国内SaaS企業に対して当社は、エンタープライズに特化した製品を3年間の赤字計上を経て開発、提供することで競争優位を確立しています。コンピュータの世界で、大企業が求めるような大規模で複雑な処理を、パフォーマンス性能を維持しながら実現するには高い技術力が求められるからです。これが、国内SaaS企業を中心とした競合他社がなかなか追いつけない領域となっている理由です。

    また、大企業でよく使われているSalesforceのプラットフォーム上で製品提供している点もセキュリティなどの信頼性を高めており、この点も国内SaaS企業に対して比較優位が確立できている理由です。

    他方、外資のERPベンダーに対して当社は、各社のERPソリューションと当社プロダクトの連携を進めることで、競合相手ではなく協業相手というポジショニングを確立する戦略を取っています。具体的には、当社が外資企業が対応し得ない日本の法制度への細やかな対応をしている中で、グローバルなCRP/ERPトップ企業が、日本においては自社の勤怠モジュールではなくTeamSpiritの勤怠管理を第一推奨とし、自社プロダクトと組み合わせて使うという関係性を構築しました。但し、こうした関係性はどんな企業でも容易に確立できる訳ではなく、一般に後発の企業は不利になると考えています。

    以上を総合して、当社は国内SaaS他社が容易には成功し得ない形を創出できている、すなわちエンタープライズ領域での参入障壁を築くことが出来ているものと考えています。

     

    Q:M&A、業務提携の実施または検討状況と、それに伴う影響についてご説明ください。

    A:いくつかのM&A案件の検討が進んでいます。

    M&Aを活用する領域としては、2つの方向性を追求しています。

    一つは、先日発表したワークライフログのように、既存の我々のビジネスの付加価値を向上させていくような「機能的な拡充」あるいは、「付加価値の増大」を実現するようなM&Aです。

    もう一つは、上記の基本戦略の1つとして挙げたマルチプロダクト化を進める上で、我々としてまだやれていないが、将来的には進出していきたい領域において既に取り組んでいる企業とM&Aです。そうしたM&Aができると、「時間を買う」という意味でも、非常に効果的と考えています。

    当社として、今後のM&Aの活用は、この2つの軸で進めていきたいと思っています。

     

    Q:中期経営計画の内容や進捗状況等をご説明ください。

    A:中期ビジョンとして、2030/8期にARR 100億円の達成を目指しています。

    その実現に向けては、a) 揺るがないニーズがある勤怠管理で着実に数字を積み上げ、b)それを大企業であるエンタープライズに展開して行くことで成長戦略の最大のドライバーとする方針です。またそのためにアライアンス・パートナー企業との取り組みを加速させていきます。

    さらに、c)新しい製品領域として日本人が得意な「チーム力」を強化する分野にフォーカスを行い、加えてd)AIなどの新技術や新サービスはM&Aなどを通じて積極的に拡充します。

    2025年8月期については、ARRや売上高はほぼ期初計画通り着地し、利益は期初計画を大きく上振れて着地する見込みであることから、上記の中期ビジョンの実現へ向けて良いスタートが切れたと考えています。

     

    Q:株主還元の方針をご説明ください。

    当社は、過去の成長投資に伴う赤字計上により、現時点においてバランスシート上の利益剰余金がマイナスとなっているため、配当や自社株買いができない状況です。しかし、今後、着実な利益の拡大が見込まれる中で、2025年8月期第2四半期の決算発表に際して、今期末からポイント制優待制度を導入することを発表しました。

    今期分の優待ポイントの進呈対象になるのは、今期末時点、すなわち8月31 日時点の株主名簿に名前が載っている方です。 この条件を満たした株主の方に対して、当社は優待ポイントを付与し、付与された株主の方は、商品等との交換が可能になるという仕組みです。 加えて、チームスピリットプレミアム優待倶楽部に会員登録をして頂いた会員株主の方は、付与されたポイントをより多くの商品等と交換することができるようになります。また、このプラットフォームをご提供頂いているWILLS社の「WILLs Coin」に交換すると、同社が提供している他のこの制度を使った株主還元のポイントと合算して、より高額な商品等と交換することも可能になります。

    機関投資家層の拡大を実現するため取引高の拡大が必須という整理の下で、本株主優待制度の導入などを通じ、個人株主による当社株式取引の活発化を図っていく方針です。

  • IR担当

取材アーカイブ

  • CP&X

     

    ビジネスモデルおよび事業内容

    チームスピリットは、顧客企業勤怠管理と工数管理をSaaS型システムを通じて提供するサービスを主な業務としている。単に始業・終業時間を記録するだけでなく、従業員が勤務時間中、どのような業務に、どれだけの時間を使っているのかを可視化し、業務の改善・効率化、生産性の向上まで支援することが可能な点に特色がある。さらに今後は、ワークログ分析などを通じたデータ経営力の強化や、同データを採用や目標管理などで活用することによるチーム経営力の強化までを実現するTeam Success Platformに進化することを目指している。

     

    創業の経緯と転機

    1996年に創業し、2011年にSaaS型の事業体に転換して以来、長年にわたりミッド・スモール企業を中心に勤怠管理システムを提供してきたが、近年はエンタープライズ企業(従業員規模1,000人以上の大企業)へのサービス提供に注力している。同事業の成長を本格化させるため、2023年11月にエンタープライズ領域に精通した新社長を迎えている。

     

    直近の決算状況

    エンタープライズ向けシステムを、約3年間の赤字計上を伴う形で集中的に開発した。同システム開発は無事完了し、今期から同事業の本格的な拡大フェーズに突入している。加えて、同システムの開発拠点であったシンガポール事業所の規模を大きく縮小した。今期は、Q2からそれに伴う固定費削減効果の発現も見込まれ、黒字化が加速する見通し。

     

    特徴と強み

    日本の複雑な法制度に対応した勤怠工数管理システムは、外資系のERPベンダー等が独自に開発・提供することが難しく、チームスピリットが提供する事業は、事実上の参入障壁に守られた形になっている。またその一方、国内SaaS系企業のほどんどが、複数の組織、拠点、勤務形態にまたがる勤怠・工数管理を実現するシステムを提供できていない中で、集中的な開発投資により、業界に先駆けてそうした形でのサービス提供を可能にした点が同社の大きな強みとなっている。 また、同社はセールスフォース、SAP、デロイトなどエンタープライズ企業に強いパートナー企業と、強固な関係性を構築している。この結果、SIerやERPベンダー、 コンサルティング・ファームなどが、大企業に対して外資系の大規模ERPシステムの導入を進める際、チームスピリットの勤怠・工数管理サービスとの併用を推奨する状況になっている点にも強みがある。

