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(株)TMH

東証GRT 280A

決算:11月末日

20251030

CP&X


決算概要

当社グループの2025年11月期 第3四半期連結累計期間の経営成績は、売上高6,929,478千円、営業利益209,171千円、経常利益198,067千円、親会社株主に帰属する四半期純利益135,735千円となりました。

なお、当第3四半期連結会計期間において、一部大型装置案件の搬出順序のバラつき等が影響し、当第3四半期連結会計期間の売上高は407,465千円、営業損失は76,378千円、経常損失は75,979千円、親会社株主に帰属する四半期純損失は52,897千円となりました。


セグメント別または事業別の増減要因

当社グループの売上構成比は、①越境ECプラットフォーム等を利用した部品販売・修理サービスが約15%、②エンジニアリング力を活用した装置販売サービスが約85%、となっております。当第3四半期連結累計期間では、特に装置販売サービス売上高が前年同期比+92%と大幅に伸長しております。


主要KPIの進捗と変化

未来の業績に関する指標として、当第3四半期末の装置販売サービスの受注残総額は1,680百万円と前年同期比75%の減少となりました。これは前年同期末の受注残が前期末に装置販売が集中したことにより高水準であった一方、当第3四半期末の受注残が、当上期に装置販売が集中した影響で減少したことによるものです。


季節性・一過性要因の有無と影響

当第3四半期連結会計期間において、一部大型装置案件の搬出順序のバラつき等が影響し営業損失となりました。この主な理由は、装置販売ビジネスは一案件あたりの売上高・利益への影響が大きく、四半期単位では売上が平準的ではない側面があるためです。この損失は一過性のものであると認識しており、当社グループの売上および利益は期を通じて概ね堅調に推移する見込みです。


トピックス

2025年7月、韓国平澤市に当社初の子会社を設立いたしました。今後、韓国での装置調達・販売体制を強化し、エンジニアリング力を活かした装置販売と越境EC「LAYLA」の展開拡大を図ってまいります。また同月に半導体業界に特化したメディアサイトであるSEMICON.TODAYをローンチいたしました。本メディアでは、世界中の半導体産業に関する最新動向、業界リーダーの発言・動静、各国政府の政策方針、統計データ、など幅広いトピックを提供しております。

・資料

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​企業名

上場市場 証券コード

​決算日

取材アーカイブ

  • CP&X

     

    ビジネスモデルと事業内容

    (株)TMHは、2012年創業、大分市に本社を置く半導体工場の稼働支援企業である。 社員数39名で、越境ECを活用した部品販売・修理サービス、エンジニアリング力を生かした装置販売を展開し、国内5拠点を持つ。 半導体製造装置の延命やメンテナンスコストの軽減といった価値を提供し、顧客の調達、制度、物流など様々な課題をサポートしている。

     

    創業の経緯と転機

    東芝出身の代表が、東芝大分在籍時に創業。 当初は一般的な商社だったが、2015年に現管理部門担当者が参画し、プラットフォーム事業を開始した。

     

    直近の決算状況

    2024年の売上高は60億円を超え、2025年は83億円を計画。 2024年の売上高が前年比で大幅に増加した要因は、装置販売の伸びである。 これは、一過性のものではなく、2023年から既に成長は始まっていた(※但し、2023年に顧客の金額の大きいキャンセルがあった影響で、売上はそれほど増収していない。しかし、キャンセルを受け入れた代わりに補償金を受け取っているため、業績への影響は限定的であった。)

     

    特徴と強み

    老朽化した工場が多い日本の半導体業界において、装置の延命、メンテナンスコストの軽減、部品調達の効率化を実現するニッチトップ企業である。 越境ECプラットフォームとエンジニアリング力を融合したワンストップサービス、そして世界中のサプライヤーからなる独自のネットワークが強み。 また、社員の4割が外国籍であることも、グローバルな事業展開を支える強みとなっている。

     

    成長戦略

    人材プラットフォーム事業、国内拠点拡大、海外拠点展開を軸に成長を目指す。 人材不足解消のため、半導体業界の人材プラットフォームを構築し、求人情報の掲載、インターン情報の提供、教育コンテンツの配信などを行う。 広島、北海道への国内拠点拡大、インド、台湾への海外進出を計画。 インドでは現地企業との販売提携を、台湾では技術提携を検討している。

     

    株主還元策

    当面は成長投資を優先し、中長期的に安定収益基盤確立後に配当等を検討。 時期や規模は、今後の業績や財務状況などを踏まえ判断する。

     

    今期の取り組み

    人材プラットフォーム事業に注力し、装置販売、部品修理サービスの強化などトップラインを伸ばす施策を展開。 部品販売・修理サービスの内製化も段階的に進めていく。 プレスリリースなどで情報発信を行う。

  • Q. 貴社のビジネスモデル、事業内容の特徴と強みは何ですか?

    A. 当社は2012年に創業し、大分市に本社を置く会社です。社員数は39名で、事業内容は半導体工場の稼働支援を主に行っています。具体的には、越境ECを活用した部品の販売、修理サービス、そして装置販売を行っています。装置販売と申しましても、単なる販売ではなく、エンジニアリング力を生かした解体や移設などを必要とする案件にも対応しています。拠点は日本国内に5拠点あり、基本的には半導体工場の近くに隣接しています。

    当社は、「半導体業界が直面する様々な社会課題を解決するリーディングカンパニー」として、巨大な半導体業界において、半導体製造装置の延命やメンテナンスコストの軽減といった価値を提供しており、その中でもニッチトップかつ高成長を特徴としています。

     

    Q. 半導体製造装置の延命やメンテナンスコストの軽減といった価値を提供されているとのことでしたが、具体的にどのようなものでしょうか?

    A. 実は日本の半導体工場は、かなり老朽化した工場が多いというのが実情です。メディア等では、Rapidusの投資やTSMCの熊本進出などが注目されていますが、半導体にも様々な種類があり、電気自動車や工作機械に使われているものなど、多種多様でございます。そうした半導体に使われているのは、比較的テクノロジーレベルの低い半導体で、現在も稼働しているものが多くございます。そうしたレガシー半導体製造装置や、新品で設備投資されたものでも数年後には保守メンテナンスが発生してきます。そこで、当社はそうした半導体工場の稼働を支援することで、調達、制度、物流など様々な課題をサポートしています。

     

    Q. 越境ECを活用した部品販売・修理サービスについて詳しく教えてください。

    A. 半導体メーカーが部品調達を希望される際に、当社のサイトにアクセスしていただき、検索して、欲しいものがあれば見積依頼するというサイトです。装置、ロボット、ポンプ、モーター、パワーサプライ、電源関係など、様々な部品を取り扱っています。例えば、安川電機のロボットを調達したい場合、英語で「安川電機ロボット」と入力すると、価格、納期、保証期間、状態が一目でわかるようになっています。これまでこのようなサイトはなかったのです。

     

    Q. エンジニアリング力を活用した装置サービスについて教えてください。

    A. 装置は廃棄するにも費用がかかり、一般的な機械と比べて大きさが大きく、高さも2m、3mにもなります。そのため、単純に売買できるようなものではありません。工場クリーンルームの中に入って電源を落とし、部品単位で分解していく必要があります。何万点もの部品で構成されており、事故なく作業を行うには技術ノウハウが必要です。当社は、そうした解体作業を安全かつ確実に行える技術力を持っていることが強みです。解体した装置は販売したり、中古の半導体製造装置を半導体メーカーに販売した後に立ち上げ作業やプロセスのチューニングを行い、生産性改善なども行っています。過去には、大手半導体メーカーからサプライヤーアワードを受賞したこともあり、1万2000社の中から20社に選ばれたこともあります。

     

    Q. ビジネスフローを教えてください。

    A. 部品や修理サービスは、日本国内の半導体メーカーに対して提供しており、売上のほとんどを占めています。例えば、ロボットを修理してほしいという依頼があれば、当社がサプライヤーに依頼し、修理されたロボットを仕入れて販売するという流れになります。部品が欲しいという依頼があれば、当社がオーダーを受け、サプライヤーに発注し、納品するという流れになります。その中で、当社のECサイトも活用され、見積もりなどが行われます。もう一つは装置販売ですが、半導体製造装置の買い取りは、半導体工場から行います。これは中古の半導体製造装置になりますが、例えば大手半導体メーカーで新たな設備投資が行われると、工場のキャパシティには限りがあるため、古い装置は排出されます。当社は、そうした中古の半導体製造装置を買い取り、他の半導体メーカーに販売しています。キャッシュフロー的には、基本的に先にお金をもらってから支払うという形にしていますので、キャッシュが大量に必要になるというビジネスモデルではありません。BS上、契約負債という項目が大きくなっていますが、これは前受け金が多く計上されているためであり、財務上は健全な状態です。

     

