20250312
Q 事業内容やビジネスモデル、特徴や強みについて、ご説明いただけますでしょうか。
A 弊社は2020年7月にホールディングスを設立しており、設立自体はごく最近ですが、元々はロゴスホームという注文住宅事業を営んでおり、このロゴスホームを筆頭に、M&Aで取得した豊栄建設、GALLERY HOUSE、坂井建設という形で、現在は四つの事業会社で構成されています。ROOT LINKという会社もございますが、こちらは各社に対して様々なサービスを提供する、いわばグループ内向けの共通サービスを展開している会社です。その中に、設計CADをオフショア化しているLCOというフィリピンの子会社もございます。
元々ロゴスホームは、ホールディングスの代表である池田が創業した会社で、帯広で創業し、北海道全域へと注文住宅のエリア展開を進めてまいりました。その過程で、創業当初から、会社の永続的な成長のためにはIPOが不可欠であると考えておりましたので、十数年前にIPOの準備を開始いたしました。しかしながら、当時は本社が帯広にあったこともあり、管理部門や、IPOに関する専門知識を有する人材を確保することが難しく、様々なコンサルタントにご尽力いただきましたが、期待する成果を得られず、費用のみが先行する状況が続きました。そのような折、ファンドに経営参画していただき、共にIPOを目指すというスキームをご紹介いただき、複数のファンドと面談を重ねた結果、現在のエンデバーユナイテッドとご一緒させていただくこととなり、2019年に一旦ロゴスホームの株式をエンデバーユナイテッドに譲渡するという経緯に至りました。その後、豊栄建設をM&Aで取得する際、ロゴスホームはLBOローンにて借り入れを行なっており、自社のみでは次の出資を行うことが難しい状況であったため、エンデバーユナイテッドに追加出資という形で資金提供を受けて取得し、それを組織再編で統合したものが、現在のロゴスホールディングスです。組織再編の器に豊栄ホールディングスを使ったため、豊栄建設が母体であったように見えるかもしれませんが、実際にはロゴスホームが事業の起点となっています。その後、GALLERY HOUSEの株式を取得し、上場を果たしました。昨年、2024年12月には、新潟の坂井建設を新たにグループに迎えました。
Q ロゴスホームの創業の経緯について、ご教示いただけますでしょうか。
A 元々、代表の池田は、当時他の大手ハウスメーカーに技術者として勤務しておりましたが、そこが倒産するという事態が起こりました。その倒産を契機に、池田が中心となり、当時共に働いていた複数のメンバーと共に住宅会社を創業したというのが、そもそもの経緯です。
Q 特徴をご説明ください。
A 事業会社の特徴といたしましては、各社それぞれに特色がございますが、グループ全体では39の営業拠点を展開しております。ロゴスホームにつきましては、北海道から東北、現在は北関東のふじみ野まで21拠点を出店しております。少々ややこしいのですが、ロゴスホームという会社の中には、ロゴスホームという注文住宅ブランドと、北海道内で展開するハウジングカフェという企画住宅のブランドが混在しておりますので、ロゴスホームという会社としては、26拠点ということになります。豊栄建設につきましては、苫小牧にも拠点がございますが、ほぼ札幌が事業の中心となっています。GALLERY HOUSEにつきましては、栃木県が事業の中心となっており、坂井建設は新潟県全域に8拠点を展開しているという状況です。
Q ターゲット層をご説明ください。
A 基本的なターゲット層といたしましては、どの会社も大きな違いはございませんが、初めて土地をご購入される一次取得者と呼ばれるお客様が中心となっています。グループ全体で申し上げますと、建て替え、つまり土地を既に所有されているお客様の割合は約1割です。残り9割のお客様は、新たに土地を取得して住宅を建設される方々で、その9割のうち、半分弱のお客様が、弊社が保有・販売している建築条件付きの宅地をご利用いただいております。残りの方は、流通地でお客様と共に弊社の営業担当が土地を探して住宅を建設するという形をとっております。したがって、グループ全体で見ますと、土地の売上と建築条件付き宅地のお客様の割合は、3割から4割弱程度となります。この割合は、都市部ほど高くなる傾向にございます。地方においては、比較的容易に土地を入手できるため、土地を保有するという概念があまり一般的ではないという状況です。ただし、土地の販売においては、基本的に大きな利益を追求しておらず、あくまで注文住宅の受注を促進するための販売促進ツールとして位置付けております。
Q 初めて住宅を購入されるお客様が多い状況ということは、価格帯が比較的購入しやすい水準であるということでしょうか。
A そうです。元々の価格帯といたしましても、弊社のグラフで示しておりますように、低価格帯の住宅に特に注力していることもあり、そのような客層のお客様が多い状況です。
Q 強みをご説明ください。
A 当社の強みといたしましては、主に三つ掲げております。一つ目は、商品開発力です。ロゴスホームの創業の地である十勝地方は、夏は35度、冬はマイナス30度にもなる非常に寒暖差の激しいエリアです。降雪量はそれほど多くはありませんが、寒さが厳しく、夏は暑いという、非常に厳しい環境下にあります。また、北海道、特に十勝地方を含む道東地域は、全国的に見ても所得水準が比較的高くないエリアであったため、高品質高性能な住宅を、できる限り安く、適正な価格で、一人でも多くのお客様にお届けすることを念頭に置いた住宅商品開発を行ってまいりました。様々な工夫を凝らし、省エネ性能や耐震性などを、お客様が無理なくご購入いただける価格帯で提供できるよう、パッケージング化してきた点が強みです。
一般的に注文住宅ビジネスにおいては、住宅総合展示場、新聞社やテレビ局などが運営している総合展示場に出展するというビジネスモデルが主流となっております。この総合展示場への出展には、メーカーにとって高額な借地料の支払いと、高額なモデルハウスの建設が必要となります。これらのモデルハウスは、1億円程度の建築費用がかかる豪華な仕様となっており、一般的な住宅とは大きく異なる仕様となっているかと存じます。各社とも立派なモデルハウスを建設しなければ、他社に見劣りしてしまうため、結果として多額の建築費用がかかることになります。耐用年数で言いますと7年をベースに減価償却の対象となり、借地料と建築費だけでも莫大なコストが発生している状況です。さらに、展示場を運営している事業者に対して、運営費の負担も発生いたします。週末には、集客イベントとして、キャラクターショーなどが開催されており、これらのイベントにかかる広告宣伝費の負担もメーカー側が担うことになります。その上で、各社は自社独自のSNSなどを活用し、追加の集客を図るのですが、基本的な出展費用が高額になるため、自社独自の広告宣伝活動を行うことが難しく、自社で広告宣伝活動を行ったとしても、近隣には競合他社が存在するため、自社の強みを明確に訴求することが難しいという側面もございます。その一方で、安定的な大量集客が見込めるため、各社がこぞって出展し、営業活動を行うという状況になっています。しかしながら、展示場における成約率は、100組中1組程度と言われており、非常に厳しい競争環境となっています。逆に申し上げますと、1組のお客様が契約するということは、その出展コストを他のお客様が負担している、すなわち価格転嫁されているという構図になっているため、これがハウスメーカーの住宅価格が高止まりしている要因の一つであると言えるでしょう。
これに対し、弊社は住宅総合展示場には出展せず、自社で店舗、具体的には賃貸の路面店舗などを活用し、お客様との打ち合わせスペースを確保するという形で小規模な出店を行っています。その近隣に、売却を前提とした注文住宅のモデルハウスを建設し、デジタルマーケティングによって集客を行うというビジネスモデルを基本としております。これらのモデルハウスは、半年程度で建て替えを行います。新しいモデルハウスが完成したら、以前のモデルハウスを売却し、新たに来場を促すという流れを確立しております。実際には、モデルハウスの展示期間が短いため、注文住宅仕様の建物を建売住宅として販売いたします。したがって、建売住宅としての利益をしっかりと確保することが可能です。そのため、ランニングコストを抑えることが可能となります。減価償却の必要もございません。店舗にかかる費用は、賃貸の路面店舗賃に打ち合わせスペースを設ける程度であるため、基本的にコストを抑えることができます。弊社は、これらのコスト削減分を住宅価格に反映させております。実際に各社の財務諸表をご覧いただければお分かりいただけるかと存じますが、一般的に、注文住宅の粗利率は、売上総利益で25%程度、営業利益で5%程度が業界水準と言われています。弊社の売上総利益は20%を下回っており、営業利益は5%程度です。これは、販管費を大幅に削減できているためです。その分、住宅価格を抑えることが可能となっております。実際の原価に大きな差はないため、弊社の住宅価格は競合他社と比較して競争力のある価格設定となっております。高品質高性能な住宅を、よりお求めやすい価格でご提供することで、後発ながらも着実にエリアを拡大し、売上を成長させている点が弊社の強みです。
Q 業績についてご説明ください。
A 上場後に一度、業績予想の下方修正を発表したという経緯がございますので、この点について三つの要因をご説明させていただきます。今回、下方修正を発表いたしましたが、売上高については、ほぼ変更はございません。主に利益が減少したという状況です。この下方修正に至った要因は、大きく分けて三つございます。一つ目は、グループ会社である豊栄建設において、集客が計画通りに進まず、業績が悪化したことによる影響で、約6億円の減益要因となりました。元々、21億円の業績見通しを立てておりましたが、9億円程度に減少したため、12億円の減益となりました。このうち、約半分の6億円が豊栄建設の業績悪化によるものです。残りの6億円につきましては、主に二つの要因がございます。一つは、12月末に坂井建設を取得したことに伴う費用です。坂井建設の取得にあたっては、仲介会社を通して取引を行ったため、アドバイザリー費用が発生し、この費用が4億円のうちの2億円を占めております。残りの2億円は、坂井建設を取得した際のPPA(パーチェス・プライス・アロケーション)の評価替えによる影響です。弊社の売上高は、完成工事高と呼ばれる請負契約に基づく売上高ですが、注文住宅は工期が比較的短く、単価もそれほど高くないため、一般的には完成基準が適用されるケースがほとんどです。完成基準を適用する場合、工事が未完成の状態では、未成工事支出金という棚卸資産が計上されます。この評価替えの処理において、本来、進行基準であれば、出来高に応じて利益を計上するところ、完成基準では、未完成工事支出金の簿価が売価に変更されるため、結果として、3ヶ月分の引き渡しについては、ほとんど利益が出ないという状況が発生いたします。今回、坂井建設の取得が第4四半期であったため、連結決算に取り込める期間が3ヶ月のみとなり、結果として、営業利益がマイナスのまま連結決算に取り込まれるという一過性の要因が発生いたしました。
これらの要因と、取得にかかる費用が合算され、4億円の営業利益を押し下げる要因となりました。ただし、これはあくまで一過性の要因であり、来期以降は、この4億円の費用は発生いたしません。また、坂井建設は、純資産が10億円、弊社の取得額が30億円であるため、差額の20億円がのれんとして計上されます。償却期間は12年を予定しており、年間1億6,000万円程度の償却費が発生いたします。しかしながら、坂井建設は、売上高が継続的に増加しており、2021年から2023年にかけても右肩上がりの成長を遂げております。営業利益も3億円を超えており、2024年12月期も同様の数字を見込んでいる状況です。実際に、受注高は売上高を上回るペースで増加しております。弊社は請負業であるため、受注時点では売上高は計上されず、契約後に一定のリードタイムを経て引き渡しが行われるため、受注残という形で計上されます。これをキャリーと呼んでおりますが、弊社のキャリーは、これまで3割から5割程度でしたが、坂井建設は、9割程度のキャリーを抱えているという状況です。したがって、売上高、利益ともに、高い確実性が見込める状況です。今期、そして来期においても、堅調な業績を見込める会社であると考えております。これらの要素を踏まえると、来期は、少なくとも1億円から2億円程度の利益を計上できる見込みであり、今期との比較では、約6億円程度の増益を見込めるのではないかと考えております。
Q 今回の坂井建設の件は、クロージングが12月になったとのことですが、これは、クロージングが当初の予定よりも後ろ倒しになったためでしょうか。それとも、前倒しになったために今期に計上されることになったのでしょうか。
A 後ろ倒しになったわけではございません。売主様のご意向により、当初から12月までのクロージングを希望されておりました。1月から税制改正が予定されていたこともあり、売主様は12月中のクロージングを強く希望されておりました。また、競合他社も存在したため、弊社としては、スケジュールをコントロールする余地はほとんどない状況でした。そのため、結果として12月にクロージングとなり、弊社の連結決算には3ヶ月分しか取り込むことができず、営業利益を押し下げる要因となってしまいました。もし、クロージングの時期が異なれば、営業利益を押し下げるという事態にはならなかったと思われますが、クロージング時期の調整は難しい状況でした。しかしながら、これは一過性の要因であり、来期は、のれん償却を含めて1億円から2億円の利益が出ると考えると、今期との比較、9億円から比較すれば6億円近くは伸びるのではないかと考えております。
下方修正の要因のもう一つは、新規出店にかかる費用ということで、これも計画の前倒しをした分です。弊社は中期的な成長としてエリアの拡大ということはもちろん行っているのですが、昨年は3店舗、ふじみ野店、福島店、いわき店を新規出店しました。これは元々予算にも入っていて、見通しの中にもあったのですが、それとは別に東海エリアで大規模に出店を進めています。これが計画にはなかった追加の分です。実際には今年の5月末頃から名古屋支店を新規オープンしようということで進めていて、東海エリアで次々とオープンをしていく予定で進めています。今まで、弊社の新規出店というのは隣接エリアを中心に拡大していきました。ですが今回、飛び地で東海エリアを一気に進出しようとしています。なぜそれをしようとしたのかというと、人の採用が上手くいったためです。弊社は元々北海道から本州に出てエリアを拡大していったのですが、北海道では抜群の知名度もあるので、そこまで人の採用に苦労してはいなかったのですが、本州に出ていったときは認知度も低かったので、優秀な人を採用することに苦戦していました。それが昨年上場した後に、他社で活躍している人からの転職が非常に増えました。上場した効果があったと思います。住宅業界を全国見渡したときに、今成長している会社は国内にはそんなにないのです。ある程度大きいハウスメーカーさんでも、全国展開が終わって、今は人口減少でマーケットも縮小しているので、店舗を精査している状況です。大手ハウスメーカーを含めても伸ばしているのは海外事業が要因という会社が多いと思います。今、国内の注文住宅業界では、上場会社で元気に全国にエリアを伸ばしているという会社が少なく、一昔前に一気に伸ばした会社はあるのですが、大体エリアの進出も終わって逆に店舗の縮小に入っているという状況です。
