Q：成長戦略のポイント（今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む）はなんでしょうか？

A：当社の成長戦略のポイントは、国際通信事業の強化にあります。国際通信事業では、まずフィリピン東岸における国際海底ケーブル陸揚局の建設プロジェクトを大成建設現地法人との協業で推進しており、これはフィリピン内外のインターネット需要増大への対応と地政学的リスク分散を目的としています。また、同事業における法人向けインターネット接続サービス（エンタープライズビジネス）の強化も重要です。現在、約1,750件の課金ベースのお客様にご提供しており、開通までの時間短縮のため、現地でのIT技術者やエンジニアの増員等による光ファイバーケーブル敷設工事を強化しています。一方、日本での国内通信事業においては、コールセンター事業者向けのソフトウェア販売と電話回線提供を組み合わせたソリューションビジネスが、高利益率を維持しつつ堅調に成長しており、引き続き注力してまいります。

Q：成長戦略のポイントについて、前提条件等での変化とその影響等をご説明ください。

A：フィリピンにおけるAIやデータセンターの伸長に伴うインターネット需要の著しい高まりは、当社にとって追い風となっております。この需要増は、当社の国際通信事業、特にフィリピンとシンガポール、香港を結ぶ国際海底ケーブルとフィリピン国内海底ケーブルのネットワークを活用したサービス提供において、成長機会を最大化するための重要な前提条件となっております。

Q：通期予想の戦略と施策についてご説明ください。

A：2026年3月期の通期予想では増収増益を見込んでおります。これは主に国際通信事業の継続的な成長と、国内通信事業およびメディカル＆ヘルスケア事業の復調に支えられます。国際通信事業では、フィリピンにおけるインターネット需要増を取り込むため、海底ケーブルネットワークを活用し、地方顧客へのサービス提供を強化します。法人向けサービスでは、開通までの時間短縮に向けた人員増強と工事を推進します。国内通信事業は黒字転換を計画し、メディカル＆ヘルスケア事業も通期黒字化を目指します。レーシック事業では、患者様の需要に応じた柔軟な価格帯の提供や分割払い金利負担、そして若年層ターゲットにSNSマーケティングを強化し、復調を図ります。

Q：中期経営計画の内容や進捗状況等をご説明ください。

A：当社の中期経営計画の進捗状況につきましては、売上高に関しては当初計画と比較し、やや下回る結果となりました。具体的には、中期計画で165億円を見込んでいたのに対し、152億円での着地となりました。これは主に国内通信事業の落ち込みが影響しております。

一方で、営業利益に関しては、中期経営計画の目標を達成することができました。これは国際通信事業の堅調な利益貢献によるものです。結果として、売上高、営業利益ともに過去最高を更新し、全体の業績としては順調に進捗しております。

Q：株主還元の方針をご説明ください。

A：当社の株主還元方針について、2026年3月期から2028年3月期までの3年間、配当を2025年3月期と同水準の40円で据え置くことを開示いたしました。これは、フィリピン東岸の陸揚局建設など、今後見込まれる成長投資の機会を確実に実行し、将来的な企業の成長によって株主の皆様に還元していくことを重視しております。投資機会を先送りするのではなく、現時点で必要な投資をしっかりと行うことで企業価値を高め、結果として株主価値を向上させるという考えに基づいております。なお、据え置き期間終了後には、配当性向20%以上への回帰を基本とし、財務状況や投資回収の進捗等を踏まえて、柔軟な株主還元の実施を検討していまいります。社内では様々な議論を行っており、状況に応じて判断し、適宜アナウンスしてまいります。

取材者：まず始めに2025年3月期の決算についてお伺いいたします。2025年3月期の売上高は152億6,400万円で前年比8.1%増加、営業利益は44億1,300万円で前年比13.3%の増加、経常利益は40億7,300万円で前年比8.0%減、親会社株主に帰属する当期純利益は25億4,400万円で前年比10.3%減という結果でした。売上高、営業利益はとともに増収増益で着地されたと認識しておりますが、こちらの増減要因についてお伺いできますか。

回答者：当社は大きく3つの事業を展開しておりますが、その中の国際通信事業が堅調に推移したことが、増収増益の主な要因です。中身の内訳も細かくお伝えしましょうか。

取材者：是非お願いいたします。

回答者：3つの事業に分けてご説明いたします。国際通信事業を牽引したのは、当社にとって成長エンジンである海底ケーブルネットワークです。フィリピンとシンガポール、香港を結ぶ国際海底ケーブルと、2023年12月に完成させたフィリピン国内海底ケーブルネットワークを活用し、フィリピン全国の地方のお客様にサービスを提供しております。

