20250819
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?
A:当社はDX推進を成長戦略の柱に据えています。賃貸仲介事業では、オンライン接客が主流になりつつあることを踏まえ、さらなる効率化のため、夜間でも対応可能なAIクローンを活用した接客を検討しています。これにより、人員を増やすことなく売上を伸ばすことを目指します。賃貸プロパティマネジメント事業では、現在開発中の不動産管理システムを、将来的に他不動産業者へ横展開することを検討しています。また、AI活用により、人の負担を軽減し、効率的に物件を仕入れ・売却することで、一人当たりの売上単価を向上させることを今後の課題としています。
Q:通期予想の戦略と施策についてご説明ください。
A:2026年6月期は、増収増益を目標としています。賃貸DXプロパティマネジメント事業では、サブリース物件を積極的に増やし、ストック収益の拡大を図ります。これによりストック額を上げ、空室率の短縮や効率化が進むにつれて収益が自然に上がると考えています。売買DXインベスト事業では、高額物件にシフトすることで、販売件数が減少しても一件あたりの単価を上げ、増収増益を目指します。その他の事業においても、DRAFT事業の黒字化や、ホープ事業の継続的な増収増益が見込めるため、2025年6月期下期の傾向を維持し、さらに上乗せを目指す方針です。
Q:M&A、業務提携、事業売却などの実施または検討状況と、それに伴う影響についてご説明ください。
A:新たな収益の柱を構築するため、M&Aを検討しています。特に老朽化した物件が増加する「スクラップアンドビルド」の時代を見据え、解体業者の買収を検討しています。既に独占交渉権を得た企業がありましたが、不透明な点があったため見送りました。今後も複数の候補を吟味し、買収が実現すれば、案件獲得や利益の大幅な上乗せが見込めます。
Q:中期経営計画の内容や進捗状況等をご説明ください。
A:現在の中期経営計画は今期で終了となりますが、次期計画については、策定するかどうかを慎重に検討しています。計画に縛られることを避け、不況時にも持ちこたえ、立て直しができる強い会社にすることを目指しています。賃貸管理事業を強化しているのはそのためです。長期的な目標として、自然な形で利益100億円を達成したいと考えており、そのためにはM&Aなどによる新たな事業の柱を検討しております。
取材者: 2025年6月期は、売上高52,372百万円(前期比24.5%増加)、営業利益3,946百万円(同44.8%増加)、経常利益3,524百万円(同40.6%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益2,350百万円(同43.5%増加)と大幅な増収増益となり、賃貸DX賃貸仲介事業も賃貸DXプロパティマネジメント事業も大幅な増収増益となり、ようやく軌道に乗ってきたという印象です。まず2025年6月期を総括して、どのように評価していらっしゃいますか。また、2026年6月期以降の課題はどのようなところにあるか、お聞かせいただけますか?
回答者: 2025年6月期を振り返ると、やはり売買DXインベスト事業でかなり売上が伸びたのが正直なところです。2024年6月期と違うのは、翌期の仕入れをしっかり行った上で計上したものですから、余力を残して終えることができました。これが数字的な側面です。実態的な部分では、賃貸DXプロパティマネジメント事業で賃料アップを着実に進めており、これが大きく反映されるのは今期か来期以降になると思います。入居ニーズが高まっており、今のオフシーズンでも入居率を維持できていますので、今年の繁忙期が非常に楽しみです。
取材者: DX関連についてですが、今後の展望についてお聞かせください。
回答者: DXの取り組みとして、都内の賃貸仲介ではオンライン接客が主体になりつつあります。対面ではなく、Zoomのような形でオンラインでやり取りして成約に至るケースが非常に増えてきました。これが主流になることと、深夜の接客が課題だと考えています。自分のクローンが夜中でも接客できるような形になれば、さらに効率化が進むでしょう。これにより、人員を減らすのではなく、今の人数で売上を増やしていきたいと考えています。
賃貸DXプロパティマネジメント事業では、現在DXのシステム開発を進めています。まずは不動産業者への横展開です。私たちが作った基幹システムである不動産管理システムを横展開できれば、非常に面白いと考えています。また、人が行う作業がまだ残っているため、AIを活用して人の負担を軽減させることも課題の一つです。売買DXインベスト事業でもDXを使って簡素化を進めることは可能だと思います。仕入れ情報のデータ整備など、今期は力を入れていきたいと考えています。より効率的に物件を仕入れて売却し、一人当たりの売上単価を上げていくことが今後の課題です。
取材者: 賃料についてのお話ですが、業界全体では2021年から2025年で年率7%に対し、貴社は8%と高い伸び率です。しかし、昨年の動きを見ると、業界平均の方が伸びていたように見えます。これは、来年や再来年に効果が出てくるという理解でよろしいですか?