    Q. 半導体市場の現状と今後の見通しについて教えてください。

    A. 中長期的に見ると、半導体は本当に様々な用途で使われており、今後も様々な用途で需要が増えていくと思います。量子コンピュータ、電気自動車など、新たな分野での需要も見込まれます。例えば、半導体のウエハー素材が変わると、電気自動車の省エネ効率が飛躍的に向上し、航続距離が現在の200kmから2000km、3000kmにまで伸びる可能性もございます。今後も、何らかのパラダイムシフトや市場の変化が起こると思いますが、半導体市場は拡大していくと考えています。ただ、当社が属しているのは、半導体のアフターマーケットと呼ばれる市場です。半導体工場が稼働すればするほど、当社の市場は広がっていきます。そのため、新規設備投資の動向よりも、工場が世界中にどれくらい増えているのか、製造装置がどれくらい増えているのかといったところに依存します。シリコンサイクルに左右されることはあまりなく、どちらかというと工場の稼働状況や工場数に影響を受けます。他の産業で例えると、プリンターや複合機の市場のようなものです。複合機が増えれば増えるほど、トナーの需要も増えると思いますが、そのようなイメージです。最先端の半導体製造装置は設備投資が必要となりますが、当社は工場が稼働した後のアフターマーケットをターゲットとしています。

     

    Q. 競争優位性について教えてください。

    A. これまでお話してきた内容が、競争優位性として、他社が模倣できない当社独自のポジショニングに繋がり、強固な顧客基盤を確立できている要因だと考えています。一つ目は、技術力とナレッジの蓄積です。プラットフォーム寄りの製造支援とエンジニアリング寄りの製造支援の両方を掛け合わせることで、半導体工場の様々な課題を解決することができています。先ほど申し上げた装置販売ビジネスも、エンジニアリング力があるからこそ、買い取り、販売、立ち上げまで行うことができます。半導体メーカーは、当社にとって顧客であると同時に仕入れ先でもあります。そのため、信頼関係が非常に重要であり、顧客との信頼関係を築くことで、情報収集やビジネスの円滑化を実現しています。また、プラットフォームを保有することで、売り先を多様化できることも強みです。二つ目は、ポジショニングです。エンジニアリングとプラットフォーム、この二つの軸で事業を行っている会社は他にありません。プラットフォームだけを保有している会社はありますが、エンジニアリングのノウハウも持ち合わせている会社は少ないです。当社は、プラットフォームとエンジニアリング力を掛け合わせ、さらに現場で泥臭い仕事もこなしながら情報収集を行うことで、特異なポジションを築いています。参入障壁も高く、継続的な取引が多いことも特徴です。一度受注をいただくと、継続的に注文をいただけるケースが多いです。例えば、修理サービスを提供すると、次回も修理を依頼したいという形で継続的な取引に繋がります。信頼性の高いサービスを提供し続けることで、継続的な取引を維持しています。

     

    Q. 成長戦略について教えてください。

    A. 成長戦略は三つあり、人材プラットフォーム事業、国内拠点拡大、海外拠点展開を軸に進めています。人材プラットフォームの推進では、半導体業界における人材不足の解決を目指しています。半導体の専門人材を集めることもそうですが、これから半導体業界に入っていきたいというポテンシャル人材を集めることも狙いです。例えば、半導体に関わる求人情報を全て一括でまとめたり、半導体に関わるインターン情報、記事、教育などを掲載することで、半導体に興味を持ってもらう人を増やしたいと考えています。

     

    Q. 人材プラットフォーム事業について、具体的なサービス内容や収益化の方法を教えてください。また、今後の展開についてどのようにお考えですか?

    A. 人材プラットフォーム事業は、求人情報の掲載、インターン情報の提供、半導体関連の記事や教育コンテンツの配信など、多岐にわたるサービスを提供することで、半導体業界への人材流入を促進することを目的としています。収益化については、求人情報の掲載企業からの料金徴収、広告掲載、有料コンテンツの販売などを検討しています。将来的には、プラットフォーム上で人材育成から就職支援までを一貫して行えるようなサービスに発展させていきたいと考えています。

     

    Q. 国内拠点拡大について、具体的な計画を教えてください。

    A. 国内拠点拡大については、広島にマイクロデバイス工場、北海道にRapidusの工場建設が予定されているため、これらの地域への進出を検討しています。Rapidusは最先端の工場であるため、当社は直接的には関係ないと思われるかもしれませんが、数年後にはメンテナンスが必要になりますので、そのタイミングで参入することも可能です。また、新規工場建設時には必ず人材が必要となりますので、そのタイミングで人材プラットフォームが役立つと考えています。

     

    Q. 海外拠点展開について、具体的な計画を教えてください。

    A. 海外拠点展開については、インド市場への進出を検討しています。インドでは、政府主導で半導体産業の育成が進められており、合弁会社による工場建設も予定されています。その工場で使用される半導体製造装置は、当社が扱っている中古品とほぼ一致するため、大きなビジネスチャンスがあると見ています。また、台湾の企業とも提携を検討しています。台湾には、TSMCをはじめ、技術力の高い企業が多く存在します。そうした企業と提携することで、ノウハウを蓄積し、技術力を向上させていきたいと考えています。

  • 取材者:貴社のビジネスモデルや特徴、強みをご説明いただけますか?

    回答者:当社は2012年に創業し、大分市に本社を置く会社です。社員数は39名で、事業内容は半導体製造フィールドソリューション事業と申しまして、半導体工場の稼働支援を主に行っております。具体的には、越境ECを活用した部品の販売、修理サービス、そして装置販売を行っております。装置販売と申しましても、単なる販売ではなく、エンジニアリング力を生かした解体や移設などを必要とする案件にも対応しております。拠点としましては、日本国内に5拠点ございます。基本的には半導体工場の近くに隣接しています。経営陣は、代表が東芝出身で、東芝の半導体調達部門を経て、当時 東芝大分に配属になったことがきっかけで創業しております。当社は、「半導体業界が直面する様々な社会課題を解決するリーディングカンパニー」として、巨大な半導体業界において、半導体製造装置の延命やメンテナンスコストの軽減といった価値を提供しており、その中でもニッチトップかつ高成長を特徴としております。

    取材者: 半導体製造装置の延命やメンテナンスコストの軽減といった価値を提供されているとのことでしたが、具体的にどのようなものでしょうか?

    回答者: 実は日本の半導体工場は、かなり老朽化した工場が多いというのが実情です。メディア等では、Rapidusの投資やTSMCの熊本進出などが注目されていますが、半導体にも様々な種類があり、電気自動車や工作機械に使われているものなど、多種多様でございます。そうした半導体に使われているのは、比較的テクノロジーレベルの低い半導体で、現在も稼働しているものが多くございます。そうしたレガシー半導体製造装置や、新品で設備投資されたものでも数年後には保守メンテナンスが発生してきます。そこで、当社はそうした半導体工場の稼働を支援することで、調達、制度、物流など様々な課題をサポートしております。 当社が目指す未来は、半導体製造に関する多様な課題を解決し、ひいては日本のものづくりを復活させることです。創業以来、売上高は順調に伸びてきており、2024年には60億円を超えております。2025年は、計画値として83億を目指しております。

    取材者: 貴社は大きく二つつの事業を行っているとのことですが、一つは部品販売・修理サービスですね。これは越境ECを活用したサービスで、日本の国内半導体工場のほぼ半数以上に導入されているとのことですが、詳しく教えていただけますか?

    回答者: 半導体メーカーが部品調達を希望される際に、当社のサイトにアクセスしていただき、検索して、欲しいものがあれば注文するというサイトです。サイトをご覧いただいた方がわかりやすいと思いますので、少しお見せいたします。装置、ロボット、ポンプ、モーター、パワーサプライ、電源関係など、様々な部品を取り扱っております。例えば、安川電機のロボットを調達したい場合、「安川電機ロボット」と入力すると、価格、納期、保証期間、状態が一目でわかるようになっています。これまでこのようなサイトはなかったのです。

    取材者: 一目で見て、半導体製造装置の部品がアメリカから販売されているものだとわかり、どれくらいで配送されるのか、保証期間はどれくらいなのかといった情報も確認した上で、正式に見積もり依頼ができるということですね。

    回答者: その通りでございます。しかも、どこの会社かわからない業者から買うのは不安だと思います。100万円、200万円、1,000万円もするような部品であればなおさらです。必ず当社を経由して販売するので、ミスミなど、将来的には当社を通して販売することで、半導体メーカーにも安心してご購入いただけます。国内の半導体メーカーほぼすべてと直接口座を持っておりますので、半導体メーカーも安心して取引いただけます。半導体メーカーが欲しいものがあれば、当社に見積もり依頼が来るということで、そういったサービスを提供しております。現在、32万点超のアイテム数で、50%以上の国内半導体工場にご利用いただいております。

    取材者: 貴社が対応されるまでは、国内の工場が海外の製品などを輸入したり、調達したりするのは難しい状況だったのですか?