     

    成長戦略

    エンタープライズ企業に対する営業体制を強化すべく、人材採用を加速している。また、マルチプロダクト化を積極的に進め、多額のIT投資予算を持つエンタープライズ企業に対するクロスセルやアップセルの実現を目指す。マルチプロダクト化を進める上では、M&Aも積極的に活用する。2024年12月には、M&Aによる既存ソリューションの付加価値向上を図るべく、ワークライフログ株式会社の100%持分を買収し、完全子会社化した。今後も M&Aは、新規プロダクトの獲得に加え、既存事業とのシナジー効果を生む形も追求し、進める方針。

     

    株主還元策

    過年度の赤字による累損を抱え、配当可能利益がないため、直ちに配当や自社株買いを実施することは難しい状況。一方、黒字拡大が明確な中で、短期的にはそれ以外の選択肢による株主還元策の導入を検討している旨を表明している。

  • Q:貴社のビジネスモデルとサービスの特徴、強みなどを教えてください。

    A:弊社は、今後より深刻になることが見込まれる日本の労働供給量の不足という社会課題に対して、勤怠管理と工数管理のソリューション提供を通じた生産性向上という解決策の提供で貢献したいと考えています。弊社のシステムでは、従業員がどのような業務にどれだけの時間を使っているのかを詳細に記録し、分析することができます。このデータに基づいて、業務プロセスを改善したり、従業員の配置転換などを実施することで、生産性の向上を図ることができます。また、弊社のシステムは、複数の地域や拠点で、異なる働き方をしているグループ企業をまたいで、一気通貫で利用することができます。これは、多数のグループ企業を抱えるエンタープライズ企業にとって非常に重要な機能です。

     

    Q:エンタープライズ企業にフォーカスする理由を教えてください。

    A:エンタープライズ企業は、日本のIT投資の総予算の65%を占める存在です。導入を決めて頂くまでに時間がかかる傾向ありますが、一度導入されると長期的な利用が見込まれるという特徴があるため、長期的な視点で取り組んでいます。さらに、エンタープライズ企業との取引には、1対1の関係性だけでなく、その周辺企業と強固な関係性を築くことが重要です。弊社は、セールスフォース、SAP、デロイトなど、エンタープライズ企業を取り巻くグローバルなIT企業やコンサルティングファームと強固な関係性を築いています。

     

    Q:貴社の創業と現在のマネジメント体制に至った 経緯について教えてください。

    A:弊社は、1996年に荻島浩司氏によって創業されました。以降、長年にわたり、勤怠管理・工数管理のビジネスを展開してきましたが、未来に向けてはエンタープライズ企業へのフォーカスを強化していく必要性を認識しました。そこで、荻島前社長は自ら身を引き、エンタープライズ分野での経験とネットワークを持つ新社長を任命しました。

     

    Q:貴社の業績は現在黒字化し、次の目標へも順調に推移されているようですが、体制が整ってきたという見方でよろしいでしょうか。

    A:はい、その通りです。約3年かけてエンタープライズ企業向けシステムの開発を進めてきましたが、ようやく開発が完了し、これから本格的に事業を拡大していくフェーズに入りました。同開発拠点をシンガポールに置いていましたが、開発完了を受けて大きく縮小することを決定しました。これにより固定費が削減され、黒字化が加速する見込みです。

     

    Q:新規顧客の獲得に対する取り組みについて教えてください。

    A:エンタープライズ企業との取引を加速するために、組織体制の見直しを検討しています。必要な人材の採用を強化し、より効率的な営業体制を構築します。また、既存ソリューションの付加価値を高めるために、M&Aも活用しています。最近では、ワークライフログという会社を買収しました。この会社は、PCの稼働状況と連携した勤怠・工数の自動入力や、AIによる業務分析などを実現する技術を持っています。この買収により、ユーザーの入力の手間を削減することなどを通じて、既存ソリューションの付加価値を向上させ、既存事業全体の売上拡大に繋げることができます。

     

    Q:M&Aの戦略について教えてください。

    A:M&Aの活用を特定の領域に限定するつもりはありません。当社として将来的にやりたいことを実現できる企業があれば、M&Aの候補にする方針です。具体的には、当社はマルチプロダクト企業への進化を目指している中で、当社が現在提供していないプロダクトを持つ企業は、当然、有力なM&A候補先になります。もちろん、既存事業とのシナジー効果も重視しており、両方の視点からM&Aを積極的に活用していきます。

     

    Q:採用戦略について、方針や力を入れている点があれば教えてください。

    A:組織体制や報酬制度のあり方などを見直すことで、人材の採用を強化したいと考えています。株価が堅調に推移しだしているため、人材採用においてもそれを活用することなども検討しています。

     

    Q:今後海外に対する戦略、展開についてどのようにお考えでしょうか。

    A:当面は、日本市場にフォーカスしていきます。勤怠管理における日本の法制度は複雑で、グローバルな大手IT企業では対応しきれない状況です。むしろ、グローバルなIT企業からは、当社ソリューションを自社サービスと組合わせて提供したい、という相談を受けています。つまり、そこには弊社の強みがある訳で、このニッチな分野で最大限に力を発揮していきたいと考えています。

     

    Q:今後の株主還元策について、方針や戦略があれば教えてください。

    A:株主還元は積極的に行っていきたいと考えています。しかし、過年度の赤字により、現時点では配当可能利益がなく、直ちに配当や自社株買いを行うことは難しい状況です。一方、黒字化の流れは明確なので、短期的には、配当や自社株買いによらない第三の株主還元策の導入を検討しています。足元の取引高が、機関投資家に積極的に働きかけるには十分な水準ではないため、当面は個人投資家にフォーカスしたIR活動を積極的に行っていく方針です。