回答者: 賃料アップは定期的に行っています。業界平均と乖離があるように見えて、勢いが業界平均の方があるのではと思われがちですが、業界平均の金額を大きく引き上げているのはタワーマンションなどのファミリータイプの物件です。これらの物件は10%から15%アップしている不動産会社も多くいらっしゃいます。一方、当社はワンルームやコンパクトマンションを扱っており、10万円の家賃を1万円上げるのも大変です。ワンルームに住んでいる方は、家賃にお金をあまり使わない傾向にあるため、値上げの幅を大きくすることは難しいです。
しかし、それでも業界平均は上回っています。賃貸DXプロパティマネジメント事業の売上が7%増加し、管理戸数が8%増加しているため、一件あたりの収入が上がっていないように見えます。これは、一括借り上げの解約などがあるためです。
取材者: サブリースが解約になると、サブリースの家賃が売上になるため、トップラインの売上が少し下がってしまうということですか?
回答者: その通りです。通常の管理戸数は増えていますが、利幅は増えます。しかし、売上高のトップラインが下がってしまうため、見た目上は売上が鈍化しているように見えるかもしれません。しかし、利益は上がっています。このようなやりくりによって、現在の決算結果になっています。収益性は非常に高くなっています。
取材者: 家賃が安定的に推移し、解約率や入居率が横ばいであれば、当然収益を維持できます。そこにAI活用による効率化で、さらなる収益性向上余地があるという理解でよろしいですか?2025年6月期では、DXやAI活用の効果は2024年6月期と比べて上がったのですか?
回答者: AI自体が進化していることが第一ではありますが、それ以外のシステム開発やテック系の恩恵も、前年に比べてかなり進化しています。私たちは絶えず現場の意見を吸い上げながらバージョンアップを行っています。今後もAIなどを組み込みながら、数年かけて業務をさらに簡素化し、AIに任せられる部分は任せ、新たな事業を創出していきたいと考えています。
取材者: 収益性アップにどのくらい貢献したか、ざっくりとした分析はございますか?
回答者: そこまで細かい分析はまだ行っていませんが、一人当たりの契約件数や、今まで数十分かかっていた業務が数分で終わるようになった事例は多数出ています。ただ、数字的な部分はまだ分析して出していません。今後は、一人当たりの契約数などが何パーセント上がったかといったことも分かるので、分析して出すべきかもしれません。
取材者: 2026年6月期もAI活用による効率化を進め、賃貸DXプロパティマネジメント事業の収益性はさらに上がるとお考えですか?
回答者: 収益は上がっていますので、さらに上げていきたいと考えています。今年のテーマはサブリースを積極的に増やしていくことです。サブリースの管理戸数をどれだけ取れるかによって収益性は変わってきますが、増収増益を目標としています。ただ、利益率が高まるかどうかは状況によります。
取材者: 戦略上収益率が多少下がっても、収益額を拡大させていく方針ということですね?
回答者: そうです。ストック型のビジネスなので、利益率はもちろん考えていますが、まずはストック額をどんどん上げていくことが重要です。ストックの額を上げれば、空室率の短縮化や効率化が進むにつれて、自然と収益が上がっていきます。おかげさまで賃貸DXプロパティマネジメント事業の粗利だけでも20億円に迫る勢いで、これはかなり大きいと考えています。安定的な収益基盤は、他のビジネスにもプラスになります。
取材者: 賃貸DX賃貸仲介事業の改善は、テクノロジー活用と、人材が増え育ってきたことの両面効果が出ているということですね?
