
(株)タウンズ
東証STD 197A
決算:6月末日
20251121
CP&X
【2026年6月期1Q】
決算概要

新型コロナの流行規模が前年同期を下回ったこと、並びに、市中在庫の消化局面が当第1四半期末頃まで継続したことから、当第1四半期の売上高は前年同期比63.1%減の2,368百万円となりました。
また、売上高の大幅な減少により、営業利益は前年同期比85.4%減、四半期純利益は同86.7%減となりました。各段階損益率も前年同期を下回る結果となっています。
なお、各製品の原価構造に大きな変化はありませんが、セールスミックス要因により各段階利益率は25年6月期の通期実績よりも悪化しております。具体的には、原価率の低い(粗利率の高い)新型コロナ/インフルエンザのコンボキットが、市中在庫の消化局面が続いたことにより売上低調となったことから、全体に占める同製品の売上比率が下がりました。
セグメント別または事業別の増減要因

新型コロナ単品検査キット、インフルエンザ検査キットについては、流行規模が前年同期を下回ったこと、並びに、コンボキットについては、市中在庫の消化局面が当第1四半期末頃まで継続したことから、売上減の主因となっています。
上記のとおり市場規模は想定および前年同期を下回る格好となりましたが、当第1四半期における主要製品の市場シェアに関しては、インフルエンザ、新型コロナ、アデノウィルスなどの製品において引き続き首位を堅持しています。なおコンボキットにおいては25年6月期の通期実績シェアが21%に対して、当第1四半期においては19%と小幅に下落しており、改良品の市場投入が待たれる状態です。
季節性・一過性要因の有無と影響
2025年8月前半に第13波が到来したものの、前年同期の第11波と比べ流行規模は低位にとどまり、アデノウィルスを除く抗原検査キット市場全体が前年同期比で縮小しました。

企業名
上場市場 証券コード
決算日
取材アーカイブ
CP&X
決算概要
2025年6月期の決算は増収増益であった。売上高は18,627百万円(前期比1.0%増)、営業利益は8,265百万円(同2.9%増)、経常利益は8,219百万円(同4.8%増)、当期純利益は6,315百万円(同9.4%増)であった。新型コロナウイルスとインフルエンザの流行水準が前年比で大きく下振れしたという厳しい外部環境下で、市場シェアを高めることで増収増益を達成した。利幅の高い製品(新型コロナ単品検査キットと新型コロナ/インフルエンザコンボ検査キット)の売上構成比が高まったことが、利益段階の損益に直結した要因である。
セグメント別または事業別の増減要因
前期におけるインフルエンザキットの売上構成比は22.2%であったが、今期は17.8%に低下した。その一方で、利益率の高い新型コロナ/インフルエンザコンボキットの構成比は34.6%から42.5%に増加した。この構成比の変化が利益の増加に直接的な影響を与えた。
主要KPIの進捗と変化
当社は、自社の指標として売上や各段階利益、マージンのほか、製品別の売上構成比、在庫水準などを追っている。外部指標としては、市場シェア、日次の感染者数推計値や、卸売業者から病院への製品の流れを示す「消化数」を重視している。これは、当社の売上計上基準は当社から卸売業者への出荷ベースだが、卸業者から病院へと消化されなければ次の受注につながらないためである。
通期見通しと進捗率・達成可能性
2026年6月期の業績予想は、売上高20,769百万円(前期比11.5%増)、営業利益8,323百万円(同0.7%増)、経常利益8,143百万円(同0.9%減)、当期純利益8,613百万円(同36.4%増)である。市場規模は2024年度の約7,500万テストと2025年度の約5,700万テストの中間あたりへと平常化するものと想定している。市場シェアは2025年6月期とおおむね横ばいを想定し、製品単価は数パーセント程度の下落を想定しており、着実に達成可能な保守的な水準である。
トピックス
株主還元では、2025年6月期の配当28円を下限とする累進配当を導入し、配当金の下方硬直性をコミットした。さらに、株価が割安と判断した局面では自社株買いを行う意向も示した。中期経営計画を8月20日に公表し、新領域への進出も含む4つの主要施策にすでに取り組んでいる。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?
A:当社の成長戦略は、中期経営計画に基づき、POCT(Point of Care Testing)の進化・拡充、新たな診断技術の導入、データ活用基盤の構築、経営基盤の強化という4つの主要施策にすでに着手しております。新領域への進出については、自社ですべての研究開発を完結させるのではなく、次世代技術を持つ外部のスタートアップへの投資を基本方針としています。これには、呼吸器感染症以外の感染症や慢性疾患領域、発症前の予測マーカー、治療方針策定のためのコンパニオン診断といった、当社にとって新たな分野への進出が含まれます。これまでも10社以上のシード/アーリーステージのスタートアップに少額出資を行い、技術のシーズに投資するスタンスを取ってきました。今後も、自社にない技術を取り込むための戦略的アライアンスや資本業務提携を推進していく方針です。現在、パイプラインのショートリストとして20〜30社を常に検討しており、中期経営計画と照らし合わせて優先度の高い案件を精査しています。これらの新領域からの売上は、今回の中期経営計画期間においては終盤にわずかに貢献する程度に限定的であると見込んでいますが、10年といったより長期的な視点で見れば、既存領域の売上を逆転するほどのポテンシャルがあると考えています。
Q:中期経営計画の内容や進捗状況等をご説明ください。
A:中期経営計画を2025年8月20に開示いたしました。
POCTの進化・拡充、新たな診断技術の導入、データ活用基盤の構築、経営基盤の強化という4つの主要施策が盛り込まれております。計画の最終年度(5年後)は、売上目標として300億円を掲げており、その一部を新領域が担うことを想定しています。新領域の売上貢献は、製品化に時間がかかるため、今回の中期経営計画期間においては終盤に限定的となると見ていますが、10年のスパンでは既存領域を逆転するほどのポテンシャルがあると考えています。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:当社の株主還元方針として、今回から累進配当を導入いたしました。感染症領域という事業の性質上、業績のボラティリティが懸念されるため、配当金額に下方硬直性の高い方針を掲げることが、投資家の皆様の安心につながると判断しました。これにより、2026年6月期以降の配当は、2025年6月期の28円を下限とし、今後上がることはあっても下がることはないとコミットさせていただきます。当社の資金繰りを精査した結果、今後の成長戦略に必要な投資力を確保しつつも、この配当額は維持できると判断しております。また、株価が割安な局面では、自社株買いを実施する意向もございます。自社株買いの使途については今後明確にする予定です。
取材者:まず初めに、2025年6月期の決算状況についてお伺いします。売上高は18,627百万円(前期比1.0%増)、営業利益は8,265百万円(同2.9%増)、経常利益は8,219百万円(同4.8%増)、当期純利益は6,315百万円(同9.4%増)でした。売上高と営業利益は、当初の業績予想から若干下回る着地でしたが、前期と比較して増収増益を達成された要因についてご説明いただけますか。
回答者:2025年6月期の状況につきましては、外部環境としては非常に厳しい状況でした。新型コロナウイルスとインフルエンザの流行水準が、両方とも前年比で大きく下振れしました。その中で、当社は市場シェアを高めることでこの逆風に抗い、一定の数字で着地することができました。ただし、流行水準の下振れを補うほどには至らず、当初の業績予想には売上・利益ともに若干未達となりました。前期との比較で増収増益を達成できたのは、シェアを大きく伸ばしたことによります。特に利益面では、利幅の高い製品(新型コロナ単品検査キットと新型コロナ/インフルエンザコンボ検査キット)の売上構成比が高まったことが要因です。前期はインフルエンザキットの売上構成比が22.2%でしたが、今期は17.8%に低下し、その代わりに利益率の高い新型コロナ/インフルエンザコンボキットの構成比が34.6%から42.5%に増加しました。この構成比の変化が、利益段階の損益に直結しました。
取材者:市場シェアを高めることができた要因はどういった点でしたか。
回答者:要因は大きく二つあります。まず一つ目は、在庫政策による部分が大きいと考えています。2024年6月期は、当社においても約半年間にわたり出荷調整が発生し、流行期に垂直的に立ち上がった需要に必ずしも全て応えることができませんでした。これは、当社の生産能力に限界がある中で、流行開始時期に需要が殺到するため、閑散期を経て豊富な在庫を有していた第1四半期は対応できたものの第1四半期末には在庫水準が大幅に低下し、第2四半期や第3四半期は、その期間中に生産した分をそのまま出荷せざるを得ず、需要に対して売上が限定的でした。その間に、特に海外メーカーなどがシェアを伸ばしました。
一方、2025年6月期は、毎月末に一定以上の在庫水準を確保することを目指し、閑散期も手を緩めずに一貫して生産を継続しました。これにより、需要が急増してもそれに応えられる在庫を常に一定程度持つ状態を維持し、在庫政策的に機会損失を最小化することでシェアを拡大することができました。
二つ目は、当社の営業体制、販売体制によるものです。従来から、卸売業者やクリニックとの関係性を強く維持してきましたが、特に卸売業者との関係が強化されました。前期は出荷調整がありましたが、今期は在庫水準をしっかり高め、スズケン様のご要望にも応えられる状態を一年通して維持しました。この「供給責任をしっかり果たせるメーカー」という姿勢が卸売業者に評価いただきました。これは、もともと当社製品の品質に対する高い信頼に加えて、安定した供給能力が評価され、関係がより一層深まった結果、それがシェア拡大につながったものです。また、2025年6月期からロシュ様との販売提携も開始しました。在庫をしっかり確保して流行に備えたことと、それを販売する体制をさらに強化したことで、スズケン様との関係も一層強まったため、シェアが伸びたという背景があります。
