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(株)ロゴスホールディングス

東証GRT 205A

決算:5月末日

20251024

CP&X


決算概要

売上高は過去最高となる7,224百万円(前年同期比+149.9%)、営業損失711百万円(前年同期は営業損失776百万円)。前年より損失幅は縮小し、計画よりも上振れで着地。前期比増の主因は、引渡棟数の増加(坂井建設+新規出店の効果)。粗利は1,194百万円(前年同期比+187.3%)で粗利率は16.5%(前年同期+2.1%)。一方、坂井建設や新規出店に伴う人件費・採用費・広告販促費、地代家賃増、のれん償却などの固定費が増加し、販管費は1,905百万円(前年同期比+59.9%)。2Q以降は計画通り営業利益へ転換の見通し。


セグメント別または事業別の増減要因

単一セグメント。エリア別では、北海道は既存店の大型自社展示場化などのリニューアルで受注が伸長(ロゴスホーム旭川はリニューアル後に受注YoY+20%超)。北海道外は新規出店が寄与。ロゴスホーム名古屋は立ち上がり好調で受注が計画超。四日市は10/11に開店(売上寄与は今後)。前年比売上は坂井建設の連結寄与に加え、オーガニックでも伸長。坂井建設を除く売上YoY+64.8%、坂井建設の連結調整を控除したベースではYoY+112.7%。


主要KPIの進捗と変化

引渡棟数については、1Qは前年を上回り、通期計画は1,481棟。季節偏重は4Qに集中見込み。受注については、当四半期から月次受注速報の開示を開始。受注状況は、月次は多少の変動はあるものの、累計では前年比大幅増。伸長要因はM&A、新規出店、既存店リニューアル。収益性のKPIである粗利率について前年から2.1%改善し、16.5%となった。


季節性・一過性要因の有無と影響

季節性:当期の引渡は前期同様の季節偏重により4Qに集中し、逆に1Qは一番少ない。よって、1Q損益分岐を大きく下回ることから、例年どおり営業損失。

一過性:坂井建設の決算期変更(12/31→5/31)に伴う連結調整あり。坂井建設の4–5月分は売上1,075百万円、営業損失11百万円を1Qに反映。


通期見通しと進捗率・達成可能性

通期業績予想は売上46,815百万円(前年比+29.1%)、営業利益1,500百万円(前年比+208.0%)、経常利益1,392百万円(前年比+244.2%)、当期純利益826百万円(前年比+313.8%)のまま据え置き。1Qは計画上振れたものの、四半期ごとの変動を踏まえ通期業績予想は現状から変更無し。しかし、当期の受注は名古屋の新規オープン含めて好調により計画比を上振れの状況。


トピックス

北海道内の既存店リニューアル(旭川・中標津・千歳)を実施。特に旭川は大型展示場化やカフェ・屋内キッズパーク併設で受注がYoY+20%超。道外は東海エリアに進出(名古屋・四日市開設、岐阜での出店計画)。四日市は10/11に開店。月次受注速報の定期開示を開始。

豊栄建設は引渡棟数を前年比横ばいを維持しつつ、商品・ブランド刷新や原価/コスト削減で収益性改善に注力。

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上場市場 証券コード

​決算日

取材アーカイブ

  • CP&X

    決算概要

    前期(2025年5月期)の決算は、売上高が対前年同期比14.4%増の36,269百万円となったものの、営業利益は同65.0%減の487百万円、純利益は同77.6%減の199百万円と、増収減益での着地となった。この大幅な減益の主な要因は、坂井建設の連結取込が3か月と短く、M&Aに伴う棚卸資産の会計上の評価替えと多額の仲介コスト計上により赤字の取込となったこと、成長投資として東海エリアへ新規出店計画の前倒しによる先行コスト、および豊栄建設におけるWebマーケティング運用変更に起因する集客トラブルの一過性要因であった。期中の業績予想修正に対しては、粗利および土地販売等の収益の若干の上振れにより、予算通りかやや上振れの着地となっている。

     

    セグメント別または事業別の増減要因

    同社は単一セグメントだが、売上高の伸びに対し利益の伸びが鈍化している要因として、中核会社であるロゴスホームにおける先行投資の影響が継続的に入っていることが挙げられる。新規エリアへの出店に伴う人員採用や広告宣伝費などの販管費が先行して計上されている状況である。新店舗が安定的に利益を創出する体制となるまでには、2年から3年程度の期間を見込んでいる。

     

    主要KPIの進捗と変化

    同社が最重要KPIと位置付けているのは引渡棟数であり、これを年間で伸ばすことに注力している。棟数増加の戦略は「新規エリアの拡大」と「既存エリアでのシェア向上」の二軸で構成され、現状はエリア拡大に重きが置かれている。特に東海エリアへの初進出となるロゴスホーム名古屋は、年間引渡棟数が100棟以上を想定した店舗であるが、オープンしてから数か月の実績は、当初想定の2倍近い受注が獲得できており、初動は成功であると認識している。

     

    季節性・一過性要因の有無と影響

    前期(2025年5月期)の業績には、豊栄建設における集客トラブルによる収益の穴と、坂井建設のM&Aにおける会計処理(棚卸資産の評価替え)および仲介コスト計上、計画前倒しによる東海エリア進出の先行コストという3つの大きな一過性要因が影響していた。今期(2026年5月期)の業績予想においては、これらの前期に発生した一過性のマイナス要因が解消されたことが、大幅な増収増益を見込む最大の背景である。

     

    通期見通しと進捗率・達成可能性

    今期(2026年5月期)の通期業績予想は、前期の業績に影響を与えた一過性要因の解消を主因として、売上高46,815百万円(前年同期比29.1%増)、営業利益1,500百万円(同208.0%増)、経常利益1,392百万円(同244.2%増)、そして親会社に帰属する当期純利益826百万円(同313.8%増)と、大幅な増収増益を見込んでいる。また、成長戦略である新規エリア拡大は計画通り順調に進捗しており、特に名古屋店の受注が好調であることから、その裏付けとなっている。ただし、売上高の増加に対して利益の伸びが鈍化しているのは、新店舗開設に伴う先行投資コストが引き続き重なっているためである。

     

    トピックス

    直近のトピックスとしては、2025年5月末の名古屋店オープンを皮切りに、東海エリアへの初進出を果たし、続いて四日市店(三重県)、大垣店(岐阜県)のオープンを控えており、さらに、来期以降は、長野や新潟といったエリアも含めて新店を計画中である。

  • Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?

    A:当社の成長戦略では、引渡棟数を年間で伸ばすことに注力しており、その方法は新規エリアの拡大と既存エリアでのシェア向上の二軸で構成されています。現状、全体的にはエリア拡大に重きを置いています。

    エリア拡大については、計画通り順調に進捗しており、2025年5月末の名古屋店オープンを皮切りに、東海エリアへの初進出を果たしました。名古屋店は、年間100棟受注を目標としていましたが、現在のところ想定の2倍近い受注が得られており、非常に好調で成功であると認識しています。今後は、来月に東海エリアの新店舗として四日市店をオープンし、そして大垣(岐阜県)と、引き続き東海エリアの拡大に注力する計画です。来期以降は、長野や新潟といったエリアも含めて新店を計画中です。

    既存エリアでのシェア拡大も並行して行っており、北海道の旭川や千歳といった既存店のリニューアルに投資しています。また、これらの主要戦略に加え、M&Aも重要な戦略の一つとしています。

    直近のトピックスとしては、四日市店のオープンを控えている他、個人投資家向けの説明会など、個人向けのIR活動を強化していく考えです。特に上場後の業績予想の修正により失われた株主様からの信頼回復に努めるため、コミュニケーションの機会を増やし、直接ご説明していく方針です。

     

    Q:成長戦略のポイントについて、前提条件等での変化とその影響等をご説明ください。

    A:エリアの拡大や出店の拡大といった成長戦略は計画通り順調に進捗しています。

    特に東海エリアへの初進出である名古屋店については、年間100棟の受注を目標としていましたが、現在のペースでは想定の2倍近い受注が取れており、非常に好調に推移しています。これは、今後の東海エリア拡大において、四日市店などにも同様の結果が出せるよう準備を進めている状況です。

    しかし、注文住宅は新規オープン後に受注から引き渡しまでのリードタイム一定程度かかり、複数の新店舗が立て続けにオープンしているため、人件費や広告費などの販管費といった先行コストが重なり、利益として出てくるまでに時間を要しています。具体的には、新店が12か月分の売上が計上できるようになり、しっかりと利益を出す状態になるまでには、2年から3年程度の期間を見込んでいます。

     

    Q:通期予想の戦略と施策についてご説明ください。

    A:通期予想で大幅な増収増益を見込んでいる背景には、上記で説明した前期の業績に影響を与えた一過性の要因が解消されたことが大きく影響しています。また、前期以前に新規出店した店舗が順次軌道に乗ってきているほか、坂井建設が前期は連結上3か月しか反映されていませんが、今期は年間通して業績が寄与することになることも増収増益の一因となっております。

    しかし、売上高の伸びに比べて利益の伸びが鈍化しているのは、ロゴスホームにおける新規出店が今期も複数重なっていることから、営業利益以下に関しては、引き続き先行投資の影響を受けているためです。新店舗のオープンに伴う人員採用や販管費などのコストが先行するため、売上の伸びほど利益がまだついてきていない状況です。

     

    Q:受注・競合状況はいかがでしょうか?

    A:住宅市況においては、2025年4月施行の建築基準法改正により、省エネルギー基準適合の義務化、4号特例の縮小等の法改正が行われ、これに伴い木造戸建て2階建てや延べ面積200㎡超の住宅について構造計算が義務化されました。これにより建築確認申請の審査要件が大幅に増加し、審査期間の長期化が継続しております。この影響を受け、2025年6月から8月までの新設住宅着工戸数(持家)は前年同期比12.7%となり、低調に推移しています。当社グループでは制度改正や審査遅延の影響を踏まえ、設計体制の強化や申請資料の事前精査、施工スケジュールの見直し等を通じ、安定的な住宅供給体制の整備を進めた結果、受注及び引渡のいずれも前年比では大幅に伸長しています。

    また、競合状況として、注文住宅市場全体については、人口動態に比例するため、国内マーケットは長期的に縮小していくことは明らかです。大手ハウスメーカーは既に全国エリアをカバーし国内における成長期は過ぎていることから、今は取捨選択や統廃合を行いながら集約する傾向があり、全体的に縮小傾向にあるのが現状です。

    一方で、当社は後発ながらエリア拡大の余地が十分にあり、市場が縮小傾向にある中でも全体の成長が十分に見込める状況です。この成長している状況こそが、他社からの優秀な人材獲得に繋がり、人の採用も含めた好循環を生んでいると考えています。

     

    Q:M&A、業務提携、事業売却などの実施または検討状況と、それに伴う影響についてご説明ください。

    A:M&Aは、当社の重要な戦略の一つです。しかし、M&Aに関する検討状況については、インサイダー情報となるため、公には申し上げられません。

    前期(2025年5月期)の業績に影響を与えた一過性の要因として、坂井建設のM&Aがあります。このM&Aは12月末に実施されましたが、連結への取り込み期間が短く、会計基準による棚卸資産の評価替えなどにより、年間を通じた業績寄与がならず、さらにはM&Aの仲介コストも多額に計上されたため、連結上、一時的に大きな利益のマイナスが計上されることになり、これが前期に大幅な下方修正を行った一因となっています。

     

    Q:株主還元の方針をご説明ください。

    A:当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の重要施策の一つと位置づけております。これまで、事業収益をベースに、将来の事業展開に必要な内部留保を確保しつつ、配当性向30%~50%の株主還元を基本方針としておりました。しかし、配当性向基準は当期純利益に強く依存しており、前期のように業績が大きく変動する局面においては、業績の変動によって配当額が上下しやすい構造になります。当社は、成長戦略としてM&Aと新規出店拡大を掲げており、M&Aについては、その取得時期や会社規模により、取得コストやPPA(Purchase Price Allocation)による評価替えの影響等が、取得年度の業績に重要な変動が生じる可能性があります。また、新規出店においても、収益が計上されるまでのリードタイムがあることに加え、人件費や広告費といった費用が先行するため、開設時期の遅延などがあった場合には、当期の業績に一時的な影響を及ぼす可能性があります。加えて、成長投資を継続的に推進するうえでは、M&Aに係る調達資金の返済原資の確保や、新規出店に伴う運転資金の充実など、内部留保の安定的な確保が必要となる局面も想定されます。

    以上の背景を踏まえて、配当方針について、引き続き株主還元を重視しながらも、各期の経営成績・財政状態・将来の事業展開等を総合的に勘案したうえで、DOE(株主資本配当率)5%を下限とし、配当性向30%を目標とする方針へ変更することで、株主の皆様へ持続的な業績拡大と安定的な利益還元の両立を目指していきます。

  • 取材者:まず始めに、少し前の話にはなりますが、2025年5月期の決算状況についてお伺いできますか。2025年5月期は、売上高が36,269百万円で前年同期比14.4%の増加、営業利益が487百万円で前年同期比65.0%のマイナス、経常利益が404百万円で前年同期比70.2%のマイナス、親会社株主に帰属する当期純利益が199百万円で前年同期比77.6%の減少と、増収減益での着地となりました。こちらは、期中の業績予想修正に対しては上振れての着地となりましたが、この増減の要因についてご説明いただけますか。

     

    回答者:期末の状況についてご説明いたします。期末の着地につきましては、概ね予算通りではございました。その前に、2回も下方修正しておりますので、再度精査したなかで2回目の業績予想の修正を出しております。結果、引渡棟数はほぼ想定通りの着地となりました。また、売上高として土地の販売やその他の収益が少しずつ上振れしたことに加え、販管費および一般管理費の抑制により各段階損益が予想を上回る結果となり、上方修正という形になりました。2回目の業績予想の修正の段階で、そもそも利益の絶対値が小さくなっていたという背景もございます

     

    取材者:前回お話をさせていただいた際に、今期、つまり2025年5月期以降は、エリアの拡大や出店の拡大といったところを大いに進めていくというお話があったかと思いますが、こちらの進捗状況はいかがですか。

     

    回答者:はい、計画通り順調に進捗しております。まずは5月末に名古屋をオープンし、その後、旭川、千歳、中標津といった既存店のリニューアルを進めております。計画通り投資を進めており、来月には四日市店を東海エリアの新店舗としてオープンします。このように、予定通りしっかりと進めております。特に名古屋については、東海エリアで初進出ということで、弊社にとってもかなりの投資を行い、東海では飛び地でのオープンとなりました。まず、ロゴスホーム名古屋は年間100棟以上の規模(引き渡しですとリードタイムが長くなりますので受注ベース)を想定しています。年間100棟ということは、12で割ると月平均約8棟ですが、今のペースではかなり上振れており、6月、7月、8月と順調に進捗しております。予算の2倍とは申し上げませんが、想定の1.5倍以上の受注が取れており、非常に好調で、これは成功であると認識しております。今後は、四日市においても同様の結果が出せるよう、しっかりと準備を進めているところです。

    取材者:そうしますと、引き続き東海エリアの拡大に注力していくという見方でよろしいですか。

     

    回答者:はい、エリアとしては東海エリアの拡大です。弊社では「東海」という言葉を広い意味で使っておりますが、名古屋(愛知県)の次は三重で、その次が大垣(岐阜県)と計画しております。来期以降は、長野や新潟といったエリアも含めて、新店を計画中です。

     

    取材者:新店舗は今後、今期中にこの後に決まっているところはまだないようなイメージですか。

     

    回答者:今期は既に決まっている分です。来月四日市店がオープンし、来年5月を目途に大垣店(岐阜県)のオープン準備が実際に決まって進んでいる状況です。したがって、来期に向けて、次はどこを展開していくかというところを進めているというような形でございます。

     

    取材者:前期比で人の採用数の推移はいかがですか。

     

    回答者:人の採用数もかなり伸びていると思います。今すぐ正確なパーセンテージはお伝えできませんが、そういう意味では、先行投資となっております。例えば今回名古屋が5月末にオープンしましたが、そこから初めて集客をしてお客様と商談し、まずは契約に至ります。その後、着工までの仕様決めや間取り決めといった打ち合わせに2か月ほど、そこから着工して3~4か月の工期を経て、初めて引き渡しとなります。オープンから初めての引き渡しまで、早くても7~9か月程度かかりますので、その間は人件費や広告費などの販管費といったコストのみが先行しますので、第1四半期もそうですが、販管費が非常に増えているのは、そういった先行コストが重なっているからという状況です。ただ、トップライン、つまり売上は昨年もそうですが、伸びてきておりますので、この先行投資したコストに見合う利益は、時間が経過してくればしっかりと追いついてくる、必ず出てくるものと認識しております。しかし、複数の新店舗が立て続けにオープンしているため、その先行コストが重なってかかっている分、利益として出てくるまでには時間がかかるということになります。新店がしっかりと利益を出す状態になるには、説明資料にも記載しておりますが、やはり2年から3年ぐらいの期間を要してしまいます。

     

    取材者:そうしますと、人の採用については計画通り、順調に進んでいるということでしょうか。

     

    回答者:はい、そのような状況です。新店舗の展開を継続するために必要な人員は確保できていると考えております。

     

    取材者:他社では採用に苦戦されている企業もいらっしゃる中で、貴社が順調に採用を進められた要因や、何か採用戦略がございましたら教えていただけますか。

     

    回答者:どこも今だとエージェントやスカウトといった手法を多く利用されているかと思いますが、弊社はやはり人の紹介がかなり多いと感じています。人が働く際、成長している企業で働きたいという思いがあるかと存じます。弊社の市場である注文住宅市場は、人口動態に比例するため、今後国内マーケットが成長するかというと、長期的に縮小していくことは明らかです。大手ハウスメーカーは既に全国エリアをカバーしており、今は取捨選択や統廃合を行いながら、主要な拠点を残して縮小傾向にあるというのも事実だと思います。一方で弊社は後発ながら、まだまだエリア拡大の余地があり、伸びている状況です。やはり、縮小傾向にある企業と伸びている企業とでは全く異なります。また、弊社は上場しており、新規上場した住宅専門会社でこれだけエリアを伸ばしている企業は全国を見渡してもそう多くはありません。そのため、他社からの転職ニーズが非常に高く、優秀な人材を獲得できているのだと考えております。つまり、成長するということが、人の採用も含めて好循環を生んでいる状況にあると認識しております。

     

    取材者:成長といったワードがあった中で、その他に何か主要なKPI、あるいは重要視している指標などございましたら教えていただけますか。

     

    回答者:弊社は、本当に引渡棟数が一番重要と考えております。この棟数を年間でどれだけ伸ばせるかというところに注力しております。棟数を伸ばす方法は、新規エリアを広げるか、既存エリアでのシェアを上げるかの2つしかございません。弊社は現在、全体的にはエリア拡大の方に重きを置いております。ただし、既存エリアでのシェア拡大を全く行っていないわけではなく、個別で言えば北海道の旭川や千歳といった既存店のリニューアルを行うなど、既存エリアのシェア拡大にも投資をしております。ただ、東海エリアの新店を最優先に考えています。あとはプラスアルファでM&Aも重要な戦略の一つです。

     

    取材者:M&Aまたは業務提携に関しまして、何か実施の有無や検討状況がございましたら、お答えできる範囲で教えていただけますか。

     

    回答者:M&Aについてはインサイダー情報となりますので、「検討しています」ということも、仮に検討していても公には申し上げられないというところです。

     

    取材者:それでは、昨期、2025年5月期につきまして、業績に影響を与えたような一過性の要因や、季節性、外的要因などございましたら教えていただけますか。

     

