20250317
Q:御社の成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)になる点は何でしょうか。
A:まず、主力事業である建設業界への注力を一層進めることを重視しています。具体的には、大手ゼネコンへの導入をさらに拡大し、既存顧客における利用範囲を広げることで、建設業界におけるシェアを拡大することを目指しています。
次に、AI対応に力を入れ、顧客の具体的な要望に応じた機能を提供していくことも重要な戦略です。例えば、顧客企業からは、『direct(ダイレクト)』チャットと生成AIを連携させて、社内の文書を検索できるようにしたいという要望が寄せられており、このような個別のニーズに柔軟に対応していく方針です。
また、既存サービスの機能改善、特に『タグショット/タグアルバム』といったカメラアプリや、『ナレッジ動画』という動画による技術伝達ソリューションの機能改善にも注力します。これらのサービスをさらに使いやすく、現場のニーズに合致したものにすることで、顧客満足度を高め、利用拡大につなげることを目指しています。
さらに、建設業界以外の分野への展開も視野に入れています。具体的には、プラント設備や機械の建設・メンテナンス、ビルメンテナンスなどのメンテナンス関連業界や、鉄道業界など、現場での作業やコミュニケーションが重要な業界への進出を検討しています。鉄道業界においては、鉄道工事だけでなく、駅員や車掌など、働く人々向けのツールとしての活用も視野に入れています。
Q:業績の増減要因は何でしょうか。
A:前期の決算では、売上高は計画を下回りましたが、前期比で+24.5%の15.9億円となりました。営業利益については、単体では7,700万円でしたが、子会社の取得費用を連結後の費用として計上する必要があったため、連結後の営業利益は4,700万円となりました。したがって、利益の増減要因としては、子会社の取得費用が挙げられます。
Q:受注・競合状況については如何でしょうか。
A:受注状況については、大手ゼネコンからの受注が多く、建設業界におけるシェア拡大を目指しています。顧客との契約は、一部の現場での試験導入から始まり、導入現場の拡大や全社導入につながることでARR(年間経常収益)が向上する営業方針です。一般的なビジネスチャットツールとしては、『Microsoft Teams』や『Slack』、『Chatwork』などがありますが、当社は現場で働く方向けのツールに特化している点が大きな特徴です。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:現時点では、配当や自社株買い、株主優待などの具体的な株主還元策は予定しておりません。これは、当社がまだ成長段階にあり、利益を事業の成長に再投資することが重要であると考えているためです。しかし、株主還元については常に検討しており、利益がもう少し拡大した段階で、株主の皆様への利益還元策を実施していきたいと考えています。それまでは、事業の成長を通じて企業価値を高めることが、株主の皆様への最大の貢献であると考えています。
取材者:事業内容やビジネスモデル、特徴や強みなどをご説明ください。
回答者:当社の事業概要についてご説明いたします。当社の主力サービスはビジネスチャットの「direct(ダイレクト)」であり、それに連携するいくつかの業務用のアプリケーションを提供しています。企業のDXを支援するためのツールをSaaS形式で提供し、ライセンスフィーをいただく形で事業を行っています。
ビジネスチャットツールとしては、『Microsoft Teams』や『Slack』、『Chatwork』など、いくつかのツールが存在すると思いますが、それらのほとんどがデスクワーカー、つまりパソコンで仕事をする方向けに作られています。
一方で、当社は現場で立って働く方向けのツールに特化しており、その点が他社とは異なる大きな特徴です。特に建設業に注力しており、建設業のお客様に多くご利用いただいています。チャットツールに連携するタスク管理や写真管理などの機能も提供しています。
取材者:スマートフォンで完結できる点に力を入れているのですね。
回答者:おっしゃる通りです。建設業、特に現場で働く方はスマートフォンやタブレット端末をお持ちですので、スマートフォンでの使いやすさを重視して開発しています。
取材者:建設業向けのサービスを開始された経緯や理由についてお伺いできますか。
回答者:当社のサービスは2014年にリリースされました。当時はまだビジネスチャットというものが今ほど普及していませんでした。当初、当社は建設業に特化していたわけではありませんが、2018年、2019年頃から大林組様や竹中工務店様といった大手ゼネコンのお客様にご利用いただくようになりました。
大手のお客様にご利用いただく中で、様々なご要望をいただくようになり、それらのご要望に基づいて機能追加などを進めていくうちに、建設業にとって非常に使いやすいものになっていきました。2020年頃から、デスクワーカー向けの『Microsoft Teams』や『Slack』などが普及してきたため、建設業に特化しようと判断しました。