Q 優秀な人材の獲得が課題だったのでしょうか。
A 優秀な方は成長していく会社にいたいと思うものです。成長していく会社はキャリアアップの機会も生まれます。弊社は今回上場して、成長し続けようとしているため、優秀な方をたくさん獲得できるチャンスが生じたというのが今の状況です。特に東海エリアで優秀な人材を大量に獲得できるという大きなチャンスがありました。そのようなこともあって、人の採用の先行投資と、今回は東海エリアで全く認知度がないので、これだけの大型店舗を建設し、人も採用しているため、広告を立ち上げないと人を遊ばせてしまうので、出店に対する広告戦略を考えているということで、実際この1億5,600万円のうち半分ぐらいは、4、5月に広告、CMなどの広告戦略で使用しようと考えています。それが当初の出店の予算に入っていなかったということです。ただ、どうしても人を採用してしまっているので、人の採用、特に中途採用なのですが、弊社の都合で半年ぐらい待ってもらうということは難しいので、ここで大きく投資をしないと人の獲得ができないということで踏み切ったところでした。
Qハウスメーカーさんはかなり人の採用に苦しんでいる企業が多いと思うのですが、貴社に限っては苦しんではないという点と、特に東海エリアは人材採用がうまくいっているということでしょうか。
A 苦しんではいないという点のみならず、特に東海エリアは40 〜 50人ぐらい採用できています。決して引き抜き行為はしていないのですが、成長が止まった他社から優秀な順に人が離脱しており、そのような方を多数採用できています。弊社にとっては全く今期に予定していなかったエリアも早期に立ち上げが可能になったので、これは大きなチャンスです。今期の利益は押し下げる結果となってしまいましたが、その分、来期以降の成長投資についてはしっかりできているという裏付けにもなりますので、来期以降の業績には期待をしていただきたいと思っています。
Q 貴社の戦略をご説明ください。
A 弊社はデジタルマーケティングに特化した会社です。ロゴスホームの営業戦略でいうと、創業の地であり圧倒的なトップシェアを誇る帯広以外の各エリアにおいては、特にトップシェアを取るという戦略ではありません。大体1店舗あたり50棟位建築可能な店舗をたくさん出していくという戦略なので、決してトップシェアを取るということではありません。北海道では一部のエリアでトップシェアを取っていくための様々な追加投資をしているのですが、基本的に本州エリアなどこれから展開するところについてはトップシェアを取るというよりは面をどんどん広げましょうという戦略です。
Q 豊栄建設の業績不振の要因について、お聞かせいただけますでしょうか。
A トップシェアを取らないという戦略においては、デジタルマーケティングでいうと、ある程度リスティング広告で必要な集客は確保できるので、そんなに大きな影響を受けることはないのですが、豊栄建設については札幌に特化してトップシェアをとっているので、マーケティング戦略が非常に業績を左右します。
何が起こったのかというと、昨年の6月から8月にかけて急激に来場が減ったのです。弊社はデジタルマーケティングのメインがリスティング広告なのですが、これはリスティングの運用会社に委託をしています。リスティングの運用会社に原因調査と報告を求めたところ、リスティングの集客には全く影響はないということでした。しかし、リスティング広告から弊社ホームページに来たときに、資料請求や来場予約のところから離脱されているのではないか、そこから弊社に情報が届いていないのではないかということではないかという報告内容でした。ホームページに何かしらエラーが生じているからではないかという仮説のもと、ホームページの改修など様々な対策を図っていました。しかし、実際にはそこが影響しているのではなく、そもそもマーケティングのリスティング戦略に問題があるのではないかという仮説に至り、調査したところ、競合状況によって各ワードの入札単価が上がっていました。リスティング会社は弊社に対して金額と集客量で契約しているので、毎月この金額で量を最大化してくださいという契約の中で、効果の薄いキーワードで大量集客をしていたということがわかりました。コアで効果的なキーワードが高くなっているので薄いところに広告を打ったが、コンバージョンしないという状況だったのです。それに気づくのに時間がかかったため、その間に間違った様々な戦略をとってしまい、集客に穴を開けてしまったというのが昨年の6月から8月でした。
対策としては、もちろんリスティング会社を変え、入札単価が高くなるアラートを自社でわかるように様々な対策を行っており、今のところ集客は戻っています。まだ挽回する余地はあるということで、様々な対策を講じてはいたのですが、結局補うまでは至りませんでした。第2四半期が終わった段階で、これは無理だということで下方修正を出すに至ったという経緯です。
豊栄建設というのは規模的に言うと、大体年間300棟ぐらいを安定的にやってきた会社です。営業利益でも大体5~6億円で比較的安定した会社です。しかし昨年、上場したということもあり、300棟から400棟に頑張って伸ばしましょうということで、人も相当増やして臨んだ1年だったのです。そうなると当然ながら損益分岐点が上がっていて、集客が失敗したということが重なって、利益が全部なくなってしまったという状況になってしまいました。やはり無理は良くないということで、豊栄建設については安定利益をしっかり出すため、人員も300棟体制に戻して進めています。集客を失敗したことと、成長しようとしてコストをかけたというこの二つが大きな要因です。
Q マーケティングの話もあったかと思いますが、住宅展示場を作らないということで、商談数、反響数というのはどうしても他の企業に比べて少なくなってしまうのかなと思うのですが、そのようなことがあっても成約率が他社に比べて高いということでしょうか。
A 商談数は特段少なくないと思います。
Q 商談数が少なくないのは、マーケティング施策、戦略がしっかりとしているということでしょうか。
A そうです。住宅を建築する方は、まず総合展示場に行ってみようと思うのではないでしょうか。そのときに何をするかというと、総合展示場で検索しますよね。総合展示場と検索すれば、当然ながら弊社はリスティング広告でロゴスホームとか豊栄建設がトップに出てくるようにしているので、総合展示場に来場しようとする方にしっかりアプローチができています。行動する前にスマートフォンで様々な情報収集をするということにユーザーさんは圧倒的に時間を使うので、その中では逆に言うと認知度はしっかり取れています。集客という観点、反響数という観点では右肩上がりでずっと伸びていますので、そこが少ないということはないと思います。逆に展示場の方が、コロナを機に来場数が減っているので、どこの住宅会社さんもお客さんがいないと言っています。
Q 坂井建設さんのように新たにM&Aで加わった会社というのは、マーケティングサイドから変化が大きいイメージでしょうか。
A そうですね。ただ、坂井建設さんはたまたま同じビジネスモデルで総合展示場に出展していなかったのです。なので、そういう意味ではあまり転換するということなく、弊社のDXとかデジタルマーケティングのところを導入していくことによって、さらに生産性を高くしていこうということがやりやすい会社です。しかし当然ながら今後M&Aをする会社によっては、総合展示場に出展している会社もあると思うので、そのようなところはコスト削減というところも含めてビジネスモデルの転換をしていきたいと思っています。
Q M&Aの戦略としては、同じビジネスモデルというわけではなく、エリアの拡大といった部分に注力しながら検討していくようなイメージでよろしいでしょうか。
A そうです。対象としては、地場で大体トップ3ぐらいに入るような会社です。そうなると大体規模的にも年間200~300棟ぐらいの規模になります。弊社で新規出店をする際は、50棟ぐらいを目安に考えているので、逆に言うとそのくらいの規模ならスピード早く立ち上げができるのですが、それ以上のシェアを獲得するのはなかなか難しいのです。それ以上のシェアを持っているところには何があるかというと、地域に根ざしたブランドというのが存在するので、そういう会社であればグループに加えていきたいと考えています。逆に50棟ぐらいの規模であれば自社の出店でできるので、そのような会社は対象としていません。そういう形で線引きをしています。エリアについては、特に制限はないと考えています。今回、新潟という全く携わったことのないエリアに進出したので、そのような未開のエリアであれば、ロゴスホームがそこにまた50棟ぐらいの出店をしていくということにも繋がっていきます。
Q 東海地方に新規出店されているのはかなり珍しいケースでしょうか。
A 今までの出店戦略からすると、既存から隣接エリアではない地域への新規出店は、はじめてのケースになります。これは、東海エリアで、優秀な人材の採用が想定外に出来たことから踏み切れたということです。
Q 株主還元策につきまして、方針などございましたらご教示いただけますでしょうか。
A はい。元々配当性向30~50%という方針で今年臨んでいたのですが、今回下方修正を出して減益になるということで当然ながら減配も発表したという経緯です。今後も成長投資は続けていきますし、特にM&Aについては業績を大きく歪めてしまうなと思っています。取得するタイミングによってもどうしてもPPAの影響が出てきてしまいますし、あとはどうしても仲介会社さんが入ってくると取得コストが高くなります。もちろん株主還元はしていかなければいけないですが、とは言っても安定しないのは株主の方にとってマイナス要因だと思っています。安定配当ができるような指標などを導入する必要があるのではないかというのは今議論をしているところです。場合によってはDOEを採用するとか、安定的に配当するというのが重要ではないかと思っています。
Q 成長投資との兼ね合いを見ながらということでしょうか。
A はい。
Q 金利の上昇の貴社への影響をご説明ください。
A 影響が全くないかと言われると、影響はあると思います。ただ、住宅ローン金利が上がったからといって、家を建てる人が一切いなくなるかというとそうではありません。しかし当然ながら住宅にかける金額というのは住宅ローンで借りられる限度額があるので、どうしても少なくなってくると思います。弊社のポジショニングとしては、中価格帯よりも下のところをターゲットにしているので、住宅マーケットの中の十分コアなターゲット層は取れているというところがあります。より競合が激しくなるものの、金利が上昇したからといって顧客のターゲットから外れるということはないというのが弊社の見解です。上の価格帯のところから顧客が降りてくるということも考えられます。
取材者:事業内容やビジネスモデル、特徴や強みなどをご説明ください。
回答者:弊社は2020年7月にホールディングスを設立しており、設立自体はごく最近ですが、元々はロゴスホームという注文住宅事業を営んでおり、このロゴスホームを筆頭に、M&Aで取得した豊栄建設、GALLERY HOUSE、坂井建設という形で、現在は四つの事業会社で構成されています。ROOT LINKという会社もございますが、こちらは各社に対して様々なサービスを提供する、いわばグループ内向けの共通サービスを展開している会社です。
その中に、設計CADをオフショア化しているLCOというフィリピンの子会社もございます。
元々ロゴスホームは、ホールディングスの代表である池田が創業した会社で、帯広で創業し、北海道全域へと注文住宅のエリア展開を進めてまいりました。
その過程で、創業当初から、会社の永続的な成長のためにはIPOが不可欠であると考えておりましたので、十数年前にIPOの準備を開始いたしました。しかしながら、当時は本社が帯広にあったこともあり、管理部門や、IPOに関する専門知識を有する人材を確保することが難しく、様々なコンサルタントにご尽力いただきましたが、期待する成果を得られず、費用のみが先行する状況が続きました。そのような折、ファンドに経営参画していただき、共にIPOを目指すというスキームをご紹介いただき、複数のファンドと面談を重ねた結果、現在のエンデバーユナイテッドとご一緒させていただくこととなり、2019年に一旦ロゴスホームの株式をエンデバーユナイテッドに譲渡するという経緯に至りました。
その後、豊栄建設をM&Aで取得する際、ロゴスホームはLEOローンにて借り入れを行なっており、自社のみでは次の出資を行うことが難しい状況であったため、エンデバーユナイテッドに追加出資という形で資金提供を受けて取得し、それを組織再編で統合したものが、現在のロゴスホールディングスです。組織再編の器に豊栄ホールディングスを使ったため、豊栄建設が母体であったように見えるかもしれませんが、実際にはロゴスホームが事業の起点となっています。その後、GALLERY HOUSEの株式を取得し、上場を果たしました。昨年、2024年12月には、新潟の坂井建設を新たにグループに迎えました。
取材者:ロゴスホームの創業の経緯について、お差し支えのない範囲でご教示いただけますか。
回答者:はい。元々、代表の池田は、当時他の大手ハウスメーカーに技術者として勤務しておりましたが、そこが倒産するという事態が起こりました。
その倒産を契機に、池田が中心となり、当時共に働いていた複数のメンバーと共に住宅会社を創業したというのが、そもそもの経緯です。
事業会社の特徴といたしましては、各社それぞれに特色がございますが、グループ全体では39の営業拠点を展開しております。ロゴスホームにつきましては、北海道から東北、現在は北関東のふじみ野まで21拠点を出店しております。
少々ややこしいのですが、ロゴスホームという会社の中には、ロゴスホームという注文住宅ブランドと、北海道内で展開するハウジングカフェという企画住宅のブランドが混在しておりますので、ロゴスホームという会社としては、26拠点ということになります。
豊栄建設につきましては、苫小牧にも拠点がございますが、ほぼ札幌が事業の中心となっています。GALLERY HOUSEにつきましては、栃木県が事業の中心となっており、坂井建設は新潟県全域に8拠点を展開しているという状況です。
基本的なターゲット層といたしましては、どの会社も大きな違いはございませんが、初めて土地をご購入される一次取得者と呼ばれるお客様が中心となっています。
グループ全体で申し上げますと、建て替え、つまり土地を既に所有されているお客様の割合は約1割です。残り9割のお客様は、新たに土地を取得して住宅を建設される方々で、その9割のうち、半分弱のお客様が、弊社が保有・販売している建築条件付きの宅地をご利用いただいております。残りの方は、流通地でお客様と共に弊社の営業担当が土地を探して住宅を建設するという形をとっております。したがって、グループ全体で見ますと、土地の売上と建築条件付き宅地のお客様の割合は、3割から4割弱程度となります。
この割合は、都市部ほど高くなる傾向にございます。地方においては、比較的容易に土地を入手できるため、土地を保有するという概念があまり一般的ではないという状況です。
ただし、土地の販売においては、基本的に大きな利益を追求しておらず、あくまで注文住宅の受注を促進するための販売促進ツールとして位置付けております。
取材者:初めて住宅を購入されるお客様が多い状況ということは、価格帯が比較的購入しやすい水準であるということでしょうか?