    回答者: そうですね。特に老朽化した工場だと部品の調達は難しくなっております。いろんな商社やエンジニアリング会社に問い合わせて、5社単位で聞いてようやく手に入ったというような状態だったこともございます。そこを集約して調達しやすいように可視化したところが強みです。

    取材者: 集約して可視化されているということですね。

    回答者:そうですね。従来の調達では、調達の担当者の方が個別で問い合わせて、必要な情報が限定的で、調達から納品まで時間とコストがかかりすぎてしまうという問題がありました。また、調達ルートが限定されてしまい、独自に調達ネットワークを確立する必要があり、老朽化した製造装置の部品調達は困難でした。その課題に対し、当社は世界中のサプライヤーの情報を一元的に集約し、実在庫を24時間365日確認できるようにしております。突然の火災や地震などがあった場合でも、すぐに在庫状況を確認できるのは大きなメリットです。必要な情報である価格、納期、保証期間、状態をすぐに確認できるのも強みです。「このシステムを導入しませんか?」とご提案して、「できません」と言う半導体メーカーさんは今までいらっしゃいませんでした。

    取材者: 特定の会社から調達しなければならないということもないのですね。

    回答者: ええ、当社に見積もり依頼をいただければ、あとは貴社のやり方で進めていただけますので、非常に使い勝手が良いとご好評いただいております。

    取材者: これは非常に便利なシステムだと思いますが、このようなシステムを貴社が構築できた要因はどういった部分にあるのですか?

    回答者: 一つは、創業当初からこのような構想を持っていたこと、そして100社以上の海外サプライヤーとのネットワークがあったことが挙げられます。当社独自のネットワークで海外から部品を調達し、半導体工場に納品するということを行っていたのですが、それであればシステム化した方が良いと考え、可視化を行いました。導入開始当時から一定のサプライヤーを持っていたため、比較的スムーズにシステムを構築することができました。また、当社社員の4割が外国籍であることも強みです。海外にも積極的に進出し、海外のサプライヤーを積極的に開拓することで、サプライヤーを増やし、事業を拡大してきました。さらに、社内にシステムの要件定義やコスト削減をきちんと行えるメンバーがいることも強みです。

    取材者: 昔からの半導体装置だと部品のサプライヤーは海外の比率が高いのですか?

    回答者: そうですね。国内にもサプライヤーはありますが、海外の比率が多いです。なぜなら、半導体は日本だけでなく、アメリカ、中国、台湾、韓国など、世界中で積極的に投資が行われているからです。特にアメリカは昔から投資が行われているため、アメリカのサプライヤーが多いです。

    取材者: なるほど。ちなみに、部品販売・修理サービスで競合となるような企業は存在するのですか?

    回答者: 部品販売や修理サービスにおいて、直接的に競合する企業は多くありません。しかし、商社やメーカーなど、間接的に競合となる企業は存在します。そうした企業との差別化として、当社は越境ECプラットフォームによる利便性と、エンジニアリング力を活かしたワンストップサービスを強みとしております。

    回答者: もう一つの事業は、エンジニアリング力を活用した装置サービスです。装置は廃棄するにも費用がかかり、一般的な機械と比べて大きさが大きく、高さも2m、3mにもなります。そのため、単純に売買できるようなものではありません。工場クリーンルームの中に入って電源を落とし、部品単位で分解していく必要があります。何万点もの部品で構成されており、事故なく作業を行うには技術ノウハウが必要です。当社は、そうした解体作業を安全かつ確実に行える技術力を持っていることが強みです。解体した装置は販売したり、中古の半導体製造装置を半導体メーカーに販売した後に立ち上げ作業やプロセスのチューニングを行い、生産性改善なども行っております。過去には、大手半導体メーカーからサプライヤーアワードを受賞したこともあり、1万2000社の中から20社に選ばれたこともあります。

    回答者:ビジネスフローとしては、部品や修理サービスは、日本国内の半導体メーカーに対して提供しており、売上のほとんどを占めております。例えば、ロボットを修理してほしいという依頼があれば、当社がサプライヤーに依頼し、修理されたロボットを仕入れて販売するという流れになります。部品が欲しいという依頼があれば、当社がオーダーを受け、サプライヤーに発注し、納品するという流れになります。その中で、当社のECサイトが活用され、見積もりなどが行われます。もう一つは装置販売ですが、半導体製造装置の買い取りは、半導体工場から行います。これは中古の半導体製造装置になりますが、例えばキオクシアのような大手半導体メーカーで新たな設備投資が行われると、工場のキャパシティには限りがあるため、古い装置は排出されます。当社は、そうした中古の半導体製造装置を買い取り、他の半導体メーカーに販売しております。キャッシュフロー的には、基本的に先にお金をもらってから支払うという形にしておりますので、キャッシュが大量に必要になるというビジネスモデルではありません。BS上、契約負債という項目が大きくなっておりますが、これは前受け金が多く計上されているためであり、財務上は健全な状態です。

    取材者: 2024年の上半期は、海外の売上が8割ほどあったとのことですが、これは装置の販売が主に海外ということですか?

    回答者: そうですね。もちろん部品の販売もありますが、大半は装置です。

    取材者: それは国内の工場の装置を解体して海外に販売しているのですか?

    回答者: そうですね。ユーザー数も増加しており、エンジニアリング力を活用したサービスとして、装置の解体、買い取り、搬出、販売、立ち上げを行い、工場側で継続稼働できるよう支援することで、顧客満足度を高めております。サプライヤーアワードを受賞した実績もあり、解体においても無害化、シャットダウン、ケーブル配管取り外しなど、様々な工程を安全かつ確実に行っております。

    回答者: また、人材の側面では、中堅からベテランまで、経験豊富なプロフェッショナルが在籍していることが強みの一つです。50代、60代の方も活躍しており、東京エレクトロンやアプライドマテリアルズで働いていた方もいらっしゃいます。事業部門の4割はグローバル人材で、外国籍のメンバーが多数在籍しており、バイリンガル以上の方も多いです。66%以上がバイリンガル以上であることは、海外との取引を円滑に行う上で強みとなっております。例えば、国内の半導体メーカーが、韓国にある部品が欲しいといった場合でも、現地の言葉で直接交渉できるため、迅速かつスムーズな対応が可能です。

    取材者: 貴社のように一気通貫でサービスを提供される場合、このような経験がないと難しいですよね。

    回答者: そうですね。経験豊富な人材が揃っていることが重要です。装置販売においても、情報収集能力は非常に重要です。当社は、半導体工場から装置を買い取る前に、事前に売り先を見つけておくのですが、海外となると、売り先の情報を得るのは非常に難しいです。ECプラットフォームを運営していること、そして海外人材が多く在籍していることで、海外に対する情報収集力は非常に強いです。そのような情報収集力とエンジニアリング力を掛け合わせているからこそ、装置販売のビジネスを成功させることができているのだと思います。

    取材者: 市場自体は非常に伸びているとのことですが、最近は半導体ショックといった話も出てきております。この状況をどのように見ていらっしゃいますか?

    回答者: 中長期的に見ると、半導体は本当に様々な用途で使われており、今後も様々な用途で需要が増えていくと思います。量子コンピュータ、電気自動車など、新たな分野での需要も見込まれます。例えば、半導体のウエハー素材が変わると、電気自動車の省エネ効率が飛躍的に向上し、航続距離が現在の200kmから2000km、3000kmにまで伸びる可能性もございます。今後も、何らかのパラダイムシフトや市場の変化が起こると思いますが、半導体市場は拡大していくと考えております。ただ、当社が属しているのは、半導体のアフターマーケットと呼ばれる市場です。半導体工場が稼働すればするほど、当社の市場は広がっていきます。そのため、新規設備投資の動向よりも、工場が世界中にどれくらい増えているのか、製造装置がどれくらい増えているのかといったところに依存します。シリコンサイクルに左右されることはあまりなく、どちらかというと工場の稼働状況や工場数に影響を受けます。他の産業で例えると、プリンターや複合機の市場のようなものです。複合機が増えれば増えるほど、トナーの需要も増えると思いますが、そのようなイメージです。最先端の半導体製造装置は設備投資が必要となりますが、当社は工場が稼働した後のアフターマーケットをターゲットとしております。半導体市場の現状としては、IoT、電気自動車など、半導体の用途が多様化しており、中長期的な需要も旺盛です。20年以上前に投資された半導体製造装置も現役で稼働しており、当社はそうした装置のサポートを行っております。実際、200mmファブと呼ばれる工場も増加しており、TSMCの2023年の売上実績を見ても、最先端と呼ばれる5nmプロセスは58%ですが、42%は最先端ではないプロセスで作られています。あまり注目されていませんが、実は重要な役割を担っているのが、そうしたレガシー半導体製造装置です。メンテナンス市場も拡大しており、国内の半導体工場はほぼすべてが老朽化工場と言っても過言ではありません。200mm以下の工場も多数存在し、300mm工場も20年前に投資されたものが多くあります。300mm工場も、稼働から数年経てばメンテナンスが必要になるため、当社のサービスの対象となります。また、エンジニア不足という問題も大きくなってきています。新しい工場を建設しようとしても、必ず人材の問題がついて回ります。