  • 取材者:貴社のビジネスモデルとサービスの特徴、強みなどを教えていただけますか。

    回答者: 弊社では、今後より深刻になることが見込まれる日本の労働供給量の不足という社会課題に対して、勤怠管理と工数管理のソリューション提供を通じた生産性向上という解決策の提供で貢献したいと考えています。 今後30年から40年で労働供給量は大幅に減少すると予想されており、人材の生産性向上は喫緊の課題です。勤怠管理において、 単に労働時間を記録するだけでは意味がなく、どのような仕事にどれだけの時間を使っているのかを把握することが重要です。 企業や部門の目標に直接つながらない仕事の時間を減らし、より重要な仕事に多くの時間を割くことで生産性を向上させることができます。 そのためには、何にどれだけの時間を使っているのか、業務の内容とそれに投下されている時間を可視化する必要があり、弊社の勤怠管理・工数管理システムはまさにそれを実現するソリューションです。 一般的な勤怠管理システムは、単に労働時間の開始と終了を記録するだけですが、それだけでは生産性向上にはつながりません。 弊社のシステムは、従業員がどのような業務にどれだけの時間を使っているのかを詳細に記録し、分析することができます。 このデータに基づいて、業務プロセスの改善や、従業員の配置転換などを実施することで、生産性向上を図ることができます。 また、弊社のシステムは、複数のグループ企業をまたいで利用することができます。 これは、大企業にとって非常に重要な機能です。 大企業は、多くの場合、複数のグループ会社や子会社を抱えており、それぞれの会社で異なるシステムを利用しているケースが少なくありません。 しかし、それではグループ全体で一気通貫した形での勤怠管理や工数管理が難しく、グループ全体での生産性の改善を進めることに繋がりません。 弊社のシステムであれば、グループ全体で共通のシステムを利用できるため、グループ全体で横比較が可能なデータを取得し、グループ全体の生産性向上を図ることができます。 実際、現在では提供してるライセンスの約半分がエンタープライズ向けとなっており、大企業からのニーズが高まっています。 大企業向けにSaaS型の勤怠工数管理サービスを提供できる企業は他にいないため、今後はこの分野に注力していきたいと考えています。 将来的には、勤怠管理や工数管理だけでなく、ワークロード分析、組織構築、オンボーディング、目標管理など、より幅広いサービスを提供することで、より大きな社会課題の解決に貢献できる企業を目指したいと考えています。

    回答者: エンタープライズ企業にフォーカスする理由としては、まず、日本のIT投資予算の65%をエンタープライズ企業が占めているという点があります。 また、エンタープライズ企業向けの勤怠工数管理システムは一度導入されると長期間利用される傾向があり、中には15年以上利用している例もあります。つまり、エンタープライズ企業との取引は、より長期的な収益計上を見込むことができます。一方で、エンタープライズ企業は、導入までに時間がかかるという傾向があります。 稟議プロセスや、ERPシステムとの連携など、さまざまな要素を考慮する必要があるため、導入までに2〜3年かかることも珍しくありません。 しかし、一度導入されると長期的な利用が見込めるため、長期的な視点で取り組むことができます。 さらに、エンタープライズ企業との取引には、1対1の関係性だけでなく、その周辺企業と強固な関係性を築くことが重要です。 弊社は、セールスフォース、SAP、デロイトなど、エンタープライズ企業を取り巻くグローバルなIT企業やコンサルティングファームと強固な関係性を築いています。例えば、SAPには、(日本における複雑な法制度対応が十分ではない)自社の勤怠ソリューションではなく、弊社のソリューションを推奨していただいています。このような関係性を築くことは容易ではありませんが、エンタープライズ企業との取引を中長期的に拡大していく上では、非常に重要な要素だと考えています。 こうしたパートナー企業の皆さんに「勤怠ソリューションはチームスピリットを使ってください」と言っていただける関係ができていることは、当社の大きな強みだと考えています。

    取材者:事業展開を進める上で他に考慮している要因はありますか。

    回答者: サービスの良さももちろん重要ですが、それ以外にも、エンタープライズ向けIT業界特有の「村社会」的な文化の存在もあります。 この業界では、人脈や信頼関係が非常に重要であり、この領域で25年近くの経験がある自分がCEOとなって、長年培ってきたネットワークを使った営業ができることは、他社にはない、大きな強みになると考えています。

    取材者: 貴社の創業と現在のマネジメント体制に至った経緯について教えていただけますか。

    回答者: 元々は、1996年に荻島浩司氏によって創業されました。 以降、長年にわたり、勤怠管理・工数管理のビジネスを展開してきましたが、未来に向けてはエンタープライズ企業へのフォーカスを強化していく必要性を認識しました。しかし、先ほどお話したような傾向や文化もある中で、既存の体制ではエンタープライズビジネスを大きく成長させることが難しいという課題に直面しました。 そこで、荻島前社長は自ら身を引き、エンタープライズ分野での経験とネットワークを持つ自分が新社長を拝命することになりました。

    取材者: ありがとうございます。 すみません、貴社の業績に関しましては、今黒字化されて、次の目標に向けても順調に推移されていると思いますが、しっかりとした体制が整ってきたから、というふうな見方でよろしいのでしょうか。

    回答者: はい、その通りだと思います。 エンタープライズ企業向けシステムを約3年の赤字計上を伴う形で、集中的に開発を進めてきましたが、その開発は無事に完了し、これから本格的に事業を拡大していくフェーズに入りました。 その開発拠点をシンガポールに置いていましたが、開発完了を受けて大きく縮小することを決定しました。 これにより固定費が削減され、黒字化が加速する見込みです。

    取材者: 新規顧客の獲得に対する取り組みなどはございますか。

    回答者: まず、エンタープライズ企業との取引を加速するために、組織体制の見直しを検討しています。 必要な人材の採用を強化し、より効率的な営業体制を構築します。 また、既存ソリューションの付加価値を高めるために、M&Aも活用しています。 最近では、ワークライフログという会社を買収しました。 この会社は、PCの稼働状況と連携した勤怠・工数の自動入力や、AIによる業務分析などを実現する技術を持っています。 この買収により、ユーザーの入力の手間を削減することなどを通じて、既存ソリューションの付加価値を向上させ、既存事業全体の売上拡大に繋げることができます。 非常に小規模なM&Aで、買収価格としては、1億円にも満たないのですが、買収による将来的なシナジー発揮のポテンシャルは大きいと思っています。このようなM&Aも通じて、顧客満足度を高め、さらなる顧客獲得を目指しています。

    取材者: やはりM&Aの戦略としては、新規事業をというよりは、シナジーがあるような形で、サービスの不自由な部分を補うというところが基本的な方針になってくるのでしょうか。

    回答者: M&Aは「出会い」だと思っているので、その活用を特定の領域に限定するつもりはありません。 当社として将来的にやりたいことを実現できる企業があれば、M&Aの候補になります。 具体的には、当社はマルチプロダクト企業への進化を目指している中で、当社が現在提供していないプロダクトを持つ企業は、当然、有力なM&A候補先です。もちろん、既存事業とのシナジー効果も重視しており、両方の視点からM&Aを積極的に活用していきます。 つまり、まずは何かしらの形で我々の事業に接点がある形を考えますが、我々が今はまだやってないけど、未来にやりたいと思っているものであれば、M&Aのターゲットにすることは断然あり得るかな、というふうにも思います。