取材者:そのような在庫量を踏まえて、新工場の稼働はどのような影響をもたらしますか。
回答者:新工場が稼働すると、月間の生産能力が大きく向上します。これにより、現在は在庫廃棄のリスクを取りながら閑散期に作り溜めを行っている状況ですが、より効率的に生産を行いながら在庫廃棄リスクを小さめることが出来ると考えられます。結果として、在庫政策や廃棄損失を含め、通年でのより効率的な生産体制を構築し、全体最適化を図ることが可能になります。
取材者:その他に、主要なKPIや重要視している指標はございますか。
回答者:基本的には、当社では売上高や各段階利益、マージンなどのほか、製品別の売上構成比、在庫水準などを自社の指標として追っています。外部指標としては、市場シェア、定点観測のデータはもちろん、モデルナ様のサイトで公開されている感染者数の推計値も確認しています。これは日次や週次のデータであり、足元の状況を把握するのに非常に有効です。また、当社の売上は出荷基準で計上されますが、卸売業者から病院に流れた数をカウントする「消化数」も合わせて見ています。当社の売上計上基準は当社から卸売業者への出荷ベースですが、卸売業者に販売したものが病院へと消化されなければ、次の受注にはつながらないため、この二つの指標を重視しています。ただし、消化数は外部に公開される数字ではありません。
取材者:それでは、2026年6月期の業績予想についてお伺いします。売上高の業績予想は20,769百万円(前期比11.5%増)、営業利益は8,323百万円(同0.7%増)、経常利益は8,143百万円(同0.9%減)、当期純利益は8,613百万円(同36.4%増)という増収・増益の予想ですが、この見通しはいかがですか。
回答者:業績予想は公表している通りで、この数字を見通しています。予想の前提としては、まず市場規模の想定があります。2025年度(当社の決算期間とは一致しない)は市場規模が約5,700万テストでしたが、その前年度は約7,500万テストでした。2026年度は、この両者の中間あたりへと平常化するものと想定しています。これは、2025年がポストコロナの平均的な流行水準よりやや低く、一方2024年はかなり上振れたと判断したためです。
次に、当社がその市場で何%のシェアを獲得するかという話ですが、これは製品別に目標値を設定しており、2025年6月期と基本的にはおおむね横ばいを想定しています。若干の伸びしろはありますが、着実に達成可能な水準として保守的に見ています。
単価に関しては、2025年6月では、新型コロナ単品検査キットと新型コロナ/インフルエンザコンボキットの二つが前期比で10%前後下がる単価水準を想定しておりましたが、実際は5%程度の下落に落ち着きました。2026年6月期には数%程度下がることを想定しています。インフルエンザなどの既存製品は、単価が成熟しており、毎年1%から2%程度のわずかな下落にとどまると見ています。
取材者:中期経営計画についてもお聞かせいただけますか。
回答者:中期経営計画は幅広いテーマで策定しており、主要な施策は計画書に記載の通りです。今期からすでに四つの主要施策(POCTの進化・拡充、新たな診断技術の導入、データ活用基盤の構築、経営基盤の強化)全てに取り組んでいます。
取材者:中期経営計画にもあったM&Aや業務提携の実施の有無、検討状況について教えていただけますか。
回答者:具体的に検討している案件があればすでに開示しているはずですので、現時点では開示を要するレベルで具体的に検討しているものはありません。ただし、これまでも10社以上のマイナー出資を行ってきました。これは、当社の研究開発を全て自社で完結させるのではなく、次世代の新しい技術に投資するという考え方に基づいています。いわば、研究開発の一部を外部に委託していると捉えることもできます。これまでの投資先のうち、最近開示した3社はミドル・レイターステージのディープテックのスタートアップですが、それ以前の10社強はシード/アーリーステージのスタートアップが中心でした。これらは成功するかどうか分からない技術のシーズに、少額で投資するというスタンスです。したがって、これまでマジョリティを取得した会社は1社もありません。今後も、自社にない技術を取り込むための戦略的なアライアンスや資本業務提携を基本方針としています。具体的には、呼吸器感染症以外の感染症や慢性疾患の領域、発症前の予測マーカー、治療方針策定のためのコンパニオン診断など、当社が畑違いの領域に進出できる技術を持つスタートアップに少額出資していくことを基本方針としています。現在は、パイプラインのショートリストレベルで20〜30社を常に検討しており、中期経営計画と照らし合わせて優先度の高いところを精査しています。
取材者:新規領域での売上は、どのくらいの時期から見込めますか。
回答者:中期経営計画の最終ページで5年後の売上目標として300億円を掲げていますが、その中にある「新領域」の一部が、今申し上げたような内容です。全く新しい技術を確立し、製品化して販売し、売上が計上されるまでには時間がかかるため、この中期経営計画の期間内で計上できるものは限定的で、期間の最後のほうにわずかに貢献するイメージです。しかし、10年のスパンで見れば、既存領域を逆転するほどのポテンシャルは十分にあります。今回の計画は5年で策定しましたが、これは新しいものを語るためには5年が必要だと考えたためです。10年といったより長期の計画を立てるならば、この新領域が大きく伸びていくイメージを持っています。そのため、新領域については、中期経営計画期間以降に本格的に成長することを強調しました。
取材者:株主還元方針に変更はございますか。
回答者:株主還元につきましては、今回から累進配当を導入しました。2024年6月期と2025年6月期の配当は、配当性向30%をベースとしており、これ以上は成長投資に振り向けるために引き上げない方針でした。ただし、2024年6月期は上場記念配当を出し、2025年6月期は法人設立10周年を記念して再び記念配当を出すことで、実質的な減配を回避し、配当額を維持しました。しかし、2026年6月期以降どうなるのか、減配するのではないかという懸念が投資家から常に寄せられていました。
当社の事業は感染症の領域であるため、業績にボラティリティ懸念があるのは避けられません。投資家からすると、業績と配当額の両方にボラティリティがある状況を懸念されていると理解しています。そのため、配当金額について、下方硬直性の高い方針を掲げることが、投資家の皆様の安心につながると整理しました。一時的に業績が上下しても一喜一憂することなく、中長期では確実に成長できるという自信があります。したがって、2026年6月期以降は、当期(2025年6月期)の配当28円を下限とし、今後上がることはあっても下がることはないとコミットさせていただきました。
一部の長期目線の投資家からは、「配当を出しすぎて、今後の成長戦略に必要な投資力を本当に確保できるのか」というご意見もいただきましたが、当社の資金繰りを十分に精査した結果、今後の成長戦略に資金を投じても、この配当額は維持できると判断しました。
また、自社株買いについても否定していません。株価が割安だと判断した局面では、自社株買いを行う意向があります。自社株買いした株式を消却するのか、役職員へのインセンティブとして付与するのか、M&Aに充てるのかといった方針も今後明確にする必要がありますが、自社株買いを一定程度実施する意向があることも記載しました。
取材者:最後に、直近の状況について何かトピックスやニュースリリースがございましたら教えていただけますか。
回答者:まずは中期経営計画の策定に集中しており、8月20日に公表しました。現在は、これを踏まえて投資家様やアナリスト様の皆様から取材をいただいている状況です。現時点で開示すべき情報はすべて開示済みと考えています。常に前向きな施策を推進しており、開示可能な状況になったタイミングで、適切に情報共有していきたいと考えています。
取材者:中期経営計画公表後の投資家の反応はいかがですか。
回答者:正直なところ、まだ2025年6月期の決算状況に関する質問に興味関心が集中している状況です。それが一通り落ち着いた後で、より先の計画に関する質問に移行していくと思います。中期経営計画については、お会いして会話する中では概ねポジティブなフィードバックをいただいています。しかし、中期経営計画は良いことを中心に書くため、ネガティブなフィードバックがしにくいだけかもしれないと冷静に受け止めています。
取締役経営企画室長 永井 淳平 様

企業名
上場市場 証券コード
決算日
取材アーカイブ
決算概要
第3四半期累計期間の売上高は過去最高を更新し、各段階利益は前年同期比で増益、利益率も前年同期より改善されました。利益率の改善は、相対的に利益率が高い新型コロナ単品検査キット及びコンボ検査キットの売上構成比が増加したことが主因となります。
セグメント別または事業別の増減要因
インフルエンザ検査キットの数量減少、各製品の単価下落によるマイナス影響がありながらも、新型コロナ単品検査キットのシェア向上による販売数量の増加、コンボ検査キットのマーケット拡大分の着実な取り込みにより増収となっています。業績予想策定時では、競争環境の変化から新型コロナ単品検査キット及びコンボ検査キットの販売単価を前年通期実績に対して10%程度下落する想定としていたものの、第3四半期までの実績においてはそのような大きな下落は見られていません。
季節性・一過性要因の有無と影響
当社を取り巻く事業環境として、インフルエンザが冬、新型コロナは夏と冬の2回、それぞれ流行すること、流行の兆候が見られたタイミングで卸による在庫確保(買い込み)が発生するため、夏は7~8月、冬は12~1月ごろに大きな売上が計上されます。当第3四半期においても、年末年始のインフルエンザの急激な流行を受けて、1月に大きな売上を計上。その後2月以降は市中在庫(卸在庫)の消化局面に移行しています。
トピックス
直近のトピックスは、(1)バイオベンチャー3社とそれぞれ資本業務提携を実施、(2)中期経営計画を8月20日に発表予定、(3)東証プライム移行について、審査が長引く中で基準期が変わってしまうことから取り下げ、の3点ございます。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?