    回答者:はい、こちらは3点、開示説明書類などでもお伝えしておりますが、1点目が坂井建設のM&Aです。これは12月末にM&Aを実施いたしました。今回の決算では、弊社の連結への取り込みは、第3四半期で期首の貸借対照表(BS)を合算し、損益計算書(PL)については第4四半期のみを取り込んでおります。M&Aをする際に、受入資産の資産負債の時価評価替えが必要となり、PPAを行う必要があります。PPAは、M&Aによって取得した坂井建設の識別可能な資産及び負債を時価評価し、当社の財務諸表に反映する手続きで、会社が保有する棚卸資産なども含め、時価評価をすることが原則になります。棚卸資産は、あくまで販売目的で所有しているものであり、時価相当額は、簡単に説明すると、売価から買収後に発生が見込まれるコストと買収後における当社グループが得られる合理的な利益額を控除して算定することになります。裏を返すと、M&A時点の坂井建設の棚卸資産の簿価にM&A前に得ている合理的な利益額を加算して算定した金額が、棚卸資産の時価相当額になります。坂井建設は注文住宅の販売・建築が主要な事業であり、M&A時点においては、すでに多くの受注残高を有していることから、このうちM&A後に引渡しする物件の一部については、M&A前で得ていたと想定される利益相当額を加味して、時価の算定を行います。よって、PPAにより、連結上の棚卸資産が増加し、当該増加分がM&A後に費用化されることにより、簿価で引き継ぐ場合と比較して、営業利益を押し下げる効果が生じます。注文住宅の受注・着工から完成までの期間は概ね数か月程度であることから、この会計処理の影響は、M&A時点から引渡までの数か月程度発生します。従いまして、2025年5月期の連結決算には影響を及ぼすものの、2026年5月期以降への損益の影響は限定的であると考えております。今回は、株式を取得したタイミングが12月であり、前期の連結への取込期間が3ヶ月であったことから、連結上で営業利益を押し下げる結果となりました。仮に連結への取込期間が1年間あれば、PPAの影響を考慮しても、営業利益の押し上げを見込めたのですが、M&Aの交渉には競合先もいて、自社の都合に合わせて取得時期をコントロールすることはできないものです。それに加えて、今回は大手M&A仲介会社からの紹介であるため、多額のM&Aの取得にかかるアドバイザリー報酬やDDに関するコストが発生しております。これが、昨年度に大幅な下方修正を行った一因となっております。

    2点目は札幌の豊栄建設という会社の件です。豊栄建設は年間約300戸を手掛ける会社なのですが、去年の2024年6月の第1四半期のところで、集客に大きなトラブルが生じてしまいました。主にWebマーケティングを行っておりますが、分かりやすく申し上げますと、様々な広告を打っているにもかかわらず、来場が突然来なくなったという事象に見舞われました。結果として、来場が来なくなった原因として、Webマーケティングを委託していた会社の運用が変更されていたことに気付けず、その対応が遅くなったことから、3か月間ほど集客に穴が空いてしまいました。この期間は、当期の引渡しを受注する非常に重要な時期であり、その後に挽回しようと努めましたが、穴が埋められず、これもまた一過性の要因となりました。現在は、委託先を変更し、運営・管理方法を見直すなどにより、集客は問題なくできております。豊栄建設は長年札幌で安定的にナンバー1、2の棟数シェアを持ち、年間300棟程度で安定して500~700百万円程度の利益を出している会社でした。しかし、上場した年でもあったため、「同じ札幌とはいえ、もっと棟数シェアを伸ばして成長していこう」という方針のもと、400棟を目指して人員を増やし、固定費を上げて400棟に対応できる体制を望んでいた矢先に、集客が大きくトラブルに見舞われてしまったという状況でした。これがダブルパンチとなり、結果として当期が赤字となってしまったという形でございます。現在は、この1年の間に集客を回復させたということもありますが、元々の300棟の体制まで一度戻しましょうということで、人員配置を含めてグループ会社への移籍などにより人員を削減し、300棟でしっかりと利益が出る体制を構築し今期は臨んでおりますので、去年の赤字になったという事象は一過性であり、当期は利益体質に戻せると認識しています。

    3点目が東海エリアへの計画前倒しによる出店になります。今年の5月末頃に愛知県名古屋市の新規出店をいたしました。当社の通常の新規出店は、コンビニ跡地のような貸テナントを改修した店舗を構え、近隣に売却型のモデルハウスを建築するスタイルでしたが、今回の出店は、北海道クラシアムのようなショールームと宿泊体験型のモデルハウス3棟による自社展示場になります。従来のスタイルでは、1店舗あたり年間引渡50棟程度を想定したキャパでしたが、今後、重点的に出店していく愛知・岐阜・三重などの東海エリアは、それぞれのマーケット規模が大きいため、小型店舗を複数箇所に構えるより、大型店舗として集約することで、より生産性が高く、1店舗あたり100棟以上を見込める形での出店を想定しています。今までの新規出店新は、既存店と準備の過程で人が行き来しながら行っているため、基本的には隣接エリアに対して行ってきました。今回の名古屋への新規出店は、どの既存店からも離れており、いわゆる飛び地での出店になります。なぜ、既存店から離れたエリアに新規出店をすることになったのかというと、それは、人材の採用が理由になります。新規出店を続けていくためには、エリアや店舗責任者などの優秀な人材の採用が必要不可欠です。今回、東海地方において、他社で活躍していた優秀な人材を大量に採用することができたことが、計画を前倒した理由になります。東海エリアは、将来的には進出することを計画していましたが、もともと当期中の計画にはありませんでした。しかし良い人材を大量に採用できる機会はめったにありませんので、業績修正とはなってしまいますが、成長へ投資しようという判断となりました。

     

    取材者:そうしますと、今期の業績予想で大幅な増収増益を出されているといった部分については、そういった一過性の要因が解消されたことがかなり影響しているという認識でよろしいですか。

     

    回答者:はい、その通りです。ただ、トップラインに比べて利益の伸びが鈍化しているところは、ロゴスホームにおける新規出店拡大に伴う先行投資がラップして重なっている影響で、しばらくは売上の伸びほど利益がまだついてきてこないという状況は続く見込みです。

     

    取材者:続きまして、株主還元の方針について変更などございましたら教えていただけますか。

     

    回答者:はい、こちらは既に公表しているのですが、元々配当性向30%から50%の株主還元を基本方針としておりました。今後も成長戦略としてM&Aと新規出店拡大を掲げており、M&Aについてはその取得時期や会社規模により、取得コストやPPAによる評価替えの影響等が、取得年度の業績に重要な変動が生じる可能性がございます。また、新規出店においても、収益が計上されるまでのリードタイムがあることに加え、人件費や広告費といった費用が先行するため、開設時期の遅延などがあった場合には、当期の業績に一時的な影響を及ぼす可能性がございます。従来の配当方針である配当性向基準は当期純利益に強く依存しており、業績の変動によって配当額が上下しやすい構造となっていることから、株価にも影響を及ぼす一因になると認識しております。加えて、成長投資を継続的に推進するうえでは、M&Aに係る調達資金の返済原資の確保や、新規出店に伴う運転資金の充実など、内部留保の安定的な確保が必要となる局面も想定されます。このような背景を踏まえ、当社は今後の配当方針について、引き続き株主還元を重視しながらも、各期の経営成績・財政状態・将来の事業展開等を総合的に勘案したうえで、DOE5%を下限とし、配当性向30%を目標とする方針へと変更いたししました。

     

    取材者:最後に、足元の状況につきまして、ニュースリリースやトピックスなどございましたら教えていただけますか。

     

    回答者:弊社では都度プレスリリースを出しておりますので、そちらの通りではございますが、今足元では、先ほどお話した四日市店のオープンが控えております。直近のトピックスと申し上げますと、まずはそれが該当するかと思います。その他にも、今年は個人投資家説明会など、個人向けのIR活動を強化していこうと考えております。昨年上場して1年目ということで、弊社も手探りで様々なIR活動を進めていました。ようやく一巡して一通り慣れてきたという状況であります。現在の弊社の時価総額を考えると、機関投資家よりも個人投資家の割合が圧倒的に多い状況であることから、今年は個人投資家への各種IR活動を強化したいと考えています。直近では、湘南投資勉強会様の方で、10月26日にリアル開催(対面)でのIRセミナーを開催させていただきます。その他のタイミングでも、個人投資家への説明会を実施していきたいと考えております。弊社といたしましては、昨年度上場初年度の4回の決算発表のうち3回も業績予想の修正を行っており、間違いなく株主の方々からの信頼を失う形になってしまったことを反省しており、まずは株主の方々の信頼回復に努めなければならないと認識しております。業績を上げることは言うまでもありませんが、IR活動としても、コミュニケーションの機会をより多くとり、しっかりと直接にご説明していくことで、少しでも早い信頼回復をしていきたいと考えているところです。

  • 常務取締役 経理部部長 岩永 武也 様

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    ビジネスモデルや事業内容

    ロゴスホームを筆頭に、豊栄建設、GALLERY HOUSE、坂井建設を擁する注文住宅事業を展開。グループ会社に工務店支援サービスを行うROOTLINKと、設計CADをオフショア化しているLCO(フィリピン)が存在。各社とも顧客ターゲットは一次取得者が中心。注文住宅の他に、建築条件付き宅地の販売も行う。

     

    創業の経緯と転機となった出来事

    代表の池田氏が、以前勤務していたハウスメーカーの倒産を機に、仲間と創業。会社の永続的な成長のためにはIPOが不可欠と考え、十数年前から準備を開始。ファンドの経営参画を経て、2019年にロゴスホームの株式をエンデバーユナイテッドに譲渡。エンデバーユナイテッドからの追加出資を得て豊栄建設を取得し、組織再編でロゴスホールディングスとなる。

     

    特徴や強み

    商品開発力:寒暖差の激しい地域での創業を背景に、高品質高性能な住宅を適正価格で提供。ビジネスモデル:住宅総合展示場には出展せず、デジタルマーケティングによる集客と、モデルハウスの短期売却を組み合わせたビジネスモデルによるコスト削減。DXの推進:デジタルマーケティングによる集客、オンラインでの営業活動など、DXを積極的に推進している。

     

    直近の決算状況

    直近の業績予想を下方修正。売上高はほぼ変更ないものの、利益が減少。要因は、豊栄建設の業績悪化、坂井建設取得に伴う費用、PPA評価替えによる影響。坂井建設の取得は一過性の要因であり、来期以降の業績が期待される。

     

    成長戦略

    エリア拡大を成長の要因と位置づけ、新規出店やM&Aを積極的に推進。M&Aにおいては、地場でトップ3に入るような会社を対象とし、エリア拡大とブランド獲得を目指す。今後は東海エリアへの出店を強化し、人材採用を積極的に行う。

     

    株主還元策

    配当性向30~50%の方針であったが、業績悪化により減配を発表。安定配当ができるような指標の導入を検討している。

     

    今期の取り組みやトピックス

    坂井建設を新たにグループに迎え、新潟県での事業を開始。東海エリアへの大型出店を計画し、人材採用と広告宣伝に注力。豊栄建設の業績不振からの回復を図るため、リスティング戦略の見直しや体制の再構築を実施。来期以降の業績回復が期待される。

  • Q 事業内容やビジネスモデル、特徴や強みについて、ご説明いただけますでしょうか。

    A 弊社は2020年7月にホールディングスを設立しており、設立自体はごく最近ですが、元々はロゴスホームという注文住宅事業を営んでおり、このロゴスホームを筆頭に、M&Aで取得した豊栄建設、GALLERY HOUSE、坂井建設という形で、現在は四つの事業会社で構成されています。ROOT LINKという会社もございますが、こちらは各社に対して様々なサービスを提供する、いわばグループ内向けの共通サービスを展開している会社です。その中に、設計CADをオフショア化しているLCOというフィリピンの子会社もございます。

    元々ロゴスホームは、ホールディングスの代表である池田が創業した会社で、帯広で創業し、北海道全域へと注文住宅のエリア展開を進めてまいりました。その過程で、創業当初から、会社の永続的な成長のためにはIPOが不可欠であると考えておりましたので、十数年前にIPOの準備を開始いたしました。しかしながら、当時は本社が帯広にあったこともあり、管理部門や、IPOに関する専門知識を有する人材を確保することが難しく、様々なコンサルタントにご尽力いただきましたが、期待する成果を得られず、費用のみが先行する状況が続きました。そのような折、ファンドに経営参画していただき、共にIPOを目指すというスキームをご紹介いただき、複数のファンドと面談を重ねた結果、現在のエンデバーユナイテッドとご一緒させていただくこととなり、2019年に一旦ロゴスホームの株式をエンデバーユナイテッドに譲渡するという経緯に至りました。その後、豊栄建設をM&Aで取得する際、ロゴスホームはLBOローンにて借り入れを行なっており、自社のみでは次の出資を行うことが難しい状況であったため、エンデバーユナイテッドに追加出資という形で資金提供を受けて取得し、それを組織再編で統合したものが、現在のロゴスホールディングスです。組織再編の器に豊栄ホールディングスを使ったため、豊栄建設が母体であったように見えるかもしれませんが、実際にはロゴスホームが事業の起点となっています。その後、GALLERY HOUSEの株式を取得し、上場を果たしました。昨年、2024年12月には、新潟の坂井建設を新たにグループに迎えました。

     

    Q ロゴスホームの創業の経緯について、ご教示いただけますでしょうか。

    A 元々、代表の池田は、当時他の大手ハウスメーカーに技術者として勤務しておりましたが、そこが倒産するという事態が起こりました。その倒産を契機に、池田が中心となり、当時共に働いていた複数のメンバーと共に住宅会社を創業したというのが、そもそもの経緯です。

     

    Q 特徴をご説明ください。

    A 事業会社の特徴といたしましては、各社それぞれに特色がございますが、グループ全体では39の営業拠点を展開しております。ロゴスホームにつきましては、北海道から東北、現在は北関東のふじみ野まで21拠点を出店しております。少々ややこしいのですが、ロゴスホームという会社の中には、ロゴスホームという注文住宅ブランドと、北海道内で展開するハウジングカフェという企画住宅のブランドが混在しておりますので、ロゴスホームという会社としては、26拠点ということになります。豊栄建設につきましては、苫小牧にも拠点がございますが、ほぼ札幌が事業の中心となっています。GALLERY HOUSEにつきましては、栃木県が事業の中心となっており、坂井建設は新潟県全域に8拠点を展開しているという状況です。

     

    Q ターゲット層をご説明ください。

    A 基本的なターゲット層といたしましては、どの会社も大きな違いはございませんが、初めて土地をご購入される一次取得者と呼ばれるお客様が中心となっています。グループ全体で申し上げますと、建て替え、つまり土地を既に所有されているお客様の割合は約1割です。残り9割のお客様は、新たに土地を取得して住宅を建設される方々で、その9割のうち、半分弱のお客様が、弊社が保有・販売している建築条件付きの宅地をご利用いただいております。残りの方は、流通地でお客様と共に弊社の営業担当が土地を探して住宅を建設するという形をとっております。したがって、グループ全体で見ますと、土地の売上と建築条件付き宅地のお客様の割合は、3割から4割弱程度となります。この割合は、都市部ほど高くなる傾向にございます。地方においては、比較的容易に土地を入手できるため、土地を保有するという概念があまり一般的ではないという状況です。ただし、土地の販売においては、基本的に大きな利益を追求しておらず、あくまで注文住宅の受注を促進するための販売促進ツールとして位置付けております。

     

    Q 初めて住宅を購入されるお客様が多い状況ということは、価格帯が比較的購入しやすい水準であるということでしょうか。

    A そうです。元々の価格帯といたしましても、弊社のグラフで示しておりますように、低価格帯の住宅に特に注力していることもあり、そのような客層のお客様が多い状況です。

     

    Q 強みをご説明ください。

    A 当社の強みといたしましては、主に三つ掲げております。一つ目は、商品開発力です。ロゴスホームの創業の地である十勝地方は、夏は35度、冬はマイナス30度にもなる非常に寒暖差の激しいエリアです。降雪量はそれほど多くはありませんが、寒さが厳しく、夏は暑いという、非常に厳しい環境下にあります。また、北海道、特に十勝地方を含む道東地域は、全国的に見ても所得水準が比較的高くないエリアであったため、高品質高性能な住宅を、できる限り安く、適正な価格で、一人でも多くのお客様にお届けすることを念頭に置いた住宅商品開発を行ってまいりました。様々な工夫を凝らし、省エネ性能や耐震性などを、お客様が無理なくご購入いただける価格帯で提供できるよう、パッケージング化してきた点が強みです。

    一般的に注文住宅ビジネスにおいては、住宅総合展示場、新聞社やテレビ局などが運営している総合展示場に出展するというビジネスモデルが主流となっております。この総合展示場への出展には、メーカーにとって高額な借地料の支払いと、高額なモデルハウスの建設が必要となります。これらのモデルハウスは、1億円程度の建築費用がかかる豪華な仕様となっており、一般的な住宅とは大きく異なる仕様となっているかと存じます。各社とも立派なモデルハウスを建設しなければ、他社に見劣りしてしまうため、結果として多額の建築費用がかかることになります。耐用年数で言いますと7年をベースに減価償却の対象となり、借地料と建築費だけでも莫大なコストが発生している状況です。さらに、展示場を運営している事業者に対して、運営費の負担も発生いたします。週末には、集客イベントとして、キャラクターショーなどが開催されており、これらのイベントにかかる広告宣伝費の負担もメーカー側が担うことになります。その上で、各社は自社独自のSNSなどを活用し、追加の集客を図るのですが、基本的な出展費用が高額になるため、自社独自の広告宣伝活動を行うことが難しく、自社で広告宣伝活動を行ったとしても、近隣には競合他社が存在するため、自社の強みを明確に訴求することが難しいという側面もございます。その一方で、安定的な大量集客が見込めるため、各社がこぞって出展し、営業活動を行うという状況になっています。しかしながら、展示場における成約率は、100組中1組程度と言われており、非常に厳しい競争環境となっています。逆に申し上げますと、1組のお客様が契約するということは、その出展コストを他のお客様が負担している、すなわち価格転嫁されているという構図になっているため、これがハウスメーカーの住宅価格が高止まりしている要因の一つであると言えるでしょう。

    これに対し、弊社は住宅総合展示場には出展せず、自社で店舗、具体的には賃貸の路面店舗などを活用し、お客様との打ち合わせスペースを確保するという形で小規模な出店を行っています。その近隣に、売却を前提とした注文住宅のモデルハウスを建設し、デジタルマーケティングによって集客を行うというビジネスモデルを基本としております。これらのモデルハウスは、半年程度で建て替えを行います。新しいモデルハウスが完成したら、以前のモデルハウスを売却し、新たに来場を促すという流れを確立しております。実際には、モデルハウスの展示期間が短いため、注文住宅仕様の建物を建売住宅として販売いたします。したがって、建売住宅としての利益をしっかりと確保することが可能です。そのため、ランニングコストを抑えることが可能となります。減価償却の必要もございません。店舗にかかる費用は、賃貸の路面店舗賃に打ち合わせスペースを設ける程度であるため、基本的にコストを抑えることができます。弊社は、これらのコスト削減分を住宅価格に反映させております。実際に各社の財務諸表をご覧いただければお分かりいただけるかと存じますが、一般的に、注文住宅の粗利率は、売上総利益で25%程度、営業利益で5%程度が業界水準と言われています。弊社の売上総利益は20%を下回っており、営業利益は5%程度です。これは、販管費を大幅に削減できているためです。その分、住宅価格を抑えることが可能となっております。実際の原価に大きな差はないため、弊社の住宅価格は競合他社と比較して競争力のある価格設定となっております。高品質高性能な住宅を、よりお求めやすい価格でご提供することで、後発ながらも着実にエリアを拡大し、売上を成長させている点が弊社の強みです。

     

    Q 業績についてご説明ください。

    A 上場後に一度、業績予想の下方修正を発表したという経緯がございますので、この点について三つの要因をご説明させていただきます。今回、下方修正を発表いたしましたが、売上高については、ほぼ変更はございません。主に利益が減少したという状況です。この下方修正に至った要因は、大きく分けて三つございます。一つ目は、グループ会社である豊栄建設において、集客が計画通りに進まず、業績が悪化したことによる影響で、約6億円の減益要因となりました。元々、21億円の業績見通しを立てておりましたが、9億円程度に減少したため、12億円の減益となりました。このうち、約半分の6億円が豊栄建設の業績悪化によるものです。残りの6億円につきましては、主に二つの要因がございます。一つは、12月末に坂井建設を取得したことに伴う費用です。坂井建設の取得にあたっては、仲介会社を通して取引を行ったため、アドバイザリー費用が発生し、この費用が4億円のうちの2億円を占めております。残りの2億円は、坂井建設を取得した際のPPA(パーチェス・プライス・アロケーション)の評価替えによる影響です。弊社の売上高は、完成工事高と呼ばれる請負契約に基づく売上高ですが、注文住宅は工期が比較的短く、単価もそれほど高くないため、一般的には完成基準が適用されるケースがほとんどです。完成基準を適用する場合、工事が未完成の状態では、未成工事支出金という棚卸資産が計上されます。この評価替えの処理において、本来、進行基準であれば、出来高に応じて利益を計上するところ、完成基準では、未完成工事支出金の簿価が売価に変更されるため、結果として、3ヶ月分の引き渡しについては、ほとんど利益が出ないという状況が発生いたします。今回、坂井建設の取得が第4四半期であったため、連結決算に取り込める期間が3ヶ月のみとなり、結果として、営業利益がマイナスのまま連結決算に取り込まれるという一過性の要因が発生いたしました。