    回答者: これらが、競争優位性として、他社が模倣できない当社独自のポジショニングに繋がり、強固な顧客基盤を確立できている要因だと考えております。一つ目は、技術力とナレッジの蓄積です。プラットフォーム寄りの製造支援とエンジニアリング寄りの製造支援の両方を掛け合わせることで、半導体工場の様々な課題を解決することができています。先ほど申し上げた装置販売ビジネスも、エンジニアリング力があるからこそ、買い取り、販売、立ち上げまで行うことができます。半導体メーカーは、当社にとって顧客であると同時に仕入れ先でもあります。そのため、信頼関係が非常に重要であり、顧客との信頼関係を築くことで、情報収集やビジネスの円滑化を実現しています。また、プラットフォームを保有することで、売り先を多様化できることも強みです。二つ目は、ポジショニングです。エンジニアリングとプラットフォーム、この二つの軸で事業を行っている会社は他にありません。プラットフォームだけを保有している会社はありますが、エンジニアリングのノウハウも持ち合わせている会社は少ないです。当社は、プラットフォームとエンジニアリング力を掛け合わせ、さらに現場で泥臭い仕事もこなしながら情報収集を行うことで、特異なポジションを築いています。参入障壁も高く、継続的な取引が多いことも特徴です。一度受注をいただくと、継続的に注文をいただけるケースが多いです。例えば、修理サービスを提供すると、次回も修理を依頼したいという形で継続的な取引に繋がります。信頼性の高いサービスを提供し続けることで、継続的な取引を維持しています。

    取材者: 成長戦略について教えてください。

    回答者: 成長戦略は三つあり、人材プラットフォーム事業、国内拠点拡大、海外拠点展開を軸に進めております。人材プラットフォームの推進では、半導体業界における人材不足の解決を目指しています。半導体の専門人材を集めることもそうですが、これから半導体業界に入っていきたいというポテンシャル人材を集めることも狙いです。例えば、半導体に関わる求人情報を全て一括でまとめたり、半導体に関わるインターン情報、記事、教育などを掲載することで、半導体に興味を持ってもらう人を増やしたいと考えています。

    取材者: 人材プラットフォーム事業について、具体的なサービス内容や収益化の方法を教えてください。また、今後の展開についてどのようにお考えですか?

    回答者: 人材プラットフォーム事業は、求人情報の掲載、インターン情報の提供、半導体関連の記事や教育コンテンツの配信など、多岐にわたるサービスを提供することで、半導体業界への人材流入を促進することを目的としています。収益化については、求人情報の掲載企業からの料金徴収、広告掲載、有料コンテンツの販売などを検討しています。将来的には、プラットフォーム上で人材育成から就職支援までを一貫して行えるようなサービスに発展させていきたいと考えています。

    回答者: 国内拠点拡大については、広島にマイクロデバイス工場、北海道にRapidusの工場建設が予定されているため、これらの地域への進出を検討しています。Rapidusは最先端の工場であるため、当社は直接的には関係ないと思われるかもしれませんが、数年後にはメンテナンスが必要になりますので、そのタイミングで参入することも可能です。また、新規工場建設時には必ず人材が必要となりますので、そのタイミングで人材プラットフォームが役立つと考えています。

    取材者:広島や北海道への進出計画について、具体的な時期や規模、進出方法などを教えてください。

    回答者: 広島や北海道への進出については、まだ具体的な計画は確定していません。しかし、工場の建設状況や人材の需要などを注視しながら、適切なタイミングで進出できるよう準備を進めています。規模については、現時点では未定ですが、各地域の市場規模や需要を踏まえ、適切な規模で展開していく予定です。進出方法については、M&Aや合弁事業なども視野に入れ、最適な方法を検討しています。

    回答者: 海外拠点展開については、インド市場への進出を検討しています。インドでは、政府主導で半導体産業の育成が進められており、合弁会社による工場建設も予定されています。その工場で使用される半導体製造装置は、当社が扱っている中古品とほぼ一致するため、大きなビジネスチャンスがあると見ています。また、台湾の企業とも提携を検討しています。台湾には、TSMCをはじめ、技術力の高い企業が多く存在します。そうした企業と提携することで、ノウハウを蓄積し、技術力を向上させていきたいと考えています。

    取材者: インドや台湾への進出計画について、具体的な内容をお聞かせください。

    回答者: インドへの進出については、現地企業との合弁事業を検討しており、現在具体的な交渉を進めています。工場建設のスケジュールに合わせて、装置の販売やメンテナンス、部品の供給など、当社のサービスを提供していく予定です。台湾については、技術提携を検討しており、複数の企業と協議を進めています。具体的な内容については、まだ公表できる段階ではありませんが、技術交流や共同開発などを通じて、互いの強みを活かした事業展開を目指しています。

    回答者: 中期的な目標としては、2027年に売上高総利益率25%、営業利益率15%を達成することを目指しています。これは、装置販売ビジネスのシェア拡大とアフターサービスの強化、部品販売・修理サービスの内製化、人材紹介サービスの強化などによって実現していく計画です。内製化については、現在エンジニアリング部門が中心となっています。装置の解体などは自社で行っていますが、単純作業は外注することもあります。修理サービスは全て外部に委託しています。修理を自社で行うことも可能ですが、現状では装置サービスに注力した方が収益性が高いと判断しています。

    取材者: 部品販売・修理サービスの内製化について、具体的な計画やスケジュール、内製化によるメリットなどを教えてください。

    回答者: 部品販売・修理サービスの内製化は、段階的に進めていく計画です。まず、第1段階として、2025年度中に修理サービスの一部を内製化し、その後、2027年度までに完全内製化を目指します。内製化によるメリットとしては、コスト削減、納期短縮、品質向上などが期待されます。また、修理技術のノウハウを蓄積することで、将来的には自社製品の開発にも繋げていきたいと考えています。

    回答者: 装置販売においては、需要が非常に強いことから、新たな装置の売り先が決まってから解体を行うというケースが多いです。特に中古品の需要は根強く、これは製造メーカーが生産を中止しているためです。新品の半導体製造装置は納期が数年後になってしまうため、すぐに使用できる中古品の需要が高まっているのです。日本では、中古品だけでなく、最新設備を導入する動きもあります。例えば、ソニーやRapidusなどは、新規工場に最新設備を導入しています。2024年の売上高が前年比で大幅に増加した要因は、装置販売が大きく伸びたことが挙げられます。これは、2023年に顧客のキャンセルがあった影響で、2024年にずれ込んだためです。しかし、キャンセルを受け入れた代わりに補償金を受け取っているため、業績への影響は限定的です。今後の需要については、根強い需要が見込まれます。特に、半導体ショックの影響で最先端の半導体製造装置の需要が減少した場合、中古品の需要がさらに高まる可能性があります。

    回答者: 当社の創業は、代表が東芝でサプライヤー開拓に携わっていたことがきっかけです。東芝ではリスクを取ってまでコストダウンを進めることが難しかったため、自ら会社を創業しました。当初は一般的な商社として事業を行っていましたが、2015年に私が参画したタイミングで、プラットフォーム事業を開始しました。プラットフォーム事業のモデルケースとしては、アメリカのイーベイをベンチマークしました。しかし、イーベイは決済方法や使い勝手などに課題があったため、当社はそれらを改善したプラットフォームを構築しました。海外の利用者比率は64%です。これはサプライヤーも含めた数字です。今後、海外展開を進めることで、さらに増加していく見込みです。 当社の採用は、高いハードルを設定しています。例えば、3カ国語以上を話せる、BtoB業界での経験がある、半導体製造装置メーカーでの経験があるといった人材を求めています。年齢や性別、国籍は問いません。評価制度は、360度評価、目標管理制度、業績連動型インセンティブなどを導入しています。平均年収は日本の平均よりも高く、地方の企業としては高水準です。社員第一主義を掲げており、社員旅行なども実施しています。

    取材者: 株主還元については、どのようにお考えですか?