A:当社はこれまで、抗原検査の簡易性と迅速性を活かし、「呼吸器感染症」の「スクリーニング検査」の領域で事業を展開し、新製品投入やシェア拡大により持続的な成⻑を実現してまいりました。今後の成長ポイントとしては、⾼齢化等に伴う社会課題の解決に向け、感染症領域の拡充に加えて、慢性疾患領域や、疾患の罹患前後における検査へと、事業領域を拡大してまいります。この実現に向けて、当四半期においては既存の感染症領域から事業ドメインを拡⼤するために、戦略的に重要な投資を実行いたしました。また、予てより進めている新工場の竣工や新製品や新たなPOCTの開発、更には独自の検査サービスの提供の準備を進めています。
Q:受注・競合状況についてご説明ください。
A:6月までは感染症の流行が下火であるため、新たな受注が生じづらい状況にあり、1月に卸に対して納品した市中在庫が消化されている局面にありました。競合他社の状況としては、ポストコロナにおいて顧客に選ばれるメーカーとそうでないメーカーがある程度明確になり、市場から撤退するメーカーが生じるなど、競争社数は減少傾向にあります。
Q:M&A、業務提携の実施または検討状況と、それに伴う影響についてご説明ください。
A:M&Aにおいて具体的な検討事実はございません。資本業務提携については引き続き検討を進めているが、短期的に業績に大きな影響が生じるものはございません。
Q:中期経営計画の内容や進捗状況等をご説明ください。
A:8月の発表にてご説明いたします。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:8月の決算発表において来期配当額の見通しを記載し、中長期の株主還元方針については同月発表する中期経営計画でご説明いたします。
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IR担当
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企業名
上場市場 証券コード
決算日
CP&X
ビジネスモデルや事業内容
株式会社タウンズは、静岡県伊豆の国市に本社を置く体外診断用医薬品メーカーである。POCT(Point of Care Testing)の体外診断用医薬品、特に抗原検査キットの開発・製造に注力している。感染症検査キットは業績が感染症の流行に左右されやすい側面があるため、慢性疾患領域への展開も目指している。
創業の経緯と転機となった出来事
1987年に現社長の父が株式会社カイノスから独立する形で創業。創業当初は大手製薬会社から性能評価試験を受託する形で事業を運営していた。1990年代後半にイムノクロマト法に着目し、感染症検査への応用を構想、2000年代に入り抗原検査キットを市場に投入した。
直近の決算状況
2025年6月期は、コロナ・インフルエンザ共に流行規模が想定を下回ったものの、シェア拡大と単価上昇により、業績は概ね想定を上回る見込みである。コロナ・インフルコンボキットの保険点数が2024年6月に引き下げられたが、需給逼迫により単価は想定より堅調に推移している。
特徴や強み
感染症の抗原検査キットにおいては、主要製品で40%~45%のシェアを誇り、マーケットシェア1位を獲得している。特に。製品競争力として、高い検査精度(感度・特異性の両立)、短い判定時間、長い有効期限、検査の手技の簡便性などが挙げられる。効率的な販売体制も強みであり、卸売業者との連携とMRによる重点顧客への直接フォローを組み合わせている。
成長戦略
短期的には、コンボキットのシェア拡大と新工場稼働による生産能力向上、効率化を推進する。中長期的には、慢性疾患領域への事業拡大、予防・未病検査や治療後のモニタリング検査など、検査タイミングの拡張と対象疾患の拡大を目指す。
株主還元策
配当性向30%を基本方針とし、特別なイベント時には記念配当も実施する。中長期的な株主還元方針は、8月開示予定の中期経営計画で詳細を示す予定である。
今期の取り組みやトピックス
2024年6月に東証スタンダードに上場。塩野義製薬とのコ・プロモーション契約により、同社のMRを通じて製品の情報提供・認知度向上を図っている。2025年12月には新工場が稼働開始予定であり、生産能力の拡大と効率化を見込む。
Q:事業内容やビジネスモデル、特徴や強みについてご説明いただけますでしょうか。
A:2025年6月期中間期の決算説明資料に基づき、ご説明申し上げます。株式会社タウンズは、本社を静岡県伊豆の国市に置き、体外診断用医薬品を製造しているメーカーです。創業以来、静岡県の沼津や三島といった静岡県東部において事業を展開してまいりました。株主構成につきましては、創業家である現在の代表取締役社長、野中氏は創業者のご子息であり、2代目の社長です。野中氏は元々、公認会計士、M&Aアドバイザリーファーム、コンサルティングファームなどで業務に従事しておりましたが、その後、父が創業した会社に入社いたしました。大株主としては、金融投資家が45%を占めています。上場以前よりPEファンドがおり、トラスターキャピタルという香港系のファンドが、上場前に筆頭株主として過半数を保有しておりました。2024年6月に東証スタンダードに上場した際、PEファンドは一部を売却いたしましたが、依然として4割以上を保有している状況です。そのため、プライベートエクイティファンドの今後の動向は、投資家の皆様からもご質問をいただくところです。取締役の一番下に記載されております伊藤は、トラスターキャピタルからの派遣役員であり、トラスターキャピタルの日本代表を務めています。私、永井は、IRおよび経営企画の責任者を務めています。
企業理念といたしましては、「独自の体外診断用医薬品により人々の生活に安心と潤いを届けます」ということを掲げています。体外診断用医薬品とは、人体から採取されるサンプル、例えば血液、尿、便などを対象として、様々な疾患を検査するための検査キットや検査医薬品のことです。体外診断用医薬品の中でも特に注力してまいりましたのは、POCT(Point of Care Testing)、いわゆるPOCTと呼ばれる、臨床の現場で患者様の傍らですぐに検査結果が判明するような製品です。
POCTの代表的なものとしまして、抗原検査キットがございます。新型コロナウイルス感染症により注目を浴びましたが、弊社は新型コロナウイルス感染症が流行する以前から、インフルエンザをはじめとする様々な感染症において、抗原検査キットを提供しておりました。事業内容といたしましては、先ほど申し上げましたPOCT、中でも抗原検査キットを幅広く製造しており、新型コロナウイルスとインフルエンザを同時に検査するコンボキットや、元々は結核やアデノウイルスなどから始まりましたが、RSウイルス、溶連菌、そして昨年話題となりましたマイコプラズマなどを検査するキットを製造しています。感染症の検査キットは、感染の流行状況によって業績が左右されるため、短期的には業績が変動しやすいという側面がございます。そのため、持続的な成長および業績の安定という観点から、慢性疾患の領域で様々な疾患を対象とした検査薬を開発し、製造技術を向上させることが、中長期的には不可欠であると考えています。
慢性疾患領域への取り組みといたしまして、まず手始めに亜鉛濃度検査キットを2023年に発売いたしました。現在の売上規模としては非常に小さく、収益貢献もまだこれからではございますが、慢性疾患の領域で事業を展開していくという意思表示として、決算資料にも記載しています。
Q:シェアや競争力についてご説明ください。
A:感染症の抗原検査キットにおいては、主要製品でマーケットシェア1位を獲得しており、特にシェアが高いものでは40%から45%程度のシェアを有しています。一方で、単価も競合他社と比較して高めに設定しています。価格が高いにもかかわらずシェア1位を獲得できている背景には、弊社の競争優位性がございます。競争優位性といたしましては、製品競争力、効率的な販売体制、そして研究開発力が挙げられますが、今回は製品競争力と効率的な販売体制に焦点を当ててご説明申し上げます。
まず、製品競争力についてですが、抗原検査キットにおいて最も重要なのは検査精度です。検査精度は、特異性と感度という要素に分解できます。感度とは、陽性者を正しく陽性と判定する力、つまり偽陰性を出さない力です。特異性はその逆で、陰性者を正しく陰性と判定する力、つまり偽陽性を出さない力です。感度と特異性はトレードオフの関係にあり、どちらかを高めるともう一方が低くなるという側面がございますが、長年の知識や技術の蓄積によって、高い次元で両立しています。検査精度以外にも、抗原検査キットの製品構成要素といたしましては、判定時間の短さ、有効期限の長さ、価格、そして検査の手技の簡便性などが挙げられます。判定時間が短い方が、医療機関のオペレーション効率が向上し、患者様の待ち時間も短縮できます。有効期限が長いほど、医療機関などで在庫管理がしやすくなります。例えば、弊社のインフルエンザ検査キットは、有効期限を27ヶ月程度まで延長しています。一方で、比較的新しい製品では、最初に発売する際には有効期限が短くなりがちですので、一部の製品につきましては弊社の製品も有効期限が12ヶ月程度のものもございますので、今後さらに延長していく必要がございます。また、価格の他には「手技の簡便性」も良い製品の構成要素であると考えます。これはいかに簡単に、例えば検査技師ではない看護師の方でも使用できるかといった視点です。弊社では、競合他社と比べ、これらの要素をバランスよく全体的な最適化を図ること、感度と特異度を高い次元で両立できていることから、高いシェアと高い単価が両立できていると考えています。
Q:他社と比較し、感度と特異度という部分でバランスが取れているという理解でよろしいでしょうか。
A:抗原検査キットにおいて多くの医療機関が最も重要視するポイントが検査精度ですので、まずもっては感度と特異度が高い次元で両立していることが重要であると考えています。他の要素においても大きな欠点なくバランスの取れた性能を有していれば、他社に対して優位性を確立できると考えており、これが主力の製品のいくつかであると考えています。ただし、主力製品の中でもコンボキットに限っては、シェアがまだ1位ではありません。これは、他社と比較して有効期限や判定時間などが劣っていることが要因であり、現在改善に取り組んでおります。
Q:検査キットを使用する際に、判定時間が異なると精度に影響を及ぼすのでしょうか。
A:一般的に、抗原抗体反応が起こる時間を長く確保すれば、精度は向上いたします。しかし、より短い時間で同等の精度を出すことは非常に難易度が高くなります。そのため、何分で判定するという時間設定は、各社の戦略的な判断が分かれるところです。
Q:長く検査を実施した場合に、感度が別のものに反応してしまい、偽陽性を示すということは基本的にないと考えてよろしいでしょうか。
A:はい、そのようなことが起こらないように配慮しています。
補足的な話になりますが、表面的なスペックは各社の製品であまり差がないように見受けられても、医療現場で長年製品を使用されている先生方はメーカーによる実体的な性能差をよくご理解されているため、価格よりも精度を重視される先生方においては弊社の製品を選択していただいているケースも多いと考えております。
Q:販売体制についてご説明ください。