    これらの要因と、取得にかかる費用が合算され、4億円の営業利益を押し下げる要因となりました。ただし、これはあくまで一過性の要因であり、来期以降は、この4億円の費用は発生いたしません。また、坂井建設は、純資産が10億円、弊社の取得額が30億円であるため、差額の20億円がのれんとして計上されます。償却期間は12年を予定しており、年間1億6,000万円程度の償却費が発生いたします。しかしながら、坂井建設は、売上高が継続的に増加しており、2021年から2023年にかけても右肩上がりの成長を遂げております。営業利益も3億円を超えており、2024年12月期も同様の数字を見込んでいる状況です。実際に、受注高は売上高を上回るペースで増加しております。弊社は請負業であるため、受注時点では売上高は計上されず、契約後に一定のリードタイムを経て引き渡しが行われるため、受注残という形で計上されます。これをキャリーと呼んでおりますが、弊社のキャリーは、これまで3割から5割程度でしたが、坂井建設は、9割程度のキャリーを抱えているという状況です。したがって、売上高、利益ともに、高い確実性が見込める状況です。今期、そして来期においても、堅調な業績を見込める会社であると考えております。これらの要素を踏まえると、来期は、少なくとも1億円から2億円程度の利益を計上できる見込みであり、今期との比較では、約6億円程度の増益を見込めるのではないかと考えております。

    Q 今回の坂井建設の件は、クロージングが12月になったとのことですが、これは、クロージングが当初の予定よりも後ろ倒しになったためでしょうか。それとも、前倒しになったために今期に計上されることになったのでしょうか。

    A 後ろ倒しになったわけではございません。売主様のご意向により、当初から12月までのクロージングを希望されておりました。1月から税制改正が予定されていたこともあり、売主様は12月中のクロージングを強く希望されておりました。また、競合他社も存在したため、弊社としては、スケジュールをコントロールする余地はほとんどない状況でした。そのため、結果として12月にクロージングとなり、弊社の連結決算には3ヶ月分しか取り込むことができず、営業利益を押し下げる要因となってしまいました。もし、クロージングの時期が異なれば、営業利益を押し下げるという事態にはならなかったと思われますが、クロージング時期の調整は難しい状況でした。しかしながら、これは一過性の要因であり、来期は、のれん償却を含めて1億円から2億円の利益が出ると考えると、今期との比較、9億円から比較すれば6億円近くは伸びるのではないかと考えております。

    下方修正の要因のもう一つは、新規出店にかかる費用ということで、これも計画の前倒しをした分です。弊社は中期的な成長としてエリアの拡大ということはもちろん行っているのですが、昨年は3店舗、ふじみ野店、福島店、いわき店を新規出店しました。これは元々予算にも入っていて、見通しの中にもあったのですが、それとは別に東海エリアで大規模に出店を進めています。これが計画にはなかった追加の分です。実際には今年の5月末頃から名古屋支店を新規オープンしようということで進めていて、東海エリアで次々とオープンをしていく予定で進めています。今まで、弊社の新規出店というのは隣接エリアを中心に拡大していきました。ですが今回、飛び地で東海エリアを一気に進出しようとしています。なぜそれをしようとしたのかというと、人の採用が上手くいったためです。弊社は元々北海道から本州に出てエリアを拡大していったのですが、北海道では抜群の知名度もあるので、そこまで人の採用に苦労してはいなかったのですが、本州に出ていったときは認知度も低かったので、優秀な人を採用することに苦戦していました。それが昨年上場した後に、他社で活躍している人からの転職が非常に増えました。上場した効果があったと思います。住宅業界を全国見渡したときに、今成長している会社は国内にはそんなにないのです。ある程度大きいハウスメーカーさんでも、全国展開が終わって、今は人口減少でマーケットも縮小しているので、店舗を精査している状況です。大手ハウスメーカーを含めても伸ばしているのは海外事業が要因という会社が多いと思います。今、国内の注文住宅業界では、上場会社で元気に全国にエリアを伸ばしているという会社が少なく、一昔前に一気に伸ばした会社はあるのですが、大体エリアの進出も終わって逆に店舗の縮小に入っているという状況です。

     

    Q 優秀な人材の獲得が課題だったのでしょうか。

    A 優秀な方は成長していく会社にいたいと思うものです。成長していく会社はキャリアアップの機会も生まれます。弊社は今回上場して、成長し続けようとしているため、優秀な方をたくさん獲得できるチャンスが生じたというのが今の状況です。特に東海エリアで優秀な人材を大量に獲得できるという大きなチャンスがありました。そのようなこともあって、人の採用の先行投資と、今回は東海エリアで全く認知度がないので、これだけの大型店舗を建設し、人も採用しているため、広告を立ち上げないと人を遊ばせてしまうので、出店に対する広告戦略を考えているということで、実際この1億5,600万円のうち半分ぐらいは、4、5月に広告、CMなどの広告戦略で使用しようと考えています。それが当初の出店の予算に入っていなかったということです。ただ、どうしても人を採用してしまっているので、人の採用、特に中途採用なのですが、弊社の都合で半年ぐらい待ってもらうということは難しいので、ここで大きく投資をしないと人の獲得ができないということで踏み切ったところでした。

     

    Qハウスメーカーさんはかなり人の採用に苦しんでいる企業が多いと思うのですが、貴社に限っては苦しんではないという点と、特に東海エリアは人材採用がうまくいっているということでしょうか。

    A 苦しんではいないという点のみならず、特に東海エリアは40 〜 50人ぐらい採用できています。決して引き抜き行為はしていないのですが、成長が止まった他社から優秀な順に人が離脱しており、そのような方を多数採用できています。弊社にとっては全く今期に予定していなかったエリアも早期に立ち上げが可能になったので、これは大きなチャンスです。今期の利益は押し下げる結果となってしまいましたが、その分、来期以降の成長投資についてはしっかりできているという裏付けにもなりますので、来期以降の業績には期待をしていただきたいと思っています。

     

    Q 貴社の戦略をご説明ください。

    A 弊社はデジタルマーケティングに特化した会社です。ロゴスホームの営業戦略でいうと、創業の地であり圧倒的なトップシェアを誇る帯広以外の各エリアにおいては、特にトップシェアを取るという戦略ではありません。大体1店舗あたり50棟位建築可能な店舗をたくさん出していくという戦略なので、決してトップシェアを取るということではありません。北海道では一部のエリアでトップシェアを取っていくための様々な追加投資をしているのですが、基本的に本州エリアなどこれから展開するところについてはトップシェアを取るというよりは面をどんどん広げましょうという戦略です。

     

    Q 豊栄建設の業績不振の要因について、お聞かせいただけますでしょうか。

    A トップシェアを取らないという戦略においては、デジタルマーケティングでいうと、ある程度リスティング広告で必要な集客は確保できるので、そんなに大きな影響を受けることはないのですが、豊栄建設については札幌に特化してトップシェアをとっているので、マーケティング戦略が非常に業績を左右します。

    何が起こったのかというと、昨年の6月から8月にかけて急激に来場が減ったのです。弊社はデジタルマーケティングのメインがリスティング広告なのですが、これはリスティングの運用会社に委託をしています。リスティングの運用会社に原因調査と報告を求めたところ、リスティングの集客には全く影響はないということでした。しかし、リスティング広告から弊社ホームページに来たときに、資料請求や来場予約のところから離脱されているのではないか、そこから弊社に情報が届いていないのではないかということではないかという報告内容でした。ホームページに何かしらエラーが生じているからではないかという仮説のもと、ホームページの改修など様々な対策を図っていました。しかし、実際にはそこが影響しているのではなく、そもそもマーケティングのリスティング戦略に問題があるのではないかという仮説に至り、調査したところ、競合状況によって各ワードの入札単価が上がっていました。リスティング会社は弊社に対して金額と集客量で契約しているので、毎月この金額で量を最大化してくださいという契約の中で、効果の薄いキーワードで大量集客をしていたということがわかりました。コアで効果的なキーワードが高くなっているので薄いところに広告を打ったが、コンバージョンしないという状況だったのです。それに気づくのに時間がかかったため、その間に間違った様々な戦略をとってしまい、集客に穴を開けてしまったというのが昨年の6月から8月でした。

    対策としては、もちろんリスティング会社を変え、入札単価が高くなるアラートを自社でわかるように様々な対策を行っており、今のところ集客は戻っています。まだ挽回する余地はあるということで、様々な対策を講じてはいたのですが、結局補うまでは至りませんでした。第2四半期が終わった段階で、これは無理だということで下方修正を出すに至ったという経緯です。

    豊栄建設というのは規模的に言うと、大体年間300棟ぐらいを安定的にやってきた会社です。営業利益でも大体5~6億円で比較的安定した会社です。しかし昨年、上場したということもあり、300棟から400棟に頑張って伸ばしましょうということで、人も相当増やして臨んだ1年だったのです。そうなると当然ながら損益分岐点が上がっていて、集客が失敗したということが重なって、利益が全部なくなってしまったという状況になってしまいました。やはり無理は良くないということで、豊栄建設については安定利益をしっかり出すため、人員も300棟体制に戻して進めています。集客を失敗したことと、成長しようとしてコストをかけたというこの二つが大きな要因です。

     

    Q マーケティングの話もあったかと思いますが、住宅展示場を作らないということで、商談数、反響数というのはどうしても他の企業に比べて少なくなってしまうのかなと思うのですが、そのようなことがあっても成約率が他社に比べて高いということでしょうか。

    A 商談数は特段少なくないと思います。

     

    Q 商談数が少なくないのは、マーケティング施策、戦略がしっかりとしているということでしょうか。

    A そうです。住宅を建築する方は、まず総合展示場に行ってみようと思うのではないでしょうか。そのときに何をするかというと、総合展示場で検索しますよね。総合展示場と検索すれば、当然ながら弊社はリスティング広告でロゴスホームとか豊栄建設がトップに出てくるようにしているので、総合展示場に来場しようとする方にしっかりアプローチができています。行動する前にスマートフォンで様々な情報収集をするということにユーザーさんは圧倒的に時間を使うので、その中では逆に言うと認知度はしっかり取れています。集客という観点、反響数という観点では右肩上がりでずっと伸びていますので、そこが少ないということはないと思います。逆に展示場の方が、コロナを機に来場数が減っているので、どこの住宅会社さんもお客さんがいないと言っています。

     

    Q 坂井建設さんのように新たにM&Aで加わった会社というのは、マーケティングサイドから変化が大きいイメージでしょうか。

    A そうですね。ただ、坂井建設さんはたまたま同じビジネスモデルで総合展示場に出展していなかったのです。なので、そういう意味ではあまり転換するということなく、弊社のDXとかデジタルマーケティングのところを導入していくことによって、さらに生産性を高くしていこうということがやりやすい会社です。しかし当然ながら今後M&Aをする会社によっては、総合展示場に出展している会社もあると思うので、そのようなところはコスト削減というところも含めてビジネスモデルの転換をしていきたいと思っています。

     

    Q M&Aの戦略としては、同じビジネスモデルというわけではなく、エリアの拡大といった部分に注力しながら検討していくようなイメージでよろしいでしょうか。

    A そうです。対象としては、地場で大体トップ3ぐらいに入るような会社です。そうなると大体規模的にも年間200~300棟ぐらいの規模になります。弊社で新規出店をする際は、50棟ぐらいを目安に考えているので、逆に言うとそのくらいの規模ならスピード早く立ち上げができるのですが、それ以上のシェアを獲得するのはなかなか難しいのです。それ以上のシェアを持っているところには何があるかというと、地域に根ざしたブランドというのが存在するので、そういう会社であればグループに加えていきたいと考えています。逆に50棟ぐらいの規模であれば自社の出店でできるので、そのような会社は対象としていません。そういう形で線引きをしています。エリアについては、特に制限はないと考えています。今回、新潟という全く携わったことのないエリアに進出したので、そのような未開のエリアであれば、ロゴスホームがそこにまた50棟ぐらいの出店をしていくということにも繋がっていきます。

     

    Q 東海地方に新規出店されているのはかなり珍しいケースでしょうか。

    A 今までの出店戦略からすると、既存から隣接エリアではない地域への新規出店は、はじめてのケースになります。これは、東海エリアで、優秀な人材の採用が想定外に出来たことから踏み切れたということです。

     

    Q 株主還元策につきまして、方針などございましたらご教示いただけますでしょうか。

    A はい。元々配当性向30~50%という方針で今年臨んでいたのですが、今回下方修正を出して減益になるということで当然ながら減配も発表したという経緯です。今後も成長投資は続けていきますし、特にM&Aについては業績を大きく歪めてしまうなと思っています。取得するタイミングによってもどうしてもPPAの影響が出てきてしまいますし、あとはどうしても仲介会社さんが入ってくると取得コストが高くなります。もちろん株主還元はしていかなければいけないですが、とは言っても安定しないのは株主の方にとってマイナス要因だと思っています。安定配当ができるような指標などを導入する必要があるのではないかというのは今議論をしているところです。場合によってはDOEを採用するとか、安定的に配当するというのが重要ではないかと思っています。

     

    Q 成長投資との兼ね合いを見ながらということでしょうか。

    A はい。

     

    Q 金利の上昇の貴社への影響をご説明ください。

    A 影響が全くないかと言われると、影響はあると思います。ただ、住宅ローン金利が上がったからといって、家を建てる人が一切いなくなるかというとそうではありません。しかし当然ながら住宅にかける金額というのは住宅ローンで借りられる限度額があるので、どうしても少なくなってくると思います。弊社のポジショニングとしては、中価格帯よりも下のところをターゲットにしているので、住宅マーケットの中の十分コアなターゲット層は取れているというところがあります。より競合が激しくなるものの、金利が上昇したからといって顧客のターゲットから外れるということはないというのが弊社の見解です。上の価格帯のところから顧客が降りてくるということも考えられます。

  • 取材者:事業内容やビジネスモデル、特徴や強みなどをご説明ください。

    回答者:弊社は2020年7月にホールディングスを設立しており、設立自体はごく最近ですが、元々はロゴスホームという注文住宅事業を営んでおり、このロゴスホームを筆頭に、M&Aで取得した豊栄建設、GALLERY HOUSE、坂井建設という形で、現在は四つの事業会社で構成されています。ROOT LINKという会社もございますが、こちらは各社に対して様々なサービスを提供する、いわばグループ内向けの共通サービスを展開している会社です。

    その中に、設計CADをオフショア化しているLCOというフィリピンの子会社もございます。

    元々ロゴスホームは、ホールディングスの代表である池田が創業した会社で、帯広で創業し、北海道全域へと注文住宅のエリア展開を進めてまいりました。

    その過程で、創業当初から、会社の永続的な成長のためにはIPOが不可欠であると考えておりましたので、十数年前にIPOの準備を開始いたしました。しかしながら、当時は本社が帯広にあったこともあり、管理部門や、IPOに関する専門知識を有する人材を確保することが難しく、様々なコンサルタントにご尽力いただきましたが、期待する成果を得られず、費用のみが先行する状況が続きました。そのような折、ファンドに経営参画していただき、共にIPOを目指すというスキームをご紹介いただき、複数のファンドと面談を重ねた結果、現在のエンデバーユナイテッドとご一緒させていただくこととなり、2019年に一旦ロゴスホームの株式をエンデバーユナイテッドに譲渡するという経緯に至りました。

    その後、豊栄建設をM&Aで取得する際、ロゴスホームはLEOローンにて借り入れを行なっており、自社のみでは次の出資を行うことが難しい状況であったため、エンデバーユナイテッドに追加出資という形で資金提供を受けて取得し、それを組織再編で統合したものが、現在のロゴスホールディングスです。組織再編の器に豊栄ホールディングスを使ったため、豊栄建設が母体であったように見えるかもしれませんが、実際にはロゴスホームが事業の起点となっています。その後、GALLERY HOUSEの株式を取得し、上場を果たしました。昨年、2024年12月には、新潟の坂井建設を新たにグループに迎えました。

    取材者:ロゴスホームの創業の経緯について、お差し支えのない範囲でご教示いただけますか。

    回答者:はい。元々、代表の池田は、当時他の大手ハウスメーカーに技術者として勤務しておりましたが、そこが倒産するという事態が起こりました。

    その倒産を契機に、池田が中心となり、当時共に働いていた複数のメンバーと共に住宅会社を創業したというのが、そもそもの経緯です。

    事業会社の特徴といたしましては、各社それぞれに特色がございますが、グループ全体では39の営業拠点を展開しております。ロゴスホームにつきましては、北海道から東北、現在は北関東のふじみ野まで21拠点を出店しております。

    少々ややこしいのですが、ロゴスホームという会社の中には、ロゴスホームという注文住宅ブランドと、北海道内で展開するハウジングカフェという企画住宅のブランドが混在しておりますので、ロゴスホームという会社としては、26拠点ということになります。

    豊栄建設につきましては、苫小牧にも拠点がございますが、ほぼ札幌が事業の中心となっています。GALLERY HOUSEにつきましては、栃木県が事業の中心となっており、坂井建設は新潟県全域に8拠点を展開しているという状況です。

    基本的なターゲット層といたしましては、どの会社も大きな違いはございませんが、初めて土地をご購入される一次取得者と呼ばれるお客様が中心となっています。

    グループ全体で申し上げますと、建て替え、つまり土地を既に所有されているお客様の割合は約1割です。残り9割のお客様は、新たに土地を取得して住宅を建設される方々で、その9割のうち、半分弱のお客様が、弊社が保有・販売している建築条件付きの宅地をご利用いただいております。残りの方は、流通地でお客様と共に弊社の営業担当が土地を探して住宅を建設するという形をとっております。したがって、グループ全体で見ますと、土地の売上と建築条件付き宅地のお客様の割合は、3割から4割弱程度となります。

    この割合は、都市部ほど高くなる傾向にございます。地方においては、比較的容易に土地を入手できるため、土地を保有するという概念があまり一般的ではないという状況です。

    ただし、土地の販売においては、基本的に大きな利益を追求しておらず、あくまで注文住宅の受注を促進するための販売促進ツールとして位置付けております。

    取材者:初めて住宅を購入されるお客様が多い状況ということは、価格帯が比較的購入しやすい水準であるということでしょうか?