地方のお客様は、AIなどの伸びによりインターネット需要が非常に高まっております。スマートフォンが普及し、インターネットを必要とするお客様が増加している状況です。当社は、BtoCのお客様向けにインターネットを提供しているケーブルテレビ事業者やISP事業者に対し、上流側から回線ネットワークを提供するホールセールビジネスを展開しており、これが大きな成長エンジンとなりました。国内海底ケーブルネットワークが完成し、地方まで届けられるようになったことが、前期に大きく伸びた理由です。

このホールセールビジネスでは、インターネット回線の提供に加え、前期から本格的に開始した地方のISP事業者様向けのネットワーク構築支援や通信機器の販売といったビジネスも大きく伸び、全体を牽引いたしました。

国際通信事業にはホールセールともう一つ、エンタープライズと呼ぶビジネスがございます。こちらは当社自身がISP事業者となり、法人のお客様にインターネット接続サービスを提供するサブスクリプションビジネスです。現在、課金が開始されているお客様の数は約1,750件に増加しており、計画からは若干の遅れが生じておりますが、着実に成長を続けております。ホールセールが売上の大半を占めていますが、エンタープライズも将来的には伸びていくと見込んでおります。現在は土台作りをしている段階です。国際通信の両事業は、基本的に堅調に伸びている状況です。

残りの2事業についてですが、まず同じフィリピンで展開しているメディカル&ヘルスケア事業についてです。こちらはレーシック手術と人間ドック健診サービスの2本柱となっております。レーシックは2010年代から拡大を続け、マニラ首都圏で過半となるトップシェアを獲得しておりましたが、現在は成熟期に入っております。コロナ禍以降、当社ほど設備が整っていない小規模クリニックが安価なサービスを提供するようになり、競争が激化しております。これにより、手術件数ベースではコロナ禍以前の水準に戻る傾向にありますが、当社も幅広い価格帯のサービスや、金融機関と提携してクレジットカードの分割払いの金利を当社が負担するといった施策を実施しております。また、Facebookを中心にマーケティングを行っていましたが、今後はInstagramやTikTokなどSNSを活用し、若年層をターゲットにしたマーケティングを強化していく方針です。レーシックの売上および利益は、今期と変わらない状況が当面続く見込みですが、こうしたマーケティングの工夫により、復調傾向に持っていきたいと考えております。

取材者：承知いたしました。

回答者：もう一方の人間ドックは、2025年3月期は赤字で着地しましたが、2026年3月期通期は黒字で着地する計画です。人間ドックはリピートが見込めるビジネスであり、2023年5月から本格的に開始して以降、顧客数は着実に増加しております。レーシックは既に黒字であるため、人間ドックが黒字化すれば、メディカル&ヘルスケア事業全体としても今期は黒字で着地する計画です。

最後に国内通信事業ですが、これは日本で展開しているビジネスです。基本的にはソリューションビジネスが柱となっており、コールセンター事業者様向けにソフトウェアの販売や電話回線の提供を行っております。当社は許認可を得ており、回線とソフトウェアをセットで提供し、お客様の要望に応じたソリューションを提供しております。ここは利益率も高く、伸びている分野です。一方で、利益率は高くありませんが、業界慣行として行っている接続料収入が2025年3月期は減少いたしました。接続料とは、例えば携帯電話から当社が回線を提供しているコールセンターに電話がかかってきた場合、電話をかけた側の通信事業者がかかってきた側のネットワーク利用料を支払うというものです。当社はコールセンター側なので、基本的に受け取る側になることが多いのですが、ボリュームディスカウントなどの交渉が一部事業者と過去2年間合意に至らなかったため、3年度分を遡及して精算することになりました。これにより、単価が下がり、過去の売上が減少する結果となりました。特に第1四半期に大きく売上、利益ともに減少いたしました。

