20250121
Q: 貴社のM&A仲介事業の特徴を教えてください。
A: 当社は、直接提案型の営業手法で、小型案件(一組当たり売上高4,000万円規模)を中心に取り扱っています。このセグメントは競争が比較的緩やかで、大手M&A仲介会社と差別化できています。中小企業は数が多く、案件獲得がしやすいという点も特徴です。
Q: コンサルタント1人当たりの売上高が高い要因は何ですか?
A: コンサルタント1人当たりの売上高は7,000万円を超えており、B社を除く大手3社と遜色ない水準です。これは、当社が、1人のコンサルタントが営業からクロージングまで一気通貫で対応する体制を構築しているためです。分業制の会社と比べて、1人当たりの成約件数が高くなっています。
Q: 優秀な人材の採用・育成方針を教えてください。
A: 当社では、1人のコンサルタントが最初から最後まで案件を担当するため、幅広い能力を持つ人材が必要です。そのため、厳選採用と充実した教育体制で人材育成を行っています。平均コンサルタント数を毎年25%ずつ増やす計画です。
Q: 売上総利益の減少要因にインセンティブの高いソーシング案件とありますが、具体的にどのような案件ですか?
A: ソーシング案件とは、コンサルタント自身が直接営業により獲得した案件のことです。会社に持ち込まれた案件を割り振られたものは非ソーシング案件と呼びます。ソーシング案件はインセンティブ率が高く設定されているため、売上総利益率が低くなる傾向にあります。なお、今期第2四半期(累計)の売上総利益率が前年同期比で低下しているのは、今期第2四半期(累計)の売上総利益率が低いのではなく、前期第2四半期(累計)の売上総利益率が異常に高かったことが要因です。
Q: 中型・大型案件が増加している要因は何ですか?
A: 経験豊富なコンサルタントの増加が要因です。2019年以降、コンサルタントの採用を積極化しましたが、当時採用したコンサルタントの多くが離職せずに定着したことで、直近において3年以上の実務経験を持つコンサルタントが増加し、中型・大型案件の獲得につながっています。また、今後は、上場による社会的信頼性の向上に伴い、中型・大型案件の獲得が徐々に増えることが見込まれます。
Q: 貴社の創業の経緯を教えてください。
A: 2007年に、代表取締役社長藤井と取締役副社長の籠谷で共同創業しました。当時は、ホームページやダイレクトメールによるインバウンド主体の営業スタイルを採っており、少人数で高効率なビジネスモデルで運営していました。その後、M&A仲介会社の急激な増加を背景に、2019年に上場を目指す意思決定を行ったことから、安定的な成長を実現できるビジネスモデルへの転換が必要となりました。そこで、2020年からアウトバウンド型の営業モデルに転換し、コンサルタントの積極的な採用を開始しました。
Q: 完全成功報酬制を採用しているのはなぜですか?
A: 創業当初から完全成功報酬制を採用しています。着手金や中間金を取らず、M&Aが成立した場合にのみ報酬を得る仕組みです。これは、顧客の心理的なハードルを下げ、より多くの案件獲得につなげるためです。上場企業では、当社のみが売り手・買い手ともに完全成功報酬制を採用しています。
Q: 株主還元策について教えてください。
A: 株主還元については、まずは内部留保の充実を優先しますがM&A仲介事業は投資を必要としないビジネスであるため、将来的には、キャッシュフローの一定割合を株主還元へ配分できる見込みです。
取材者: 事業内容やビジネスモデル、特徴や強みなどをご説明ください。
回答者:19ページの図は上場するM&A仲介会社8社について、メインで取り扱っている案件の規模感を縦軸に、主要な営業手法を横軸にとり、プロットしたものです。
まず、営業手法については、各社で大きく異なっており、この図の左側のB社・F社と当社は、直接提案型の営業手法をメインとしています。直接提案型とは、ダイレクトメールを送付した上でコールドコールを行い、アポイントを取得し、売却の提案を行う営業スタイルを指します。
一方、D社・E社・G社は、金融機関や会計事務所からの案件紹介をメインにしています。中央のA社・C社は、金融機関等からの紹介と直接提案型の両方を採用するハイブリッド型になります。
この業界において、大型案件は売上単価1億円以上の案件を指しますが、それをメインに扱っているのはB社で、A社・C社・F社は、案件単価5,000万円以上の中型案件をメインターゲットとしています。