回答者:そうです。元々の価格帯といたしましても、弊社のグラフで示しておりますように、低価格帯の住宅に特に注力していることもあり、そのような客層のお客様が多い状況です。
当社の強みといたしましては、主に三つ掲げております。一つ目は、商品開発力です。ロゴスホームの創業の地である十勝地方は、夏は35度、冬はマイナス30度にもなる非常に寒暖差の激しいエリアです。降雪量はそれほど多くはありませんが、寒さが厳しく、夏は暑いという、非常に厳しい環境下にあります。また、北海道、特に十勝地方を含む道東地域は、全国的に見ても所得水準が比較的高くないエリアであったため、高品質高性能な住宅を、できる限り安く、適正な価格で、一人でも多くのお客様にお届けすることを念頭に置いた住宅商品開発を行ってまいりました。
様々な工夫を凝らし、省エネ性能や耐震性などを、お客様が無理なくご購入いただける価格帯で提供できるよう、パッケージング化してきた点が強みです。
一般的に注文住宅ビジネスにおいては、住宅総合展示場、新聞社やテレビ局などが運営している総合展示場に出展するというビジネスモデルが主流となっております。
この総合展示場への出展には、メーカーにとって高額な借地料の支払いと、高額なモデルハウスの建設が必要となります。
これらのモデルハウスは、1億円程度の建築費用がかかる豪華な仕様となっており、一般的な住宅とは大きく異なる仕様となっているかと存じます。各社とも立派なモデルハウスを建設しなければ、他社に見劣りしてしまうため、結果として多額の建築費用がかかることになります。耐用年数で言いますと7年をベースに減価償却の対象となり、借地料と建築費だけでも莫大なコストが発生している状況です。
さらに、展示場を運営している事業者に対して、運営費の負担も発生いたします。週末には、集客イベントとして、キャラクターショーなどが開催されており、これらのイベントにかかる広告宣伝費の負担もメーカー側が担うことになります。その上で、各社は自社独自のSNSなどを活用し、追加の集客を図るのですが、基本的な出展費用が高額になるため、自社独自の広告宣伝活動を行うことが難しく、自社で広告宣伝活動を行ったとしても、近隣には競合他社が存在するため、自社の強みを明確に訴求することが難しいという側面もございます。その一方で、安定的な大量集客が見込めるため、各社がこぞって出展展し、営業活動を行うという状況になっています。
しかしながら、展示場における成約率は、100組中1組程度と言われており、非常に厳しい競争環境となっています。
逆に申し上げますと、1組のお客様が契約するということは、その出展コストを他のお客様が負担している、すなわち価格転嫁されているという構図になっているため、これがハウスメーカーの住宅価格が高止まりしている要因の一つであると言えるでしょう。
これに対し、弊社は住宅総合展示場には出展せず、自社で店舗、具体的には賃貸の路面店舗などを活用し、お客様との打ち合わせスペースを確保するという形で小規模な出店を行っています。
その近隣に、売却を前提とした注文住宅のモデルハウスを建設し、デジタルマーケティングによって集客を行うというビジネスモデルを基本としております。これらのモデルハウスは、半年程度で建て替えを行います。
新しいモデルハウスが完成したら、以前のモデルハウスを売却し、新たに来場を促すという流れを確立しております。実際には、モデルハウスの展示期間が短いため、注文住宅仕様の建物を建売住宅として販売いたします。
したがって、建売住宅としての利益をしっかりと確保することが可能です。そのため、ランニングコストを抑えることが可能となります。減価償却の必要もございません。
店舗にかかる費用は、賃貸の路面店舗に打ち合わせスペースを設ける程度であるため、基本的にコストを抑えることができます。弊社は、これらのコスト削減分を住宅価格に反映させております。実際に各社の財務諸表をご覧いただければお分かりいただけるかと存じますが、一般的に、注文住宅の粗利率は、売上総利益で25%程度、営業利益で5%程度が業界水準と言われています。弊社の売上総利益は20%を下回っており、営業利益は5%程度です。これは、販管費を大幅に削減できているためです。
その分、住宅価格を抑えることが可能となっております。実際の原価に大きな差はないため、弊社の住宅価格は競合他社と比較して競争力のある価格設定となっております。これは、数字が明確に示している事実であり、価格競争力において優位性を確立できていると考えております。
高品質高性能な住宅を、よりお求めやすい価格でご提供できるという点が、弊社のビジネスモデルの大きな特徴です。さらに、弊社はDXにも積極的に取り組んでおり、集客はデジタルマーケティングによる反響営業が中心となっています。営業活動においては、インサイドセールスがまず一次的なアポイントメントを設定し、その後、営業担当、設計担当がオンラインで接客を行うケースも多く、店舗を立ち上げる際には、営業担当と現場監督がいれば、設計やコーディネーターはオンラインで対応できるため、少人数体制での新規出店が可能となります。
これらの要因が重なり、販管費を抑えることができている点が、弊社のビジネスモデルの大きな特徴です。高品質な住宅を適正な価格でご提供することで、後発ながらも着実にエリアを拡大し、売上を成長させている点が弊社の強みです。
しかしながら、上場後に一度、業績予想の下方修正を発表したという経緯がございますので、この点について三つの要因をご説明させていただきます。今回、下方修正を発表いたしましたが、売上高については、ほぼ変更はございません。主に利益が減少したという状況です。この下方修正に至った要因は、大きく分けて三つございます。
一つ目は、グループ会社である豊栄建設において、集客が計画通りに進まず、業績が悪化したことによる影響で、約6億円の減益要因となりました。元々、21億円の業績見通しを立てておりましたが、9億円程度に減少したため、12億円の減益となりました。このうち、約半分の6億円が豊栄建設の業績悪化によるものです。
残りの6億円につきましては、主に二つの要因がございます。一つは、12月末に坂井建設を取得したことに伴う費用です。坂井建設の取得にあたっては、仲介会社を通して取引を行ったため、アドバイザリー費用が発生し、この費用が4億円のうちの2億円を占めております。
残りの2億円は、坂井建設を取得した際のPPA(パーチェス・プライス・アロケーション)の評価替えによる影響です。弊社の売上高は、完成工事高と呼ばれる請負契約に基づく売上高ですが、注文住宅は工期が比較的短く、単価もそれほど高くないため、一般的には完成基準が適用されるケースがほとんどです。
完成基準を適用する場合、工事が未完成の状態では、未成工事支出金という棚卸資産が計上されます。この評価替えの処理において、本来、進行基準であれば、出来高に応じて利益を計上するところ、完成基準では、未完成工事支出金の簿価が売価に変更されるため、結果として、3ヶ月分の引き渡しについては、ほとんど利益が出ないという状況が発生いたします。今回、坂井建設の取得が第4四半期であったため、連結決算に取り込める期間が3ヶ月のみとなり、棚卸資産にかかる分しか売上を計上することができませんでした。
そのため、粗利率が低下し、営業利益がマイナスとして計上されるという一過性の要因が生じました。これが、もし、より長い期間連結決算に取り込める状況であれば、このようなマイナス要因は発生しなかったと考えられます。取得の完了時期が12月であったため、連結決算に取り込める期間が3ヶ月のみとなり、結果として、営業利益がマイナスのまま連結決算に取り込まれるという一過性の要因が発生いたしました。
これらの要因と、取得にかかる費用が合算され、4億円の営業利益を押し下げる要因となりました。ただし、これはあくまで一過性の要因であり、来期以降は、この4億円の費用は発生いたしません。また、坂井建設は、純資産が10億円、弊社の取得額が30億円であるため、差額の20億円がのれんとして計上されます。償却期間は12年を予定しており、年間1億6,000万円程度の償却費が発生いたします。しかしながら、坂井建設は、売上高が継続的に増加しており、2021年から2023年にかけても右肩上がりの成長を遂げております。
営業利益も3億円を超えており、2024年12月期も同様の数字を見込んでいる状況です。
実際に、受注高は売上高を上回るペースで増加しております。弊社は請負業であるため、受注時点では売上高は計上されず、契約後に一定のリードタイムを経て引き渡しが行われるため、受注残という形で計上されます。キャリーと呼ばれる弊社の受注残は、これまで3割から5割程度でしたが、坂井建設は、9割程度の受注残を抱えているという状況です。
したがって、売上高、利益ともに、高い確実性が見込める状況です。今期、そして来期においても、堅調な業績を見込める会社であると考えております。
これらの要素を踏まえると、来期は、少なくとも1億円から2億円程度の利益を計上できる見込みであり、今期との比較では、約6億円程度の増益を見込めるのではないかと考えております。
取材者:今回の坂井建設の件ですが、クロージングが12月になったとのことですが、これは、クロージングが当初の予定よりも後ろ倒しになったためですか。それとも、前倒しになったために今期に計上されることになったのですか。
回答者:後ろ倒しになったわけではございません。売主様のご意向により、当初から12月までのクロージングを希望されておりました。1月から税制改正が予定されていたこともあり、売主様は12月中のクロージングを強く希望されておりました。また、競合他社も存在したため、弊社としては、スケジュールをコントロールする余地はほとんどない状況でした。
そのため、結果として12月にクロージングとなり、弊社の連結決算には3ヶ月分しか取り込むことができず、営業利益を押し下げる要因となってしまいました。
もし、クロージングの時期が異なれば、営業利益を押し下げるという事態にはならなかったと思われますが、クロージング時期の調整は難しい状況でした。
しかしながら、これは一過性の要因であり、来期は、のれん償却を含めて1億円から2億円の利益が出ると考えると、今期との比較、9億円から比較すれば6億円近くは伸びるのではないかと考えております。
取材者:承知いたしました。期初にはこのM&Aは特に予定はなかったのですか。
回答者:そうですね。全くなかったです。
回答者:もう一つが、新規出店にかかる費用ということで、これも計画の前倒しをした分です。弊社は大きく中期的な成長としてエリアの拡大ということはもちろん行っているのですが、昨年は3店舗、ふじみ野店、福島店、いわき店を新規出店しました。
これは元々予算にも入っていて、見通しの中にもあったのですが、それとは別に東海エリアで大規模に出店を進めています。これが計画にはなかった追加の分です。
実際には今年の5月末頃から名古屋支店を新規オープンしようということで進めていて、東海エリアで次々とオープンをしていく予定で進めています。
今まで、弊社の新規出店というのは隣接エリアを中心に拡大していきました。ですが今回、飛び地で東海エリアを一気に進出しようとしています。なぜそれをしようとしたのかというと、人の採用が上手くいったためです。
弊社は元々北海道から本州に出てエリアを拡大していったのですが、北海道では抜群の知名度もあるので、そこまで人の採用に苦労してはいなかったのですが、本州に出ていったときは認知度も低かったので、優秀な人を採用することに苦戦していました。
それが昨年上場した後に、他社で活躍している人からの転職が非常に増えました。上場した効果があったと思います。住宅業界を全国見渡したときに、今成長している会社は国内にはそんなにないのです。
ある程度大きいハウスメーカーさんでも、全国展開が終わって、今は人口減少でマーケットも縮小しているので、店舗を精査している状況です。大手ハウスメーカーを含めても伸ばしているのは海外事業が要因という会社が多いと思います。
今、国内の注文住宅業界では、なかなか上場会社で元気に全国にエリアを伸ばしているという会社が少なく、一昔前に一気に伸ばした会社はあるのですが、大体エリアの進出も終わって逆に店舗の縮小に入っているという状況です。
何が言いたいのかというと、優秀な方は成長していく会社にいたいと思うものです。
成長していく会社はキャリアアップの機会も生まれます。弊社は今回上場して、その中で成長し続けようとしているため、優秀な方をたくさん獲得できるチャンスが生じたというのが今の状況です。特に東海エリアで優秀な人材を大量に獲得できるという大きなチャンスがありました。
そのようなこともあって、人の採用の先行投資と、今回は東海エリアで全く認知度がないので、これだけの大型な店舗を建設し、と人も採用しているため、広告を立ち上げないと人を遊ばせてしまうので、出店に対する広告戦略を考えているということで、実際この1億5,600万円のうち半分ぐらいは、4、5月に広告、CMなどの広告戦略で使用しようと考えています。
それが当初の出店の予算に入っていなかったということです。ただ、どうしても人を採用してしまっているので、人の採用、特に中途採用なのですが、弊社の都合で半年ぐらい待ってもらうということは難しいので、ここで大きく投資をしないと人の獲得ができないということで踏み切ったところでした。
取材者:承知いたしました。そうすると、ハウスメーカーさんはかなり人の採用に苦しんでいる企業が多いと思うのですが、貴社に限っては苦しんではないという点と、特に東海エリアは人材採用がうまくいっているということですか。
回答者:苦しんではいないという点のみならず、特に東海エリアはですね、40〜50人ぐらい採用できています。
決して引き抜き行為はしていないのですが、成長が止まった他社から人が離脱しており、そのような方を多数採用できています。弊社にとっては全く今期に予定していなかったエリアも早期に立ち上げが可能になったので、これは大きなチャンスです。その分、今期の利益は押し下げる結果となってしまいましたが、その分、来期以降の成長投資についてはしっかりできているという裏付けにもなりますので、来期以降の業績には期待をしていただきたいと思っています。