回答者: その通りです。子会社であるアンビション・エージェンシーやアンビション・バローの人数は、そんなに増えていません。人数が増えたというよりは、一人当たりの契約数が増え、効率化が図られている両面での効果です。
取材者: 今後はどういった方針で進めていかれますか?リモート接客の強化などについてお聞かせください。
回答者: 今後、店舗数を広げていくというよりは、オンラインの流れをしっかりと取り入れていきたいと考えています。オンラインでの接客・契約が増えていることに慢心することなく、オンラインをさらに増やしていくことで、今まで土日しか時間が取れなかったお客様が、平日にオンラインで接客を受け、成約に至るパターンが増えています。もちろん土日に集中する状況は変わりませんが、オンライン対応によって平日の売上を伸ばすことができています。
取材者: リモート接客は倍増していますが、全体の接客数に占める割合はどのくらいになっていますか?
回答者: 3割程度だったものが、半分ぐらいになっています。法人のお客様と学生のお客様が非常に多くなりました。
取材者: オンラインでの契約率はどのくらいですか?
回答者: 31.5%です。
取材者: かなりの高い率ですね。
回答者: 一般のお客様よりも成約率が高い傾向にあります。夜でも接客を受けようとするお客様は、効率化を考えている方が多いため、双方の意向が合致するのだと思います。今後、ターゲットとして考えているのは深夜の接客です。ドン・キホーテが24時間営業で成功したように、我々もアバターやクローンを活用して深夜でも対応できるようにしたいと考えています。これにより、夜中にしか動けないお客様をしっかり取り込むことができれば、売上はもっと上がっていくでしょう。都心部では特にそういったニーズが高いと考えています。
取材者: 2026年6月期の業績予想は、売上高64,144百万円(前期比22.5%増加)、営業利益4,800百万円(同21.6%増加)、経常利益4,143百万円(同17.6%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益2,776百万円(同18.1%増加)となっておりますが、今期も賃貸DX賃貸仲介事業は安定的に収益を出すという判断でよろしいですか?増収増益の計画ですか?
回答者: もちろん増収増益の計画です。
取材者: 売買DXインベスト事業は仕入れが順調で、金額も上乗せされ、販売用不動産も増えているため、今期も安心して見ていける状況かと思います。販売用不動産は、ヴェリタスとインベスト部の両方で増やしているのですか?
回答者: インベスト部が主体です。前期はヴェリタスの販売用不動産が49件増えましたが、今期も増える予定です。売上と利益を昨年並みと仮定すると、資材や土地の高騰で一件あたりの利幅が減っているため、それをカバーするには数をこなす必要があります。したがって、契約数は増えるはずですが、利益は前期と同等で見ています。
取材者: 売買DXインベスト事業は前期と比較して販売数が40件減ったということですか?
回答者: はい。前期は109件で、今期が69件ですので、40件減りました。
取材者: 2025年6月期に売買DXインベスト事業の利益が41.5%増加したのは、ヴェリタスが増益で、インベストは横ばいか微増益だったということですか?
回答者: インベスト部は増益でした。ヴェリタスは減益ではありませんが、横ばいから微増益でした。インベスト部では高額物件にシフトしているため、個数は減っても一件当たりの単価が上がり、増収増益となりました。
取材者: 2026年6月期も同様の方針で、インベスト部が主体となって収益を上げていくということですね?
回答者: はい、間違いございません。
取材者: 億ションの割合は増えていますか?
回答者: かなり増えています。1億円以上の取引がかなりの確率で増えました。
取材者: 2026年6月期も買取再販の単価は上がるという見通しですか?
回答者: はい。資材高騰などでリノベーションコストが上がった分を乗せることと、都心部の市況が下がらないという見通しでそう考えています。今後1、2年は市況が維持されるか、最悪でも横ばいという前提です。
取材者: その他の事業も下期から計画通りに利益が出ていますが、これはDRAFTが黒字化したことが大きいですか?
回答者: はい。加えて、ホープ(少額短期保険事業)は継続的に増収増益が見込めるビジネスモデルです。
2026年6月期も2025年6月期下期の傾向を維持し、さらにプラスアルファを目指していきます。先行投資の費用は考えていません。
取材者: 貴社はセグメントごとの収益見通しを出していませんが、今後もその方針ですか?