    取材者: なるほど。 社長、営業人員増加などの話もあったのですが、採用面では、どの企業さんも苦労をされている中で、人材採用の戦略や育成に対する方針みたいなものはございますか。

    回答者: 先ほどお話した通り、現在、全社の組織体制をよりお客様本位な形に変えようと思っています。その新しい枠組みの中で採用も強化する方針なのですが、コンペンセーションのあり方も、大きく変えて良いのかな、と考えています。というのも、今、非常に株価が堅調になりつつあるものの、我々の今の株価水準は絶対値としては未だに非常に低いので、エクイティ・コンペンセーションを使った採用も大いに検討する価値があるだろうと考えています。

    取材者: グローバルトップ企業との強力な関係性は、どちらかというと日本向けの話だと思うのですが、今後、海外に対する戦略であったり展開についてはどのようにお考えでしょうか。

    回答者: 当面、当社は日本事業にフォーカスする方針だと思っていただいて構いません。 エンタープライズ向けのマーケットは、外資のERPベンダーも強い領域です。 多くの日本の大企業は、Oracleやセールスフォースを導入しています。 しかしなぜ外資系のプレイヤーが勤怠や工数の領域に入ってこないかというと、日本の法制度が複雑で、細やかな対応が必要だからです。日本固有の法制度だったり、やり方、仕組み、慣習だったりすると、グローバルトップ企業はそれに合わせにはいけない、という話になるわけです。 そこに我々のニッチさというか、ユニークさがあると思っていて、そこを我々最大限活かしたいと思っています。 日本でビジネスをやる以上は、日本の法制度に対応しなければいけません。 でも、グローバルERPベンダー、グローバルなトップIT企業は、自分でやりたいけどやり切れない。 そういう中で、我々は非常にフレキシブルに対応できており、むしろERPベンダーを含むグローバルなIT企業から、我々のソリューションと彼らのサービスを組み合わせて提供したい、という相談を受けています。つまり、今後、彼らが日本でのビジネスを拡大すると、それに合わせて我々のビジネスも拡大するという関係性が出来ており、今後、そこをさらに追求していきたいなと思います。

    一方、海外での取り組みは、日本企業が海外でビジネス展開をしていて、その海外にいる従業員の勤怠とか工数管理を日本と同じようにやりたいですっていうニーズが出たら、これは受注していきたいな、と思います。 しかしメインにはなり得ないとは思っており、当面はまだまだ日本の国内でやれること、やるべきことが多すぎるので、そこにフォーカスをしていきたいと考えています。

    取材者:今後の株主還元策につきまして、方針や戦略を教えていただけますか。

    回答者: 株主還元は積極的に実施していきたいと思っています。 しかし数年間にわたって当期利益は赤字だったので、今、バランスシート上には、配当可能利益がありません。 つまり、累損が一掃されるまで、配当も自社株買いも基本的にはできない、という状況です。そうした中で、配当や自社株取得以外の方法での株主還元策を導入しようと思っています。というのも、我々は機関投資家にちゃんと持って頂けるようになりたいのですが、取引高が小さすぎて機関投資家に積極的に売買される銘柄になれていません。それを解決するために、まず株主還元策の導入を通じて個人投資家からのフォーカスを増し、取引高を押し上げていくことを検討しています。 今後の決算発表の場などで、より具体的な話ができればと考えていますので、正式発表までお待ちいただければと思います。現時点では、機関投資家の皆さんとお話する際、当社は配当だとか自社株買いでない形、つまり第3の形での株主還元の早期実現を検討しています、という説明をしています。

    回答者:IR戦略としては、株主構成を変えていきたい、もちろん機関投資家を増やしたいという思いはあります。ただ、お話した通りの状況なので、あえてここ1年ぐらいは個人投資家に完全にフォーカスしたいと思っています。これまでも個人投資家向けに、非常に丁寧なIRをしてきたのですが、どちらかといえば既にお持ち頂いている個人投資家への対応が主でした。しかし、株価やトレーディングボリュームを高めることを意図する、既存の個人の方だけだと限界があり、新しい個人投資家がどんどん入ってくるようにしたいと思っています。そのためには、会社のことを知らない、見たことも聞いたこともないという人に、この会社は面白いな、世の中的にも意義があるな、と思ってもらえることが、スタートポイントだと思っています。したがって、今期Q1から、かなりドラスチックにIR資料の内容やIR活動の手法も変えてみたところです。 今後も証券会社等が主催する個人向けの投資セミナーやイベントに、積極的に参加しようと思っています。幸い、今年は黒字化を見込んでいるので、個人投資家の方々にとっても安心して投資していただける先になるのではないと思っています。

    取材者:第1四半期が終わったばかりではありますが、取り組まれていることであったり、業績に関わらずトピックス的なものがあったら教えていただけますか。

    回答者: エンタープライズ領域の顧客企業は、意思決定が早くはありません。従来、ミッド・スモールのお客さんを相手にしてきた時は、社長を説けば2ヶ月後に導入という世界もありましたが、エンタープライズはそうではありません。 導入が決まるまでに、2年とか3年かかることも普通です。 導入が決まっても、実際にプロジェクトとしてローンチするには、さらにそこから1年、2年かかることもあります。 この第1四半期もそうだったのですが、ローンチするはずだったものが、半年後にずれますという話が、日常茶飯事になっています。そうした状況なので、あまり四半期ごとの業績の良し悪しに左右されないでいただきたいと思っています。 会社の方向性としては正しい方向に歩んでいるという自信はあり、グローバルなIT企業とのパートナー関係など、一朝一夕に真似されることのない構造的な強みも確かにあるので、安心して見ておいていただきたいと思います。とはいえ、足元の状況が心配な投資家の皆様も多いとは思うので、会社としては可能な範囲で、先行指標となるようなデータポイントを積極的に開示していきたいと考えています。例えば、商談件数や規模が、1年前と比べて何倍になっているか、などでしょうか。そうした点をきちんとお伝えできるようなIR活動をやっていきたいと思っています。

    回答者: 今、非常に大きなチャンスがきていると思っていますし、投資家の皆さまにも訴求できるタイミングだなと思っています。 四半期ごとのIR活動に留まらず、ポジティブなニュースをできるだけ多く、日常的に積極的に開示していきたいと思います。