A:弊社は効率的な販売体制を構築しています。全国に30数名のMR(医薬情報担当者)を配置しており、北は北海道から南は沖縄までをカバーしています。ただし、日本全国の医療機関、例えば病院やクリニックの数は非常に多く、約8万件から10万件です。そのため、30数名のMRだけで全ての医療機関をカバーすることは現実的に難しいです。そこで、弊社では基本的に卸売業者に販売し、卸売業者のMS(マーケティングスペシャリスト)の方々に医療機関との接点を持っていただいています。医療機関から卸売業者に対して検査キットの注文が入った際に、優先的に弊社の製品を納入していただけるように、卸売業者に対する営業活動は重要です。さらに、エンドユーザーとなる病院やクリニックの中でも、関係性の深い先に対しては、弊社のMRが直接訪問してフォローしています。このように、卸売業者との信頼関係を構築し、卸売業者における弊社の製品のインハウスシェアを高めることが、弊社の事業拡大の背景にある重要な要素です。具体的には、製品の精度を継続的に改善し、高品質な製品を提供し続けることに加えて、流行する時期に需要が急増した際に、各メーカーが生産能力を超えて在庫切れや出荷調整を行う中で、弊社は在庫リスクを負って生産を継続し、供給責任を果たしてきた実績がございます。このような供給責任を果たす姿勢が、卸売業者からの評価を高め、卸売業者との関係強化、そしてシェア拡大につながっています。
Q:供給責任という点において、在庫を確保できる背景には有効期限の長さも関係しているのでしょうか。
A:はい、有効期限の長さも影響しています。ただし、有効期限の長さだけで判断しているわけではございません。一部製品、例えばコンボキットなどは、有効期限が12ヶ月と比較的短いため、大量に製造しすぎると売れ残った場合に廃棄リスクを抱えることになります。一方で、コンボキットは現在市場で求められている製品でもあるため、供給責任を果たすためには、リスクを負って在庫を確保する必要がございます。最終的には、限界利益率なども考慮して判断いたします。有効期限が長くない製品についても、必要に応じて在庫リスクを取って供給責任を果たすというスタンスで臨んでいます。
Q:塩野義製薬株式会社様との提携についてご説明いただけますでしょうか。
A:業界でいうところのコ・プロモーション契約というものです。具体的には、塩野義製薬株式会社様は弊社の商流には入らず、塩野義製薬株式会社様のMRが、自社のワクチンや治療薬などの販売活動の中で、弊社の検査薬についても情報提供や認知度向上、宣伝活動を図ってくださっています。医療機関の中には、治療薬やワクチンは高額であるのに対して、検査薬は比較的安価であるため、塩野義製薬株式会社様が推奨するのであれば採用してみようと考える施設もあり、検査薬を希望される場合、卸売業者の株式会社スズケン様に問い合わせがきて、株式会社スズケン様から納品されるという流れになっています。弊社は塩野義製薬株式会社様に対して、宣伝していただいた対価としてフィーを支払っています。弊社にとっては、塩野義製薬株式会社様のMRが小規模なクリニックも含めて訪問してくださるため、新規施設の開拓につながるというメリットがございます。塩野義製薬株式会社様のMRの数は、弊社のMRと比べて非常に多いため、大きな効果が期待できます。このような提携も、弊社のシェア拡大の背景にある要因の一つです。全体といたしましては、やはり良い製品を提供することが最も重要であると考えており、実際に製品を使用していただくことで、その品質の良さを実感していただき、徐々に事業が拡大してきたと考えています。
Q:外部環境についてご説明ください。
A:会社を取り巻く外部環境について少しご説明申し上げます。投資家の方の中には、新型コロナウイルス感染症の指定感染症区分が5類に変更した後、やがて検査が行われなくなるのではないかと考えている方が、特に海外の機関投資家の中にいらっしゃるのですが、コロナウイルス感染症もインフルエンザと同様に、今後も繰り返し流行し、完全になくなるということはないと考えています。感染力や致死率などの観点では依然としてコロナウイルス感染症は厄介な病気であり、今後も何度も流行を繰り返すものと考えています。ただし、流行の規模感は年によって変動があるため、正確な予測は難しいです。業績予想を立てる上では、基本的には過去の平均的な水準を参照しながら、流行が起こるものとして見込んでいます。そして、その流行に対してどの程度のシェアを獲得できるかを予測し、販売数量を算出いたします。さらに、製品ごとの価格を想定し、これらの数値を掛け合わせて積み上げることで売上高を算出するというのが、基本的なモデルの組み立て方です。こちらは、日本における抗原検査キットの市場規模の推移を示したグラフです。こちらでお伝えしたいことは、コロナ禍以前においても、インフルエンザを中心に、年間数千万回の抗原検査による感染症検査が日本で行われていたということです。グラフのグレーの部分は、インフルエンザ以外の溶連菌、アデノウイルス、マイコプラズマなどのその他の感染症の市場規模を示しています。これらの市場規模を合わせると、年間3,000万回程度の検査が行われておりました。このような規模で長年感染症検査が行われてきた国は、海外にはほとんどなく、日本は非常に特殊なマーケットと言えます。少なくとも日本においては、このような検査がしっかりと根付いている国であり、今後もこのマーケットはある程度の規模を維持していくと考えています。弊社は、主要な製品において高いシェアを獲得していますが、コンボキットにおいては、前述のとおり判定時間や有効期限などで他社製品に対して劣っている部分があり、シェアが2位にとどまっています。これらの製品については、今後改良品を投入する予定です。特に、コンボキットについては、改良品を投入することで、コロナ単品やインフルエンザ単品と同程度のシェアまで引き上げていきたいと考えています。これが、ごく短期的な成長の見通しです。
Q:今後の成長戦略についてですが、まずは今後の改良品や既存製品のシェアをしっかりと高めていくこと、それに加えて、慢性疾患への新商品を出していくという2つの軸で成長を目指していくという理解でよろしいでしょうか。
A:今後の成長戦略について、短期的、中長期的に分けてご説明申し上げます。ご指摘いただきました通り、短期的にはコンボキットのシェアを引き上げることが目標です。また、現在建設中の新工場が今年の12月に稼働を開始いたします。新工場の稼働により、生産能力が向上するだけでなく、より効率的に、コストを削減しながら製造できるようになることを期待しており、薬局OTC市場や海外市場など、これまでは収益性の観点や国内医療機関への安定供給を優先していたことから参入しなかった市場にも販路を拡大し、売上高、利益額を伸ばすことができると考えています。ただし、これは2、3年かけて実現していく計画です。より短期的には、先ほどのコンボキットの性能改善によってシェアを拡大し、売上、利益を伸ばしていくことが目標です。中長期的な成長戦略といたしましては、2024年8月に開示した前期の通期決算説明資料に一部を記載しておりますので、こちらを基にお話しします。これまでは、呼吸器感染症のスクリーニング検査キットを製造、販売しておりましたが、今後は慢性疾患の領域にも進出し、検査シーンや検査モダリティを拡張するという方向性を掲げています。国策といたしましても社会保障費が膨らむ中で、より早期に病気を発見し、適切に対処することで、医療費を抑制し、健康寿命を延伸することが掲げられています。この流れをとらえ、感染症だけでなく、慢性疾患の予防やスクリーニング、モニタリングといった領域にも注力していくことが、戦略として重要であると考えています。これらは8月をめどに中期経営計画の中で改めて発表したいと考えております。
Q:慢性疾患の検査薬は、他社もすでに製品を提供しているのでしょうか。
A:慢性疾患の検査、という文脈ではスタートアップから大手まで各社が注力領域として取り組んでいます。弊社といたしましては、既存の検査技術に対して、より簡便に、高精度、低コスト、低侵襲といった、何かしらの優位性を持つ次世代型の検査技術で置き換えを目指すという方向性もございますし、これまで測定できなかったものを測定するという、より技術的に難しい領域に挑戦していくという方向性もございます。慢性疾患の検査領域は、一概には語れない部分がございますが、弊社だけで全てを自社開発することは、企業規模や体力的に難しいですし、競争も激しい領域です。そのため、次世代型の技術を持つバイオベンチャーなどと戦略的な資本提携を行いながら、共同で開発したり、事業展開していくという戦略で、これまでも様々な投資を行ってきました。
Q:新規工場の設立によって、マーケットを広げていくためには、人員もさらに採用していく必要が出てくるかと思います。そのような成長投資に対する資金調達の面も、上場された目的の一つでしょうか。それとも、上場の目的は別のところにあるのでしょうか。
A:上場の一番の目的は、上場前に当社株式の6割を保有していたPEファンドの出口戦略です。ただし、IPOという手段が選ばれたのは従業員のモチベーション向上、採用の強化、そして資本提携などを通して外部の技術を取り込んでいく上で、より有力なパートナーとの出会いや、提携先から選ばれるための社会的信用を補完するという上場のメリットも期待していたからです。採用については、まだ上場による効果をすぐに実感できているわけではございませんが、提携先との話は、弊社よりも規模の大きい会社や、以前から検討しておりましたスタートアップなど、質、量ともに多くなっており、効果を実感しています。資金調達については、上場前から金融機関からの借入などでご支援をいただいておりましたが、上場によって資金調達力はさらに向上していると考えています。
Q:決算の状況についてお伺いいたします。感染症の流行などもある中で、今期のここまでの業績は想定通りに進捗していると見てよろしいでしょうか。
A:業績については、数量と単価に分けてご説明申し上げます。さらに、数量については、コロナとインフルエンザに分けてご説明いたします。
まず、コロナもインフルエンザも、流行の規模は想定よりも小さかったです。想定と申しますのは、過去の標準的な流行の水準などを参照しているのですが、前年の流行規模と比較しても、かなり小さかったため、数量は当初の想定を下回りました。一方で、市場規模に対する弊社のシェアは高く維持できており、むしろ今期に入ってからは引き上がっている部分もございます。シェアを大きく引き上げることで、流行規模が想定を下回ったことによるマイナス影響を相殺いたしました。そのため、数量ベースで申し上げますと、一部品目では若干未達のものもございますが、全体としては想定を上回っている部分もございます。主力製品の単価については、想定よりも概ね上回っています。当初は、前年の実績に対して10%程度下落するという保守的な見通しを立てておりましたが、上半期はほとんど下落しておりません。単価が下落するという見通しを立てた背景といたしましては、インフルエンザなどの既存の感染症については、価格はほとんど変動がなく、価格に影響を与えるのは保険点数です。インフルエンザなどの保険点数はほとんど動かず、2年に1度、1%から2%程度下落するというのが通例です。そのため、インフルエンザなどの既存感染症については、価格は横ばいで推移するか、緩やかに減少するという前提で業績予想を立てています。一方で、コロナとコロナ・インフルのコンボキットについては、2024年6月に保険点数が大幅に引き下げられました。弊社といたしましては、いずれ保険点数が引き下げられることは想定しておりましたが、とはいえ医療機関側からすると、薬価差益が減少するため、メーカーや卸売業者に対して値引きを要請してくる可能性があると考えておりました。そのため、それらの製品単価については保守的に前年の通期実績比で10%程度下落するという見通しを立てておりましたが、結果的には需給環境が逼迫しており、引き続き供給不足の状態が続いたため、単価は想定よりも上振れました。
Q:単価については、来期以降も不透明な状況ということでしょうか。
A:単価が大きく下がるとすれば、今期だろうと考えておりました。保険点数が昨年の6月に下がって、それを受けて単価が下がるかどうかは、今期に起こる事象だと考えておりました。今期ほとんど単価が下がっていないということは、単価の下落が後ろ倒しになったとしても、来期10%も下がるとは考えにくいです。来期以降は、インフルエンザなどと同じように、年に1%、2%程度緩やかに下がっていくという状況になるのではないかと考えています。