    回答者: 株主還元については、当面は成長のための投資を優先しますが、中長期的に安定的な収益基盤を確立した段階で、株主還元を実施する可能性はあります。具体的な方法としては、配当や自己株買いなどを検討しており、時期や規模については、今後の業績や財務状況などを踏まえ、適切なタイミングで判断していきます。今期は、人材プラットフォーム事業に力を入れています。また、装置販売や部品修理サービスの強化など、トップラインを伸ばすための施策も進めています。これらの取り組みについては、プレスリリースなどで発信していく予定です。

  • 取締役経営管理部長 関真希様

(株)TMH

東証GRT 280A

決算:11月末日

CP&X


決算概要

当社グループの2025年11月期 第3四半期連結累計期間の経営成績は、売上高6,929,478千円、営業利益209,171千円、経常利益198,067千円、親会社株主に帰属する四半期純利益135,735千円となりました。

なお、当第3四半期連結会計期間において、一部大型装置案件の搬出順序のバラつき等が影響し、当第3四半期連結会計期間の売上高は407,465千円、営業損失は76,378千円、経常損失は75,979千円、親会社株主に帰属する四半期純損失は52,897千円となりました。


セグメント別または事業別の増減要因

当社グループの売上構成比は、①越境ECプラットフォーム等を利用した部品販売・修理サービスが約15%、②エンジニアリング力を活用した装置販売サービスが約85%、となっております。当第3四半期連結累計期間では、特に装置販売サービス売上高が前年同期比+92%と大幅に伸長しております。


主要KPIの進捗と変化

未来の業績に関する指標として、当第3四半期末の装置販売サービスの受注残総額は1,680百万円と前年同期比75%の減少となりました。これは前年同期末の受注残が前期末に装置販売が集中したことにより高水準であった一方、当第3四半期末の受注残が、当上期に装置販売が集中した影響で減少したことによるものです。


季節性・一過性要因の有無と影響

当第3四半期連結会計期間において、一部大型装置案件の搬出順序のバラつき等が影響し営業損失となりました。この主な理由は、装置販売ビジネスは一案件あたりの売上高・利益への影響が大きく、四半期単位では売上が平準的ではない側面があるためです。この損失は一過性のものであると認識しており、当社グループの売上および利益は期を通じて概ね堅調に推移する見込みです。


トピックス

2025年7月、韓国平澤市に当社初の子会社を設立いたしました。今後、韓国での装置調達・販売体制を強化し、エンジニアリング力を活かした装置販売と越境EC「LAYLA」の展開拡大を図ってまいります。また同月に半導体業界に特化したメディアサイトであるSEMICON.TODAYをローンチいたしました。本メディアでは、世界中の半導体産業に関する最新動向、業界リーダーの発言・動静、各国政府の政策方針、統計データ、など幅広いトピックを提供しております。

・資料

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取材アーカイブ

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    ビジネスモデルと事業内容

    (株)TMHは、2012年創業、大分市に本社を置く半導体工場の稼働支援企業である。 社員数39名で、越境ECを活用した部品販売・修理サービス、エンジニアリング力を生かした装置販売を展開し、国内5拠点を持つ。 半導体製造装置の延命やメンテナンスコストの軽減といった価値を提供し、顧客の調達、制度、物流など様々な課題をサポートしている。

     

    創業の経緯と転機

    東芝出身の代表が、東芝大分在籍時に創業。 当初は一般的な商社だったが、2015年に現管理部門担当者が参画し、プラットフォーム事業を開始した。

     

    直近の決算状況

    2024年の売上高は60億円を超え、2025年は83億円を計画。 2024年の売上高が前年比で大幅に増加した要因は、装置販売の伸びである。 これは、一過性のものではなく、2023年から既に成長は始まっていた(※但し、2023年に顧客の金額の大きいキャンセルがあった影響で、売上はそれほど増収していない。しかし、キャンセルを受け入れた代わりに補償金を受け取っているため、業績への影響は限定的であった。)

     

    特徴と強み

    老朽化した工場が多い日本の半導体業界において、装置の延命、メンテナンスコストの軽減、部品調達の効率化を実現するニッチトップ企業である。 越境ECプラットフォームとエンジニアリング力を融合したワンストップサービス、そして世界中のサプライヤーからなる独自のネットワークが強み。 また、社員の4割が外国籍であることも、グローバルな事業展開を支える強みとなっている。

     

    成長戦略

    人材プラットフォーム事業、国内拠点拡大、海外拠点展開を軸に成長を目指す。 人材不足解消のため、半導体業界の人材プラットフォームを構築し、求人情報の掲載、インターン情報の提供、教育コンテンツの配信などを行う。 広島、北海道への国内拠点拡大、インド、台湾への海外進出を計画。 インドでは現地企業との販売提携を、台湾では技術提携を検討している。

     

    株主還元策

    当面は成長投資を優先し、中長期的に安定収益基盤確立後に配当等を検討。 時期や規模は、今後の業績や財務状況などを踏まえ判断する。

     

    今期の取り組み

    人材プラットフォーム事業に注力し、装置販売、部品修理サービスの強化などトップラインを伸ばす施策を展開。 部品販売・修理サービスの内製化も段階的に進めていく。 プレスリリースなどで情報発信を行う。

  • Q. 貴社のビジネスモデル、事業内容の特徴と強みは何ですか?

    A. 当社は2012年に創業し、大分市に本社を置く会社です。社員数は39名で、事業内容は半導体工場の稼働支援を主に行っています。具体的には、越境ECを活用した部品の販売、修理サービス、そして装置販売を行っています。装置販売と申しましても、単なる販売ではなく、エンジニアリング力を生かした解体や移設などを必要とする案件にも対応しています。拠点は日本国内に5拠点あり、基本的には半導体工場の近くに隣接しています。

    当社は、「半導体業界が直面する様々な社会課題を解決するリーディングカンパニー」として、巨大な半導体業界において、半導体製造装置の延命やメンテナンスコストの軽減といった価値を提供しており、その中でもニッチトップかつ高成長を特徴としています。

     

    Q. 半導体製造装置の延命やメンテナンスコストの軽減といった価値を提供されているとのことでしたが、具体的にどのようなものでしょうか?

    A. 実は日本の半導体工場は、かなり老朽化した工場が多いというのが実情です。メディア等では、Rapidusの投資やTSMCの熊本進出などが注目されていますが、半導体にも様々な種類があり、電気自動車や工作機械に使われているものなど、多種多様でございます。そうした半導体に使われているのは、比較的テクノロジーレベルの低い半導体で、現在も稼働しているものが多くございます。そうしたレガシー半導体製造装置や、新品で設備投資されたものでも数年後には保守メンテナンスが発生してきます。そこで、当社はそうした半導体工場の稼働を支援することで、調達、制度、物流など様々な課題をサポートしています。

     

    Q. 越境ECを活用した部品販売・修理サービスについて詳しく教えてください。

    A. 半導体メーカーが部品調達を希望される際に、当社のサイトにアクセスしていただき、検索して、欲しいものがあれば見積依頼するというサイトです。装置、ロボット、ポンプ、モーター、パワーサプライ、電源関係など、様々な部品を取り扱っています。例えば、安川電機のロボットを調達したい場合、英語で「安川電機ロボット」と入力すると、価格、納期、保証期間、状態が一目でわかるようになっています。これまでこのようなサイトはなかったのです。

     

    Q. エンジニアリング力を活用した装置サービスについて教えてください。

    A. 装置は廃棄するにも費用がかかり、一般的な機械と比べて大きさが大きく、高さも2m、3mにもなります。そのため、単純に売買できるようなものではありません。工場クリーンルームの中に入って電源を落とし、部品単位で分解していく必要があります。何万点もの部品で構成されており、事故なく作業を行うには技術ノウハウが必要です。当社は、そうした解体作業を安全かつ確実に行える技術力を持っていることが強みです。解体した装置は販売したり、中古の半導体製造装置を半導体メーカーに販売した後に立ち上げ作業やプロセスのチューニングを行い、生産性改善なども行っています。過去には、大手半導体メーカーからサプライヤーアワードを受賞したこともあり、1万2000社の中から20社に選ばれたこともあります。

     

    Q. ビジネスフローを教えてください。

    A. 部品や修理サービスは、日本国内の半導体メーカーに対して提供しており、売上のほとんどを占めています。例えば、ロボットを修理してほしいという依頼があれば、当社がサプライヤーに依頼し、修理されたロボットを仕入れて販売するという流れになります。部品が欲しいという依頼があれば、当社がオーダーを受け、サプライヤーに発注し、納品するという流れになります。その中で、当社のECサイトも活用され、見積もりなどが行われます。もう一つは装置販売ですが、半導体製造装置の買い取りは、半導体工場から行います。これは中古の半導体製造装置になりますが、例えば大手半導体メーカーで新たな設備投資が行われると、工場のキャパシティには限りがあるため、古い装置は排出されます。当社は、そうした中古の半導体製造装置を買い取り、他の半導体メーカーに販売しています。キャッシュフロー的には、基本的に先にお金をもらってから支払うという形にしていますので、キャッシュが大量に必要になるというビジネスモデルではありません。BS上、契約負債という項目が大きくなっていますが、これは前受け金が多く計上されているためであり、財務上は健全な状態です。

     