そして、小型案件をメインに扱っているのが、当社とD社・E社・G社ですが、D社・E社・G社は金融機関からの紹介を主体としている点が、直接提案型営業を主体としている当社と異なっています。この図のとおり、当社は直接提案型で小型案件セグメントを専門とする唯一の上場仲介会社になります。
この小規模案件セグメントの特徴としては、競争が比較的緩やかである点が挙げられます。大手4社もこの領域で営業活動を行っていますが、当社は小型案件セグメントに特化した報酬体系を採用しているため、営業の現場で大手4社と競合した場合でも、価格面での優位性があります。また、小規模な企業ほど数が多くなるため、アプローチ可能先が多くなり、他社と比べて案件獲得の難易度が低いという特徴があります。
直接提案型を採用しているため、営業先を主体的に選択できる点も強みです。紹介案件をメインで扱うD社・E社・G社とは異なり、当社は大型案件、中型案件にもアプローチできるため、売上単価を主体的に上昇させていくことが可能となっています。
また、上場による信頼性の向上も、中長期的には売上単価の上昇に寄与すると考えています。実際に、上場している大手4社は、上場後に売上単価が右肩上がりで上昇しており、当社も昨年上場しましたので、今後は売上単価が徐々に上昇していくと考えています。
取材者: 各社の営業手法や案件の規模感が異なる中で、経営指標を比較する有効な方法は何でしょうか。
回答者: コンサルタント1人当たりの売上高で比較することが有効と考えています。21ページの表に記載のとおり、当社は2024年5月期実績ベースでコンサルタント1人当たり売上高が7,000万円を超えており、B社を除く大手3社と遜色のない水準にあります。
売上高から一定割合をインセンティブとしてコンサルタントに還元するため、コンサルタント1人当たり売上高は、非常に重要な指標であると考えています。コンサルタント1人当たり売上高が5,000万円を下回る水準では、例えば売上高のうち30%をコンサルタントに還元したとしても年収1,500万円に満たないため、優秀なコンサルタントのリテンションや新規採用が困難になります。
当社は1件当たりの売上高は低いものの、1人当たりの成約件数を多くすることで7,000万円程度のコンサルタント1人当たり売上高を確保しています。これにより、コンサルタントに十分なインセンティブを還元することができ、コンサルタントへの他社への転職等を防ぎつつ、安定的にコンサルタントを増員することが可能となっています。
また、当社は小規模案件セグメントに注力しており、それに合致した報酬体系を採用しています。当社の報酬体系の特徴の一つとして、完全成功報酬制を採用している点が挙げられます。上場企業で、売り手・買い手双方から着手金、中間金を一切徴収せず、完全成功報酬制を採用している企業は当社のみです。
また、最低成功報酬額についても、小規模案件セグメントにおいて価格訴求力がある水準に設定しています。具体的には、大手仲介会社は、最低成功報酬額を2,000万円又は2,500万円に設定していますが、当社は1,500万円に設定しており、大手仲介会社よりもリーズナブルになっています。
さらに、成功報酬の計算基準についても優位性があります。大手仲介会社のうち一部の会社は売買金額に負債を加えた額に一定のパーセンテージを掛けて報酬を計算する総資産レーマン方式を採用していますが、当社は売買金額にのみパーセンテージを掛ける株価レーマン方式を採用しており、この点でも他社と比較して価格訴求力を有しています。
取材者: 貴社のコンサルタント1人当たりの成約件数は、他社と比較して多いように見受けられますが、その要因は何でしょうか。
回答者: 当社は営業からクロージングまで、基本的に1人のコンサルタントが一気通貫で対応するスタイルを採用しています。他社では、FA担当、エグゼキューション担当、商談担当、資料作成担当などに業務が細分化されている場合があり、1つの案件に3~4人が関わるケースもあります。
分業制を採用している企業の場合、たとえば、1つの案件に4人が関わるとすれば、当社の4倍の案件を成約させなければ同じ生産性は達成できません。しかし、そこまで多くの成約を出せている企業は現状では存在しないため、結果的に当社のコンサルタント1人当たりの成約件数が多くなっています。
取材者: 優秀なコンサルタントの採用・育成に関する方針はございますか?
