取材者
貴社のビジネスモデル、事業内容につきまして、不動産事業と温浴事業が主な柱となっているとのことですので、改めて事業の特徴や強みなども含め、ご説明いただけますでしょうか。
回答者
承知いたしました。不動産事業からご説明いたします。不動産事業におきましては、立地の良い場所に物件を有しており、居住者の方が大半を占めている状況です。また、子会社に物件を賃貸していることも主な事業の一つです。住居につきましては、立地が良いこともあり、あまり空室が出ず、安定して収益を得ている状況です。
西麻布の物件につきましては、同じく子会社であるエレナが賃貸しており、温浴事業、具体的にはスパ・サウナの事業を展開しております。スパ・サウナにつきましては、オープンしてまだ2年ほどですが、徐々に認知度が向上しており、安定した運営ができていると考えております。
東京・新宿にも物件を有しており、こちらにつきましては、株式会社テルマー湯が賃貸しております。こちらについては、コロナ禍において大きな影響を受けましたが、徐々に収束し、ほぼ回復いたしました。しかしながら、コロナ禍前と状況が変わり、深夜帯のお客様が減少する一方で、日中の利用客が増加し、インバウンドの効果も見られるという状況です。
昨年8月に料金改定を実施しましたが、そのタイミングも良かったようで、現在のところ、株式会社テルマー湯の業績は堅調に推移しております。温浴事業の内容としては以上です。
取材者
深夜のお客様が伸び悩んでいるとのことですが、その理由についてどのようにお考えでしょうか。
回答者
新宿界隈の飲み屋街に人が少ないことが要因であると考えております。以前は、終電を逃した方が宿泊代わりに弊社の温浴施設を利用されることが多かったのですが、そのような方が少なくなっているようです。
取材者
昨今のサウナブームの影響はいかがでしょうか。温浴施設の昼間の集客に関して、近年サウナブームが顕著であるように思われますが、その影響も大きいのでしょうか。
回答者
新宿の施設は、一般的なサウナであり、特に特色があるわけではありません。そのため、サウナブームの影響はそれほど大きくないと考えております。やはり、立地の良さが集客の大きな要因であると考えております。駅からのアクセスが良いことや、周辺に繁華街があることが、多くのお客様にご利用いただいている理由です。
取材者
もともと不動産事業をされていましたが、温浴事業のような不動産の活用をされるに至った経緯について、お伺いできますでしょうか。あるいは、全く別の要因があったのでしょうか。
回答者
温浴事業に関しましては、幸運なことに、全くの別事業として開始いたしました。弊社も新宿の施設を立ち上げた際には、ノウハウが一切ない状態で、手探りで運営していたというのが実情です。
取材者
貴社の創業の経緯から、温浴事業を開始された転換点について、お教えいただけますでしょうか。
回答者
その点につきましては、私も当時重要な役職に就いていなかったため、詳しい経緯は把握しておりません。ただ、元々新宿の土地は駐車場として利用しており、月極駐車場として運営しておりました。その広い土地を有効活用するために、温浴事業が候補として挙がったと聞いております。
取材者
もともとの繊維の事業とは全く別ということでしょうか。
回答者
全く関係がありません。繊維事業につきましては、私が入社した頃から縮小傾向にあり、事業規模が小さくなっていく状況でした。いずれ、別の事業を行わないと会社として存続できないという状況に至る可能性がありました。温浴事業の前にも、様々な事業を手がけております。
様々な事業を行う中で、温浴事業が時代のニーズに合致したということです。
取材者
例えば、温浴事業が柱となる前は、どのような事業をされていたのですか。
回答者
化粧品の製造販売や、ゴルフ場の運営、アパレル事業なども行っておりました。他にも短期的にいくつか事業を試みましたが、うまくいかずに撤退したという経緯もございます。
取材者
まさに時代の変化に合わせて様々な事業を展開されていたのですね。
回答者
はい、どの事業が適切であるかを模索していたというのが実情です。
取材者
温浴事業が大きな柱となっている現在、今後の新規事業の拡大という観点からはいかがでしょうか。
回答者
現状のままでは、収益も売上も向上していかないため、何か新しい取り組みが必要であるということは、経営陣の間でも認識されています。
取材者
今後の温浴施設の店舗展開など、温浴事業の成長戦略はいかがでしょうか。
回答者