取材者:貴社の取引先を拝見しますと、大手の企業様が多いように思われます。これには何か理由や要因がございますか。
回答者:理由がございます。コミュニケーションの課題は、従業員が10人や20人程度の会社であれば、電話で済むことが多いです。しかし、大手の企業様ほど課題が深刻であり、解決の必要性を強く感じていらっしゃいます。
取材者:大手の企業様は、大規模な現場を扱い、多くの人が関わるため、コミュニケーションエラーが発生しやすいということですか。そのため、貴社のシステムが必要とされていると。
回答者:おっしゃる通りです。
取材者:チャットツールに付随する他のサービスについて、特徴などがあればお聞かせください。
回答者:いくつかございます。例えば、タスク管理ツールである『direct Apps(ダイレクト アップス)』というアプリケーションがございます。一般的なタスク管理ツールは、デスクワーカー向けに作られているものが多く、ガントチャート式であったり、詳細な情報を書き込めたりする仕様になっています。
しかし、建設現場のタスク管理は、「壁紙の補修をお願いします。承知いたしました」といったように、比較的すぐに実行してほしい指示が多いです。元請企業様から協力企業様への指示という形で、作業工程よりも細かい作業を各協力企業様に出せるような仕様になっています。作業が完了したら、写真を撮って報告できるような機能もございます。デスクワーカー向けとは異なる設計になっている点が特徴です。
取材者:大規模な現場では、1社だけでなく様々な企業様が関わるため、より密なコミュニケーションが必要になるということですか。
回答者:おっしゃる通りです。現在、決算説明資料はお手元にございますか。
取材者:はい、ございます。
回答者:建設業で広く利用されている人気の機能として、決算説明資料の56ページに『direct GuestMode(ダイレクトゲストモード)』というものがございます。
取材者:決算説明資料の56ページですね。承知いたしました。
回答者:基本的に、元請企業様と協力企業様が連絡を取り合う際に、協力企業様同士が自由に会話できない仕様になっています。必ず社員がグループを作成しなければ、協力企業様同士で会話ができないように、アクセスコントロールが設定されています。この機能は、ゼネコン各社様から非常に求められています。
取材者:承知いたしました。それでは、貴社の創業の経緯についてお聞かせいただけますか。
回答者:創業者は当社の代表である横井です。横井は、ワープロソフトの一太郎を開発していたジャストシステムという会社の出身です。創業メンバーの最初の10名ほどは、ジャストシステムの出身者で構成されています。創業は2010年頃です。当時、iPadなどのタブレット端末が登場したのを見て、パソコンソフトの会社ではなく、タブレット向けのビジネスをやろうということで、ジャストシステムから独立・設立した会社です。創業当初は、BtoC向けのTwitterアプリなどを開発していましたが、紆余曲折を経て、現在の『Direct(ダイレクト)』が事業として成長しました。
取材者:当初は特に建築業向けに絞らずに、『direct(ダイレクト)』を開発されたということですか。
回答者:おっしゃる通りです。会社設立当初、SIerとして開発の受託業務を行っていた際、お客様からスマートフォン向けのシステム開発を依頼されたことがありました。その際、従業員の方々にスマートフォンでどのようなアプリがあれば便利か尋ねたところ、「個人のLINEで仕事の連絡をして良いか?」という質問がありました。
回答者:そのお客様の情報システム部門に確認したところ、やはり個人のLINEアカウントで会社の情報をやり取りすることは問題があるということだったので、それならば自分たちで作ろうということになったのがきっかけです。
取材者:それでは、前期の決算状況についてお伺いします。前期の決算では、利益の部分が計画を下回ったとのことですが、決算説明資料に記載されている売上高の未達以外の要因はございますか。
回答者:はい。決算説明資料の22ページに売上高と営業利益が記載されています。2024年から連結決算に移行し、単体での営業利益は7,700万円でしたが、子会社の取得費用を連結後の費用として計上する必要があったため、結果的に4,700万円となりました。売上高の未達以外にかかった費用としては、子会社の取得費用が挙げられます。
取材者:子会社の取得は、当初の計画には含まれていなかったのですか。
回答者:おっしゃる通りです。
取材者:理由についてお伺いできますか。
回答者:子会社の取得については、なかなか計画に織り込むのが難しいという側面があります。本来、これは先行投資であり、今期、つまり2025年の進行期に良い影響をもたらすものですが、期初段階で費用を見込むことは困難でした。
取材者:良い影響とは、具体的にどのようなことを想定されていますか。
回答者:純粋に売上高と利益が、子会社を連結することで増加するということです。