残りは豊栄建設のところですが、これは業績が悪くなりましたということです。
取材者:豊栄建設の業績が悪くなってしまった集客の失敗の部分に関して、リカバリーの施策や何か取り組まれていることはございますか。
回答者:弊社はデジタルマーケティングに特化した会社です。ロゴスホームの営業戦略でいうと、創業の地であり圧倒的なトップシェアを誇る帯広以外の各エリアにおいては、特にトップシェアを取るという戦略ではありません。大体1店舗あたり50棟くらい建築可能な店舗をたくさん出していくという戦略なので、決してトップシェアを取るということではありません。北海道では一部のエリアでトップシェアを取っていくための様々な追加投資をしているのですが、基本的に本州エリアなどこれから展開するところについてはトップシェアを取るというよりも、面をどんどん広げましょうという戦略です。
トップシェアを取らないという戦略においては、デジタルマーケティングでいうと、ある程度リスティング広告で必要な集客は確保できるので、そんなに大きな影響を受けることはないのですが、豊栄建設については札幌に特化してトップシェアをとっているので、ここのマーケティング戦略が非常に業績を左右します。
何が起こったのかというと、昨年の6月から8月にかけて急激に来場が減ったのです。弊社はデジタルマーケティングのメインがリスティング広告なのですが、これはリスティングの運用会社に委託をしています。
リスティングの運用会社に原因調査と報告を求めたところ、リスティングの集客には全く影響はないということでした。
しかし、リスティング広告から弊社ホームページに来たときに資料請求や来場予約のところから離脱されているのではないか、そこから弊社に情報が届いていないのではないかという報告内容でした。ホームページに何かしらエラーが生じているからではないかという仮説のもと、ホームページの改修など様々な対策を図っていました。
しかし、実際にはそこが影響しているのではなく、そもそもマーケティングのリスティング戦略に問題があるのではないかという仮説に至り、調査したところ、競合状況によって各ワードの入札単価が上がっていました。
リスティング会社は弊社に対して金額と集客量で契約しているので、毎月この金額で量を最大化してくださいという契約の中で、効果のその薄いキーワードで大量集客をしていたということがわかりました。コアで効果的なキーワードが高くなっているので、薄いところに広告を打ったが、コンバージョンしないという状況だったのです。
それに気づくのに時間がかかったため、その間に間違った様々な戦略をとってしまい、集客に穴を開けてしまったというのが昨年の6月から8月でした。対策としては、もちろんリスティング会社を変え、入札単価が高くなるアラートを自社でわかるように様々な対策を行っており、今のところは集客には戻っています。
まだ挽回する余地はあるということで、様々な対策を講じてはいたのですが、結局補うまでは至りませんでした。第2四半期が終わった段階で、これは無理だということで下方修正を出すに至ったという経緯です。
豊栄建設というのは規模的に言うと、大体年間300棟ぐらいを安定的にやってきた会社です。営業利益でも大体5~6億円で安定した会社です。しかし昨年、上場したということもあり、この300棟から400棟に頑張って伸ばしましょうということで、人も相当増やして臨んだ1年だったのです。そうなると当然ながら損益分岐点が上がっていて、集客が失敗したということが重なって、利益が全部なくなってしまったという状況になってしまいました。
やはり無理は良くないということで、豊栄建設については安定利益をしっかり出すため、人員も300棟体制に戻して進めています。
集客を失敗したことと、成長しようとしてコストをかけたというこの二つが大きな要因です。
取材者:マーケティングのお話がございましたが、住宅展示場を作らないということで、商談数、反響数というのはどうしても他の企業に比べて少なくなってしまうのかなと思うのですが、そのようなことがあっても成約率が他社に比べて高いということなのですか。
回答者:商談数はそんなに少なくないと思います。
取材者:それはやはりマーケティング施策、戦略がしっかりとしているということですか。
回答者:そうです。住宅を建築する方は、まず総合展示場に行ってみようと思うのではないでしょうか。そのときに何をするかというと、総合展示場で検索しますよね。
総合展示場と検索すれば、当然ながら弊社はリスティング広告でロゴスホームとか豊栄建設がトップに出てくるようにしているので、総合展示場に来場しようとする方にしっかりアプローチができています。行動する前に早くスマートフォンで様々な情報収集をするということにユーザーさんは圧倒的に時間を使うので、その中では逆に言うと認知度はしっかり取れています。集客という観点、反響数という観点では右肩上がりでずっと伸びていますので、そこが少ないということはないと思います。逆に展示場の方が、コロナを機に来場数が減っているので、どこの住宅会社さんもお客さんがいないと言っています。
取材者:坂井建設さんのように新たにM&Aで加わった会社というのは、マーケティングサイドからガラリと変わるようなイメージなのですか。
回答者:そうですね。ただ、坂井建設さんはたまたま同じビジネスモデルで総合展示場に出展していなかったのです。なので、そういう意味ではあまり転換するということなく、弊社のDXとかデジタルマーケティングのところを導入していくことによって、さらに生産性を高くしていこうということがやりやすい会社です。
しかし当然ながら今後M&Aをする会社によっては、総合展示場に出展している会社もあると思うので、そのようなところはコスト削減というところも含めてビジネスモデルの転換をしていきたいと思っています。
取材者:そうしますと、M&Aの戦略としては、同じビジネスモデルというわけではなく、エリアの拡大といった部分に注力しながら検討していくようなイメージでよろしいですか。
回答者:そうです。対象としては、地場で大体トップ3ぐらいに入るような会社です。そうなると大体規模的にも年間200~300棟ぐらいの規模になります。
弊社で新規出店をする際は、50棟ぐらいを目安に考えているので、逆に言うとそのくらいの規模ならスピード早く立ち上げができるのですが、それ以上のシェアを獲得するのはなかなか難しいのです。それ以上のシェアを持っているところには何があるかというと、地域に根ざしたブランドというのが存在するので、そういう会社であればグループに加えていきたいと考えています。逆に50棟ぐらいの規模であれば自社の出店でできるので、そのような会社は対象としていません。そういう形で線引きをしています。
エリアについては、特に制限はないと考えています。今回、新潟という全く携わったことのないエリアに進出したので、そのような未開のエリアであれば、ロゴスホームがそこにまた50棟ぐらいの出店をしていくということにも繋がっていきます。
取材者:承知いたしました。そうすると、東海地方に新規出店されているのはかなり珍しいケースですね。
回答者:今までの出店戦略からすると、既存から隣接エリアではない地域への新規出店は、はじめてのケースになります。これは、東海エリアで、優秀な人材の採用が想定外に出来たことから踏み切れたということです。
取材者:株主還元策につきまして、方針などございましたらご教示いただけますか。
回答者:はい。元々配当性向30~50%という方針で今年臨んでいたのですが、今回下方修正を出して減益になるということで当然ながら減配も発表したという経緯です。今後も成長投資は続けていきますし、特にM&Aについては業績を大きく歪めてしまうなと思っています。
取得するタイミングによってもどうしてもPPAの影響が出てきてしまいますし、あとはどうしても仲介会社さんが入ってくると取得コストが高くなります。もちろん株主還元はしていかなければいけないですが、とは言っても安定しないのは株主の方にとってマイナス要因だと思っています。
安定配当ができるような指標などを導入する必要があるのではないかというのは今議論をしているところです。
場合によってはDOEを採用するとか、安定的に配当するというのが重要ではないかと思っています。
取材者:成長投資との兼ね合いを見ながらということですね。
回答者:はい。
取材者:金利の上昇につきまして貴社にとって影響を受けるのはどのようなものと考えられますか。
回答者:影響が全くないかと言われると、影響はあると思います。ただ、住宅ローン金利が上がったからといって、家を建てる人が一切いなくなるかというとそうではありません。しかし当然ながら住宅にかける金額というのは住宅ローンで借りられる限度額があるので、どうしても少なくなってくると思います。
弊社のポジショニングとしては、中価格帯よりも下のところをターゲットにしているので、住宅マーケットの中の十分コアなターゲット層は取れているというところがあります。より競合が激しくなるものの、金利が上昇したからといって顧客のターゲットから外れるということはないというのが弊社の見解です。
取材者:むしろ低価格で高品質という部分での強みを持たれているので、逆にチャンスという見方もできるということですか。
回答者:そうです。上の価格帯のところから降りてくるということも考えられます。
20250312 CP&X
ビジネスモデルや事業内容
ロゴスホームを筆頭に、豊栄建設、GALLERY HOUSE、坂井建設を擁する注文住宅事業を展開。グループ会社に工務店支援サービスを行うROOTLINKと、設計CADをオフショア化しているLCO(フィリピン)が存在。各社とも顧客ターゲットは一次取得者が中心。注文住宅の他に、建築条件付き宅地の販売も行う。
創業の経緯と転機となった出来事
代表の池田氏が、以前勤務していたハウスメーカーの倒産を機に、仲間と創業。会社の永続的な成長のためにはIPOが不可欠と考え、十数年前から準備を開始。ファンドの経営参画を経て、2019年にロゴスホームの株式をエンデバーユナイテッドに譲渡。エンデバーユナイテッドからの追加出資を得て豊栄建設を取得し、組織再編でロゴスホールディングスとなる。
特徴や強み
商品開発力:寒暖差の激しい地域での創業を背景に、高品質高性能な住宅を適正価格で提供。ビジネスモデル:住宅総合展示場には出展せず、デジタルマーケティングによる集客と、モデルハウスの短期売却を組み合わせたビジネスモデルによるコスト削減。DXの推進:デジタルマーケティングによる集客、オンラインでの営業活動など、DXを積極的に推進している。
直近の決算状況
直近の業績予想を下方修正。売上高はほぼ変更ないものの、利益が減少。要因は、豊栄建設の業績悪化、坂井建設取得に伴う費用、PPA評価替えによる影響。坂井建設の取得は一過性の要因であり、来期以降の業績が期待される。
成長戦略
エリア拡大を成長の要因と位置づけ、新規出店やM&Aを積極的に推進。M&Aにおいては、地場でトップ3に入るような会社を対象とし、エリア拡大とブランド獲得を目指す。今後は東海エリアへの出店を強化し、人材採用を積極的に行う。
株主還元策
配当性向30~50%の方針であったが、業績悪化により減配を発表。安定配当ができるような指標の導入を検討している。
今期の取り組みやトピックス
坂井建設を新たにグループに迎え、新潟県での事業を開始。東海エリアへの大型出店を計画し、人材採用と広告宣伝に注力。豊栄建設の業績不振からの回復を図るため、リスティング戦略の見直しや体制の再構築を実施。来期以降の業績回復が期待される。
常務取締役経理部部長 岩永武也様

(株)ロゴスホールディングス
東証GRT 205A
決算:5月末日
Q 事業内容やビジネスモデル、特徴や強みについて、ご説明いただけますでしょうか。
A 弊社は2020年7月にホールディングスを設立しており、設立自体はごく最近ですが、元々はロゴスホームという注文住宅事業を営んでおり、このロゴスホームを筆頭に、M&Aで取得した豊栄建設、GALLERY HOUSE、坂井建設という形で、現在は四つの事業会社で構成されています。ROOT LINKという会社もございますが、こちらは各社に対して様々なサービスを提供する、いわばグループ内向けの共通サービスを展開している会社です。その中に、設計CADをオフショア化しているLCOというフィリピンの子会社もございます。
元々ロゴスホームは、ホールディングスの代表である池田が創業した会社で、帯広で創業し、北海道全域へと注文住宅のエリア展開を進めてまいりました。その過程で、創業当初から、会社の永続的な成長のためにはIPOが不可欠であると考えておりましたので、十数年前にIPOの準備を開始いたしました。しかしながら、当時は本社が帯広にあったこともあり、管理部門や、IPOに関する専門知識を有する人材を確保することが難しく、様々なコンサルタントにご尽力いただきましたが、期待する成果を得られず、費用のみが先行する状況が続きました。そのような折、ファンドに経営参画していただき、共にIPOを目指すというスキームをご紹介いただき、複数のファンドと面談を重ねた結果、現在のエンデバーユナイテッドとご一緒させていただくこととなり、2019年に一旦ロゴスホームの株式をエンデバーユナイテッドに譲渡するという経緯に至りました。その後、豊栄建設をM&Aで取得する際、ロゴスホームはLBOローンにて借り入れを行なっており、自社のみでは次の出資を行うことが難しい状況であったため、エンデバーユナイテッドに追加出資という形で資金提供を受けて取得し、それを組織再編で統合したものが、現在のロゴスホールディングスです。組織再編の器に豊栄ホールディングスを使ったため、豊栄建設が母体であったように見えるかもしれませんが、実際にはロゴスホームが事業の起点となっています。その後、GALLERY HOUSEの株式を取得し、上場を果たしました。昨年、2024年12月には、新潟の坂井建設を新たにグループに迎えました。
Q ロゴスホームの創業の経緯について、ご教示いただけますでしょうか。
A 元々、代表の池田は、当時他の大手ハウスメーカーに技術者として勤務しておりましたが、そこが倒産するという事態が起こりました。その倒産を契機に、池田が中心となり、当時共に働いていた複数のメンバーと共に住宅会社を創業したというのが、そもそもの経緯です。