    回答者:そうです。元々の価格帯といたしましても、弊社のグラフで示しておりますように、低価格帯の住宅に特に注力していることもあり、そのような客層のお客様が多い状況です。

    当社の強みといたしましては、主に三つ掲げております。一つ目は、商品開発力です。ロゴスホームの創業の地である十勝地方は、夏は35度、冬はマイナス30度にもなる非常に寒暖差の激しいエリアです。降雪量はそれほど多くはありませんが、寒さが厳しく、夏は暑いという、非常に厳しい環境下にあります。また、北海道、特に十勝地方を含む道東地域は、全国的に見ても所得水準が比較的高くないエリアであったため、高品質高性能な住宅を、できる限り安く、適正な価格で、一人でも多くのお客様にお届けすることを念頭に置いた住宅商品開発を行ってまいりました。

    様々な工夫を凝らし、省エネ性能や耐震性などを、お客様が無理なくご購入いただける価格帯で提供できるよう、パッケージング化してきた点が強みです。

    一般的に注文住宅ビジネスにおいては、住宅総合展示場、新聞社やテレビ局などが運営している総合展示場に出展するというビジネスモデルが主流となっております。

    この総合展示場への出展には、メーカーにとって高額な借地料の支払いと、高額なモデルハウスの建設が必要となります。

    これらのモデルハウスは、1億円程度の建築費用がかかる豪華な仕様となっており、一般的な住宅とは大きく異なる仕様となっているかと存じます。各社とも立派なモデルハウスを建設しなければ、他社に見劣りしてしまうため、結果として多額の建築費用がかかることになります。耐用年数で言いますと7年をベースに減価償却の対象となり、借地料と建築費だけでも莫大なコストが発生している状況です。

    さらに、展示場を運営している事業者に対して、運営費の負担も発生いたします。週末には、集客イベントとして、キャラクターショーなどが開催されており、これらのイベントにかかる広告宣伝費の負担もメーカー側が担うことになります。その上で、各社は自社独自のSNSなどを活用し、追加の集客を図るのですが、基本的な出展費用が高額になるため、自社独自の広告宣伝活動を行うことが難しく、自社で広告宣伝活動を行ったとしても、近隣には競合他社が存在するため、自社の強みを明確に訴求することが難しいという側面もございます。その一方で、安定的な大量集客が見込めるため、各社がこぞって出展展し、営業活動を行うという状況になっています。

    しかしながら、展示場における成約率は、100組中1組程度と言われており、非常に厳しい競争環境となっています。

    逆に申し上げますと、1組のお客様が契約するということは、その出展コストを他のお客様が負担している、すなわち価格転嫁されているという構図になっているため、これがハウスメーカーの住宅価格が高止まりしている要因の一つであると言えるでしょう。

    これに対し、弊社は住宅総合展示場には出展せず、自社で店舗、具体的には賃貸の路面店舗などを活用し、お客様との打ち合わせスペースを確保するという形で小規模な出店を行っています。

    その近隣に、売却を前提とした注文住宅のモデルハウスを建設し、デジタルマーケティングによって集客を行うというビジネスモデルを基本としております。これらのモデルハウスは、半年程度で建て替えを行います。

    新しいモデルハウスが完成したら、以前のモデルハウスを売却し、新たに来場を促すという流れを確立しております。実際には、モデルハウスの展示期間が短いため、注文住宅仕様の建物を建売住宅として販売いたします。

    したがって、建売住宅としての利益をしっかりと確保することが可能です。そのため、ランニングコストを抑えることが可能となります。減価償却の必要もございません。

    店舗にかかる費用は、賃貸の路面店舗に打ち合わせスペースを設ける程度であるため、基本的にコストを抑えることができます。弊社は、これらのコスト削減分を住宅価格に反映させております。実際に各社の財務諸表をご覧いただければお分かりいただけるかと存じますが、一般的に、注文住宅の粗利率は、売上総利益で25%程度、営業利益で5%程度が業界水準と言われています。弊社の売上総利益は20%を下回っており、営業利益は5%程度です。これは、販管費を大幅に削減できているためです。

    その分、住宅価格を抑えることが可能となっております。実際の原価に大きな差はないため、弊社の住宅価格は競合他社と比較して競争力のある価格設定となっております。これは、数字が明確に示している事実であり、価格競争力において優位性を確立できていると考えております。

    高品質高性能な住宅を、よりお求めやすい価格でご提供できるという点が、弊社のビジネスモデルの大きな特徴です。さらに、弊社はDXにも積極的に取り組んでおり、集客はデジタルマーケティングによる反響営業が中心となっています。営業活動においては、インサイドセールスがまず一次的なアポイントメントを設定し、その後、営業担当、設計担当がオンラインで接客を行うケースも多く、店舗を立ち上げる際には、営業担当と現場監督がいれば、設計やコーディネーターはオンラインで対応できるため、少人数体制での新規出店が可能となります。

    これらの要因が重なり、販管費を抑えることができている点が、弊社のビジネスモデルの大きな特徴です。高品質な住宅を適正な価格でご提供することで、後発ながらも着実にエリアを拡大し、売上を成長させている点が弊社の強みです。

    しかしながら、上場後に一度、業績予想の下方修正を発表したという経緯がございますので、この点について三つの要因をご説明させていただきます。今回、下方修正を発表いたしましたが、売上高については、ほぼ変更はございません。主に利益が減少したという状況です。この下方修正に至った要因は、大きく分けて三つございます。

    一つ目は、グループ会社である豊栄建設において、集客が計画通りに進まず、業績が悪化したことによる影響で、約6億円の減益要因となりました。元々、21億円の業績見通しを立てておりましたが、9億円程度に減少したため、12億円の減益となりました。このうち、約半分の6億円が豊栄建設の業績悪化によるものです。

    残りの6億円につきましては、主に二つの要因がございます。一つは、12月末に坂井建設を取得したことに伴う費用です。坂井建設の取得にあたっては、仲介会社を通して取引を行ったため、アドバイザリー費用が発生し、この費用が4億円のうちの2億円を占めております。

    残りの2億円は、坂井建設を取得した際のPPA(パーチェス・プライス・アロケーション)の評価替えによる影響です。弊社の売上高は、完成工事高と呼ばれる請負契約に基づく売上高ですが、注文住宅は工期が比較的短く、単価もそれほど高くないため、一般的には完成基準が適用されるケースがほとんどです。

    完成基準を適用する場合、工事が未完成の状態では、未成工事支出金という棚卸資産が計上されます。この評価替えの処理において、本来、進行基準であれば、出来高に応じて利益を計上するところ、完成基準では、未完成工事支出金の簿価が売価に変更されるため、結果として、3ヶ月分の引き渡しについては、ほとんど利益が出ないという状況が発生いたします。今回、坂井建設の取得が第4四半期であったため、連結決算に取り込める期間が3ヶ月のみとなり、棚卸資産にかかる分しか売上を計上することができませんでした。

    そのため、粗利率が低下し、営業利益がマイナスとして計上されるという一過性の要因が生じました。これが、もし、より長い期間連結決算に取り込める状況であれば、このようなマイナス要因は発生しなかったと考えられます。取得の完了時期が12月であったため、連結決算に取り込める期間が3ヶ月のみとなり、結果として、営業利益がマイナスのまま連結決算に取り込まれるという一過性の要因が発生いたしました。

    これらの要因と、取得にかかる費用が合算され、4億円の営業利益を押し下げる要因となりました。ただし、これはあくまで一過性の要因であり、来期以降は、この4億円の費用は発生いたしません。また、坂井建設は、純資産が10億円、弊社の取得額が30億円であるため、差額の20億円がのれんとして計上されます。償却期間は12年を予定しており、年間1億6,000万円程度の償却費が発生いたします。しかしながら、坂井建設は、売上高が継続的に増加しており、2021年から2023年にかけても右肩上がりの成長を遂げております。

    営業利益も3億円を超えており、2024年12月期も同様の数字を見込んでいる状況です。

    実際に、受注高は売上高を上回るペースで増加しております。弊社は請負業であるため、受注時点では売上高は計上されず、契約後に一定のリードタイムを経て引き渡しが行われるため、受注残という形で計上されます。キャリーと呼ばれる弊社の受注残は、これまで3割から5割程度でしたが、坂井建設は、9割程度の受注残を抱えているという状況です。

    したがって、売上高、利益ともに、高い確実性が見込める状況です。今期、そして来期においても、堅調な業績を見込める会社であると考えております。

    これらの要素を踏まえると、来期は、少なくとも1億円から2億円程度の利益を計上できる見込みであり、今期との比較では、約6億円程度の増益を見込めるのではないかと考えております。

    取材者:今回の坂井建設の件ですが、クロージングが12月になったとのことですが、これは、クロージングが当初の予定よりも後ろ倒しになったためですか。それとも、前倒しになったために今期に計上されることになったのですか。

    回答者:後ろ倒しになったわけではございません。売主様のご意向により、当初から12月までのクロージングを希望されておりました。1月から税制改正が予定されていたこともあり、売主様は12月中のクロージングを強く希望されておりました。また、競合他社も存在したため、弊社としては、スケジュールをコントロールする余地はほとんどない状況でした。

    そのため、結果として12月にクロージングとなり、弊社の連結決算には3ヶ月分しか取り込むことができず、営業利益を押し下げる要因となってしまいました。

    もし、クロージングの時期が異なれば、営業利益を押し下げるという事態にはならなかったと思われますが、クロージング時期の調整は難しい状況でした。

    しかしながら、これは一過性の要因であり、来期は、のれん償却を含めて1億円から2億円の利益が出ると考えると、今期との比較、9億円から比較すれば6億円近くは伸びるのではないかと考えております。

    取材者:承知いたしました。期初にはこのM&Aは特に予定はなかったのですか。

    回答者:そうですね。全くなかったです。

    回答者:もう一つが、新規出店にかかる費用ということで、これも計画の前倒しをした分です。弊社は大きく中期的な成長としてエリアの拡大ということはもちろん行っているのですが、昨年は3店舗、ふじみ野店、福島店、いわき店を新規出店しました。

    これは元々予算にも入っていて、見通しの中にもあったのですが、それとは別に東海エリアで大規模に出店を進めています。これが計画にはなかった追加の分です。

    実際には今年の5月末頃から名古屋支店を新規オープンしようということで進めていて、東海エリアで次々とオープンをしていく予定で進めています。

    今まで、弊社の新規出店というのは隣接エリアを中心に拡大していきました。ですが今回、飛び地で東海エリアを一気に進出しようとしています。なぜそれをしようとしたのかというと、人の採用が上手くいったためです。

    弊社は元々北海道から本州に出てエリアを拡大していったのですが、北海道では抜群の知名度もあるので、そこまで人の採用に苦労してはいなかったのですが、本州に出ていったときは認知度も低かったので、優秀な人を採用することに苦戦していました。

    それが昨年上場した後に、他社で活躍している人からの転職が非常に増えました。上場した効果があったと思います。住宅業界を全国見渡したときに、今成長している会社は国内にはそんなにないのです。

    ある程度大きいハウスメーカーさんでも、全国展開が終わって、今は人口減少でマーケットも縮小しているので、店舗を精査している状況です。大手ハウスメーカーを含めても伸ばしているのは海外事業が要因という会社が多いと思います。

    今、国内の注文住宅業界では、なかなか上場会社で元気に全国にエリアを伸ばしているという会社が少なく、一昔前に一気に伸ばした会社はあるのですが、大体エリアの進出も終わって逆に店舗の縮小に入っているという状況です。

    何が言いたいのかというと、優秀な方は成長していく会社にいたいと思うものです。

    成長していく会社はキャリアアップの機会も生まれます。弊社は今回上場して、その中で成長し続けようとしているため、優秀な方をたくさん獲得できるチャンスが生じたというのが今の状況です。特に東海エリアで優秀な人材を大量に獲得できるという大きなチャンスがありました。

    そのようなこともあって、人の採用の先行投資と、今回は東海エリアで全く認知度がないので、これだけの大型な店舗を建設し、と人も採用しているため、広告を立ち上げないと人を遊ばせてしまうので、出店に対する広告戦略を考えているということで、実際この1億5,600万円のうち半分ぐらいは、4、5月に広告、CMなどの広告戦略で使用しようと考えています。

    それが当初の出店の予算に入っていなかったということです。ただ、どうしても人を採用してしまっているので、人の採用、特に中途採用なのですが、弊社の都合で半年ぐらい待ってもらうということは難しいので、ここで大きく投資をしないと人の獲得ができないということで踏み切ったところでした。

    取材者:承知いたしました。そうすると、ハウスメーカーさんはかなり人の採用に苦しんでいる企業が多いと思うのですが、貴社に限っては苦しんではないという点と、特に東海エリアは人材採用がうまくいっているということですか。

    回答者:苦しんではいないという点のみならず、特に東海エリアはですね、40〜50人ぐらい採用できています。

    決して引き抜き行為はしていないのですが、成長が止まった他社から人が離脱しており、そのような方を多数採用できています。弊社にとっては全く今期に予定していなかったエリアも早期に立ち上げが可能になったので、これは大きなチャンスです。その分、今期の利益は押し下げる結果となってしまいましたが、その分、来期以降の成長投資についてはしっかりできているという裏付けにもなりますので、来期以降の業績には期待をしていただきたいと思っています。

    残りは豊栄建設のところですが、これは業績が悪くなりましたということです。

    取材者:豊栄建設の業績が悪くなってしまった集客の失敗の部分に関して、リカバリーの施策や何か取り組まれていることはございますか。

    回答者:弊社はデジタルマーケティングに特化した会社です。ロゴスホームの営業戦略でいうと、創業の地であり圧倒的なトップシェアを誇る帯広以外の各エリアにおいては、特にトップシェアを取るという戦略ではありません。大体1店舗あたり50棟くらい建築可能な店舗をたくさん出していくという戦略なので、決してトップシェアを取るということではありません。北海道では一部のエリアでトップシェアを取っていくための様々な追加投資をしているのですが、基本的に本州エリアなどこれから展開するところについてはトップシェアを取るというよりも、面をどんどん広げましょうという戦略です。

    トップシェアを取らないという戦略においては、デジタルマーケティングでいうと、ある程度リスティング広告で必要な集客は確保できるので、そんなに大きな影響を受けることはないのですが、豊栄建設については札幌に特化してトップシェアをとっているので、ここのマーケティング戦略が非常に業績を左右します。

    何が起こったのかというと、昨年の6月から8月にかけて急激に来場が減ったのです。弊社はデジタルマーケティングのメインがリスティング広告なのですが、これはリスティングの運用会社に委託をしています。

    リスティングの運用会社に原因調査と報告を求めたところ、リスティングの集客には全く影響はないということでした。

    しかし、リスティング広告から弊社ホームページに来たときに資料請求や来場予約のところから離脱されているのではないか、そこから弊社に情報が届いていないのではないかという報告内容でした。ホームページに何かしらエラーが生じているからではないかという仮説のもと、ホームページの改修など様々な対策を図っていました。

    しかし、実際にはそこが影響しているのではなく、そもそもマーケティングのリスティング戦略に問題があるのではないかという仮説に至り、調査したところ、競合状況によって各ワードの入札単価が上がっていました。

    リスティング会社は弊社に対して金額と集客量で契約しているので、毎月この金額で量を最大化してくださいという契約の中で、効果のその薄いキーワードで大量集客をしていたということがわかりました。コアで効果的なキーワードが高くなっているので、薄いところに広告を打ったが、コンバージョンしないという状況だったのです。

    それに気づくのに時間がかかったため、その間に間違った様々な戦略をとってしまい、集客に穴を開けてしまったというのが昨年の6月から8月でした。対策としては、もちろんリスティング会社を変え、入札単価が高くなるアラートを自社でわかるように様々な対策を行っており、今のところは集客には戻っています。

    まだ挽回する余地はあるということで、様々な対策を講じてはいたのですが、結局補うまでは至りませんでした。第2四半期が終わった段階で、これは無理だということで下方修正を出すに至ったという経緯です。

    豊栄建設というのは規模的に言うと、大体年間300棟ぐらいを安定的にやってきた会社です。営業利益でも大体5~6億円で安定した会社です。しかし昨年、上場したということもあり、この300棟から400棟に頑張って伸ばしましょうということで、人も相当増やして臨んだ1年だったのです。そうなると当然ながら損益分岐点が上がっていて、集客が失敗したということが重なって、利益が全部なくなってしまったという状況になってしまいました。

    やはり無理は良くないということで、豊栄建設については安定利益をしっかり出すため、人員も300棟体制に戻して進めています。

    集客を失敗したことと、成長しようとしてコストをかけたというこの二つが大きな要因です。

    取材者:マーケティングのお話がございましたが、住宅展示場を作らないということで、商談数、反響数というのはどうしても他の企業に比べて少なくなってしまうのかなと思うのですが、そのようなことがあっても成約率が他社に比べて高いということなのですか。

    回答者:商談数はそんなに少なくないと思います。

    取材者:それはやはりマーケティング施策、戦略がしっかりとしているということですか。

    回答者:そうです。住宅を建築する方は、まず総合展示場に行ってみようと思うのではないでしょうか。そのときに何をするかというと、総合展示場で検索しますよね。

    総合展示場と検索すれば、当然ながら弊社はリスティング広告でロゴスホームとか豊栄建設がトップに出てくるようにしているので、総合展示場に来場しようとする方にしっかりアプローチができています。行動する前に早くスマートフォンで様々な情報収集をするということにユーザーさんは圧倒的に時間を使うので、その中では逆に言うと認知度はしっかり取れています。集客という観点、反響数という観点では右肩上がりでずっと伸びていますので、そこが少ないということはないと思います。逆に展示場の方が、コロナを機に来場数が減っているので、どこの住宅会社さんもお客さんがいないと言っています。

    取材者:坂井建設さんのように新たにM&Aで加わった会社というのは、マーケティングサイドからガラリと変わるようなイメージなのですか。

    回答者:そうですね。ただ、坂井建設さんはたまたま同じビジネスモデルで総合展示場に出展していなかったのです。なので、そういう意味ではあまり転換するということなく、弊社のDXとかデジタルマーケティングのところを導入していくことによって、さらに生産性を高くしていこうということがやりやすい会社です。

    しかし当然ながら今後M&Aをする会社によっては、総合展示場に出展している会社もあると思うので、そのようなところはコスト削減というところも含めてビジネスモデルの転換をしていきたいと思っています。

    取材者:そうしますと、M&Aの戦略としては、同じビジネスモデルというわけではなく、エリアの拡大といった部分に注力しながら検討していくようなイメージでよろしいですか。

    回答者:そうです。対象としては、地場で大体トップ3ぐらいに入るような会社です。そうなると大体規模的にも年間200~300棟ぐらいの規模になります。

    弊社で新規出店をする際は、50棟ぐらいを目安に考えているので、逆に言うとそのくらいの規模ならスピード早く立ち上げができるのですが、それ以上のシェアを獲得するのはなかなか難しいのです。それ以上のシェアを持っているところには何があるかというと、地域に根ざしたブランドというのが存在するので、そういう会社であればグループに加えていきたいと考えています。逆に50棟ぐらいの規模であれば自社の出店でできるので、そのような会社は対象としていません。そういう形で線引きをしています。

    エリアについては、特に制限はないと考えています。今回、新潟という全く携わったことのないエリアに進出したので、そのような未開のエリアであれば、ロゴスホームがそこにまた50棟ぐらいの出店をしていくということにも繋がっていきます。

    取材者:承知いたしました。そうすると、東海地方に新規出店されているのはかなり珍しいケースですね。

    回答者:今までの出店戦略からすると、既存から隣接エリアではない地域への新規出店は、はじめてのケースになります。これは、東海エリアで、優秀な人材の採用が想定外に出来たことから踏み切れたということです。

    取材者:株主還元策につきまして、方針などございましたらご教示いただけますか。

    回答者:はい。元々配当性向30~50%という方針で今年臨んでいたのですが、今回下方修正を出して減益になるということで当然ながら減配も発表したという経緯です。今後も成長投資は続けていきますし、特にM&Aについては業績を大きく歪めてしまうなと思っています。

    取得するタイミングによってもどうしてもPPAの影響が出てきてしまいますし、あとはどうしても仲介会社さんが入ってくると取得コストが高くなります。もちろん株主還元はしていかなければいけないですが、とは言っても安定しないのは株主の方にとってマイナス要因だと思っています。

    安定配当ができるような指標などを導入する必要があるのではないかというのは今議論をしているところです。

    場合によってはDOEを採用するとか、安定的に配当するというのが重要ではないかと思っています。

    取材者:成長投資との兼ね合いを見ながらということですね。

    回答者:はい。

    取材者:金利の上昇につきまして貴社にとって影響を受けるのはどのようなものと考えられますか。

    回答者:影響が全くないかと言われると、影響はあると思います。ただ、住宅ローン金利が上がったからといって、家を建てる人が一切いなくなるかというとそうではありません。しかし当然ながら住宅にかける金額というのは住宅ローンで借りられる限度額があるので、どうしても少なくなってくると思います。

    弊社のポジショニングとしては、中価格帯よりも下のところをターゲットにしているので、住宅マーケットの中の十分コアなターゲット層は取れているというところがあります。より競合が激しくなるものの、金利が上昇したからといって顧客のターゲットから外れるということはないというのが弊社の見解です。