Q:創業の経緯について、お聞かせいただけますでしょうか。
A:創業は1987年で、現在の社長である野中氏の父が、株式会社カイノスで開発部長をしており、独立する形で沼津にて創業いたしました。創業当初は、自社の独自製品を開発、製造するというよりも、大手製薬会社などの性能評価試験を受託しながら、事業を拡大せずに運営していくという期間が一定続きました。その後、現在の抗原検査キットの基本原理となっているイムノクロマト法という技術に着目し、この技術を用いて感染症を検査したら面白いのではないかと考えたのが90年代後半だったと伺っています。そこから数年間研究開発を行い、2000年代に入って、現在の抗原検査キットを市場に投入していきました。決算資料に記載されている会社設立年月日の2016年4月というのは、ファンドが入ってきた際に、ビークルとして設立した法人の設立年月日のため、本質的な創業の年月日ではありません。
Q:イムノクロマト法を発見されたのは貴社なのでしょうか。
A:イムノクロマト法自体は、学会や論文などで発表されていた技術です。この技術を用いて感染症を測定したら面白いのではないかという点に着目し活用したのが弊社ということです。
Q:株主還元策や方針についてお教えいただけますでしょうか。
A:株主還元策は、配当性向30%を基本方針として開示しています。30%を基本としつつ、何か特別なイベントがあった場合には、記念配当などを実施しています。例えば、2024年6月期においては、東証スタンダードに上場したことを記念して、特別配当を実施し、配当性向は50%に近い水準となりました。2025年6月期に関しましては、先ほど申し上げた弊社の設立10期目となりますが、前期に50%近い配当性向を出している中で、大きく配当性向を下げてしまうと、株価に対する市場の評価が定まっていない中で、失望されることを避けたかったという意図もあり、年間配当の予想額ベースで、前期が27.75円だったのに対して、28円と小幅ながら増配の形といたしました。来期以降の配当については、現時点では明確にお約束することはできませんが、東証プライムへの移行準備をしていることを開示しており、そう遠くない将来にプライム市場へ移行したいと考えています。プライム市場へ移行したタイミングで、記念配当を出すことも考えられます。また、来年は新工場も稼働し、工場に対する補助金も入ってくるため、利益が増加することも見込まれます。そのような前向きな材料もいくつかございます。年間の配当額ベースで、投資家の皆様に大きく失望されるような水準にはしたくないという考えです。一方で8月には中期経営計画を開示する予定ですので、その中で株主還元の中長期的な方針や、成長投資を含めたキャッシュアロケーションについて開示したいと考えています。基本的には、利益を闇雲に内部留保するのではなく、株主還元か成長投資のいずれかに充当し、資本効率を悪化させないということを経営陣としては考えています。
―
取締役経営企画室長 永井淳平様

(株)タウンズ
東証STD 197A
決算:6月末日
CP&X
【2026年6月期1Q】
決算概要
新型コロナの流行規模が前年同期を下回ったこと、並びに、市中在庫の消化局面が当第1四半期末頃まで継続したことから、当第1四半期の売上高は前年同期比63.1%減の2,368百万円となりました。
また、売上高の大幅な減少により、営業利益は前年同期比85.4%減、四半期純利益は同86.7%減となりました。各段階損益率も前年同期を下回る結果となっています。
なお、各製品の原価構造に大きな変化はありませんが、セールスミックス要因により各段階利益率は25年6月期の通期実績よりも悪化しております。具体的には、原価率の低い(粗利率の高い)新型コロナ/インフルエンザのコンボキットが、市中在庫の消化局面が続いたことにより売上低調となったことから、全体に占める同製品の売上比率が下がりました。
セグメント別または事業別の増減要因
新型コロナ単品検査キット、インフルエンザ検査キットについては、流行規模が前年同期を下回ったこと、並びに、コンボキットについては、市中在庫の消化局面が当第1四半期末頃まで継続したことから、売上減の主因となっています。
上記のとおり市場規模は想定および前年同期を下回る格好となりましたが、当第1四半期における主要製品の市場シェアに関しては、インフルエンザ、新型コロナ、アデノウィルスなどの製品において引き続き首位を堅持しています。なおコンボキットにおいては25年6月期の通期実績シェアが21%に対して、当第1四半期においては19%と小幅に下落しており、改良品の市場投入が待たれる状態です。
季節性・一過性要因の有無と影響
2025年8月前半に第13波が到来したものの、前年同期の第11波と比べ流行規模は低位にとどまり、アデノウィルスを除く抗原検査キット市場全体が前年同期比で縮小しました。
取材アーカイブ
CP&X
決算概要
2025年6月期の決算は増収増益であった。売上高は18,627百万円(前期比1.0%増)、営業利益は8,265百万円(同2.9%増)、経常利益は8,219百万円(同4.8%増)、当期純利益は6,315百万円(同9.4%増)であった。新型コロナウイルスとインフルエンザの流行水準が前年比で大きく下振れしたという厳しい外部環境下で、市場シェアを高めることで増収増益を達成した。利幅の高い製品(新型コロナ単品検査キットと新型コロナ/インフルエンザコンボ検査キット)の売上構成比が高まったことが、利益段階の損益に直結した要因である。
セグメント別または事業別の増減要因
前期におけるインフルエンザキットの売上構成比は22.2%であったが、今期は17.8%に低下した。その一方で、利益率の高い新型コロナ/インフルエンザコンボキットの構成比は34.6%から42.5%に増加した。この構成比の変化が利益の増加に直接的な影響を与えた。
主要KPIの進捗と変化
当社は、自社の指標として売上や各段階利益、マージンのほか、製品別の売上構成比、在庫水準などを追っている。外部指標としては、市場シェア、日次の感染者数推計値や、卸売業者から病院への製品の流れを示す「消化数」を重視している。これは、当社の売上計上基準は当社から卸売業者への出荷ベースだが、卸業者から病院へと消化されなければ次の受注につながらないためである。
通期見通しと進捗率・達成可能性
2026年6月期の業績予想は、売上高20,769百万円(前期比11.5%増)、営業利益8,323百万円(同0.7%増)、経常利益8,143百万円(同0.9%減)、当期純利益8,613百万円(同36.4%増)である。市場規模は2024年度の約7,500万テストと2025年度の約5,700万テストの中間あたりへと平常化するものと想定している。市場シェアは2025年6月期とおおむね横ばいを想定し、製品単価は数パーセント程度の下落を想定しており、着実に達成可能な保守的な水準である。
トピックス
株主還元では、2025年6月期の配当28円を下限とする累進配当を導入し、配当金の下方硬直性をコミットした。さらに、株価が割安と判断した局面では自社株買いを行う意向も示した。中期経営計画を8月20日に公表し、新領域への進出も含む4つの主要施策にすでに取り組んでいる。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?
A:当社の成長戦略は、中期経営計画に基づき、POCT(Point of Care Testing)の進化・拡充、新たな診断技術の導入、データ活用基盤の構築、経営基盤の強化という4つの主要施策にすでに着手しております。新領域への進出については、自社ですべての研究開発を完結させるのではなく、次世代技術を持つ外部のスタートアップへの投資を基本方針としています。これには、呼吸器感染症以外の感染症や慢性疾患領域、発症前の予測マーカー、治療方針策定のためのコンパニオン診断といった、当社にとって新たな分野への進出が含まれます。これまでも10社以上のシード/アーリーステージのスタートアップに少額出資を行い、技術のシーズに投資するスタンスを取ってきました。今後も、自社にない技術を取り込むための戦略的アライアンスや資本業務提携を推進していく方針です。現在、パイプラインのショートリストとして20〜30社を常に検討しており、中期経営計画と照らし合わせて優先度の高い案件を精査しています。これらの新領域からの売上は、今回の中期経営計画期間においては終盤にわずかに貢献する程度に限定的であると見込んでいますが、10年といったより長期的な視点で見れば、既存領域の売上を逆転するほどのポテンシャルがあると考えています。
Q:中期経営計画の内容や進捗状況等をご説明ください。
A:中期経営計画を2025年8月20に開示いたしました。
POCTの進化・拡充、新たな診断技術の導入、データ活用基盤の構築、経営基盤の強化という4つの主要施策が盛り込まれております。計画の最終年度(5年後)は、売上目標として300億円を掲げており、その一部を新領域が担うことを想定しています。新領域の売上貢献は、製品化に時間がかかるため、今回の中期経営計画期間においては終盤に限定的となると見ていますが、10年のスパンでは既存領域を逆転するほどのポテンシャルがあると考えています。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:当社の株主還元方針として、今回から累進配当を導入いたしました。感染症領域という事業の性質上、業績のボラティリティが懸念されるため、配当金額に下方硬直性の高い方針を掲げることが、投資家の皆様の安心につながると判断しました。これにより、2026年6月期以降の配当は、2025年6月期の28円を下限とし、今後上がることはあっても下がることはないとコミットさせていただきます。当社の資金繰りを精査した結果、今後の成長戦略に必要な投資力を確保しつつも、この配当額は維持できると判断しております。また、株価が割安な局面では、自社株買いを実施する意向もございます。自社株買いの使途については今後明確にする予定です。
取材者:まず初めに、2025年6月期の決算状況についてお伺いします。売上高は18,627百万円(前期比1.0%増)、営業利益は8,265百万円(同2.9%増)、経常利益は8,219百万円(同4.8%増)、当期純利益は6,315百万円(同9.4%増)でした。売上高と営業利益は、当初の業績予想から若干下回る着地でしたが、前期と比較して増収増益を達成された要因についてご説明いただけますか。
回答者:2025年6月期の状況につきましては、外部環境としては非常に厳しい状況でした。新型コロナウイルスとインフルエンザの流行水準が、両方とも前年比で大きく下振れしました。その中で、当社は市場シェアを高めることでこの逆風に抗い、一定の数字で着地することができました。ただし、流行水準の下振れを補うほどには至らず、当初の業績予想には売上・利益ともに若干未達となりました。前期との比較で増収増益を達成できたのは、シェアを大きく伸ばしたことによります。特に利益面では、利幅の高い製品(新型コロナ単品検査キットと新型コロナ/インフルエンザコンボ検査キット)の売上構成比が高まったことが要因です。前期はインフルエンザキットの売上構成比が22.2%でしたが、今期は17.8%に低下し、その代わりに利益率の高い新型コロナ/インフルエンザコンボキットの構成比が34.6%から42.5%に増加しました。この構成比の変化が、利益段階の損益に直結しました。
取材者:市場シェアを高めることができた要因はどういった点でしたか。