Q 特徴をご説明ください。
A 事業会社の特徴といたしましては、各社それぞれに特色がございますが、グループ全体では39の営業拠点を展開しております。ロゴスホームにつきましては、北海道から東北、現在は北関東のふじみ野まで21拠点を出店しております。少々ややこしいのですが、ロゴスホームという会社の中には、ロゴスホームという注文住宅ブランドと、北海道内で展開するハウジングカフェという企画住宅のブランドが混在しておりますので、ロゴスホームという会社としては、26拠点ということになります。豊栄建設につきましては、苫小牧にも拠点がございますが、ほぼ札幌が事業の中心となっています。GALLERY HOUSEにつきましては、栃木県が事業の中心となっており、坂井建設は新潟県全域に8拠点を展開しているという状況です。
Q ターゲット層をご説明ください。
A 基本的なターゲット層といたしましては、どの会社も大きな違いはございませんが、初めて土地をご購入される一次取得者と呼ばれるお客様が中心となっています。グループ全体で申し上げますと、建て替え、つまり土地を既に所有されているお客様の割合は約1割です。残り9割のお客様は、新たに土地を取得して住宅を建設される方々で、その9割のうち、半分弱のお客様が、弊社が保有・販売している建築条件付きの宅地をご利用いただいております。残りの方は、流通地でお客様と共に弊社の営業担当が土地を探して住宅を建設するという形をとっております。したがって、グループ全体で見ますと、土地の売上と建築条件付き宅地のお客様の割合は、3割から4割弱程度となります。この割合は、都市部ほど高くなる傾向にございます。地方においては、比較的容易に土地を入手できるため、土地を保有するという概念があまり一般的ではないという状況です。ただし、土地の販売においては、基本的に大きな利益を追求しておらず、あくまで注文住宅の受注を促進するための販売促進ツールとして位置付けております。
Q 初めて住宅を購入されるお客様が多い状況ということは、価格帯が比較的購入しやすい水準であるということでしょうか。
A そうです。元々の価格帯といたしましても、弊社のグラフで示しておりますように、低価格帯の住宅に特に注力していることもあり、そのような客層のお客様が多い状況です。
Q 強みをご説明ください。
A 当社の強みといたしましては、主に三つ掲げております。一つ目は、商品開発力です。ロゴスホームの創業の地である十勝地方は、夏は35度、冬はマイナス30度にもなる非常に寒暖差の激しいエリアです。降雪量はそれほど多くはありませんが、寒さが厳しく、夏は暑いという、非常に厳しい環境下にあります。また、北海道、特に十勝地方を含む道東地域は、全国的に見ても所得水準が比較的高くないエリアであったため、高品質高性能な住宅を、できる限り安く、適正な価格で、一人でも多くのお客様にお届けすることを念頭に置いた住宅商品開発を行ってまいりました。様々な工夫を凝らし、省エネ性能や耐震性などを、お客様が無理なくご購入いただける価格帯で提供できるよう、パッケージング化してきた点が強みです。
一般的に注文住宅ビジネスにおいては、住宅総合展示場、新聞社やテレビ局などが運営している総合展示場に出展するというビジネスモデルが主流となっております。この総合展示場への出展には、メーカーにとって高額な借地料の支払いと、高額なモデルハウスの建設が必要となります。これらのモデルハウスは、1億円程度の建築費用がかかる豪華な仕様となっており、一般的な住宅とは大きく異なる仕様となっているかと存じます。各社とも立派なモデルハウスを建設しなければ、他社に見劣りしてしまうため、結果として多額の建築費用がかかることになります。耐用年数で言いますと7年をベースに減価償却の対象となり、借地料と建築費だけでも莫大なコストが発生している状況です。さらに、展示場を運営している事業者に対して、運営費の負担も発生いたします。週末には、集客イベントとして、キャラクターショーなどが開催されており、これらのイベントにかかる広告宣伝費の負担もメーカー側が担うことになります。その上で、各社は自社独自のSNSなどを活用し、追加の集客を図るのですが、基本的な出展費用が高額になるため、自社独自の広告宣伝活動を行うことが難しく、自社で広告宣伝活動を行ったとしても、近隣には競合他社が存在するため、自社の強みを明確に訴求することが難しいという側面もございます。その一方で、安定的な大量集客が見込めるため、各社がこぞって出展し、営業活動を行うという状況になっています。しかしながら、展示場における成約率は、100組中1組程度と言われており、非常に厳しい競争環境となっています。逆に申し上げますと、1組のお客様が契約するということは、その出展コストを他のお客様が負担している、すなわち価格転嫁されているという構図になっているため、これがハウスメーカーの住宅価格が高止まりしている要因の一つであると言えるでしょう。
これに対し、弊社は住宅総合展示場には出展せず、自社で店舗、具体的には賃貸の路面店舗などを活用し、お客様との打ち合わせスペースを確保するという形で小規模な出店を行っています。その近隣に、売却を前提とした注文住宅のモデルハウスを建設し、デジタルマーケティングによって集客を行うというビジネスモデルを基本としております。これらのモデルハウスは、半年程度で建て替えを行います。新しいモデルハウスが完成したら、以前のモデルハウスを売却し、新たに来場を促すという流れを確立しております。実際には、モデルハウスの展示期間が短いため、注文住宅仕様の建物を建売住宅として販売いたします。したがって、建売住宅としての利益をしっかりと確保することが可能です。そのため、ランニングコストを抑えることが可能となります。減価償却の必要もございません。店舗にかかる費用は、賃貸の路面店舗賃に打ち合わせスペースを設ける程度であるため、基本的にコストを抑えることができます。弊社は、これらのコスト削減分を住宅価格に反映させております。実際に各社の財務諸表をご覧いただければお分かりいただけるかと存じますが、一般的に、注文住宅の粗利率は、売上総利益で25%程度、営業利益で5%程度が業界水準と言われています。弊社の売上総利益は20%を下回っており、営業利益は5%程度です。これは、販管費を大幅に削減できているためです。その分、住宅価格を抑えることが可能となっております。実際の原価に大きな差はないため、弊社の住宅価格は競合他社と比較して競争力のある価格設定となっております。高品質高性能な住宅を、よりお求めやすい価格でご提供することで、後発ながらも着実にエリアを拡大し、売上を成長させている点が弊社の強みです。
Q 業績についてご説明ください。
A 上場後に一度、業績予想の下方修正を発表したという経緯がございますので、この点について三つの要因をご説明させていただきます。今回、下方修正を発表いたしましたが、売上高については、ほぼ変更はございません。主に利益が減少したという状況です。この下方修正に至った要因は、大きく分けて三つございます。一つ目は、グループ会社である豊栄建設において、集客が計画通りに進まず、業績が悪化したことによる影響で、約6億円の減益要因となりました。元々、21億円の業績見通しを立てておりましたが、9億円程度に減少したため、12億円の減益となりました。このうち、約半分の6億円が豊栄建設の業績悪化によるものです。残りの6億円につきましては、主に二つの要因がございます。一つは、12月末に坂井建設を取得したことに伴う費用です。坂井建設の取得にあたっては、仲介会社を通して取引を行ったため、アドバイザリー費用が発生し、この費用が4億円のうちの2億円を占めております。残りの2億円は、坂井建設を取得した際のPPA(パーチェス・プライス・アロケーション)の評価替えによる影響です。弊社の売上高は、完成工事高と呼ばれる請負契約に基づく売上高ですが、注文住宅は工期が比較的短く、単価もそれほど高くないため、一般的には完成基準が適用されるケースがほとんどです。完成基準を適用する場合、工事が未完成の状態では、未成工事支出金という棚卸資産が計上されます。この評価替えの処理において、本来、進行基準であれば、出来高に応じて利益を計上するところ、完成基準では、未完成工事支出金の簿価が売価に変更されるため、結果として、3ヶ月分の引き渡しについては、ほとんど利益が出ないという状況が発生いたします。今回、坂井建設の取得が第4四半期であったため、連結決算に取り込める期間が3ヶ月のみとなり、結果として、営業利益がマイナスのまま連結決算に取り込まれるという一過性の要因が発生いたしました。
これらの要因と、取得にかかる費用が合算され、4億円の営業利益を押し下げる要因となりました。ただし、これはあくまで一過性の要因であり、来期以降は、この4億円の費用は発生いたしません。また、坂井建設は、純資産が10億円、弊社の取得額が30億円であるため、差額の20億円がのれんとして計上されます。償却期間は12年を予定しており、年間1億6,000万円程度の償却費が発生いたします。しかしながら、坂井建設は、売上高が継続的に増加しており、2021年から2023年にかけても右肩上がりの成長を遂げております。営業利益も3億円を超えており、2024年12月期も同様の数字を見込んでいる状況です。実際に、受注高は売上高を上回るペースで増加しております。弊社は請負業であるため、受注時点では売上高は計上されず、契約後に一定のリードタイムを経て引き渡しが行われるため、受注残という形で計上されます。これをキャリーと呼んでおりますが、弊社のキャリーは、これまで3割から5割程度でしたが、坂井建設は、9割程度のキャリーを抱えているという状況です。したがって、売上高、利益ともに、高い確実性が見込める状況です。今期、そして来期においても、堅調な業績を見込める会社であると考えております。これらの要素を踏まえると、来期は、少なくとも1億円から2億円程度の利益を計上できる見込みであり、今期との比較では、約6億円程度の増益を見込めるのではないかと考えております。
Q 今回の坂井建設の件は、クロージングが12月になったとのことですが、これは、クロージングが当初の予定よりも後ろ倒しになったためでしょうか。それとも、前倒しになったために今期に計上されることになったのでしょうか。
A 後ろ倒しになったわけではございません。売主様のご意向により、当初から12月までのクロージングを希望されておりました。1月から税制改正が予定されていたこともあり、売主様は12月中のクロージングを強く希望されておりました。また、競合他社も存在したため、弊社としては、スケジュールをコントロールする余地はほとんどない状況でした。そのため、結果として12月にクロージングとなり、弊社の連結決算には3ヶ月分しか取り込むことができず、営業利益を押し下げる要因となってしまいました。もし、クロージングの時期が異なれば、営業利益を押し下げるという事態にはならなかったと思われますが、クロージング時期の調整は難しい状況でした。しかしながら、これは一過性の要因であり、来期は、のれん償却を含めて1億円から2億円の利益が出ると考えると、今期との比較、9億円から比較すれば6億円近くは伸びるのではないかと考えております。
下方修正の要因のもう一つは、新規出店にかかる費用ということで、これも計画の前倒しをした分です。弊社は中期的な成長としてエリアの拡大ということはもちろん行っているのですが、昨年は3店舗、ふじみ野店、福島店、いわき店を新規出店しました。これは元々予算にも入っていて、見通しの中にもあったのですが、それとは別に東海エリアで大規模に出店を進めています。これが計画にはなかった追加の分です。実際には今年の5月末頃から名古屋支店を新規オープンしようということで進めていて、東海エリアで次々とオープンをしていく予定で進めています。今まで、弊社の新規出店というのは隣接エリアを中心に拡大していきました。ですが今回、飛び地で東海エリアを一気に進出しようとしています。なぜそれをしようとしたのかというと、人の採用が上手くいったためです。弊社は元々北海道から本州に出てエリアを拡大していったのですが、北海道では抜群の知名度もあるので、そこまで人の採用に苦労してはいなかったのですが、本州に出ていったときは認知度も低かったので、優秀な人を採用することに苦戦していました。それが昨年上場した後に、他社で活躍している人からの転職が非常に増えました。上場した効果があったと思います。住宅業界を全国見渡したときに、今成長している会社は国内にはそんなにないのです。ある程度大きいハウスメーカーさんでも、全国展開が終わって、今は人口減少でマーケットも縮小しているので、店舗を精査している状況です。大手ハウスメーカーを含めても伸ばしているのは海外事業が要因という会社が多いと思います。今、国内の注文住宅業界では、上場会社で元気に全国にエリアを伸ばしているという会社が少なく、一昔前に一気に伸ばした会社はあるのですが、大体エリアの進出も終わって逆に店舗の縮小に入っているという状況です。
Q 優秀な人材の獲得が課題だったのでしょうか。
A 優秀な方は成長していく会社にいたいと思うものです。成長していく会社はキャリアアップの機会も生まれます。弊社は今回上場して、成長し続けようとしているため、優秀な方をたくさん獲得できるチャンスが生じたというのが今の状況です。特に東海エリアで優秀な人材を大量に獲得できるという大きなチャンスがありました。そのようなこともあって、人の採用の先行投資と、今回は東海エリアで全く認知度がないので、これだけの大型店舗を建設し、人も採用しているため、広告を立ち上げないと人を遊ばせてしまうので、出店に対する広告戦略を考えているということで、実際この1億5,600万円のうち半分ぐらいは、4、5月に広告、CMなどの広告戦略で使用しようと考えています。それが当初の出店の予算に入っていなかったということです。ただ、どうしても人を採用してしまっているので、人の採用、特に中途採用なのですが、弊社の都合で半年ぐらい待ってもらうということは難しいので、ここで大きく投資をしないと人の獲得ができないということで踏み切ったところでした。
Qハウスメーカーさんはかなり人の採用に苦しんでいる企業が多いと思うのですが、貴社に限っては苦しんではないという点と、特に東海エリアは人材採用がうまくいっているということでしょうか。