    取材者:むしろ低価格で高品質という部分での強みを持たれているので、逆にチャンスという見方もできるということですか。

    回答者:そうです。上の価格帯のところから降りてくるということも考えられます。

  • 常務取締役経理部部長 岩永武也様

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(株)ロゴスホールディングス

東証GRT 205A

決算:5月末日

CP&X


決算概要

売上高は過去最高となる7,224百万円(前年同期比+149.9%)、営業損失711百万円(前年同期は営業損失776百万円)。前年より損失幅は縮小し、計画よりも上振れで着地。前期比増の主因は、引渡棟数の増加(坂井建設+新規出店の効果)。粗利は1,194百万円(前年同期比+187.3%)で粗利率は16.5%(前年同期+2.1%)。一方、坂井建設や新規出店に伴う人件費・採用費・広告販促費、地代家賃増、のれん償却などの固定費が増加し、販管費は1,905百万円(前年同期比+59.9%)。2Q以降は計画通り営業利益へ転換の見通し。


セグメント別または事業別の増減要因

単一セグメント。エリア別では、北海道は既存店の大型自社展示場化などのリニューアルで受注が伸長(ロゴスホーム旭川はリニューアル後に受注YoY+20%超)。北海道外は新規出店が寄与。ロゴスホーム名古屋は立ち上がり好調で受注が計画超。四日市は10/11に開店(売上寄与は今後)。前年比売上は坂井建設の連結寄与に加え、オーガニックでも伸長。坂井建設を除く売上YoY+64.8%、坂井建設の連結調整を控除したベースではYoY+112.7%。


主要KPIの進捗と変化

引渡棟数については、1Qは前年を上回り、通期計画は1,481棟。季節偏重は4Qに集中見込み。受注については、当四半期から月次受注速報の開示を開始。受注状況は、月次は多少の変動はあるものの、累計では前年比大幅増。伸長要因はM&A、新規出店、既存店リニューアル。収益性のKPIである粗利率について前年から2.1%改善し、16.5%となった。


季節性・一過性要因の有無と影響

季節性:当期の引渡は前期同様の季節偏重により4Qに集中し、逆に1Qは一番少ない。よって、1Q損益分岐を大きく下回ることから、例年どおり営業損失。

一過性:坂井建設の決算期変更(12/31→5/31)に伴う連結調整あり。坂井建設の4–5月分は売上1,075百万円、営業損失11百万円を1Qに反映。


通期見通しと進捗率・達成可能性

通期業績予想は売上46,815百万円(前年比+29.1%)、営業利益1,500百万円(前年比+208.0%)、経常利益1,392百万円(前年比+244.2%)、当期純利益826百万円(前年比+313.8%)のまま据え置き。1Qは計画上振れたものの、四半期ごとの変動を踏まえ通期業績予想は現状から変更無し。しかし、当期の受注は名古屋の新規オープン含めて好調により計画比を上振れの状況。


トピックス

北海道内の既存店リニューアル(旭川・中標津・千歳)を実施。特に旭川は大型展示場化やカフェ・屋内キッズパーク併設で受注がYoY+20%超。道外は東海エリアに進出(名古屋・四日市開設、岐阜での出店計画)。四日市は10/11に開店。月次受注速報の定期開示を開始。

豊栄建設は引渡棟数を前年比横ばいを維持しつつ、商品・ブランド刷新や原価/コスト削減で収益性改善に注力。

取材アーカイブ

  • CP&X

     

    ビジネスモデルや事業内容

    ロゴスホームを筆頭に、豊栄建設、GALLERY HOUSE、坂井建設を擁する注文住宅事業を展開。グループ会社に工務店支援サービスを行うROOTLINKと、設計CADをオフショア化しているLCO(フィリピン)が存在。各社とも顧客ターゲットは一次取得者が中心。注文住宅の他に、建築条件付き宅地の販売も行う。

     

    創業の経緯と転機となった出来事

    代表の池田氏が、以前勤務していたハウスメーカーの倒産を機に、仲間と創業。会社の永続的な成長のためにはIPOが不可欠と考え、十数年前から準備を開始。ファンドの経営参画を経て、2019年にロゴスホームの株式をエンデバーユナイテッドに譲渡。エンデバーユナイテッドからの追加出資を得て豊栄建設を取得し、組織再編でロゴスホールディングスとなる。

     

    特徴や強み

    商品開発力:寒暖差の激しい地域での創業を背景に、高品質高性能な住宅を適正価格で提供。ビジネスモデル:住宅総合展示場には出展せず、デジタルマーケティングによる集客と、モデルハウスの短期売却を組み合わせたビジネスモデルによるコスト削減。DXの推進:デジタルマーケティングによる集客、オンラインでの営業活動など、DXを積極的に推進している。

     

    直近の決算状況

    直近の業績予想を下方修正。売上高はほぼ変更ないものの、利益が減少。要因は、豊栄建設の業績悪化、坂井建設取得に伴う費用、PPA評価替えによる影響。坂井建設の取得は一過性の要因であり、来期以降の業績が期待される。

     

    成長戦略

    エリア拡大を成長の要因と位置づけ、新規出店やM&Aを積極的に推進。M&Aにおいては、地場でトップ3に入るような会社を対象とし、エリア拡大とブランド獲得を目指す。今後は東海エリアへの出店を強化し、人材採用を積極的に行う。

     

    株主還元策

    配当性向30~50%の方針であったが、業績悪化により減配を発表。安定配当ができるような指標の導入を検討している。

     

    今期の取り組みやトピックス

    坂井建設を新たにグループに迎え、新潟県での事業を開始。東海エリアへの大型出店を計画し、人材採用と広告宣伝に注力。豊栄建設の業績不振からの回復を図るため、リスティング戦略の見直しや体制の再構築を実施。来期以降の業績回復が期待される。

  • Q 事業内容やビジネスモデル、特徴や強みについて、ご説明いただけますでしょうか。

    A 弊社は2020年7月にホールディングスを設立しており、設立自体はごく最近ですが、元々はロゴスホームという注文住宅事業を営んでおり、このロゴスホームを筆頭に、M&Aで取得した豊栄建設、GALLERY HOUSE、坂井建設という形で、現在は四つの事業会社で構成されています。ROOT LINKという会社もございますが、こちらは各社に対して様々なサービスを提供する、いわばグループ内向けの共通サービスを展開している会社です。その中に、設計CADをオフショア化しているLCOというフィリピンの子会社もございます。

    元々ロゴスホームは、ホールディングスの代表である池田が創業した会社で、帯広で創業し、北海道全域へと注文住宅のエリア展開を進めてまいりました。その過程で、創業当初から、会社の永続的な成長のためにはIPOが不可欠であると考えておりましたので、十数年前にIPOの準備を開始いたしました。しかしながら、当時は本社が帯広にあったこともあり、管理部門や、IPOに関する専門知識を有する人材を確保することが難しく、様々なコンサルタントにご尽力いただきましたが、期待する成果を得られず、費用のみが先行する状況が続きました。そのような折、ファンドに経営参画していただき、共にIPOを目指すというスキームをご紹介いただき、複数のファンドと面談を重ねた結果、現在のエンデバーユナイテッドとご一緒させていただくこととなり、2019年に一旦ロゴスホームの株式をエンデバーユナイテッドに譲渡するという経緯に至りました。その後、豊栄建設をM&Aで取得する際、ロゴスホームはLBOローンにて借り入れを行なっており、自社のみでは次の出資を行うことが難しい状況であったため、エンデバーユナイテッドに追加出資という形で資金提供を受けて取得し、それを組織再編で統合したものが、現在のロゴスホールディングスです。組織再編の器に豊栄ホールディングスを使ったため、豊栄建設が母体であったように見えるかもしれませんが、実際にはロゴスホームが事業の起点となっています。その後、GALLERY HOUSEの株式を取得し、上場を果たしました。昨年、2024年12月には、新潟の坂井建設を新たにグループに迎えました。

     

    Q ロゴスホームの創業の経緯について、ご教示いただけますでしょうか。

    A 元々、代表の池田は、当時他の大手ハウスメーカーに技術者として勤務しておりましたが、そこが倒産するという事態が起こりました。その倒産を契機に、池田が中心となり、当時共に働いていた複数のメンバーと共に住宅会社を創業したというのが、そもそもの経緯です。

     

    Q 特徴をご説明ください。

    A 事業会社の特徴といたしましては、各社それぞれに特色がございますが、グループ全体では39の営業拠点を展開しております。ロゴスホームにつきましては、北海道から東北、現在は北関東のふじみ野まで21拠点を出店しております。少々ややこしいのですが、ロゴスホームという会社の中には、ロゴスホームという注文住宅ブランドと、北海道内で展開するハウジングカフェという企画住宅のブランドが混在しておりますので、ロゴスホームという会社としては、26拠点ということになります。豊栄建設につきましては、苫小牧にも拠点がございますが、ほぼ札幌が事業の中心となっています。GALLERY HOUSEにつきましては、栃木県が事業の中心となっており、坂井建設は新潟県全域に8拠点を展開しているという状況です。

     

    Q ターゲット層をご説明ください。

    A 基本的なターゲット層といたしましては、どの会社も大きな違いはございませんが、初めて土地をご購入される一次取得者と呼ばれるお客様が中心となっています。グループ全体で申し上げますと、建て替え、つまり土地を既に所有されているお客様の割合は約1割です。残り9割のお客様は、新たに土地を取得して住宅を建設される方々で、その9割のうち、半分弱のお客様が、弊社が保有・販売している建築条件付きの宅地をご利用いただいております。残りの方は、流通地でお客様と共に弊社の営業担当が土地を探して住宅を建設するという形をとっております。したがって、グループ全体で見ますと、土地の売上と建築条件付き宅地のお客様の割合は、3割から4割弱程度となります。この割合は、都市部ほど高くなる傾向にございます。地方においては、比較的容易に土地を入手できるため、土地を保有するという概念があまり一般的ではないという状況です。ただし、土地の販売においては、基本的に大きな利益を追求しておらず、あくまで注文住宅の受注を促進するための販売促進ツールとして位置付けております。

     

    Q 初めて住宅を購入されるお客様が多い状況ということは、価格帯が比較的購入しやすい水準であるということでしょうか。

    A そうです。元々の価格帯といたしましても、弊社のグラフで示しておりますように、低価格帯の住宅に特に注力していることもあり、そのような客層のお客様が多い状況です。

     

    Q 強みをご説明ください。

    A 当社の強みといたしましては、主に三つ掲げております。一つ目は、商品開発力です。ロゴスホームの創業の地である十勝地方は、夏は35度、冬はマイナス30度にもなる非常に寒暖差の激しいエリアです。降雪量はそれほど多くはありませんが、寒さが厳しく、夏は暑いという、非常に厳しい環境下にあります。また、北海道、特に十勝地方を含む道東地域は、全国的に見ても所得水準が比較的高くないエリアであったため、高品質高性能な住宅を、できる限り安く、適正な価格で、一人でも多くのお客様にお届けすることを念頭に置いた住宅商品開発を行ってまいりました。様々な工夫を凝らし、省エネ性能や耐震性などを、お客様が無理なくご購入いただける価格帯で提供できるよう、パッケージング化してきた点が強みです。

    一般的に注文住宅ビジネスにおいては、住宅総合展示場、新聞社やテレビ局などが運営している総合展示場に出展するというビジネスモデルが主流となっております。この総合展示場への出展には、メーカーにとって高額な借地料の支払いと、高額なモデルハウスの建設が必要となります。これらのモデルハウスは、1億円程度の建築費用がかかる豪華な仕様となっており、一般的な住宅とは大きく異なる仕様となっているかと存じます。各社とも立派なモデルハウスを建設しなければ、他社に見劣りしてしまうため、結果として多額の建築費用がかかることになります。耐用年数で言いますと7年をベースに減価償却の対象となり、借地料と建築費だけでも莫大なコストが発生している状況です。さらに、展示場を運営している事業者に対して、運営費の負担も発生いたします。週末には、集客イベントとして、キャラクターショーなどが開催されており、これらのイベントにかかる広告宣伝費の負担もメーカー側が担うことになります。その上で、各社は自社独自のSNSなどを活用し、追加の集客を図るのですが、基本的な出展費用が高額になるため、自社独自の広告宣伝活動を行うことが難しく、自社で広告宣伝活動を行ったとしても、近隣には競合他社が存在するため、自社の強みを明確に訴求することが難しいという側面もございます。その一方で、安定的な大量集客が見込めるため、各社がこぞって出展し、営業活動を行うという状況になっています。しかしながら、展示場における成約率は、100組中1組程度と言われており、非常に厳しい競争環境となっています。逆に申し上げますと、1組のお客様が契約するということは、その出展コストを他のお客様が負担している、すなわち価格転嫁されているという構図になっているため、これがハウスメーカーの住宅価格が高止まりしている要因の一つであると言えるでしょう。

    これに対し、弊社は住宅総合展示場には出展せず、自社で店舗、具体的には賃貸の路面店舗などを活用し、お客様との打ち合わせスペースを確保するという形で小規模な出店を行っています。その近隣に、売却を前提とした注文住宅のモデルハウスを建設し、デジタルマーケティングによって集客を行うというビジネスモデルを基本としております。これらのモデルハウスは、半年程度で建て替えを行います。新しいモデルハウスが完成したら、以前のモデルハウスを売却し、新たに来場を促すという流れを確立しております。実際には、モデルハウスの展示期間が短いため、注文住宅仕様の建物を建売住宅として販売いたします。したがって、建売住宅としての利益をしっかりと確保することが可能です。そのため、ランニングコストを抑えることが可能となります。減価償却の必要もございません。店舗にかかる費用は、賃貸の路面店舗賃に打ち合わせスペースを設ける程度であるため、基本的にコストを抑えることができます。弊社は、これらのコスト削減分を住宅価格に反映させております。実際に各社の財務諸表をご覧いただければお分かりいただけるかと存じますが、一般的に、注文住宅の粗利率は、売上総利益で25%程度、営業利益で5%程度が業界水準と言われています。弊社の売上総利益は20%を下回っており、営業利益は5%程度です。これは、販管費を大幅に削減できているためです。その分、住宅価格を抑えることが可能となっております。実際の原価に大きな差はないため、弊社の住宅価格は競合他社と比較して競争力のある価格設定となっております。高品質高性能な住宅を、よりお求めやすい価格でご提供することで、後発ながらも着実にエリアを拡大し、売上を成長させている点が弊社の強みです。

     

    Q 業績についてご説明ください。

    A 上場後に一度、業績予想の下方修正を発表したという経緯がございますので、この点について三つの要因をご説明させていただきます。今回、下方修正を発表いたしましたが、売上高については、ほぼ変更はございません。主に利益が減少したという状況です。この下方修正に至った要因は、大きく分けて三つございます。一つ目は、グループ会社である豊栄建設において、集客が計画通りに進まず、業績が悪化したことによる影響で、約6億円の減益要因となりました。元々、21億円の業績見通しを立てておりましたが、9億円程度に減少したため、12億円の減益となりました。このうち、約半分の6億円が豊栄建設の業績悪化によるものです。残りの6億円につきましては、主に二つの要因がございます。一つは、12月末に坂井建設を取得したことに伴う費用です。坂井建設の取得にあたっては、仲介会社を通して取引を行ったため、アドバイザリー費用が発生し、この費用が4億円のうちの2億円を占めております。残りの2億円は、坂井建設を取得した際のPPA(パーチェス・プライス・アロケーション)の評価替えによる影響です。弊社の売上高は、完成工事高と呼ばれる請負契約に基づく売上高ですが、注文住宅は工期が比較的短く、単価もそれほど高くないため、一般的には完成基準が適用されるケースがほとんどです。完成基準を適用する場合、工事が未完成の状態では、未成工事支出金という棚卸資産が計上されます。この評価替えの処理において、本来、進行基準であれば、出来高に応じて利益を計上するところ、完成基準では、未完成工事支出金の簿価が売価に変更されるため、結果として、3ヶ月分の引き渡しについては、ほとんど利益が出ないという状況が発生いたします。今回、坂井建設の取得が第4四半期であったため、連結決算に取り込める期間が3ヶ月のみとなり、結果として、営業利益がマイナスのまま連結決算に取り込まれるという一過性の要因が発生いたしました。

    これらの要因と、取得にかかる費用が合算され、4億円の営業利益を押し下げる要因となりました。ただし、これはあくまで一過性の要因であり、来期以降は、この4億円の費用は発生いたしません。また、坂井建設は、純資産が10億円、弊社の取得額が30億円であるため、差額の20億円がのれんとして計上されます。償却期間は12年を予定しており、年間1億6,000万円程度の償却費が発生いたします。しかしながら、坂井建設は、売上高が継続的に増加しており、2021年から2023年にかけても右肩上がりの成長を遂げております。営業利益も3億円を超えており、2024年12月期も同様の数字を見込んでいる状況です。実際に、受注高は売上高を上回るペースで増加しております。弊社は請負業であるため、受注時点では売上高は計上されず、契約後に一定のリードタイムを経て引き渡しが行われるため、受注残という形で計上されます。これをキャリーと呼んでおりますが、弊社のキャリーは、これまで3割から5割程度でしたが、坂井建設は、9割程度のキャリーを抱えているという状況です。したがって、売上高、利益ともに、高い確実性が見込める状況です。今期、そして来期においても、堅調な業績を見込める会社であると考えております。これらの要素を踏まえると、来期は、少なくとも1億円から2億円程度の利益を計上できる見込みであり、今期との比較では、約6億円程度の増益を見込めるのではないかと考えております。

    Q 今回の坂井建設の件は、クロージングが12月になったとのことですが、これは、クロージングが当初の予定よりも後ろ倒しになったためでしょうか。それとも、前倒しになったために今期に計上されることになったのでしょうか。

    A 後ろ倒しになったわけではございません。売主様のご意向により、当初から12月までのクロージングを希望されておりました。1月から税制改正が予定されていたこともあり、売主様は12月中のクロージングを強く希望されておりました。また、競合他社も存在したため、弊社としては、スケジュールをコントロールする余地はほとんどない状況でした。そのため、結果として12月にクロージングとなり、弊社の連結決算には3ヶ月分しか取り込むことができず、営業利益を押し下げる要因となってしまいました。もし、クロージングの時期が異なれば、営業利益を押し下げるという事態にはならなかったと思われますが、クロージング時期の調整は難しい状況でした。しかしながら、これは一過性の要因であり、来期は、のれん償却を含めて1億円から2億円の利益が出ると考えると、今期との比較、9億円から比較すれば6億円近くは伸びるのではないかと考えております。

    下方修正の要因のもう一つは、新規出店にかかる費用ということで、これも計画の前倒しをした分です。弊社は中期的な成長としてエリアの拡大ということはもちろん行っているのですが、昨年は3店舗、ふじみ野店、福島店、いわき店を新規出店しました。これは元々予算にも入っていて、見通しの中にもあったのですが、それとは別に東海エリアで大規模に出店を進めています。これが計画にはなかった追加の分です。実際には今年の5月末頃から名古屋支店を新規オープンしようということで進めていて、東海エリアで次々とオープンをしていく予定で進めています。今まで、弊社の新規出店というのは隣接エリアを中心に拡大していきました。ですが今回、飛び地で東海エリアを一気に進出しようとしています。なぜそれをしようとしたのかというと、人の採用が上手くいったためです。弊社は元々北海道から本州に出てエリアを拡大していったのですが、北海道では抜群の知名度もあるので、そこまで人の採用に苦労してはいなかったのですが、本州に出ていったときは認知度も低かったので、優秀な人を採用することに苦戦していました。それが昨年上場した後に、他社で活躍している人からの転職が非常に増えました。上場した効果があったと思います。住宅業界を全国見渡したときに、今成長している会社は国内にはそんなにないのです。ある程度大きいハウスメーカーさんでも、全国展開が終わって、今は人口減少でマーケットも縮小しているので、店舗を精査している状況です。大手ハウスメーカーを含めても伸ばしているのは海外事業が要因という会社が多いと思います。今、国内の注文住宅業界では、上場会社で元気に全国にエリアを伸ばしているという会社が少なく、一昔前に一気に伸ばした会社はあるのですが、大体エリアの進出も終わって逆に店舗の縮小に入っているという状況です。

     