取材者:貴社の既存のサービスに良い影響を与えるといったことはございますか。
回答者:当社は、『direct(ダイレクト)』を提供する中で、ゼネコンのお客様からカスタマイズや専用のシステム開発を依頼されることがあります。しかし、開発リソースには限りがあるため、全てのご要望にお応えすることが難しい状況です。今回、子会社化したシステム開発会社は、開発人員を抱えているため、これまで以上にお客様であるゼネコンからのご依頼を受けやすくなるという良い影響があります。
取材者:利用者数の増加について、何か施策があればお聞かせいただきたいのですが。
回答者:利用者数の増加については、特別な施策があるわけではなく、毎年行っていることを積み重ねていくことで、お客様やご利用いただく現場が少しずつ増えていくという状況です。
取材者:成長可能性資料の中に、建設業界以外の分野も視野に入れているというお話があったかと思いますが、具体的にどのような業界を想定されていますか。
回答者:現在、建設業界以外では、プラント設備や機械の建設・メンテナンス、ビルメンテナンスなどのメンテナンス関連の業界で伸びしろがあります。また、鉄道業界もJR様をはじめ、大手企業様で導入が進んでいます。鉄道業界では、鉄道工事だけでなく、駅員様や車掌様など、働く方々向けのツールとして活用できると考えています。
取材者:いずれも、パソコンを開かなくても必要な情報にアクセスできるという点が共通していますね。
回答者:そうですね。
取材者:貴社にとって、平均ARR(年間経常収益)も重要なKPI項目かと思いますが、ARRを年々増加させるための施策や取り組みはございますか。
回答者:ございます。決算説明資料の40ページをご覧ください。図解で少し分かりにくいかもしれませんが、右側の説明にあるように、最初の契約は一部の現場での試験導入から始まることが多いです。
回答者:試験導入の結果が良好であれば、導入現場が拡大したり、全社導入につながったりすることで、ARRが向上していきます。つまり、お客様と長くお付き合いし、小さな契約から始めて徐々に拡大していただくという営業方針です。
取材者:最初は現場ごとに契約するようなイメージですか。
回答者:そうです。最終的には、全社契約となり、「社員数が3,000人なので全員が使えるようにしたい」といった契約になります。ゼネコンさんの場合は、「社員5,000人と外部の協力会社向けに5,000人分で、合計1万人で契約しましょう」といった契約になることもあります。
取材者:新しいサービスの提供については、何か計画されているものはございますか。
回答者:新しいサービスの提供というよりは、昨年、一昨年にリリースした『タグショット/タグアルバム』というカメラアプリや、『ナレッジ動画』という動画による技術伝達ソリューションの機能改善に注力しています。今期はAI対応に力を入れていく予定です。
取材者:差し支えのない範囲で構いませんので、AI対応についてもう少し詳しくお聞かせいただけますか。
回答者:すでに、カスタマイズに近い形で、企業様から『direct(ダイレクト)』チャットと生成AIを連携させて、社内の文書を検索できるようにしたい」というご要望をいただいています。まずは、そのような各社ごとのご要望に対応していく予定です。
取材者:貴社が提供されているチャットボットなども、AIを活用される可能性があると感じましたが、特に、貴社がこれまでに蓄積された建築業界の知見を活かして、専門的な質問にも回答できるようなチャットボットの開発などは考えられますか。
回答者:可能性はあると思います。当社には、これまでの業務上のコミュニケーションや、現場で撮影された写真など、建築業界に関するデータが豊富に蓄積されています。今後は、これらのデータを活用して、例えば、撮影された写真の中に危険なものが写っていないかをAIで検査したり、コミュニケーション上の不適切なやり取り、例えばパワーハラスメントがないかをAIでチェックしたりといった機能を提供したいというご要望もいただいています。
取材者:現場のやり取りに関するデータが蓄積されているのですね。何か、過去の事例とその対応策といったノウハウも蓄積されているのですか。
回答者:蓄積されています。また、先ほど申し上げたタスク管理アプリと連携させることで、チャットで指示された内容をAIが自動的にタスクとして登録するといった機能も、多くのお客様からご要望をいただいています。
取材者:それは非常に便利ですね。それでは、貴社は昨年上場されましたが、上場の目的についてお聞かせいただけますか。
回答者:はい。もちろん、資金調達という意味合いもあります。それに加えて、営業面においては、大手のお客様とお取引をする上で、当社の営業担当者が「株式会社L is B」と名乗っても、「どこの会社だろう」と思われることがあります。しかし、「上場しています」とお伝えすることで、お客様に安心していただくことができます。信頼性の獲得という点が非常に大きいと考えています。
取材者:上場されて1年ですが、機関投資家様などとの面談の数はいかがですか。