回答者: そのつもりはありません。
取材者: 中期経営計画は今期で終わりますが、次期計画はお作りになりますか?
回答者: 作りたいとは思っています。3ヶ年計画を出して実績も出てきましたが、あまり計画を出しすぎると、それに縛られてしまうことを懸念しています。どのようなことがあっても潰れない会社にするために、賃貸管理事業を強くしています。何か全体的な不況が起こったときに、しっかりと持ちこたえ、立て直せるようにしておきたいのです。そのため、3ヶ年計画を出すと、そこに固執してしまうのが怖いという思いがあります。70億から80億円ぐらいまではいけるイメージはありますが、それを超えなければ市場が評価しないといったプレッシャーを避けるためです。自然な形で100億円まで持っていければ良いなとは思っています。
そのためには、M&Aなどでもう1つ2つ新たな柱が欲しいと思っています。
取材者:足りないものはどのようなものがありますか?
回答者: 今後は「スクラップアンドビルド」の時代になると考えています。老朽化した物件が増えてくるので、それを解体して建て直すという流れです。そこで重要になるのが解体業者です。私たちは、解体業者をM&Aで取得することを検討しており、独占交渉権も得ましたが、先方の会社に不透明な部分があったため、今回は見送りました。他にも数社、候補がありますので、しっかりと吟味して良い会社があれば買収したいと考えています。もし解体業者を取得できれば、私の周りのブレーンが案件をたくさん持ってきてくれるので、利益は倍増、もしくは大幅に上乗せできると見込んでいます。人材の採用や教育は必要ですが、解体業者を持つことができれば、利益100億円も見えてくるでしょう。
取材者: それでは、DXやAIを業者間取引へ横展開する構想はいかがですか?
回答者: 業者間販売は行ってきましたが、システムがまだ完成していないのが現状です。これが完成するのは2年後になる見込みです。もちろん他社も同様のシステムを開発していますが、現場を知っている私たちが作ったシステムは、専門の会社が作ったものよりも痒いところに手が届くものになると考えています。AIをしっかりと組み込み、数年後には音声で入力業務ができるようになることも視野に入れ、できるだけ早くシステムを完成させたいです。
20250821 アナリストA様
決算概要
2025年6月期は、売上高52,372百万円(前期比24.5%増加)、営業利益3,946百万円(同44.8%増加)、経常利益3,524百万円(同40.6%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益2,350百万円(同43.5%増加)と、大幅な増収増益を達成した。特に売買DXインベスト事業の売上が大きく伸長したことが、業績を牽引した。
主要KPIの進捗と変化
賃貸DXプロパティマネジメント事業では、管理戸数が8%増加したにもかかわらず、一件あたりの収入が上がっていないように見えるが、これは一括借り上げの解約などがあるためである。賃貸DX賃貸仲介事業では、リモート接客の割合が全体の3割程度から半分程度まで増加し、オンラインでの契約率は31.5%と高い水準にある。この背景には、法人や学生といった効率性を重視する顧客層の増加がある。
通期見通しと進捗率・達成可能性
2026年6月期の業績予想は、売上高64,144百万円(前期比22.5%増加)、営業利益4,800百万円(同21.6%増加)、経常利益4,143百万円(同17.6%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益2,776百万円(同18.1%増加)の増収増益計画である。この計画は、賃貸DX賃貸仲介事業が安定的に収益を出すことや、売買DXインベスト事業の仕入れが順調で販売用不動産も増加していること、またDRAFの黒字化やホープ(少額短期保険事業)の継続的な増収増益が見込めることによって裏付けられている。
トピックス
中長期的な成長戦略として、賃貸管理事業を強化し、不況時でも持ちこたえられる経営基盤を構築することを目指している。その上で、利益100億円達成のため、M&Aにより新たな事業の柱を模索している。具体的には、老朽化した物件の増加を見据え、解体業者の買収を検討中であり、これにより利益を倍増もしくは大幅に上乗せできると見込んでいる。
代表取締役社長 清水 剛様
・資料
―

(株)アンビションDXホールディングス
東証GRT 3300
決算:6月末日
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?