    Q 優秀な人材の獲得が課題だったのでしょうか。

    A 優秀な方は成長していく会社にいたいと思うものです。成長していく会社はキャリアアップの機会も生まれます。弊社は今回上場して、成長し続けようとしているため、優秀な方をたくさん獲得できるチャンスが生じたというのが今の状況です。特に東海エリアで優秀な人材を大量に獲得できるという大きなチャンスがありました。そのようなこともあって、人の採用の先行投資と、今回は東海エリアで全く認知度がないので、これだけの大型店舗を建設し、人も採用しているため、広告を立ち上げないと人を遊ばせてしまうので、出店に対する広告戦略を考えているということで、実際この1億5,600万円のうち半分ぐらいは、4、5月に広告、CMなどの広告戦略で使用しようと考えています。それが当初の出店の予算に入っていなかったということです。ただ、どうしても人を採用してしまっているので、人の採用、特に中途採用なのですが、弊社の都合で半年ぐらい待ってもらうということは難しいので、ここで大きく投資をしないと人の獲得ができないということで踏み切ったところでした。

     

    Qハウスメーカーさんはかなり人の採用に苦しんでいる企業が多いと思うのですが、貴社に限っては苦しんではないという点と、特に東海エリアは人材採用がうまくいっているということでしょうか。

    A 苦しんではいないという点のみならず、特に東海エリアは40 〜 50人ぐらい採用できています。決して引き抜き行為はしていないのですが、成長が止まった他社から優秀な順に人が離脱しており、そのような方を多数採用できています。弊社にとっては全く今期に予定していなかったエリアも早期に立ち上げが可能になったので、これは大きなチャンスです。今期の利益は押し下げる結果となってしまいましたが、その分、来期以降の成長投資についてはしっかりできているという裏付けにもなりますので、来期以降の業績には期待をしていただきたいと思っています。

     

    Q 貴社の戦略をご説明ください。

    A 弊社はデジタルマーケティングに特化した会社です。ロゴスホームの営業戦略でいうと、創業の地であり圧倒的なトップシェアを誇る帯広以外の各エリアにおいては、特にトップシェアを取るという戦略ではありません。大体1店舗あたり50棟位建築可能な店舗をたくさん出していくという戦略なので、決してトップシェアを取るということではありません。北海道では一部のエリアでトップシェアを取っていくための様々な追加投資をしているのですが、基本的に本州エリアなどこれから展開するところについてはトップシェアを取るというよりは面をどんどん広げましょうという戦略です。

     

    Q 豊栄建設の業績不振の要因について、お聞かせいただけますでしょうか。

    A トップシェアを取らないという戦略においては、デジタルマーケティングでいうと、ある程度リスティング広告で必要な集客は確保できるので、そんなに大きな影響を受けることはないのですが、豊栄建設については札幌に特化してトップシェアをとっているので、マーケティング戦略が非常に業績を左右します。

    何が起こったのかというと、昨年の6月から8月にかけて急激に来場が減ったのです。弊社はデジタルマーケティングのメインがリスティング広告なのですが、これはリスティングの運用会社に委託をしています。リスティングの運用会社に原因調査と報告を求めたところ、リスティングの集客には全く影響はないということでした。しかし、リスティング広告から弊社ホームページに来たときに、資料請求や来場予約のところから離脱されているのではないか、そこから弊社に情報が届いていないのではないかということではないかという報告内容でした。ホームページに何かしらエラーが生じているからではないかという仮説のもと、ホームページの改修など様々な対策を図っていました。しかし、実際にはそこが影響しているのではなく、そもそもマーケティングのリスティング戦略に問題があるのではないかという仮説に至り、調査したところ、競合状況によって各ワードの入札単価が上がっていました。リスティング会社は弊社に対して金額と集客量で契約しているので、毎月この金額で量を最大化してくださいという契約の中で、効果の薄いキーワードで大量集客をしていたということがわかりました。コアで効果的なキーワードが高くなっているので薄いところに広告を打ったが、コンバージョンしないという状況だったのです。それに気づくのに時間がかかったため、その間に間違った様々な戦略をとってしまい、集客に穴を開けてしまったというのが昨年の6月から8月でした。

    対策としては、もちろんリスティング会社を変え、入札単価が高くなるアラートを自社でわかるように様々な対策を行っており、今のところ集客は戻っています。まだ挽回する余地はあるということで、様々な対策を講じてはいたのですが、結局補うまでは至りませんでした。第2四半期が終わった段階で、これは無理だということで下方修正を出すに至ったという経緯です。

    豊栄建設というのは規模的に言うと、大体年間300棟ぐらいを安定的にやってきた会社です。営業利益でも大体5~6億円で比較的安定した会社です。しかし昨年、上場したということもあり、300棟から400棟に頑張って伸ばしましょうということで、人も相当増やして臨んだ1年だったのです。そうなると当然ながら損益分岐点が上がっていて、集客が失敗したということが重なって、利益が全部なくなってしまったという状況になってしまいました。やはり無理は良くないということで、豊栄建設については安定利益をしっかり出すため、人員も300棟体制に戻して進めています。集客を失敗したことと、成長しようとしてコストをかけたというこの二つが大きな要因です。

     

    Q マーケティングの話もあったかと思いますが、住宅展示場を作らないということで、商談数、反響数というのはどうしても他の企業に比べて少なくなってしまうのかなと思うのですが、そのようなことがあっても成約率が他社に比べて高いということでしょうか。

    A 商談数は特段少なくないと思います。

     

    Q 商談数が少なくないのは、マーケティング施策、戦略がしっかりとしているということでしょうか。

    A そうです。住宅を建築する方は、まず総合展示場に行ってみようと思うのではないでしょうか。そのときに何をするかというと、総合展示場で検索しますよね。総合展示場と検索すれば、当然ながら弊社はリスティング広告でロゴスホームとか豊栄建設がトップに出てくるようにしているので、総合展示場に来場しようとする方にしっかりアプローチができています。行動する前にスマートフォンで様々な情報収集をするということにユーザーさんは圧倒的に時間を使うので、その中では逆に言うと認知度はしっかり取れています。集客という観点、反響数という観点では右肩上がりでずっと伸びていますので、そこが少ないということはないと思います。逆に展示場の方が、コロナを機に来場数が減っているので、どこの住宅会社さんもお客さんがいないと言っています。

     

    Q 坂井建設さんのように新たにM&Aで加わった会社というのは、マーケティングサイドから変化が大きいイメージでしょうか。

    A そうですね。ただ、坂井建設さんはたまたま同じビジネスモデルで総合展示場に出展していなかったのです。なので、そういう意味ではあまり転換するということなく、弊社のDXとかデジタルマーケティングのところを導入していくことによって、さらに生産性を高くしていこうということがやりやすい会社です。しかし当然ながら今後M&Aをする会社によっては、総合展示場に出展している会社もあると思うので、そのようなところはコスト削減というところも含めてビジネスモデルの転換をしていきたいと思っています。

     

    Q M&Aの戦略としては、同じビジネスモデルというわけではなく、エリアの拡大といった部分に注力しながら検討していくようなイメージでよろしいでしょうか。

    A そうです。対象としては、地場で大体トップ3ぐらいに入るような会社です。そうなると大体規模的にも年間200~300棟ぐらいの規模になります。弊社で新規出店をする際は、50棟ぐらいを目安に考えているので、逆に言うとそのくらいの規模ならスピード早く立ち上げができるのですが、それ以上のシェアを獲得するのはなかなか難しいのです。それ以上のシェアを持っているところには何があるかというと、地域に根ざしたブランドというのが存在するので、そういう会社であればグループに加えていきたいと考えています。逆に50棟ぐらいの規模であれば自社の出店でできるので、そのような会社は対象としていません。そういう形で線引きをしています。エリアについては、特に制限はないと考えています。今回、新潟という全く携わったことのないエリアに進出したので、そのような未開のエリアであれば、ロゴスホームがそこにまた50棟ぐらいの出店をしていくということにも繋がっていきます。

     

    Q 東海地方に新規出店されているのはかなり珍しいケースでしょうか。

    A 今までの出店戦略からすると、既存から隣接エリアではない地域への新規出店は、はじめてのケースになります。これは、東海エリアで、優秀な人材の採用が想定外に出来たことから踏み切れたということです。

     

    Q 株主還元策につきまして、方針などございましたらご教示いただけますでしょうか。

    A はい。元々配当性向30~50%という方針で今年臨んでいたのですが、今回下方修正を出して減益になるということで当然ながら減配も発表したという経緯です。今後も成長投資は続けていきますし、特にM&Aについては業績を大きく歪めてしまうなと思っています。取得するタイミングによってもどうしてもPPAの影響が出てきてしまいますし、あとはどうしても仲介会社さんが入ってくると取得コストが高くなります。もちろん株主還元はしていかなければいけないですが、とは言っても安定しないのは株主の方にとってマイナス要因だと思っています。安定配当ができるような指標などを導入する必要があるのではないかというのは今議論をしているところです。場合によってはDOEを採用するとか、安定的に配当するというのが重要ではないかと思っています。

     

    Q 成長投資との兼ね合いを見ながらということでしょうか。

    A はい。

     

    Q 金利の上昇の貴社への影響をご説明ください。

    A 影響が全くないかと言われると、影響はあると思います。ただ、住宅ローン金利が上がったからといって、家を建てる人が一切いなくなるかというとそうではありません。しかし当然ながら住宅にかける金額というのは住宅ローンで借りられる限度額があるので、どうしても少なくなってくると思います。弊社のポジショニングとしては、中価格帯よりも下のところをターゲットにしているので、住宅マーケットの中の十分コアなターゲット層は取れているというところがあります。より競合が激しくなるものの、金利が上昇したからといって顧客のターゲットから外れるということはないというのが弊社の見解です。上の価格帯のところから顧客が降りてくるということも考えられます。

  • 取材者:事業内容やビジネスモデル、特徴や強みなどをご説明ください。

    回答者:弊社は2020年7月にホールディングスを設立しており、設立自体はごく最近ですが、元々はロゴスホームという注文住宅事業を営んでおり、このロゴスホームを筆頭に、M&Aで取得した豊栄建設、GALLERY HOUSE、坂井建設という形で、現在は四つの事業会社で構成されています。ROOT LINKという会社もございますが、こちらは各社に対して様々なサービスを提供する、いわばグループ内向けの共通サービスを展開している会社です。

    その中に、設計CADをオフショア化しているLCOというフィリピンの子会社もございます。

    元々ロゴスホームは、ホールディングスの代表である池田が創業した会社で、帯広で創業し、北海道全域へと注文住宅のエリア展開を進めてまいりました。

    その過程で、創業当初から、会社の永続的な成長のためにはIPOが不可欠であると考えておりましたので、十数年前にIPOの準備を開始いたしました。しかしながら、当時は本社が帯広にあったこともあり、管理部門や、IPOに関する専門知識を有する人材を確保することが難しく、様々なコンサルタントにご尽力いただきましたが、期待する成果を得られず、費用のみが先行する状況が続きました。そのような折、ファンドに経営参画していただき、共にIPOを目指すというスキームをご紹介いただき、複数のファンドと面談を重ねた結果、現在のエンデバーユナイテッドとご一緒させていただくこととなり、2019年に一旦ロゴスホームの株式をエンデバーユナイテッドに譲渡するという経緯に至りました。

    その後、豊栄建設をM&Aで取得する際、ロゴスホームはLEOローンにて借り入れを行なっており、自社のみでは次の出資を行うことが難しい状況であったため、エンデバーユナイテッドに追加出資という形で資金提供を受けて取得し、それを組織再編で統合したものが、現在のロゴスホールディングスです。組織再編の器に豊栄ホールディングスを使ったため、豊栄建設が母体であったように見えるかもしれませんが、実際にはロゴスホームが事業の起点となっています。その後、GALLERY HOUSEの株式を取得し、上場を果たしました。昨年、2024年12月には、新潟の坂井建設を新たにグループに迎えました。

    取材者:ロゴスホームの創業の経緯について、お差し支えのない範囲でご教示いただけますか。

    回答者:はい。元々、代表の池田は、当時他の大手ハウスメーカーに技術者として勤務しておりましたが、そこが倒産するという事態が起こりました。

    その倒産を契機に、池田が中心となり、当時共に働いていた複数のメンバーと共に住宅会社を創業したというのが、そもそもの経緯です。

    事業会社の特徴といたしましては、各社それぞれに特色がございますが、グループ全体では39の営業拠点を展開しております。ロゴスホームにつきましては、北海道から東北、現在は北関東のふじみ野まで21拠点を出店しております。

    少々ややこしいのですが、ロゴスホームという会社の中には、ロゴスホームという注文住宅ブランドと、北海道内で展開するハウジングカフェという企画住宅のブランドが混在しておりますので、ロゴスホームという会社としては、26拠点ということになります。

    豊栄建設につきましては、苫小牧にも拠点がございますが、ほぼ札幌が事業の中心となっています。GALLERY HOUSEにつきましては、栃木県が事業の中心となっており、坂井建設は新潟県全域に8拠点を展開しているという状況です。

    基本的なターゲット層といたしましては、どの会社も大きな違いはございませんが、初めて土地をご購入される一次取得者と呼ばれるお客様が中心となっています。

    グループ全体で申し上げますと、建て替え、つまり土地を既に所有されているお客様の割合は約1割です。残り9割のお客様は、新たに土地を取得して住宅を建設される方々で、その9割のうち、半分弱のお客様が、弊社が保有・販売している建築条件付きの宅地をご利用いただいております。残りの方は、流通地でお客様と共に弊社の営業担当が土地を探して住宅を建設するという形をとっております。したがって、グループ全体で見ますと、土地の売上と建築条件付き宅地のお客様の割合は、3割から4割弱程度となります。

    この割合は、都市部ほど高くなる傾向にございます。地方においては、比較的容易に土地を入手できるため、土地を保有するという概念があまり一般的ではないという状況です。

    ただし、土地の販売においては、基本的に大きな利益を追求しておらず、あくまで注文住宅の受注を促進するための販売促進ツールとして位置付けております。

    取材者:初めて住宅を購入されるお客様が多い状況ということは、価格帯が比較的購入しやすい水準であるということでしょうか?

    回答者:そうです。元々の価格帯といたしましても、弊社のグラフで示しておりますように、低価格帯の住宅に特に注力していることもあり、そのような客層のお客様が多い状況です。

    当社の強みといたしましては、主に三つ掲げております。一つ目は、商品開発力です。ロゴスホームの創業の地である十勝地方は、夏は35度、冬はマイナス30度にもなる非常に寒暖差の激しいエリアです。降雪量はそれほど多くはありませんが、寒さが厳しく、夏は暑いという、非常に厳しい環境下にあります。また、北海道、特に十勝地方を含む道東地域は、全国的に見ても所得水準が比較的高くないエリアであったため、高品質高性能な住宅を、できる限り安く、適正な価格で、一人でも多くのお客様にお届けすることを念頭に置いた住宅商品開発を行ってまいりました。

    様々な工夫を凝らし、省エネ性能や耐震性などを、お客様が無理なくご購入いただける価格帯で提供できるよう、パッケージング化してきた点が強みです。

    一般的に注文住宅ビジネスにおいては、住宅総合展示場、新聞社やテレビ局などが運営している総合展示場に出展するというビジネスモデルが主流となっております。

    この総合展示場への出展には、メーカーにとって高額な借地料の支払いと、高額なモデルハウスの建設が必要となります。

    これらのモデルハウスは、1億円程度の建築費用がかかる豪華な仕様となっており、一般的な住宅とは大きく異なる仕様となっているかと存じます。各社とも立派なモデルハウスを建設しなければ、他社に見劣りしてしまうため、結果として多額の建築費用がかかることになります。耐用年数で言いますと7年をベースに減価償却の対象となり、借地料と建築費だけでも莫大なコストが発生している状況です。

    さらに、展示場を運営している事業者に対して、運営費の負担も発生いたします。週末には、集客イベントとして、キャラクターショーなどが開催されており、これらのイベントにかかる広告宣伝費の負担もメーカー側が担うことになります。その上で、各社は自社独自のSNSなどを活用し、追加の集客を図るのですが、基本的な出展費用が高額になるため、自社独自の広告宣伝活動を行うことが難しく、自社で広告宣伝活動を行ったとしても、近隣には競合他社が存在するため、自社の強みを明確に訴求することが難しいという側面もございます。その一方で、安定的な大量集客が見込めるため、各社がこぞって出展展し、営業活動を行うという状況になっています。

    しかしながら、展示場における成約率は、100組中1組程度と言われており、非常に厳しい競争環境となっています。

    逆に申し上げますと、1組のお客様が契約するということは、その出展コストを他のお客様が負担している、すなわち価格転嫁されているという構図になっているため、これがハウスメーカーの住宅価格が高止まりしている要因の一つであると言えるでしょう。

    これに対し、弊社は住宅総合展示場には出展せず、自社で店舗、具体的には賃貸の路面店舗などを活用し、お客様との打ち合わせスペースを確保するという形で小規模な出店を行っています。

    その近隣に、売却を前提とした注文住宅のモデルハウスを建設し、デジタルマーケティングによって集客を行うというビジネスモデルを基本としております。これらのモデルハウスは、半年程度で建て替えを行います。

    新しいモデルハウスが完成したら、以前のモデルハウスを売却し、新たに来場を促すという流れを確立しております。実際には、モデルハウスの展示期間が短いため、注文住宅仕様の建物を建売住宅として販売いたします。

    したがって、建売住宅としての利益をしっかりと確保することが可能です。そのため、ランニングコストを抑えることが可能となります。減価償却の必要もございません。

    店舗にかかる費用は、賃貸の路面店舗に打ち合わせスペースを設ける程度であるため、基本的にコストを抑えることができます。弊社は、これらのコスト削減分を住宅価格に反映させております。実際に各社の財務諸表をご覧いただければお分かりいただけるかと存じますが、一般的に、注文住宅の粗利率は、売上総利益で25%程度、営業利益で5%程度が業界水準と言われています。弊社の売上総利益は20%を下回っており、営業利益は5%程度です。これは、販管費を大幅に削減できているためです。

    その分、住宅価格を抑えることが可能となっております。実際の原価に大きな差はないため、弊社の住宅価格は競合他社と比較して競争力のある価格設定となっております。これは、数字が明確に示している事実であり、価格競争力において優位性を確立できていると考えております。

    高品質高性能な住宅を、よりお求めやすい価格でご提供できるという点が、弊社のビジネスモデルの大きな特徴です。さらに、弊社はDXにも積極的に取り組んでおり、集客はデジタルマーケティングによる反響営業が中心となっています。営業活動においては、インサイドセールスがまず一次的なアポイントメントを設定し、その後、営業担当、設計担当がオンラインで接客を行うケースも多く、店舗を立ち上げる際には、営業担当と現場監督がいれば、設計やコーディネーターはオンラインで対応できるため、少人数体制での新規出店が可能となります。

    これらの要因が重なり、販管費を抑えることができている点が、弊社のビジネスモデルの大きな特徴です。高品質な住宅を適正な価格でご提供することで、後発ながらも着実にエリアを拡大し、売上を成長させている点が弊社の強みです。

    しかしながら、上場後に一度、業績予想の下方修正を発表したという経緯がございますので、この点について三つの要因をご説明させていただきます。今回、下方修正を発表いたしましたが、売上高については、ほぼ変更はございません。主に利益が減少したという状況です。この下方修正に至った要因は、大きく分けて三つございます。

    一つ目は、グループ会社である豊栄建設において、集客が計画通りに進まず、業績が悪化したことによる影響で、約6億円の減益要因となりました。元々、21億円の業績見通しを立てておりましたが、9億円程度に減少したため、12億円の減益となりました。このうち、約半分の6億円が豊栄建設の業績悪化によるものです。

    残りの6億円につきましては、主に二つの要因がございます。一つは、12月末に坂井建設を取得したことに伴う費用です。坂井建設の取得にあたっては、仲介会社を通して取引を行ったため、アドバイザリー費用が発生し、この費用が4億円のうちの2億円を占めております。

    残りの2億円は、坂井建設を取得した際のPPA(パーチェス・プライス・アロケーション)の評価替えによる影響です。弊社の売上高は、完成工事高と呼ばれる請負契約に基づく売上高ですが、注文住宅は工期が比較的短く、単価もそれほど高くないため、一般的には完成基準が適用されるケースがほとんどです。