回答者: 当社では1人のコンサルタントが最初から最後まで一気通貫で業務を行う必要があるため、幅広い能力を持つ人材が求められます。そのため、闇雲に人数を増やすことは難しく、厳選採用と育成が重要となります。
具体的には、前期末のコンサルタント数に対して25%の純増を目標とする採用計画を立てており、これが厳選採用と育成を両立できる上限であると考えています。
この業界の売上高は、「1件当たり売上高 × 1人当たり成約件数× コンサルタント数」で算出されます。コンサルタント数は成長ドライバーとなりますが、当社のビジネスモデルでは平均コンサルタント数を25%ずつ増やすことが上限となります。
取材者: 人員の伸びと売上の伸びの関係については、どのようにお考えでしょうか。
回答者: 売上高の伸びは、「1件当たり売上高」「1人当たり成約件数」「コンサルタント数」の3要素で決まります。現状では、コンサルタント数をコントロールして増やすことが、最も現実的な成長戦略であると考えています。
取材者: 売上総利益の減少要因として挙げられている「インセンティブの高いソーシング案件」とは、具体的にどのような案件でしょうか。
回答者: はい。4ページの注釈に記載のとおり、ソーシング案件とは、コンサルタント自身が直接営業して獲得した案件を指します。一方、非ソーシング案件とは、会社に持ち込まれた案件です。当社のインセンティブの計算上、ソーシング案件には20%のソーシングインセンティブが付与されますが、非ソーシング案件には付与されません。そのため、非ソーシング案件の方が、売上総利益率が高くなります。
なお、今期の第2四半期(累計)の売上総利益率61%が低いというよりは、前期第2 四半期(累計)の売上総利益率75%が異常に高かったというのが実態です。
取材者: 大型案件の増加は、売上総利益率にどのような影響を与えるのでしょうか?
回答者: 大型案件が増加した場合、エグゼキューション部分のインセンティブ率は下がりますが、ソーシング案件の場合は大型案件でも20%のソーシングインセンティブが付与されます。そのため、大型のソーシング案件が多くなると売上総利益率は下がる傾向にあります。なお、今期第2四半期(累計)の売上総利益率61%は、当社の想定する案件構成における下限付近であると考えており、売上総利益率がこの水準からさらに大きく低下することは想定しづらいと考えています。
取材者: 中長期的に見て、大型案件は増加する傾向にあるのでしょうか?
回答者: 中長期的には増加傾向が続くと考えています。2024年5月期通期の決算説明資料16ページに記載のとおり、2023年5月期における成約件数に占める中型大型案件の比率は8.5%でしたが、2024年5月期には17%に上昇しています。なお、中型大型案件とは、1件当たり売上高が5,000万円以上の案件を指します。
取材者: 大型案件が増加している要因は何でしょうか。
回答者:中型大型案件を受注できるのは、ある程度経験を積んだコンサルタントになります。当社は2019年頃からコンサルタントを増員し始めましたが、そのうち多くのコンサルタントが離職することなく定着したため、直近において経験豊富なコンサルタントの比率が高まってきており、これが中型大型案件比率の上昇に繋がっています。
取材者: 貴社の創業の経緯や、2020年からコンサルタントを増やしていった経緯について教えてください。
回答者: 2007年に、私籠谷と藤井で共同創業しました。創業の契機としては、2005年から2007年にかけて、日本M&Aセンターなどが上場し、M&A仲介や事業承継が注目されていたという時代背景がありました。
創業当初は、M&Aそのものの認知度がまだ低かったため、ホームページからの集客やダイレクトメールによるインバウンド主体の営業スタイルを採用しており、少数精鋭で運営してきました。しかし、2019年に、M&A仲介業者が増加したことから上場による社会的信頼性の獲得が必要と考え、上場可能なビジネスモデルとしてアウトバウンド型の営業スタイルに変更し、コンサルタントを増員する方向に舵を切りました。
取材者: 具体的にはどのような戦略でM&A仲介市場に参入されたのでしょうか?
