取材者：株式会社スタジオアタオ様は、現在、店舗とECの両方で販売されているとのことですが、それぞれの特徴をお聞かせください。

回答者：店舗販売では直営店の面積を増やし、お客様の来店回数を増やすことに注力しています。ECサイトは、「ATAOLAND＋」、「ILEMER公式オンラインショップ」、「ATAO楽天市場支店」、「アタオYahoo！店」の4つのチャンネルがあります。ECの売上高の約7割を直営サイトが占めるような体制を中長期的に構築しています。

取材者：商品デザインについては、どのように対応されていますか？

回答者：商品のデザインは、基本的にすべて社内で行っています。社内にデザイナーが在籍しており、自社でデザインを完結させています。春夏物と秋冬物で年に2回新作を発売し、売れ行きが好調で定番品になり得ると判断したものは、SKUを増やして展開していきます。そのため、当社は定番品がメインのラインナップとなっています。

取材者：定番品がメインとのことですが、ブランドの戦略や方針として、どのようなものを扱っているのですか？

回答者：大きく分けて革製品を中心とした「ATAO」、「IANNE」と「ILEMER」というブランドがあります。「ATAO」は、リピーターを獲得することに注力し、ネットを通じて新規顧客を獲得し、さらに顧客を増やしていく戦略です。一方、「ILEMER」というブランドは、キャラクターをメインに押し出した、アパレルに近いキャラクタービジネスです。「ATAO」は、リピーターを増やしていくことで、成長率を着実に伸ばしていく戦略です。一方、「ILEMER」はキャラクタービジネスであるため、ある程度の認知度がないと売上につながらないという側面があります。そのため、コロナ禍中はテレビCMなどを活用して認知度向上を図りましたが、業績が圧迫されたこともあり、「ILEMER」はコストコントロールをしました。しかし、その中で認知度が高まったおかげで、ライセンスの話がいくつか舞い込むようになりました。例えば、昨年9月にはハローキティとコラボした商品を販売しました。また、アメリカで販売しているドールも、ライセンスビジネスとして展開しており、日本にも逆輸入しております。売上高は「ATAO」がメインですが、成長性という点では「ILEMER」も高い可能性を秘めています。さらに、サステナブルな素材などを用いたカジュアルなバッグブランド「StrawberryMe」も展開しています。

取材者：貴社の特徴としてリピーターが多いとのことですが、定番品をメインに扱っていることがリピーターの獲得に繋がるのですか？

回答者：はい、そのように考えています。財布やバッグなどは、一度使うと、同じ場所に同じものを入れたいという欲求が働くため、同じものを使い続けたいという方が多いです。色や素材を変えたいというニーズはありますが、基本的な形は変えずに、徐々に改良を加えています。例えば、設立以来15年以上販売している定番商品もあります。リピーターは2～3年ごとに買い替える方が多く、そのサイクルでリピーターを獲得できていると考えています。

取材者：貴社の広告戦略としてはどのような方針をお持ちですか？

回答者：広告戦略は、基本的にネット戦略を中心としています。GoogleやYahoo!などの媒体に広告を出稿しています。広告の内容は、新規顧客の獲得とリピーターの獲得を両立させるような内容にしています。最近では、InstagramやFacebookからの購入者も増えているため、これらのSNSを活用した広告も展開しています。また、ブランド価値を高めるために、雑誌広告も一部活用しています。販売促進費の中で、ネット広告費が最も大きな割合を占めています。

取材者：ブランドによっても違いはあるかと思いますが、ターゲット層としてはどのような層に訴求しているのですか？

回答者：ブランドによって異なりますが、「ATAO」は20代後半から40代中盤の女性をターゲットにしています。若い人たちよりも、ある程度自由に使えるお金があり、良いものを持ちたいという人たちをターゲットにしています。

取材者：類似するブランドとの明確な違いや差別化のポイントは何ですか？

回答者：トレンドに左右されないデザインと、ハイブランドよりも原価率をかけ、品質の高い商品を提供しているという点です。コストバランスと素材の良さなどが差別化のポイントです。

取材者：素材の良さについてお伺いしましたが、ESGの観点から見て、素材の入手経路などに取り組みはありますか？

回答者：まだそこまでは具体的にはできていませんが、基本的に牛革は食用として飼育された牛の革を使用しています。イタリアの革は、タンナー（革のなめし業者）から直接仕入れています。クロコダイルなどの革も一部扱っていますが、そういったものは前面に押し出さずに、スリーピングレザーを積極的に活用しています。ビーガンレザーなども、実験的に「StrawberryMe」で試しています。

取材者：EC市場が拡大している中で、物流倉庫への対応策や、売れ残り商品の取り組みについて教えてください。

回答者：売れ残りに関しては基本的に廃棄することはありません。定番品から外れた商品に関しては、年末の福袋で販売しています。アパレルのような大量廃棄は、今のところ発生していません。定番品が中心なので、ある程度在庫を持っていれば販売できる仕組みになっています。

取材者：売り上げの予想は比較的立てやすいのですか？

回答者：はい、比較的予想は立てやすいです。過去の決算数値を見ていただくとわかりますが、3年前に第三者に委託していたECサイトの運営を終了し自社での運営に切り替えたため、売上が減少しました。そこから新規顧客を増やし、売上を回復させてきました。これは、ECサイトを内製化したことで、顧客データが一度ゼロになってしまったことが原因です。そこから新規顧客を増やすために、様々な施策を講じてきました。その結果、ようやく業績が回復してきたところです。