また、コールセンターへの電話が大量にかかってくる状況について、総務省や事業者間で議論がされており、総務省のガイドラインが昨年9月に固まりました。法的な拘束力はないものの、当社もガイドラインに従い、ボリュームディスカウントを保守的に見積もる必要が生じたため、会計上の手当も含めて下半期に実施いたしました。その結果、売上がさらに減少し、利益も影響を受けて赤字に転落いたしました。会計上の手当をし、今後も含めて売上が減少する部分を織り込んだものなので、2026年3月期はここが発射台となり、ここから前期のように大きく落ち込むことはないと想定しております。利益も2025年3月期は赤字でしたが、今期は黒字に転換し、売上は下がっているものの、本来の利益が入ってくるため、復調傾向で推移する見込みです。

2025年3月期は、国際通信事業が堅調であった一方で、残り2事業の一部売上減少と営業赤字がございましたが、国際通信事業が全体を牽引し、吸収してさらに引き上げたという状況でした。

取材者：そうしますと、当初の計画比としては、いかがでしょうか。やはり国内通信事業に関しては、計画と比べてもかなり落ち込んでしまった分、全体で見ても、業績的には計画から進捗が遅れてしまったようなところがございますか。

回答者：売上に関しては、中期計画に比べるとやや下回る結果となりました。中期計画では165億円を見込んでおりましたが、152億円での着地となりました。しかし、営業利益に関しては、中期計画目標を達成いたしました。これは国際通信事業において利益をしっかり確保できたことによるものです。結果として、売上、利益ともに過去最高を更新いたしました。

取材者：承知いたしました。最初の話でエンタープライズのサブスクリプションの人数にも触れていただきましたが、その他に貴社にとって主要なKPIはございますか。

回答者：KPIという意味では、社内で常に議論しているところではございますが、エンタープライズの課金顧客数は継続して開示しております。その他は顧客次第という側面がございます。2025年3月期決算で一部お見せした、ホールセール、つまり上流のビジネスの契約件数ですが、2024年1月から2025年3月までの1年3ヶ月間で、369件の新規契約を獲得いたしました。これは2023年12月にフィリピン国内海底ケーブルネットワークが完成した後の営業成績です。

取材者：この進捗状況は、計画と比べてもかなり順調に進捗していると見てよろしいですか。それともかなり大幅に計画よりも超えているイメージですか。

回答者：これは走りながらの契約件数でございますので、当初から明確な目標を置いてそれを達成しているというよりも、状況に応じて都度目標を定めている状況です。15ヶ月で369件ですので、1ヶ月あたり約20件のペースで新規顧客と契約していることになります。これは国内ネットワークが完成し、地方展開が可能になったからこそ達成できた件数であり、新しいビジネスが開始されてからの成果として、KPI的にご参考にしていただければ幸いです。フィリピン国内のISP事業者は急増しておりますが、その3分の1以上と既に契約済みという状況です。

当社の成長エンジンである国際通信事業のホールセールビジネスには、回線ネットワーク提供に加え、ネットワーク構築サービスや通信機器の販売などが含まれており、この300件以上の契約に含まれております。

取材者：承知いたしました。2025年3月期に関して、季節変動による業績への影響や、外的要因、一過性のものはございましたか。

回答者：一過性という意味では、国内通信事業の第1四半期における過年度遡及精算が非常に大きかったです。また、国内通信事業の下半期における保守的な取引の見直し、会計上の手当も、結果的に減収要因となりました。季節性というのはあまりございません。2025年3月期は特にポジティブな点として、例年は第4四半期に売上と利益が偏重して計上される傾向がございましたが、前期は四半期ごとに分散して平準化が進んだのではないかと考えております。

取材者：承知いたしました。その他、採用についての推移は、前期と比較していかがでしょうか。

回答者：人材は増やしました。決算資料の21ページにも記載しておりますが、特に国際通信事業のエンタープライズ、つまりサブスクリプションビジネスにおいて、契約を獲得できても、開通まで時間がかかるという課題がございました。これはビルのオーナーの許認可や、お客様のオフィスまでの回線敷設の難しさなど、様々な理由がございます。そこで、ここを強化するため、人員を増強し、お客様のオフィスまで光ファイバーケーブルを確実に届けるための工事を進めております。これにより人員が増加いたしました。

取材者：やはり中途採用が多いような印象ですか。

回答者：フィリピン現地では、IT技術者やエンジニア、つまりインターネット回線を敷設し、接続を行う人材を採用しております。これらにより人件費は増加いたしました。

取材者：承知いたしました。それでは2026年3月期の業績予想についてお伺いします。売上高180億円（前年実績比17.9%増）、営業利益52億5,000万円（同18.9%増）、経常利益49億円（同20.3%増）、当期純利益30億円（同17.9%増）と、増収増益を見込まれていますが、こちらに対する見通しについて教えていただけますか。