  • 執行役員CFO 兼 コーポレート統括本部担当 高橋亮様

取材アーカイブ

  • 決算概要

    2025年8月期第2四半期は、増収・黒字転換。売上高は23億1,900万円となり、前年同期比で9.1%の増加を達成。営業利益は1億3,400万円と黒字転換を果たす結果となった。ビジネスは順調に拡大基調にある状況である。

     

    主要KPIの進捗と変化

    通期業績目標に対する進捗率は、売上高が46%、営業利益が89%である。売上高はほぼ想定通りに進捗しているが、営業利益は期初想定よりも早い進捗となっている。この利益の先行は、1) 下期に入り発表した新プロダクトに係るマーケティング投資や、2) 将来の更なる事業成長に向けた戦略的投資、3) 量より質を重視した採用を中心とした人材投資の費用反映が、いずれも下半期に偏重していることが主要因である。主要なKPIとしては、ARR(年間経常収益)の着実な増加が注視すべき指標である。また、ARRに先行する指標であるパイプラインは非開示であるものの、期初時点におけるエンタープライズ顧客のパイプラインは前年同期比で倍増しており、量と質の両面でエンタープライズビジネスが順調に拡大していることを示している。

     

    季節性・一過性要因の有無と影響

    大企業においては、システム導入の意思決定プロセスに時間を要するため、商談が従来対比で長期化している。加えて、稼働開始の時期は新年度期初の4月ではなく、5月以降になることが多く、当社としての売上計上開始は、当社の第3四半期や第4四半期に偏重する傾向が見られる。今期はこの傾向が顕著であり、第1・2四半期よりは、第3四半期にそのパフォーマンスが示されるとの見解である。

     

    通期見通しと進捗率・達成可能性

    通期業績目標に対して、営業利益の進捗率は89%と高水準であり、目標達成に向けて順調な推移を示している。エンタープライズ案件に係る売上計上が加速する見込みの第3四半期以降の業績進捗が、通期目標の達成度を左右する重要な要素である。

     

    トピックス

    当社の成長戦略は、エンタープライズ領域における事業拡大を主軸としている。その実現に向けて、様々なビジネスパートナーとの関係性を強化している。特に、日本の法制度への対応が十分でないことが多い外資系ERP(OracleやSAPなど)の勤怠モジュールを補完・代替するために、外資系ERPベンダーとの連携を強化している。これにより、ERP全体の更改・刷新時に当社システムの同時導入を促している。また、コンサルティングファームとの連携強化を通じて、顧客開拓機会の拡大を図っている。直近では、グローバルERPベンダーであるワークデイ株式会社とのイノベーションパートナー契約を締結した。

    株主還元策として、個人の売買を促進するポイント型優待の導入を発表しており、今期末(8月末日)の株主が対象となるため、同タイミングに向けて同社株式の購買行動の活発化が期待される。

  • Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?

    A:当社の成長戦略の実現に向けた重要なポイントは、エンタープライズ領域におけるパートナーシップの強化にあります。特に、エンタープライズ顧客の多くが導入している外資系ERPベンダー、例えばSAPやWorkday、Oracleといった企業の製品と、当社の勤怠管理システムとの連携を重視しています。これらの外資系ERPシステムが持つ勤怠管理モジュールは日本の法制度に十分対応していないことが多いため、当社の勤怠管理システムがそれらを補完・代替する役割を果たすことができます。これにより、グローバルに事業を展開しているエンタープライズ顧客が、ERPシステム全体を更改・刷新しようとする際に、外資系EPRシステムと共に当社システムの同時導入を促す構図となっています。また、このような大手ソフトウェアベンダーとの協業に加え、エンタープライズ顧客のシステム導入に際して介在するコンサルティングファームとの連携も不可欠です。コンサルティングファームを通じて当社のシステムが提案されることで、顧客開拓の機会を大きく広げることが可能となるため、今後は主要なコンサルティングファームとの協業も強化していくことが、エンタープライズ市場における当社のプレゼンス拡大に繋がると考えています。

     

    Q:通期業績の見通についてご説明ください。

    A:2025年8月期第2四半期においては、売上高23億1,900万円、前年同期比9.1%増加、営業利益は1億3,400万円で黒字転換となりました。通期業績目標に対して、売上高は46%、営業利益は89%の進捗であり、これは想定よりも順調な進捗です。ビジネス自体も順調に拡大しており、特に第3四半期以降にエンタープライズ顧客からの大型案件が具体化すると見込んでいます。大企業での導入においては、稟議のプロセスに時間を要するため、商談が長期化する傾向があります。加えて、実際のシステムの導入・稼働開始時期は、新年度期初の4月は避けて、5月以降、つまり当社の決算期では第3四半期や第4四半期に偏重する傾向があり、今期はその傾向が顕著に表れています。したがって、第3四半期のパフォーマンスが、エンタープライズ事業に注力している当社の本当の実力を示すものとなると考えています。

     

    Q:株主還元の方針をご説明ください。

    A:当社の株主還元策として、積極的な個人投資家の売買を促進することを目指したポイント制の還元施策の導入を決めました。ポイント型の株主優待では、長期保有を促す形を指向する企業が多い中で、当社は継続的に保有しているかどうかの条件づけを行っていません。特に当社は8月決算であり、他の多くの企業とは決算月が異なっています。これにより、他の企業は3月末や9月末に株主優待の権利確定を迎えることが多い中で、固有のメリットを追求しうると思っています。具体的には、投資家が当社の8月末までに当社株に投資して優待の権利確定を受けた後、一度売却して、9月末までに他の企業の株式を購入し、さらに2月や3月の決算に向けて再度当社の株式を購入するといったサイクルで、当社株式の取引量が押し上げられることを期待しています。

  • 取材者:2025年8月期第2四半期の業績についてお伺いします。売上高は23億1,900万円、前年同期比9.1%増加、営業利益は1億3,400万円で黒字転換となりました。これらの増減要因についてご説明いただけますか。

    回答者:ビジネス自体は非常に順調に拡大しています。しかし、目標からすると第2四半期はそれほど好調ではありません。むしろ、これまでお話ししてきたことが第3四半期でより具体的に実現できると考えています。特にエンタープライズのお客様に関しては、中小規模の企業が意思決定者の判断でシステム導入をすぐに進めるのに対し、大企業では稟議プロセスを通すことが必要となるため、導入時期が新年度期初の4月からではなく5月以降、当社の第3四半期や第4四半期に偏重する傾向があります。今期はその傾向が顕著に表れています。したがって、第1四半期よりもパフォーマンスは改善していますが、当社の真の実力はこれ以上であり、第3四半期に注目していただきたいと思います。