A:当社はDX推進を成長戦略の柱に据えています。賃貸仲介事業では、オンライン接客が主流になりつつあることを踏まえ、さらなる効率化のため、夜間でも対応可能なAIクローンを活用した接客を検討しています。これにより、人員を増やすことなく売上を伸ばすことを目指します。賃貸プロパティマネジメント事業では、現在開発中の不動産管理システムを、将来的に他不動産業者へ横展開することを検討しています。また、AI活用により、人の負担を軽減し、効率的に物件を仕入れ・売却することで、一人当たりの売上単価を向上させることを今後の課題としています。
Q:通期予想の戦略と施策についてご説明ください。
A:2026年6月期は、増収増益を目標としています。賃貸DXプロパティマネジメント事業では、サブリース物件を積極的に増やし、ストック収益の拡大を図ります。これによりストック額を上げ、空室率の短縮や効率化が進むにつれて収益が自然に上がると考えています。売買DXインベスト事業では、高額物件にシフトすることで、販売件数が減少しても一件あたりの単価を上げ、増収増益を目指します。その他の事業においても、DRAFT事業の黒字化や、ホープ事業の継続的な増収増益が見込めるため、2025年6月期下期の傾向を維持し、さらに上乗せを目指す方針です。
Q:M&A、業務提携、事業売却などの実施または検討状況と、それに伴う影響についてご説明ください。
A:新たな収益の柱を構築するため、M&Aを検討しています。特に老朽化した物件が増加する「スクラップアンドビルド」の時代を見据え、解体業者の買収を検討しています。既に独占交渉権を得た企業がありましたが、不透明な点があったため見送りました。今後も複数の候補を吟味し、買収が実現すれば、案件獲得や利益の大幅な上乗せが見込めます。
Q:中期経営計画の内容や進捗状況等をご説明ください。
A:現在の中期経営計画は今期で終了となりますが、次期計画については、策定するかどうかを慎重に検討しています。計画に縛られることを避け、不況時にも持ちこたえ、立て直しができる強い会社にすることを目指しています。賃貸管理事業を強化しているのはそのためです。長期的な目標として、自然な形で利益100億円を達成したいと考えており、そのためにはM&Aなどによる新たな事業の柱を検討しております。
取材者: 2025年6月期は、売上高52,372百万円(前期比24.5%増加)、営業利益3,946百万円(同44.8%増加)、経常利益3,524百万円(同40.6%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益2,350百万円(同43.5%増加)と大幅な増収増益となり、賃貸DX賃貸仲介事業も賃貸DXプロパティマネジメント事業も大幅な増収増益となり、ようやく軌道に乗ってきたという印象です。まず2025年6月期を総括して、どのように評価していらっしゃいますか。また、2026年6月期以降の課題はどのようなところにあるか、お聞かせいただけますか?
回答者: 2025年6月期を振り返ると、やはり売買DXインベスト事業でかなり売上が伸びたのが正直なところです。2024年6月期と違うのは、翌期の仕入れをしっかり行った上で計上したものですから、余力を残して終えることができました。これが数字的な側面です。実態的な部分では、賃貸DXプロパティマネジメント事業で賃料アップを着実に進めており、これが大きく反映されるのは今期か来期以降になると思います。入居ニーズが高まっており、今のオフシーズンでも入居率を維持できていますので、今年の繁忙期が非常に楽しみです。
取材者: DX関連についてですが、今後の展望についてお聞かせください。
回答者: DXの取り組みとして、都内の賃貸仲介ではオンライン接客が主体になりつつあります。対面ではなく、Zoomのような形でオンラインでやり取りして成約に至るケースが非常に増えてきました。これが主流になることと、深夜の接客が課題だと考えています。自分のクローンが夜中でも接客できるような形になれば、さらに効率化が進むでしょう。これにより、人員を減らすのではなく、今の人数で売上を増やしていきたいと考えています。
賃貸DXプロパティマネジメント事業では、現在DXのシステム開発を進めています。まずは不動産業者への横展開です。私たちが作った基幹システムである不動産管理システムを横展開できれば、非常に面白いと考えています。また、人が行う作業がまだ残っているため、AIを活用して人の負担を軽減させることも課題の一つです。売買DXインベスト事業でもDXを使って簡素化を進めることは可能だと思います。仕入れ情報のデータ整備など、今期は力を入れていきたいと考えています。より効率的に物件を仕入れて売却し、一人当たりの売上単価を上げていくことが今後の課題です。
取材者: 賃料についてのお話ですが、業界全体では2021年から2025年で年率7%に対し、貴社は8%と高い伸び率です。しかし、昨年の動きを見ると、業界平均の方が伸びていたように見えます。これは、来年や再来年に効果が出てくるという理解でよろしいですか?