回答者:要因は大きく二つあります。まず一つ目は、在庫政策による部分が大きいと考えています。2024年6月期は、当社においても約半年間にわたり出荷調整が発生し、流行期に垂直的に立ち上がった需要に必ずしも全て応えることができませんでした。これは、当社の生産能力に限界がある中で、流行開始時期に需要が殺到するため、閑散期を経て豊富な在庫を有していた第1四半期は対応できたものの第1四半期末には在庫水準が大幅に低下し、第2四半期や第3四半期は、その期間中に生産した分をそのまま出荷せざるを得ず、需要に対して売上が限定的でした。その間に、特に海外メーカーなどがシェアを伸ばしました。
一方、2025年6月期は、毎月末に一定以上の在庫水準を確保することを目指し、閑散期も手を緩めずに一貫して生産を継続しました。これにより、需要が急増してもそれに応えられる在庫を常に一定程度持つ状態を維持し、在庫政策的に機会損失を最小化することでシェアを拡大することができました。
二つ目は、当社の営業体制、販売体制によるものです。従来から、卸売業者やクリニックとの関係性を強く維持してきましたが、特に卸売業者との関係が強化されました。前期は出荷調整がありましたが、今期は在庫水準をしっかり高め、スズケン様のご要望にも応えられる状態を一年通して維持しました。この「供給責任をしっかり果たせるメーカー」という姿勢が卸売業者に評価いただきました。これは、もともと当社製品の品質に対する高い信頼に加えて、安定した供給能力が評価され、関係がより一層深まった結果、それがシェア拡大につながったものです。また、2025年6月期からロシュ様との販売提携も開始しました。在庫をしっかり確保して流行に備えたことと、それを販売する体制をさらに強化したことで、スズケン様との関係も一層強まったため、シェアが伸びたという背景があります。
取材者:そのような在庫量を踏まえて、新工場の稼働はどのような影響をもたらしますか。
回答者:新工場が稼働すると、月間の生産能力が大きく向上します。これにより、現在は在庫廃棄のリスクを取りながら閑散期に作り溜めを行っている状況ですが、より効率的に生産を行いながら在庫廃棄リスクを小さめることが出来ると考えられます。結果として、在庫政策や廃棄損失を含め、通年でのより効率的な生産体制を構築し、全体最適化を図ることが可能になります。
取材者:その他に、主要なKPIや重要視している指標はございますか。
回答者:基本的には、当社では売上高や各段階利益、マージンなどのほか、製品別の売上構成比、在庫水準などを自社の指標として追っています。外部指標としては、市場シェア、定点観測のデータはもちろん、モデルナ様のサイトで公開されている感染者数の推計値も確認しています。これは日次や週次のデータであり、足元の状況を把握するのに非常に有効です。また、当社の売上は出荷基準で計上されますが、卸売業者から病院に流れた数をカウントする「消化数」も合わせて見ています。当社の売上計上基準は当社から卸売業者への出荷ベースですが、卸売業者に販売したものが病院へと消化されなければ、次の受注にはつながらないため、この二つの指標を重視しています。ただし、消化数は外部に公開される数字ではありません。
取材者:それでは、2026年6月期の業績予想についてお伺いします。売上高の業績予想は20,769百万円(前期比11.5%増)、営業利益は8,323百万円(同0.7%増)、経常利益は8,143百万円(同0.9%減)、当期純利益は8,613百万円(同36.4%増)という増収・増益の予想ですが、この見通しはいかがですか。
回答者:業績予想は公表している通りで、この数字を見通しています。予想の前提としては、まず市場規模の想定があります。2025年度(当社の決算期間とは一致しない)は市場規模が約5,700万テストでしたが、その前年度は約7,500万テストでした。2026年度は、この両者の中間あたりへと平常化するものと想定しています。これは、2025年がポストコロナの平均的な流行水準よりやや低く、一方2024年はかなり上振れたと判断したためです。
次に、当社がその市場で何%のシェアを獲得するかという話ですが、これは製品別に目標値を設定しており、2025年6月期と基本的にはおおむね横ばいを想定しています。若干の伸びしろはありますが、着実に達成可能な水準として保守的に見ています。
単価に関しては、2025年6月では、新型コロナ単品検査キットと新型コロナ/インフルエンザコンボキットの二つが前期比で10%前後下がる単価水準を想定しておりましたが、実際は5%程度の下落に落ち着きました。2026年6月期には数%程度下がることを想定しています。インフルエンザなどの既存製品は、単価が成熟しており、毎年1%から2%程度のわずかな下落にとどまると見ています。
取材者:中期経営計画についてもお聞かせいただけますか。
回答者:中期経営計画は幅広いテーマで策定しており、主要な施策は計画書に記載の通りです。今期からすでに四つの主要施策(POCTの進化・拡充、新たな診断技術の導入、データ活用基盤の構築、経営基盤の強化)全てに取り組んでいます。
取材者:中期経営計画にもあったM&Aや業務提携の実施の有無、検討状況について教えていただけますか。
回答者:具体的に検討している案件があればすでに開示しているはずですので、現時点では開示を要するレベルで具体的に検討しているものはありません。ただし、これまでも10社以上のマイナー出資を行ってきました。これは、当社の研究開発を全て自社で完結させるのではなく、次世代の新しい技術に投資するという考え方に基づいています。いわば、研究開発の一部を外部に委託していると捉えることもできます。これまでの投資先のうち、最近開示した3社はミドル・レイターステージのディープテックのスタートアップですが、それ以前の10社強はシード/アーリーステージのスタートアップが中心でした。これらは成功するかどうか分からない技術のシーズに、少額で投資するというスタンスです。したがって、これまでマジョリティを取得した会社は1社もありません。今後も、自社にない技術を取り込むための戦略的なアライアンスや資本業務提携を基本方針としています。具体的には、呼吸器感染症以外の感染症や慢性疾患の領域、発症前の予測マーカー、治療方針策定のためのコンパニオン診断など、当社が畑違いの領域に進出できる技術を持つスタートアップに少額出資していくことを基本方針としています。現在は、パイプラインのショートリストレベルで20〜30社を常に検討しており、中期経営計画と照らし合わせて優先度の高いところを精査しています。
取材者:新規領域での売上は、どのくらいの時期から見込めますか。
回答者:中期経営計画の最終ページで5年後の売上目標として300億円を掲げていますが、その中にある「新領域」の一部が、今申し上げたような内容です。全く新しい技術を確立し、製品化して販売し、売上が計上されるまでには時間がかかるため、この中期経営計画の期間内で計上できるものは限定的で、期間の最後のほうにわずかに貢献するイメージです。しかし、10年のスパンで見れば、既存領域を逆転するほどのポテンシャルは十分にあります。今回の計画は5年で策定しましたが、これは新しいものを語るためには5年が必要だと考えたためです。10年といったより長期の計画を立てるならば、この新領域が大きく伸びていくイメージを持っています。そのため、新領域については、中期経営計画期間以降に本格的に成長することを強調しました。
取材者:株主還元方針に変更はございますか。
回答者:株主還元につきましては、今回から累進配当を導入しました。2024年6月期と2025年6月期の配当は、配当性向30%をベースとしており、これ以上は成長投資に振り向けるために引き上げない方針でした。ただし、2024年6月期は上場記念配当を出し、2025年6月期は法人設立10周年を記念して再び記念配当を出すことで、実質的な減配を回避し、配当額を維持しました。しかし、2026年6月期以降どうなるのか、減配するのではないかという懸念が投資家から常に寄せられていました。
当社の事業は感染症の領域であるため、業績にボラティリティ懸念があるのは避けられません。投資家からすると、業績と配当額の両方にボラティリティがある状況を懸念されていると理解しています。そのため、配当金額について、下方硬直性の高い方針を掲げることが、投資家の皆様の安心につながると整理しました。一時的に業績が上下しても一喜一憂することなく、中長期では確実に成長できるという自信があります。したがって、2026年6月期以降は、当期(2025年6月期)の配当28円を下限とし、今後上がることはあっても下がることはないとコミットさせていただきました。
一部の長期目線の投資家からは、「配当を出しすぎて、今後の成長戦略に必要な投資力を本当に確保できるのか」というご意見もいただきましたが、当社の資金繰りを十分に精査した結果、今後の成長戦略に資金を投じても、この配当額は維持できると判断しました。
また、自社株買いについても否定していません。株価が割安だと判断した局面では、自社株買いを行う意向があります。自社株買いした株式を消却するのか、役職員へのインセンティブとして付与するのか、M&Aに充てるのかといった方針も今後明確にする必要がありますが、自社株買いを一定程度実施する意向があることも記載しました。
取材者:最後に、直近の状況について何かトピックスやニュースリリースがございましたら教えていただけますか。
回答者:まずは中期経営計画の策定に集中しており、8月20日に公表しました。現在は、これを踏まえて投資家様やアナリスト様の皆様から取材をいただいている状況です。現時点で開示すべき情報はすべて開示済みと考えています。常に前向きな施策を推進しており、開示可能な状況になったタイミングで、適切に情報共有していきたいと考えています。
取材者:中期経営計画公表後の投資家の反応はいかがですか。
回答者:正直なところ、まだ2025年6月期の決算状況に関する質問に興味関心が集中している状況です。それが一通り落ち着いた後で、より先の計画に関する質問に移行していくと思います。中期経営計画については、お会いして会話する中では概ねポジティブなフィードバックをいただいています。しかし、中期経営計画は良いことを中心に書くため、ネガティブなフィードバックがしにくいだけかもしれないと冷静に受け止めています。
取締役経営企画室長 永井 淳平 様
取材アーカイブ
決算概要
第3四半期累計期間の売上高は過去最高を更新し、各段階利益は前年同期比で増益、利益率も前年同期より改善されました。利益率の改善は、相対的に利益率が高い新型コロナ単品検査キット及びコンボ検査キットの売上構成比が増加したことが主因となります。
セグメント別または事業別の増減要因
インフルエンザ検査キットの数量減少、各製品の単価下落によるマイナス影響がありながらも、新型コロナ単品検査キットのシェア向上による販売数量の増加、コンボ検査キットのマーケット拡大分の着実な取り込みにより増収となっています。業績予想策定時では、競争環境の変化から新型コロナ単品検査キット及びコンボ検査キットの販売単価を前年通期実績に対して10%程度下落する想定としていたものの、第3四半期までの実績においてはそのような大きな下落は見られていません。
季節性・一過性要因の有無と影響
当社を取り巻く事業環境として、インフルエンザが冬、新型コロナは夏と冬の2回、それぞれ流行すること、流行の兆候が見られたタイミングで卸による在庫確保(買い込み)が発生するため、夏は7~8月、冬は12~1月ごろに大きな売上が計上されます。当第3四半期においても、年末年始のインフルエンザの急激な流行を受けて、1月に大きな売上を計上。その後2月以降は市中在庫(卸在庫)の消化局面に移行しています。
トピックス
直近のトピックスは、(1)バイオベンチャー3社とそれぞれ資本業務提携を実施、(2)中期経営計画を8月20日に発表予定、(3)東証プライム移行について、審査が長引く中で基準期が変わってしまうことから取り下げ、の3点ございます。
Q:成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックス、計画にない新たな戦略的施策等を含む)はなんでしょうか?