回答者：大きく申し上げますと、国際通信事業は引き続き堅調に推移し、成長フェーズを維持していく見込みです。国内通信事業は2025年3月期の赤字から黒字に転換し、復調すると見込んでおります。メディカル&ヘルスケア事業についても、人間ドックが単月黒字化を達成し、黒字で着地する見込みです。国際通信事業が引き続き全体を牽引することで、売上、利益ともに伸びていく姿を想定しております。

取材者：承知いたしました。M&Aや業務提携に関して、実施の予定や検討状況などございましたら、お答えいただける範囲で教えていただけますか。

回答者：M&Aについて明確にお伝えできることはございません。当社はM&Aで拡大してきたビジネスモデルではなく、臨機応変にフィリピンで事業を立ち上げ、先行的に現地の顧客に日本基準のサービスを提供してきた経緯がございます。基本的に今後もその流れで事業を進めていくと考えております。

取材者：承知いたしました。それでは株主還元につきまして、方針の変更などございましたら教えていただけますか。

回答者：株主還元については、2026年3月期から2028年3月期までの3年間、配当を40円で据え置くことを開示しております。決算資料の18ページにも記載しておりますが、資本コストを上回るROEを維持しており、配当性向20%を基本方針としておりました。しかし、フィリピン東岸の陸揚局建設など、今後見込まれる成長投資の機会を着実に実行し、将来的な成長によって株主の皆様に還元していきたいと考えております。そのため、配当方針を据え置くという形で今回開示させていただきました。投資機会を先送りするのではなく、今しっかりと投資を行い、企業の成長によって株主価値を高めていきたいという思いがございます。なお、据え置き期間終了後には、配当性向20%以上への回帰を基本とし、財務状況や投資回収の進捗等を踏まえて、柔軟な株主還元の実施を検討していまいります。株主還元に関して明確にアナウンスしたのは以上ですが、社内では様々な議論をしており、状況に応じて判断し、お伝えしていく状況です。

取材者：それでは最後に、足元のトピックスやニュースリリースがございましたら教えていただけますか。

回答者：今少し触れましたが、フィリピンの東岸に陸揚局という、国際海底ケーブルをフィリピンに繋ぐための拠点を建設するプロジェクトを開始いたしました。これは大成建設さんの現地法人と組んで実施することになっており、先日セレモニーを先行して実施いたしました。今後、詳細が固まり次第、発表させていただきますが、プロジェクトは既に一部走り始めております。

このプロジェクトの意義は、ご存知の通りフィリピンの西側は南シナ海に面しており、様々な議論を呼ぶ海域でございますので、西側の海域における様々なリスクを避け、東側、つまり太平洋方面から海底ケーブルを引き上げられるようにすることで、経済安全保障上の配慮をした場所に陸揚局を建設するというものです。西側の海域では、海底ケーブルが切断される事例も発生しております。地政学的リスクを避け、日本やアメリカなど、太平洋の広いエリアからアクセスしやすいという、経済安全保障上もしっかり配慮した場所に陸揚局を建設することで、フィリピンをインターネット通信のハブにしていくという具体的な取り組みを開始いたしました。これが現在、足元の大きなプロジェクトです。

取材者：そういったところが売上として計上されるのは、大体どれくらいになると予想されておりますか。

回答者：まだ詳細が固まっていないのではっきりしたことは申し上げられませんが、今期いきなり計上されるようなスパンではございません。陸揚局完成後、イニシャルでの収益と、その後の利用料収入で数年かけて回収されていくイメージです。そのため、具体的には次期中期経営計画の期間において、本格的に収益貢献やビジネスが本格化していくものと考えております。今走っている中期経営計画は2期目ですので、今期と来期が終わった後くらいに、本格的に収益貢献していくイメージです。

取材者：承知いたしました。

回答者：次期中期経営計画期間において、陸揚局は、もちろん初期コストもかかりつつ、収益も入ってまいりますので、そこは早期の回収が見込めます。全体のイメージとして考えたときには、次期中期経営計画期間の目玉の事業の一つになっていくと考えております。既に見込み顧客とも交渉しながら、そういった需要があるからこそ建設を進めてまいりますので、今後もお客様の海底ケーブル接続に向け、交渉を進めていくことになります。

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