取材者：今期ここまで業績が好調な要因として、認知度が上がってリピーターが増加したということが大きいのですか？

回答者：はい。ネット、特に直営サイトのリピーターの方々が追加で購入する動きが見られています。また、コロナ禍が落ち着き、実店舗への客足が戻ってきていることも要因の一つです。さらに、2023年10月に楽天市場に出店し、2024年11月にはYahoo!ショッピングに出店したことも、売上増加に貢献しています。足元では、これらの要因がプラスに働いています。

取材者：楽天市場やYahoo!ショッピングからの流入は、新規顧客が多いのですか？

回答者：ECサイトを内製化したことで、顧客データが一度ゼロになってしまったため、この3年間は新規顧客の獲得に注力してきました。楽天とヤフーの方が、どちらかというと過去にいたユーザーが戻ってきてくれたという感じです。3年前にクローズしたECサイトと比較すると、ユーザー数は増えています。直営サイトは、新規顧客の獲得をメインに考えています。

取材者：直営サイトで新規顧客をリピーターにするために、どのような施策を講じていますか？

回答者：Google広告の配信を増やしていることと、以前はほとんどやっていなかったInstagramやFacebookの広告も積極的に展開しています。顧客の年齢層が徐々に上がっていましたが、直営サイトを立ち上げてからは、広告を通じて新規顧客を獲得することで、年齢層が下がってきました。また、Instagramの活用により、さらに年齢層を下げることができました。若い人たちをターゲットにしたアニマル柄の商品なども販売しており、新規顧客の獲得に繋がっています。リアル店舗の顧客は40代以上が多いですが、ネット販売では20代〜30代の顧客の獲得にも成功しています。このような施策により、新規顧客の割合は全体の約4割を占めるようになりました。既存顧客向けの施策としては、アプリでのプッシュ通知、メルマガ配信やLINEの配信などを行っています。

取材者：テレビCMを放送の効果はいかがですか？

回答者：実は3年前に初めてテレビCMを放送したのですが、認知度向上とブランディングを図る目的で結構な金額を投じたため、一時的に赤字になりました。テレビCMの効果を測定するために、CM放送後にはアンケートを実施し、認知度向上が一定程度図れたことが分かりました。

取材者：3年間で知名度も上がってきているとのことですが、売り上げに表れているのですか？

回答者：まだそこまではっきりとした効果は出ていません。しかし、商品の投入や広告活動など、様々な施策を行っているため、認知度は広がってきていると感じています。徐々に顧客層が広がってきていると感じています。

取材者：創業の経緯についてお聞かせください。

回答者：当社の社長である瀬尾は、元々はアパレル商材を扱っていましたが、トレンドの移り変わりが激しく、安定した商品作りができないことに課題を感じていました。また、サイズ展開が多いことも、SKU管理の面で課題でした。そこで、トレンドに左右されない定番の型を作り、カラーバリエーションや素材で変化を付けるというビジネスモデルを思いつきました。最初は神戸で「ATAO」というブランドを立ち上げ、バッグ・財布の販売からスタートしました。当初は実店舗からスタートし、2～3人で始めたと聞いています。

取材者：最初の店舗での販売戦略で苦労したことはありますか？

回答者：当時は認知度が低く、ブランドを知らない人がほとんどだったため、商品の魅力を伝えることに苦労しました。

取材者：当初からトレンドに左右されないという理念でスタートし、今のブランドに繋がっているのですね。株主還元策については、どのような方針をお持ちですか？

回答者：株主還元策としては、配当と株主優待を実施しています。業績はまだ十分に拡大していないため、増配などは難しい状況ですが、自己株式の取得なども行っています。業績拡大を最優先に考えています。業績が向上すれば、増配や株主優待の拡充、自己株式の取得などを検討していきたいと考えています。

取材者：今期、新たに取り組まれていることや、業績に影響するようなトピックスはありますか？

回答者：この3年間は、ECサイトのリニューアルが大きな課題でした。リピーターが増加し、購入回数も増えているため、顧客の獲得と維持に注力してきました。昨年からはInstagramの広告展開にも力を入れており、年齢層を拡大させることを目指しています。また、認知度調査の結果、関西では認知度がある程度あるものの、関東での認知度をさらに高める必要性を感じています。今後は関東圏での認知度向上にも力を入れていきたいと考えています。関東圏の認知度向上については、具体的な施策は検討中ですが、百貨店への出店も視野に入れています。「ILEMER」は、認知度向上のため、百貨店などでのポップアップストアを積極的に展開しています。「ATAO」の認知度向上のため、ポップアップストアの開催や百貨店への出店を強化しています。実店舗の売上比率は、「ATAO」が90%、「ILEMER」が5%です。「ILEMER」は、主に催事販売やポップアップストアで販売しています。「ILEMER」は、今後、ライセンスビジネスも強化していきたいと考えています。

取材者：関東圏での店舗展開の戦略はありますか？

回答者：関東では、新宿、横浜、有楽町に店舗があり、それぞれ顧客層が異なります。「ATAO」は、百貨店、SCへの出店が中心となります。当社はこれまで小さな店舗が多かったため、全商品を置くことができませんでした。現在、神戸に100坪ほどの旗艦店があり、関東にも同様の店舗を構えたいと考えています。しかし、東京で100坪の売り場面積を確保することは非常に難しいですが、良い場所があれば、引き続き探っていく予定です。

取材者：ありがとうございました。