    完成基準を適用する場合、工事が未完成の状態では、未成工事支出金という棚卸資産が計上されます。この評価替えの処理において、本来、進行基準であれば、出来高に応じて利益を計上するところ、完成基準では、未完成工事支出金の簿価が売価に変更されるため、結果として、3ヶ月分の引き渡しについては、ほとんど利益が出ないという状況が発生いたします。今回、坂井建設の取得が第4四半期であったため、連結決算に取り込める期間が3ヶ月のみとなり、棚卸資産にかかる分しか売上を計上することができませんでした。

    そのため、粗利率が低下し、営業利益がマイナスとして計上されるという一過性の要因が生じました。これが、もし、より長い期間連結決算に取り込める状況であれば、このようなマイナス要因は発生しなかったと考えられます。取得の完了時期が12月であったため、連結決算に取り込める期間が3ヶ月のみとなり、結果として、営業利益がマイナスのまま連結決算に取り込まれるという一過性の要因が発生いたしました。

    これらの要因と、取得にかかる費用が合算され、4億円の営業利益を押し下げる要因となりました。ただし、これはあくまで一過性の要因であり、来期以降は、この4億円の費用は発生いたしません。また、坂井建設は、純資産が10億円、弊社の取得額が30億円であるため、差額の20億円がのれんとして計上されます。償却期間は12年を予定しており、年間1億6,000万円程度の償却費が発生いたします。しかしながら、坂井建設は、売上高が継続的に増加しており、2021年から2023年にかけても右肩上がりの成長を遂げております。

    営業利益も3億円を超えており、2024年12月期も同様の数字を見込んでいる状況です。

    実際に、受注高は売上高を上回るペースで増加しております。弊社は請負業であるため、受注時点では売上高は計上されず、契約後に一定のリードタイムを経て引き渡しが行われるため、受注残という形で計上されます。キャリーと呼ばれる弊社の受注残は、これまで3割から5割程度でしたが、坂井建設は、9割程度の受注残を抱えているという状況です。

    したがって、売上高、利益ともに、高い確実性が見込める状況です。今期、そして来期においても、堅調な業績を見込める会社であると考えております。

    これらの要素を踏まえると、来期は、少なくとも1億円から2億円程度の利益を計上できる見込みであり、今期との比較では、約6億円程度の増益を見込めるのではないかと考えております。

    取材者:今回の坂井建設の件ですが、クロージングが12月になったとのことですが、これは、クロージングが当初の予定よりも後ろ倒しになったためですか。それとも、前倒しになったために今期に計上されることになったのですか。

    回答者:後ろ倒しになったわけではございません。売主様のご意向により、当初から12月までのクロージングを希望されておりました。1月から税制改正が予定されていたこともあり、売主様は12月中のクロージングを強く希望されておりました。また、競合他社も存在したため、弊社としては、スケジュールをコントロールする余地はほとんどない状況でした。

    そのため、結果として12月にクロージングとなり、弊社の連結決算には3ヶ月分しか取り込むことができず、営業利益を押し下げる要因となってしまいました。

    もし、クロージングの時期が異なれば、営業利益を押し下げるという事態にはならなかったと思われますが、クロージング時期の調整は難しい状況でした。

    しかしながら、これは一過性の要因であり、来期は、のれん償却を含めて1億円から2億円の利益が出ると考えると、今期との比較、9億円から比較すれば6億円近くは伸びるのではないかと考えております。

    取材者:承知いたしました。期初にはこのM&Aは特に予定はなかったのですか。

    回答者:そうですね。全くなかったです。

    回答者:もう一つが、新規出店にかかる費用ということで、これも計画の前倒しをした分です。弊社は大きく中期的な成長としてエリアの拡大ということはもちろん行っているのですが、昨年は3店舗、ふじみ野店、福島店、いわき店を新規出店しました。

    これは元々予算にも入っていて、見通しの中にもあったのですが、それとは別に東海エリアで大規模に出店を進めています。これが計画にはなかった追加の分です。

    実際には今年の5月末頃から名古屋支店を新規オープンしようということで進めていて、東海エリアで次々とオープンをしていく予定で進めています。

    今まで、弊社の新規出店というのは隣接エリアを中心に拡大していきました。ですが今回、飛び地で東海エリアを一気に進出しようとしています。なぜそれをしようとしたのかというと、人の採用が上手くいったためです。

    弊社は元々北海道から本州に出てエリアを拡大していったのですが、北海道では抜群の知名度もあるので、そこまで人の採用に苦労してはいなかったのですが、本州に出ていったときは認知度も低かったので、優秀な人を採用することに苦戦していました。

    それが昨年上場した後に、他社で活躍している人からの転職が非常に増えました。上場した効果があったと思います。住宅業界を全国見渡したときに、今成長している会社は国内にはそんなにないのです。

    ある程度大きいハウスメーカーさんでも、全国展開が終わって、今は人口減少でマーケットも縮小しているので、店舗を精査している状況です。大手ハウスメーカーを含めても伸ばしているのは海外事業が要因という会社が多いと思います。

    今、国内の注文住宅業界では、なかなか上場会社で元気に全国にエリアを伸ばしているという会社が少なく、一昔前に一気に伸ばした会社はあるのですが、大体エリアの進出も終わって逆に店舗の縮小に入っているという状況です。

    何が言いたいのかというと、優秀な方は成長していく会社にいたいと思うものです。

    成長していく会社はキャリアアップの機会も生まれます。弊社は今回上場して、その中で成長し続けようとしているため、優秀な方をたくさん獲得できるチャンスが生じたというのが今の状況です。特に東海エリアで優秀な人材を大量に獲得できるという大きなチャンスがありました。

    そのようなこともあって、人の採用の先行投資と、今回は東海エリアで全く認知度がないので、これだけの大型な店舗を建設し、と人も採用しているため、広告を立ち上げないと人を遊ばせてしまうので、出店に対する広告戦略を考えているということで、実際この1億5,600万円のうち半分ぐらいは、4、5月に広告、CMなどの広告戦略で使用しようと考えています。

    それが当初の出店の予算に入っていなかったということです。ただ、どうしても人を採用してしまっているので、人の採用、特に中途採用なのですが、弊社の都合で半年ぐらい待ってもらうということは難しいので、ここで大きく投資をしないと人の獲得ができないということで踏み切ったところでした。

    取材者:承知いたしました。そうすると、ハウスメーカーさんはかなり人の採用に苦しんでいる企業が多いと思うのですが、貴社に限っては苦しんではないという点と、特に東海エリアは人材採用がうまくいっているということですか。

    回答者:苦しんではいないという点のみならず、特に東海エリアはですね、40〜50人ぐらい採用できています。

    決して引き抜き行為はしていないのですが、成長が止まった他社から人が離脱しており、そのような方を多数採用できています。弊社にとっては全く今期に予定していなかったエリアも早期に立ち上げが可能になったので、これは大きなチャンスです。その分、今期の利益は押し下げる結果となってしまいましたが、その分、来期以降の成長投資についてはしっかりできているという裏付けにもなりますので、来期以降の業績には期待をしていただきたいと思っています。

    残りは豊栄建設のところですが、これは業績が悪くなりましたということです。

    取材者:豊栄建設の業績が悪くなってしまった集客の失敗の部分に関して、リカバリーの施策や何か取り組まれていることはございますか。

    回答者:弊社はデジタルマーケティングに特化した会社です。ロゴスホームの営業戦略でいうと、創業の地であり圧倒的なトップシェアを誇る帯広以外の各エリアにおいては、特にトップシェアを取るという戦略ではありません。大体1店舗あたり50棟くらい建築可能な店舗をたくさん出していくという戦略なので、決してトップシェアを取るということではありません。北海道では一部のエリアでトップシェアを取っていくための様々な追加投資をしているのですが、基本的に本州エリアなどこれから展開するところについてはトップシェアを取るというよりも、面をどんどん広げましょうという戦略です。

    トップシェアを取らないという戦略においては、デジタルマーケティングでいうと、ある程度リスティング広告で必要な集客は確保できるので、そんなに大きな影響を受けることはないのですが、豊栄建設については札幌に特化してトップシェアをとっているので、ここのマーケティング戦略が非常に業績を左右します。

    何が起こったのかというと、昨年の6月から8月にかけて急激に来場が減ったのです。弊社はデジタルマーケティングのメインがリスティング広告なのですが、これはリスティングの運用会社に委託をしています。

    リスティングの運用会社に原因調査と報告を求めたところ、リスティングの集客には全く影響はないということでした。

    しかし、リスティング広告から弊社ホームページに来たときに資料請求や来場予約のところから離脱されているのではないか、そこから弊社に情報が届いていないのではないかという報告内容でした。ホームページに何かしらエラーが生じているからではないかという仮説のもと、ホームページの改修など様々な対策を図っていました。

    しかし、実際にはそこが影響しているのではなく、そもそもマーケティングのリスティング戦略に問題があるのではないかという仮説に至り、調査したところ、競合状況によって各ワードの入札単価が上がっていました。

    リスティング会社は弊社に対して金額と集客量で契約しているので、毎月この金額で量を最大化してくださいという契約の中で、効果のその薄いキーワードで大量集客をしていたということがわかりました。コアで効果的なキーワードが高くなっているので、薄いところに広告を打ったが、コンバージョンしないという状況だったのです。

    それに気づくのに時間がかかったため、その間に間違った様々な戦略をとってしまい、集客に穴を開けてしまったというのが昨年の6月から8月でした。対策としては、もちろんリスティング会社を変え、入札単価が高くなるアラートを自社でわかるように様々な対策を行っており、今のところは集客には戻っています。

    まだ挽回する余地はあるということで、様々な対策を講じてはいたのですが、結局補うまでは至りませんでした。第2四半期が終わった段階で、これは無理だということで下方修正を出すに至ったという経緯です。

    豊栄建設というのは規模的に言うと、大体年間300棟ぐらいを安定的にやってきた会社です。営業利益でも大体5~6億円で安定した会社です。しかし昨年、上場したということもあり、この300棟から400棟に頑張って伸ばしましょうということで、人も相当増やして臨んだ1年だったのです。そうなると当然ながら損益分岐点が上がっていて、集客が失敗したということが重なって、利益が全部なくなってしまったという状況になってしまいました。

    やはり無理は良くないということで、豊栄建設については安定利益をしっかり出すため、人員も300棟体制に戻して進めています。

    集客を失敗したことと、成長しようとしてコストをかけたというこの二つが大きな要因です。

    取材者:マーケティングのお話がございましたが、住宅展示場を作らないということで、商談数、反響数というのはどうしても他の企業に比べて少なくなってしまうのかなと思うのですが、そのようなことがあっても成約率が他社に比べて高いということなのですか。

    回答者:商談数はそんなに少なくないと思います。

    取材者:それはやはりマーケティング施策、戦略がしっかりとしているということですか。

    回答者:そうです。住宅を建築する方は、まず総合展示場に行ってみようと思うのではないでしょうか。そのときに何をするかというと、総合展示場で検索しますよね。

    総合展示場と検索すれば、当然ながら弊社はリスティング広告でロゴスホームとか豊栄建設がトップに出てくるようにしているので、総合展示場に来場しようとする方にしっかりアプローチができています。行動する前に早くスマートフォンで様々な情報収集をするということにユーザーさんは圧倒的に時間を使うので、その中では逆に言うと認知度はしっかり取れています。集客という観点、反響数という観点では右肩上がりでずっと伸びていますので、そこが少ないということはないと思います。逆に展示場の方が、コロナを機に来場数が減っているので、どこの住宅会社さんもお客さんがいないと言っています。

    取材者:坂井建設さんのように新たにM&Aで加わった会社というのは、マーケティングサイドからガラリと変わるようなイメージなのですか。

    回答者:そうですね。ただ、坂井建設さんはたまたま同じビジネスモデルで総合展示場に出展していなかったのです。なので、そういう意味ではあまり転換するということなく、弊社のDXとかデジタルマーケティングのところを導入していくことによって、さらに生産性を高くしていこうということがやりやすい会社です。

    しかし当然ながら今後M&Aをする会社によっては、総合展示場に出展している会社もあると思うので、そのようなところはコスト削減というところも含めてビジネスモデルの転換をしていきたいと思っています。

    取材者:そうしますと、M&Aの戦略としては、同じビジネスモデルというわけではなく、エリアの拡大といった部分に注力しながら検討していくようなイメージでよろしいですか。

    回答者:そうです。対象としては、地場で大体トップ3ぐらいに入るような会社です。そうなると大体規模的にも年間200~300棟ぐらいの規模になります。

    弊社で新規出店をする際は、50棟ぐらいを目安に考えているので、逆に言うとそのくらいの規模ならスピード早く立ち上げができるのですが、それ以上のシェアを獲得するのはなかなか難しいのです。それ以上のシェアを持っているところには何があるかというと、地域に根ざしたブランドというのが存在するので、そういう会社であればグループに加えていきたいと考えています。逆に50棟ぐらいの規模であれば自社の出店でできるので、そのような会社は対象としていません。そういう形で線引きをしています。

    エリアについては、特に制限はないと考えています。今回、新潟という全く携わったことのないエリアに進出したので、そのような未開のエリアであれば、ロゴスホームがそこにまた50棟ぐらいの出店をしていくということにも繋がっていきます。

    取材者:承知いたしました。そうすると、東海地方に新規出店されているのはかなり珍しいケースですね。

    回答者:今までの出店戦略からすると、既存から隣接エリアではない地域への新規出店は、はじめてのケースになります。これは、東海エリアで、優秀な人材の採用が想定外に出来たことから踏み切れたということです。

    取材者:株主還元策につきまして、方針などございましたらご教示いただけますか。

    回答者:はい。元々配当性向30~50%という方針で今年臨んでいたのですが、今回下方修正を出して減益になるということで当然ながら減配も発表したという経緯です。今後も成長投資は続けていきますし、特にM&Aについては業績を大きく歪めてしまうなと思っています。

    取得するタイミングによってもどうしてもPPAの影響が出てきてしまいますし、あとはどうしても仲介会社さんが入ってくると取得コストが高くなります。もちろん株主還元はしていかなければいけないですが、とは言っても安定しないのは株主の方にとってマイナス要因だと思っています。

    安定配当ができるような指標などを導入する必要があるのではないかというのは今議論をしているところです。

    場合によってはDOEを採用するとか、安定的に配当するというのが重要ではないかと思っています。

    取材者:成長投資との兼ね合いを見ながらということですね。

    回答者:はい。

    取材者:金利の上昇につきまして貴社にとって影響を受けるのはどのようなものと考えられますか。

    回答者:影響が全くないかと言われると、影響はあると思います。ただ、住宅ローン金利が上がったからといって、家を建てる人が一切いなくなるかというとそうではありません。しかし当然ながら住宅にかける金額というのは住宅ローンで借りられる限度額があるので、どうしても少なくなってくると思います。

    弊社のポジショニングとしては、中価格帯よりも下のところをターゲットにしているので、住宅マーケットの中の十分コアなターゲット層は取れているというところがあります。より競合が激しくなるものの、金利が上昇したからといって顧客のターゲットから外れるということはないというのが弊社の見解です。

    取材者:むしろ低価格で高品質という部分での強みを持たれているので、逆にチャンスという見方もできるということですか。

    回答者:そうです。上の価格帯のところから降りてくるということも考えられます。

  • 常務取締役経理部部長 岩永武也様

取材アーカイブ

  • CP&X

    決算概要

    前期(2025年5月期)の決算は、売上高が対前年同期比14.4%増の36,269百万円となったものの、営業利益は同65.0%減の487百万円、純利益は同77.6%減の199百万円と、増収減益での着地となった。この大幅な減益の主な要因は、坂井建設の連結取込が3か月と短く、M&Aに伴う棚卸資産の会計上の評価替えと多額の仲介コスト計上により赤字の取込となったこと、成長投資として東海エリアへ新規出店計画の前倒しによる先行コスト、および豊栄建設におけるWebマーケティング運用変更に起因する集客トラブルの一過性要因であった。期中の業績予想修正に対しては、粗利および土地販売等の収益の若干の上振れにより、予算通りかやや上振れの着地となっている。

     

    セグメント別または事業別の増減要因

    同社は単一セグメントだが、売上高の伸びに対し利益の伸びが鈍化している要因として、中核会社であるロゴスホームにおける先行投資の影響が継続的に入っていることが挙げられる。新規エリアへの出店に伴う人員採用や広告宣伝費などの販管費が先行して計上されている状況である。新店舗が安定的に利益を創出する体制となるまでには、2年から3年程度の期間を見込んでいる。

     

    主要KPIの進捗と変化

    同社が最重要KPIと位置付けているのは引渡棟数であり、これを年間で伸ばすことに注力している。棟数増加の戦略は「新規エリアの拡大」と「既存エリアでのシェア向上」の二軸で構成され、現状はエリア拡大に重きが置かれている。特に東海エリアへの初進出となるロゴスホーム名古屋は、年間引渡棟数が100棟以上を想定した店舗であるが、オープンしてから数か月の実績は、当初想定の2倍近い受注が獲得できており、初動は成功であると認識している。

     

    季節性・一過性要因の有無と影響

    前期(2025年5月期)の業績には、豊栄建設における集客トラブルによる収益の穴と、坂井建設のM&Aにおける会計処理(棚卸資産の評価替え)および仲介コスト計上、計画前倒しによる東海エリア進出の先行コストという3つの大きな一過性要因が影響していた。今期(2026年5月期)の業績予想においては、これらの前期に発生した一過性のマイナス要因が解消されたことが、大幅な増収増益を見込む最大の背景である。

     

    通期見通しと進捗率・達成可能性

    今期(2026年5月期)の通期業績予想は、前期の業績に影響を与えた一過性要因の解消を主因として、売上高46,815百万円(前年同期比29.1%増)、営業利益1,500百万円(同208.0%増)、経常利益1,392百万円(同244.2%増)、そして親会社に帰属する当期純利益826百万円(同313.8%増)と、大幅な増収増益を見込んでいる。また、成長戦略である新規エリア拡大は計画通り順調に進捗しており、特に名古屋店の受注が好調であることから、その裏付けとなっている。ただし、売上高の増加に対して利益の伸びが鈍化しているのは、新店舗開設に伴う先行投資コストが引き続き重なっているためである。

     

    トピックス

    直近のトピックスとしては、2025年5月末の名古屋店オープンを皮切りに、東海エリアへの初進出を果たし、続いて四日市店(三重県)、大垣店(岐阜県)のオープンを控えており、さらに、来期以降は、長野や新潟といったエリアも含めて新店を計画中である。

  • Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?

    A:当社の成長戦略では、引渡棟数を年間で伸ばすことに注力しており、その方法は新規エリアの拡大と既存エリアでのシェア向上の二軸で構成されています。現状、全体的にはエリア拡大に重きを置いています。

    エリア拡大については、計画通り順調に進捗しており、2025年5月末の名古屋店オープンを皮切りに、東海エリアへの初進出を果たしました。名古屋店は、年間100棟受注を目標としていましたが、現在のところ想定の2倍近い受注が得られており、非常に好調で成功であると認識しています。今後は、来月に東海エリアの新店舗として四日市店をオープンし、そして大垣(岐阜県)と、引き続き東海エリアの拡大に注力する計画です。来期以降は、長野や新潟といったエリアも含めて新店を計画中です。

    既存エリアでのシェア拡大も並行して行っており、北海道の旭川や千歳といった既存店のリニューアルに投資しています。また、これらの主要戦略に加え、M&Aも重要な戦略の一つとしています。

    直近のトピックスとしては、四日市店のオープンを控えている他、個人投資家向けの説明会など、個人向けのIR活動を強化していく考えです。特に上場後の業績予想の修正により失われた株主様からの信頼回復に努めるため、コミュニケーションの機会を増やし、直接ご説明していく方針です。

     

    Q:成長戦略のポイントについて、前提条件等での変化とその影響等をご説明ください。

    A:エリアの拡大や出店の拡大といった成長戦略は計画通り順調に進捗しています。

    特に東海エリアへの初進出である名古屋店については、年間100棟の受注を目標としていましたが、現在のペースでは想定の2倍近い受注が取れており、非常に好調に推移しています。これは、今後の東海エリア拡大において、四日市店などにも同様の結果が出せるよう準備を進めている状況です。

    しかし、注文住宅は新規オープン後に受注から引き渡しまでのリードタイム一定程度かかり、複数の新店舗が立て続けにオープンしているため、人件費や広告費などの販管費といった先行コストが重なり、利益として出てくるまでに時間を要しています。具体的には、新店が12か月分の売上が計上できるようになり、しっかりと利益を出す状態になるまでには、2年から3年程度の期間を見込んでいます。

     

    Q:通期予想の戦略と施策についてご説明ください。

    A:通期予想で大幅な増収増益を見込んでいる背景には、上記で説明した前期の業績に影響を与えた一過性の要因が解消されたことが大きく影響しています。また、前期以前に新規出店した店舗が順次軌道に乗ってきているほか、坂井建設が前期は連結上3か月しか反映されていませんが、今期は年間通して業績が寄与することになることも増収増益の一因となっております。

    しかし、売上高の伸びに比べて利益の伸びが鈍化しているのは、ロゴスホームにおける新規出店が今期も複数重なっていることから、営業利益以下に関しては、引き続き先行投資の影響を受けているためです。新店舗のオープンに伴う人員採用や販管費などのコストが先行するため、売上の伸びほど利益がまだついてきていない状況です。

     

    Q:受注・競合状況はいかがでしょうか?