    取材者:通期の業績目標に対して、売上高は46%、営業利益は89%の進捗ですが、これは想定よりも進捗しているという認識でよろしいですか。

    回答者:売上高はほぼ想定通りですが、利益は期初想定よりも進捗しています。下期に入り発表した新プロダクトに係るマーケティング投資、将来に向けた様々な戦略的投資、人材面での投資を進めています。こうした中で、費用の計上が下期に偏っている状況です。人材投資についても、当社は量より質の高い人材を求めているため、一定のリードタイムが必要です。そのため、これも下半期に偏重している部分があります。全く採用できていないわけではなく、順調に採用は進んでいますが、就業のタイミングから費用への影響は下期偏重となっている状況です。4月には10名程度の増員があり、4月1日からは組織再編を行い、それに合わせて採用を進めてきたため、ある程度のまとまった人数が確保できています。

    取材者:採用数の推移は前期と比較してどのような状況でしょうか。

    回答者:退職者もいるため、大幅な増加とはなっていませんが、期初計画よりも早いタイミングでの採用を想定していた部分が少しずれ込んだことで、一部利益が上期に先行して計上されている要因にもなっています。

    取材者:人材採用以外に、貴社の主要なKPIはございますか。

    回答者:ライセンス数は見ていただきたい指標ですが、先行指標にはなりにくいと考えています。特にエンタープライズのお客様の場合、導入後すぐに発表できるわけではなく、稼働が安定して初めて発表が可能となるケースが多いです。そのため、先行指標となるKPIの設定は難しいと感じています。むしろ、ライセンス数と売上高、特にARR(年間経常収益)の着実な増加を見ていただくのが良いかと思います。

    ARRに先行する指標は一般的にはパイプラインですが、当社はパイプラインの開示をしていません。しかし、実際には足元のパイプラインの量と質は改善しています。例えば、期初時点でのエンタープライズのお客様のパイプラインは、昨年同時期と比較して倍増しています。これはエンタープライズビジネスが順調に伸びていることを示しています。エンタープライズのお客様は契約までに時間がかかり、さらに実際に当社の売上の認識が開始されることになるシステムの稼働・ローンチまでにもう1年、2年とかかるケースもあり、見えづらい部分もありますが、着実に契約は進展し、質・量ともに拡大している状況です。

    取材者:承知いたしました。

    回答者:パイプラインの数だけでなく、お客様との商談の質も向上しています。パートナー企業と共に、どのような座組で、どのような戦略で。どのようにクロージングしていくかといった具体的な議論ができている案件が今期で増えており、数字でお示ししにくい部分ではありますが、質も確実に改善している背景になっています。

    取材者:第3四半期にかなり期待が持てる内容ですね。中期経営計画は発表されていますか。

    回答者:中期経営計画は策定していますが、現在はあまり強調していません。しかし、2030年の5年後の目標として、売上100億円、営業利益20%の達成を着実に目指していきたいと考えています。

    取材者:M&Aや業務提携に関して、実施状況や検討状況はいかがですか。

    回答者:M&Aのパイプラインとしては、現在4、5件の検討が進行中です。初期段階のものからDD(デュー・ディリジェンス)に入って具体化しそうなものまで様々です。相手先との関係もあり、具体的な時期についてはまだ申し上げられませんが、私が着任して以来、M&Aを成長戦略の一部と位置づけ、積極的に推進しているため、今後進展が期待できるかと思います。

    取材者:M&Aに伴う影響についてはいかがでしょうか。売上増加や新規プロジェクトなど、具体的なものはございますか。

    回答者:先日取得した第1号案件であるワークライフログというビジネスは、元々大きな規模ではありませんでしたが、彼らが持つテクノロジーは当社のお客様により大きな付加価値を提供できるものでした。現在、そのテクノロジーを実装すべく準備を進めています。一方で、同社はこれまで中小規模のお客様にサービスを提供していましたが、これをエンタープライズのお客様も含めて展開するには、それなりの負荷がかかることも分かってきました。これをうまく立ち上げて、徐々に拡大していきたいと考えています。それ以外の案件については、買収後でなければ具体的な影響について申し上げることはできず、現時点ではコメントできることはありません。

    取材者:株主還元方針について、何か変更はございましたか。

    回答者:先日発表した第2四半期決算で、株主還元を実施することを発表しました。過去3年間の赤字による累積赤字(繰越損失)があるため、本来であればこれを解消しないと配当や自己株式取得はできません。、今後利益が堅調に伸びていくことが確実であるため、それに先行して積極的に還元策の導入を行うことで、特に個人投資家の皆様に魅力を感じていただきたいと考えています。そこで、個人投資家をメインターゲットとしたポイント制の優待制度を発表しました。今期は初回として、8月末の株主様を対象に1年分をまとめたポイントをお配りします。これにより、8月末に向けて株価の上昇や買いが増えることを期待しています。機関投資家の方々の投資が拡大するためには、当社株式の日々の取引量が増えることが重要だと認識しています。私の着任時の取引量は1000万から2000万円程度で、これを大きく引き上げる必要がありました。株価が上昇すれば自然に増える部分もありますが、取引量自体を増やす効果も生み出さなければならないと考えており、IRのやり方も大きく変えてきました。第1四半期の結果として、取引量が3000万から4000万円程度まで増加しており、これは株価の上昇以上の増加で、非常に良い傾向だと考えています。これをさらに加速させ、1億円の大台に乗せたいと考えています。この観点からも、積極的な個人の売買を促進するために、今回の還元政策を実施しました。ポイント型の優待は長期保有を促すために、一度購入したら保有を継続してもらうことを求める企業もありますが、当社はそのような制約を設けていません。基準日を挟んで、積極的に売買していただいて構わないと思っています。特に当社は8月決算ですので、他の企業とは決算月がずれています。他の企業が3月末に株主優待の権利確定を迎える際、当社の8月末に投資した後、一度売却し、今度9月に他の企業の株式を購入し、また次に2月や3月の決算に向けて再度購入していただくといったサイクルとなって、当社株式の取引高を押し上げる効果が出ることを期待しています。