回答者:決算発表のたびに、何社かの機関投資家様とお話をさせていただく機会があります。しかし、まだ当社の時価総額がそれほど大きくないため、ご覧の通り、現時点では個人投資家の方々が中心にご覧いただいている状況です。
取材者:今後の株主還元の方針や戦略などございましたら、お聞かせいただけますか。
回答者:はい。現時点では、配当や自社株買い、株主優待などは考えておりません。常に検討はしていますが、まだ実施する段階ではないと考えています。利益がもう少し拡大した段階で、株主還元策を実施していきたいと考えています。
取材者:まずは、貴社の事業内容や特徴などを投資家の皆様に知っていただく段階ということですね。
回答者:そうですね。
取材者:貴社のような業界では、人材採用が難しいというお話も聞きますが、人材採用や教育について、貴社の方針や戦略があればお聞かせいただけますか。
回答者:人材面において、当社の特徴的な点としては、決算説明資料の66ページに記載されているように、離職率が非常に低い会社であるという点です。そのため、社内にナレッジが蓄積されやすく、育成した人材が戦力として定着しやすいというメリットがあります。年間に採用しているのが15人から20人ぐらいですので、大量ではあないので無理せず採用はできている状況です。
取材者:離職率が低いのは素晴らしいですね。働きやすい要因や秘訣などは何かございますか。
取材者:合理的な会社です。不条理な判断やルールはなく、お客様のためになると判断すれば実行しますし、そうでなければ実行しません。また、代表の横井をはじめ、創業メンバーがジャストシステム出身であることもあり、成熟した幹部が揃っています。そのため、社風も落ち着いており、じっくりと商品開発に取り組み、お客様とじっくりお付き合いしていくという雰囲気があります。
取材者:承知いたしました。それでは最後に、今期が始まったばかりですが、何か新たに取り組まれていることや、トピックス的なものがございましたらお聞かせいただけますか。
回答者:建設業界において、当社が獲得できる余地はまだまだ非常に大きいと考えていることです。そのため、建設業界への注力をより一層進めていくということを考えています。
取材者:そのような中で、シェア率の目標といった数値的な目標はございますか。
回答者:具体的な数値目標は公表していないため、お答えするのが難しいのですが、大手ゼネコン様には全て導入していただき、まだ一部の現場でしかご利用いただいていないお客様には、全現場でご利用いただくことを目標としています。
ビジネスモデルや事業内容
株式会社L is Bは、ビジネスチャット「direct(ダイレクト)」を主力に、企業のDXを支援するツールをSaaS形式で提供する企業である。同社の特徴は、建設業などの現場で働く人々向けに特化したツールを提供している点であり、スマートフォンでの使いやすさを重視した開発を行っている。
創業の経緯と転機となった出来事
創業者はジャストシステム出身の横井氏であり、当初はBtoC向けのアプリ開発から事業を開始した。その後、顧客からのスマートフォン向けシステム開発の依頼をきっかけに、ビジネスチャットの開発に至った。建設業に特化するようになったのは、大手ゼネコンからの要望に基づき機能追加を進める中で、建設業向けの使いやすさが評価されたためである。
直近の決算状況
前期の決算では、売上高は計画を下回ったものの、前期比で+24.5%となる15.9億円であった。営業利益は、単体では7,700万円であったが、子会社の取得費用を連結後の費用として計上する必要があったため、連結後の営業利益は4,700万円となった。
特徴や強み
現場で働く人々、特に建設業向けのツールに特化している点が、他社との差別化要因である。一般的なビジネスチャットツールがデスクワーカー向けであるのに対し、同社は建設業などの現場作業員がスマートフォンやタブレット端末で利用しやすい設計となっている。
建設現場におけるタスク管理や写真管理など、業務効率化に貢献する機能を提供しており、元請企業から協力企業への指示や、作業の進捗管理を円滑に行える点が強みである。
大手ゼネコンとの取引実績が豊富であり、顧客からの要望に基づいた機能開発を重ねることで、建設業における高い専門性と顧客対応力を有している。
また、離職率が低いことも特徴であり、ノウハウが蓄積されやすく、育成した人材が定着しやすいというメリットを持つ。
成長戦略
今後の成長戦略として、建設業界への注力、AI対応による機能強化、既存サービスの機能改善、建設業界以外の分野への展開を掲げている。顧客との長期的な関係構築を通じて、ARRの向上を目指す方針である。
株主還元策
現時点では、配当や自社株買いなどの具体的な株主還元策は予定していない。利益が拡大した段階で、株主還元策を実施する方針である。
今期の取り組みやトピックス
今期は、AI対応に力を入れるとともに、既存サービスの機能改善に注力する方針である。建設業界におけるシェア拡大を目標としており、大手ゼネコンへの導入拡大を目指している。