    Q. 半導体市場の現状と今後の見通しについて教えてください。

    A. 中長期的に見ると、半導体は本当に様々な用途で使われており、今後も様々な用途で需要が増えていくと思います。量子コンピュータ、電気自動車など、新たな分野での需要も見込まれます。例えば、半導体のウエハー素材が変わると、電気自動車の省エネ効率が飛躍的に向上し、航続距離が現在の200kmから2000km、3000kmにまで伸びる可能性もございます。今後も、何らかのパラダイムシフトや市場の変化が起こると思いますが、半導体市場は拡大していくと考えています。ただ、当社が属しているのは、半導体のアフターマーケットと呼ばれる市場です。半導体工場が稼働すればするほど、当社の市場は広がっていきます。そのため、新規設備投資の動向よりも、工場が世界中にどれくらい増えているのか、製造装置がどれくらい増えているのかといったところに依存します。シリコンサイクルに左右されることはあまりなく、どちらかというと工場の稼働状況や工場数に影響を受けます。他の産業で例えると、プリンターや複合機の市場のようなものです。複合機が増えれば増えるほど、トナーの需要も増えると思いますが、そのようなイメージです。最先端の半導体製造装置は設備投資が必要となりますが、当社は工場が稼働した後のアフターマーケットをターゲットとしています。

     

    Q. 競争優位性について教えてください。

    A. これまでお話してきた内容が、競争優位性として、他社が模倣できない当社独自のポジショニングに繋がり、強固な顧客基盤を確立できている要因だと考えています。一つ目は、技術力とナレッジの蓄積です。プラットフォーム寄りの製造支援とエンジニアリング寄りの製造支援の両方を掛け合わせることで、半導体工場の様々な課題を解決することができています。先ほど申し上げた装置販売ビジネスも、エンジニアリング力があるからこそ、買い取り、販売、立ち上げまで行うことができます。半導体メーカーは、当社にとって顧客であると同時に仕入れ先でもあります。そのため、信頼関係が非常に重要であり、顧客との信頼関係を築くことで、情報収集やビジネスの円滑化を実現しています。また、プラットフォームを保有することで、売り先を多様化できることも強みです。二つ目は、ポジショニングです。エンジニアリングとプラットフォーム、この二つの軸で事業を行っている会社は他にありません。プラットフォームだけを保有している会社はありますが、エンジニアリングのノウハウも持ち合わせている会社は少ないです。当社は、プラットフォームとエンジニアリング力を掛け合わせ、さらに現場で泥臭い仕事もこなしながら情報収集を行うことで、特異なポジションを築いています。参入障壁も高く、継続的な取引が多いことも特徴です。一度受注をいただくと、継続的に注文をいただけるケースが多いです。例えば、修理サービスを提供すると、次回も修理を依頼したいという形で継続的な取引に繋がります。信頼性の高いサービスを提供し続けることで、継続的な取引を維持しています。

     

    Q. 成長戦略について教えてください。

    A. 成長戦略は三つあり、人材プラットフォーム事業、国内拠点拡大、海外拠点展開を軸に進めています。人材プラットフォームの推進では、半導体業界における人材不足の解決を目指しています。半導体の専門人材を集めることもそうですが、これから半導体業界に入っていきたいというポテンシャル人材を集めることも狙いです。例えば、半導体に関わる求人情報を全て一括でまとめたり、半導体に関わるインターン情報、記事、教育などを掲載することで、半導体に興味を持ってもらう人を増やしたいと考えています。

     

    Q. 人材プラットフォーム事業について、具体的なサービス内容や収益化の方法を教えてください。また、今後の展開についてどのようにお考えですか?

    A. 人材プラットフォーム事業は、求人情報の掲載、インターン情報の提供、半導体関連の記事や教育コンテンツの配信など、多岐にわたるサービスを提供することで、半導体業界への人材流入を促進することを目的としています。収益化については、求人情報の掲載企業からの料金徴収、広告掲載、有料コンテンツの販売などを検討しています。将来的には、プラットフォーム上で人材育成から就職支援までを一貫して行えるようなサービスに発展させていきたいと考えています。

     

    Q. 国内拠点拡大について、具体的な計画を教えてください。

    A. 国内拠点拡大については、広島にマイクロデバイス工場、北海道にRapidusの工場建設が予定されているため、これらの地域への進出を検討しています。Rapidusは最先端の工場であるため、当社は直接的には関係ないと思われるかもしれませんが、数年後にはメンテナンスが必要になりますので、そのタイミングで参入することも可能です。また、新規工場建設時には必ず人材が必要となりますので、そのタイミングで人材プラットフォームが役立つと考えています。

     

    Q. 海外拠点展開について、具体的な計画を教えてください。

    A. 海外拠点展開については、インド市場への進出を検討しています。インドでは、政府主導で半導体産業の育成が進められており、合弁会社による工場建設も予定されています。その工場で使用される半導体製造装置は、当社が扱っている中古品とほぼ一致するため、大きなビジネスチャンスがあると見ています。また、台湾の企業とも提携を検討しています。台湾には、TSMCをはじめ、技術力の高い企業が多く存在します。そうした企業と提携することで、ノウハウを蓄積し、技術力を向上させていきたいと考えています。

  • 取材者:貴社のビジネスモデルや特徴、強みをご説明いただけますか?

    回答者:当社は2012年に創業し、大分市に本社を置く会社です。社員数は39名で、事業内容は半導体製造フィールドソリューション事業と申しまして、半導体工場の稼働支援を主に行っております。具体的には、越境ECを活用した部品の販売、修理サービス、そして装置販売を行っております。装置販売と申しましても、単なる販売ではなく、エンジニアリング力を生かした解体や移設などを必要とする案件にも対応しております。拠点としましては、日本国内に5拠点ございます。基本的には半導体工場の近くに隣接しています。経営陣は、代表が東芝出身で、東芝の半導体調達部門を経て、当時 東芝大分に配属になったことがきっかけで創業しております。当社は、「半導体業界が直面する様々な社会課題を解決するリーディングカンパニー」として、巨大な半導体業界において、半導体製造装置の延命やメンテナンスコストの軽減といった価値を提供しており、その中でもニッチトップかつ高成長を特徴としております。

    取材者: 半導体製造装置の延命やメンテナンスコストの軽減といった価値を提供されているとのことでしたが、具体的にどのようなものでしょうか?

    回答者: 実は日本の半導体工場は、かなり老朽化した工場が多いというのが実情です。メディア等では、Rapidusの投資やTSMCの熊本進出などが注目されていますが、半導体にも様々な種類があり、電気自動車や工作機械に使われているものなど、多種多様でございます。そうした半導体に使われているのは、比較的テクノロジーレベルの低い半導体で、現在も稼働しているものが多くございます。そうしたレガシー半導体製造装置や、新品で設備投資されたものでも数年後には保守メンテナンスが発生してきます。そこで、当社はそうした半導体工場の稼働を支援することで、調達、制度、物流など様々な課題をサポートしております。 当社が目指す未来は、半導体製造に関する多様な課題を解決し、ひいては日本のものづくりを復活させることです。創業以来、売上高は順調に伸びてきており、2024年には60億円を超えております。2025年は、計画値として83億を目指しております。

    取材者: 貴社は大きく二つつの事業を行っているとのことですが、一つは部品販売・修理サービスですね。これは越境ECを活用したサービスで、日本の国内半導体工場のほぼ半数以上に導入されているとのことですが、詳しく教えていただけますか?

    回答者: 半導体メーカーが部品調達を希望される際に、当社のサイトにアクセスしていただき、検索して、欲しいものがあれば注文するというサイトです。サイトをご覧いただいた方がわかりやすいと思いますので、少しお見せいたします。装置、ロボット、ポンプ、モーター、パワーサプライ、電源関係など、様々な部品を取り扱っております。例えば、安川電機のロボットを調達したい場合、「安川電機ロボット」と入力すると、価格、納期、保証期間、状態が一目でわかるようになっています。これまでこのようなサイトはなかったのです。

    取材者: 一目で見て、半導体製造装置の部品がアメリカから販売されているものだとわかり、どれくらいで配送されるのか、保証期間はどれくらいなのかといった情報も確認した上で、正式に見積もり依頼ができるということですね。

    回答者: その通りでございます。しかも、どこの会社かわからない業者から買うのは不安だと思います。100万円、200万円、1,000万円もするような部品であればなおさらです。必ず当社を経由して販売するので、ミスミなど、将来的には当社を通して販売することで、半導体メーカーにも安心してご購入いただけます。国内の半導体メーカーほぼすべてと直接口座を持っておりますので、半導体メーカーも安心して取引いただけます。半導体メーカーが欲しいものがあれば、当社に見積もり依頼が来るということで、そういったサービスを提供しております。現在、32万点超のアイテム数で、50%以上の国内半導体工場にご利用いただいております。

    取材者: 貴社が対応されるまでは、国内の工場が海外の製品などを輸入したり、調達したりするのは難しい状況だったのですか?