回答者: 創業当初は、コンサルタント数を無暗に増やさず、少人数精鋭で高収益を上げるビジネスモデルで、1人当たり年間4~5件程度の成約を目指していました。2019年に上場を目指す意思決定をして以降は、コンサルタントを継続的に増員し、安定的な成長を目指す戦略に転換しました。
20250121 CP&X
ビジネスモデルや事業内容
M&A仲介事業を展開。
創業の経緯と転機となった出来事
2007年に共同創業。当初はインバウンド主体の営業スタイルで、ホームページやダイレクトメールからの集客を主体とし、少人数で高効率なビジネスモデルを確立。2019年から上場を目指すようになり、成長戦略としてアウトバウンド型の営業スタイルへ転換。コンサルタントを増員し、計画的な成長を実現する体制を構築。
直近の決算状況
2024年5月期の売上高は前期比で増加。コンサルタント1人当たりの売上高は7000万円を超え、大手3社と遜色ない水準を達成。売上総利益率は前期第2四半期(累計)が高かった影響で、今期第2四半期(累計)は前期比で低下。
成長戦略
コンサルタント数を年間25%純増させることで、それに比例した売上成長を目指す。
株主還元策
内部留保の充実を優先し、将来的には配当による株主還元を検討。M&A業界は投資を必要としないため、将来的にキャッシュフローの一定割合を株主還元へ配分できる見込み。
新たな取り組みや重点施策
今期は、コンサルタントの採用と育成に注力。前期末のコンサルタント数に対して25%純増を目標とする採用計画を策定。厳選採用と育成により、質の高いコンサルタントの育成体制を構築。
コンサルタントの経験年数の伸長に伴う中型大型案件比率の増加により、1件当たりの売上高は中長期的に増加する見込み。自社の強みである小規模案件セグメントに軸足を置きつつ、中長期的には、中型・大型案件を上積みすることで、売上単価の引き上げを図る。
取締役副社長 籠谷智輝様
・資料
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インテグループ(株)
東証GRT 192A
決算:5月末日
Q: 貴社のM&A仲介事業の特徴を教えてください。
A: 当社は、直接提案型の営業手法で、小型案件(一組当たり売上高4,000万円規模)を中心に取り扱っています。このセグメントは競争が比較的緩やかで、大手M&A仲介会社と差別化できています。中小企業は数が多く、案件獲得がしやすいという点も特徴です。
Q: コンサルタント1人当たりの売上高が高い要因は何ですか?
A: コンサルタント1人当たりの売上高は7,000万円を超えており、B社を除く大手3社と遜色ない水準です。これは、当社が、1人のコンサルタントが営業からクロージングまで一気通貫で対応する体制を構築しているためです。分業制の会社と比べて、1人当たりの成約件数が高くなっています。
Q: 優秀な人材の採用・育成方針を教えてください。
A: 当社では、1人のコンサルタントが最初から最後まで案件を担当するため、幅広い能力を持つ人材が必要です。そのため、厳選採用と充実した教育体制で人材育成を行っています。平均コンサルタント数を毎年25%ずつ増やす計画です。
Q: 売上総利益の減少要因にインセンティブの高いソーシング案件とありますが、具体的にどのような案件ですか?
A: ソーシング案件とは、コンサルタント自身が直接営業により獲得した案件のことです。会社に持ち込まれた案件を割り振られたものは非ソーシング案件と呼びます。ソーシング案件はインセンティブ率が高く設定されているため、売上総利益率が低くなる傾向にあります。なお、今期第2四半期(累計)の売上総利益率が前年同期比で低下しているのは、今期第2四半期(累計)の売上総利益率が低いのではなく、前期第2四半期(累計)の売上総利益率が異常に高かったことが要因です。
Q: 中型・大型案件が増加している要因は何ですか?