取締役CFOコーポレート本部長 北嶋正樹様

(株)L is B
東証GRT 145A
決算:12月末日
Q:御社の成長戦略のポイント(今後の取り組みやトピックスなどを含む)になる点は何でしょうか。
A:まず、主力事業である建設業界への注力を一層進めることを重視しています。具体的には、大手ゼネコンへの導入をさらに拡大し、既存顧客における利用範囲を広げることで、建設業界におけるシェアを拡大することを目指しています。
次に、AI対応に力を入れ、顧客の具体的な要望に応じた機能を提供していくことも重要な戦略です。例えば、顧客企業からは、『direct(ダイレクト)』チャットと生成AIを連携させて、社内の文書を検索できるようにしたいという要望が寄せられており、このような個別のニーズに柔軟に対応していく方針です。
また、既存サービスの機能改善、特に『タグショット/タグアルバム』といったカメラアプリや、『ナレッジ動画』という動画による技術伝達ソリューションの機能改善にも注力します。これらのサービスをさらに使いやすく、現場のニーズに合致したものにすることで、顧客満足度を高め、利用拡大につなげることを目指しています。
さらに、建設業界以外の分野への展開も視野に入れています。具体的には、プラント設備や機械の建設・メンテナンス、ビルメンテナンスなどのメンテナンス関連業界や、鉄道業界など、現場での作業やコミュニケーションが重要な業界への進出を検討しています。鉄道業界においては、鉄道工事だけでなく、駅員や車掌など、働く人々向けのツールとしての活用も視野に入れています。
Q:業績の増減要因は何でしょうか。
A:前期の決算では、売上高は計画を下回りましたが、前期比で+24.5%の15.9億円となりました。営業利益については、単体では7,700万円でしたが、子会社の取得費用を連結後の費用として計上する必要があったため、連結後の営業利益は4,700万円となりました。したがって、利益の増減要因としては、子会社の取得費用が挙げられます。
Q:受注・競合状況については如何でしょうか。
A:受注状況については、大手ゼネコンからの受注が多く、建設業界におけるシェア拡大を目指しています。顧客との契約は、一部の現場での試験導入から始まり、導入現場の拡大や全社導入につながることでARR(年間経常収益)が向上する営業方針です。一般的なビジネスチャットツールとしては、『Microsoft Teams』や『Slack』、『Chatwork』などがありますが、当社は現場で働く方向けのツールに特化している点が大きな特徴です。
Q:株主還元の方針をご説明ください。
A:現時点では、配当や自社株買い、株主優待などの具体的な株主還元策は予定しておりません。これは、当社がまだ成長段階にあり、利益を事業の成長に再投資することが重要であると考えているためです。しかし、株主還元については常に検討しており、利益がもう少し拡大した段階で、株主の皆様への利益還元策を実施していきたいと考えています。それまでは、事業の成長を通じて企業価値を高めることが、株主の皆様への最大の貢献であると考えています。
取材者:事業内容やビジネスモデル、特徴や強みなどをご説明ください。
回答者:当社の事業概要についてご説明いたします。当社の主力サービスはビジネスチャットの「direct(ダイレクト)」であり、それに連携するいくつかの業務用のアプリケーションを提供しています。企業のDXを支援するためのツールをSaaS形式で提供し、ライセンスフィーをいただく形で事業を行っています。
ビジネスチャットツールとしては、『Microsoft Teams』や『Slack』、『Chatwork』など、いくつかのツールが存在すると思いますが、それらのほとんどがデスクワーカー、つまりパソコンで仕事をする方向けに作られています。
一方で、当社は現場で立って働く方向けのツールに特化しており、その点が他社とは異なる大きな特徴です。特に建設業に注力しており、建設業のお客様に多くご利用いただいています。チャットツールに連携するタスク管理や写真管理などの機能も提供しています。
取材者:スマートフォンで完結できる点に力を入れているのですね。
回答者:おっしゃる通りです。建設業、特に現場で働く方はスマートフォンやタブレット端末をお持ちですので、スマートフォンでの使いやすさを重視して開発しています。
取材者:建設業向けのサービスを開始された経緯や理由についてお伺いできますか。
回答者:当社のサービスは2014年にリリースされました。当時はまだビジネスチャットというものが今ほど普及していませんでした。当初、当社は建設業に特化していたわけではありませんが、2018年、2019年頃から大林組様や竹中工務店様といった大手ゼネコンのお客様にご利用いただくようになりました。
大手のお客様にご利用いただく中で、様々なご要望をいただくようになり、それらのご要望に基づいて機能追加などを進めていくうちに、建設業にとって非常に使いやすいものになっていきました。2020年頃から、デスクワーカー向けの『Microsoft Teams』や『Slack』などが普及してきたため、建設業に特化しようと判断しました。