A 苦しんではいないという点のみならず、特に東海エリアは40 〜 50人ぐらい採用できています。決して引き抜き行為はしていないのですが、成長が止まった他社から優秀な順に人が離脱しており、そのような方を多数採用できています。弊社にとっては全く今期に予定していなかったエリアも早期に立ち上げが可能になったので、これは大きなチャンスです。今期の利益は押し下げる結果となってしまいましたが、その分、来期以降の成長投資についてはしっかりできているという裏付けにもなりますので、来期以降の業績には期待をしていただきたいと思っています。
Q 貴社の戦略をご説明ください。
A 弊社はデジタルマーケティングに特化した会社です。ロゴスホームの営業戦略でいうと、創業の地であり圧倒的なトップシェアを誇る帯広以外の各エリアにおいては、特にトップシェアを取るという戦略ではありません。大体1店舗あたり50棟位建築可能な店舗をたくさん出していくという戦略なので、決してトップシェアを取るということではありません。北海道では一部のエリアでトップシェアを取っていくための様々な追加投資をしているのですが、基本的に本州エリアなどこれから展開するところについてはトップシェアを取るというよりは面をどんどん広げましょうという戦略です。
Q 豊栄建設の業績不振の要因について、お聞かせいただけますでしょうか。
A トップシェアを取らないという戦略においては、デジタルマーケティングでいうと、ある程度リスティング広告で必要な集客は確保できるので、そんなに大きな影響を受けることはないのですが、豊栄建設については札幌に特化してトップシェアをとっているので、マーケティング戦略が非常に業績を左右します。
何が起こったのかというと、昨年の6月から8月にかけて急激に来場が減ったのです。弊社はデジタルマーケティングのメインがリスティング広告なのですが、これはリスティングの運用会社に委託をしています。リスティングの運用会社に原因調査と報告を求めたところ、リスティングの集客には全く影響はないということでした。しかし、リスティング広告から弊社ホームページに来たときに、資料請求や来場予約のところから離脱されているのではないか、そこから弊社に情報が届いていないのではないかということではないかという報告内容でした。ホームページに何かしらエラーが生じているからではないかという仮説のもと、ホームページの改修など様々な対策を図っていました。しかし、実際にはそこが影響しているのではなく、そもそもマーケティングのリスティング戦略に問題があるのではないかという仮説に至り、調査したところ、競合状況によって各ワードの入札単価が上がっていました。リスティング会社は弊社に対して金額と集客量で契約しているので、毎月この金額で量を最大化してくださいという契約の中で、効果の薄いキーワードで大量集客をしていたということがわかりました。コアで効果的なキーワードが高くなっているので薄いところに広告を打ったが、コンバージョンしないという状況だったのです。それに気づくのに時間がかかったため、その間に間違った様々な戦略をとってしまい、集客に穴を開けてしまったというのが昨年の6月から8月でした。
対策としては、もちろんリスティング会社を変え、入札単価が高くなるアラートを自社でわかるように様々な対策を行っており、今のところ集客は戻っています。まだ挽回する余地はあるということで、様々な対策を講じてはいたのですが、結局補うまでは至りませんでした。第2四半期が終わった段階で、これは無理だということで下方修正を出すに至ったという経緯です。
豊栄建設というのは規模的に言うと、大体年間300棟ぐらいを安定的にやってきた会社です。営業利益でも大体5~6億円で比較的安定した会社です。しかし昨年、上場したということもあり、300棟から400棟に頑張って伸ばしましょうということで、人も相当増やして臨んだ1年だったのです。そうなると当然ながら損益分岐点が上がっていて、集客が失敗したということが重なって、利益が全部なくなってしまったという状況になってしまいました。やはり無理は良くないということで、豊栄建設については安定利益をしっかり出すため、人員も300棟体制に戻して進めています。集客を失敗したことと、成長しようとしてコストをかけたというこの二つが大きな要因です。
Q マーケティングの話もあったかと思いますが、住宅展示場を作らないということで、商談数、反響数というのはどうしても他の企業に比べて少なくなってしまうのかなと思うのですが、そのようなことがあっても成約率が他社に比べて高いということでしょうか。
A 商談数は特段少なくないと思います。
Q 商談数が少なくないのは、マーケティング施策、戦略がしっかりとしているということでしょうか。
A そうです。住宅を建築する方は、まず総合展示場に行ってみようと思うのではないでしょうか。そのときに何をするかというと、総合展示場で検索しますよね。総合展示場と検索すれば、当然ながら弊社はリスティング広告でロゴスホームとか豊栄建設がトップに出てくるようにしているので、総合展示場に来場しようとする方にしっかりアプローチができています。行動する前にスマートフォンで様々な情報収集をするということにユーザーさんは圧倒的に時間を使うので、その中では逆に言うと認知度はしっかり取れています。集客という観点、反響数という観点では右肩上がりでずっと伸びていますので、そこが少ないということはないと思います。逆に展示場の方が、コロナを機に来場数が減っているので、どこの住宅会社さんもお客さんがいないと言っています。
Q 坂井建設さんのように新たにM&Aで加わった会社というのは、マーケティングサイドから変化が大きいイメージでしょうか。
A そうですね。ただ、坂井建設さんはたまたま同じビジネスモデルで総合展示場に出展していなかったのです。なので、そういう意味ではあまり転換するということなく、弊社のDXとかデジタルマーケティングのところを導入していくことによって、さらに生産性を高くしていこうということがやりやすい会社です。しかし当然ながら今後M&Aをする会社によっては、総合展示場に出展している会社もあると思うので、そのようなところはコスト削減というところも含めてビジネスモデルの転換をしていきたいと思っています。
Q M&Aの戦略としては、同じビジネスモデルというわけではなく、エリアの拡大といった部分に注力しながら検討していくようなイメージでよろしいでしょうか。
A そうです。対象としては、地場で大体トップ3ぐらいに入るような会社です。そうなると大体規模的にも年間200~300棟ぐらいの規模になります。弊社で新規出店をする際は、50棟ぐらいを目安に考えているので、逆に言うとそのくらいの規模ならスピード早く立ち上げができるのですが、それ以上のシェアを獲得するのはなかなか難しいのです。それ以上のシェアを持っているところには何があるかというと、地域に根ざしたブランドというのが存在するので、そういう会社であればグループに加えていきたいと考えています。逆に50棟ぐらいの規模であれば自社の出店でできるので、そのような会社は対象としていません。そういう形で線引きをしています。エリアについては、特に制限はないと考えています。今回、新潟という全く携わったことのないエリアに進出したので、そのような未開のエリアであれば、ロゴスホームがそこにまた50棟ぐらいの出店をしていくということにも繋がっていきます。
Q 東海地方に新規出店されているのはかなり珍しいケースでしょうか。
A 今までの出店戦略からすると、既存から隣接エリアではない地域への新規出店は、はじめてのケースになります。これは、東海エリアで、優秀な人材の採用が想定外に出来たことから踏み切れたということです。
Q 株主還元策につきまして、方針などございましたらご教示いただけますでしょうか。
A はい。元々配当性向30~50%という方針で今年臨んでいたのですが、今回下方修正を出して減益になるということで当然ながら減配も発表したという経緯です。今後も成長投資は続けていきますし、特にM&Aについては業績を大きく歪めてしまうなと思っています。取得するタイミングによってもどうしてもPPAの影響が出てきてしまいますし、あとはどうしても仲介会社さんが入ってくると取得コストが高くなります。もちろん株主還元はしていかなければいけないですが、とは言っても安定しないのは株主の方にとってマイナス要因だと思っています。安定配当ができるような指標などを導入する必要があるのではないかというのは今議論をしているところです。場合によってはDOEを採用するとか、安定的に配当するというのが重要ではないかと思っています。
Q 成長投資との兼ね合いを見ながらということでしょうか。
A はい。
Q 金利の上昇の貴社への影響をご説明ください。
A 影響が全くないかと言われると、影響はあると思います。ただ、住宅ローン金利が上がったからといって、家を建てる人が一切いなくなるかというとそうではありません。しかし当然ながら住宅にかける金額というのは住宅ローンで借りられる限度額があるので、どうしても少なくなってくると思います。弊社のポジショニングとしては、中価格帯よりも下のところをターゲットにしているので、住宅マーケットの中の十分コアなターゲット層は取れているというところがあります。より競合が激しくなるものの、金利が上昇したからといって顧客のターゲットから外れるということはないというのが弊社の見解です。上の価格帯のところから顧客が降りてくるということも考えられます。
取材者:事業内容やビジネスモデル、特徴や強みなどをご説明ください。
回答者:弊社は2020年7月にホールディングスを設立しており、設立自体はごく最近ですが、元々はロゴスホームという注文住宅事業を営んでおり、このロゴスホームを筆頭に、M&Aで取得した豊栄建設、GALLERY HOUSE、坂井建設という形で、現在は四つの事業会社で構成されています。ROOT LINKという会社もございますが、こちらは各社に対して様々なサービスを提供する、いわばグループ内向けの共通サービスを展開している会社です。
その中に、設計CADをオフショア化しているLCOというフィリピンの子会社もございます。
元々ロゴスホームは、ホールディングスの代表である池田が創業した会社で、帯広で創業し、北海道全域へと注文住宅のエリア展開を進めてまいりました。
その過程で、創業当初から、会社の永続的な成長のためにはIPOが不可欠であると考えておりましたので、十数年前にIPOの準備を開始いたしました。しかしながら、当時は本社が帯広にあったこともあり、管理部門や、IPOに関する専門知識を有する人材を確保することが難しく、様々なコンサルタントにご尽力いただきましたが、期待する成果を得られず、費用のみが先行する状況が続きました。そのような折、ファンドに経営参画していただき、共にIPOを目指すというスキームをご紹介いただき、複数のファンドと面談を重ねた結果、現在のエンデバーユナイテッドとご一緒させていただくこととなり、2019年に一旦ロゴスホームの株式をエンデバーユナイテッドに譲渡するという経緯に至りました。
その後、豊栄建設をM&Aで取得する際、ロゴスホームはLEOローンにて借り入れを行なっており、自社のみでは次の出資を行うことが難しい状況であったため、エンデバーユナイテッドに追加出資という形で資金提供を受けて取得し、それを組織再編で統合したものが、現在のロゴスホールディングスです。組織再編の器に豊栄ホールディングスを使ったため、豊栄建設が母体であったように見えるかもしれませんが、実際にはロゴスホームが事業の起点となっています。その後、GALLERY HOUSEの株式を取得し、上場を果たしました。昨年、2024年12月には、新潟の坂井建設を新たにグループに迎えました。
取材者:ロゴスホームの創業の経緯について、お差し支えのない範囲でご教示いただけますか。
回答者:はい。元々、代表の池田は、当時他の大手ハウスメーカーに技術者として勤務しておりましたが、そこが倒産するという事態が起こりました。
その倒産を契機に、池田が中心となり、当時共に働いていた複数のメンバーと共に住宅会社を創業したというのが、そもそもの経緯です。
事業会社の特徴といたしましては、各社それぞれに特色がございますが、グループ全体では39の営業拠点を展開しております。ロゴスホームにつきましては、北海道から東北、現在は北関東のふじみ野まで21拠点を出店しております。
少々ややこしいのですが、ロゴスホームという会社の中には、ロゴスホームという注文住宅ブランドと、北海道内で展開するハウジングカフェという企画住宅のブランドが混在しておりますので、ロゴスホームという会社としては、26拠点ということになります。
豊栄建設につきましては、苫小牧にも拠点がございますが、ほぼ札幌が事業の中心となっています。GALLERY HOUSEにつきましては、栃木県が事業の中心となっており、坂井建設は新潟県全域に8拠点を展開しているという状況です。
基本的なターゲット層といたしましては、どの会社も大きな違いはございませんが、初めて土地をご購入される一次取得者と呼ばれるお客様が中心となっています。
グループ全体で申し上げますと、建て替え、つまり土地を既に所有されているお客様の割合は約1割です。残り9割のお客様は、新たに土地を取得して住宅を建設される方々で、その9割のうち、半分弱のお客様が、弊社が保有・販売している建築条件付きの宅地をご利用いただいております。残りの方は、流通地でお客様と共に弊社の営業担当が土地を探して住宅を建設するという形をとっております。したがって、グループ全体で見ますと、土地の売上と建築条件付き宅地のお客様の割合は、3割から4割弱程度となります。
この割合は、都市部ほど高くなる傾向にございます。地方においては、比較的容易に土地を入手できるため、土地を保有するという概念があまり一般的ではないという状況です。
ただし、土地の販売においては、基本的に大きな利益を追求しておらず、あくまで注文住宅の受注を促進するための販売促進ツールとして位置付けております。
取材者:初めて住宅を購入されるお客様が多い状況ということは、価格帯が比較的購入しやすい水準であるということでしょうか?