A: 経験豊富なコンサルタントの増加が要因です。2019年以降、コンサルタントの採用を積極化しましたが、当時採用したコンサルタントの多くが離職せずに定着したことで、直近において3年以上の実務経験を持つコンサルタントが増加し、中型・大型案件の獲得につながっています。また、今後は、上場による社会的信頼性の向上に伴い、中型・大型案件の獲得が徐々に増えることが見込まれます。
Q: 貴社の創業の経緯を教えてください。
A: 2007年に、代表取締役社長藤井と取締役副社長の籠谷で共同創業しました。当時は、ホームページやダイレクトメールによるインバウンド主体の営業スタイルを採っており、少人数で高効率なビジネスモデルで運営していました。その後、M&A仲介会社の急激な増加を背景に、2019年に上場を目指す意思決定を行ったことから、安定的な成長を実現できるビジネスモデルへの転換が必要となりました。そこで、2020年からアウトバウンド型の営業モデルに転換し、コンサルタントの積極的な採用を開始しました。
Q: 完全成功報酬制を採用しているのはなぜですか?
A: 創業当初から完全成功報酬制を採用しています。着手金や中間金を取らず、M&Aが成立した場合にのみ報酬を得る仕組みです。これは、顧客の心理的なハードルを下げ、より多くの案件獲得につなげるためです。上場企業では、当社のみが売り手・買い手ともに完全成功報酬制を採用しています。
Q: 株主還元策について教えてください。
A: 株主還元については、まずは内部留保の充実を優先しますがM&A仲介事業は投資を必要としないビジネスであるため、将来的には、キャッシュフローの一定割合を株主還元へ配分できる見込みです。
取材者: 事業内容やビジネスモデル、特徴や強みなどをご説明ください。
回答者:19ページの図は上場するM&A仲介会社8社について、メインで取り扱っている案件の規模感を縦軸に、主要な営業手法を横軸にとり、プロットしたものです。
まず、営業手法については、各社で大きく異なっており、この図の左側のB社・F社と当社は、直接提案型の営業手法をメインとしています。直接提案型とは、ダイレクトメールを送付した上でコールドコールを行い、アポイントを取得し、売却の提案を行う営業スタイルを指します。
一方、D社・E社・G社は、金融機関や会計事務所からの案件紹介をメインにしています。中央のA社・C社は、金融機関等からの紹介と直接提案型の両方を採用するハイブリッド型になります。
この業界において、大型案件は売上単価1億円以上の案件を指しますが、それをメインに扱っているのはB社で、A社・C社・F社は、案件単価5,000万円以上の中型案件をメインターゲットとしています。
そして、小型案件をメインに扱っているのが、当社とD社・E社・G社ですが、D社・E社・G社は金融機関からの紹介を主体としている点が、直接提案型営業を主体としている当社と異なっています。この図のとおり、当社は直接提案型で小型案件セグメントを専門とする唯一の上場仲介会社になります。
この小規模案件セグメントの特徴としては、競争が比較的緩やかである点が挙げられます。大手4社もこの領域で営業活動を行っていますが、当社は小型案件セグメントに特化した報酬体系を採用しているため、営業の現場で大手4社と競合した場合でも、価格面での優位性があります。また、小規模な企業ほど数が多くなるため、アプローチ可能先が多くなり、他社と比べて案件獲得の難易度が低いという特徴があります。
直接提案型を採用しているため、営業先を主体的に選択できる点も強みです。紹介案件をメインで扱うD社・E社・G社とは異なり、当社は大型案件、中型案件にもアプローチできるため、売上単価を主体的に上昇させていくことが可能となっています。
また、上場による信頼性の向上も、中長期的には売上単価の上昇に寄与すると考えています。実際に、上場している大手4社は、上場後に売上単価が右肩上がりで上昇しており、当社も昨年上場しましたので、今後は売上単価が徐々に上昇していくと考えています。
取材者: 各社の営業手法や案件の規模感が異なる中で、経営指標を比較する有効な方法は何でしょうか。
回答者: コンサルタント1人当たりの売上高で比較することが有効と考えています。21ページの表に記載のとおり、当社は2024年5月期実績ベースでコンサルタント1人当たり売上高が7,000万円を超えており、B社を除く大手3社と遜色のない水準にあります。