温浴事業に偏りすぎているという認識があり、多店舗展開は、施設そのものを作っていくことになるため、容易ではありません。また、コロナ禍のような突発的な事態が発生した場合、同じ事業のみでは一気に業績が悪化するリスクがあります。そのため、そういったリスクを検討しながら、多店舗化も視野に入れてはおりますが、現時点では、コロナ禍のような事態に影響されない別事業の展開も検討しております。
取材者
そのような新規事業に関して、M&Aなどは考えられていますか。
回答者
はい、M&Aも選択肢の一つとして検討しております。
取材者
シナジーのある事業だけでなく、全く別の事業であっても、良いと思われるものがあれば検討していくというお考えでしょうか。
回答者
はい、比較的広い視野で、様々な情報にアンテナを張り、機会があれば検討したいと考えております。
取材者
温浴事業についてですが、インバウンドの需要も高まっている中で、外国人の方が温浴施設を利用する際のマナーの問題など、利用者の方々が気にされる点もあるかと思います。その点についてはいかがでしょうか。
回答者
現状では、特に問題視されていることはありません。ただ、外国人の方、特に欧米の方には、刺青をされている方がいらっしゃるため、入浴をお断りせざるを得ない場合があります。そのため、すべての方にご利用いただけるわけではないという点が課題です。また、海外向けの広報活動を積極的に行っていないため、海外での認知度はまだ低いと感じています。
取材者
今後は、海外の旅行情報誌などに広告を掲載するなど、インバウンド向けの施策を検討されていますでしょうか。
回答者
具体的な計画はまだありませんが、そういったことも含めて、対策を検討してまいります。
取材者
それでは、今期の業績についてお伺いします。今期業績は上方修正をされており、対前年比でも好調に推移しているように見受けられますが、業績好調の要因について、どのようにお考えでしょうか。
回答者
業績好調の要因は、一概に申し上げるのが難しいところです。昨今、物価高騰など、様々な問題がある中で、直近ではやや芳しくない状況も見受けられます。これまでは、皆様に温浴施設をご利用いただくことが多かったのですが、ここにきて客足が鈍っていると感じております。
取材者
貴社の売上に季節性はございますか。例えば、寒くなると温泉に行かれる方が増えるといったことはございますか。
回答者
はい、一般な温浴施設と同様に、寒くなると利用客が増える傾向にあります。季節要因は大きく影響します。
取材者
やはり、冬場の方が売上は伸びるのですか。
回答者
そうですね。例年、12月、1月、2月、3月あたりが最も売上が伸びます。
取材者
貴社の温浴施設では宿泊も可能とのことですが、宿泊されるお客様は、地方から来られる方が多いのですか。それとも、先ほどおっしゃっていたように、終電を逃した方が多いのですか。
回答者
詳細な統計を取っていないため、明確なことは申し上げられませんが、感覚的には、都心、あるいは関東圏内の方が多いのではないかと考えております。
取材者
他のサウナ施設は、カプセルホテルのようなイメージが強いのですが、貴社の施設はいかがですか。
回答者
弊社の宿泊施設は、ビジネスホテルに近い形態で、出張で来られるビジネスマンの方の利用が多いです。
取材者
復配もされていますが、株主還元策について、方針などございましたらお教えいただけますでしょうか。
回答者
一般的なお話になりますが、安定した収益と売上を上げ、投資家の皆様にご理解いただくというのが基本的な方針です。ただ、人的コストの問題もあり、難しいところもあります。
取材者
今回復配されたのは、業績が回復してきたことが大きな理由なのですか。
回答者
はい、業績が回復してきたことを株主の皆様にアピールするという意図もあります。ある程度、事業の安定性が見込めたため、復配に至りました。実は、コロナ禍直前までは、過去最高の売上と利益を達成しており、その時点で復配を検討していたのですが、コロナ禍の影響で延期せざるを得なかったという経緯があります。
取材者
それでは、今期から始められたことや、業績以外でのトピックスなどはございますか。
回答者
少々ネガティブな話題で恐縮ですが、新宿の施設が10周年を迎え、老朽化が目立ってきたため、修繕の必要が出てきております。ただ、大規模な修繕というわけではなく、メンテナンスを行う必要がある箇所がいくつか出てきているという状況です。
取材者
来年の創業100周年に向けて、何かプロジェクトなどはございますか。
回答者
企画したいという思いはありますが、現在のところ、社内で具体的な話は出ておりません。