A:当社はこれまで、抗原検査の簡易性と迅速性を活かし、「呼吸器感染症」の「スクリーニング検査」の領域で事業を展開し、新製品投入やシェア拡大により持続的な成⻑を実現してまいりました。今後の成長ポイントとしては、⾼齢化等に伴う社会課題の解決に向け、感染症領域の拡充に加えて、慢性疾患領域や、疾患の罹患前後における検査へと、事業領域を拡大してまいります。この実現に向けて、当四半期においては既存の感染症領域から事業ドメインを拡⼤するために、戦略的に重要な投資を実行いたしました。また、予てより進めている新工場の竣工や新製品や新たなPOCTの開発、更には独自の検査サービスの提供の準備を進めています。
Q:受注・競合状況についてご説明ください。
A:6月までは感染症の流行が下火であるため、新たな受注が生じづらい状況にあり、1月に卸に対して納品した市中在庫が消化されている局面にありました。競合他社の状況としては、ポストコロナにおいて顧客に選ばれるメーカーとそうでないメーカーがある程度明確になり、市場から撤退するメーカーが生じるなど、競争社数は減少傾向にあります。
Q:M&A、業務提携の実施または検討状況と、それに伴う影響についてご説明ください。
A:M&Aにおいて具体的な検討事実はございません。資本業務提携については引き続き検討を進めているが、短期的に業績に大きな影響が生じるものはございません。
Q:中期経営計画の内容や進捗状況等をご説明ください。
A:8月の発表にてご説明いたします。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:8月の決算発表において来期配当額の見通しを記載し、中長期の株主還元方針については同月発表する中期経営計画でご説明いたします。
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IR担当
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CP&X
ビジネスモデルや事業内容
株式会社タウンズは、静岡県伊豆の国市に本社を置く体外診断用医薬品メーカーである。POCT(Point of Care Testing)の体外診断用医薬品、特に抗原検査キットの開発・製造に注力している。感染症検査キットは業績が感染症の流行に左右されやすい側面があるため、慢性疾患領域への展開も目指している。
創業の経緯と転機となった出来事
1987年に現社長の父が株式会社カイノスから独立する形で創業。創業当初は大手製薬会社から性能評価試験を受託する形で事業を運営していた。1990年代後半にイムノクロマト法に着目し、感染症検査への応用を構想、2000年代に入り抗原検査キットを市場に投入した。
直近の決算状況
2025年6月期は、コロナ・インフルエンザ共に流行規模が想定を下回ったものの、シェア拡大と単価上昇により、業績は概ね想定を上回る見込みである。コロナ・インフルコンボキットの保険点数が2024年6月に引き下げられたが、需給逼迫により単価は想定より堅調に推移している。
特徴や強み
感染症の抗原検査キットにおいては、主要製品で40%~45%のシェアを誇り、マーケットシェア1位を獲得している。特に。製品競争力として、高い検査精度(感度・特異性の両立)、短い判定時間、長い有効期限、検査の手技の簡便性などが挙げられる。効率的な販売体制も強みであり、卸売業者との連携とMRによる重点顧客への直接フォローを組み合わせている。
成長戦略
短期的には、コンボキットのシェア拡大と新工場稼働による生産能力向上、効率化を推進する。中長期的には、慢性疾患領域への事業拡大、予防・未病検査や治療後のモニタリング検査など、検査タイミングの拡張と対象疾患の拡大を目指す。
株主還元策
配当性向30%を基本方針とし、特別なイベント時には記念配当も実施する。中長期的な株主還元方針は、8月開示予定の中期経営計画で詳細を示す予定である。
今期の取り組みやトピックス
2024年6月に東証スタンダードに上場。塩野義製薬とのコ・プロモーション契約により、同社のMRを通じて製品の情報提供・認知度向上を図っている。2025年12月には新工場が稼働開始予定であり、生産能力の拡大と効率化を見込む。
Q:事業内容やビジネスモデル、特徴や強みについてご説明いただけますでしょうか。
A:2025年6月期中間期の決算説明資料に基づき、ご説明申し上げます。株式会社タウンズは、本社を静岡県伊豆の国市に置き、体外診断用医薬品を製造しているメーカーです。創業以来、静岡県の沼津や三島といった静岡県東部において事業を展開してまいりました。株主構成につきましては、創業家である現在の代表取締役社長、野中氏は創業者のご子息であり、2代目の社長です。野中氏は元々、公認会計士、M&Aアドバイザリーファーム、コンサルティングファームなどで業務に従事しておりましたが、その後、父が創業した会社に入社いたしました。大株主としては、金融投資家が45%を占めています。上場以前よりPEファンドがおり、トラスターキャピタルという香港系のファンドが、上場前に筆頭株主として過半数を保有しておりました。2024年6月に東証スタンダードに上場した際、PEファンドは一部を売却いたしましたが、依然として4割以上を保有している状況です。そのため、プライベートエクイティファンドの今後の動向は、投資家の皆様からもご質問をいただくところです。取締役の一番下に記載されております伊藤は、トラスターキャピタルからの派遣役員であり、トラスターキャピタルの日本代表を務めています。私、永井は、IRおよび経営企画の責任者を務めています。
企業理念といたしましては、「独自の体外診断用医薬品により人々の生活に安心と潤いを届けます」ということを掲げています。体外診断用医薬品とは、人体から採取されるサンプル、例えば血液、尿、便などを対象として、様々な疾患を検査するための検査キットや検査医薬品のことです。体外診断用医薬品の中でも特に注力してまいりましたのは、POCT(Point of Care Testing)、いわゆるPOCTと呼ばれる、臨床の現場で患者様の傍らですぐに検査結果が判明するような製品です。
POCTの代表的なものとしまして、抗原検査キットがございます。新型コロナウイルス感染症により注目を浴びましたが、弊社は新型コロナウイルス感染症が流行する以前から、インフルエンザをはじめとする様々な感染症において、抗原検査キットを提供しておりました。事業内容といたしましては、先ほど申し上げましたPOCT、中でも抗原検査キットを幅広く製造しており、新型コロナウイルスとインフルエンザを同時に検査するコンボキットや、元々は結核やアデノウイルスなどから始まりましたが、RSウイルス、溶連菌、そして昨年話題となりましたマイコプラズマなどを検査するキットを製造しています。感染症の検査キットは、感染の流行状況によって業績が左右されるため、短期的には業績が変動しやすいという側面がございます。そのため、持続的な成長および業績の安定という観点から、慢性疾患の領域で様々な疾患を対象とした検査薬を開発し、製造技術を向上させることが、中長期的には不可欠であると考えています。
慢性疾患領域への取り組みといたしまして、まず手始めに亜鉛濃度検査キットを2023年に発売いたしました。現在の売上規模としては非常に小さく、収益貢献もまだこれからではございますが、慢性疾患の領域で事業を展開していくという意思表示として、決算資料にも記載しています。
Q:シェアや競争力についてご説明ください。
A:感染症の抗原検査キットにおいては、主要製品でマーケットシェア1位を獲得しており、特にシェアが高いものでは40%から45%程度のシェアを有しています。一方で、単価も競合他社と比較して高めに設定しています。価格が高いにもかかわらずシェア1位を獲得できている背景には、弊社の競争優位性がございます。競争優位性といたしましては、製品競争力、効率的な販売体制、そして研究開発力が挙げられますが、今回は製品競争力と効率的な販売体制に焦点を当ててご説明申し上げます。
まず、製品競争力についてですが、抗原検査キットにおいて最も重要なのは検査精度です。検査精度は、特異性と感度という要素に分解できます。感度とは、陽性者を正しく陽性と判定する力、つまり偽陰性を出さない力です。特異性はその逆で、陰性者を正しく陰性と判定する力、つまり偽陽性を出さない力です。感度と特異性はトレードオフの関係にあり、どちらかを高めるともう一方が低くなるという側面がございますが、長年の知識や技術の蓄積によって、高い次元で両立しています。検査精度以外にも、抗原検査キットの製品構成要素といたしましては、判定時間の短さ、有効期限の長さ、価格、そして検査の手技の簡便性などが挙げられます。判定時間が短い方が、医療機関のオペレーション効率が向上し、患者様の待ち時間も短縮できます。有効期限が長いほど、医療機関などで在庫管理がしやすくなります。例えば、弊社のインフルエンザ検査キットは、有効期限を27ヶ月程度まで延長しています。一方で、比較的新しい製品では、最初に発売する際には有効期限が短くなりがちですので、一部の製品につきましては弊社の製品も有効期限が12ヶ月程度のものもございますので、今後さらに延長していく必要がございます。また、価格の他には「手技の簡便性」も良い製品の構成要素であると考えます。これはいかに簡単に、例えば検査技師ではない看護師の方でも使用できるかといった視点です。弊社では、競合他社と比べ、これらの要素をバランスよく全体的な最適化を図ること、感度と特異度を高い次元で両立できていることから、高いシェアと高い単価が両立できていると考えています。
Q:他社と比較し、感度と特異度という部分でバランスが取れているという理解でよろしいでしょうか。
A:抗原検査キットにおいて多くの医療機関が最も重要視するポイントが検査精度ですので、まずもっては感度と特異度が高い次元で両立していることが重要であると考えています。他の要素においても大きな欠点なくバランスの取れた性能を有していれば、他社に対して優位性を確立できると考えており、これが主力の製品のいくつかであると考えています。ただし、主力製品の中でもコンボキットに限っては、シェアがまだ1位ではありません。これは、他社と比較して有効期限や判定時間などが劣っていることが要因であり、現在改善に取り組んでおります。
Q:検査キットを使用する際に、判定時間が異なると精度に影響を及ぼすのでしょうか。
A:一般的に、抗原抗体反応が起こる時間を長く確保すれば、精度は向上いたします。しかし、より短い時間で同等の精度を出すことは非常に難易度が高くなります。そのため、何分で判定するという時間設定は、各社の戦略的な判断が分かれるところです。
Q:長く検査を実施した場合に、感度が別のものに反応してしまい、偽陽性を示すということは基本的にないと考えてよろしいでしょうか。
A:はい、そのようなことが起こらないように配慮しています。
補足的な話になりますが、表面的なスペックは各社の製品であまり差がないように見受けられても、医療現場で長年製品を使用されている先生方はメーカーによる実体的な性能差をよくご理解されているため、価格よりも精度を重視される先生方においては弊社の製品を選択していただいているケースも多いと考えております。
Q:販売体制についてご説明ください。
A:弊社は効率的な販売体制を構築しています。全国に30数名のMR(医薬情報担当者)を配置しており、北は北海道から南は沖縄までをカバーしています。ただし、日本全国の医療機関、例えば病院やクリニックの数は非常に多く、約8万件から10万件です。そのため、30数名のMRだけで全ての医療機関をカバーすることは現実的に難しいです。そこで、弊社では基本的に卸売業者に販売し、卸売業者のMS(マーケティングスペシャリスト)の方々に医療機関との接点を持っていただいています。医療機関から卸売業者に対して検査キットの注文が入った際に、優先的に弊社の製品を納入していただけるように、卸売業者に対する営業活動は重要です。さらに、エンドユーザーとなる病院やクリニックの中でも、関係性の深い先に対しては、弊社のMRが直接訪問してフォローしています。このように、卸売業者との信頼関係を構築し、卸売業者における弊社の製品のインハウスシェアを高めることが、弊社の事業拡大の背景にある重要な要素です。具体的には、製品の精度を継続的に改善し、高品質な製品を提供し続けることに加えて、流行する時期に需要が急増した際に、各メーカーが生産能力を超えて在庫切れや出荷調整を行う中で、弊社は在庫リスクを負って生産を継続し、供給責任を果たしてきた実績がございます。このような供給責任を果たす姿勢が、卸売業者からの評価を高め、卸売業者との関係強化、そしてシェア拡大につながっています。
Q:供給責任という点において、在庫を確保できる背景には有効期限の長さも関係しているのでしょうか。
A:はい、有効期限の長さも影響しています。ただし、有効期限の長さだけで判断しているわけではございません。一部製品、例えばコンボキットなどは、有効期限が12ヶ月と比較的短いため、大量に製造しすぎると売れ残った場合に廃棄リスクを抱えることになります。一方で、コンボキットは現在市場で求められている製品でもあるため、供給責任を果たすためには、リスクを負って在庫を確保する必要がございます。最終的には、限界利益率なども考慮して判断いたします。有効期限が長くない製品についても、必要に応じて在庫リスクを取って供給責任を果たすというスタンスで臨んでいます。