    回答者: そうですね。特に老朽化した工場だと部品の調達は難しくなっております。いろんな商社やエンジニアリング会社に問い合わせて、5社単位で聞いてようやく手に入ったというような状態だったこともございます。そこを集約して調達しやすいように可視化したところが強みです。

    取材者: 集約して可視化されているということですね。

    回答者:そうですね。従来の調達では、調達の担当者の方が個別で問い合わせて、必要な情報が限定的で、調達から納品まで時間とコストがかかりすぎてしまうという問題がありました。また、調達ルートが限定されてしまい、独自に調達ネットワークを確立する必要があり、老朽化した製造装置の部品調達は困難でした。その課題に対し、当社は世界中のサプライヤーの情報を一元的に集約し、実在庫を24時間365日確認できるようにしております。突然の火災や地震などがあった場合でも、すぐに在庫状況を確認できるのは大きなメリットです。必要な情報である価格、納期、保証期間、状態をすぐに確認できるのも強みです。「このシステムを導入しませんか?」とご提案して、「できません」と言う半導体メーカーさんは今までいらっしゃいませんでした。

    取材者: 特定の会社から調達しなければならないということもないのですね。

    回答者: ええ、当社に見積もり依頼をいただければ、あとは貴社のやり方で進めていただけますので、非常に使い勝手が良いとご好評いただいております。

    取材者: これは非常に便利なシステムだと思いますが、このようなシステムを貴社が構築できた要因はどういった部分にあるのですか?

    回答者: 一つは、創業当初からこのような構想を持っていたこと、そして100社以上の海外サプライヤーとのネットワークがあったことが挙げられます。当社独自のネットワークで海外から部品を調達し、半導体工場に納品するということを行っていたのですが、それであればシステム化した方が良いと考え、可視化を行いました。導入開始当時から一定のサプライヤーを持っていたため、比較的スムーズにシステムを構築することができました。また、当社社員の4割が外国籍であることも強みです。海外にも積極的に進出し、海外のサプライヤーを積極的に開拓することで、サプライヤーを増やし、事業を拡大してきました。さらに、社内にシステムの要件定義やコスト削減をきちんと行えるメンバーがいることも強みです。

    取材者: 昔からの半導体装置だと部品のサプライヤーは海外の比率が高いのですか?

    回答者: そうですね。国内にもサプライヤーはありますが、海外の比率が多いです。なぜなら、半導体は日本だけでなく、アメリカ、中国、台湾、韓国など、世界中で積極的に投資が行われているからです。特にアメリカは昔から投資が行われているため、アメリカのサプライヤーが多いです。

    取材者: なるほど。ちなみに、部品販売・修理サービスで競合となるような企業は存在するのですか?

    回答者: 部品販売や修理サービスにおいて、直接的に競合する企業は多くありません。しかし、商社やメーカーなど、間接的に競合となる企業は存在します。そうした企業との差別化として、当社は越境ECプラットフォームによる利便性と、エンジニアリング力を活かしたワンストップサービスを強みとしております。

    回答者: もう一つの事業は、エンジニアリング力を活用した装置サービスです。装置は廃棄するにも費用がかかり、一般的な機械と比べて大きさが大きく、高さも2m、3mにもなります。そのため、単純に売買できるようなものではありません。工場クリーンルームの中に入って電源を落とし、部品単位で分解していく必要があります。何万点もの部品で構成されており、事故なく作業を行うには技術ノウハウが必要です。当社は、そうした解体作業を安全かつ確実に行える技術力を持っていることが強みです。解体した装置は販売したり、中古の半導体製造装置を半導体メーカーに販売した後に立ち上げ作業やプロセスのチューニングを行い、生産性改善なども行っております。過去には、大手半導体メーカーからサプライヤーアワードを受賞したこともあり、1万2000社の中から20社に選ばれたこともあります。

    回答者:ビジネスフローとしては、部品や修理サービスは、日本国内の半導体メーカーに対して提供しており、売上のほとんどを占めております。例えば、ロボットを修理してほしいという依頼があれば、当社がサプライヤーに依頼し、修理されたロボットを仕入れて販売するという流れになります。部品が欲しいという依頼があれば、当社がオーダーを受け、サプライヤーに発注し、納品するという流れになります。その中で、当社のECサイトが活用され、見積もりなどが行われます。もう一つは装置販売ですが、半導体製造装置の買い取りは、半導体工場から行います。これは中古の半導体製造装置になりますが、例えばキオクシアのような大手半導体メーカーで新たな設備投資が行われると、工場のキャパシティには限りがあるため、古い装置は排出されます。当社は、そうした中古の半導体製造装置を買い取り、他の半導体メーカーに販売しております。キャッシュフロー的には、基本的に先にお金をもらってから支払うという形にしておりますので、キャッシュが大量に必要になるというビジネスモデルではありません。BS上、契約負債という項目が大きくなっておりますが、これは前受け金が多く計上されているためであり、財務上は健全な状態です。

    取材者: 2024年の上半期は、海外の売上が8割ほどあったとのことですが、これは装置の販売が主に海外ということですか?

    回答者: そうですね。もちろん部品の販売もありますが、大半は装置です。

    取材者: それは国内の工場の装置を解体して海外に販売しているのですか?

    回答者: そうですね。ユーザー数も増加しており、エンジニアリング力を活用したサービスとして、装置の解体、買い取り、搬出、販売、立ち上げを行い、工場側で継続稼働できるよう支援することで、顧客満足度を高めております。サプライヤーアワードを受賞した実績もあり、解体においても無害化、シャットダウン、ケーブル配管取り外しなど、様々な工程を安全かつ確実に行っております。

    回答者: また、人材の側面では、中堅からベテランまで、経験豊富なプロフェッショナルが在籍していることが強みの一つです。50代、60代の方も活躍しており、東京エレクトロンやアプライドマテリアルズで働いていた方もいらっしゃいます。事業部門の4割はグローバル人材で、外国籍のメンバーが多数在籍しており、バイリンガル以上の方も多いです。66%以上がバイリンガル以上であることは、海外との取引を円滑に行う上で強みとなっております。例えば、国内の半導体メーカーが、韓国にある部品が欲しいといった場合でも、現地の言葉で直接交渉できるため、迅速かつスムーズな対応が可能です。

    取材者: 貴社のように一気通貫でサービスを提供される場合、このような経験がないと難しいですよね。

    回答者: そうですね。経験豊富な人材が揃っていることが重要です。装置販売においても、情報収集能力は非常に重要です。当社は、半導体工場から装置を買い取る前に、事前に売り先を見つけておくのですが、海外となると、売り先の情報を得るのは非常に難しいです。ECプラットフォームを運営していること、そして海外人材が多く在籍していることで、海外に対する情報収集力は非常に強いです。そのような情報収集力とエンジニアリング力を掛け合わせているからこそ、装置販売のビジネスを成功させることができているのだと思います。

    取材者: 市場自体は非常に伸びているとのことですが、最近は半導体ショックといった話も出てきております。この状況をどのように見ていらっしゃいますか?

    回答者: 中長期的に見ると、半導体は本当に様々な用途で使われており、今後も様々な用途で需要が増えていくと思います。量子コンピュータ、電気自動車など、新たな分野での需要も見込まれます。例えば、半導体のウエハー素材が変わると、電気自動車の省エネ効率が飛躍的に向上し、航続距離が現在の200kmから2000km、3000kmにまで伸びる可能性もございます。今後も、何らかのパラダイムシフトや市場の変化が起こると思いますが、半導体市場は拡大していくと考えております。ただ、当社が属しているのは、半導体のアフターマーケットと呼ばれる市場です。半導体工場が稼働すればするほど、当社の市場は広がっていきます。そのため、新規設備投資の動向よりも、工場が世界中にどれくらい増えているのか、製造装置がどれくらい増えているのかといったところに依存します。シリコンサイクルに左右されることはあまりなく、どちらかというと工場の稼働状況や工場数に影響を受けます。他の産業で例えると、プリンターや複合機の市場のようなものです。複合機が増えれば増えるほど、トナーの需要も増えると思いますが、そのようなイメージです。最先端の半導体製造装置は設備投資が必要となりますが、当社は工場が稼働した後のアフターマーケットをターゲットとしております。半導体市場の現状としては、IoT、電気自動車など、半導体の用途が多様化しており、中長期的な需要も旺盛です。20年以上前に投資された半導体製造装置も現役で稼働しており、当社はそうした装置のサポートを行っております。実際、200mmファブと呼ばれる工場も増加しており、TSMCの2023年の売上実績を見ても、最先端と呼ばれる5nmプロセスは58%ですが、42%は最先端ではないプロセスで作られています。あまり注目されていませんが、実は重要な役割を担っているのが、そうしたレガシー半導体製造装置です。メンテナンス市場も拡大しており、国内の半導体工場はほぼすべてが老朽化工場と言っても過言ではありません。200mm以下の工場も多数存在し、300mm工場も20年前に投資されたものが多くあります。300mm工場も、稼働から数年経てばメンテナンスが必要になるため、当社のサービスの対象となります。また、エンジニア不足という問題も大きくなってきています。新しい工場を建設しようとしても、必ず人材の問題がついて回ります。