回答者: 賃料アップは定期的に行っています。業界平均と乖離があるように見えて、勢いが業界平均の方があるのではと思われがちですが、業界平均の金額を大きく引き上げているのはタワーマンションなどのファミリータイプの物件です。これらの物件は10%から15%アップしている不動産会社も多くいらっしゃいます。一方、当社はワンルームやコンパクトマンションを扱っており、10万円の家賃を1万円上げるのも大変です。ワンルームに住んでいる方は、家賃にお金をあまり使わない傾向にあるため、値上げの幅を大きくすることは難しいです。
しかし、それでも業界平均は上回っています。賃貸DXプロパティマネジメント事業の売上が7%増加し、管理戸数が8%増加しているため、一件あたりの収入が上がっていないように見えます。これは、一括借り上げの解約などがあるためです。
取材者: サブリースが解約になると、サブリースの家賃が売上になるため、トップラインの売上が少し下がってしまうということですか?
回答者: その通りです。通常の管理戸数は増えていますが、利幅は増えます。しかし、売上高のトップラインが下がってしまうため、見た目上は売上が鈍化しているように見えるかもしれません。しかし、利益は上がっています。このようなやりくりによって、現在の決算結果になっています。収益性は非常に高くなっています。
取材者: 家賃が安定的に推移し、解約率や入居率が横ばいであれば、当然収益を維持できます。そこにAI活用による効率化で、さらなる収益性向上余地があるという理解でよろしいですか?2025年6月期では、DXやAI活用の効果は2024年6月期と比べて上がったのですか?
回答者: AI自体が進化していることが第一ではありますが、それ以外のシステム開発やテック系の恩恵も、前年に比べてかなり進化しています。私たちは絶えず現場の意見を吸い上げながらバージョンアップを行っています。今後もAIなどを組み込みながら、数年かけて業務をさらに簡素化し、AIに任せられる部分は任せ、新たな事業を創出していきたいと考えています。
取材者: 収益性アップにどのくらい貢献したか、ざっくりとした分析はございますか?
回答者: そこまで細かい分析はまだ行っていませんが、一人当たりの契約件数や、今まで数十分かかっていた業務が数分で終わるようになった事例は多数出ています。ただ、数字的な部分はまだ分析して出していません。今後は、一人当たりの契約数などが何パーセント上がったかといったことも分かるので、分析して出すべきかもしれません。
取材者: 2026年6月期もAI活用による効率化を進め、賃貸DXプロパティマネジメント事業の収益性はさらに上がるとお考えですか?
回答者: 収益は上がっていますので、さらに上げていきたいと考えています。今年のテーマはサブリースを積極的に増やしていくことです。サブリースの管理戸数をどれだけ取れるかによって収益性は変わってきますが、増収増益を目標としています。ただ、利益率が高まるかどうかは状況によります。
取材者: 戦略上収益率が多少下がっても、収益額を拡大させていく方針ということですね?
回答者: そうです。ストック型のビジネスなので、利益率はもちろん考えていますが、まずはストック額をどんどん上げていくことが重要です。ストックの額を上げれば、空室率の短縮化や効率化が進むにつれて、自然と収益が上がっていきます。おかげさまで賃貸DXプロパティマネジメント事業の粗利だけでも20億円に迫る勢いで、これはかなり大きいと考えています。安定的な収益基盤は、他のビジネスにもプラスになります。
取材者: 賃貸DX賃貸仲介事業の改善は、テクノロジー活用と、人材が増え育ってきたことの両面効果が出ているということですね?