回答者:そうです。元々の価格帯といたしましても、弊社のグラフで示しておりますように、低価格帯の住宅に特に注力していることもあり、そのような客層のお客様が多い状況です。
当社の強みといたしましては、主に三つ掲げております。一つ目は、商品開発力です。ロゴスホームの創業の地である十勝地方は、夏は35度、冬はマイナス30度にもなる非常に寒暖差の激しいエリアです。降雪量はそれほど多くはありませんが、寒さが厳しく、夏は暑いという、非常に厳しい環境下にあります。また、北海道、特に十勝地方を含む道東地域は、全国的に見ても所得水準が比較的高くないエリアであったため、高品質高性能な住宅を、できる限り安く、適正な価格で、一人でも多くのお客様にお届けすることを念頭に置いた住宅商品開発を行ってまいりました。
様々な工夫を凝らし、省エネ性能や耐震性などを、お客様が無理なくご購入いただける価格帯で提供できるよう、パッケージング化してきた点が強みです。
一般的に注文住宅ビジネスにおいては、住宅総合展示場、新聞社やテレビ局などが運営している総合展示場に出展するというビジネスモデルが主流となっております。
この総合展示場への出展には、メーカーにとって高額な借地料の支払いと、高額なモデルハウスの建設が必要となります。
これらのモデルハウスは、1億円程度の建築費用がかかる豪華な仕様となっており、一般的な住宅とは大きく異なる仕様となっているかと存じます。各社とも立派なモデルハウスを建設しなければ、他社に見劣りしてしまうため、結果として多額の建築費用がかかることになります。耐用年数で言いますと7年をベースに減価償却の対象となり、借地料と建築費だけでも莫大なコストが発生している状況です。
さらに、展示場を運営している事業者に対して、運営費の負担も発生いたします。週末には、集客イベントとして、キャラクターショーなどが開催されており、これらのイベントにかかる広告宣伝費の負担もメーカー側が担うことになります。その上で、各社は自社独自のSNSなどを活用し、追加の集客を図るのですが、基本的な出展費用が高額になるため、自社独自の広告宣伝活動を行うことが難しく、自社で広告宣伝活動を行ったとしても、近隣には競合他社が存在するため、自社の強みを明確に訴求することが難しいという側面もございます。その一方で、安定的な大量集客が見込めるため、各社がこぞって出展展し、営業活動を行うという状況になっています。
しかしながら、展示場における成約率は、100組中1組程度と言われており、非常に厳しい競争環境となっています。
逆に申し上げますと、1組のお客様が契約するということは、その出展コストを他のお客様が負担している、すなわち価格転嫁されているという構図になっているため、これがハウスメーカーの住宅価格が高止まりしている要因の一つであると言えるでしょう。
これに対し、弊社は住宅総合展示場には出展せず、自社で店舗、具体的には賃貸の路面店舗などを活用し、お客様との打ち合わせスペースを確保するという形で小規模な出店を行っています。
その近隣に、売却を前提とした注文住宅のモデルハウスを建設し、デジタルマーケティングによって集客を行うというビジネスモデルを基本としております。これらのモデルハウスは、半年程度で建て替えを行います。
新しいモデルハウスが完成したら、以前のモデルハウスを売却し、新たに来場を促すという流れを確立しております。実際には、モデルハウスの展示期間が短いため、注文住宅仕様の建物を建売住宅として販売いたします。
したがって、建売住宅としての利益をしっかりと確保することが可能です。そのため、ランニングコストを抑えることが可能となります。減価償却の必要もございません。
店舗にかかる費用は、賃貸の路面店舗に打ち合わせスペースを設ける程度であるため、基本的にコストを抑えることができます。弊社は、これらのコスト削減分を住宅価格に反映させております。実際に各社の財務諸表をご覧いただければお分かりいただけるかと存じますが、一般的に、注文住宅の粗利率は、売上総利益で25%程度、営業利益で5%程度が業界水準と言われています。弊社の売上総利益は20%を下回っており、営業利益は5%程度です。これは、販管費を大幅に削減できているためです。
その分、住宅価格を抑えることが可能となっております。実際の原価に大きな差はないため、弊社の住宅価格は競合他社と比較して競争力のある価格設定となっております。これは、数字が明確に示している事実であり、価格競争力において優位性を確立できていると考えております。
高品質高性能な住宅を、よりお求めやすい価格でご提供できるという点が、弊社のビジネスモデルの大きな特徴です。さらに、弊社はDXにも積極的に取り組んでおり、集客はデジタルマーケティングによる反響営業が中心となっています。営業活動においては、インサイドセールスがまず一次的なアポイントメントを設定し、その後、営業担当、設計担当がオンラインで接客を行うケースも多く、店舗を立ち上げる際には、営業担当と現場監督がいれば、設計やコーディネーターはオンラインで対応できるため、少人数体制での新規出店が可能となります。
これらの要因が重なり、販管費を抑えることができている点が、弊社のビジネスモデルの大きな特徴です。高品質な住宅を適正な価格でご提供することで、後発ながらも着実にエリアを拡大し、売上を成長させている点が弊社の強みです。
しかしながら、上場後に一度、業績予想の下方修正を発表したという経緯がございますので、この点について三つの要因をご説明させていただきます。今回、下方修正を発表いたしましたが、売上高については、ほぼ変更はございません。主に利益が減少したという状況です。この下方修正に至った要因は、大きく分けて三つございます。
一つ目は、グループ会社である豊栄建設において、集客が計画通りに進まず、業績が悪化したことによる影響で、約6億円の減益要因となりました。元々、21億円の業績見通しを立てておりましたが、9億円程度に減少したため、12億円の減益となりました。このうち、約半分の6億円が豊栄建設の業績悪化によるものです。
残りの6億円につきましては、主に二つの要因がございます。一つは、12月末に坂井建設を取得したことに伴う費用です。坂井建設の取得にあたっては、仲介会社を通して取引を行ったため、アドバイザリー費用が発生し、この費用が4億円のうちの2億円を占めております。
残りの2億円は、坂井建設を取得した際のPPA(パーチェス・プライス・アロケーション)の評価替えによる影響です。弊社の売上高は、完成工事高と呼ばれる請負契約に基づく売上高ですが、注文住宅は工期が比較的短く、単価もそれほど高くないため、一般的には完成基準が適用されるケースがほとんどです。
完成基準を適用する場合、工事が未完成の状態では、未成工事支出金という棚卸資産が計上されます。この評価替えの処理において、本来、進行基準であれば、出来高に応じて利益を計上するところ、完成基準では、未完成工事支出金の簿価が売価に変更されるため、結果として、3ヶ月分の引き渡しについては、ほとんど利益が出ないという状況が発生いたします。今回、坂井建設の取得が第4四半期であったため、連結決算に取り込める期間が3ヶ月のみとなり、棚卸資産にかかる分しか売上を計上することができませんでした。
そのため、粗利率が低下し、営業利益がマイナスとして計上されるという一過性の要因が生じました。これが、もし、より長い期間連結決算に取り込める状況であれば、このようなマイナス要因は発生しなかったと考えられます。取得の完了時期が12月であったため、連結決算に取り込める期間が3ヶ月のみとなり、結果として、営業利益がマイナスのまま連結決算に取り込まれるという一過性の要因が発生いたしました。
これらの要因と、取得にかかる費用が合算され、4億円の営業利益を押し下げる要因となりました。ただし、これはあくまで一過性の要因であり、来期以降は、この4億円の費用は発生いたしません。また、坂井建設は、純資産が10億円、弊社の取得額が30億円であるため、差額の20億円がのれんとして計上されます。償却期間は12年を予定しており、年間1億6,000万円程度の償却費が発生いたします。しかしながら、坂井建設は、売上高が継続的に増加しており、2021年から2023年にかけても右肩上がりの成長を遂げております。
営業利益も3億円を超えており、2024年12月期も同様の数字を見込んでいる状況です。
実際に、受注高は売上高を上回るペースで増加しております。弊社は請負業であるため、受注時点では売上高は計上されず、契約後に一定のリードタイムを経て引き渡しが行われるため、受注残という形で計上されます。キャリーと呼ばれる弊社の受注残は、これまで3割から5割程度でしたが、坂井建設は、9割程度の受注残を抱えているという状況です。
したがって、売上高、利益ともに、高い確実性が見込める状況です。今期、そして来期においても、堅調な業績を見込める会社であると考えております。
これらの要素を踏まえると、来期は、少なくとも1億円から2億円程度の利益を計上できる見込みであり、今期との比較では、約6億円程度の増益を見込めるのではないかと考えております。
取材者:今回の坂井建設の件ですが、クロージングが12月になったとのことですが、これは、クロージングが当初の予定よりも後ろ倒しになったためですか。それとも、前倒しになったために今期に計上されることになったのですか。
回答者:後ろ倒しになったわけではございません。売主様のご意向により、当初から12月までのクロージングを希望されておりました。1月から税制改正が予定されていたこともあり、売主様は12月中のクロージングを強く希望されておりました。また、競合他社も存在したため、弊社としては、スケジュールをコントロールする余地はほとんどない状況でした。
そのため、結果として12月にクロージングとなり、弊社の連結決算には3ヶ月分しか取り込むことができず、営業利益を押し下げる要因となってしまいました。
もし、クロージングの時期が異なれば、営業利益を押し下げるという事態にはならなかったと思われますが、クロージング時期の調整は難しい状況でした。
しかしながら、これは一過性の要因であり、来期は、のれん償却を含めて1億円から2億円の利益が出ると考えると、今期との比較、9億円から比較すれば6億円近くは伸びるのではないかと考えております。
取材者:承知いたしました。期初にはこのM&Aは特に予定はなかったのですか。
回答者:そうですね。全くなかったです。
回答者:もう一つが、新規出店にかかる費用ということで、これも計画の前倒しをした分です。弊社は大きく中期的な成長としてエリアの拡大ということはもちろん行っているのですが、昨年は3店舗、ふじみ野店、福島店、いわき店を新規出店しました。
これは元々予算にも入っていて、見通しの中にもあったのですが、それとは別に東海エリアで大規模に出店を進めています。これが計画にはなかった追加の分です。
実際には今年の5月末頃から名古屋支店を新規オープンしようということで進めていて、東海エリアで次々とオープンをしていく予定で進めています。
今まで、弊社の新規出店というのは隣接エリアを中心に拡大していきました。ですが今回、飛び地で東海エリアを一気に進出しようとしています。なぜそれをしようとしたのかというと、人の採用が上手くいったためです。
弊社は元々北海道から本州に出てエリアを拡大していったのですが、北海道では抜群の知名度もあるので、そこまで人の採用に苦労してはいなかったのですが、本州に出ていったときは認知度も低かったので、優秀な人を採用することに苦戦していました。
それが昨年上場した後に、他社で活躍している人からの転職が非常に増えました。上場した効果があったと思います。住宅業界を全国見渡したときに、今成長している会社は国内にはそんなにないのです。
ある程度大きいハウスメーカーさんでも、全国展開が終わって、今は人口減少でマーケットも縮小しているので、店舗を精査している状況です。大手ハウスメーカーを含めても伸ばしているのは海外事業が要因という会社が多いと思います。
今、国内の注文住宅業界では、なかなか上場会社で元気に全国にエリアを伸ばしているという会社が少なく、一昔前に一気に伸ばした会社はあるのですが、大体エリアの進出も終わって逆に店舗の縮小に入っているという状況です。
何が言いたいのかというと、優秀な方は成長していく会社にいたいと思うものです。
成長していく会社はキャリアアップの機会も生まれます。弊社は今回上場して、その中で成長し続けようとしているため、優秀な方をたくさん獲得できるチャンスが生じたというのが今の状況です。特に東海エリアで優秀な人材を大量に獲得できるという大きなチャンスがありました。
そのようなこともあって、人の採用の先行投資と、今回は東海エリアで全く認知度がないので、これだけの大型な店舗を建設し、と人も採用しているため、広告を立ち上げないと人を遊ばせてしまうので、出店に対する広告戦略を考えているということで、実際この1億5,600万円のうち半分ぐらいは、4、5月に広告、CMなどの広告戦略で使用しようと考えています。