    回答者: これらが、競争優位性として、他社が模倣できない当社独自のポジショニングに繋がり、強固な顧客基盤を確立できている要因だと考えております。一つ目は、技術力とナレッジの蓄積です。プラットフォーム寄りの製造支援とエンジニアリング寄りの製造支援の両方を掛け合わせることで、半導体工場の様々な課題を解決することができています。先ほど申し上げた装置販売ビジネスも、エンジニアリング力があるからこそ、買い取り、販売、立ち上げまで行うことができます。半導体メーカーは、当社にとって顧客であると同時に仕入れ先でもあります。そのため、信頼関係が非常に重要であり、顧客との信頼関係を築くことで、情報収集やビジネスの円滑化を実現しています。また、プラットフォームを保有することで、売り先を多様化できることも強みです。二つ目は、ポジショニングです。エンジニアリングとプラットフォーム、この二つの軸で事業を行っている会社は他にありません。プラットフォームだけを保有している会社はありますが、エンジニアリングのノウハウも持ち合わせている会社は少ないです。当社は、プラットフォームとエンジニアリング力を掛け合わせ、さらに現場で泥臭い仕事もこなしながら情報収集を行うことで、特異なポジションを築いています。参入障壁も高く、継続的な取引が多いことも特徴です。一度受注をいただくと、継続的に注文をいただけるケースが多いです。例えば、修理サービスを提供すると、次回も修理を依頼したいという形で継続的な取引に繋がります。信頼性の高いサービスを提供し続けることで、継続的な取引を維持しています。

    取材者: 成長戦略について教えてください。

    回答者: 成長戦略は三つあり、人材プラットフォーム事業、国内拠点拡大、海外拠点展開を軸に進めております。人材プラットフォームの推進では、半導体業界における人材不足の解決を目指しています。半導体の専門人材を集めることもそうですが、これから半導体業界に入っていきたいというポテンシャル人材を集めることも狙いです。例えば、半導体に関わる求人情報を全て一括でまとめたり、半導体に関わるインターン情報、記事、教育などを掲載することで、半導体に興味を持ってもらう人を増やしたいと考えています。

    取材者: 人材プラットフォーム事業について、具体的なサービス内容や収益化の方法を教えてください。また、今後の展開についてどのようにお考えですか?

    回答者: 人材プラットフォーム事業は、求人情報の掲載、インターン情報の提供、半導体関連の記事や教育コンテンツの配信など、多岐にわたるサービスを提供することで、半導体業界への人材流入を促進することを目的としています。収益化については、求人情報の掲載企業からの料金徴収、広告掲載、有料コンテンツの販売などを検討しています。将来的には、プラットフォーム上で人材育成から就職支援までを一貫して行えるようなサービスに発展させていきたいと考えています。

    回答者: 国内拠点拡大については、広島にマイクロデバイス工場、北海道にRapidusの工場建設が予定されているため、これらの地域への進出を検討しています。Rapidusは最先端の工場であるため、当社は直接的には関係ないと思われるかもしれませんが、数年後にはメンテナンスが必要になりますので、そのタイミングで参入することも可能です。また、新規工場建設時には必ず人材が必要となりますので、そのタイミングで人材プラットフォームが役立つと考えています。

    取材者:広島や北海道への進出計画について、具体的な時期や規模、進出方法などを教えてください。

    回答者: 広島や北海道への進出については、まだ具体的な計画は確定していません。しかし、工場の建設状況や人材の需要などを注視しながら、適切なタイミングで進出できるよう準備を進めています。規模については、現時点では未定ですが、各地域の市場規模や需要を踏まえ、適切な規模で展開していく予定です。進出方法については、M&Aや合弁事業なども視野に入れ、最適な方法を検討しています。

    回答者: 海外拠点展開については、インド市場への進出を検討しています。インドでは、政府主導で半導体産業の育成が進められており、合弁会社による工場建設も予定されています。その工場で使用される半導体製造装置は、当社が扱っている中古品とほぼ一致するため、大きなビジネスチャンスがあると見ています。また、台湾の企業とも提携を検討しています。台湾には、TSMCをはじめ、技術力の高い企業が多く存在します。そうした企業と提携することで、ノウハウを蓄積し、技術力を向上させていきたいと考えています。

    取材者: インドや台湾への進出計画について、具体的な内容をお聞かせください。

    回答者: インドへの進出については、現地企業との合弁事業を検討しており、現在具体的な交渉を進めています。工場建設のスケジュールに合わせて、装置の販売やメンテナンス、部品の供給など、当社のサービスを提供していく予定です。台湾については、技術提携を検討しており、複数の企業と協議を進めています。具体的な内容については、まだ公表できる段階ではありませんが、技術交流や共同開発などを通じて、互いの強みを活かした事業展開を目指しています。

    回答者: 中期的な目標としては、2027年に売上高総利益率25%、営業利益率15%を達成することを目指しています。これは、装置販売ビジネスのシェア拡大とアフターサービスの強化、部品販売・修理サービスの内製化、人材紹介サービスの強化などによって実現していく計画です。内製化については、現在エンジニアリング部門が中心となっています。装置の解体などは自社で行っていますが、単純作業は外注することもあります。修理サービスは全て外部に委託しています。修理を自社で行うことも可能ですが、現状では装置サービスに注力した方が収益性が高いと判断しています。

    取材者: 部品販売・修理サービスの内製化について、具体的な計画やスケジュール、内製化によるメリットなどを教えてください。

    回答者: 部品販売・修理サービスの内製化は、段階的に進めていく計画です。まず、第1段階として、2025年度中に修理サービスの一部を内製化し、その後、2027年度までに完全内製化を目指します。内製化によるメリットとしては、コスト削減、納期短縮、品質向上などが期待されます。また、修理技術のノウハウを蓄積することで、将来的には自社製品の開発にも繋げていきたいと考えています。

    回答者: 装置販売においては、需要が非常に強いことから、新たな装置の売り先が決まってから解体を行うというケースが多いです。特に中古品の需要は根強く、これは製造メーカーが生産を中止しているためです。新品の半導体製造装置は納期が数年後になってしまうため、すぐに使用できる中古品の需要が高まっているのです。日本では、中古品だけでなく、最新設備を導入する動きもあります。例えば、ソニーやRapidusなどは、新規工場に最新設備を導入しています。2024年の売上高が前年比で大幅に増加した要因は、装置販売が大きく伸びたことが挙げられます。これは、2023年に顧客のキャンセルがあった影響で、2024年にずれ込んだためです。しかし、キャンセルを受け入れた代わりに補償金を受け取っているため、業績への影響は限定的です。今後の需要については、根強い需要が見込まれます。特に、半導体ショックの影響で最先端の半導体製造装置の需要が減少した場合、中古品の需要がさらに高まる可能性があります。

    回答者: 当社の創業は、代表が東芝でサプライヤー開拓に携わっていたことがきっかけです。東芝ではリスクを取ってまでコストダウンを進めることが難しかったため、自ら会社を創業しました。当初は一般的な商社として事業を行っていましたが、2015年に私が参画したタイミングで、プラットフォーム事業を開始しました。プラットフォーム事業のモデルケースとしては、アメリカのイーベイをベンチマークしました。しかし、イーベイは決済方法や使い勝手などに課題があったため、当社はそれらを改善したプラットフォームを構築しました。海外の利用者比率は64%です。これはサプライヤーも含めた数字です。今後、海外展開を進めることで、さらに増加していく見込みです。 当社の採用は、高いハードルを設定しています。例えば、3カ国語以上を話せる、BtoB業界での経験がある、半導体製造装置メーカーでの経験があるといった人材を求めています。年齢や性別、国籍は問いません。評価制度は、360度評価、目標管理制度、業績連動型インセンティブなどを導入しています。平均年収は日本の平均よりも高く、地方の企業としては高水準です。社員第一主義を掲げており、社員旅行なども実施しています。

    取材者: 株主還元については、どのようにお考えですか?

    回答者: 株主還元については、当面は成長のための投資を優先しますが、中長期的に安定的な収益基盤を確立した段階で、株主還元を実施する可能性はあります。具体的な方法としては、配当や自己株買いなどを検討しており、時期や規模については、今後の業績や財務状況などを踏まえ、適切なタイミングで判断していきます。今期は、人材プラットフォーム事業に力を入れています。また、装置販売や部品修理サービスの強化など、トップラインを伸ばすための施策も進めています。これらの取り組みについては、プレスリリースなどで発信していく予定です。

  • 取締役経営管理部長 関真希 様

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