回答者: その通りです。子会社であるアンビション・エージェンシーやアンビション・バローの人数は、そんなに増えていません。人数が増えたというよりは、一人当たりの契約数が増え、効率化が図られている両面での効果です。
取材者: 今後はどういった方針で進めていかれますか?リモート接客の強化などについてお聞かせください。
回答者: 今後、店舗数を広げていくというよりは、オンラインの流れをしっかりと取り入れていきたいと考えています。オンラインでの接客・契約が増えていることに慢心することなく、オンラインをさらに増やしていくことで、今まで土日しか時間が取れなかったお客様が、平日にオンラインで接客を受け、成約に至るパターンが増えています。もちろん土日に集中する状況は変わりませんが、オンライン対応によって平日の売上を伸ばすことができています。
取材者: リモート接客は倍増していますが、全体の接客数に占める割合はどのくらいになっていますか?
回答者: 3割程度だったものが、半分ぐらいになっています。法人のお客様と学生のお客様が非常に多くなりました。
取材者: オンラインでの契約率はどのくらいですか?
回答者: 31.5%です。
取材者: かなりの高い率ですね。
回答者: 一般のお客様よりも成約率が高い傾向にあります。夜でも接客を受けようとするお客様は、効率化を考えている方が多いため、双方の意向が合致するのだと思います。今後、ターゲットとして考えているのは深夜の接客です。ドン・キホーテが24時間営業で成功したように、我々もアバターやクローンを活用して深夜でも対応できるようにしたいと考えています。これにより、夜中にしか動けないお客様をしっかり取り込むことができれば、売上はもっと上がっていくでしょう。都心部では特にそういったニーズが高いと考えています。
取材者: 2026年6月期の業績予想は、売上高64,144百万円(前期比22.5%増加)、営業利益4,800百万円(同21.6%増加)、経常利益4,143百万円(同17.6%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益2,776百万円(同18.1%増加)となっておりますが、今期も賃貸DX賃貸仲介事業は安定的に収益を出すという判断でよろしいですか?増収増益の計画ですか?
回答者: もちろん増収増益の計画です。
取材者: 売買DXインベスト事業は仕入れが順調で、金額も上乗せされ、販売用不動産も増えているため、今期も安心して見ていける状況かと思います。販売用不動産は、ヴェリタスとインベスト部の両方で増やしているのですか?
回答者: インベスト部が主体です。前期はヴェリタスの販売用不動産が49件増えましたが、今期も増える予定です。売上と利益を昨年並みと仮定すると、資材や土地の高騰で一件あたりの利幅が減っているため、それをカバーするには数をこなす必要があります。したがって、契約数は増えるはずですが、利益は前期と同等で見ています。
取材者: 売買DXインベスト事業は前期と比較して販売数が40件減ったということですか?
回答者: はい。前期は109件で、今期が69件ですので、40件減りました。
取材者: 2025年6月期に売買DXインベスト事業の利益が41.5%増加したのは、ヴェリタスが増益で、インベストは横ばいか微増益だったということですか?
回答者: インベスト部は増益でした。ヴェリタスは減益ではありませんが、横ばいから微増益でした。インベスト部では高額物件にシフトしているため、個数は減っても一件当たりの単価が上がり、増収増益となりました。
取材者: 2026年6月期も同様の方針で、インベスト部が主体となって収益を上げていくということですね?
回答者: はい、間違いございません。
取材者: 億ションの割合は増えていますか?
回答者: かなり増えています。1億円以上の取引がかなりの確率で増えました。
取材者: 2026年6月期も買取再販の単価は上がるという見通しですか?
回答者: はい。資材高騰などでリノベーションコストが上がった分を乗せることと、都心部の市況が下がらないという見通しでそう考えています。今後1、2年は市況が維持されるか、最悪でも横ばいという前提です。
取材者: その他の事業も下期から計画通りに利益が出ていますが、これはDRAFTが黒字化したことが大きいですか?
回答者: はい。加えて、ホープ(少額短期保険事業)は継続的に増収増益が見込めるビジネスモデルです。
2026年6月期も2025年6月期下期の傾向を維持し、さらにプラスアルファを目指していきます。先行投資の費用は考えていません。
取材者: 貴社はセグメントごとの収益見通しを出していませんが、今後もその方針ですか?