    A:住宅市況においては、2025年4月施行の建築基準法改正により、省エネルギー基準適合の義務化、4号特例の縮小等の法改正が行われ、これに伴い木造戸建て2階建てや延べ面積200㎡超の住宅について構造計算が義務化されました。これにより建築確認申請の審査要件が大幅に増加し、審査期間の長期化が継続しております。この影響を受け、2025年6月から8月までの新設住宅着工戸数(持家)は前年同期比12.7%となり、低調に推移しています。当社グループでは制度改正や審査遅延の影響を踏まえ、設計体制の強化や申請資料の事前精査、施工スケジュールの見直し等を通じ、安定的な住宅供給体制の整備を進めた結果、受注及び引渡のいずれも前年比では大幅に伸長しています。

    また、競合状況として、注文住宅市場全体については、人口動態に比例するため、国内マーケットは長期的に縮小していくことは明らかです。大手ハウスメーカーは既に全国エリアをカバーし国内における成長期は過ぎていることから、今は取捨選択や統廃合を行いながら集約する傾向があり、全体的に縮小傾向にあるのが現状です。

    一方で、当社は後発ながらエリア拡大の余地が十分にあり、市場が縮小傾向にある中でも全体の成長が十分に見込める状況です。この成長している状況こそが、他社からの優秀な人材獲得に繋がり、人の採用も含めた好循環を生んでいると考えています。

     

    Q:M&A、業務提携、事業売却などの実施または検討状況と、それに伴う影響についてご説明ください。

    A:M&Aは、当社の重要な戦略の一つです。しかし、M&Aに関する検討状況については、インサイダー情報となるため、公には申し上げられません。

    前期(2025年5月期)の業績に影響を与えた一過性の要因として、坂井建設のM&Aがあります。このM&Aは12月末に実施されましたが、連結への取り込み期間が短く、会計基準による棚卸資産の評価替えなどにより、年間を通じた業績寄与がならず、さらにはM&Aの仲介コストも多額に計上されたため、連結上、一時的に大きな利益のマイナスが計上されることになり、これが前期に大幅な下方修正を行った一因となっています。

     

    Q:株主還元の方針をご説明ください。

    A:当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の重要施策の一つと位置づけております。これまで、事業収益をベースに、将来の事業展開に必要な内部留保を確保しつつ、配当性向30%~50%の株主還元を基本方針としておりました。しかし、配当性向基準は当期純利益に強く依存しており、前期のように業績が大きく変動する局面においては、業績の変動によって配当額が上下しやすい構造になります。当社は、成長戦略としてM&Aと新規出店拡大を掲げており、M&Aについては、その取得時期や会社規模により、取得コストやPPA(Purchase Price Allocation)による評価替えの影響等が、取得年度の業績に重要な変動が生じる可能性があります。また、新規出店においても、収益が計上されるまでのリードタイムがあることに加え、人件費や広告費といった費用が先行するため、開設時期の遅延などがあった場合には、当期の業績に一時的な影響を及ぼす可能性があります。加えて、成長投資を継続的に推進するうえでは、M&Aに係る調達資金の返済原資の確保や、新規出店に伴う運転資金の充実など、内部留保の安定的な確保が必要となる局面も想定されます。

    以上の背景を踏まえて、配当方針について、引き続き株主還元を重視しながらも、各期の経営成績・財政状態・将来の事業展開等を総合的に勘案したうえで、DOE(株主資本配当率)5%を下限とし、配当性向30%を目標とする方針へ変更することで、株主の皆様へ持続的な業績拡大と安定的な利益還元の両立を目指していきます。

  • 取材者:まず始めに、少し前の話にはなりますが、2025年5月期の決算状況についてお伺いできますか。2025年5月期は、売上高が36,269百万円で前年同期比14.4%の増加、営業利益が487百万円で前年同期比65.0%のマイナス、経常利益が404百万円で前年同期比70.2%のマイナス、親会社株主に帰属する当期純利益が199百万円で前年同期比77.6%の減少と、増収減益での着地となりました。こちらは、期中の業績予想修正に対しては上振れての着地となりましたが、この増減の要因についてご説明いただけますか。

     

    回答者:期末の状況についてご説明いたします。期末の着地につきましては、概ね予算通りではございました。その前に、2回も下方修正しておりますので、再度精査したなかで2回目の業績予想の修正を出しております。結果、引渡棟数はほぼ想定通りの着地となりました。また、売上高として土地の販売やその他の収益が少しずつ上振れしたことに加え、販管費および一般管理費の抑制により各段階損益が予想を上回る結果となり、上方修正という形になりました。2回目の業績予想の修正の段階で、そもそも利益の絶対値が小さくなっていたという背景もございます

     

    取材者:前回お話をさせていただいた際に、今期、つまり2025年5月期以降は、エリアの拡大や出店の拡大といったところを大いに進めていくというお話があったかと思いますが、こちらの進捗状況はいかがですか。

     

    回答者:はい、計画通り順調に進捗しております。まずは5月末に名古屋をオープンし、その後、旭川、千歳、中標津といった既存店のリニューアルを進めております。計画通り投資を進めており、来月には四日市店を東海エリアの新店舗としてオープンします。このように、予定通りしっかりと進めております。特に名古屋については、東海エリアで初進出ということで、弊社にとってもかなりの投資を行い、東海では飛び地でのオープンとなりました。まず、ロゴスホーム名古屋は年間100棟以上の規模(引き渡しですとリードタイムが長くなりますので受注ベース)を想定しています。年間100棟ということは、12で割ると月平均約8棟ですが、今のペースではかなり上振れており、6月、7月、8月と順調に進捗しております。予算の2倍とは申し上げませんが、想定の1.5倍以上の受注が取れており、非常に好調で、これは成功であると認識しております。今後は、四日市においても同様の結果が出せるよう、しっかりと準備を進めているところです。

    取材者:そうしますと、引き続き東海エリアの拡大に注力していくという見方でよろしいですか。

     

    回答者:はい、エリアとしては東海エリアの拡大です。弊社では「東海」という言葉を広い意味で使っておりますが、名古屋(愛知県)の次は三重で、その次が大垣(岐阜県)と計画しております。来期以降は、長野や新潟といったエリアも含めて、新店を計画中です。

     

    取材者:新店舗は今後、今期中にこの後に決まっているところはまだないようなイメージですか。

     

    回答者:今期は既に決まっている分です。来月四日市店がオープンし、来年5月を目途に大垣店(岐阜県)のオープン準備が実際に決まって進んでいる状況です。したがって、来期に向けて、次はどこを展開していくかというところを進めているというような形でございます。

     

    取材者:前期比で人の採用数の推移はいかがですか。

     

    回答者:人の採用数もかなり伸びていると思います。今すぐ正確なパーセンテージはお伝えできませんが、そういう意味では、先行投資となっております。例えば今回名古屋が5月末にオープンしましたが、そこから初めて集客をしてお客様と商談し、まずは契約に至ります。その後、着工までの仕様決めや間取り決めといった打ち合わせに2か月ほど、そこから着工して3~4か月の工期を経て、初めて引き渡しとなります。オープンから初めての引き渡しまで、早くても7~9か月程度かかりますので、その間は人件費や広告費などの販管費といったコストのみが先行しますので、第1四半期もそうですが、販管費が非常に増えているのは、そういった先行コストが重なっているからという状況です。ただ、トップライン、つまり売上は昨年もそうですが、伸びてきておりますので、この先行投資したコストに見合う利益は、時間が経過してくればしっかりと追いついてくる、必ず出てくるものと認識しております。しかし、複数の新店舗が立て続けにオープンしているため、その先行コストが重なってかかっている分、利益として出てくるまでには時間がかかるということになります。新店がしっかりと利益を出す状態になるには、説明資料にも記載しておりますが、やはり2年から3年ぐらいの期間を要してしまいます。

     

    取材者:そうしますと、人の採用については計画通り、順調に進んでいるということでしょうか。

     

    回答者:はい、そのような状況です。新店舗の展開を継続するために必要な人員は確保できていると考えております。

     

    取材者:他社では採用に苦戦されている企業もいらっしゃる中で、貴社が順調に採用を進められた要因や、何か採用戦略がございましたら教えていただけますか。

     

    回答者:どこも今だとエージェントやスカウトといった手法を多く利用されているかと思いますが、弊社はやはり人の紹介がかなり多いと感じています。人が働く際、成長している企業で働きたいという思いがあるかと存じます。弊社の市場である注文住宅市場は、人口動態に比例するため、今後国内マーケットが成長するかというと、長期的に縮小していくことは明らかです。大手ハウスメーカーは既に全国エリアをカバーしており、今は取捨選択や統廃合を行いながら、主要な拠点を残して縮小傾向にあるというのも事実だと思います。一方で弊社は後発ながら、まだまだエリア拡大の余地があり、伸びている状況です。やはり、縮小傾向にある企業と伸びている企業とでは全く異なります。また、弊社は上場しており、新規上場した住宅専門会社でこれだけエリアを伸ばしている企業は全国を見渡してもそう多くはありません。そのため、他社からの転職ニーズが非常に高く、優秀な人材を獲得できているのだと考えております。つまり、成長するということが、人の採用も含めて好循環を生んでいる状況にあると認識しております。

     

    取材者:成長といったワードがあった中で、その他に何か主要なKPI、あるいは重要視している指標などございましたら教えていただけますか。

     

    回答者:弊社は、本当に引渡棟数が一番重要と考えております。この棟数を年間でどれだけ伸ばせるかというところに注力しております。棟数を伸ばす方法は、新規エリアを広げるか、既存エリアでのシェアを上げるかの2つしかございません。弊社は現在、全体的にはエリア拡大の方に重きを置いております。ただし、既存エリアでのシェア拡大を全く行っていないわけではなく、個別で言えば北海道の旭川や千歳といった既存店のリニューアルを行うなど、既存エリアのシェア拡大にも投資をしております。ただ、東海エリアの新店を最優先に考えています。あとはプラスアルファでM&Aも重要な戦略の一つです。

     

    取材者:M&Aまたは業務提携に関しまして、何か実施の有無や検討状況がございましたら、お答えできる範囲で教えていただけますか。

     

    回答者:M&Aについてはインサイダー情報となりますので、「検討しています」ということも、仮に検討していても公には申し上げられないというところです。

     

    取材者:それでは、昨期、2025年5月期につきまして、業績に影響を与えたような一過性の要因や、季節性、外的要因などございましたら教えていただけますか。

     

    回答者:はい、こちらは3点、開示説明書類などでもお伝えしておりますが、1点目が坂井建設のM&Aです。これは12月末にM&Aを実施いたしました。今回の決算では、弊社の連結への取り込みは、第3四半期で期首の貸借対照表(BS)を合算し、損益計算書(PL)については第4四半期のみを取り込んでおります。M&Aをする際に、受入資産の資産負債の時価評価替えが必要となり、PPAを行う必要があります。PPAは、M&Aによって取得した坂井建設の識別可能な資産及び負債を時価評価し、当社の財務諸表に反映する手続きで、会社が保有する棚卸資産なども含め、時価評価をすることが原則になります。棚卸資産は、あくまで販売目的で所有しているものであり、時価相当額は、簡単に説明すると、売価から買収後に発生が見込まれるコストと買収後における当社グループが得られる合理的な利益額を控除して算定することになります。裏を返すと、M&A時点の坂井建設の棚卸資産の簿価にM&A前に得ている合理的な利益額を加算して算定した金額が、棚卸資産の時価相当額になります。坂井建設は注文住宅の販売・建築が主要な事業であり、M&A時点においては、すでに多くの受注残高を有していることから、このうちM&A後に引渡しする物件の一部については、M&A前で得ていたと想定される利益相当額を加味して、時価の算定を行います。よって、PPAにより、連結上の棚卸資産が増加し、当該増加分がM&A後に費用化されることにより、簿価で引き継ぐ場合と比較して、営業利益を押し下げる効果が生じます。注文住宅の受注・着工から完成までの期間は概ね数か月程度であることから、この会計処理の影響は、M&A時点から引渡までの数か月程度発生します。従いまして、2025年5月期の連結決算には影響を及ぼすものの、2026年5月期以降への損益の影響は限定的であると考えております。今回は、株式を取得したタイミングが12月であり、前期の連結への取込期間が3ヶ月であったことから、連結上で営業利益を押し下げる結果となりました。仮に連結への取込期間が1年間あれば、PPAの影響を考慮しても、営業利益の押し上げを見込めたのですが、M&Aの交渉には競合先もいて、自社の都合に合わせて取得時期をコントロールすることはできないものです。それに加えて、今回は大手M&A仲介会社からの紹介であるため、多額のM&Aの取得にかかるアドバイザリー報酬やDDに関するコストが発生しております。これが、昨年度に大幅な下方修正を行った一因となっております。

    2点目は札幌の豊栄建設という会社の件です。豊栄建設は年間約300戸を手掛ける会社なのですが、去年の2024年6月の第1四半期のところで、集客に大きなトラブルが生じてしまいました。主にWebマーケティングを行っておりますが、分かりやすく申し上げますと、様々な広告を打っているにもかかわらず、来場が突然来なくなったという事象に見舞われました。結果として、来場が来なくなった原因として、Webマーケティングを委託していた会社の運用が変更されていたことに気付けず、その対応が遅くなったことから、3か月間ほど集客に穴が空いてしまいました。この期間は、当期の引渡しを受注する非常に重要な時期であり、その後に挽回しようと努めましたが、穴が埋められず、これもまた一過性の要因となりました。現在は、委託先を変更し、運営・管理方法を見直すなどにより、集客は問題なくできております。豊栄建設は長年札幌で安定的にナンバー1、2の棟数シェアを持ち、年間300棟程度で安定して500~700百万円程度の利益を出している会社でした。しかし、上場した年でもあったため、「同じ札幌とはいえ、もっと棟数シェアを伸ばして成長していこう」という方針のもと、400棟を目指して人員を増やし、固定費を上げて400棟に対応できる体制を望んでいた矢先に、集客が大きくトラブルに見舞われてしまったという状況でした。これがダブルパンチとなり、結果として当期が赤字となってしまったという形でございます。現在は、この1年の間に集客を回復させたということもありますが、元々の300棟の体制まで一度戻しましょうということで、人員配置を含めてグループ会社への移籍などにより人員を削減し、300棟でしっかりと利益が出る体制を構築し今期は臨んでおりますので、去年の赤字になったという事象は一過性であり、当期は利益体質に戻せると認識しています。

    3点目が東海エリアへの計画前倒しによる出店になります。今年の5月末頃に愛知県名古屋市の新規出店をいたしました。当社の通常の新規出店は、コンビニ跡地のような貸テナントを改修した店舗を構え、近隣に売却型のモデルハウスを建築するスタイルでしたが、今回の出店は、北海道クラシアムのようなショールームと宿泊体験型のモデルハウス3棟による自社展示場になります。従来のスタイルでは、1店舗あたり年間引渡50棟程度を想定したキャパでしたが、今後、重点的に出店していく愛知・岐阜・三重などの東海エリアは、それぞれのマーケット規模が大きいため、小型店舗を複数箇所に構えるより、大型店舗として集約することで、より生産性が高く、1店舗あたり100棟以上を見込める形での出店を想定しています。今までの新規出店新は、既存店と準備の過程で人が行き来しながら行っているため、基本的には隣接エリアに対して行ってきました。今回の名古屋への新規出店は、どの既存店からも離れており、いわゆる飛び地での出店になります。なぜ、既存店から離れたエリアに新規出店をすることになったのかというと、それは、人材の採用が理由になります。新規出店を続けていくためには、エリアや店舗責任者などの優秀な人材の採用が必要不可欠です。今回、東海地方において、他社で活躍していた優秀な人材を大量に採用することができたことが、計画を前倒した理由になります。東海エリアは、将来的には進出することを計画していましたが、もともと当期中の計画にはありませんでした。しかし良い人材を大量に採用できる機会はめったにありませんので、業績修正とはなってしまいますが、成長へ投資しようという判断となりました。

     

    取材者:そうしますと、今期の業績予想で大幅な増収増益を出されているといった部分については、そういった一過性の要因が解消されたことがかなり影響しているという認識でよろしいですか。

     

    回答者:はい、その通りです。ただ、トップラインに比べて利益の伸びが鈍化しているところは、ロゴスホームにおける新規出店拡大に伴う先行投資がラップして重なっている影響で、しばらくは売上の伸びほど利益がまだついてきてこないという状況は続く見込みです。

     

    取材者:続きまして、株主還元の方針について変更などございましたら教えていただけますか。

     

    回答者:はい、こちらは既に公表しているのですが、元々配当性向30%から50%の株主還元を基本方針としておりました。今後も成長戦略としてM&Aと新規出店拡大を掲げており、M&Aについてはその取得時期や会社規模により、取得コストやPPAによる評価替えの影響等が、取得年度の業績に重要な変動が生じる可能性がございます。また、新規出店においても、収益が計上されるまでのリードタイムがあることに加え、人件費や広告費といった費用が先行するため、開設時期の遅延などがあった場合には、当期の業績に一時的な影響を及ぼす可能性がございます。従来の配当方針である配当性向基準は当期純利益に強く依存しており、業績の変動によって配当額が上下しやすい構造となっていることから、株価にも影響を及ぼす一因になると認識しております。加えて、成長投資を継続的に推進するうえでは、M&Aに係る調達資金の返済原資の確保や、新規出店に伴う運転資金の充実など、内部留保の安定的な確保が必要となる局面も想定されます。このような背景を踏まえ、当社は今後の配当方針について、引き続き株主還元を重視しながらも、各期の経営成績・財政状態・将来の事業展開等を総合的に勘案したうえで、DOE5%を下限とし、配当性向30%を目標とする方針へと変更いたししました。

     

    取材者:最後に、足元の状況につきまして、ニュースリリースやトピックスなどございましたら教えていただけますか。

     

    回答者:弊社では都度プレスリリースを出しておりますので、そちらの通りではございますが、今足元では、先ほどお話した四日市店のオープンが控えております。直近のトピックスと申し上げますと、まずはそれが該当するかと思います。その他にも、今年は個人投資家説明会など、個人向けのIR活動を強化していこうと考えております。昨年上場して1年目ということで、弊社も手探りで様々なIR活動を進めていました。ようやく一巡して一通り慣れてきたという状況であります。現在の弊社の時価総額を考えると、機関投資家よりも個人投資家の割合が圧倒的に多い状況であることから、今年は個人投資家への各種IR活動を強化したいと考えています。直近では、湘南投資勉強会様の方で、10月26日にリアル開催(対面)でのIRセミナーを開催させていただきます。その他のタイミングでも、個人投資家への説明会を実施していきたいと考えております。弊社といたしましては、昨年度上場初年度の4回の決算発表のうち3回も業績予想の修正を行っており、間違いなく株主の方々からの信頼を失う形になってしまったことを反省しており、まずは株主の方々の信頼回復に努めなければならないと認識しております。業績を上げることは言うまでもありませんが、IR活動としても、コミュニケーションの機会をより多くとり、しっかりと直接にご説明していくことで、少しでも早い信頼回復をしていきたいと考えているところです。

  • 常務取締役 経理部部長 岩永 武也 様

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