それが当初の出店の予算に入っていなかったということです。ただ、どうしても人を採用してしまっているので、人の採用、特に中途採用なのですが、弊社の都合で半年ぐらい待ってもらうということは難しいので、ここで大きく投資をしないと人の獲得ができないということで踏み切ったところでした。
取材者:承知いたしました。そうすると、ハウスメーカーさんはかなり人の採用に苦しんでいる企業が多いと思うのですが、貴社に限っては苦しんではないという点と、特に東海エリアは人材採用がうまくいっているということですか。
回答者:苦しんではいないという点のみならず、特に東海エリアはですね、40〜50人ぐらい採用できています。
決して引き抜き行為はしていないのですが、成長が止まった他社から人が離脱しており、そのような方を多数採用できています。弊社にとっては全く今期に予定していなかったエリアも早期に立ち上げが可能になったので、これは大きなチャンスです。その分、今期の利益は押し下げる結果となってしまいましたが、その分、来期以降の成長投資についてはしっかりできているという裏付けにもなりますので、来期以降の業績には期待をしていただきたいと思っています。
残りは豊栄建設のところですが、これは業績が悪くなりましたということです。
取材者:豊栄建設の業績が悪くなってしまった集客の失敗の部分に関して、リカバリーの施策や何か取り組まれていることはございますか。
回答者:弊社はデジタルマーケティングに特化した会社です。ロゴスホームの営業戦略でいうと、創業の地であり圧倒的なトップシェアを誇る帯広以外の各エリアにおいては、特にトップシェアを取るという戦略ではありません。大体1店舗あたり50棟くらい建築可能な店舗をたくさん出していくという戦略なので、決してトップシェアを取るということではありません。北海道では一部のエリアでトップシェアを取っていくための様々な追加投資をしているのですが、基本的に本州エリアなどこれから展開するところについてはトップシェアを取るというよりも、面をどんどん広げましょうという戦略です。
トップシェアを取らないという戦略においては、デジタルマーケティングでいうと、ある程度リスティング広告で必要な集客は確保できるので、そんなに大きな影響を受けることはないのですが、豊栄建設については札幌に特化してトップシェアをとっているので、ここのマーケティング戦略が非常に業績を左右します。
何が起こったのかというと、昨年の6月から8月にかけて急激に来場が減ったのです。弊社はデジタルマーケティングのメインがリスティング広告なのですが、これはリスティングの運用会社に委託をしています。
リスティングの運用会社に原因調査と報告を求めたところ、リスティングの集客には全く影響はないということでした。
しかし、リスティング広告から弊社ホームページに来たときに資料請求や来場予約のところから離脱されているのではないか、そこから弊社に情報が届いていないのではないかという報告内容でした。ホームページに何かしらエラーが生じているからではないかという仮説のもと、ホームページの改修など様々な対策を図っていました。
しかし、実際にはそこが影響しているのではなく、そもそもマーケティングのリスティング戦略に問題があるのではないかという仮説に至り、調査したところ、競合状況によって各ワードの入札単価が上がっていました。
リスティング会社は弊社に対して金額と集客量で契約しているので、毎月この金額で量を最大化してくださいという契約の中で、効果のその薄いキーワードで大量集客をしていたということがわかりました。コアで効果的なキーワードが高くなっているので、薄いところに広告を打ったが、コンバージョンしないという状況だったのです。
それに気づくのに時間がかかったため、その間に間違った様々な戦略をとってしまい、集客に穴を開けてしまったというのが昨年の6月から8月でした。対策としては、もちろんリスティング会社を変え、入札単価が高くなるアラートを自社でわかるように様々な対策を行っており、今のところは集客には戻っています。
まだ挽回する余地はあるということで、様々な対策を講じてはいたのですが、結局補うまでは至りませんでした。第2四半期が終わった段階で、これは無理だということで下方修正を出すに至ったという経緯です。
豊栄建設というのは規模的に言うと、大体年間300棟ぐらいを安定的にやってきた会社です。営業利益でも大体5~6億円で安定した会社です。しかし昨年、上場したということもあり、この300棟から400棟に頑張って伸ばしましょうということで、人も相当増やして臨んだ1年だったのです。そうなると当然ながら損益分岐点が上がっていて、集客が失敗したということが重なって、利益が全部なくなってしまったという状況になってしまいました。
やはり無理は良くないということで、豊栄建設については安定利益をしっかり出すため、人員も300棟体制に戻して進めています。
集客を失敗したことと、成長しようとしてコストをかけたというこの二つが大きな要因です。
取材者:マーケティングのお話がございましたが、住宅展示場を作らないということで、商談数、反響数というのはどうしても他の企業に比べて少なくなってしまうのかなと思うのですが、そのようなことがあっても成約率が他社に比べて高いということなのですか。
回答者:商談数はそんなに少なくないと思います。
取材者:それはやはりマーケティング施策、戦略がしっかりとしているということですか。
回答者:そうです。住宅を建築する方は、まず総合展示場に行ってみようと思うのではないでしょうか。そのときに何をするかというと、総合展示場で検索しますよね。
総合展示場と検索すれば、当然ながら弊社はリスティング広告でロゴスホームとか豊栄建設がトップに出てくるようにしているので、総合展示場に来場しようとする方にしっかりアプローチができています。行動する前に早くスマートフォンで様々な情報収集をするということにユーザーさんは圧倒的に時間を使うので、その中では逆に言うと認知度はしっかり取れています。集客という観点、反響数という観点では右肩上がりでずっと伸びていますので、そこが少ないということはないと思います。逆に展示場の方が、コロナを機に来場数が減っているので、どこの住宅会社さんもお客さんがいないと言っています。
取材者:坂井建設さんのように新たにM&Aで加わった会社というのは、マーケティングサイドからガラリと変わるようなイメージなのですか。
回答者:そうですね。ただ、坂井建設さんはたまたま同じビジネスモデルで総合展示場に出展していなかったのです。なので、そういう意味ではあまり転換するということなく、弊社のDXとかデジタルマーケティングのところを導入していくことによって、さらに生産性を高くしていこうということがやりやすい会社です。
しかし当然ながら今後M&Aをする会社によっては、総合展示場に出展している会社もあると思うので、そのようなところはコスト削減というところも含めてビジネスモデルの転換をしていきたいと思っています。
取材者:そうしますと、M&Aの戦略としては、同じビジネスモデルというわけではなく、エリアの拡大といった部分に注力しながら検討していくようなイメージでよろしいですか。
回答者:そうです。対象としては、地場で大体トップ3ぐらいに入るような会社です。そうなると大体規模的にも年間200~300棟ぐらいの規模になります。
弊社で新規出店をする際は、50棟ぐらいを目安に考えているので、逆に言うとそのくらいの規模ならスピード早く立ち上げができるのですが、それ以上のシェアを獲得するのはなかなか難しいのです。それ以上のシェアを持っているところには何があるかというと、地域に根ざしたブランドというのが存在するので、そういう会社であればグループに加えていきたいと考えています。逆に50棟ぐらいの規模であれば自社の出店でできるので、そのような会社は対象としていません。そういう形で線引きをしています。
エリアについては、特に制限はないと考えています。今回、新潟という全く携わったことのないエリアに進出したので、そのような未開のエリアであれば、ロゴスホームがそこにまた50棟ぐらいの出店をしていくということにも繋がっていきます。
取材者:承知いたしました。そうすると、東海地方に新規出店されているのはかなり珍しいケースですね。
回答者:今までの出店戦略からすると、既存から隣接エリアではない地域への新規出店は、はじめてのケースになります。これは、東海エリアで、優秀な人材の採用が想定外に出来たことから踏み切れたということです。
取材者:株主還元策につきまして、方針などございましたらご教示いただけますか。
回答者:はい。元々配当性向30~50%という方針で今年臨んでいたのですが、今回下方修正を出して減益になるということで当然ながら減配も発表したという経緯です。今後も成長投資は続けていきますし、特にM&Aについては業績を大きく歪めてしまうなと思っています。
取得するタイミングによってもどうしてもPPAの影響が出てきてしまいますし、あとはどうしても仲介会社さんが入ってくると取得コストが高くなります。もちろん株主還元はしていかなければいけないですが、とは言っても安定しないのは株主の方にとってマイナス要因だと思っています。
安定配当ができるような指標などを導入する必要があるのではないかというのは今議論をしているところです。
場合によってはDOEを採用するとか、安定的に配当するというのが重要ではないかと思っています。
取材者:成長投資との兼ね合いを見ながらということですね。
回答者:はい。
取材者:金利の上昇につきまして貴社にとって影響を受けるのはどのようなものと考えられますか。
回答者:影響が全くないかと言われると、影響はあると思います。ただ、住宅ローン金利が上がったからといって、家を建てる人が一切いなくなるかというとそうではありません。しかし当然ながら住宅にかける金額というのは住宅ローンで借りられる限度額があるので、どうしても少なくなってくると思います。
弊社のポジショニングとしては、中価格帯よりも下のところをターゲットにしているので、住宅マーケットの中の十分コアなターゲット層は取れているというところがあります。より競合が激しくなるものの、金利が上昇したからといって顧客のターゲットから外れるということはないというのが弊社の見解です。
取材者:むしろ低価格で高品質という部分での強みを持たれているので、逆にチャンスという見方もできるということですか。
回答者:そうです。上の価格帯のところから降りてくるということも考えられます。
20250312 CP&X
ビジネスモデルや事業内容
ロゴスホームを筆頭に、豊栄建設、GALLERY HOUSE、坂井建設を擁する注文住宅事業を展開。グループ会社に工務店支援サービスを行うROOTLINKと、設計CADをオフショア化しているLCO(フィリピン)が存在。各社とも顧客ターゲットは一次取得者が中心。注文住宅の他に、建築条件付き宅地の販売も行う。
創業の経緯と転機となった出来事
代表の池田氏が、以前勤務していたハウスメーカーの倒産を機に、仲間と創業。会社の永続的な成長のためにはIPOが不可欠と考え、十数年前から準備を開始。ファンドの経営参画を経て、2019年にロゴスホームの株式をエンデバーユナイテッドに譲渡。エンデバーユナイテッドからの追加出資を得て豊栄建設を取得し、組織再編でロゴスホールディングスとなる。
特徴や強み
商品開発力:寒暖差の激しい地域での創業を背景に、高品質高性能な住宅を適正価格で提供。ビジネスモデル:住宅総合展示場には出展せず、デジタルマーケティングによる集客と、モデルハウスの短期売却を組み合わせたビジネスモデルによるコスト削減。DXの推進:デジタルマーケティングによる集客、オンラインでの営業活動など、DXを積極的に推進している。
直近の決算状況
直近の業績予想を下方修正。売上高はほぼ変更ないものの、利益が減少。要因は、豊栄建設の業績悪化、坂井建設取得に伴う費用、PPA評価替えによる影響。坂井建設の取得は一過性の要因であり、来期以降の業績が期待される。
成長戦略
エリア拡大を成長の要因と位置づけ、新規出店やM&Aを積極的に推進。M&Aにおいては、地場でトップ3に入るような会社を対象とし、エリア拡大とブランド獲得を目指す。今後は東海エリアへの出店を強化し、人材採用を積極的に行う。
株主還元策
配当性向30~50%の方針であったが、業績悪化により減配を発表。安定配当ができるような指標の導入を検討している。
今期の取り組みやトピックス
坂井建設を新たにグループに迎え、新潟県での事業を開始。東海エリアへの大型出店を計画し、人材採用と広告宣伝に注力。豊栄建設の業績不振からの回復を図るため、リスティング戦略の見直しや体制の再構築を実施。来期以降の業績回復が期待される。
常務取締役経理部部長 岩永武也様