取材者:貴社の取引先を拝見しますと、大手の企業様が多いように思われます。これには何か理由や要因がございますか。
回答者:理由がございます。コミュニケーションの課題は、従業員が10人や20人程度の会社であれば、電話で済むことが多いです。しかし、大手の企業様ほど課題が深刻であり、解決の必要性を強く感じていらっしゃいます。
取材者:大手の企業様は、大規模な現場を扱い、多くの人が関わるため、コミュニケーションエラーが発生しやすいということですか。そのため、貴社のシステムが必要とされていると。
回答者:おっしゃる通りです。
取材者:チャットツールに付随する他のサービスについて、特徴などがあればお聞かせください。
回答者:いくつかございます。例えば、タスク管理ツールである『direct Apps(ダイレクト アップス)』というアプリケーションがございます。一般的なタスク管理ツールは、デスクワーカー向けに作られているものが多く、ガントチャート式であったり、詳細な情報を書き込めたりする仕様になっています。
しかし、建設現場のタスク管理は、「壁紙の補修をお願いします。承知いたしました」といったように、比較的すぐに実行してほしい指示が多いです。元請企業様から協力企業様への指示という形で、作業工程よりも細かい作業を各協力企業様に出せるような仕様になっています。作業が完了したら、写真を撮って報告できるような機能もございます。デスクワーカー向けとは異なる設計になっている点が特徴です。
取材者:大規模な現場では、1社だけでなく様々な企業様が関わるため、より密なコミュニケーションが必要になるということですか。
回答者:おっしゃる通りです。現在、決算説明資料はお手元にございますか。
取材者:はい、ございます。
回答者:建設業で広く利用されている人気の機能として、決算説明資料の56ページに『direct GuestMode(ダイレクトゲストモード)』というものがございます。
取材者:決算説明資料の56ページですね。承知いたしました。
回答者:基本的に、元請企業様と協力企業様が連絡を取り合う際に、協力企業様同士が自由に会話できない仕様になっています。必ず社員がグループを作成しなければ、協力企業様同士で会話ができないように、アクセスコントロールが設定されています。この機能は、ゼネコン各社様から非常に求められています。
取材者:承知いたしました。それでは、貴社の創業の経緯についてお聞かせいただけますか。
回答者:創業者は当社の代表である横井です。横井は、ワープロソフトの一太郎を開発していたジャストシステムという会社の出身です。創業メンバーの最初の10名ほどは、ジャストシステムの出身者で構成されています。創業は2010年頃です。当時、iPadなどのタブレット端末が登場したのを見て、パソコンソフトの会社ではなく、タブレット向けのビジネスをやろうということで、ジャストシステムから独立・設立した会社です。創業当初は、BtoC向けのTwitterアプリなどを開発していましたが、紆余曲折を経て、現在の『Direct(ダイレクト)』が事業として成長しました。
取材者:当初は特に建築業向けに絞らずに、『direct(ダイレクト)』を開発されたということですか。
回答者:おっしゃる通りです。会社設立当初、SIerとして開発の受託業務を行っていた際、お客様からスマートフォン向けのシステム開発を依頼されたことがありました。その際、従業員の方々にスマートフォンでどのようなアプリがあれば便利か尋ねたところ、「個人のLINEで仕事の連絡をして良いか?」という質問がありました。
回答者:そのお客様の情報システム部門に確認したところ、やはり個人のLINEアカウントで会社の情報をやり取りすることは問題があるということだったので、それならば自分たちで作ろうということになったのがきっかけです。
取材者:それでは、前期の決算状況についてお伺いします。前期の決算では、利益の部分が計画を下回ったとのことですが、決算説明資料に記載されている売上高の未達以外の要因はございますか。
回答者:はい。決算説明資料の22ページに売上高と営業利益が記載されています。2024年から連結決算に移行し、単体での営業利益は7,700万円でしたが、子会社の取得費用を連結後の費用として計上する必要があったため、結果的に4,700万円となりました。売上高の未達以外にかかった費用としては、子会社の取得費用が挙げられます。
取材者:子会社の取得は、当初の計画には含まれていなかったのですか。
回答者:おっしゃる通りです。
取材者:理由についてお伺いできますか。
回答者:子会社の取得については、なかなか計画に織り込むのが難しいという側面があります。本来、これは先行投資であり、今期、つまり2025年の進行期に良い影響をもたらすものですが、期初段階で費用を見込むことは困難でした。
取材者:良い影響とは、具体的にどのようなことを想定されていますか。
回答者:純粋に売上高と利益が、子会社を連結することで増加するということです。