売上高から一定割合をインセンティブとしてコンサルタントに還元するため、コンサルタント1人当たり売上高は、非常に重要な指標であると考えています。コンサルタント1人当たり売上高が5,000万円を下回る水準では、例えば売上高のうち30%をコンサルタントに還元したとしても年収1,500万円に満たないため、優秀なコンサルタントのリテンションや新規採用が困難になります。
当社は1件当たりの売上高は低いものの、1人当たりの成約件数を多くすることで7,000万円程度のコンサルタント1人当たり売上高を確保しています。これにより、コンサルタントに十分なインセンティブを還元することができ、コンサルタントへの他社への転職等を防ぎつつ、安定的にコンサルタントを増員することが可能となっています。
また、当社は小規模案件セグメントに注力しており、それに合致した報酬体系を採用しています。当社の報酬体系の特徴の一つとして、完全成功報酬制を採用している点が挙げられます。上場企業で、売り手・買い手双方から着手金、中間金を一切徴収せず、完全成功報酬制を採用している企業は当社のみです。
また、最低成功報酬額についても、小規模案件セグメントにおいて価格訴求力がある水準に設定しています。具体的には、大手仲介会社は、最低成功報酬額を2,000万円又は2,500万円に設定していますが、当社は1,500万円に設定しており、大手仲介会社よりもリーズナブルになっています。
さらに、成功報酬の計算基準についても優位性があります。大手仲介会社のうち一部の会社は売買金額に負債を加えた額に一定のパーセンテージを掛けて報酬を計算する総資産レーマン方式を採用していますが、当社は売買金額にのみパーセンテージを掛ける株価レーマン方式を採用しており、この点でも他社と比較して価格訴求力を有しています。
取材者: 貴社のコンサルタント1人当たりの成約件数は、他社と比較して多いように見受けられますが、その要因は何でしょうか。
回答者: 当社は営業からクロージングまで、基本的に1人のコンサルタントが一気通貫で対応するスタイルを採用しています。他社では、FA担当、エグゼキューション担当、商談担当、資料作成担当などに業務が細分化されている場合があり、1つの案件に3~4人が関わるケースもあります。
分業制を採用している企業の場合、たとえば、1つの案件に4人が関わるとすれば、当社の4倍の案件を成約させなければ同じ生産性は達成できません。しかし、そこまで多くの成約を出せている企業は現状では存在しないため、結果的に当社のコンサルタント1人当たりの成約件数が多くなっています。
取材者: 優秀なコンサルタントの採用・育成に関する方針はございますか?
回答者: 当社では1人のコンサルタントが最初から最後まで一気通貫で業務を行う必要があるため、幅広い能力を持つ人材が求められます。そのため、闇雲に人数を増やすことは難しく、厳選採用と育成が重要となります。
具体的には、前期末のコンサルタント数に対して25%の純増を目標とする採用計画を立てており、これが厳選採用と育成を両立できる上限であると考えています。
この業界の売上高は、「1件当たり売上高 × 1人当たり成約件数× コンサルタント数」で算出されます。コンサルタント数は成長ドライバーとなりますが、当社のビジネスモデルでは平均コンサルタント数を25%ずつ増やすことが上限となります。
取材者: 人員の伸びと売上の伸びの関係については、どのようにお考えでしょうか。
回答者: 売上高の伸びは、「1件当たり売上高」「1人当たり成約件数」「コンサルタント数」の3要素で決まります。現状では、コンサルタント数をコントロールして増やすことが、最も現実的な成長戦略であると考えています。
取材者: 売上総利益の減少要因として挙げられている「インセンティブの高いソーシング案件」とは、具体的にどのような案件でしょうか。
回答者: はい。4ページの注釈に記載のとおり、ソーシング案件とは、コンサルタント自身が直接営業して獲得した案件を指します。一方、非ソーシング案件とは、会社に持ち込まれた案件です。当社のインセンティブの計算上、ソーシング案件には20%のソーシングインセンティブが付与されますが、非ソーシング案件には付与されません。そのため、非ソーシング案件の方が、売上総利益率が高くなります。
なお、今期の第2四半期(累計)の売上総利益率61%が低いというよりは、前期第2 四半期(累計)の売上総利益率75%が異常に高かったというのが実態です。
取材者: 大型案件の増加は、売上総利益率にどのような影響を与えるのでしょうか?