    取材者:その他、足元のニュースリリースやトピックス的なものがございましたら教えていただけますか。

    回答者:当社がエンタープライズのビジネスを拡大する上では、自社での直販だけでなく、2つの重要なパートナー群との関係性強化が必要だと考えています。特にエンタープライズのお客様は、勤怠管理システムだけを入れ替えるケースは少なく、ERP全体を入れ替える中で勤怠管理の入れ替えを検討されることが多いです。グローバル展開するようなエンタープライズの多くは外資系のERP、例えばSAPやWorkday、Oracleといった製品を導入することが多いため、これらのソフトウェアベンダーとの関係が非常に重要です。外資系ERPのほとんどは勤怠モジュールを持っていますが、日本の法制度への対応が十分でないことが多いのが実情です。例えばSAP様ご自身もグローバルな自社の勤怠モジュールをお持ちですが、日本では自社製品を推奨せず、チームスピリットとの連携を推奨してくださっています。このため、エンタープライズのお客様への導入が着実に加速しているのですが、これをSAPだけでなく、さらに広げていきたいと考えています。今回の成果として、ワークデイ株式会社というグローバルに展開するERPベンダーとのイノベーションパートナー契約を締結したことを発表いたしました。このリリースもぜひ確認していただければと思います。

    取材者:承知いたしました。

    回答者:このベンダーとの関係性と同じくらい重要なのが、コンサルティングファームとの連携です。エンタープライズのお客様は、ベンダーと直接やり取りするのではなく、ERP全体の導入に際してコンサルティングファームを選定し、協業しながら何をどのように導入すべきかを検討します。そのため、ベンダーだけでなくコンサルティングファームからも推奨される製品・サービスかどうかが非常に重要になります。当社はコンサルティングファームとの連携を強化しており、従来からデロイト様との関係性が非常に強く、デロイト様ご自身も当社の製品をご利用いただいており、お客様への提案時にも推奨していただいています。これをさらに拡大し、アクセンチュア様、PwC様、EYコンサル様といった会計事務所系のコンサルティングファームとの連携を強化しています。さらに、アビームコンサルティングのような国内でのERP導入を支援するコンサルティングファームとの関係性も強化し、共に協力していくというリリースを近いうちに発表できると考えています。

    取材者:インパクトのある発表になりそうですね。

    回答者:はい。

    取材者:承知いたしました。取材は以上となります。本日はありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

    回答者:よろしくお願いいたします。

  • 執行役員CFO コーポレート統括本部 本部長 高橋 亮様

    コーポレート統括本部 財務経理本部 本部長 大藤 知則様

makuake_logo1.png

​企業名

上場市場 証券コード

​決算日

取材アーカイブ

  • 決算概要

    2025年第3四半期は増収増益。売上高は35億5,617万円となり、前年同期比で+8.4%の増加を達成。営業利益は2億6,808万円と過去3年で最高益を更新し、黒字拡大が加速。これはエンタープライズ領域での複数の大口商談の受注とシンガポール子会社の固定費削減、費用効率化の効果が発現したことが主要因。

    セグメント別または事業別の増減要因

    エンタープライズセグメントでは、大手公益法人を始めとした複数の大型商談の受注により、ARR・ライセンス数は大幅に伸長。

    主要KPIの進捗と変化

    ARRはQ3単独で+2.1億円の純増となり、四半期ベースでは過去最大の純増幅となった。Q3までの累計では+3.7億円のARR純増となり、通年の目標レンジの下限である5億円に対して74%まで進捗した。これはエンタープライズ領域で新規の大口商談を複数受注できたことが主要因で、エンタープライズ領域のARRは昨対で+22%増と大幅に伸長している。

    解約率は、0.41%と引き続き低水準を維持している。

    季節性・一過性要因の有無と影響

    大企業においては、システム導入の意思決定プロセスに時間を要するため、商談が従来対比で長期化している。加えて、稼働開始の時期は新年度期初の4月ではなく、5月以降になることが多く、当社としての売上計上開始は、当社の第3四半期や第4四半期に偏重する傾向が見られる。今期はこの傾向が顕著であり、第1・2四半期よりは、第3・4四半期にそのパフォーマンスが示されている/示される見込み。

    通期見通しと進捗率・達成可能性

    期初の業績目標に対して、第3四半期までの営業利益の進捗率は178.7%と大幅な超過達成となっている。一方で第4四半期は、期末賞与や株主優待引当金の計上に加えて、来期以降の成長のための戦略投資をやり切る方針であるため、損益トントンでの着地を見込む。以上を踏まえ、通期での利益目標を営業利益2.6億円、経常利益2.7億円、当期利益2.2億円にそれぞれ上方修正を行った。

    トピックス

    複数のエンタープライズ企業での受注が進み、利用ユーザー数は60万ユーザーを突破。

    5月22日にプレスリリースの通り、米国を本拠とし人事・財務・プランニングなどの業務の統合管理SaaS企業であるWorkday社と、イノベーションパートナー契約を締結し、協業を開始。エンタープライズ領域における更なる売上拡大に繋がる取組みになると期待される。

  • Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?

    A:基本戦略は大きく2つあり、一つ目は市場浸透をゴールとしたGo-To Market戦略、二つ目はプロダクト戦略です。

    Go-To Market戦略としては、エンタープライズ、ミッド、スモールのすべてのセグメントを対象として、強いコアプロダクト(=勤怠管理)で「更なる市場浸透」の実現を目指します。

    二つ目のプロダクト戦略としては、コアプロダクトを軸に、Salesforceプラットフォーム上で、複数の製品を開発し市場投入していくことで、スピーディに「マルチプロダクト展開」を行っていくことを目指します。

    マルチプロダクト展開の詳細については、弊社のIRサイトに公開されている「2025年8月期 第2四半期 決算説明資料及び2025年8月期に係る株主還元策のご案内」をご覧ください。

    Go-To Market戦略の主要な柱である「エンタープライズ戦略」における重点領域の一つがアライアンス活動であり、その詳細は以下の通りです:

    • スモール・ミッド市場では東京ビッグサイトで行われるような大型展示会や、ネットやデジタルを通じたマーケティング活動から商談が創出される割合が多い一方、エンタープライズ市場で同様のアプローチを行なっても、必ずしも効果が上がる訳ではありません