取材者:貴社の既存のサービスに良い影響を与えるといったことはございますか。
回答者:当社は、『direct(ダイレクト)』を提供する中で、ゼネコンのお客様からカスタマイズや専用のシステム開発を依頼されることがあります。しかし、開発リソースには限りがあるため、全てのご要望にお応えすることが難しい状況です。今回、子会社化したシステム開発会社は、開発人員を抱えているため、これまで以上にお客様であるゼネコンからのご依頼を受けやすくなるという良い影響があります。
取材者:利用者数の増加について、何か施策があればお聞かせいただきたいのですが。
回答者:利用者数の増加については、特別な施策があるわけではなく、毎年行っていることを積み重ねていくことで、お客様やご利用いただく現場が少しずつ増えていくという状況です。
取材者:成長可能性資料の中に、建設業界以外の分野も視野に入れているというお話があったかと思いますが、具体的にどのような業界を想定されていますか。
回答者:現在、建設業界以外では、プラント設備や機械の建設・メンテナンス、ビルメンテナンスなどのメンテナンス関連の業界で伸びしろがあります。また、鉄道業界もJR様をはじめ、大手企業様で導入が進んでいます。鉄道業界では、鉄道工事だけでなく、駅員様や車掌様など、働く方々向けのツールとして活用できると考えています。
取材者:いずれも、パソコンを開かなくても必要な情報にアクセスできるという点が共通していますね。
回答者:そうですね。
取材者:貴社にとって、平均ARR(年間経常収益)も重要なKPI項目かと思いますが、ARRを年々増加させるための施策や取り組みはございますか。
回答者:ございます。決算説明資料の40ページをご覧ください。図解で少し分かりにくいかもしれませんが、右側の説明にあるように、最初の契約は一部の現場での試験導入から始まることが多いです。
回答者:試験導入の結果が良好であれば、導入現場が拡大したり、全社導入につながったりすることで、ARRが向上していきます。つまり、お客様と長くお付き合いし、小さな契約から始めて徐々に拡大していただくという営業方針です。
取材者:最初は現場ごとに契約するようなイメージですか。
回答者:そうです。最終的には、全社契約となり、「社員数が3,000人なので全員が使えるようにしたい」といった契約になります。ゼネコンさんの場合は、「社員5,000人と外部の協力会社向けに5,000人分で、合計1万人で契約しましょう」といった契約になることもあります。
取材者:新しいサービスの提供については、何か計画されているものはございますか。
回答者:新しいサービスの提供というよりは、昨年、一昨年にリリースした『タグショット/タグアルバム』というカメラアプリや、『ナレッジ動画』という動画による技術伝達ソリューションの機能改善に注力しています。今期はAI対応に力を入れていく予定です。
取材者:差し支えのない範囲で構いませんので、AI対応についてもう少し詳しくお聞かせいただけますか。
回答者:すでに、カスタマイズに近い形で、企業様から『direct(ダイレクト)』チャットと生成AIを連携させて、社内の文書を検索できるようにしたい」というご要望をいただいています。まずは、そのような各社ごとのご要望に対応していく予定です。
取材者:貴社が提供されているチャットボットなども、AIを活用される可能性があると感じましたが、特に、貴社がこれまでに蓄積された建築業界の知見を活かして、専門的な質問にも回答できるようなチャットボットの開発などは考えられますか。
回答者:可能性はあると思います。当社には、これまでの業務上のコミュニケーションや、現場で撮影された写真など、建築業界に関するデータが豊富に蓄積されています。今後は、これらのデータを活用して、例えば、撮影された写真の中に危険なものが写っていないかをAIで検査したり、コミュニケーション上の不適切なやり取り、例えばパワーハラスメントがないかをAIでチェックしたりといった機能を提供したいというご要望もいただいています。
取材者:現場のやり取りに関するデータが蓄積されているのですね。何か、過去の事例とその対応策といったノウハウも蓄積されているのですか。
回答者:蓄積されています。また、先ほど申し上げたタスク管理アプリと連携させることで、チャットで指示された内容をAIが自動的にタスクとして登録するといった機能も、多くのお客様からご要望をいただいています。
取材者:それは非常に便利ですね。それでは、貴社は昨年上場されましたが、上場の目的についてお聞かせいただけますか。
回答者:はい。もちろん、資金調達という意味合いもあります。それに加えて、営業面においては、大手のお客様とお取引をする上で、当社の営業担当者が「株式会社L is B」と名乗っても、「どこの会社だろう」と思われることがあります。しかし、「上場しています」とお伝えすることで、お客様に安心していただくことができます。信頼性の獲得という点が非常に大きいと考えています。
取材者:上場されて1年ですが、機関投資家様などとの面談の数はいかがですか。