回答者: そのつもりはありません。
取材者: 中期経営計画は今期で終わりますが、次期計画はお作りになりますか?
回答者: 作りたいとは思っています。3ヶ年計画を出して実績も出てきましたが、あまり計画を出しすぎると、それに縛られてしまうことを懸念しています。どのようなことがあっても潰れない会社にするために、賃貸管理事業を強くしています。何か全体的な不況が起こったときに、しっかりと持ちこたえ、立て直せるようにしておきたいのです。そのため、3ヶ年計画を出すと、そこに固執してしまうのが怖いという思いがあります。70億から80億円ぐらいまではいけるイメージはありますが、それを超えなければ市場が評価しないといったプレッシャーを避けるためです。自然な形で100億円まで持っていければ良いなとは思っています。
そのためには、M&Aなどでもう1つ2つ新たな柱が欲しいと思っています。
取材者:足りないものはどのようなものがありますか?
回答者: 今後は「スクラップアンドビルド」の時代になると考えています。老朽化した物件が増えてくるので、それを解体して建て直すという流れです。そこで重要になるのが解体業者です。私たちは、解体業者をM&Aで取得することを検討しており、独占交渉権も得ましたが、先方の会社に不透明な部分があったため、今回は見送りました。他にも数社、候補がありますので、しっかりと吟味して良い会社があれば買収したいと考えています。もし解体業者を取得できれば、私の周りのブレーンが案件をたくさん持ってきてくれるので、利益は倍増、もしくは大幅に上乗せできると見込んでいます。人材の採用や教育は必要ですが、解体業者を持つことができれば、利益100億円も見えてくるでしょう。
取材者: それでは、DXやAIを業者間取引へ横展開する構想はいかがですか?
回答者: 業者間販売は行ってきましたが、システムがまだ完成していないのが現状です。これが完成するのは2年後になる見込みです。もちろん他社も同様のシステムを開発していますが、現場を知っている私たちが作ったシステムは、専門の会社が作ったものよりも痒いところに手が届くものになると考えています。AIをしっかりと組み込み、数年後には音声で入力業務ができるようになることも視野に入れ、できるだけ早くシステムを完成させたいです。
20250819 アナリスト様
決算概要
2025年6月期は、売上高52,372百万円(前期比24.5%増加)、営業利益3,946百万円(同44.8%増加)、経常利益3,524百万円(同40.6%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益2,350百万円(同43.5%増加)と、大幅な増収増益を達成した。特に売買DXインベスト事業の売上が大きく伸長したことが、業績を牽引した。
主要KPIの進捗と変化
賃貸DXプロパティマネジメント事業では、管理戸数が8%増加したにもかかわらず、一件あたりの収入が上がっていないように見えるが、これは一括借り上げの解約などがあるためである。賃貸DX賃貸仲介事業では、リモート接客の割合が全体の3割程度から半分程度まで増加し、オンラインでの契約率は31.5%と高い水準にある。この背景には、法人や学生といった効率性を重視する顧客層の増加がある。
通期見通しと進捗率・達成可能性
2026年6月期の業績予想は、売上高64,144百万円(前期比22.5%増加)、営業利益4,800百万円(同21.6%増加)、経常利益4,143百万円(同17.6%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益2,776百万円(同18.1%増加)の増収増益計画である。この計画は、賃貸DX賃貸仲介事業が安定的に収益を出すことや、売買DXインベスト事業の仕入れが順調で販売用不動産も増加していること、またDRAFの黒字化やホープ(少額短期保険事業)の継続的な増収増益が見込めることによって裏付けられている。
トピックス
中長期的な成長戦略として、賃貸管理事業を強化し、不況時でも持ちこたえられる経営基盤を構築することを目指している。その上で、利益100億円達成のため、M&Aにより新たな事業の柱を模索している。具体的には、老朽化した物件の増加を見据え、解体業者の買収を検討中であり、これにより利益を倍増もしくは大幅に上乗せできると見込んでいる。
代表取締役社長 清水 剛様
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