Q:塩野義製薬株式会社様との提携についてご説明いただけますでしょうか。
A:業界でいうところのコ・プロモーション契約というものです。具体的には、塩野義製薬株式会社様は弊社の商流には入らず、塩野義製薬株式会社様のMRが、自社のワクチンや治療薬などの販売活動の中で、弊社の検査薬についても情報提供や認知度向上、宣伝活動を図ってくださっています。医療機関の中には、治療薬やワクチンは高額であるのに対して、検査薬は比較的安価であるため、塩野義製薬株式会社様が推奨するのであれば採用してみようと考える施設もあり、検査薬を希望される場合、卸売業者の株式会社スズケン様に問い合わせがきて、株式会社スズケン様から納品されるという流れになっています。弊社は塩野義製薬株式会社様に対して、宣伝していただいた対価としてフィーを支払っています。弊社にとっては、塩野義製薬株式会社様のMRが小規模なクリニックも含めて訪問してくださるため、新規施設の開拓につながるというメリットがございます。塩野義製薬株式会社様のMRの数は、弊社のMRと比べて非常に多いため、大きな効果が期待できます。このような提携も、弊社のシェア拡大の背景にある要因の一つです。全体といたしましては、やはり良い製品を提供することが最も重要であると考えており、実際に製品を使用していただくことで、その品質の良さを実感していただき、徐々に事業が拡大してきたと考えています。
Q:外部環境についてご説明ください。
A:会社を取り巻く外部環境について少しご説明申し上げます。投資家の方の中には、新型コロナウイルス感染症の指定感染症区分が5類に変更した後、やがて検査が行われなくなるのではないかと考えている方が、特に海外の機関投資家の中にいらっしゃるのですが、コロナウイルス感染症もインフルエンザと同様に、今後も繰り返し流行し、完全になくなるということはないと考えています。感染力や致死率などの観点では依然としてコロナウイルス感染症は厄介な病気であり、今後も何度も流行を繰り返すものと考えています。ただし、流行の規模感は年によって変動があるため、正確な予測は難しいです。業績予想を立てる上では、基本的には過去の平均的な水準を参照しながら、流行が起こるものとして見込んでいます。そして、その流行に対してどの程度のシェアを獲得できるかを予測し、販売数量を算出いたします。さらに、製品ごとの価格を想定し、これらの数値を掛け合わせて積み上げることで売上高を算出するというのが、基本的なモデルの組み立て方です。こちらは、日本における抗原検査キットの市場規模の推移を示したグラフです。こちらでお伝えしたいことは、コロナ禍以前においても、インフルエンザを中心に、年間数千万回の抗原検査による感染症検査が日本で行われていたということです。グラフのグレーの部分は、インフルエンザ以外の溶連菌、アデノウイルス、マイコプラズマなどのその他の感染症の市場規模を示しています。これらの市場規模を合わせると、年間3,000万回程度の検査が行われておりました。このような規模で長年感染症検査が行われてきた国は、海外にはほとんどなく、日本は非常に特殊なマーケットと言えます。少なくとも日本においては、このような検査がしっかりと根付いている国であり、今後もこのマーケットはある程度の規模を維持していくと考えています。弊社は、主要な製品において高いシェアを獲得していますが、コンボキットにおいては、前述のとおり判定時間や有効期限などで他社製品に対して劣っている部分があり、シェアが2位にとどまっています。これらの製品については、今後改良品を投入する予定です。特に、コンボキットについては、改良品を投入することで、コロナ単品やインフルエンザ単品と同程度のシェアまで引き上げていきたいと考えています。これが、ごく短期的な成長の見通しです。
Q:今後の成長戦略についてですが、まずは今後の改良品や既存製品のシェアをしっかりと高めていくこと、それに加えて、慢性疾患への新商品を出していくという2つの軸で成長を目指していくという理解でよろしいでしょうか。
A:今後の成長戦略について、短期的、中長期的に分けてご説明申し上げます。ご指摘いただきました通り、短期的にはコンボキットのシェアを引き上げることが目標です。また、現在建設中の新工場が今年の12月に稼働を開始いたします。新工場の稼働により、生産能力が向上するだけでなく、より効率的に、コストを削減しながら製造できるようになることを期待しており、薬局OTC市場や海外市場など、これまでは収益性の観点や国内医療機関への安定供給を優先していたことから参入しなかった市場にも販路を拡大し、売上高、利益額を伸ばすことができると考えています。ただし、これは2、3年かけて実現していく計画です。より短期的には、先ほどのコンボキットの性能改善によってシェアを拡大し、売上、利益を伸ばしていくことが目標です。中長期的な成長戦略といたしましては、2024年8月に開示した前期の通期決算説明資料に一部を記載しておりますので、こちらを基にお話しします。これまでは、呼吸器感染症のスクリーニング検査キットを製造、販売しておりましたが、今後は慢性疾患の領域にも進出し、検査シーンや検査モダリティを拡張するという方向性を掲げています。国策といたしましても社会保障費が膨らむ中で、より早期に病気を発見し、適切に対処することで、医療費を抑制し、健康寿命を延伸することが掲げられています。この流れをとらえ、感染症だけでなく、慢性疾患の予防やスクリーニング、モニタリングといった領域にも注力していくことが、戦略として重要であると考えています。これらは8月をめどに中期経営計画の中で改めて発表したいと考えております。
Q:慢性疾患の検査薬は、他社もすでに製品を提供しているのでしょうか。
A:慢性疾患の検査、という文脈ではスタートアップから大手まで各社が注力領域として取り組んでいます。弊社といたしましては、既存の検査技術に対して、より簡便に、高精度、低コスト、低侵襲といった、何かしらの優位性を持つ次世代型の検査技術で置き換えを目指すという方向性もございますし、これまで測定できなかったものを測定するという、より技術的に難しい領域に挑戦していくという方向性もございます。慢性疾患の検査領域は、一概には語れない部分がございますが、弊社だけで全てを自社開発することは、企業規模や体力的に難しいですし、競争も激しい領域です。そのため、次世代型の技術を持つバイオベンチャーなどと戦略的な資本提携を行いながら、共同で開発したり、事業展開していくという戦略で、これまでも様々な投資を行ってきました。
Q:新規工場の設立によって、マーケットを広げていくためには、人員もさらに採用していく必要が出てくるかと思います。そのような成長投資に対する資金調達の面も、上場された目的の一つでしょうか。それとも、上場の目的は別のところにあるのでしょうか。
A:上場の一番の目的は、上場前に当社株式の6割を保有していたPEファンドの出口戦略です。ただし、IPOという手段が選ばれたのは従業員のモチベーション向上、採用の強化、そして資本提携などを通して外部の技術を取り込んでいく上で、より有力なパートナーとの出会いや、提携先から選ばれるための社会的信用を補完するという上場のメリットも期待していたからです。採用については、まだ上場による効果をすぐに実感できているわけではございませんが、提携先との話は、弊社よりも規模の大きい会社や、以前から検討しておりましたスタートアップなど、質、量ともに多くなっており、効果を実感しています。資金調達については、上場前から金融機関からの借入などでご支援をいただいておりましたが、上場によって資金調達力はさらに向上していると考えています。
Q:決算の状況についてお伺いいたします。感染症の流行などもある中で、今期のここまでの業績は想定通りに進捗していると見てよろしいでしょうか。
A:業績については、数量と単価に分けてご説明申し上げます。さらに、数量については、コロナとインフルエンザに分けてご説明いたします。
まず、コロナもインフルエンザも、流行の規模は想定よりも小さかったです。想定と申しますのは、過去の標準的な流行の水準などを参照しているのですが、前年の流行規模と比較しても、かなり小さかったため、数量は当初の想定を下回りました。一方で、市場規模に対する弊社のシェアは高く維持できており、むしろ今期に入ってからは引き上がっている部分もございます。シェアを大きく引き上げることで、流行規模が想定を下回ったことによるマイナス影響を相殺いたしました。そのため、数量ベースで申し上げますと、一部品目では若干未達のものもございますが、全体としては想定を上回っている部分もございます。主力製品の単価については、想定よりも概ね上回っています。当初は、前年の実績に対して10%程度下落するという保守的な見通しを立てておりましたが、上半期はほとんど下落しておりません。単価が下落するという見通しを立てた背景といたしましては、インフルエンザなどの既存の感染症については、価格はほとんど変動がなく、価格に影響を与えるのは保険点数です。インフルエンザなどの保険点数はほとんど動かず、2年に1度、1%から2%程度下落するというのが通例です。そのため、インフルエンザなどの既存感染症については、価格は横ばいで推移するか、緩やかに減少するという前提で業績予想を立てています。一方で、コロナとコロナ・インフルのコンボキットについては、2024年6月に保険点数が大幅に引き下げられました。弊社といたしましては、いずれ保険点数が引き下げられることは想定しておりましたが、とはいえ医療機関側からすると、薬価差益が減少するため、メーカーや卸売業者に対して値引きを要請してくる可能性があると考えておりました。そのため、それらの製品単価については保守的に前年の通期実績比で10%程度下落するという見通しを立てておりましたが、結果的には需給環境が逼迫しており、引き続き供給不足の状態が続いたため、単価は想定よりも上振れました。
Q:単価については、来期以降も不透明な状況ということでしょうか。
A:単価が大きく下がるとすれば、今期だろうと考えておりました。保険点数が昨年の6月に下がって、それを受けて単価が下がるかどうかは、今期に起こる事象だと考えておりました。今期ほとんど単価が下がっていないということは、単価の下落が後ろ倒しになったとしても、来期10%も下がるとは考えにくいです。来期以降は、インフルエンザなどと同じように、年に1%、2%程度緩やかに下がっていくという状況になるのではないかと考えています。
Q:創業の経緯について、お聞かせいただけますでしょうか。
A:創業は1987年で、現在の社長である野中氏の父が、株式会社カイノスで開発部長をしており、独立する形で沼津にて創業いたしました。創業当初は、自社の独自製品を開発、製造するというよりも、大手製薬会社などの性能評価試験を受託しながら、事業を拡大せずに運営していくという期間が一定続きました。その後、現在の抗原検査キットの基本原理となっているイムノクロマト法という技術に着目し、この技術を用いて感染症を検査したら面白いのではないかと考えたのが90年代後半だったと伺っています。そこから数年間研究開発を行い、2000年代に入って、現在の抗原検査キットを市場に投入していきました。決算資料に記載されている会社設立年月日の2016年4月というのは、ファンドが入ってきた際に、ビークルとして設立した法人の設立年月日のため、本質的な創業の年月日ではありません。
Q:イムノクロマト法を発見されたのは貴社なのでしょうか。
A:イムノクロマト法自体は、学会や論文などで発表されていた技術です。この技術を用いて感染症を測定したら面白いのではないかという点に着目し活用したのが弊社ということです。
Q:株主還元策や方針についてお教えいただけますでしょうか。
A:株主還元策は、配当性向30%を基本方針として開示しています。30%を基本としつつ、何か特別なイベントがあった場合には、記念配当などを実施しています。例えば、2024年6月期においては、東証スタンダードに上場したことを記念して、特別配当を実施し、配当性向は50%に近い水準となりました。2025年6月期に関しましては、先ほど申し上げた弊社の設立10期目となりますが、前期に50%近い配当性向を出している中で、大きく配当性向を下げてしまうと、株価に対する市場の評価が定まっていない中で、失望されることを避けたかったという意図もあり、年間配当の予想額ベースで、前期が27.75円だったのに対して、28円と小幅ながら増配の形といたしました。来期以降の配当については、現時点では明確にお約束することはできませんが、東証プライムへの移行準備をしていることを開示しており、そう遠くない将来にプライム市場へ移行したいと考えています。プライム市場へ移行したタイミングで、記念配当を出すことも考えられます。また、来年は新工場も稼働し、工場に対する補助金も入ってくるため、利益が増加することも見込まれます。そのような前向きな材料もいくつかございます。年間の配当額ベースで、投資家の皆様に大きく失望されるような水準にはしたくないという考えです。一方で8月には中期経営計画を開示する予定ですので、その中で株主還元の中長期的な方針や、成長投資を含めたキャッシュアロケーションについて開示したいと考えています。基本的には、利益を闇雲に内部留保するのではなく、株主還元か成長投資のいずれかに充当し、資本効率を悪化させないということを経営陣としては考えています。
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取締役経営企画室長 永井淳平様