    • なぜなら、エンタープライズのお客さまは長年お付き合いをしている信頼する会社、例えばソフトウェア会社やクラウド事業者、SI会社やコンサルティングファームなどから提案される情報に信頼を置いているからです。もう一段、現場感を持ってお伝えすると、会社レベルのみならず、各社にいる"やり手"の営業担当や敏腕プロジェクトマネージャー、そうした方々が昇進して要職に就いたエグゼクティブの方などと個人単位で長年の信頼関係を築きながらお付き合いし、情報提供や提案を受けています。こうした、信頼を受けている会社や個人の方々から、いかにチームスピリットを紹介し、提案してもらうかがアライアンス活動の基本形であり、私どものエンタープライズ戦略における商談創出活動の柱です

    • 実際に、エンタープライズ領域におけるでは、まず昨年度FY24と今年度FY25を比較して、受注総額自体が2.4倍に増えています。また各年度の内訳をみると、アライアンス活動から創出された商談の割合が、昨年度FY24が48.1%だったのに対して、今年度FY25では63.1%と、その割合も増え、金額ベースでも3.1倍と増加しています

    • このようなアライアンス活動の具体として、当社では、SalesforceやSAP、WorkdayといったグローバルERPベンダーとの協業関係を構築している他、デロイトのような大手コンサルティングとの協業関係を構築しています

    Q:通期予想の実現に向けた戦略と施策についてご説明ください。

    A:足元では上記の通り、引き続きエンタープライズ領域におけるアライアンス活動の結果として、複数の大口商談が同時進行しています。Q4の残りの期間で、8月の決算期末に向けて、このような大口商談を含め、個別商談の確実な受注を目指して活動を重ねていくことで、その実現を目指す方針です。

     

    Q:受注・競合状況についてご説明ください。

    A:SaaS型の勤怠管理サービスを提供している他社の多くは、中小・中堅企業向けのスモール・ミッド市場に注力しています。一方、大企業向けのエンタープライズ市場では、従来型のオンプレミス型の勤怠管理製品を提供する企業が、市場のほとんどを占めています。

    そうした状況の中で当社は、これまでご説明してきたようなアライアンス活動の結果として、エンタープライズ領域においてSaaS型での勤怠管理サービスを提供するというユニークなポジションを確立しました。これは当社が、エンタープライズ市場における参入障壁の構築に成功しているから実現できているものです。

    エンタープライズ市場での潜在的な競合相手は、大企業に強い外資のERPベンダー企業や国内のSaaS各社です。

    まず、国内SaaS企業に対して当社は、エンタープライズに特化した製品を3年間の赤字計上を経て開発、提供することで競争優位を確立しています。コンピュータの世界で、大企業が求めるような大規模で複雑な処理を、パフォーマンス性能を維持しながら実現するには高い技術力が求められるからです。これが、国内SaaS企業を中心とした競合他社がなかなか追いつけない領域となっている理由です。

    また、大企業でよく使われているSalesforceのプラットフォーム上で製品提供している点もセキュリティなどの信頼性を高めており、この点も国内SaaS企業に対して比較優位が確立できている理由です。

    他方、外資のERPベンダーに対して当社は、各社のERPソリューションと当社プロダクトの連携を進めることで、競合相手ではなく協業相手というポジショニングを確立する戦略を取っています。具体的には、当社が外資企業が対応し得ない日本の法制度への細やかな対応をしている中で、グローバルなCRP/ERPトップ企業が、日本においては自社の勤怠モジュールではなくTeamSpiritの勤怠管理を第一推奨とし、自社プロダクトと組み合わせて使うという関係性を構築しました。但し、こうした関係性はどんな企業でも容易に確立できる訳ではなく、一般に後発の企業は不利になると考えています。

    以上を総合して、当社は国内SaaS他社が容易には成功し得ない形を創出できている、すなわちエンタープライズ領域での参入障壁を築くことが出来ているものと考えています。

     

    Q:M&A、業務提携の実施または検討状況と、それに伴う影響についてご説明ください。

    A:いくつかのM&A案件の検討が進んでいます。

    M&Aを活用する領域としては、2つの方向性を追求しています。

    一つは、先日発表したワークライフログのように、既存の我々のビジネスの付加価値を向上させていくような「機能的な拡充」あるいは、「付加価値の増大」を実現するようなM&Aです。

    もう一つは、上記の基本戦略の1つとして挙げたマルチプロダクト化を進める上で、我々としてまだやれていないが、将来的には進出していきたい領域において既に取り組んでいる企業とM&Aです。そうしたM&Aができると、「時間を買う」という意味でも、非常に効果的と考えています。

    当社として、今後のM&Aの活用は、この2つの軸で進めていきたいと思っています。

     

    Q:中期経営計画の内容や進捗状況等をご説明ください。

    A:中期ビジョンとして、2030/8期にARR 100億円の達成を目指しています。

    その実現に向けては、a) 揺るがないニーズがある勤怠管理で着実に数字を積み上げ、b)それを大企業であるエンタープライズに展開して行くことで成長戦略の最大のドライバーとする方針です。またそのためにアライアンス・パートナー企業との取り組みを加速させていきます。

    さらに、c)新しい製品領域として日本人が得意な「チーム力」を強化する分野にフォーカスを行い、加えてd)AIなどの新技術や新サービスはM&Aなどを通じて積極的に拡充します。

    2025年8月期については、ARRや売上高はほぼ期初計画通り着地し、利益は期初計画を大きく上振れて着地する見込みであることから、上記の中期ビジョンの実現へ向けて良いスタートが切れたと考えています。

     

    Q:株主還元の方針をご説明ください。

    当社は、過去の成長投資に伴う赤字計上により、現時点においてバランスシート上の利益剰余金がマイナスとなっているため、配当や自社株買いができない状況です。しかし、今後、着実な利益の拡大が見込まれる中で、2025年8月期第2四半期の決算発表に際して、今期末からポイント制優待制度を導入することを発表しました。

    今期分の優待ポイントの進呈対象になるのは、今期末時点、すなわち8月31 日時点の株主名簿に名前が載っている方です。 この条件を満たした株主の方に対して、当社は優待ポイントを付与し、付与された株主の方は、商品等との交換が可能になるという仕組みです。 加えて、チームスピリットプレミアム優待倶楽部に会員登録をして頂いた会員株主の方は、付与されたポイントをより多くの商品等と交換することができるようになります。また、このプラットフォームをご提供頂いているWILLS社の「WILLs Coin」に交換すると、同社が提供している他のこの制度を使った株主還元のポイントと合算して、より高額な商品等と交換することも可能になります。

    機関投資家層の拡大を実現するため取引高の拡大が必須という整理の下で、本株主優待制度の導入などを通じ、個人株主による当社株式取引の活発化を図っていく方針です。

  • IR担当

bottom of page