回答者: 大型案件が増加した場合、エグゼキューション部分のインセンティブ率は下がりますが、ソーシング案件の場合は大型案件でも20%のソーシングインセンティブが付与されます。そのため、大型のソーシング案件が多くなると売上総利益率は下がる傾向にあります。なお、今期第2四半期(累計)の売上総利益率61%は、当社の想定する案件構成における下限付近であると考えており、売上総利益率がこの水準からさらに大きく低下することは想定しづらいと考えています。
取材者: 中長期的に見て、大型案件は増加する傾向にあるのでしょうか?
回答者: 中長期的には増加傾向が続くと考えています。2024年5月期通期の決算説明資料16ページに記載のとおり、2023年5月期における成約件数に占める中型大型案件の比率は8.5%でしたが、2024年5月期には17%に上昇しています。なお、中型大型案件とは、1件当たり売上高が5,000万円以上の案件を指します。
取材者: 大型案件が増加している要因は何でしょうか。
回答者:中型大型案件を受注できるのは、ある程度経験を積んだコンサルタントになります。当社は2019年頃からコンサルタントを増員し始めましたが、そのうち多くのコンサルタントが離職することなく定着したため、直近において経験豊富なコンサルタントの比率が高まってきており、これが中型大型案件比率の上昇に繋がっています。
取材者: 貴社の創業の経緯や、2020年からコンサルタントを増やしていった経緯について教えてください。
回答者: 2007年に、私籠谷と藤井で共同創業しました。創業の契機としては、2005年から2007年にかけて、日本M&Aセンターなどが上場し、M&A仲介や事業承継が注目されていたという時代背景がありました。
創業当初は、M&Aそのものの認知度がまだ低かったため、ホームページからの集客やダイレクトメールによるインバウンド主体の営業スタイルを採用しており、少数精鋭で運営してきました。しかし、2019年に、M&A仲介業者が増加したことから上場による社会的信頼性の獲得が必要と考え、上場可能なビジネスモデルとしてアウトバウンド型の営業スタイルに変更し、コンサルタントを増員する方向に舵を切りました。
取材者: 具体的にはどのような戦略でM&A仲介市場に参入されたのでしょうか?
回答者: 創業当初は、コンサルタント数を無暗に増やさず、少人数精鋭で高収益を上げるビジネスモデルで、1人当たり年間4~5件程度の成約を目指していました。2019年に上場を目指す意思決定をして以降は、コンサルタントを継続的に増員し、安定的な成長を目指す戦略に転換しました。
20250121 CP&X
ビジネスモデルや事業内容
M&A仲介事業を展開。
創業の経緯と転機となった出来事
2007年に共同創業。当初はインバウンド主体の営業スタイルで、ホームページやダイレクトメールからの集客を主体とし、少人数で高効率なビジネスモデルを確立。2019年から上場を目指すようになり、成長戦略としてアウトバウンド型の営業スタイルへ転換。コンサルタントを増員し、計画的な成長を実現する体制を構築。
直近の決算状況
2024年5月期の売上高は前期比で増加。コンサルタント1人当たりの売上高は7000万円を超え、大手3社と遜色ない水準を達成。売上総利益率は前期第2四半期(累計)が高かった影響で、今期第2四半期(累計)は前期比で低下。
成長戦略
コンサルタント数を年間25%純増させることで、それに比例した売上成長を目指す。
株主還元策
内部留保の充実を優先し、将来的には配当による株主還元を検討。M&A業界は投資を必要としないため、将来的にキャッシュフローの一定割合を株主還元へ配分できる見込み。
新たな取り組みや重点施策
今期は、コンサルタントの採用と育成に注力。前期末のコンサルタント数に対して25%純増を目標とする採用計画を策定。厳選採用と育成により、質の高いコンサルタントの育成体制を構築。
コンサルタントの経験年数の伸長に伴う中型大型案件比率の増加により、1件当たりの売上高は中長期的に増加する見込み。自社の強みである小規模案件セグメントに軸足を置きつつ、中長期的には、中型・大型案件を上積みすることで、売上単価の引き上げを図る。
取締役副社長 籠谷智輝様
・資料
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