回答者:決算発表のたびに、何社かの機関投資家様とお話をさせていただく機会があります。しかし、まだ当社の時価総額がそれほど大きくないため、ご覧の通り、現時点では個人投資家の方々が中心にご覧いただいている状況です。
取材者:今後の株主還元の方針や戦略などございましたら、お聞かせいただけますか。
回答者:はい。現時点では、配当や自社株買い、株主優待などは考えておりません。常に検討はしていますが、まだ実施する段階ではないと考えています。利益がもう少し拡大した段階で、株主還元策を実施していきたいと考えています。
取材者:まずは、貴社の事業内容や特徴などを投資家の皆様に知っていただく段階ということですね。
回答者:そうですね。
取材者:貴社のような業界では、人材採用が難しいというお話も聞きますが、人材採用や教育について、貴社の方針や戦略があればお聞かせいただけますか。
回答者:人材面において、当社の特徴的な点としては、決算説明資料の66ページに記載されているように、離職率が非常に低い会社であるという点です。そのため、社内にナレッジが蓄積されやすく、育成した人材が戦力として定着しやすいというメリットがあります。年間に採用しているのが15人から20人ぐらいですので、大量ではあないので無理せず採用はできている状況です。
取材者:離職率が低いのは素晴らしいですね。働きやすい要因や秘訣などは何かございますか。
取材者:合理的な会社です。不条理な判断やルールはなく、お客様のためになると判断すれば実行しますし、そうでなければ実行しません。また、代表の横井をはじめ、創業メンバーがジャストシステム出身であることもあり、成熟した幹部が揃っています。そのため、社風も落ち着いており、じっくりと商品開発に取り組み、お客様とじっくりお付き合いしていくという雰囲気があります。
取材者:承知いたしました。それでは最後に、今期が始まったばかりですが、何か新たに取り組まれていることや、トピックス的なものがございましたらお聞かせいただけますか。
回答者:建設業界において、当社が獲得できる余地はまだまだ非常に大きいと考えていることです。そのため、建設業界への注力をより一層進めていくということを考えています。
取材者:そのような中で、シェア率の目標といった数値的な目標はございますか。
回答者:具体的な数値目標は公表していないため、お答えするのが難しいのですが、大手ゼネコン様には全て導入していただき、まだ一部の現場でしかご利用いただいていないお客様には、全現場でご利用いただくことを目標としています。
ビジネスモデルや事業内容
株式会社L is Bは、ビジネスチャット「direct(ダイレクト)」を主力に、企業のDXを支援するツールをSaaS形式で提供する企業である。同社の特徴は、建設業などの現場で働く人々向けに特化したツールを提供している点であり、スマートフォンでの使いやすさを重視した開発を行っている。
創業の経緯と転機となった出来事
創業者はジャストシステム出身の横井氏であり、当初はBtoC向けのアプリ開発から事業を開始した。その後、顧客からのスマートフォン向けシステム開発の依頼をきっかけに、ビジネスチャットの開発に至った。建設業に特化するようになったのは、大手ゼネコンからの要望に基づき機能追加を進める中で、建設業向けの使いやすさが評価されたためである。
直近の決算状況
前期の決算では、売上高は計画を下回ったものの、前期比で+24.5%となる15.9億円であった。営業利益は、単体では7,700万円であったが、子会社の取得費用を連結後の費用として計上する必要があったため、連結後の営業利益は4,700万円となった。
特徴や強み
現場で働く人々、特に建設業向けのツールに特化している点が、他社との差別化要因である。一般的なビジネスチャットツールがデスクワーカー向けであるのに対し、同社は建設業などの現場作業員がスマートフォンやタブレット端末で利用しやすい設計となっている。
建設現場におけるタスク管理や写真管理など、業務効率化に貢献する機能を提供しており、元請企業から協力企業への指示や、作業の進捗管理を円滑に行える点が強みである。
大手ゼネコンとの取引実績が豊富であり、顧客からの要望に基づいた機能開発を重ねることで、建設業における高い専門性と顧客対応力を有している。
また、離職率が低いことも特徴であり、ノウハウが蓄積されやすく、育成した人材が定着しやすいというメリットを持つ。
成長戦略
今後の成長戦略として、建設業界への注力、AI対応による機能強化、既存サービスの機能改善、建設業界以外の分野への展開を掲げている。顧客との長期的な関係構築を通じて、ARRの向上を目指す方針である。
株主還元策
現時点では、配当や自社株買いなどの具体的な株主還元策は予定していない。利益が拡大した段階で、株主還元策を実施する方針である。
今期の取り組みやトピックス
今期は、AI対応に力を入れるとともに、既存サービスの機能改善に注力する方針である。建設業界におけるシェア拡大を目標としており、大手ゼネコンへの導入拡大を目指している。
取締役CFOコーポレート本部長 北嶋正樹様